説明

光路変換ミラーおよびそれを用いた光路変換装置ならびに光路変換ミラーの製法

【課題】光導波路の無駄をなくすことができる光路変換ミラーおよびそれを用いた光路変換装置ならびに光路変換ミラーの製法を提供する。
【解決手段】第1樹脂層1と第2樹脂層2との間に光反射面となる金属膜3が挟持されてなる光路変換ミラーMを、光導波路10の光軸上でその一端面10aの外側近傍に配置することにより、光路変換装置が構成されている。光導波路10の両端面10a,10bは、光導波路10の光軸に対して直角の状態で維持されており、傾斜面(マイクロミラー)に加工されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられる光路変換ミラーおよびそれを用いた光路変換装置ならびに光路変換ミラーの製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスに組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。また、上記光デバイスでは、例えば、図11に示すように、発光素子23からの光信号を、光導波路50を介して受光素子24に伝達させるために、光導波路50の端部において、光路を90度変換することが行われる場合がある。すなわち、光導波路50における光軸方向の一端面50aを、光導波路50の光軸に対して45度傾斜した傾斜面(マイクロミラー)に形成することにより、発光素子23からの光信号Lを、その傾斜面(マイクロミラー)で反射させて、光導波路50のコア層52に導き、光導波路50の光軸上でその他端面50bの外側近傍に配置された受光素子に伝達させることができるようになっている。なお、図11において、51はアンダークラッド層、53はオーバークラッド層である。
【0003】
上記傾斜面(マイクロミラー)の形成方法としては、ダイヤモンドブレードを用いたダイシングにより光導波路50の一端面50aを切断または切削加工する方法(例えば、特許文献1参照)、レーザにより切断等する方法等が採用されている。
【特許文献1】特開平10−300961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光導波路50を直接、ダイシング等により加工する場合、45度の角度や傾斜面の平面度等の精度が不充分であると、光路の90度変換が適正に行われず、光伝達に支障をきたす。このような場合、その光導波路50全体が不良品となり、その光導波路50を廃棄等しなければならず、材料コストが高くなる問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路の無駄をなくすことができる光路変換ミラーおよびそれを用いた光路変換装置ならびに光路変換ミラーの製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、入射光を反射により所定角度屈折して出射する金属膜が樹脂内部に形成され、その樹脂のうち少なくとも光が透過する部分が光透過性樹脂からなる光路変換ミラーを第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、基板と、この基板上に固定されている光導波路と、上記光路変換ミラーとを備え、上記光路変換ミラーにおける光入射部または光出射部の一方が、上記光導波路における光軸方向の少なくとも一端面に位置決めされ、その光路変換ミラーが位置する側の、上記光導波路の端面が、光導波路の光軸に対して直角の状態で維持されている光路変換装置を第2の要旨とする。
【0008】
さらに、本発明は、上記光路変換ミラーを作製する製法であって、剥離用板の表面に光透過性樹脂からなる第1樹脂層を形成する工程と、この第1樹脂層の表面に断面V字状の条溝を形成する工程と、この条溝の表面に金属膜を形成する工程と、この金属膜の表面に第2樹脂層を形成する工程と、上記剥離用板を第1樹脂層から剥離する工程と、上記第1樹脂層,金属膜および第2樹脂層からなる積層体を上記V字状の条溝の長手方向に沿って切断し、上記V字状を形成する金属膜の一面を光路変換ミラーにおける光反射面とする工程とを備えている光路変換ミラーの製法を第3の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明の光路変換ミラーは、光透過性樹脂等の樹脂および金属膜を用いて作製されるため、その作製に要するコストを安価にすることができる。このため、たとえ光路変換ミラーに不良品が発生したとしても、コストの上昇を抑制することができる。そして、本発明の光路変換装置は、本発明の光路変換ミラーを光導波路の一端面に位置決めすることにより、光路変換ができるようになっている。すなわち、光導波路の一端面から出射された光を、光路変換ミラーの光入射部から入射させた後、金属膜表面で反射させることにより、所定角度屈折させて光路変換ミラーの光出射から出射させることができる。または、逆に、光導波路の外部からの光を、光路変換ミラーの光入射部から入射させた後、金属膜表面で反射させることにより、所定角度屈折させて光路変換ミラーの光出射から出射させ、光導波路の一端面から光導波路内に導かせることができる。このように、本発明では、光路変換ミラーにより光路変換ができるようになっているため、光導波路を傾斜面(マイクロミラー)に加工する必要がなく、その加工の失敗等により光導波路を不良品にすることがない。したがって、光導波路を無駄にすることがなく、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光路変換ミラーは、光透過性樹脂等の樹脂の内部に金属膜を有するものであるため、安価に作製することができる。このため、たとえ光路変換ミラーに不良品が発生したとしても、コストの上昇を抑制することができる。しかも、光反射面となる金属膜の表面が光透過性樹脂で保護されるため、光反射性能を長期間にわたって維持することができる。
【0011】
また、光路変換ミラーが、光透過性樹脂からなる第1樹脂層と、光透過性樹脂または光不透過性樹脂からなる第2樹脂層とを備え、上記第2樹脂層が、その表面に平面とこの平面に対して所定角度の傾斜角をもつ傾斜面とを有し、上記金属膜が上記第2樹脂層の上記表面に形成され、この金属膜を介して上記第2樹脂層の表面に第1樹脂層が積層形成されている場合には、光路変換ミラーの作製がより簡単になり、より安価に作製することができる。さらに、上記第1樹脂層または第2樹脂層により、光路変換ミラーの外周面を平面に形成することができるため、その平面部分での固定により光路変換ミラーの固定を安定させることができ、しかも、チップマウンターでのピックアップを容易にすることができる。
【0012】
そして、本発明の光路変換装置は、本発明の光路変換ミラーを光導波路の端面に位置決めすることにより、光路変換ができるようになっている。また、光路変換ミラーが位置する側の、上記光導波路の端面は、光導波路の光軸に対して直角の状態で維持されており、傾斜面(マイクロミラー)に加工する必要がなく、その加工の失敗等により光導波路を不良品にすることがない。したがって、光導波路を無駄にすることがなく、コストを低減することができる。
【0013】
さらに、本発明の光路変換ミラーの製法は、第1樹脂層の表面に断面V字状の条溝を形成した後、この条溝の表面に金属膜を形成し、この金属膜の表面に第2樹脂層を形成することにより、上記V字状を形成する金属膜の一面を光反射面とする光路変換ミラーを安価に作製することができる。
【0014】
特に、条溝のV字状のなす角度を90度に設定し、かつ、そのV字状を形成する各面と第1樹脂層の表面における平面とのなす角度をそれぞれ45度に設定する場合には、90度の光路変換が容易な光路変換ミラーを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の光路変換ミラーの一実施の形態を示している。この光路変換ミラーMは、その斜視図を図1に、その側面図を図2に示すように、全体が直方体に形成され、第1樹脂層1と第2樹脂層2との間に金属膜3が挟持されて全体が一体となっている積層体から構成されている。
【0017】
より詳しく説明すると、上記第2樹脂層(図1では下側の層)2は、下面が平面2dに形成され、上面の一側部(図1では左側部)が下面と平行な平面2cに形成され、上面の他側部(図1では右側部)が断面逆V字状の傾斜面2a,2bからなる凸部に形成されている。また、上記金属膜3は、上記第2樹脂層2の上面全体に、その上面形状に沿って略均一厚みに形成されている。その金属膜3の表面(上面)は、光を反射する機能を有しており、この実施の形態では、金属膜3の表面(上面)において、2つの傾斜面3a,3bのうち、平面3c部分と反対側(図1では、右側)の傾斜面3aが光路変換のための光反射面になっている。さらに、上記第1樹脂層(図1では上側の層)1は、上記金属膜3の表面に形成されており、その形状は、その下面が金属膜3の表面形状(上記第2樹脂層2の上面形状)に対応した形状に形成され、上面が上記第2樹脂層2の下面と平行な平面1aに形成されている。この第1樹脂層1は、後で説明するように、光路となるため、光透過性樹脂から形成されている。
【0018】
また、上記光路変換ミラーMは、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板等の光デバイスにおいて、光導波路の一端面に位置決めされることにより、光路変換装置(図3参照)の一部をなす。このため、上記光路変換ミラーMの大きさは、光導波路の大きさ等に依存するが、通常、縦の長さ(光導波路の一端面に対向する辺の長さ)W(図1参照)が50〜5000μmの範囲、横の長さSが50〜500μmの範囲、高さHが50〜200μmの範囲に設定される。また、通常、上記第1樹脂層1の平面部分での厚みt1 (図2参照)は、50〜200μmの範囲内に設定され、第2樹脂層2の平面部分での厚みt2 は、10〜50μmの範囲内に設定され、第2樹脂層2の上面に形成される断面逆V字状の傾斜面2a,2bからなる凸部の高さhは、第2樹脂層2の下面から50〜150μmの範囲内に設定される。また、光路変換のための光反射面が形成される、第2樹脂層2の上面の傾斜面2aの傾斜角度(第2樹脂層2の上面の平面2c部分とのなす角度)θ(図2参照)は、光路変換の角度によって設定され、0度を上回り90度を下回る範囲内に設定されるが、通常35〜55度、好ましくは40〜50度の範囲に設定され、上記光路変換を90度にする場合には、上記傾斜角度θは45度に設定される。
【0019】
図3は、光デバイスにおける本発明の光路変換装置の一実施の形態を示している。この光路変換装置は、前記光デバイスにおいて、本発明の光路変換ミラーMを、光導波路10の一端面10aに位置決めしたものである。すなわち、上記光路変換装置は、基板21と、この基板21上に固定されている光導波路10と、上記光路変換ミラーMとを備えており、上記光路変換ミラーMは、金属膜3の表面(上面)の上記光反射面(図3では、2つの傾斜面3a,3bのうち右側の傾斜面3a)を、光導波路10の光軸上でその一端面(図3では左端面)10aの外側近傍に配置した状態で、基板21上に接着剤22により固定されている。例えば、図3に示すように、光路変換ミラーMの上方に発光素子23が配置されている場合には、第2樹脂層2の下面を基板21の表面に対向させ、上記光反射面となる金属膜3の傾斜面3aを斜め上方に向けた状態にして、上記光路変換ミラーMが基板21上に固定される。また、光導波路10の両端面10a,10bは、光導波路10の光軸に対して直角の状態で維持されており、傾斜面(マイクロミラー)に加工されていない。
【0020】
上記光路変換装置(図3参照)において、光路変換は、つぎのようにして行われる。すなわち、発光素子23からの光信号Lは、上記光路変換ミラーMの第1樹脂層1の上面(光入射部)から入射し、第1樹脂層1内を透過した後、金属膜3の光反射面(傾斜面3a)で反射し、光路変換ミラーMの第1樹脂層1の側面(光出射部)から出射する。このようにして、その出射した光信号Lを光導波路10の一端面10aから光導波路10のコア層12内に導き、光導波路10の光軸上でその他端面10bの外側近傍に配置されている受光素子24に伝達させる。また、上記発光素子23と受光素子24の位置を互いに入れ替え、光信号Lを上記と逆方向に伝達させてもよい(この場合、光路変換ミラーMにおける光入射部は第1樹脂層1の側面になり、光出射部は第1樹脂層1の上面になる)。なお、光伝搬効率の低下を抑制する観点から、金属膜3の光反射面(傾斜面3a)は、光導波路10における光軸方向の一端面10aに近づけることが好ましく、そのため、光路変換ミラーMの側面(光出射部または光入射部)と光導波路10の一端面10aとの隙間は、小さい程好ましく、より好ましくは両者が接していることである。なお、図3において、11はアンダークラッド層、13はオーバークラッド層である。
【0021】
このように、光路変換装置において、本発明の光路変換ミラーMを用いると、光導波路10を傾斜面(マイクロミラー)に加工する必要がなく、その加工の失敗等により光導波路10を不良品にすることがない。したがって、光導波路10を無駄にすることがなく、コストを低減することができる。
【0022】
しかも、本発明の光路変換ミラーMでは、光反射面となる金属膜3の上面が第1樹脂層1で保護され、金属膜3の下面も第2樹脂層2で保護されるため、酸化や劣化に対して耐久性があり、光反射性能を長期間にわたって維持することができる。特に、上記第1樹脂層1の上面を平面1aに形成すると、チップマウンターによるピックアップが容易となり、光路変換装置の生産性が向上する。また、上記第2樹脂層2が形成されていると、金属膜3が傾斜状に形成されていても、その第2樹脂層2の下面を平面2dにすることにより、安定して基板21に固定することができる。
【0023】
つぎに、上記第1樹脂層1,第2樹脂層2,金属膜3等の形成材料等について説明する。
【0024】
上記第1樹脂層1の形成材料である光透過性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等があげられる。また、第2樹脂層2の形成材料としても、上記光透過性樹脂が好ましいが、第2樹脂層2は、光路とならないため、その形成材料としては、光透過性樹脂でなくてもよく、例えば、ポリカーボネート,ポリ(メタ)アクリレート,ノルボルネン系ポリマー,フィラー充填エポキシ樹脂等があげられる。
【0025】
上記金属膜3の形成材料としては、銅,ニッケル,金,銀,アルミニウム等があげられる。
【0026】
光路変換ミラーMが固定される基板としては、石英基板,シリコン基板等があげられる。また、光路変換ミラーMを基板21上に接着する接着剤22としては、特に限定されないが、銀ペースト,光硬化性樹脂,熱硬化性樹脂等があげられる。また、その接着剤22からなる層の厚みは、特に限定されないが、通常、1〜20μmの範囲内に設定される。
【0027】
つぎに、上記光路変換ミラーMの製法の一実施の形態について説明する。
【0028】
まず、図4に示すように、ガラス板等からなる剥離用板P1 の表面に、第1樹脂層1の形成材料である光透過性樹脂を塗布した後、硬化させ第1樹脂層1を形成する。その硬化方法としては、光透過性樹脂の種類に応じて、乾燥,紫外線硬化,加熱硬化等があげられる。
【0029】
ついで、図5に示すように、上記第1樹脂層1の表面に断面V字状の条溝Gを複数本、所定のピッチで平行に形成する。この形成ピッチは、光路変換ミラーMの寸法にもよるが、通常、50〜5000μmの範囲内に設定される。また、上記条溝Gの形成は、所定の刃先角度を有する刃(ブレード)Bを用いてダイシングすることにより行われ、その刃先角度が上記条溝GのV字状のなす角度になる。
【0030】
つぎに、図6に示すように、上記条溝Gが形成された第1樹脂層1の表面に、スパッタリング,めっき等により金属膜3を形成する。なお、金属膜3が第1樹脂層1の表面に強固に固定されるように、スパッタリング等に先立って、第1樹脂層1の表面をプラズマ処理等することが好ましい。金属膜3の厚みは、100nm以上が好ましく、より好ましくは100〜150nmの範囲である。
【0031】
そして、図7に示すように、上記金属膜3の表面に、第2樹脂層2の形成材料を塗布した後、硬化させ第2樹脂層2を形成する。この硬化は、第2樹脂層2の表面を平面(図2では第2樹脂層2の下面の平面2d)にする観点から、上記塗布した形成材料(樹脂)の上からガラス板等の平板P2 で押さえた状態で行い、硬化後、その平板P2 を剥離することが好ましい。なお、上記硬化を紫外線等で行う場合は、上記平板P2 として、光透過性を有するガラス板を用いることが好ましい。また、通常、上記第2樹脂層2と平板(ガラス板等)P2 とは、接着力がかなり弱く、水に浸漬することにより、簡単に剥離するが、その剥離が容易になるよう、上記平板P2 は、表面が離型処理されたものを使用することが好ましい。
【0032】
ついで、図8に示すように、上記第2樹脂層2の表面を弱粘着性シートEに粘着させた後、上記剥離用板P1 を第1樹脂層1から剥離する。上記光透過性樹脂(第1樹脂層1)と剥離用板(ガラス板等)P1 とは、接着力がかなり弱く、水に浸漬することにより、簡単に剥離するが、その剥離が容易になるよう、上記剥離用板P1 は、表面が離型処理されたものを使用してもよい。なお、図8において、Fは上記弱粘着性シートEの外周部分を支持するリング状のフレームである。
【0033】
つぎに、図9に示すように(図9では、図8に図示したものを上下逆さまに図示している)、隣り合う上記条溝Gと条溝Gの間を、その条溝Gの長手方向に沿って、ダイシング等することにより、上記第1樹脂層1の表面から、金属膜3を経て、第2樹脂層2まで切断する(図9の破線C部分)。さらに、光路変換ミラーMを所定の寸法にするために、必要に応じて、上記条溝Gの長手方向と直角な方向にもダイシングし、上記第1樹脂層1の表面から、金属膜3を経て、第2樹脂層2まで切断する。これにより、弱粘着性シートに粘着した複数の光路変換ミラーMを得ることができる。
【0034】
このような光路変換ミラーMの製法は、材料として上記樹脂と金属とを用いるため、コストを安価にすることができる。このため、たとえ光路変換ミラーMに不良品が発生したとしても、コストの上昇を抑制することができる。
【0035】
そして、光路変換装置(図3参照)を作製する際には、上記のようにして得られた各光路変換ミラーMを、チップマウンターによりピックアップして上記弱粘着性シートEから剥離し、図3に示すように、光路変換装置を作製するための基板21上の所定位置に位置決め固定する。なお、この位置決めに先立って、基板21上の所定位置に光路変換ミラーMを固定するための接着剤22を塗布しておく。
【0036】
なお、光路変換ミラーMは、図1に示されるものに限定されるものではなく、例えば、図10(a)〜(c)に示すものでもよい。すなわち、図10(a)に示すものは、図2における断面逆V字状の傾斜面2a,2bからなる凸部が中央部分に位置するものである。また、図10(b)に示すものは、傾斜面2aを1面だけ形成したものである。さらに、図10(c)に示すものは、傾斜面2aを1面と、その傾斜面2aの上端縁に連続する平面2cとを形成したものである。
【0037】
また、図3に示す光路変換装置では、光導波路10の光軸上でその一端面10aの外側近傍にのみ光路変換ミラーMを配置したが、光導波路10の他端面10b側にも光路変換ミラーMを配置し、その他端面部分でも光路変換を行うようにしてもよい。また、図3に示す光路変換装置において、光路変換ミラーMを、図3において左右を逆にして固定し、反対側の傾斜面3bを光反射面としてもよい。
【0038】
また、光路変換ミラーMは、図4〜図9に示す製法(第1樹脂層1から、金属層3,第2樹脂層2の順に積層形成する製法)以外の製法でも作製することができる。例えば、第2樹脂層2を形成した後、その第2樹脂層2の表面に断面逆V字状の傾斜面2a,2bからなる凸部を形成し、その表面に金属膜3を形成し、さらに、その表面に第1樹脂層1を形成するようにしても、光路変換ミラーMを作製することができる。
【0039】
つぎに、実施例について説明する。
【実施例1】
【0040】
光路変換ミラーを下記のようにして作製した。
【0041】
石英基板〔5cm×5cm×500μm(厚み)〕上に、紫外線硬化型エポキシ樹脂〔エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)/セロキサイド 2021(ダイセル化学社製)/SP−170(旭電化工業社製)=50/50/4〕の溶液をスピンコートにより塗布した後、乾燥および露光(3J/cm2 )し、さらに加熱(150℃×30分間)することにより硬化させ、第1樹脂層(一定厚み60μm)を形成した。
【0042】
ついで、上記第1樹脂層の表面を、刃先角度が90度の刃を用いてダイシングし、深さ60μmの断面V字状の条溝を、ピッチ140μmで複数本形成した。このとき、上記V字状を形成する各面と第1樹脂層の表面における平面とのなす角度をそれぞれ45度に設定した。
【0043】
つぎに、上記条溝が形成された第1樹脂層の表面をプラズマ処理した後、スパッタリングにより、その第1樹脂層の表面に厚み0.1μmの銅の膜を形成した。
【0044】
そして、上記銅の膜の表面に、上記第1樹脂層と同じ紫外線硬化型エポキシ樹脂の溶液をスピンコートにより塗布した後、乾燥し、その上から、表面が離型処理されたガラス板で押さえた。その状態で、露光(3J/cm2 )し、さらに加熱(150℃×30分間)することにより硬化させ、第2樹脂層(平面部分での厚み20μm)を形成した。その後、上記ガラス板を剥離した。
【0045】
ついで、上記第2樹脂層の表面を弱粘着性シート(エレップホルダーUE−2000、日東電工社製)に粘着させた後、水に浸漬し、上記石英基板を第1樹脂層から剥離した。
【0046】
つぎに、上記条溝とこの条溝に連続する平面との境界線を、その条溝の長手方向に沿って、ダイシングすることにより、上記第1樹脂層の表面から、金属膜を経て、第2樹脂層まで切断した。さらに、上記条溝の長手方向と直角な方向にもダイシングし、上記第1樹脂層の表面から、金属膜を経て、第2樹脂層まで切断した。これにより、弱粘着性シートに粘着した複数の光路変換ミラーを得ることができた。各光路変換ミラーの大きさは、縦500μm、横140μm、高さ80μmであった。
【0047】
この得られた光路変換ミラーを1つピックアップし、その銅の膜の傾斜面部分に対して45度の入射角度でレーザ光を照射すると、そのレーザ光の光路が90度変換した。
【0048】
また、シリコン基板上に長さ3.5mmの光導波路が固定されているものを準備した。上記光導波路の光軸方向の両端面は、その光軸に対して直角な面に形成されており、その両端面におけるコア層(ポリイミド樹脂製)の寸法は、50μm×50μmとした。そして、シリコン基板上において、上記光導波路の光軸上でその一端面の外側近傍に、接着剤として銀ペーストを塗布した。そして、チップマウンターによりピックアップして上記弱粘着性シートから剥離した光路変換ミラーを、上記銀ペースト上に位置決めした後、加熱することにより固定した。このとき、光反射面となる銅の膜の傾斜面部分が斜め上方に向いた状態になるようにするとともに、その光反射面側を上記光導波路の光軸方向の一端面に向けた。
【0049】
そして、図3に示すように、光路変換ミラーMの上方に発光素子23を配置し、光導波路10の光軸上でその他端面10bの外側近傍に受光素子24を配置した光導波路デバイスを作製した。
【0050】
そして、上記発光素子23から波長850nmの光を発光させ、受光素子24に伝達させると、その光伝搬損失は9dBであり、光が良好に伝搬さていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の光路変換ミラーの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】上記光路変換ミラーを示す側面図である。
【図3】本発明の光路変換装置の一実施の形態を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の光路変換ミラーの製法の一実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図5】上記光路変換ミラーの製法を模式的に示す説明図である。
【図6】上記光路変換ミラーの製法を模式的に示す説明図である。
【図7】上記光路変換ミラーの製法を模式的に示す説明図である。
【図8】上記光路変換ミラーの製法を模式的に示す説明図である。
【図9】上記光路変換ミラーの製法を模式的に示す説明図である。
【図10】(a)〜(c)は上記光路変換ミラーの他の形態を示す側面図である。
【図11】従来の光路変換装置を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
M 光路変換ミラー
1 第1樹脂層
2 第2樹脂層
3 金属膜
10 光導波路
10a,10b 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射により所定角度屈折して出射する金属膜が樹脂内部に形成され、その樹脂のうち少なくとも光が透過する部分が光透過性樹脂からなることを特徴とする光路変換ミラー。
【請求項2】
光路変換ミラーが、光透過性樹脂からなる第1樹脂層と、光透過性樹脂または光不透過性樹脂からなる第2樹脂層とを備え、上記第2樹脂層が、その表面に平面とこの平面に対して所定角度の傾斜角をもつ傾斜面とを有し、上記金属膜が上記第2樹脂層の上記表面に形成され、この金属膜を介して上記第2樹脂層の表面に第1樹脂層が積層形成されている請求項1記載の光路変換ミラー。
【請求項3】
上記第2樹脂層の表面における平面と傾斜面とのなす角度が35〜55度に設定されている請求項2記載の光路変換ミラー。
【請求項4】
基板と、この基板上に固定されている光導波路と、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の光路変換ミラーとを備え、上記光路変換ミラーにおける光入射部または光出射部の一方が、上記光導波路における光軸方向の少なくとも一端面に位置決めされ、その光路変換ミラーが位置する側の、上記光導波路の端面が、光導波路の光軸に対して直角の状態で維持されていることを特徴とする光路変換装置。
【請求項5】
上記請求項1または2記載の光路変換ミラーを作製する製法であって、剥離用板の表面に光透過性樹脂からなる第1樹脂層を形成する工程と、この第1樹脂層の表面に断面V字状の条溝を形成する工程と、この条溝の表面に金属膜を形成する工程と、この金属膜の表面に第2樹脂層を形成する工程と、上記剥離用板を第1樹脂層から剥離する工程と、上記第1樹脂層,金属膜および第2樹脂層からなる積層体を上記V字状の条溝の長手方向に沿って切断し、上記V字状を形成する金属膜の一面を光路変換ミラーにおける光反射面とする工程とを備えていることを特徴とする光路変換ミラーの製法。
【請求項6】
上記条溝のV字状のなす角度を90度に設定し、かつ、そのV字状を形成する各面と第1樹脂層の表面における平面とのなす角度をそれぞれ45度に設定する請求項5記載の光路変換ミラーの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−201372(P2006−201372A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11720(P2005−11720)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】