光源装置、画像表示装置およびモニタ装置
【課題】外部共振器型のレーザ光源を前提として、出力レーザ光のコヒーレンス長を短くすることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置1は、複数の発光素子6を有する光源2と、複数の発光素子6から射出された複数の光を光源2との間で共振させる共振ミラー3と、光源2と共振ミラー3との間の光路上に設けられ、複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体7と音響波を生成する音響波発生素子8(音響波生成手段)とを含む可変波長選択素子4と、を備え、音響波発生素子8を用いて音響光学媒体8内の複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより複数の光の各々の選択波長域を空間的かつ時間的に変化させる。
【解決手段】本発明の光源装置1は、複数の発光素子6を有する光源2と、複数の発光素子6から射出された複数の光を光源2との間で共振させる共振ミラー3と、光源2と共振ミラー3との間の光路上に設けられ、複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体7と音響波を生成する音響波発生素子8(音響波生成手段)とを含む可変波長選択素子4と、を備え、音響波発生素子8を用いて音響光学媒体8内の複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより複数の光の各々の選択波長域を空間的かつ時間的に変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像表示装置およびモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタにおいては、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的であった。ところが、この種の放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射される紫外線が液晶ライトバルブを劣化させる、等の課題がある。そこで、放電ランプの代わりに、単色光を照射するレーザ光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。しかしながら、レーザ光源は、上記の課題が解決できる反面、射出光の干渉性が高いという欠点を持っている。これにより、レーザ光が投射される被投射面において干渉縞がスペックルノイズとして現れ、画像の視認性が劣化する。そこで、鮮明な画像を表示させるためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0003】
スペックルノイズは、レーザ光の可干渉性により生じる現象である。よって、スペックルノイズを低減するには、レーザ光のコヒーレンス長を短くする対策が有効である。コヒーレンス長はレーザ光の出力スペクトル幅に概ね反比例する関係を持っている。そのため、スペクトル幅を広くすることによってコヒーレンス長を短くし、スペックルノイズを低減することができる。具体的には、複数の発光素子を2次元に配列したアレイ状光源において、各発光素子の出力波長をずらすことで全体のスペクトル幅を広げ、コヒーレンス長を短くしたレーザ光源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2004−503923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光の高出力化の手法として、発光素子の外部に共振ミラーを備えた外部共振器型のレーザ光源が用いられることがある。外部共振器型のレーザ光源の場合、レーザ発振を高効率で生じさせるためには共振ミラーの対応波長幅を狭くする必要がある。したがって、例えば特許文献1のアレイ状光源を外部共振器型レーザ光源に適用した場合、アレイ状光源でのスペクトル幅を広げたとしても、共振ミラーからレーザ光として出力される光は結果的に狭帯域となってしまい、スペックルノイズの低減効果が得られない。一方、出力される光の波長幅を広げるために共振ミラーの対応波長幅を広げたとすると、レーザ共振が困難となり、共振ミラーとしての役目を果たさなくなる。そのため、共振ミラーの対応波長幅を単純に広げることはできない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、外部共振器型のレーザ光源を前提として、出力レーザ光のコヒーレンス長を短くすることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供することを目的とする。また、上記の光源装置を備え、画質に優れた画像表示装置およびモニタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の光源装置は、複数の発光部を有する光源と、前記複数の発光部から射出された複数の光を前記光源との間で共振させる共振ミラーと、前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に設けられ、前記複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体と音響波を生成する音響波生成手段とを含む可変波長選択素子と、を備え、前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより前記複数の光の各々の前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする。
【0007】
本発明の光源装置においては、光源と共振ミラーとにより外部共振器構造が構成され、光源と共振ミラーの間を光が往復する際に光が増幅されてレーザ発振が生じる。ここで、光源と共振ミラーとの間の光路上に可変波長選択素子が設けられているため、複数の発光部から射出された複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光が可変波長選択素子の音響光学媒体を選択的に透過する。このとき、可変波長選択素子を構成する音響光学媒体に対し、音響波生成手段を用いて複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させる。すると、音響波は光に比べて伝搬速度がはるかに遅いため、音響光学媒体における複数の光の入射位置で音響波(縦波)の到達時刻にずれが生じ、各々の選択波長域が空間的に変化する。このため、ある時刻で複数の光に着目したときに選択波長域がそれぞれ異なり、複数の光全体として波長幅が広がる。それと同時に、複数の光の各々の選択波長域が時間的にも変化するため、一つの光に着目したときに選択波長域が目の積算時間内で時間をおって変化し、擬似的に波長域が広がる。この空間的作用、時間的作用の双方により、出力レーザ光のスペクトル幅が広がり、コヒーレンス長が短くなる。これにより、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0008】
本発明の光源装置において、前記音響波生成手段として、前記音響光学媒体の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に前記音響波を発生する音響波発生素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、可変波長選択素子の音響波発生素子が設けられた側の一端から他端に向けて音響波を伝播させることを簡易な装置構成で容易に実現できる。
【0009】
本発明の光源装置において、前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成する構成が採用できる。
一般に音響光学媒体の選択波長域は音響周波数に依存するため、この構成によれば、音響波の音響周波数が時間的に連続して変化することにより選択波長域が広がり、トップハット形状のスペクトル分布を得ることができる。
【0010】
本発明の光源装置において、前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、分割された音響光学媒体毎に音響波生成手段が設けられているため、可変波長選択素子の選択波長域を空間的に変化させる際の自由度が高くなり、波長幅がより広い所望のスペクトル分布が得やすくなる。
【0011】
本発明の光源装置において、前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に、前記複数の発光部から射出された複数の光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換する波長変換素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、所望の波長域の光が直接得られる光源が入手し難かったとしても、波長変換素子によって光源から射出された光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換し、所望の波長域の光を得ることができる。例えば、緑色レーザ光を得たい場合に、赤外レーザ光源からの赤外レーザ光を波長変換素子によって波長変換し、緑色レーザ光を得ることができる。
【0012】
本発明の光源装置において、前記波長変換素子に、当該波長変換素子が変換する変換波長域を変化させる変換波長変化手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0013】
本発明の光源装置において、前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与する歪み付与手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子に光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みが付与された場合、波長変換素子を構成する結晶の格子間隔が光路と交差する方向の場所によって変化する。これにより、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0014】
本発明の光源装置において、前記歪み付与手段として、前記波長変換素子の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に圧電素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子の圧電素子が設けられた側で大きい歪みが付与され、その反対側で小さい歪みが付与されるというように、波長変換素子の一端側から他端側に向けて大きさが異なる歪みを付与する構成を簡易な装置構成で容易に実現できる。
【0015】
本発明の光源装置において、前記圧電素子は、大きさが時間的に連続して変化する歪みを生成する構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子内で歪みが時間的に連続して変化することにより変換波長域が広がり、可変波長選択素子のスペクトル分布に合わせることができる。
【0016】
本発明の光源装置において、前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記圧電素子が生成する歪みの変化と前記音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期している構成が採用できる。
この構成によれば、圧電素子が生成する歪みと音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期しているため、波長変換素子の変換波長域と可変波長選択素子の選択波長域とを十分に合わせ込むことができ、光の利用効率を確実に高めることができる。
【0017】
本発明の光源装置において、前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子に光路と交差する方向に沿って温度分布が付与されるので、波長変換素子を構成する結晶の格子間隔が光路と交差する方向の場所によって変化する。これにより、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0018】
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出された光はコヒーレンス長が短くなっており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0019】
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザ光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出された光はコヒーレンス長が短くなっており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0020】
本発明のモニタ装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とする。
本発明のモニタ装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置はコヒーレンスが短い光を射出し、輝度むらのない明るい光により被写体が照射される。したがって、撮像手段により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図1、図2を用いて説明する。
本実施形態の光源装置は、外部共振器型のレーザ光源装置である。
図1は、本実施形態の光源装置の平面図である。図2は、本光源装置から得られるレーザ光のスペクトル分布を説明するための図であり、図2(a)は可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性と選択波長の関係を示す図、図2(b)は全体のスペクトル形状を示す図、である。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素ごとに寸法の比率や縮尺を異ならせてある。
【0022】
本実施形態の光源装置1は、図1に示すように、光源2と、共振ミラー3と、可変波長選択素子4と、を備えている。光源2は、基板5上にアレイ状に配列された複数の発光素子6を備えている。図1では5個のみ図示するが、発光素子6の数は5個に限定されるものではなく、1次元のみならず、紙面の奥行き方向も含む2次元に配列されていても良い。各発光素子6は、周知の半導体レーザの構成を有しており、図示しない活性層、電極等を含んでいる。また、発光素子6の実質的な発光部となる活性層の基板5側にはDBR層等の反射層が設けられており、この反射層と後述する共振ミラー3との間で外部共振器構造を構成する。各発光素子6から射出される光のピーク波長は概ね一致しているが、数nm程度のバラツキを有している。このバラツキは製造誤差であっても良いし、意図的にピーク波長を異ならせた発光素子6を準備しても良い。
【0023】
共振ミラー3は、入射した光のうち、所定の反射波長域の光の一部(例えば98〜99%程度)を選択的に発光素子6に向けて反射させる一方、残りの光(例えば1〜2%程度)を透過させる。所定の反射波長域は、後述する可変波長選択素子4の選択波長域と略一致している。共振ミラー3としては、例えば周期格子を有するホログラムのような光学素子を用いても良いし、誘電体多層膜を備えた波長選択ミラーを用いても良い。発光素子6から射出された基本波長の光は、発光素子6と共振ミラー3との間を往復し、増幅された後、レーザ光として共振ミラーから射出される。共振ミラー3はある程度広い波長域の光を透過させるが、そのうちの反射波長域の光だけが増幅されている。増幅された光の強度は他の波長域の光の強度と比べて著しく高いため、共振ミラー3を透過した光は、略単一波長のレーザ光とみなすことができる。共振ミラー3は、所定の反射波長域の光の多くを反射するので、その残りの光を出力光として利用することになる。また、詳しくは後述するが、共振ミラー3は光源2から射出された複数の光の光路に対して垂直ではなく、傾いて配置されている。なお、ここでは特定の反射波長域の光を選択的に反射させる機能を有する共振ミラー3を用いたが、この共振ミラー3に代えて、波長選択性を持たない単なるハーフミラーを用いても良い。
【0024】
可変波長選択素子4は、いわゆる音響光学チューナブルフィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter, 以下、AOTFと略記する)と呼ばれるものであり、音響光学媒体7と、音響波発生素子8(音響波生成手段)と、吸収材9と、を備えている。音響光学媒体7は、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等の内部に音響波が伝播される媒体となる圧電体結晶である。音響光学媒体7には、音響光学媒体7に入射する複数の光L1の光路と直交する方向の一端(図1における左端)に音響波発生素子8が設けられ、他端(図1における右端)に吸収材9が設けられている。本実施形態においては、音響波発生素子8として圧電素子が用いられる。音響波発生素子8には信号源10が接続され、信号源10から、後述する時間的に連続して変化する音響周波数を発生させる駆動信号が供給される。また、吸収材9は、音響波を吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。なお、本実施形態では音響波発生素子8として圧電素子を用いたが、この構成に代えて、音響光学媒体7の一端に一対の櫛歯電極を設け、櫛歯電極に電気信号を与えることで音響波を発生させるものを用いても良い。
【0025】
上記構成の光源装置1の動作について以下、説明する。
光源2の各発光素子6に電力を供給し、複数の発光素子6から複数の光L1を射出させると、複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光L2が可変波長選択素子4を透過する。可変波長選択素子4を透過した複数の光の大部分は、共振ミラー3によって発光素子6に向けて反射して反射光L3となった後、反射光L3が可変波長選択素子4を透過し、その透過光L4が発光素子6の反射層によって共振ミラー3に向けて再度反射し、このような経路を辿って反射を繰り返す。このようにして、複数の光L1は発光素子6と共振ミラー3との間を往復する間に増幅され、レーザ発振が生じる。
【0026】
これと同時に、可変波長選択素子4の音響波発生素子8に対して、電圧値が時間的に連続して変化する駆動信号を供給することにより、音響波の周波数(以下、音響周波数と称する)が時間的に連続して変化する音響波が発生する。これにより、音響光学媒体7の内部に音響波(縦波)が発生し、音響波が音響波発生素子8側から吸収材9側に向けて進行する。このとき、音響波は縦波として音響光学媒体7の内部を伝播するため、縦波の疎密によって音響光学媒体7が擬似的な回折格子として機能し、0次回折光、±1次回折光、…が発生する。
【0027】
可変波長選択素子4の選択波長は音響周波数に依存し、一般的には音響周波数が高くなる程、選択波長が大きくなる傾向を示すが、このような傾向を示すのは±1次回折光のみである。可変波長選択素子4から射出される±1次回折光(ここでは+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が、図1中の光L2である)の光軸は、可変波長選択素子4への入射光L1の光軸に対して2〜3°傾く。したがって、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が垂直に入射するように、共振ミラー3を可変波長選択素子4への入射光L1の光軸に垂直な方向に対して2〜3°傾けて配置し、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が共振ミラー3に垂直に入射するようにする。これにより、可変波長選択素子4から射出される回折光のうち、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方のみが共振する。共振ミラー3は可変波長選択素子4からの射出光L2の光軸に垂直な方向に配置することにより外部共振ミラーとして機能し、レーザ発振が可能となる。なお、偏向素子として用いるAOD等では音響周波数に応じて偏向角が変化するが、AOTFでは±1次回折光の偏向角は音響周波数の影響を受けない。
【0028】
本実施形態の場合、図2(a)に示すように、音響周波数がf1(例えば100MHz)からf2(例えば200MHz)に一定時間直線的に増加した後、f2からf1に一定時間直線的に減少し、その後、数十m秒の周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。今、音響光学媒体7に入射する複数の光L1のうち、一つの光についてのみ着目すると、その光の入射位置において時間を追って音響周波数が変化することになる。したがって、音響周波数の変化に伴って、時刻t=1のときに波長λ1、時刻t=2のときに波長λ2、時刻t=3のときに波長λ3、時刻t=4のときに波長λ4、時刻t=5のときに波長λ5というように、選択波長が時間的に連続して変化する。ここでは、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5とする。その結果、人間の目で積算された光の波長幅はλ1〜λ5の範囲、例えば数nmに広がる。
【0029】
さらに、複数の光に着目すると、音響波は光に比べて伝搬速度がはるかに遅いため、ある時刻において音響光学媒体7の音響波の伝播方向に沿う場所によって音響周波数が異なり、複数の光(本実施形態では5本の光)は音響波の伝播方向に沿って所定の間隔で入射する。したがって、複数の光の各々の入射位置における音響周波数が異なるため、図1の左端の発光素子6からの光が波長λ1、左から2番目の発光素子6からの光が波長λ2、左から3番目の発光素子6からの光が波長λ3、左から4番目の発光素子6からの光が波長λ4、右端の発光素子6からの光が波長λ5というように、選択波長が空間的にも連続して変化する。その結果、複数の光全体で見ると、出力される光の波長幅はλ1〜λ5の範囲となる。
【0030】
本実施形態の光源装置1によれば、可変波長選択素子4における一つの光について波長幅が広がる時間的作用と、複数の光全体で波長幅が広がる空間的作用の双方により、結果として出力レーザ光のスペクトル幅が広がる。これにより、図2(b)に示したように、全ての波長域で光強度が略等しい、いわゆるトップハット形状のスペクトル分布が得られる。これにより、出力レーザ光のコヒーレンス長が短くなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0031】
また、音響光学媒体7を伝播する音響波の速度は音響光学媒体7の材料に依存する。したがって、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等の中からより音速の遅い材料を選択することによって、空間的に広げる波長幅をより拡大することも可能である。
【0032】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図3、図4を用いて説明する。
本実施形態の光源装置の基本構成は第1実施形態と共通であり、可変波長選択素子の構成が異なるのみである。
図3は、本実施形態の光源装置の平面図である。図4は、可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図3において、第1実施形態の図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施形態の光源装置11は、図3に示すように、可変波長選択素子4の音響光学媒体7が複数個(図3では3個)に分割され、分割された各音響光学媒体7の各々に対して音響波発生素子8(音響波生成手段)と吸収材9とが設けられている。光源2から射出された複数の光L1のうちの一部の光(図3では2本の光)が、各音響光学媒体7にそれぞれ振り分けられて入射される。また、各音響波発生素子8に個別の信号源10が接続されており、各音響波発生素子8に対して独立した駆動信号が供給されるようになっている。ここでは、図3における右端の可変波長選択素子を第1可変波長選択素子4a(第1AOTF)、中央の可変波長選択素子を第2可変波長選択素子4b(第2AOTF)、左端の可変波長選択素子を第3可変波長選択素子4c(第3AOTF)、とする。
【0034】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、図4に示すように、各可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数が直線的な増加と直線的な減少を交互に繰り返す駆動信号を用いる。しかしながら、第1実施形態と異なる点は、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に対して、音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給するという点である。すなわち、例えば第1音響波発生素子4aにはf3〜f4(例えば300〜400MHz)の音響周波数、第2音響波発生素子4bにはf2〜f3(例えば200〜300MHz)の音響周波数、第3音響波発生素子4cにはf1〜f2(例えば100〜200MHz)の音響周波数を有する駆動信号をそれぞれ供給する。
【0035】
本実施形態の光源装置11では、各可変波長選択素子4a,4b,4cの中の複数の光(2本の光)について選択波長域が空間的かつ時間的に変化することに加えて、全ての可変波長選択素子4a,4b,4cの複数の光(6本の光)についても選択波長域が空間的かつ時間的に変化する。具体的には、第1実施形態と同様、可変波長選択素子4a,4b,4cから射出される光の波長の大小関係はλ1<λ2<λ3<λ4<λ5<λ6となるとしても、λ1とλ2の選択波長の差、λ3とλ4の選択波長の差、λ5とλ6の選択波長の差に対し、λ1とλ2の組、λ3とλ4の組、λ5とλ6の組の間での選択波長の差の方が大きくなる。すなわち、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号が供給されることによって、出力レーザ光のスペクトル幅を第1実施形態に比べてさらに広げることができる。
【0036】
また、音響光学媒体7内を伝播する音響波の振幅を変化させることで出力レーザ光の強度を変調しても良い。この場合、例えば最終的に光が射出される共振ミラー3の出力窓の近傍に光強度センサを配置して散乱光を受光し、波長域が異なる光ごとに強度情報を取得する。そして、強度情報に基づいて全ての波長域で光強度が等しくなるように、各可変波長選択素子4a,4b,4cに供給する駆動信号の制御を行う。これにより、トップハット形状のスペクトル分布を確実に得ることができる。
【0037】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図5、図6を用いて説明する。
本実施形態の光源装置の基本構成は第1実施形態と共通であり、光源と可変波長選択素子との間に波長変換素子を装入した点が異なるのみである。
図5は、本実施形態の光源装置の平面図である。図6は、可変波長選択素子および圧電素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図5において、第1実施形態の図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態の光源装置21は、図5に示すように、光源2、共振ミラー3、可変波長選択素子4に加えて、光源2と可変波長選択素子4との間の光路上に波長変換素子12が設けられている。光源2は、発光素子6として例えば波長1060nmの赤外光を射出する複数の赤外レーザ素子を備えている。波長変換素子12は、複数の発光素子6から射出された複数の光L1を当該光の波長域とは異なる波長域の光L2に変換するものである。本実施形態においては、波長変換素子12に、非線形光学結晶13であるPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)が用いられており、入射光を略半分の波長の光に変換し、2次高調波を発生させるSHGとして機能する。すなわち、波長変換素子12を透過する赤外レーザ光は、波長1060nmの略半分である波長530nmの緑色のレーザ光に変換される。
【0039】
波長変換素子12には、非線形光学結晶13に入射する複数の光L1の光路と直交する方向の一端(図5における左端)に圧電素子14(歪み付与手段)が設けられ、他端(図5における右端)に吸収材15が設けられている。圧電素子14には信号源16が接続され、信号源16から時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号が供給される。圧電素子14に駆動信号を供給することにより、波長変換素子12を構成する非線形光学結晶13内に大きさが時間的に連続して変化する歪みが付与される。また、吸収材15は、非線形光学結晶の歪みを吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。
【0040】
上記構成の光源装置21の動作について以下、説明する。
本実施形態の光源装置21も基本的な動作は第1実施形態と同様であるが、波長変換素子12に対しては、図6に示すように、信号源16から、時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号を供給する。ここでは、電圧値がV1からV2まで一定時間直線的に増加した後、V2からV1まで一定時間直線的に減少し、その後、一定周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。また、この駆動信号の電圧値の増減の周期は、可変波長選択素子4に供給する駆動信号の音響周波数の増減の周期と同期させる。
【0041】
圧電素子14に駆動信号を供給すると、波長変換素子12を構成する非線形光学結晶13に歪みが生じ、圧電素子14側から吸収材15側に向けて歪みが伝播する。これにより、波長変換素子12に対し、光路に直交する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与することができる。このとき、非線形光学結晶13の格子間隔が光路と直交する方向での場所によって変化する。したがって、波長変換素子12の変換波長域が、可変波長選択素子4の選択波長域と同様、空間的かつ時間的に変化する。さらに、圧電素子14への駆動信号の電圧値の変動周期、すなわち歪みの大きさの変動周期と、可変波長選択素子4が生成する音響波の音響周波数の変動周期とが同期しているため、波長変換素子12の変換波長域が可変波長選択素子4の選択波長域と同期して変化する。
【0042】
本実施形態の光源装置21においても、出力レーザ光のスペクトル幅が広がることでコヒーレンス長が短くなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる、といった第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、緑色レーザ光のように直接発光する発光素子が入手しにくい場合でも、波長変換素子12を用いることで所望の波長域の光を得ることができる。さらに、圧電素子14への駆動信号と音響波発生素子8への駆動信号とを同期させたことにより、波長変換素子12における変換波長域と可変波長選択素子4における選択波長域とを合わせ込むことができ、光の利用効率を高めることができる。
【0043】
[第4実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図7、図8を用いて説明する。
本実施形態の光源装置は第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものであり、波長変換素子を備えた光源装置において可変波長選択素子を分割したものである。
図7は、本実施形態の光源装置の平面図である。図8は、可変波長選択素子および圧電素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図7において、第2実施形態の図3、第3実施形態の図5と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態の光源装置31は、図7に示すように、第1可変波長選択素子4a、第2可変波長選択素子4b、第3可変波長選択素子4cの3つの可変波長選択素子を備えており、これら可変波長選択素子4a,4b,4cと光源2との間に波長変換素子12が配置されている。波長変換素子12には圧電素子14が備えられ、圧電素子14によって3つの可変波長選択素子4a,4b,4cの選択波長域に対応した歪みが波長変換素子12に付与される。もしくは、図7の構成に代えて、3つの可変波長選択素子4a,4b,4cの選択波長域に対して波長変換素子12の変換波長域をより精密に合わせ込むため、波長変換素子12に複数(例えば3つ)の圧電素子14を設けても良いし、波長変換素子12を複数(例えば3つ)に分割しても良い。
【0045】
本実施形態の場合も、図8に示すように、第2実施形態と同様、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給する。また、各可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に供給する駆動信号同士を同期させることに加えて、各可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に供給する駆動信号と波長変換素子12の圧電素子14に供給する駆動信号を同期させる。
【0046】
本実施形態の光源装置31においても、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給することで出力レーザ光のスペクトル幅をより広げることができるという第2実施形態の効果と、波長変換素子12での変換波長域と可変波長選択素子4a,4b,4cでの選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高められるという第3実施形態の効果の双方を得ることができる。また、第2実施形態と同様、音響波の振幅を変化させて出力レーザ光の強度を変調し、トップハット形状のスペクトル分布を確実に得ることができる。
【0047】
また、第1〜第4実施形態では、音響周波数が時間的に連続して変化する駆動信号の例として、音響周波数が直線的に増加、減少する駆動信号の例を挙げたが、このような駆動信号の他、図9に示すように、音響周波数が曲線的に増加、減少する駆動信号を用いても良い。あるいは、図10に示すように、音響周波数が振幅、周期ともにランダムに増加、減少する駆動信号を用いても良い。
【0048】
[画像表示装置]
次に、本発明の画像表示装置に係る実施形態について、図11を参照して説明する。
本実施形態では、上記第1〜第4実施形態の光源装置を備えた画像表示装置の一例について説明する。
【0049】
画像表示装置100において、例えば赤色光を射出する赤色レーザ光源装置101Rとして、上記第1、第2実施形態の光源装置を用い、緑色光を射出する緑色レーザ光源装置101G、青色光を射出する青色レーザ光源装置101Bとして、波長変換素子を備えた上記第3、第4実施形態の光源装置を用いる。
【0050】
画像表示装置100は、レーザ光源101R,101G,101Bから射出されたレーザ光をそれぞれ変調する透過型液晶ライトバルブ(光変調装置)104R,104G,104Bと、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bから射出された光を合成するクロスダイクロイックプリズム106と、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって形成された像を拡大してスクリーン110に投射する投射レンズ(投射装置)107と、を備えている。
【0051】
さらに、画像表示装置100は、レーザ光源101R,101G,101Bから射出されたレーザ光の照度分布を均一化させるため、各レーザ光源101R,101G,101Bの後段に、均一化光学系102R,102G,102Bを設けており、照度分布が均一化された光によって液晶ライトバルブ104R,104G,104Bを照明している。均一化光学系102R,102G、102Bは、例えばホログラム102aとフィールドレンズ102bによって構成されている。
【0052】
各液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム106に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は投写光学系である投射レンズ107によりスクリーン110上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0053】
上述した本実施形態の画像表示装置100は、赤色レーザ光源装置101R、緑色レーザ光源装置101G、青色レーザ光源装置101Bから射出される光が、コヒーレンスが低減された光となっている。そのため、投射レンズ107によって投射される光は、スペックルノイズを抑えられたものとなる。したがって、スクリーン110に鮮明な画像を表示することができる。
【0054】
なお、本実施形態の画像表示装置において、各レーザ光源装置101R,101G,101Bに異なる実施形態の光源装置を採用することも可能であるし、同じ実施形態の光学装置を採用することも可能である。また、赤色レーザ光源装置101Rや青色レーザ光源装置101Gも、緑色レーザ光源装置101Bと同様、赤外レーザ光を波長変換素子により可視光に変換する構成であっても良い。
【0055】
また、光変調装置として透過型液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いても良いし、反射型のライトバルブを用いても良い。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更してよい。
【0056】
また、第1〜第4実施形態の光源装置は、走査型の画像表示装置に適用することもできる。このような画像表示装置の例を図12に示す。図12に示した画像表示装置200は、例えば第1実施形態の光源装置1と、光源装置1から射出された光をスクリーン210に向かって走査するMEMSミラー(走査手段)202と、光源装置1から射出された光をMEMSミラー202に集光させる集光レンズ203とを備えている。光源装置1から射出された光は、MEMSミラーを動かすことによって、スクリーン210上で横方向、縦方向に走査される。カラーの画像を表示する場合は、光源2を構成する複数の発光素子を、赤、緑、青のピーク波長を持つ発光素子の組み合わせによって構成すれば良い。
【0057】
[モニタ装置]
次に、第1〜第4実施形態に係る光源装置を備えたモニタ装置300の構成例について説明する。
図13は、モニタ装置の概略を示す模式図である。モニタ装置300は、装置本体310と、光伝送部320とを備える。装置本体310は、例えば第3実施形態の光源装置21を備えている。
【0058】
光伝送部320は、光を送る側と受ける側の2本のライトガイド321,322を備えている。各ライトガイド321,322は、多数本の光ファイバを束ねたもので、レーザ光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド321の入射側にはレーザ光源装置10が設けられ、その出射側には拡散板323が設けられている。レーザ光源装置40から出射したレーザ光は、ライトガイド321を伝って光伝送部320の先端に設けられた拡散板323に送られ、拡散板323により拡散されて被写体を照射する。
【0059】
光伝送部320の先端には、結像レンズ324が設けられており、被写体からの反射光を結像レンズ324で受けることができる。その受けた反射光は、受け側のライトガイド322を通して、装置本体310内に設けられた撮像手段としてのカメラ311に送られる。この結果、レーザ光源装置40により出射したレーザ光により被写体を照射したことで得られる反射光に基づく画像をカメラ311で撮像することができる。
【0060】
以上のように構成されたモニタ装置300によれば、光源装置40はスペックルノイズが抑えられた光を射出するため、カメラ311により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記第3、第4実施形態においては波長変換素子に歪み付与手段が備えられた例を挙げたが、この構成に代えて、波長変換素子に複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が備えられた構成を用いることもできる。具体的には、温度分布付与手段として、非線形光学結晶の一面にペルチェ素子や電熱線からなるヒータ等を配置すればよい。ペルチェ素子やヒータに供給する電力を調整することで波長変換素子の温度分布を制御することができる。より精密に温度制御を行うためには、波長変換素子に複数の温度センサを配置しても良い。温度センサの検出値を温度制御部にフィードバックして制御を行うことができる。また、波長変換素子を、光源と可変波長選択素子との間に配置したが、可変波長選択素子と共振ミラーとの間に配置しても良い。また、上記実施形態では、外部共振器外に光を取り出す手段として、共振ミラーから一部の光を取り出す手段を採用したが、この手段に代えて、外部共振器内、例えば光源と波長変換素子との間の光路上に可視光を反射し、赤外光を透過するダイクロイックミラーを光路と90°以外の角度をなすように傾けて装入し、共振している光のうちの可視光成分のみを外部に取り出すようにしても良い。
その他、各実施形態において各構成要素の寸法、数、配置等の具体的な記述については適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態の光源装置の平面図である。
【図2】図2(a)は本光源装置の可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性と選択波長の関係を示す図、図2(b)は全体のスペクトル形状を示す図、である。
【図3】本発明の第2実施形態の光源装置の平面図である。
【図4】本光源装置の可変波長選択素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態の光源装置の平面図である。
【図6】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態の光源装置の平面図である。
【図8】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図9】可変波長選択素子の駆動信号の他の特性例を示す図である。
【図10】可変波長選択素子の駆動信号のさらに他の特性例を示す図である。
【図11】本発明の画像表示装置の一例を示す図である。
【図12】本発明の画像表示装置の他の例を示す図である。
【図13】本発明のモニタ装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1,11,21,31…光源装置、2…光源、3…共振ミラー、4…可変波長選択素子、6…発光素子(発光部)、7…音響光学媒体、8…音響波発生素子(音響波生成手段)、9…吸収材、12…波長変換素子、14…圧電素子(歪み付与手段)、100,200…画像表示装置、104R,104G,104B…液晶ライトバルブ(光変調装置)、107…投射レンズ(投射装置)、202…MEMSミラー(走査手段)、300…モニタ装置、311…カメラ(撮像部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像表示装置およびモニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタにおいては、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的であった。ところが、この種の放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現性範囲が狭い、ランプから放射される紫外線が液晶ライトバルブを劣化させる、等の課題がある。そこで、放電ランプの代わりに、単色光を照射するレーザ光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている。しかしながら、レーザ光源は、上記の課題が解決できる反面、射出光の干渉性が高いという欠点を持っている。これにより、レーザ光が投射される被投射面において干渉縞がスペックルノイズとして現れ、画像の視認性が劣化する。そこで、鮮明な画像を表示させるためには、スペックルノイズの対策が必要となる。
【0003】
スペックルノイズは、レーザ光の可干渉性により生じる現象である。よって、スペックルノイズを低減するには、レーザ光のコヒーレンス長を短くする対策が有効である。コヒーレンス長はレーザ光の出力スペクトル幅に概ね反比例する関係を持っている。そのため、スペクトル幅を広くすることによってコヒーレンス長を短くし、スペックルノイズを低減することができる。具体的には、複数の発光素子を2次元に配列したアレイ状光源において、各発光素子の出力波長をずらすことで全体のスペクトル幅を広げ、コヒーレンス長を短くしたレーザ光源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2004−503923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光の高出力化の手法として、発光素子の外部に共振ミラーを備えた外部共振器型のレーザ光源が用いられることがある。外部共振器型のレーザ光源の場合、レーザ発振を高効率で生じさせるためには共振ミラーの対応波長幅を狭くする必要がある。したがって、例えば特許文献1のアレイ状光源を外部共振器型レーザ光源に適用した場合、アレイ状光源でのスペクトル幅を広げたとしても、共振ミラーからレーザ光として出力される光は結果的に狭帯域となってしまい、スペックルノイズの低減効果が得られない。一方、出力される光の波長幅を広げるために共振ミラーの対応波長幅を広げたとすると、レーザ共振が困難となり、共振ミラーとしての役目を果たさなくなる。そのため、共振ミラーの対応波長幅を単純に広げることはできない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、外部共振器型のレーザ光源を前提として、出力レーザ光のコヒーレンス長を短くすることでスペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を提供することを目的とする。また、上記の光源装置を備え、画質に優れた画像表示装置およびモニタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の光源装置は、複数の発光部を有する光源と、前記複数の発光部から射出された複数の光を前記光源との間で共振させる共振ミラーと、前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に設けられ、前記複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体と音響波を生成する音響波生成手段とを含む可変波長選択素子と、を備え、前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより前記複数の光の各々の前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする。
【0007】
本発明の光源装置においては、光源と共振ミラーとにより外部共振器構造が構成され、光源と共振ミラーの間を光が往復する際に光が増幅されてレーザ発振が生じる。ここで、光源と共振ミラーとの間の光路上に可変波長選択素子が設けられているため、複数の発光部から射出された複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光が可変波長選択素子の音響光学媒体を選択的に透過する。このとき、可変波長選択素子を構成する音響光学媒体に対し、音響波生成手段を用いて複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させる。すると、音響波は光に比べて伝搬速度がはるかに遅いため、音響光学媒体における複数の光の入射位置で音響波(縦波)の到達時刻にずれが生じ、各々の選択波長域が空間的に変化する。このため、ある時刻で複数の光に着目したときに選択波長域がそれぞれ異なり、複数の光全体として波長幅が広がる。それと同時に、複数の光の各々の選択波長域が時間的にも変化するため、一つの光に着目したときに選択波長域が目の積算時間内で時間をおって変化し、擬似的に波長域が広がる。この空間的作用、時間的作用の双方により、出力レーザ光のスペクトル幅が広がり、コヒーレンス長が短くなる。これにより、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0008】
本発明の光源装置において、前記音響波生成手段として、前記音響光学媒体の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に前記音響波を発生する音響波発生素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、可変波長選択素子の音響波発生素子が設けられた側の一端から他端に向けて音響波を伝播させることを簡易な装置構成で容易に実現できる。
【0009】
本発明の光源装置において、前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成する構成が採用できる。
一般に音響光学媒体の選択波長域は音響周波数に依存するため、この構成によれば、音響波の音響周波数が時間的に連続して変化することにより選択波長域が広がり、トップハット形状のスペクトル分布を得ることができる。
【0010】
本発明の光源装置において、前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、分割された音響光学媒体毎に音響波生成手段が設けられているため、可変波長選択素子の選択波長域を空間的に変化させる際の自由度が高くなり、波長幅がより広い所望のスペクトル分布が得やすくなる。
【0011】
本発明の光源装置において、前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に、前記複数の発光部から射出された複数の光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換する波長変換素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、所望の波長域の光が直接得られる光源が入手し難かったとしても、波長変換素子によって光源から射出された光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換し、所望の波長域の光を得ることができる。例えば、緑色レーザ光を得たい場合に、赤外レーザ光源からの赤外レーザ光を波長変換素子によって波長変換し、緑色レーザ光を得ることができる。
【0012】
本発明の光源装置において、前記波長変換素子に、当該波長変換素子が変換する変換波長域を変化させる変換波長変化手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0013】
本発明の光源装置において、前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与する歪み付与手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子に光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みが付与された場合、波長変換素子を構成する結晶の格子間隔が光路と交差する方向の場所によって変化する。これにより、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0014】
本発明の光源装置において、前記歪み付与手段として、前記波長変換素子の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に圧電素子が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子の圧電素子が設けられた側で大きい歪みが付与され、その反対側で小さい歪みが付与されるというように、波長変換素子の一端側から他端側に向けて大きさが異なる歪みを付与する構成を簡易な装置構成で容易に実現できる。
【0015】
本発明の光源装置において、前記圧電素子は、大きさが時間的に連続して変化する歪みを生成する構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子内で歪みが時間的に連続して変化することにより変換波長域が広がり、可変波長選択素子のスペクトル分布に合わせることができる。
【0016】
本発明の光源装置において、前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記圧電素子が生成する歪みの変化と前記音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期している構成が採用できる。
この構成によれば、圧電素子が生成する歪みと音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期しているため、波長変換素子の変換波長域と可変波長選択素子の選択波長域とを十分に合わせ込むことができ、光の利用効率を確実に高めることができる。
【0017】
本発明の光源装置において、前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が設けられた構成が採用できる。
この構成によれば、波長変換素子に光路と交差する方向に沿って温度分布が付与されるので、波長変換素子を構成する結晶の格子間隔が光路と交差する方向の場所によって変化する。これにより、波長変換素子における変換波長域を変えることができ、可変波長選択素子における選択波長域の変化に合わせ込むことができる。波長変換素子における変換波長域と可変波長選択素子における選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高めることができる。
【0018】
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出された光はコヒーレンス長が短くなっており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0019】
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置から射出されたレーザ光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置から射出された光はコヒーレンス長が短くなっており、被投射面に照射される画像はスペックルノイズが抑えられたものとなる。したがって、輝度ムラがなく良質な画像を提供することができる。
【0020】
本発明のモニタ装置は、上記本発明の光源装置と、前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とする。
本発明のモニタ装置は、上記本発明の光源装置を備えているので、光源装置はコヒーレンスが短い光を射出し、輝度むらのない明るい光により被写体が照射される。したがって、撮像手段により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図1、図2を用いて説明する。
本実施形態の光源装置は、外部共振器型のレーザ光源装置である。
図1は、本実施形態の光源装置の平面図である。図2は、本光源装置から得られるレーザ光のスペクトル分布を説明するための図であり、図2(a)は可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性と選択波長の関係を示す図、図2(b)は全体のスペクトル形状を示す図、である。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素ごとに寸法の比率や縮尺を異ならせてある。
【0022】
本実施形態の光源装置1は、図1に示すように、光源2と、共振ミラー3と、可変波長選択素子4と、を備えている。光源2は、基板5上にアレイ状に配列された複数の発光素子6を備えている。図1では5個のみ図示するが、発光素子6の数は5個に限定されるものではなく、1次元のみならず、紙面の奥行き方向も含む2次元に配列されていても良い。各発光素子6は、周知の半導体レーザの構成を有しており、図示しない活性層、電極等を含んでいる。また、発光素子6の実質的な発光部となる活性層の基板5側にはDBR層等の反射層が設けられており、この反射層と後述する共振ミラー3との間で外部共振器構造を構成する。各発光素子6から射出される光のピーク波長は概ね一致しているが、数nm程度のバラツキを有している。このバラツキは製造誤差であっても良いし、意図的にピーク波長を異ならせた発光素子6を準備しても良い。
【0023】
共振ミラー3は、入射した光のうち、所定の反射波長域の光の一部(例えば98〜99%程度)を選択的に発光素子6に向けて反射させる一方、残りの光(例えば1〜2%程度)を透過させる。所定の反射波長域は、後述する可変波長選択素子4の選択波長域と略一致している。共振ミラー3としては、例えば周期格子を有するホログラムのような光学素子を用いても良いし、誘電体多層膜を備えた波長選択ミラーを用いても良い。発光素子6から射出された基本波長の光は、発光素子6と共振ミラー3との間を往復し、増幅された後、レーザ光として共振ミラーから射出される。共振ミラー3はある程度広い波長域の光を透過させるが、そのうちの反射波長域の光だけが増幅されている。増幅された光の強度は他の波長域の光の強度と比べて著しく高いため、共振ミラー3を透過した光は、略単一波長のレーザ光とみなすことができる。共振ミラー3は、所定の反射波長域の光の多くを反射するので、その残りの光を出力光として利用することになる。また、詳しくは後述するが、共振ミラー3は光源2から射出された複数の光の光路に対して垂直ではなく、傾いて配置されている。なお、ここでは特定の反射波長域の光を選択的に反射させる機能を有する共振ミラー3を用いたが、この共振ミラー3に代えて、波長選択性を持たない単なるハーフミラーを用いても良い。
【0024】
可変波長選択素子4は、いわゆる音響光学チューナブルフィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter, 以下、AOTFと略記する)と呼ばれるものであり、音響光学媒体7と、音響波発生素子8(音響波生成手段)と、吸収材9と、を備えている。音響光学媒体7は、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等の内部に音響波が伝播される媒体となる圧電体結晶である。音響光学媒体7には、音響光学媒体7に入射する複数の光L1の光路と直交する方向の一端(図1における左端)に音響波発生素子8が設けられ、他端(図1における右端)に吸収材9が設けられている。本実施形態においては、音響波発生素子8として圧電素子が用いられる。音響波発生素子8には信号源10が接続され、信号源10から、後述する時間的に連続して変化する音響周波数を発生させる駆動信号が供給される。また、吸収材9は、音響波を吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。なお、本実施形態では音響波発生素子8として圧電素子を用いたが、この構成に代えて、音響光学媒体7の一端に一対の櫛歯電極を設け、櫛歯電極に電気信号を与えることで音響波を発生させるものを用いても良い。
【0025】
上記構成の光源装置1の動作について以下、説明する。
光源2の各発光素子6に電力を供給し、複数の発光素子6から複数の光L1を射出させると、複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光L2が可変波長選択素子4を透過する。可変波長選択素子4を透過した複数の光の大部分は、共振ミラー3によって発光素子6に向けて反射して反射光L3となった後、反射光L3が可変波長選択素子4を透過し、その透過光L4が発光素子6の反射層によって共振ミラー3に向けて再度反射し、このような経路を辿って反射を繰り返す。このようにして、複数の光L1は発光素子6と共振ミラー3との間を往復する間に増幅され、レーザ発振が生じる。
【0026】
これと同時に、可変波長選択素子4の音響波発生素子8に対して、電圧値が時間的に連続して変化する駆動信号を供給することにより、音響波の周波数(以下、音響周波数と称する)が時間的に連続して変化する音響波が発生する。これにより、音響光学媒体7の内部に音響波(縦波)が発生し、音響波が音響波発生素子8側から吸収材9側に向けて進行する。このとき、音響波は縦波として音響光学媒体7の内部を伝播するため、縦波の疎密によって音響光学媒体7が擬似的な回折格子として機能し、0次回折光、±1次回折光、…が発生する。
【0027】
可変波長選択素子4の選択波長は音響周波数に依存し、一般的には音響周波数が高くなる程、選択波長が大きくなる傾向を示すが、このような傾向を示すのは±1次回折光のみである。可変波長選択素子4から射出される±1次回折光(ここでは+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が、図1中の光L2である)の光軸は、可変波長選択素子4への入射光L1の光軸に対して2〜3°傾く。したがって、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が垂直に入射するように、共振ミラー3を可変波長選択素子4への入射光L1の光軸に垂直な方向に対して2〜3°傾けて配置し、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方が共振ミラー3に垂直に入射するようにする。これにより、可変波長選択素子4から射出される回折光のうち、+1次回折光、−1次回折光のいずれか一方のみが共振する。共振ミラー3は可変波長選択素子4からの射出光L2の光軸に垂直な方向に配置することにより外部共振ミラーとして機能し、レーザ発振が可能となる。なお、偏向素子として用いるAOD等では音響周波数に応じて偏向角が変化するが、AOTFでは±1次回折光の偏向角は音響周波数の影響を受けない。
【0028】
本実施形態の場合、図2(a)に示すように、音響周波数がf1(例えば100MHz)からf2(例えば200MHz)に一定時間直線的に増加した後、f2からf1に一定時間直線的に減少し、その後、数十m秒の周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。今、音響光学媒体7に入射する複数の光L1のうち、一つの光についてのみ着目すると、その光の入射位置において時間を追って音響周波数が変化することになる。したがって、音響周波数の変化に伴って、時刻t=1のときに波長λ1、時刻t=2のときに波長λ2、時刻t=3のときに波長λ3、時刻t=4のときに波長λ4、時刻t=5のときに波長λ5というように、選択波長が時間的に連続して変化する。ここでは、λ1<λ2<λ3<λ4<λ5とする。その結果、人間の目で積算された光の波長幅はλ1〜λ5の範囲、例えば数nmに広がる。
【0029】
さらに、複数の光に着目すると、音響波は光に比べて伝搬速度がはるかに遅いため、ある時刻において音響光学媒体7の音響波の伝播方向に沿う場所によって音響周波数が異なり、複数の光(本実施形態では5本の光)は音響波の伝播方向に沿って所定の間隔で入射する。したがって、複数の光の各々の入射位置における音響周波数が異なるため、図1の左端の発光素子6からの光が波長λ1、左から2番目の発光素子6からの光が波長λ2、左から3番目の発光素子6からの光が波長λ3、左から4番目の発光素子6からの光が波長λ4、右端の発光素子6からの光が波長λ5というように、選択波長が空間的にも連続して変化する。その結果、複数の光全体で見ると、出力される光の波長幅はλ1〜λ5の範囲となる。
【0030】
本実施形態の光源装置1によれば、可変波長選択素子4における一つの光について波長幅が広がる時間的作用と、複数の光全体で波長幅が広がる空間的作用の双方により、結果として出力レーザ光のスペクトル幅が広がる。これにより、図2(b)に示したように、全ての波長域で光強度が略等しい、いわゆるトップハット形状のスペクトル分布が得られる。これにより、出力レーザ光のコヒーレンス長が短くなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる。
【0031】
また、音響光学媒体7を伝播する音響波の速度は音響光学媒体7の材料に依存する。したがって、例えばLiNbO2、TeO2、PbMoO4等の中からより音速の遅い材料を選択することによって、空間的に広げる波長幅をより拡大することも可能である。
【0032】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図3、図4を用いて説明する。
本実施形態の光源装置の基本構成は第1実施形態と共通であり、可変波長選択素子の構成が異なるのみである。
図3は、本実施形態の光源装置の平面図である。図4は、可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図3において、第1実施形態の図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施形態の光源装置11は、図3に示すように、可変波長選択素子4の音響光学媒体7が複数個(図3では3個)に分割され、分割された各音響光学媒体7の各々に対して音響波発生素子8(音響波生成手段)と吸収材9とが設けられている。光源2から射出された複数の光L1のうちの一部の光(図3では2本の光)が、各音響光学媒体7にそれぞれ振り分けられて入射される。また、各音響波発生素子8に個別の信号源10が接続されており、各音響波発生素子8に対して独立した駆動信号が供給されるようになっている。ここでは、図3における右端の可変波長選択素子を第1可変波長選択素子4a(第1AOTF)、中央の可変波長選択素子を第2可変波長選択素子4b(第2AOTF)、左端の可変波長選択素子を第3可変波長選択素子4c(第3AOTF)、とする。
【0034】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、図4に示すように、各可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数が直線的な増加と直線的な減少を交互に繰り返す駆動信号を用いる。しかしながら、第1実施形態と異なる点は、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に対して、音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給するという点である。すなわち、例えば第1音響波発生素子4aにはf3〜f4(例えば300〜400MHz)の音響周波数、第2音響波発生素子4bにはf2〜f3(例えば200〜300MHz)の音響周波数、第3音響波発生素子4cにはf1〜f2(例えば100〜200MHz)の音響周波数を有する駆動信号をそれぞれ供給する。
【0035】
本実施形態の光源装置11では、各可変波長選択素子4a,4b,4cの中の複数の光(2本の光)について選択波長域が空間的かつ時間的に変化することに加えて、全ての可変波長選択素子4a,4b,4cの複数の光(6本の光)についても選択波長域が空間的かつ時間的に変化する。具体的には、第1実施形態と同様、可変波長選択素子4a,4b,4cから射出される光の波長の大小関係はλ1<λ2<λ3<λ4<λ5<λ6となるとしても、λ1とλ2の選択波長の差、λ3とλ4の選択波長の差、λ5とλ6の選択波長の差に対し、λ1とλ2の組、λ3とλ4の組、λ5とλ6の組の間での選択波長の差の方が大きくなる。すなわち、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号が供給されることによって、出力レーザ光のスペクトル幅を第1実施形態に比べてさらに広げることができる。
【0036】
また、音響光学媒体7内を伝播する音響波の振幅を変化させることで出力レーザ光の強度を変調しても良い。この場合、例えば最終的に光が射出される共振ミラー3の出力窓の近傍に光強度センサを配置して散乱光を受光し、波長域が異なる光ごとに強度情報を取得する。そして、強度情報に基づいて全ての波長域で光強度が等しくなるように、各可変波長選択素子4a,4b,4cに供給する駆動信号の制御を行う。これにより、トップハット形状のスペクトル分布を確実に得ることができる。
【0037】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図5、図6を用いて説明する。
本実施形態の光源装置の基本構成は第1実施形態と共通であり、光源と可変波長選択素子との間に波長変換素子を装入した点が異なるのみである。
図5は、本実施形態の光源装置の平面図である。図6は、可変波長選択素子および圧電素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図5において、第1実施形態の図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態の光源装置21は、図5に示すように、光源2、共振ミラー3、可変波長選択素子4に加えて、光源2と可変波長選択素子4との間の光路上に波長変換素子12が設けられている。光源2は、発光素子6として例えば波長1060nmの赤外光を射出する複数の赤外レーザ素子を備えている。波長変換素子12は、複数の発光素子6から射出された複数の光L1を当該光の波長域とは異なる波長域の光L2に変換するものである。本実施形態においては、波長変換素子12に、非線形光学結晶13であるPPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)が用いられており、入射光を略半分の波長の光に変換し、2次高調波を発生させるSHGとして機能する。すなわち、波長変換素子12を透過する赤外レーザ光は、波長1060nmの略半分である波長530nmの緑色のレーザ光に変換される。
【0039】
波長変換素子12には、非線形光学結晶13に入射する複数の光L1の光路と直交する方向の一端(図5における左端)に圧電素子14(歪み付与手段)が設けられ、他端(図5における右端)に吸収材15が設けられている。圧電素子14には信号源16が接続され、信号源16から時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号が供給される。圧電素子14に駆動信号を供給することにより、波長変換素子12を構成する非線形光学結晶13内に大きさが時間的に連続して変化する歪みが付与される。また、吸収材15は、非線形光学結晶の歪みを吸収し得るものであればいかなるものであっても良い。
【0040】
上記構成の光源装置21の動作について以下、説明する。
本実施形態の光源装置21も基本的な動作は第1実施形態と同様であるが、波長変換素子12に対しては、図6に示すように、信号源16から、時間的に連続して変化する電圧値を内包する駆動信号を供給する。ここでは、電圧値がV1からV2まで一定時間直線的に増加した後、V2からV1まで一定時間直線的に減少し、その後、一定周期でその増減を繰り返す駆動信号を用いる。また、この駆動信号の電圧値の増減の周期は、可変波長選択素子4に供給する駆動信号の音響周波数の増減の周期と同期させる。
【0041】
圧電素子14に駆動信号を供給すると、波長変換素子12を構成する非線形光学結晶13に歪みが生じ、圧電素子14側から吸収材15側に向けて歪みが伝播する。これにより、波長変換素子12に対し、光路に直交する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与することができる。このとき、非線形光学結晶13の格子間隔が光路と直交する方向での場所によって変化する。したがって、波長変換素子12の変換波長域が、可変波長選択素子4の選択波長域と同様、空間的かつ時間的に変化する。さらに、圧電素子14への駆動信号の電圧値の変動周期、すなわち歪みの大きさの変動周期と、可変波長選択素子4が生成する音響波の音響周波数の変動周期とが同期しているため、波長変換素子12の変換波長域が可変波長選択素子4の選択波長域と同期して変化する。
【0042】
本実施形態の光源装置21においても、出力レーザ光のスペクトル幅が広がることでコヒーレンス長が短くなり、スペックルノイズを確実に低減し得る光源装置を実現できる、といった第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、緑色レーザ光のように直接発光する発光素子が入手しにくい場合でも、波長変換素子12を用いることで所望の波長域の光を得ることができる。さらに、圧電素子14への駆動信号と音響波発生素子8への駆動信号とを同期させたことにより、波長変換素子12における変換波長域と可変波長選択素子4における選択波長域とを合わせ込むことができ、光の利用効率を高めることができる。
【0043】
[第4実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図7、図8を用いて説明する。
本実施形態の光源装置は第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものであり、波長変換素子を備えた光源装置において可変波長選択素子を分割したものである。
図7は、本実施形態の光源装置の平面図である。図8は、可変波長選択素子および圧電素子に供給する駆動信号の特性を示す図である。図7において、第2実施形態の図3、第3実施形態の図5と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態の光源装置31は、図7に示すように、第1可変波長選択素子4a、第2可変波長選択素子4b、第3可変波長選択素子4cの3つの可変波長選択素子を備えており、これら可変波長選択素子4a,4b,4cと光源2との間に波長変換素子12が配置されている。波長変換素子12には圧電素子14が備えられ、圧電素子14によって3つの可変波長選択素子4a,4b,4cの選択波長域に対応した歪みが波長変換素子12に付与される。もしくは、図7の構成に代えて、3つの可変波長選択素子4a,4b,4cの選択波長域に対して波長変換素子12の変換波長域をより精密に合わせ込むため、波長変換素子12に複数(例えば3つ)の圧電素子14を設けても良いし、波長変換素子12を複数(例えば3つ)に分割しても良い。
【0045】
本実施形態の場合も、図8に示すように、第2実施形態と同様、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給する。また、各可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に供給する駆動信号同士を同期させることに加えて、各可変波長選択素子4a,4b,4cの音響波発生素子8に供給する駆動信号と波長変換素子12の圧電素子14に供給する駆動信号を同期させる。
【0046】
本実施形態の光源装置31においても、複数の可変波長選択素子4a,4b,4cに対して音響周波数のレベルが異なる駆動信号を供給することで出力レーザ光のスペクトル幅をより広げることができるという第2実施形態の効果と、波長変換素子12での変換波長域と可変波長選択素子4a,4b,4cでの選択波長域とを合わせ込むことで光の利用効率を高められるという第3実施形態の効果の双方を得ることができる。また、第2実施形態と同様、音響波の振幅を変化させて出力レーザ光の強度を変調し、トップハット形状のスペクトル分布を確実に得ることができる。
【0047】
また、第1〜第4実施形態では、音響周波数が時間的に連続して変化する駆動信号の例として、音響周波数が直線的に増加、減少する駆動信号の例を挙げたが、このような駆動信号の他、図9に示すように、音響周波数が曲線的に増加、減少する駆動信号を用いても良い。あるいは、図10に示すように、音響周波数が振幅、周期ともにランダムに増加、減少する駆動信号を用いても良い。
【0048】
[画像表示装置]
次に、本発明の画像表示装置に係る実施形態について、図11を参照して説明する。
本実施形態では、上記第1〜第4実施形態の光源装置を備えた画像表示装置の一例について説明する。
【0049】
画像表示装置100において、例えば赤色光を射出する赤色レーザ光源装置101Rとして、上記第1、第2実施形態の光源装置を用い、緑色光を射出する緑色レーザ光源装置101G、青色光を射出する青色レーザ光源装置101Bとして、波長変換素子を備えた上記第3、第4実施形態の光源装置を用いる。
【0050】
画像表示装置100は、レーザ光源101R,101G,101Bから射出されたレーザ光をそれぞれ変調する透過型液晶ライトバルブ(光変調装置)104R,104G,104Bと、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bから射出された光を合成するクロスダイクロイックプリズム106と、液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって形成された像を拡大してスクリーン110に投射する投射レンズ(投射装置)107と、を備えている。
【0051】
さらに、画像表示装置100は、レーザ光源101R,101G,101Bから射出されたレーザ光の照度分布を均一化させるため、各レーザ光源101R,101G,101Bの後段に、均一化光学系102R,102G,102Bを設けており、照度分布が均一化された光によって液晶ライトバルブ104R,104G,104Bを照明している。均一化光学系102R,102G、102Bは、例えばホログラム102aとフィールドレンズ102bによって構成されている。
【0052】
各液晶ライトバルブ104R,104G,104Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム106に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は投写光学系である投射レンズ107によりスクリーン110上に投写され、拡大された画像が表示される。
【0053】
上述した本実施形態の画像表示装置100は、赤色レーザ光源装置101R、緑色レーザ光源装置101G、青色レーザ光源装置101Bから射出される光が、コヒーレンスが低減された光となっている。そのため、投射レンズ107によって投射される光は、スペックルノイズを抑えられたものとなる。したがって、スクリーン110に鮮明な画像を表示することができる。
【0054】
なお、本実施形態の画像表示装置において、各レーザ光源装置101R,101G,101Bに異なる実施形態の光源装置を採用することも可能であるし、同じ実施形態の光学装置を採用することも可能である。また、赤色レーザ光源装置101Rや青色レーザ光源装置101Gも、緑色レーザ光源装置101Bと同様、赤外レーザ光を波長変換素子により可視光に変換する構成であっても良い。
【0055】
また、光変調装置として透過型液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いても良いし、反射型のライトバルブを用いても良い。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。投射光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更してよい。
【0056】
また、第1〜第4実施形態の光源装置は、走査型の画像表示装置に適用することもできる。このような画像表示装置の例を図12に示す。図12に示した画像表示装置200は、例えば第1実施形態の光源装置1と、光源装置1から射出された光をスクリーン210に向かって走査するMEMSミラー(走査手段)202と、光源装置1から射出された光をMEMSミラー202に集光させる集光レンズ203とを備えている。光源装置1から射出された光は、MEMSミラーを動かすことによって、スクリーン210上で横方向、縦方向に走査される。カラーの画像を表示する場合は、光源2を構成する複数の発光素子を、赤、緑、青のピーク波長を持つ発光素子の組み合わせによって構成すれば良い。
【0057】
[モニタ装置]
次に、第1〜第4実施形態に係る光源装置を備えたモニタ装置300の構成例について説明する。
図13は、モニタ装置の概略を示す模式図である。モニタ装置300は、装置本体310と、光伝送部320とを備える。装置本体310は、例えば第3実施形態の光源装置21を備えている。
【0058】
光伝送部320は、光を送る側と受ける側の2本のライトガイド321,322を備えている。各ライトガイド321,322は、多数本の光ファイバを束ねたもので、レーザ光を遠方に送ることができる。光を送る側のライトガイド321の入射側にはレーザ光源装置10が設けられ、その出射側には拡散板323が設けられている。レーザ光源装置40から出射したレーザ光は、ライトガイド321を伝って光伝送部320の先端に設けられた拡散板323に送られ、拡散板323により拡散されて被写体を照射する。
【0059】
光伝送部320の先端には、結像レンズ324が設けられており、被写体からの反射光を結像レンズ324で受けることができる。その受けた反射光は、受け側のライトガイド322を通して、装置本体310内に設けられた撮像手段としてのカメラ311に送られる。この結果、レーザ光源装置40により出射したレーザ光により被写体を照射したことで得られる反射光に基づく画像をカメラ311で撮像することができる。
【0060】
以上のように構成されたモニタ装置300によれば、光源装置40はスペックルノイズが抑えられた光を射出するため、カメラ311により被写体を鮮明に撮像することが可能となる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記第3、第4実施形態においては波長変換素子に歪み付与手段が備えられた例を挙げたが、この構成に代えて、波長変換素子に複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が備えられた構成を用いることもできる。具体的には、温度分布付与手段として、非線形光学結晶の一面にペルチェ素子や電熱線からなるヒータ等を配置すればよい。ペルチェ素子やヒータに供給する電力を調整することで波長変換素子の温度分布を制御することができる。より精密に温度制御を行うためには、波長変換素子に複数の温度センサを配置しても良い。温度センサの検出値を温度制御部にフィードバックして制御を行うことができる。また、波長変換素子を、光源と可変波長選択素子との間に配置したが、可変波長選択素子と共振ミラーとの間に配置しても良い。また、上記実施形態では、外部共振器外に光を取り出す手段として、共振ミラーから一部の光を取り出す手段を採用したが、この手段に代えて、外部共振器内、例えば光源と波長変換素子との間の光路上に可視光を反射し、赤外光を透過するダイクロイックミラーを光路と90°以外の角度をなすように傾けて装入し、共振している光のうちの可視光成分のみを外部に取り出すようにしても良い。
その他、各実施形態において各構成要素の寸法、数、配置等の具体的な記述については適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態の光源装置の平面図である。
【図2】図2(a)は本光源装置の可変波長選択素子に供給する駆動信号の特性と選択波長の関係を示す図、図2(b)は全体のスペクトル形状を示す図、である。
【図3】本発明の第2実施形態の光源装置の平面図である。
【図4】本光源装置の可変波長選択素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態の光源装置の平面図である。
【図6】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態の光源装置の平面図である。
【図8】本光源装置の可変波長選択素子と圧電素子の駆動信号の特性を示す図である。
【図9】可変波長選択素子の駆動信号の他の特性例を示す図である。
【図10】可変波長選択素子の駆動信号のさらに他の特性例を示す図である。
【図11】本発明の画像表示装置の一例を示す図である。
【図12】本発明の画像表示装置の他の例を示す図である。
【図13】本発明のモニタ装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1,11,21,31…光源装置、2…光源、3…共振ミラー、4…可変波長選択素子、6…発光素子(発光部)、7…音響光学媒体、8…音響波発生素子(音響波生成手段)、9…吸収材、12…波長変換素子、14…圧電素子(歪み付与手段)、100,200…画像表示装置、104R,104G,104B…液晶ライトバルブ(光変調装置)、107…投射レンズ(投射装置)、202…MEMSミラー(走査手段)、300…モニタ装置、311…カメラ(撮像部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部を有する光源と、
前記複数の発光部から射出された複数の光を前記光源との間で共振させる共振ミラーと、
前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に設けられ、前記複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体と音響波を生成する音響波生成手段とを含む可変波長選択素子と、を備え、
前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより前記複数の光の各々の前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記音響波生成手段として、前記音響光学媒体の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に前記音響波を発生する音響波発生素子が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に、前記複数の発光部から射出された複数の光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換する波長変換素子が設けられたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記波長変換素子に、当該波長変換素子が変換する変換波長域を変化させる変換波長変化手段が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与する歪み付与手段が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記歪み付与手段として、前記波長変換素子の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に圧電素子が設けられたことを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記圧電素子は、大きさが時間的に連続して変化する歪みを生成することを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記圧電素子が生成する歪みの変化と前記音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期していることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザ光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とするモニタ装置。
【請求項1】
複数の発光部を有する光源と、
前記複数の発光部から射出された複数の光を前記光源との間で共振させる共振ミラーと、
前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に設けられ、前記複数の光の全波長域のうち、所定の選択波長域の光を選択的に透過させる音響光学媒体と音響波を生成する音響波生成手段とを含む可変波長選択素子と、を備え、
前記音響波生成手段を用いて前記音響光学媒体内の前記複数の光の光路と交差する方向に音響波を伝播させることにより前記複数の光の各々の前記選択波長域を空間的かつ時間的に変化させることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記音響波生成手段として、前記音響光学媒体の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に前記音響波を発生する音響波発生素子が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記可変波長選択素子を構成する音響光学媒体が複数個に分割され、分割された各々の音響光学媒体に前記光がそれぞれ入射されるともに、前記各々の音響光学媒体毎に前記音響波生成手段が設けられたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光源と前記共振ミラーとの間の光路上に、前記複数の発光部から射出された複数の光を当該光の波長域とは異なる波長域の光に変換する波長変換素子が設けられたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記波長変換素子に、当該波長変換素子が変換する変換波長域を変化させる変換波長変化手段が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って大きさが異なる歪みを付与する歪み付与手段が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記歪み付与手段として、前記波長変換素子の前記複数の光の光路と交差する方向の一端に圧電素子が設けられたことを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記圧電素子は、大きさが時間的に連続して変化する歪みを生成することを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記音響波発生素子が、時間的に連続して変化する音響周波数を有する音響波を生成し、前記圧電素子が生成する歪みの変化と前記音響波発生素子が生成する音響波の音響周波数の変化とが同期していることを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記変換波長変化手段として、前記波長変換素子に、前記複数の光の光路と交差する方向に沿って温度分布を付与する温度分布付与手段が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により形成された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出されたレーザ光を被投射面上で走査する走査手段と、を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置により照明された被写体を撮像する撮像部と、を備えたことを特徴とするモニタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−27776(P2010−27776A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185927(P2008−185927)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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