説明

光電気複合モジュール

【課題】 発光素子と光モニタ素子等の光結合系の結合損失を低く抑えると同時に、高速信号の損失や反射の影響による劣化を抑えて動作することが可能な光電気複合モジュールを提供する。
【解決手段】 光信号を発生する導波路型光素子(1)と、前記光信号を伝送する光導波路を内蔵した絶縁層(7)と、前記導波路型光素子(7)に電流増幅信号を供給する駆動LSI(3)とを基板(41)に有している。前記導波路型光素子(1)と前記駆動LSI(3)とを立体構造の線路で接続して、前記導波路型光素子と前記駆動LSIとを接近させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電気複合モジュールに関し、特に発光素子やドライバICなどが実装された高速の光電気複合モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータの装置内・装置間での光リンクなどで、高速、低コスト、および小型の光トランシーバの実現が期待されている。また、10Gbit/sイーサネット(登録商標)の標準化が進み、光トランシーバの小型化、特に装置のインターフェイスの高密度化が可能となるように、光入出力部の間口が狭くなるような構成が求められている。光トランシーバは光送信部と光受信部から構成されているが、そのうち光送信部のモジュールは、駆動LSIならびに半導体レーザなどの発光素子、フォトダイオードなどの光モニタ素子を有している。
【0003】
これまでこの種の表面実装型光電気複合モジュールは、光結合の損失を増加させないという観点から、光モニタ素子、発光素子、レンズ、光ファイバといった光結合系を形成し、その外側に駆動LSIが配置されていた。図7に従来の光電気複合モジュールの模式図を示す。図7(a)は概略断面図、図7(b)は概略上面図である。放熱基板141上に発光素子101が搭載され、発光素子101の出力側にレンズ152を、反対側に光モニタ素子102を近接配置し、セラミックパッケージ上に形成された配線基板143上に搭載された駆動LSI103が光モニタ素子102のさらに後方に配置されていた。
【0004】
一方、高速化の観点から、駆動LSIと発光素子とを近接配置した構造を有する光電気複合モジュールも開示されている。一つの開示例では、発光素子と駆動LSIとを近接させ、駆動LSIは配線基板上の高速線路を介して外部と接続し、電気接続のためのワイヤを短くした構造としている。そして光モニタ素子は配線基板上の搭載部材に配置してあり、発光素子の出力側の反対側から出射したモニタ光は、駆動LSIの上を通過して光モニタ素子に結合されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
また、光モニタ素子と発光ダイオード(LD)駆動用ICのいずれかを発光素子に近接配置する技術も開示されている(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−252407号公報(4−6頁、図2、図3)
【特許文献2】特開2003−232967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図7に示すように光結合系の最適配置を優先した場合、駆動LSIから発光素子までのワイヤの距離が長くなるため、10Gbit/sレベルの高速信号を損失や反射の影響なく伝送することは難しかった。
【0008】
また、特許文献1に示すように高速動作を優先した場合、発光素子と駆動LSIとを近接させる必要があるため、逆に発光素子と光モニタ素子との距離が広がってしまう。発光素子からのモニタ光にはビーム広がりがあるため、距離を離すと、発光素子と光モニタ素子との間の結合損失が増加し、モニタ光のパワーレベルが光モニタ素子の受信許容範囲を下回るという問題があった。
【0009】
このように従来技術においては、光結合系の損失増加抑制のための発光素子、光モニタ素子、レンズ等の最適配置と、高速動作のための駆動LSIと発光素子との近接配置が両立できないという課題があった。
【0010】
さらに、特許文献2においては、光モニタ素子とLD駆動用ICのいずれかを発光素子に近接配置させる構造が示されているが、両者を同時に近接配置することは難しく、結局上述の問題を根本的に解決することは困難である。また、絶縁層の上に導波層が形成されているが、導波路上の電気配線はリードとの接続のみであり、10Gbit/sレベルの高速伝送を安定して実現するために必要なグランド電極の配置が困難である。さらに、導波路上のプリアンプは1Gbit/sレベルが伝送可能な比較的長めのワイヤを想定してつながれており、1mm以下が必要とされる高速伝送の実現には難点がある。
【0011】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、光結合系の損失増加抑制を可能とする最適配置と、高速動作を可能とする駆動LSIと発光素子との近接配置を両立する光電気複合モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明に係る光電気複合モジュールは、光信号を発生する導波路型光素子と、該導波路型光素子の光信号出力面及び該出力面の反対側の面の少なくとも一方と対向して、該放熱基板上に設置され、該導波路型光素子で発生した前記光信号を伝達する光導波路を内蔵する絶縁層と、該絶縁層の上面に設けられ、前記導波路型光素子に電流増幅信号を供給する駆動LSIと、前記駆動LSIと前記導波路型光素子とを前記絶縁層の厚み方向に結ぶ駆動用高速信号線路とを有することを特徴とするものである。
【0013】
これによって、電気配線と光配線とを立体的に構成することが可能となり、光導波路、発光素子、光モニタ素子を結合するとともに、発光素子と駆動LSIとの近接配置が可能となり、光結合系の結合損失を低く抑えるとともに、10Gbit/sレベルの高速信号を、損失や反射の影響による劣化を抑えて伝送することが可能になる。
【0014】
また前記駆動LSIと接触して前記絶縁層の上面を延び、前記駆動LSIに電気入力信号を供給する電気入力用高速伝送線路をさらに有してもよい。
【0015】
また前記電気入力用高速伝送線路は、前記駆動LSIと接触して前記絶縁層の上面を延びる上部グランド電極と、前記導波路型光素子が設置された放熱基板の上面を延びる下部グランド電極と、該上部グランド電極と該下部グランド電極とを接続するグランド電極接続部とを有し、前記駆動LSIを前記放熱基板に接続して該駆動LSIのグランドを確保するグランド部をさらに有する構成としてもよいものである。
【0016】
また前記グランド電極接続部は該絶縁層内を前記光導波路と干渉しない位置で上下方向に延びるビアとしても良いものである。
【0017】
また前記導波路型光素子は発光素子であり、前記放熱基板上に設置され、該発光素子の発光をモニタする光モニタ素子と、前記駆動LSIと前記発光素子とを前記絶縁層の厚み方向に接続し、前記光モニタ素子のモニタ信号を前記駆動LSIにフィードバックするDC線路とをさらに有する構成とすることが可能である。
【0018】
また前記絶縁層は上面に前記上部グランド電極を含むコプレーナ線路を有する構成としてもよい。また前記絶縁層はポリマ樹脂材料から形成するようにしてもよい。
【0019】
また前記導波路型光素子が設置された放熱基板上のガイド機構に設置され、前記光導波路と接続して光入出力を行う光ファイバをさらに有する構成としてもよい。
【0020】
また複数の前記光導波路がアレイ状に形成され、該光導波路の各々に前記導波路型光素子が接続している構成としてもよいものである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、線路が立体構造であるため、信号の授受を行うための距離が極めて短くすることができるとともに、光結合系の各種素子を接近して配置することができるため、光結合系の結合損失を低く抑えることができる。したがって、10Gbit/sレベルの高速信号を、損失や反射の影響による劣化を抑えて伝送することが可能になる。
【0022】
また電気配線と光配線を立体的な構成としているため、光結合系の近接配置と発光素子と駆動LSIの近接配置とを独立して最適化でき、モジュールの小型化が可能になる。
【0023】
また、光素子と電気素子の実装を同一の基板で行えるため、部品数と工程数を減らし実装コストを抑制することができる。
【0024】
また光素子を放熱基板真上に設置し、絶縁層の状Bにある電気阻止も樹脂層上部の上部グランド電極、ビア、下側の下部グランド電極を介して放熱基板に達する放熱パスにつながっているため、光素子・電気素子の放熱性にも問題ない。
【0025】
さらに、プラットフォーム内で作り込まれた電極パッドと光導波路等を基準として光結合をお香ことができるため、光結合系の無調芯実装が達成されるというメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明に係る光電気複合モジュールの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の光電気複合モジュールは、例えば、地域内ネットワーク、都市間ネットワーク等に代表される光通信、ならびにサーバ・ルータ間での光リンク等に使用することができる。
【0027】
図1(a)は本発明に係る光電気複合モジュールの構成を示す概略断面図である。図1(b)は本発明に係る光電気複合モジュールを構成する部品の配置を示し、配線関係を省略した平面図である。図2は、駆動LSIを取り外して、配線関係を示す平面図である。本発明に係る光電気複合モジュール4aは、放熱基板41の上に絶縁層42が積層され、前記絶縁層42上に絶縁層7、導波路型光素子としての発光素子1、光モニタ素子2、駆動LSI3等の各種の層や素子が設けられている。絶縁層42の所定の位置には光ファイバ51が配置され、この光ファイバ51のコア51aの光軸に沿って前記絶縁層7,発光素子1,光モニタ素子2が配列されている。
【0028】
前記発光素子1は端面発光型の素子であり、その前端面から光を前方(絶縁層7の光導波路71側)に向けて出力する構造になっている。前記発光素子1は、光信号の出力部1aを光ファイバ51のコア51aの高さ位置に一致させて、絶縁層42上に搭載されている。前記発光素子1は駆動LSI3からの電流振幅信号を受けて、光信号を生成し、その光信号を出力部1aの高さ位置から光ファイバ51のコア51aに向けて出力する。前記発光素子1の層構造および内部構造は光導波路の結合に適した構造となっている。
【0029】
絶縁層7は光ファイバ51と発光素子1との間に配置され、絶縁層7と発光素子1と光ファイバ51とを接近させている。絶縁層7は光導波路71を内蔵しており、この光導波路71を発光素子1の出力部1aの高さ位置と光ファイバ51のコア51aの高さ位置に一致させて絶縁層42上に搭載されている。したがって、発光素子1から出力された光信号は、発光素子1aの出力部1aから絶縁層7の光導波路71に直に入力し、絶縁層7の光導波路71から光ファイバ51のコア51aに高い効率で入力する。絶縁層7の内部構造は、光導波に適した屈折率構造に形成され、その屈折率構造の内部に光導波路71が形成されている。絶縁層7は高速伝送線路(後述)を実現するために、低誘電率、低誘電損失等の特性を有している。絶縁層7の材料としては、たとえばポリマ樹脂材料が挙げられる。絶縁層7の材料としてポリマ樹脂を選ぶことにより、電気回路としての高速性と光の透過性を兼ね備えることができるので、絶縁層7として好適である。すなわち、絶縁層7の材料として厚膜のポリマ樹脂を用いることにより寄生容量の低減が図れ、低誘電率、低誘電損失のポリマ樹脂を用いれば、高速伝送線路の作製精度を緩和させることができる。そして、信号波長に対して低損失な樹脂を用いれば、絶縁層7内に低誘電損失の光導波路71を作製することができる。
【0030】
駆動LSI3は、絶縁層7の上面に形成される後述の高速信号線路64上にバンプ66でフリップチップ実装されている。駆動LSI3は、外部からの電気信号(規定電圧の変調信号)に応じて発光素子1に、駆動に必要な電流振幅信号を与えて、発光素子1に光信号を生成させる。また、駆動LSI3は光モニタ素子2からの電流値に応じて電流振幅を調整して、自動パワー制御(Auto Power Control、APC)を行う機能を持つ。駆動LSI3は電圧の変調信号に対する電流振幅の調整機能とAPC機能とをあわせ持った形態である必要はなく、別のLSIがAPC機能を分担するように構成してもよい。
【0031】
光モニタ素子2は、発光素子1の後方(光導波路71と反対側の面)に接近して配置され、絶縁層42を介して放熱基板41に搭載されている。光モニタ素子2は導波路型または面型の光検知器で、発光素子1から後方に出力される光信号を受光面2aで受光し、その受光した光信号(モニタ光)を電流に変換して、駆動LSI3に送信する。なお図1(b)に示す例では、光モニタ素子2は、発光素子1の真後ろに配置したが、これに限られるものではない。光モニタ素子2は、発光素子1から後方に出力される光信号のビームの広がりを考慮して、光信号の光軸に対して光受光面2aを垂直に配置してもよい。更には、光モニタ素子2の受光面2aを放熱基板41と平行に配置して、ビームが広がった領域で光信号を受光するようにしてもよい。光モニタ素子2の側面からモニタ光が入射するようにしてもよい。これらのバリエーションは発光素子1と光モニタ素子2を近接しているため、可能となる。
【0032】
これらの各素子は立体構造の線路によって相互に接続されている。以下に前記立体構造の線路を図1(a)及び図2に基づいて説明する。前記絶縁層7の上面には図2に示すように、駆動LSI3の外形より大きくしたL型形状の上部グランド線路68が形成されている。一方、絶縁層7の下面には下部グランド線路65aが上部グランド線路68と同様なL型形状に形成されている。この場合、上部グランド線路68は、後述する高速信号線路と交差する箇所に切り込み68a,68b,68cが形成され、前記高速信号線路との接触を回避しているが、下部グランド線路65aは、前記切り込み68a,68b,68cに相当する切込みが形成されずに連続したL型形状に形成されている。更に前記切り込み68aで分離された前記上部グランド線路68は、前記絶縁層7を光導波路71との干渉を避けて上下に貫通する複数のビア67で接続されている。この構造により、上部グランド線路68と下部グランド線路65aとは、安定したグランドを維持できる。後述するように、上部グランド線路68は駆動LSI3に接続される。この場合、上部グランド線路68は複数本のビア67を介して下部グランド線路65aに接続しているため、駆動LSI3が発生する熱は、上部グランド線路68,複数本のビア67及び下部グランド線路65aを通して放熱基板41に伝わり、放熱基板41により放散される。
【0033】
前記上部グランド線路68に形成した2箇所の切り込み68aには、高速信号線路63aが前記上部グランド線路68から隔離して形成されている。前記上部グランド線路68の切り込み68bには、高速信号線路63bが前記上部グランド線路68から隔離して形成されている。前記上部グランド線路68の切り込み68cには、DC線路61が前記上部グランド線路68から隔離して形成されている。前記高速信号線路63a,63bは、駆動LSI3に駆動信号を供給するものであり、前記高速信号線路63cは、駆動LSI3から発光素子1に駆動信号を供給するものである。前記DC線路61は、光モニタ素子2からの制御信号を駆動LSI3に供給するためのものである。
【0034】
以上のように立体構造の線路は、絶縁層7の上面に、高速信号線路63a,63b,63c,61とグランド線路68とを同一面に含むコプレーナ線路構造を形成し、絶縁層42上に高速信号線路62,DC線路60とグランド線路65a,65b,65cとを同一面に含むコプレーナ線路構造を形成し、これらのコプレーナ線路構造を絶縁層の厚み方向で接続して立体構造として形成している。
【0035】
前記駆動LSI3のグランド端子はバンプ66により前記上部グランド線路68に接続され、前記駆動LSI3の信号入力端子はバンプ66により前記高速信号線路63a,63bに接続される。前記駆動LSI3の信号出力端子はバンプ66により前記高速信号線路63cに接続され、前記駆動LSI3の制御信号入力端子はバンプ66により前記DC線路61に接続される。このようにして、前記駆動LSI3は絶縁層7上に搭載される。
【0036】
前記絶縁層42のうち、前記発光素子1及び前記光モニタ素子2が搭載される領域には、高速信号線路62,DC線路60,グランド線路65b、65cが形成されている。前記絶縁層7には、光導波路71との干渉を避けて2本のビア69,75が上下に貫通して形成され、前記ビア69は前記高速信号線路62と前記高速信号線路63cとを接続し、前記ビア75は前記DC線路61と前記DC線路60とを接続している。
【0037】
前記光モニタ素子2は、そのグランド端子が前記グランド線路65cに、その制御信号出力端子が前記DC線路60にそれぞれバンプにより接続されて放熱基板41上に搭載されている。前記発光素子1は、そのグランド端子が前記グランド線路65bに、その制御信号入力端子が前記高速信号線路62にそれぞれバンプにより接続されて放熱基板41上に搭載されている。駆動LSIには、図示しない電源供給用の電源線が接続されている。なお、高速信号線路62,63a,63b,63cは、実用的には数Gbit/s〜数10Gbit/sの電気信号の伝送を可能にする特性を有している。
【0038】
上述した実施例では、絶縁層の厚み方向に分けて形成したコプレーナ線路構造をビア69で接続したが、コプレーナ線路構造を絶縁層の厚み方向で接続する構造はビア69に限られるものではない。図3(a),(b)に示すように、前記絶縁層7の切り立った端面に高速信号線路76を形成して、この高速信号線路76でコプレーナ線路構造の高速信号線路63(63a,63b,63c)と高速信号線路62とを接続してもよい。また、前記絶縁層7の切り立った端面を斜めに形成して、この斜面に破線で示すように前記高速信号線路76を形成してもよい。
【0039】
図3(c),(d)に示すように、ワイヤ77を用いて高速信号線路63,62を接続してもよい。この場合、信号を高速伝送するためには、ワイヤ77の長さをできるだけ短くする必要がある。図3(a)〜(d)に示す接続構造は、DC線路60,61を接続するのに採用してもよいものである。
【0040】
上述した光電気複合モジュール4における線路は、絶縁層7及び絶縁層42上に信号線路とグランド線路とを同一面に含むコプレーナ線路構造としたが、これに限られるものではない。それぞれのコプレーナ線路構造をなす前記信号線路及びグランド線路を絶縁層で挟み込んだマイクロストリップ線路構造とし、これらのマイクロストリップ構造の信号線路を絶縁層の厚み方向で接続した立体構造の線路としてよいものである。
【0041】
次に、光電気複合モジュールの動作を説明する。外部から規定電圧の電気論理信号と電源電圧とが駆動LSI3に供給されると、発光素子1を駆動するために必要な振幅を有し、外部電気信号に対応した電流が、駆動LSI3から高速信号線路63、ビア69、高速信号線路62を通って発光素子1に流れる。発光素子1は前記電流に基づいて光信号を出射する。発光素子1からの光信号は光導波路71に入力し、光導波路71を通して光ファイバ51に伝送され、光ファイバ51により必要な箇所に伝送される。
【0042】
一方、光モニタ素子2は、発光素子1の反対側から出力された光をモニタ光として受光すると、モニタ光に応じた電流を出力する。この電流は、DC線路60、ビア75、DC線路61を介して駆動LSI3に流れる。駆動LSI3は、光モニタ素子2からの電流に応じて電流振幅を調整して、APC機能を実現する。
【0043】
図1に示す光電気複合モジュール4aの具体例を示す。発光素子1として発振波長1310nmの分布帰還形の端面発光レーザを用い、光モニタ素子2として面型のフォトダイオードを用い、これらの光素子を光電気複合モジュール4aにフリップチップ実装した。光電気複合モジュール4aの絶縁層7は光導波路の損失が0.5dB/cmであり、比誘電率3、誘電正接0.005のポリマ樹脂を用いた。高速伝送線路はインピーダンス抵抗が50Ωになるように作製した。駆動LSI3は、外部から10Gbit/sの差動入力の電気信号により発光素子1に供給される電流が制御される。駆動LSI3と発光素子1との間の配線長は、近接化により1mm以下となり、アイ開口特性において劣化のない光出力波形が得られた。一方、発光素子1と光モニタ素子2の結合損は0.5dBであり、このときの光モニタ素子2の出力電流は0.5mAでAPC動作を確認した。
【0044】
以上のように、本実施形態の光電気複合モジュール4aは、光モニタ素子2、発光素子1、光導波路71、光ファイバ51等からなる光学系と、駆動LSI3と発光素子1間との高速信号線路62、63(63a,63b,63c)を立体的に配置することが可能である。このため、結合系を近接配置して結合損失を抑え、かつ駆動LSI3と発光素子1とを近接配置することが可能となり、高速配線と光導波路の機能を同時に満たすことができ、損失や反射の影響による劣化を抑えながら、10Gbit/sレベルの高速信号を伝送することが可能になる。また、各素子の最近接が可能になることから光電気複合モジュールの小型化が可能となる。さらに、光素子・電気素子を同一基板上に搭載できるという素子搭載上のメリットもあり、実装が簡略化できるという効果がある。
【0045】
次に本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。図4は光電気複合モジュールの概略上面図である。本実施形態は、電気入力を光電気複合モジュール4bの後部から入力する点が第1の実施形態と異なっている。すなわち、電気入力を行う高速信号線路63aが光電気複合モジュール4bの後部に設けられ、電気信号が高速信号線路63aに直接入力するようになっている。また、DC線路60は第1の実施形態と異なり、光導波路71の図面下側に設置されている。このような実施形態は、例えばプラグインタイプのモジュールに高速信号線路63aを差込み、この高速信号線路63aに電気信号を入力することとなるため、電気信号はコプレーナ線路構造の高速信号線路63aを介して伝送されることとなり、長いワイヤでボンディングしたような信号劣化をほとんど生じることなく、駆動LSI3まで伝送される。このような実施形態は、たとえばプラグインタイプのモジュールに有効に適用できるというメリットを有している。
【0046】
次に本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図5は光電気複合モジュールの構成図で、図5(a)は概略断面図、図5(b)は概略上面図である。本実施形態の光電気複合モジュール4cは、駆動LSI3を発光素子1の裏面側に配置した点が第1、2の実施形態と異なる。発光素子1の前方に、光導波路71を内蔵した絶縁層7が配置され、光信号が光導波路71及び光ファイバ51を介して光出力される。発光素子1の後方には絶縁層7cが配置され、絶縁層7cの内部に光導波路72が内蔵されている。光導波路72の後方には光モニタ素子2が配置されている。また、駆動LSI3が絶縁層7cの上部に配置されている。各素子の電気的接続や動作は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態では発光素子1と光モニタ素子2は直結による光結合を行っていたが、本実施形態では光導波路72を介して光結合させたことが特徴である。これにより光モニタ素子2の位置を離しても、光導波路72で結合されているため、所望の位置で光モニタ素子2の配置が可能となる。この実施形態においては、高速信号線路63aは、第2の実施形態の場合と同様に光電気複合モジュール4cの後方に引き出しており、例えばプラグインタイプのモジュールに有効な構成になっている。
【0047】
次に本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。図6は光電気複合モジュールの概略上面図である。本実施形態に係る光電気複合モジュール4dは4チャンネルアレイ化されたモジュールである点が上記の各実施形態と異なる。発光素子1はチャンネル毎に計4つ設けられ、2チャンネル分を一体化した光モニタ素子2は2つ設けられ、各々2つの発光素子1の光をモニタする。各発光素子1と各光モニタ素子2との間には、第3の実施形態と同様の光導波路72が4本設けられている。また、駆動LSI3は図示するのを省略しているが、絶縁層7c上に搭載され、1台の駆動LSI3から高速信号線路63cを介して4台の発光素子1に電流増幅信号を供給するようになっている。
【0048】
このような光電気複合モジュール4dにあっては、光導波路と電気配線を独立に引き回せるので、一層の最適化が可能となる。本実施形態では、光モニタ素子2までの光導波路72およびDC線路61の等長配線等の制約がないため、光導波路72の片端を上下にずらして光モニタ素子2に結合させることが可能である。これによって駆動LSI3からの高速信号線路63cのピッチ変換が不要となり等長配線などの最適化が図れる。
【0049】
なお、放熱の影響や隣接間のクロストークが無視できる場合は、複数の発光素子1を接近させてアレイ化してもよい。また、絶縁層7,7cは、光導波路72を内蔵する部分と光導波路71を内蔵する部分とが分離された構成になっているが、これらの絶縁層7,7cを一体構成としてもよい。上部グランド線路68は第3の実施形態と同様、絶縁層7c上に形成されていても構わない。さらに本実施形態では4チャンネルの場合を示したが、チャンネル数は任意の複数チャンネルとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように本発明によれば、発光素子と光モニタ素子、及び発光素子と駆動LSIとを近接配置することを可能としているため、光結合系の結合損失を低く抑えるとともに、10Gbit/sレベルの高速信号を、損失や反射の影響による劣化を最小限に抑えて伝送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光電気複合モジュールの概略断面図、図1(b)は平面図である。
【図2】図1に示す光電気複合モジュールの各素子の間の接続の詳細を示す説明図である。
【図3】図1に示す光電気複合モジュールの発光素子と駆動LSIとの接続構造のバリエーションを示す図であって、図3(a)は側面図、図3(b)は図3(a)のA−A矢視図、図3(c)は側面図、図3(d)は図3(c)のB−B矢視図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る光電気複合モジュールの概略平面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第3の実施形態に係る光電気複合モジュールの概略断面図、図5(b)は概略平面図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態に係る光電気複合モジュールの概略平面図である。
【図7】図7(a)は、従来の光電気複合モジュールの概略断面図、図7(b)は概略平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 発光素子
2 光モニタ素子
3 駆動LSI
4 光電気複合モジュール
41 放熱基板
42 絶縁層
43 配線基板
51 光ファイバ
60、61 DC線路
62、63、64 高速信号線路
65 下部グランド線路
68 上部グランド線路
66 バンプ
67、69、75 ビア
7 絶縁層
71、72 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を発生する導波路型光素子と、
該導波路型光素子の光信号出力面及び該出力面の反対側の面の少なくとも一方と対向して、該放熱基板上に設置され、該導波路型光素子で発生した前記光信号を伝達する光導波路を内蔵する絶縁層と、
該絶縁層の上面に設けられ、前記導波路型光素子に電流増幅信号を供給する駆動LSIと、
前記駆動LSIと前記導波路型光素子とを前記絶縁層の厚み方向に結ぶ駆動用高速信号線路とを有する光電気複合モジュール。
【請求項2】
前記駆動LSIと接触して前記絶縁層の上面を延び、前記駆動LSIに電気入力信号を供給する電気入力用高速伝送線路をさらに有する、請求項1に記載の光電気複合モジュール。
【請求項3】
前記電気入力用高速伝送線路は前記駆動LSIと接触して前記絶縁層の上面を延びる上部グランド電極と、前記導波路型光素子が設置された放熱基板の上面を延びる下部グランド電極と、該上部グランド電極と該下部グランド電極とを接続するグランド電極接続部とを有し、前記駆動LSIを前記放熱基板に接続して該駆動LSIのグランドを確保するグランド部をさらに有する、請求項2に記載の光電気複合モジュール。
【請求項4】
前記グランド電極接続部は該絶縁層内を前記光導波路と干渉しない位置で上下方向に延びるビアである、請求項3に記載の光電気複合モジュール。
【請求項5】
前記導波路型光素子は発光素子であり、
前記放熱基板上に設置され、該発光素子の発光をモニタする光モニタ素子と、
前記駆動LSIと前記発光素子とを前記絶縁層の厚み方向に接続し、前記光モニタ素子のモニタ信号を前記駆動LSIにフィードバックするDC線路とをさらに有する、請求項2に記載の光電気複合モジュール。
【請求項6】
前記絶縁層は上面に前記上部グランド電極を含むコプレーナ線路を有する、請求項2に記載の光電気複合モジュール。
【請求項7】
前記絶縁層はポリマ樹脂材料からなる、請求項1に記載の光電気複合モジュール。
【請求項8】
前記導波路型光素子が設置された放熱基板上のガイド機構に設置され、前記光導波路と接続して光入出力を行う光ファイバをさらに有する、請求項1に記載の光電気複合モジュール。
【請求項9】
複数の前記光導波路がアレイ状に形成され、該光導波路の各々に前記導波路型光素子が接続している、請求項1に記載の光電気複合モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/071807
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517249(P2005−517249)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000640
【国際出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】