説明

光通信デバイスおよびその製造方法、光ファイバーコネクタ

【課題】自己形成光導波路である光合分波器を有した光通信デバイスの量産性を向上させること。
【解決手段】光通信デバイスは、光ファイバーコネクタ1と、光ファイバーコネクタ1が挿入されたキャップハウジング2と、によって構成されている。光ファイバーコネクタ1は、コネクタハウジング10と、コネクタハウジング10内部に納められた光ファイバー11の先端部、および光合分波器12とを有している。光合分波器12は、光導波路コア13、光導波路クラッド15を有し、これらは光硬化性樹脂の硬化物であり、自己形成光導波路技術により形成される。キャップハウジング2は、光ファイバーコネクタ1が離脱可能に挿入される凹部22を有している。また、キャップハウジング2の内部には、受発光素子20、21とが納められていて、光合分波器12と光学的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーに接続される光合分波器、および光合分波器の分岐端に接続される受発光素子とにより構成される光通信デバイスに関する。また、新規な構成の光ファイバーコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光硬化性樹脂を利用して光導波路を形成する自己形成光導波路の技術が、本出願人などによって多数開発されており、光学フィルタによって分岐されて形成された自己形成光導波路からなる光合分波器などの光デバイスが開発されている。
【0003】
特許文献1、2には、自己形成光導波路からなる光合分波器と、受発光素子とを一体の筐体に納め、光ファイバーコネクタを筐体に挿入して光合分波器に接続する構成の光通信デバイスが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−242354
【特許文献2】特開2010−32582
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自己形成導波路の耐熱温度はおよそ120℃であり、リフローで受発光素子を基板に実装することができない。そのため、従来基板に受発光素子を実装する際は、受発光素子のリード端子を基板のスルーホールに通して手付けではんだ付けしており、手間や時間がかかるので量産性に劣るという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、量産性に優れた光通信デバイスおよびその製造方法を実現することである。また、他の目的は、量産性に優れた光通信デバイスを構成可能な光ファイバーコネクタを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続され、光ファイバー先端部と光合分波器とが一体にコネクタハウジングに納められた光ファイバーコネクタと、光ファイバーコネクタが挿入されたキャップハウジングであって、その内部に受発光素子が納められ、それら受発光素子の受発光側が、自己形成導波路コアのそれぞれの分岐端に対向するよう配置され、基板に実装される受発光素子のリードが外部に露出したキャップハウジングと、を有することを特徴とする光通信デバイスである。
【0008】
光合分波器は、1ないし複数の光学フィルタと、光学フィルタによって分岐された自己形成光導波路コアとを有する構造であれば任意の構造でよい。自己形成光導波路コアが1つの光学フィルタによって2つに分岐する構造だけでなく、2つ以上の光学フィルタによって3以上に分岐する構造であってもよい。自己形成光導波路コアは、自己形成光導波路の技術を用いて形成された軸状の光導波路コアであり、光硬化性樹脂の硬化物である。損失低減や物理的強度の確保などの点から、自己形成光導波路コアは光導波路クラッドにより覆われていることが好ましい。光導波路クラッドもまた、光硬化性樹脂を用いて形成可能である。光学フィルタは、ハーフミラー、波長選択フィルタ、偏光フィルタなどである。
【0009】
自己形成光導波路コアの分岐端面には、光ファイバーコネクタの脱着などによってその端面が損傷して光損失が増大してしまうのを防止する保護板が設けられていることが望ましい。保護板は、たとえばガラス材などである。
【0010】
光合分波器は、分岐した自己形成光導波路コアが平面を成し、その成す面が受発光素子を実装する基板面に対して垂直となるように配置してもよい。受発光素子のリードの位置の自由度が高まり、基板への実装がより容易となる。
【0011】
また、本発明において受発光素子は、発光素子、受光素子、その双方、のいずれかを示すものである。発光素子は、たとえば半導体レーザーやLEDである。受光素子は、フォトダイオードなどである。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、光ファイバーコネクタのコネクタハウジング外側であって、自己形成導波路コアの分岐端近傍の領域には、コネクタハウジングを保護する保護板を有することを特徴とする光通信デバイスである。
【0013】
第3の発明は、第1の発明から第2の発明において、光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続し、光ファイバー先端部と光合分波器とを一体にコネクタハウジングに納めて光ファイバーコネクタを形成するとともに、光ファイバーコネクタが挿入されるキャップハウジングの内部に、受発光側が、自己形成導波路コアのそれぞれの分岐端に対向するように受発光素子を配置し、受発光素子のリードが外部に露出するようにキャップハウジングを形成し、キャップハウジングを基板に搭載してリフローによって受発光素子を基板に実装し、その後、光ファイバーコネクタをキャップハウジングに挿入する、ことを特徴とする光通信デバイスの製造方法である。
【0014】
光ファイバーコネクタの形成は、キャップハウジングの形成前や、受発光素子をリフローによって基板に実装した後で行ってもよく、これらの工程に平行して行ってもよい。
【0015】
第4の発明は、光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続され、光ファイバー先端部と光合分波器とが一体にコネクタハウジングに納められていることを特徴とする光ファイバーコネクタである。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、コネクタハウジング外側であって、自己形成導波路コアの分岐端近傍の領域には、コネクタハウジングを保護する保護板を有することを特徴とする光ファイバーコネクタである。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明の光通信デバイスは、光合分波器は光ファイバーの先端部とともにコネクタハウジングによって一体化されており、受発光素子を備えるキャップハウジングとは分離した構成となっている。そのため、光合分波器を有しないキャップハウジングのみをリフロー炉に通すことで、自己形成光導波路コアからなる光合分波器を高温に晒すことなく、受発光素子を基板に実装することができる。したがって、本発明の光通信デバイスは量産性に優れている。
【0018】
また、第2の発明のように保護膜を設けることで、光ファイバーコネクタの離脱着時に、自己形成導波路コアの分岐端近傍の領域のコネクタハウジングに損傷が生じるのを防止し、光損失が増大してしまうのを抑制することができる。
【0019】
また、第3の発明の光通信デバイスの製造方法は、受発光素子をリフローによって基板に実装することができるため、量産性に優れている。
【0020】
また、第4、5の発明の光ファイバーコネクタは、光ファイバーの先端部と光合分波器とが一体にコネクタハウジングに納められた新規な構成であり、このような光ファイバーコネクタを備えた光通信デバイスは量産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の光通信デバイスの構成について示した図。
【図2】光ファイバーコネクタ1の構成を示した図。
【図3】キャップハウジング2の構成を示した図。
【図4】光ファイバーコネクタ1の上面図、正面図、下面図をそれぞれ示した図。
【図5】光ファイバーコネクタ1の断面図。
【図6】キャップハウジング2の正面図、上面図、下面図、左側面図、右側面図を示した図。
【図7】キャップハウジング2の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1の光通信デバイスの構成について示した図である。図1(a)は斜め上方から見た図、図1(b)は斜め下方から見た図である。光通信デバイスは、光ファイバーコネクタ1と、光ファイバーコネクタ1が挿入されたキャップハウジング2と、によって構成されている。光ファイバーコネクタ1は、キャップハウジング2から離脱可能であり、図2、図3は、キャップハウジング2から光ファイバーコネクタ1を取り外した状態での、光ファイバーコネクタ1の構成と、キャップハウジング2の構成とをそれぞれ示した図である。図2において、(a)は斜め上方から見た図、(b)は下方から見た図、(c)は上方から見た図である。また、図3において、(a)は斜め上方から見た図、(b)は斜め下方から見た図、(c)は光ファイバーコネクタ1の挿入側から見た図である。
【0024】
図4(a)〜(c)は、それぞれ、光ファイバーコネクタ1の上面図、正面面図、下面図、を示している。また、図5(a)は、図4(a)におけるX−Xでの断面図、図5(b)は、図4(b)におけるY−Yでの断面図である。図2、4、5に示されているように、光ファイバーコネクタ1は、コネクタハウジング10と、コネクタハウジング10内部に納められた光ファイバー11の先端部、および光合分波器12とを有している。
【0025】
光合分波器12は、光導波路コア13と、光学フィルタ14と、光導波路コア13を覆う光導波路クラッド15とによって構成されており、光ファイバー11の先端部に接続する光導波路コア13が、光学フィルタ14によって2つの光導波路コア13A、Bに分岐された構造である。光導波路コア13Bは光ファイバー11の軸の延長上であり、光導波路コア13Aは光ファイバー11の軸に垂直な方向に分岐している。コネクタハウジング1の光ファイバー11先端部側に凹部16が設けられ、この凹部16の内部に光導波路コア13と光学フィルタ14が納められている。光学フィルタ14は、保持具17によって固定されている。そして、凹部16を埋めるようにして光導波路クラッド15が設けられており、これにより光導波路コア13が光導波路クラッド15により覆われている。光導波路コア13、光導波路クラッド15は、光硬化性樹脂の硬化物であり、既知の自己形成光導波路の技術をもって形成されたものである。この光硬化性樹脂の硬化物の耐熱性はおよそ120℃である。また、光学フィルタ14は、ハーフミラー、波長選択フィルタ、偏光フィルタなどである。
【0026】
コネクタハウジング10の外側であって、光導波路コア13A、Bの端面と対向する部分には、ガラス板18が埋め込まれている。このガラス板18は、光ファイバーコネクタ1をキャップハウジング2に挿入する際、あるいはキャップハウジング2から離脱する際に、光導波路コア13A、Bの端面近傍のコネクタハウジング外側が損傷して光損失が増大してしまうのを防止している。
【0027】
図6(a)〜(e)は、それぞれ、キャップハウジング2の正面図、上面図、下面図、左側面図、右側面図を示している。また、図7(a)は、図6(b)におけるX−Xでの断面図、図7(b)は、図6(a)におけるY−Yでの断面図である。図3、6、7に示されているように、キャップハウジング2は、エポキシ樹脂からなる直方体状であり、光ファイバーコネクタ1が離脱可能に挿入される凹部22を有している。また、キャップハウジング2の内部には、受発光素子20、21とが納められている。受発光素子20、21は、発光ダイオード、半導体レーザーなどの発光素子、フォトダイオードなどの受光素子、あるいは発光素子と受光素子の双方である。たとえば、受発光素子20、21の一方をLED、他方をフォトダイオードとすることで、実施例1の光通信デバイスは光トランシーバーとして機能させることができる。受発光素子20、21は、ノイズを防止するために金属製のシールド部23によってパッケージされている。
【0028】
受発光素子20、21は、キャップハウジング2の受発光側を凹部22の内側に向けて配置されていて、その受発光面は互いに垂直を成している。また、光ファイバーコネクタ1をキャップハウジング2に挿入した状態に置いて、光導波路コア13Aの端面と受発光素子21の受発光側とが対向し、光導波路コア13Bの端面と受発光素子20の受発光側とが対向するように、受発光素子20、21が配置されている。このような配置により、光導波路コア13Aと受発光素子21、光導波路コア13Bと受発光素子20が光学的に接続される構造となっている。
【0029】
受発光素子20、21の4本のリード20A、21Aは、それぞれキャップハウジング2の外部に突出し、実装される基板面に対して水平となるよう折り曲げられている。
【0030】
また、コネクタハウジング1の下方側に直線状の凸部19、キャップハウジング2の下方に直線状の凹部29が設けられており、この凹部19と凸部29が噛み合うように構成されている。これは、キャップハウジング2に誤ったコネクタが挿入されるのを防止するためである。
【0031】
受発光素子20、21を内部に有したキャップハウジング2は、光ファイバーコネクタ1が離脱された状態でリフローに通されて、受発光素子20、21が基板に実装され、その後に光ファイバーコネクタ1がキャップハウジング2に挿入されることで、実施例1の光通信デバイスが製造される。
【0032】
上記のリフローによる基板への実装をより具体的に説明する。まず、配線が形成された基板上の所定位置(受発光素子20、21のリード20A、21Aが接続する位置)に、はんだを印刷する。次に、基板上に、印刷したはんだと、受発光素子20、21のリード20A、21Aとが重なるようにキャップハウジング2を搭載する。次に、基板上に搭載されたキャップハウジング2をリフローに通し、基板上の配線と受発光素子20、21のリード20A、21Aとをはんだ付けする。この際、キャップハウジング2の材料であるエポキシ樹脂、および受発光素子20、21には、リフロー温度よりも高い耐熱性を有したものを用いる。以上により、基板上に受発光素子20、21が実装される。
【0033】
実施例1の光通信デバイスでは、光合分波器12がコネクタハウジング10に納められて光ファイバーコネクタ1を構成しており、受発光素子20、21が納められたキャップハウジング2とは分離した構成となっている。したがって、耐熱性の低い光硬化性樹脂の硬化物である光導波路コア13、光導波路クラッド15で構成される光合分波器12を高温に晒すことなく、受発光素子20、21のリードを基板にリフロー実装することができる。そして、受発光素子20、21をリフロー実装した後、光ファイバーコネクタ1をキャップハウジング2に挿入することで光通信デバイスを容易に製造することができる。このように、実施例1の光通信デバイスは、リフローで受発光素子20、21を基板に実装することができるため、量産性に優れている。
【0034】
なお、実施例1の光通信デバイスでは、分岐した光導波路コア13A、Bの成す面が実装される基板に対して水平であるが、光導波路コア13Aが基板に対して垂直な方向とするようにしてもよい。受発光素子20、21のリードを、キャップハウジング2外側のより自由な位置に引き出すことができ、基板に受発光素子20、21を実装するのがより容易となる。
【0035】
また、実施例1の光通信デバイスにおける光合分波器12は、光学フィルタによって光導波路コアが2分岐された構造であったが、他の任意の構造の光合分波器を用いてよい。たとえば、光学フィルタを2つ用いて光導波路コアを3分岐とした光合分波器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の光通信デバイスは、車載LANなどの光LANシステムに用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:光ファイバーコネクタ
2:キャップハウジング
10:コネクタハウジング
11:光ファイバー
12:光合分波器
13:光導波路コア
14:光学フィルタ
15:光導波路クラッド
16、22、29:凹部
17:保持具
18:ガラス板
19:凸部
20、21:受発光素子
20A、21A:リード
23:シールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続され、前記光ファイバー先端部と前記光合分波器とが一体にコネクタハウジングに納められた光ファイバーコネクタと、
前記光ファイバーコネクタが挿入されたキャップハウジングであって、その内部に受発光素子が納められ、それら受発光素子の受発光側が、前記自己形成導波路コアのそれぞれの分岐端に対向するよう配置され、基板に実装される前記受発光素子のリードが外部に露出したキャップハウジングと、
を有することを特徴とする光通信デバイス。
【請求項2】
前記光ファイバーコネクタの前記コネクタハウジング外側であって、前記自己形成導波路コアの分岐端近傍の領域には、前記コネクタハウジングを保護する保護板を有することを特徴とする請求項1に記載の光通信デバイス。
【請求項3】
光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続し、光ファイバー先端部と光合分波器とを一体にコネクタハウジングに納めて光ファイバーコネクタを形成するとともに、
前記光ファイバーコネクタが挿入されるキャップハウジングの内部に、受発光側が、前記自己形成導波路コアのそれぞれの分岐端に対向するように受発光素子を配置し、前記受発光素子のリードが外部に露出するように前記キャップハウジングを形成し、
前記キャップハウジングを基板に搭載してリフローによって前記受発光素子を前記基板に実装し、
その後、前記光ファイバーコネクタを前記キャップハウジングに挿入する、
ことを特徴とする光通信デバイスの製造方法。
【請求項4】
光ファイバーの先端部に、光学フィルタを介して複数に分岐された自己形成光導波路コアを備えた光合分波器が接続され、前記光ファイバー先端部と前記光合分波器とが一体にコネクタハウジングに納められていることを特徴とする光ファイバーコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジング外側であって、前記自己形成導波路コアの分岐端近傍の領域には、前記コネクタハウジングを保護する保護板を有することを特徴とする請求項4に記載の光ファイバーコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53301(P2012−53301A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196220(P2010−196220)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】