説明

光学装置

【課題】折り返し平面鏡の変形によって生じる被検光学系の透過波面を繋ぎ合わせるときの誤差を低減させた光学装置を提供する。
【解決手段】被検光学系T1の被測定領域よりも小口径の折り返し平面鏡F1を挟んで、被検光学系T1の透過波面を測定する第1の干渉計I1と対向するように第2の干渉計I2を設ける。そして、第2の干渉計I2は、測定光を照射し、折り返し平面鏡F1の表面に形成された鏡面S1で反射され、再び第2の干渉計I2に戻ってきた戻り光を基に、第2の干渉縞画像を取得する。解析装置11は、第2の干渉計I2により取得された第2の干渉縞画像を解析して、折り返し平面鏡F1の鏡面S1の変形量を測定し、折り返し平面鏡F1の変形によって生じた誤差を打ち消すように透過波面の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計を用いて被検光学系の透過波面を測定する光学装置に関し、さらに詳しくは、被測定領域が大口径の被検光学系の透過波面を測定する光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学系の試験方法の1つに、平面鏡によって光を折り返し、オートコリメーションさせて、透過波面の干渉計測を行う方法がある(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。被検光学系の透過波面を測定する際には、これと同程度の口径を有し、精度の良い折り返し平面鏡を用いることが好ましいが、被検光学系の被測定領域が大口径である場合、これに対応するような大型で高精度の折り返し平面鏡は製作が非常に難しく、また製作できても高価である。そこで、被検光学系の被測定領域が大きい場合には、隣接する部分が一部重なるような複数の小領域に被測定領域を分割し、これら小領域に合わせて小口径の折り返し平面鏡を移動させて波面測定を行い、各測定結果を繋ぎ合わせることによって被測定領域の全体形状を求めるという、開口合成法や波面縫い合わせと呼ばれる手法が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−537426号公報
【特許文献2】特開2004−125768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような移動を行う場合、折り返し平面鏡の保持方向が変わって自重の作用する方向が変化することで、折り返し平面鏡の鏡面が(ナノメートルのオーダーで)変形するため、複数の測定位置で測定した複数の波面を繋ぎ合わせるときに誤差が生じる一因となっていた。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、折り返し平面鏡の変形によって生じる被検光学系の透過波面を繋ぎ合わせるときの誤差を低減させた光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明を例示する態様に従えば、光軸に沿って順に並んだ、第1の干渉計、被検光学系、及び、前記第1の干渉計と対向する面に鏡面が形成された折り返し平面鏡と、前記折り返し平面鏡を移動させる駆動機構と、干渉縞画像を解析する解析装置とを備え、前記折り返し平面鏡は、前記被検光学系の被測定領域よりも小さな前記鏡面を有しており、前記第1の干渉計は、前記駆動機構が前記折り返し平面鏡を予め設定された複数の所定の測定位置に移動させる毎に、測定光を射出し、前記被検光学系を通って前記折り返し平面鏡の前記鏡面で反射されて再び前記被検光学系を通って前記第1の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、第1の干渉縞画像を取得し、前記解析装置は、前記第1の干渉計により取得された複数の前記第1の干渉縞画像を解析し、各々の解析結果に基づいて開口合成の処理を施すことにより、前記被測定領域全体の透過波面を測定する光学装置において、前記折り返し平面鏡と対向するように配置された第2の干渉計を備え、前記第2の干渉計は、測定光を射出し、前記折り返し平面鏡で反射されて再び前記第2の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、第2の干渉縞画像を取得し、前記解析装置は、前記第2の干渉計により取得された前記第2の干渉縞画像を解析して、前記所定の測定位置における前記折り返し平面鏡の鏡面の形状を測定し、測定した前記鏡面の形状に基づいて、前記測定する透過波面の補正を行うように構成されることを特徴とする光学装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検光学系の透過波面をより精度よく繋ぎ合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態の光学装置を示す概略構成図(断面図)である。
【図2】第2実施形態の光学装置を示す概略構成図(断面図)である。
【図3】第3実施形態の光学装置を示す概略構成図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。第1実施形態の光学装置を図1に示しており、この光学装置10は、透過波面測定部P1と、平面鏡変形測定部P2とから構成される。
【0010】
透過波面測定部P1は、光軸A1に沿って順に並んだ、第1の干渉計I1、被検光学系T1、及び、折り返し平面鏡F1と、第1の干渉計I1により得られた干渉縞画像に基づき解析等のための各種演算を行う解析装置11と、解析装置11による解析結果等を表示する画像表示装置12とを有して構成される。なお、本実施形態においては、被検光学系T1として、凸面鏡(もしくは凹面鏡)M1(副鏡)と凹面鏡M2(主鏡)とからなる大口径の反射望遠鏡を採用している。
【0011】
折り返し平面鏡F1は、被検光学系(反射望遠鏡)T1の被測定領域(口径)よりも小さい径を有する円盤状に形成され、第1の干渉計I1側に対向する面(以下、表面とも称する)に鏡面S1が形成されている。なお、折り返し平面鏡F1の鏡面S1は、合成石英を用いて円盤状に形成された折り返し平面鏡F1の基材の表面に、銀またはアルミニウムが蒸着されて形成された高精度の平面である。また、折り返し平面鏡F1は、駆動機構13により光軸A1中心に回転移動可能に保持されている。
【0012】
第1の干渉計I1は、測定光として光の発散球面波を被検光学系T1に向かって射出し、被検光学系T1の凸面鏡M1および凹面鏡M2を(反射して)通って、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)で反射され、再び被検光学系T1の凹面鏡M2および凸面鏡M1を(反射して)通って、第1の干渉計I1に戻ってきた戻り光を基に、第1の干渉縞画像を取得する。なお、この第1の干渉縞画像には、測定光を照射した被測定領域に関する透過波面情報が担持されている。また、このような第1の干渉計I1による第1の干渉縞の画像取得は、駆動機構13により折り返し平面鏡F1が予め設定された複数の所定の測定位置に移動される毎に行われる。
【0013】
第1の干渉計I1により取得された第1の干渉縞画像は、解析装置11に出力される。解析装置11は、第1の干渉計I1から入力された第1の干渉縞画像を基に、各測定位置における透過波面情報を解析し、各々の解析結果に対して開口合成の処理(波面縫い合わせ)を施すことにより、被検光学系T1の被測定領域全体における透過波面を求める。
【0014】
このような構成の透過波面測定部P1によれば、大口径の被検光学系T1の被測定領域に対して、これより小さな口径の(鏡面S1を有する)折り返し平面鏡F1を光軸A1中心に所定量回転移動させる毎に被検光学系T1の透過波面を分割して測定し、後から測定結果を繋ぎ合わせることにより、被検光学系T1の被測定領域全体の透過波面を得ることができる。
【0015】
但し、折り返し平面鏡F1は、上記回転移動の間に、折り返し平面鏡F1の保持方向が変わって自重の作用する方向が変化することで、折り返し平面鏡F1の鏡面S1が(ナノメートルのオーダーで)変形する。このような変形は、複数の測定位置で測定した複数の波面を繋ぎ合わせる際の誤差の原因となる。なお、折り返し平面鏡F1の変形は、折り返し平面鏡F1の保持方法を変えることや折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)を水平にして使用することで小さくすることができる。しかしながら、折り返し平面鏡F1の鏡面S1はナノメートルのオーダーの精度(平面度)が要求され、このような方法で折り返し平面鏡F1の変形を小さくしようとしても、折り返し平面鏡F1の回転移動に伴い、折り返し平面鏡F1の鏡面S1がナノメートルのオーダーでは変形してしまう。そこで、本実施形態の光学装置10では、折り返し平面鏡F1の変形によって生じる被検光学系T1の透過波面を繋ぎ合わせる際の誤差を補正するため、平面鏡変形測定部P2を備えている。
【0016】
平面鏡変形測定部P2は、折り返し平面鏡F1の裏面側と対向するように配設された第2の干渉計I2を有して構成される。第2の干渉計I2は、波長シフト型のフリンジスキャン干渉計であり、折り返し平面鏡F1の裏面側と対向した状態で、駆動機構13により折り返し平面鏡F1とともに回転移動可能に保持されている。
【0017】
第2の干渉計I2は、折り返し平面鏡F1の裏面(および所定の参照面)に向かって測定光を照射し、当該測定光が折り返し平面鏡F1の内部を透過して折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)で反射された、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)からの戻り光を基に、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に関する第2の干渉縞画像を取得する。このような第2の干渉計I2による第2の干渉縞の画像取得は、第1の干渉計I1による第1の干渉縞の画像取得と同期して、すなわち、駆動機構13により折り返し平面鏡F1が予め設定された複数の所定の測定位置に移動される毎に行われる。そして、第2の干渉計I2により取得された第2の干渉縞画像は、第1の干渉計I1と同様に、解析装置11に出力される。
【0018】
なお、第2の干渉計I2により折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に関する第2の干渉縞画像を取得する際、折り返し平面鏡F1の裏面からの反射光による影響は、第2の干渉計I2として波長シフト型のフリンジスキャン干渉計を用いることで、第2の干渉計I2で検出される光の情報から裏面からの反射光の情報を分離し、除去することが可能である。また、折り返し平面鏡F1の内部品質の影響も、第2の干渉計I2として波長シフト型のフリンジスキャン干渉計を用いることで、第2の干渉計I2で検出される光の情報から内部品質の影響を分離し、除去することができる。
【0019】
解析装置11は、第2の干渉計I2から入力された第2の干渉縞画像を解析し、各測定位置における折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状(例えば、所定の基準測定位置に対する各測定位置での鏡面S1の変形量)を測定する。そして、解析装置11は、測定した折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状に基づいて、被検光学系T1の被測定領域全体における透過波面を求める際、例えば、各測定位置での鏡面S1の変形量に応じて各測定位置における透過波面情報をそれぞれ補正することにより、折り返し平面鏡F1の変形によって生じた誤差を打ち消すように透過波面の補正を行う。
【0020】
このような構成の平面鏡変形測定部P2によれば、第2の干渉計I2によって、折り返し平面鏡F1の裏面に向かって測定光を射出し、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)で反射して戻った光を基に、干渉縞が測定される。解析装置11によりこの干渉縞の縞や位置を確認することにより、折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状(変形量)を測定し、この測定結果を受けて被検光学系T1の透過波面を繋ぎ合わせる際の誤差を補正することで、被検光学系T1の透過波面をより精度よく繋ぎ合わせる(より精度よく波面縫い合わせを行う)ことができる。
【0021】
この結果、第1実施形態に係る光学装置10によれば、解析装置11が第2の干渉計I2を利用して測定した折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状に基づいて透過波面の補正を行うため、被検光学系T1の透過波面をより精度よく繋ぎ合わせることができる。よって、被検光学系T1(被測定領域)が大口径であっても、被測定領域全域に亘ってより高精度に透過波面を求めることが可能となる。
【0022】
なお、第2の干渉計I2は、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)からの戻り光を基に、第2の干渉縞画像を取得することが好ましく、これにより、折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状を直接的により精度よく求めることができ、透過波面の補正を高精度に行うことができる。
【0023】
また、第2の干渉計I2は、駆動機構13により折り返し平面鏡F1とともに移動することが好ましく、これにより、第2の干渉計I2と折り返し平面鏡F1との相対位置関係が変わらないため、折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状をより精度よく求めることができ、透過波面の補正を高精度に行うことができる。
【0024】
また、第2の干渉計は、波長シフト型のフリンジスキャン干渉計であることが好ましく、これにより、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に関する第2の干渉縞画像を取得する際、折り返し平面鏡F1の裏面からの反射光による影響や、折り返し平面鏡F1の内部品質の影響を除去することができるため、折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状をより精度よく求めることができ、透過波面の補正を高精度に行うことができる。
【0025】
なお、上述の第1実施形態において、第2の干渉計I2として波長シフト型のフリンジスキャン干渉計を用いることで、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に関する第2の干渉縞画像を取得する際、折り返し平面鏡F1の裏面からの反射光による影響を除去しているが、これに限られるものではない。例えば、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に対し裏面を平行から少しずらして傾斜させておき、裏面からの反射光が第2の干渉計I2に戻らないようにすることで、折り返し平面鏡F1の裏面からの反射光による影響を除去することも可能である。
【0026】
ここで、第1実施形態における第1の具体例について説明する。口径がφ136mmで焦点距離が−1002mmの凸双曲面鏡M1(副鏡)と、口径がφ1000mmで焦点距離が2607mmの凹放物面鏡M2(主鏡)とからなる反射望遠鏡を被検光学系T1とした場合、この望遠鏡の透過波面を一括で測定するには、口径がφ1000mmを超える折り返し平面鏡が必要となる。しかしながら、口径がφ1000mmを超える大きさで、精度の良い折り返し平面鏡を製作するのは非常に難しく、また高価でもあるため、口径がφ400mmの折り返し平面鏡F1を採用している。この小口径の折り返し平面鏡F1により反射望遠鏡の被測定領域全域を走査するように、折り返し平面鏡F1を光軸A1中心に所定角度ずつ回転移動させる毎に透過波面を測定し、後からこれら測定結果を繋ぎ合わせる開口合成の処理を行う。
【0027】
折り返し平面鏡F1の移動を機械的に簡単に行うため、上記では折り返し平面鏡F1を光軸A1中心に回転移動させているが、折り返し平面鏡F1は保持の仕方や自重により各移動位置(透過波面の測定位置)で異なる変形を起こす。このようにして生じた折り返し平面鏡F1の変形は、被検光学系T1の全体形状を求めるために波面を縫い合わせる際の誤差の原因となる。
【0028】
そこで、折り返し平面鏡F1の裏面後方に折り返し平面鏡F1の変形を測定するための第2の干渉計I2を設け、この干渉計I2により各移動位置での折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状(変形量)を測定する。そして、測定した変形量に応じて波面を縫い合わせる際に誤差を補正することで、折り返し平面鏡F1の変形から生じる波面を縫い合わせる際の誤差を除去することができる。
【0029】
続いて、第1実施形態における第2の具体例について説明する。口径がφ174mmで焦点距離が460mmの凹楕円面鏡M1(副鏡)と、口径がφ900mmで焦点距離が2700mmの凹放物面鏡M2(主鏡)とからなる反射望遠鏡を被検光学系T1とした場合、この望遠鏡の透過波面を一括で測定するには、口径がφ900mmを超える折り返し平面鏡が必要となる。しかしながら、口径がφ900mmを超える大きさで、精度の良い折り返し平面鏡を製作するのは非常に難しく、また高価でもあるため、口径がφ400mmの折り返し平面鏡F1を採用している。このような被検光学系T1の透過波面を測定する場合でも、第1の具体例の場合と同様にして、第2の干渉計I2により各移動位置での折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状(変形量)を測定し、測定した変形量に応じて波面を縫い合わせる際に誤差を補正することで、折り返し平面鏡F1の変形から生じる波面を縫い合わせる際の誤差を除去することができる。
【0030】
次に、光学装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の光学装置20は、第2の干渉計I2および解析装置11での一部の処理を除いて、第1実施形態の光学装置10と同様であり、図2に示すように、各部に第1実施形態の場合と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
第2実施形態の光学装置20において、第2の干渉計I2は、折り返し平面鏡F1の裏面(および所定の参照面)に向かって測定光を照射し、折り返し平面鏡F1の裏面からの戻り光を基に、折り返し平面鏡F1の裏面に関する第2の干渉縞画像を取得する。このような第2の干渉計I2による第2の干渉縞の画像取得は、第1の干渉計I1による第1の干渉縞の画像取得と同期して、すなわち、駆動機構13により折り返し平面鏡F1が予め設定された複数の所定の測定位置に移動される毎に行われる。そして、第2の干渉計I2により取得された第2の干渉縞画像は、第1の干渉計I1と同様に、解析装置11に出力される。
【0032】
なお、第2の干渉計I2により折り返し平面鏡F1の裏面に関する第2の干渉縞画像を取得する際、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)からの反射光による影響は、第2の干渉計I2として波長シフト型のフリンジスキャン干渉計を用いることで、第2の干渉計I2で検出される光の情報から表面(鏡面S1)からの反射光の情報を分離し、除去することが可能である。
【0033】
解析装置11は、第2の干渉計I2から入力された第2の干渉縞画像を解析し、各測定位置における折り返し平面鏡F1の裏面の形状(例えば、所定の基準測定位置に対する各測定位置での変形量)を測定する。上述からわかるように、第1実施形態では折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)の形状を測定しているのに対し、第2実施形態では折り返し平面鏡F1の裏面の形状を測定している。折り返し平面鏡F1の材質によっては、第2の干渉計I2から発せられた光束(測定光)が折り返し平面鏡F1の基材を透過しない場合がある。しかしながら、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)は裏面と同様に変形することが多く,折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)の変形を裏面の変形から推定することが可能である。
【0034】
そこで、解析装置11は、有限要素構造解析により、第2の干渉計I2を用いて測定した折り返し平面鏡F1の裏面の形状(変形量)から解析的に表面(鏡面S1)の形状(変形量)を推定し、推定した折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状に基づいて、第1実施形態の場合と同様に、折り返し平面鏡F1の変形によって生じた誤差を打ち消すように透過波面の補正を行う。
【0035】
このように、第2の干渉計I2によって、折り返し平面鏡F1の裏面に向かって測定光を射出し、折り返し平面鏡F1の裏面で反射して戻った光を基に、干渉縞が測定される。解析装置11によりこの干渉縞の縞や位置を確認することにより、折り返し平面鏡F1の裏面の形状(変形量)を測定するとともに、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)の形状(変形量)を推定し、この測定結果を受けて被検光学系T1の透過波面を繋ぎ合わせる際の誤差を補正することで、被検光学系T1の透過波面をより精度よく繋ぎ合わせる(より精度よく波面縫い合わせを行う)ことができる。
【0036】
この結果、第2実施形態に係る光学装置20によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。なお、第2実施形態では、解析装置11が第2の干渉計I2を利用して折り返し平面鏡F1の裏面の形状を測定するため、第2の干渉計I2からの測定光が折り返し平面鏡F1の内部を透過しない場合であっても、被検光学系T1の透過波面を精度よく繋ぎ合わせることが可能である。
【0037】
なお、上述の第2実施形態に対して、第1実施形態における第1の具体例および第2の具体例を適用することが可能である。
【0038】
次に、光学装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態の光学装置30は、平面鏡変形測定部P2の構成を除いて、第1実施形態の光学装置10と同様の構成であり、各部に第1実施形態の場合と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第3実施形態の光学装置30は、図3に示すように、透過波面測定部P1と、平面鏡変形測定部P3とから構成される。
【0039】
平面鏡変形測定部P3は、斜め方向から折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)側と対向するように配設された第2の干渉計I3と、第2の干渉計I3と反対側の斜め方向から折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)側と対向するように配設された変形測定用平面鏡F3とを有して構成される。第2の干渉計I3および変形測定用平面鏡F3は、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)側と対向した状態で、駆動機構13により折り返し平面鏡F1とともに回転移動可能に保持されている。
【0040】
第2の干渉計I3は、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に向かって測定光を斜めに照射し、この表面(鏡面S1)で反射した測定光を第2の折り返し平面鏡である変形測定用平面鏡F3で反射させて第2の干渉計I3に戻し、折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)に関する第2の干渉縞画像を取得する。このような第2の干渉計I3による第2の干渉縞の画像取得は、第1の干渉計I1による第1の干渉縞の画像取得と同期して、すなわち、駆動機構13により折り返し平面鏡F1が予め設定された複数の所定の測定位置に移動される毎に行われる。そして、第2の干渉計I3により取得された第2の干渉縞画像は、第1の干渉計I1と同様に、解析装置11に出力される。
【0041】
解析装置11は、第2の干渉計I3から入力された第2の干渉縞画像を解析し、各測定位置における折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状(例えば、所定の基準測定位置に対する各測定位置での鏡面S1の変形量)を測定する。そして、解析装置11は、測定した折り返し平面鏡F1の鏡面S1の形状に基づいて、被検光学系T1の被測定領域全体における透過波面を求める際、例えば、各測定位置での鏡面S1の変形量に応じて各測定位置における透過波面情報をそれぞれ補正することにより、折り返し平面鏡F1の変形によって生じた誤差を打ち消すように透過波面の補正を行う。
【0042】
このような構成の平面鏡変形測定部P3を用いても、第1実施形態の場合と同様に、被検光学系T1の透過波面をより精度よく繋ぎ合わせる(より精度よく波面縫い合わせを行う)ことができる。この結果、第3実施形態に係る光学装置30によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。なお、第3実施形態では、第2の干渉計I3により折り返し平面鏡F1の表面(鏡面S1)側から測定光を照射するため、折り返し平面鏡F1の裏面の影響や内部品質の影響を受けずに折り返し平面鏡F1の変形を測定することができ、透過波面の補正を高精度に行うことができる。
【0043】
なお、上述の各実施形態において、折り返し平面鏡F1を回転移動させているが、これに限られるものではなく、被検光学系T1の被測定領域全域を走査するように、折り返し平面鏡F1を直線移動させてもよい。なおこのとき、第2の干渉計等を駆動機構により折り返し平面鏡F1とともに直線移動させることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
10 光学装置(第1実施形態)
11 解析装置 13 駆動機構
20 光学装置(第2実施形態) 30 光学装置(第3実施形態)
P1 透過波面測定部
P2 平面鏡変形測定部(第1実施形態) P3 平面鏡変形測定部(第3実施形態)
1 光軸
1 折り返し平面鏡
3 変形測定用平面鏡
1 第1の干渉計
2 第2の干渉計(第1実施形態) I3 第2の干渉計(第3実施形態)
1 凸面鏡 M2 凹面鏡
1 被検光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って順に並んだ、第1の干渉計、被検光学系、及び、前記第1の干渉計と対向する面に鏡面が形成された折り返し平面鏡と、
前記折り返し平面鏡を移動させる駆動機構と、
干渉縞画像を解析する解析装置とを備え、
前記折り返し平面鏡は、前記被検光学系の被測定領域よりも小さな前記鏡面を有しており、
前記第1の干渉計は、前記駆動機構が前記折り返し平面鏡を予め設定された複数の所定の測定位置に移動させる毎に、測定光を射出し、前記被検光学系を通って前記折り返し平面鏡の前記鏡面で反射されて再び前記被検光学系を通って前記第1の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、第1の干渉縞画像を取得し、
前記解析装置は、前記第1の干渉計により取得された複数の前記第1の干渉縞画像を解析し、各々の解析結果に基づいて開口合成の処理を施すことにより、前記被測定領域全体の透過波面を測定する光学装置において、
前記折り返し平面鏡と対向するように配置された第2の干渉計を備え、
前記第2の干渉計は、測定光を射出し、前記折り返し平面鏡で反射されて再び前記第2の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、第2の干渉縞画像を取得し、
前記解析装置は、前記第2の干渉計により取得された前記第2の干渉縞画像を解析して、前記所定の測定位置における前記折り返し平面鏡の鏡面の形状を測定し、測定した前記鏡面の形状に基づいて、前記測定する透過波面の補正を行うように構成されることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第2の干渉計は、前記折り返し平面鏡における前記鏡面または前記鏡面と反対側の面で反射されて再び前記第2の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、前記第2の干渉縞画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記第2の干渉計は、前記駆動機構により前記折り返し平面鏡とともに移動することを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第2の干渉計は、波長シフト型のフリンジスキャン干渉計であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記折り返し平面鏡が一方の面に前記鏡面を有する円盤状に形成されており、
前記第2の干渉計は、前記折り返し平面鏡における他方から測定光を射出し、前記折り返し平面鏡の他方の面から内部を透過し前記鏡面で反射されて再び前記第2の干渉計に戻ってきた戻り光を基に、前記第2の干渉縞画像を取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記折り返し平面鏡の他方の面が前記鏡面に対して傾斜していることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−242357(P2011−242357A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116953(P2010−116953)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】