説明

光束平行度測定装置

【課題】被測定光束の光束断面形状や光束径のばらつき等の影響を受けることなく、被測定光束の平行度を高精度に測定し得る光束平行度測定装置を得る。
【解決手段】コリメートされた被測定光束が入射される非点収差レンズ系2と、4個の光検出領域に分割された受光面31を有する分割センサ3とが、光軸P上において互いに共軸に配されるとともに、上記非点収差レンズ系3の前段に、入射された被測定光束の光束周縁部を遮光し得る大きさの円形の開口部を有する絞り手段1が、光軸P上に共軸に配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光学機器において平行光として用いられるレーザビーム等の光束の平行度を測定するための光束平行度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクからの反射光を平行光に変換する光学系を備えた光ピックアップ装置において、シリンドリカルレンズ等の非点収差を有するレンズ系(以下、「非点収差レンズ系」と称する)により上記平行光に非点収差を与えるとともに、該非点収差が与えられた平行光を4分割センサに照射してその受光面に点像を形成し、4分割センサの4個の受光領域毎の各検出光量により把握される点像の形状の歪み(光量分布の偏り)に基づき、上記平行光の平行度(光束平行性)を測定する方式(以下、「非点収差方式」と称する)のものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−192668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、各種光学機器において平行光として用いられる光束の平行度を高精度に測定したいという要望が高まっており、このような測定において上述の非点収差方式を適用することも考えられる。
【0005】
しかしながら、上記非点収差方式では、4分割センサの受光面に形成される点像の形状が、被測定光束が平行光である場合には所定形状(通常は円形)となり、収束光や発散光である場合には所定形状から歪んだ形状となることを前提としているが、このような前提が成立するのは、厳密には、非点収差レンズ系に入射される被測定光束の光束断面形状(光軸に垂直な断面上の形状)が上記所定形状と相似な形状である場合に限られてしまう。
【0006】
光学機器の種類が異なれば、平行光として用いられる被測定光束の光束断面形状が異なり、また、同じ種類の光学機器においても、被測定光束の断面形状や光束径にばらつきが生じることも予想されるため、上記非点収差方式をそのまま適用しても各種被測定光束の平行度を高精度に測定することはできないことになる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、被測定光束の光束断面形状や光束径のばらつき等の影響を受けることなく、被測定光束の平行度を高精度に測定し得る光束平行度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光束平行度測定装置は、コリメートされた被測定光束が入射される非点収差レンズ系と、複数の光検出領域に分割された受光面を有する分割センサと、が互いに共通の光軸上に配されており、前記非点収差レンズ系により非点収差が与えられた前記被測定光束を前記受光面に照射し、前記複数の光検出領域毎の各検出光量に基づき、前記被測定光束の平行度を測定する装置であって、前記非点収差レンズ系の前段に、入射された前記被測定光束の光束断面の周縁部を遮光し得る大きさの開口部を有する絞り手段が前記光軸上に配されてなることを特徴とする。
【0009】
前記開口部は、前記光軸を中心とする90度回転対称な形状に形成されていることが好ましく、例えば、円形の他、頂点の数が4M個(Mは自然数)の正多角形とすることができる。
【0010】
また、前記分割センサは、前記受光面が前記光軸を中心に4N個(Nは自然数)に等分され、該等分された各部分により前記複数の光検出領域が構成されてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光束平行度測定装置によれば、非点収差レンズ系の前段に、入射された前記被測定光束の光束断面の周縁部を遮光し得る大きさの開口部を有する絞り手段が配されていることにより、該開口部を通過した被測定光束の断面形状を、開口部と略同一の形状に整えることが可能となる。
【0012】
したがって、被測定光束の光束断面形状や光束径のばらつき等の影響を受けることなく、被測定光束の平行度を高精度に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る光束平行度測定装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光束平行度測定装置の概略構成図であり、図2は図1に示す絞り手段の正面図である。また、図3は図1に示す分割センサの受光面に形成される点像の状態を、被測定光束が平行光である場合(同図(a))、収束光である場合(同図(b))、および発散光である場合(同図(c))に分けて示す図である。なお、図1〜図3に示す3次元座標系(図4〜図9にも示す)は、各図間の方向を対応付けるためのものである。また、図2および図3には、光軸Pの位置が示されている(図4〜図9にも示す)。
【0014】
図1に示す光束平行度測定装置は、コリメートされた被測定光束が入射される非点収差レンズ系2と、4個の光検出領域32A〜32D(図3参照)に分割された受光面31を有する分割センサ3とが、光軸P上において互いに共軸に配されるとともに、上記非点収差レンズ系3の前段(図中左側)に、入射された被測定光束の光束周縁部を、その全周に亘って遮光し得る大きさの円形の開口部11(図2参照)を有する絞り手段1が、その中心軸が光軸Pと一致するように配されてなる。
【0015】
上記非点収差レンズ系2は、絞り手段1を介して入射された被測定光束に非点収差を与えるものであり、本実施形態では、収束レンズ21とシリンドリカルレンズ22とから構成されている。シリンドリカルレンズ22は、円筒状レンズ面22aと平板状レンズ面22bとを有しており、光軸Pを含む縦横2つの断面(紙面に沿った垂直断面(以下「YZ断面」と称する)と、紙面と直交する水平断面(以下「XZ断面」と称する))のうち、YZ断面上ではレンズ作用を有するが、XZ断面上ではレンズ作用を有さないように配置されている。これにより、非点収差レンズ系2は、YZ断面上での焦点距離とXZ断面上での焦点距離とが互いに異なる(XZ断面上での焦点Fの位置とYZ断面上での焦点Fの位置とが光軸P上において互いに離間する)という特性、すなわち非点収差を有するようになっている。
【0016】
なお、図1に示す態様では、シリンドリカルレンズ22の円筒状レンズ面22aが収束レンズ21と対向し、平板状レンズ面22bが分割センサ3と対向するように配されているが、円筒状レンズ面22aが分割センサ3と対向し、平板状レンズ面22bが収束レンズ21と対向するように配してもよい。また、シリンドリカルレンズ22を、図1に示す状態から光軸Pを中心に90度回転して配置し、XZ断面上ではレンズ作用を有するが、YZ断面上ではレンズ作用を有さないようにしてもよい(この場合、XZ断面上での焦点がシリンドリカルレンズ22と分割センサ3との間に位置し、YZ断面上での焦点が分割センサ3の後段(図中右側)に位置することとなる)。
【0017】
上記分割センサ3は、図3に示すように、正方形をなす受光面31が、互いに直交する一対の対称軸線33A,33Bにより、各々が正方形をなす4個の光検出領域32A〜32Dに分割されてなり、非点収差レンズ系2の2つの焦点F,F(図1参照)の間の位置、詳しくは、基準となるセットアップ用の平行光を入射した場合に、非点収差レンズ系2を介して受光面31上に形成される点像の形状が、絞り手段1の開口部11(図2参照)の形状(本実施形態では円形)と相似形となる位置に、配されている。また、この分割センサ3は、受光面31上に形成された点像の光量を、4個の受光領域32A〜32D毎にそれぞれ別個に検出し得るようになっている。
【0018】
次に、本実施形態に係る光束平行度測定装置の作用について説明する。
レーザビーム等の被測定光束は、まず、絞り手段1に照射される。照射された被測定光束は、絞り手段1の開口部11によって光束断面の周縁部が遮光され、光束断面形状が開口部11の形状と略同一となった状態で、非点収差レンズ系2に入射する。
【0019】
非点収差レンズ系2に入射した被測定光束は、該非点収差レンズ系2により非点収差が与えられた状態で分割センサ3の受光面31に照射され、該受光面31上に点像を形成する。
【0020】
受光面31上に形成される点像の形状は、被測定光束の平行度によって変化する。例えば、被測定光束が完全な平行光である場合には、図3(a)に示すような円形の点像Iとなり、収束光である場合には、図3(b)に示すような縦長の点像Iとなり、発散光である場合には、図3(c)に示すような横長の点像Iとなる。
【0021】
これら点像I〜Iの形状が、分割センサ3の受光面31において4個の光検出領域32A〜32D毎に検出された各光量により把握され、それに基づいて被測定光束の平行度が測定される。なお、4個の光検出領域32A〜32D毎の各検出光量に基づく被測定光束の平行度の測定は、例えば、下式(1)に基づいて行うことが可能である。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、A、B、CおよびDは、光検出領域32A、32B、32Cおよび32Dの各検出光量をそれぞれ示している。
【0024】
上式(1)において、H=0となるのは、図3(a)に示す円形の点像Iが受光面31に形成されている場合であり、これにより被測定光束が平行光であることが分かる。また、H>0となるのは、図3(b)に示す縦長の点像Iが受光面31に形成されている場合であり、これにより被測定光束が収束光であることが分かる。同様にH<0となるのは、図3(c)に示す横長の点像Iが受光面31に形成されている場合であり、これにより被測定光束が発散光であることが分かる。また、上式(1)により算出されるHの値により、被測定光束の平行度(光束平行性の程度)を知ることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、受光面31を4分割する一対の対称軸線33A,33B(図3参照)が、上述のYZ断面およびXZ断面に対し、光軸Pを中心に45度回転した状態となるように配置されている。上式(1)に基づき平行度の測定を行う場合、このような配置関係をとることにより測定感度を高めることができるので好ましいが、これに限定されるものではない。ただし、一対の対称軸線33A,33Bが、YZ断面およびXZ断面上に位置していると、被測定光束が、平行光、収束光、発散光のいずれの場合であっても、上記Hの算出結果が0となってしまうので、このような状態とならないように配慮することは必要である。
【0026】
本実施形態に係る光束平行度測定装置によれば、非点収差レンズ系2の前段に、入射された被測定光束の光束断面の周縁部を遮光し得る大きさの円形の開口部11を有する絞り手段1が配されていることにより、該開口部11を通過した被測定光束の光束断面形状を、開口部11と略同一の円形状に整えることが可能となる。
【0027】
したがって、被測定光束の光束断面形状や光束径のばらつき等の影響を受けることなく、被測定光束の平行度を高精度に測定することが可能となる。
【0028】
なお、上記実施形態では、収束レンズ21とシリンドリカルレンズ22とにより非点収差レンズ系2が構成されているが、トロイダルレンズを用いて非点収差レンズ系2を構成することも可能である。
【0029】
また、絞り手段は、円形の開口部11を有する図2の態様のもの(絞り手段1)に限られるものではなく、90度回転対称な他の形状の開口部を有するもの、例えば、図4に示すように、正方形の開口部11Aを有する絞り手段1Aや、図5に示すように、正八角形の開口部11Bを有する絞り手段1Bなど、頂点の数が4M個(Mは自然数)の正多角形の開口部を有するものを用いることができる。
【0030】
また、分割センサは、各々が正方形をなす4個の光検出領域32A〜32Dに分割された受光面31を有する図3に示す態様のもの(分割センサ3)に限られるものではなく、例えば、図6に示す分割センサ4や、図7に示す分割センサ5のように、受光面が光軸を中心に4N個(Nは自然数)に等分され、該等分された各部分により複数の光検出領域が構成されてなるものを用いることができる。
【0031】
図6に示す分割センサ4は、互いに直交する一対の対称軸線43A,43Bにより、正方形をなす受光面41が、各々が直角二等辺三角形をなす4つの光検出領域42A〜42Dに分割されているものである。一方、図7に示す分割センサ5は、互いに直交する一対の対称軸線53A,53Bと、これらに対し交角45度で交差する、互いに直交する一対の対称軸線53C,53Dとにより、正八角形をなす受光面51が、各々が頂角45度の二等辺三角形をなす8個の光検出領域52A,52A,52B,52B,52C,52C,52D,52Dに分割されているものである。
【0032】
なお、絞り手段1,1A,1Bと分割センサ3〜5は、適宜組み合わせて用いることが可能である。図8は絞り手段1Bと分割センサ4とを組み合わせた場合に、受光面41に形成される点像I〜Iの状態を、被測定光束が平行光である場合(同図(a))、収束光である場合(同図(b))、および発散光である場合(同図(c))に分けて示している。また、図9は絞り手段1Aと分割センサ5とを組み合わせた場合に、受光面51に形成される点像I〜Iの状態を、被測定光束が平行光である場合(同図(a))、収束光である場合(同図(b))、および発散光である場合(同図(c))に分けて示している。
【0033】
また、分割センサ4を用いる場合、光検出領域42A、42B、42Cおよび42Dの各検出受光量を、それぞれA、B、CおよびDとすれば、上式(1)を用いて被測定光束の平行度を測定することが可能となる。
【0034】
一方、分割センサ5を用いる場合には、光検出領域52A,52A,52B,52B,52C,52C,52Dおよび52Dの各検出受光量を、それぞれA、A、B、B、C、C、DおよびDとすれば、下式(2)を用いて被測定光束の平行度を測定することが可能となる。この場合、下式(2)において、H=0の場合には被測定光束が平行光であり、H>0の場合には被測定光束が収束光であり、H<0の場合には被測定光束が発散光であることが分かる。また、下式(2)により算出されたHの値により、被測定光束の平行度を知ることができる。
【0035】
【数2】

【0036】
なお、絞り手段1A,1Bを用いる場合には、開口部11A,11Bの各中心に光軸Pが位置するように配置することは必要となるが、開口部11A,11Bの光軸Pを中心とする回転方向の位置関係は、図示した態様のものに限定されるものではない。すなわち、図4および図5に示す状態から、光軸Pを中心として開口部11A,11Bが任意の角度だけ回転した状態に、絞り手段1A,1Bを設置することが可能である。
【0037】
また、分割センサ4を用い上式(1)に基づく平行度の測定を行う場合には、分割センサ3を用いる場合と同様に、受光面41上の一対の対称軸線43A,43Bが、上述のYZ断面およびXZ断面上に位置しないように設置することが必要となる。
【0038】
同様に、分割センサ5を用い上式(2)に基づく平行度の測定を行う場合には、受光面51上の一対の対称軸線53A,53Bが、上述のYZ断面およびXZ断面上に位置しないように設置することが必要となる。ただし、分割センサ5を用いる態様においては、一対の対称軸線53A,53Bが、YZ断面およびXZ断面上に位置するように設置された場合に、下式(3)を用いて被測定光束の平行度を測定することが可能となる。この場合、下式(3)において、H=0の場合には被測定光束が平行光であり、H>0の場合には被測定光束が収束光であり、H<0の場合には被測定光束が発散光であることが分かる。また、下式(3)により算出されたHの値により、被測定光束の平行度を知ることができる。
【0039】
【数3】

【0040】
上式(3)は、光検出領域52A,52A,52B,52B,52C,52C,52D,52Dの各検出受光量A、A、B、B、C、C、D,Dを用いる点は上式(2)と同じであり、右辺の分子のみが上式(2)と異なるものである。上式(2)から上式(3)への切換は、演算ソフト上において簡単に行うことができるので、分割センサ5を用いる場合には、受光面51上の一対の対称軸線53A,53Bと、上述のYZ断面およびXZ断面との位置関係に細心の注意を払わなくても済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態に係る光束平行度測定装置の概略構成図
【図2】図1の絞り手段の正面図
【図3】図1の分割センサの受光面に形成される点像の状態を示す図
【図4】他の絞り手段の正面図
【図5】その他の絞り手段の正面図
【図6】他の分割センサの正面図
【図7】その他の分割センサの正面図
【図8】図6の分割センサの受光面に形成される点像の状態を示す図
【図9】図7の分割センサの受光面に形成される点像の状態を示す図
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B 絞り手段
2 非点収差レンズ系
3〜5 分割センサ
11,11A,11B 開口部
21 収束レンズ
22 シリンドリカルレンズ
22a 円筒状レンズ面
22b 平板状レンズ面
31,41,51 受光面
32A〜32D,42A〜42D,52A,52A,52B,52B,52C,52C,52D,52D 光検出領域
33A,33B,43A,43B,53A,53B,53C,53D 対称軸線
P 光軸
,F 焦点
〜I 点像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリメートされた被測定光束が入射される非点収差レンズ系と、複数の光検出領域に分割された受光面を有する分割センサと、が互いに共通の光軸上に配されており、前記非点収差レンズ系により非点収差が与えられた前記被測定光束を前記受光面に照射し、前記複数の光検出領域毎の各検出光量に基づき、前記被測定光束の平行度を測定する装置であって、
前記非点収差レンズ系の前段に、入射された前記被測定光束の光束断面の周縁部を遮光し得る大きさの開口部を有する絞り手段が前記光軸上に配されてなることを特徴とする光束平行度測定装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記光軸を中心とする90度回転対称な形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光束平行度測定装置。
【請求項3】
前記開口部は、頂点の数が4M個(Mは自然数)の正多角形に形成されていることを特徴とする請求項2記載の光束平行度測定装置。
【請求項4】
前記分割センサは、前記受光面が前記光軸を中心に4N個(Nは自然数)に等分され、該等分された各部分により前記複数の光検出領域が構成されてなるものであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の光束平行度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−185528(P2008−185528A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20946(P2007−20946)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】