説明

入力装置およびその入力装置を用いた電子機器

【課題】コントロールディスク入力装置の良さを生かしつつ、従来装置が提供してきたクリック感のような操作性を与えてコントロールディスクの欠点を解消する。
【解決手段】操作面を有する操作パネル3と、操作パネル3の平面部と対向して配置される基板30と、操作パネル3に固定された導電性弾性体21と対向するように基板30に設置されたセンサ部23と、操作パネル3に固定された押圧子11に対向し、かつ操作パネル3の操作中心を基準とし、センサ部23とはその中心が放射方向において重ならないように基板30に設置された被押圧部材10とを有する入力装置100としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置およびその入力装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オーディオ機器、携帯電話機等の操作部には、数字を入力するため、あるいは方向を指示するための入力装置が設置されている。この入力装置の一種として押釦スイッチ構造を有する方向指示キーが知られている。しかし、最近では、タッチパネル式の入力装置が現れている。タッチパネル式の入力装置は、タッチパネル上に軽く触れた指の動きを読み取り、信号に変換するため、押釦スイッチのように指にて強く押圧する必要がない。
【0003】
さらに、近年では、入力装置として環状のタッチパネル構成とすることにより、指を連続的にタッチパネルに沿って触れることで楽に画面移動等ができるコントロールディスクがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2003−500849号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、押釦スイッチ構造を有している十字キーを長年使用してきたユーザは、クリック感のないコントロールディスクの操作に違和感を感じる場合がある。
【0005】
また、特許文献1に記載のコントロールディスクは、その押圧位置から所定の計算式に基づいて、その押圧位置を判断する処理をするため、単なるオンあるいはオフの押釦スイッチに比べ判断ミスが生じやすい。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、コントロールディスクの良さを生かしつつ、コントロールディスクの欠点を解消した入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、操作面を有する操作パネルと、操作パネルの平面部と対向して配置される基板と、操作パネルに固定された導電性弾性体と対向するように基板に設置されたセンサ部と、操作パネルに固定された押圧子に対向し、かつ操作パネルの操作中心を基準とし、センサ部とはその中心が放射方向において重ならないように基板に設置された被押圧部材とを有する入力装置としている。
【0008】
このような入力装置とすることで、環状のコントロールディスクとして機能すると共に、押釦的な機能を有する方向指示キーとしても操作できる入力装置となる。
【0009】
また、別の発明は、上述の発明に加え、操作パネルは、円状、環状あるいは円若しくは環の一部とされ、センサ部は、操作パネルの中心と同一の中心を有する第1の円の円上に配置され、被押圧部材は、操作パネルの中心と同一の中心を有し、かつ第1の円よりも大きい直径を有する第2の円の円上に配置される少なくとも1以上の皿バネ状部材からなるものとしている。
【0010】
このような入力装置とすることで、操作パネルに軽く触れた指の動きを読み取るコントロールディスクとして機能すると共に、操作パネルの外周に押釦的な機能が配置され、押釦スイッチとしても操作しやすいものとなる。
【0011】
また、別の発明では、上述の発明に加え、センサ部と導電性弾性体は、円周方向に第1の間隔にて等角度間隔に複数配置され、被押圧部材と押圧子は、円周方向に第2の間隔にて等角度間隔に複数配置され、センサ部と導電性弾性体の配置位置は、被押圧部材と押圧子の配置位置とは半径方向に重ならない位置とされるものとしている。
【0012】
このような入力装置とすることで、コントロールディスクとしての精度が良いものとなると共に、押釦スイッチとしても操作しやすいものとなる。
【0013】
また、別の発明では、上述の発明に加え、押圧子と被押圧部材との間を、導電性弾性体とセンサ部との間隙より大きいものとしている。
【0014】
このような入力装置とすることで、センサ部の動作が、被押圧部材の動作に対して優先されるようになり、コントロールディスクの良さが生かされるものとなる。一方、コントロールディスクとして軽く触れている際には、被押圧部材がOFFの状態に保たれるため、被押圧部材の誤動作が生じにくい入力装置とすることができる。
【0015】
また、別の発明では、上述の発明に加え、センサ部と導電性弾性体は、直径5mm以上の円周上にそれぞれの中心が45度の角度を為して各8つ配置され、被押圧部材と押圧子は、直径10mm以上の円周上にそれぞれの中心が90度の角度を為して各4つ配置され、センサ部と、センサ部に最も接近している被押圧部材とは、操作中心を基準としてそれぞれの中心が円周方向に20〜25度の角度を為しているものとしている。
【0016】
このような入力装置とすることで、センサ部と被押圧部材とを基板上にスペース効率よく配置でき、小型化が可能となる。
【0017】
また、別の発明では、請求項1から6のいずれか1項に記載の入力装置と、入力装置からの信号に基づいて操作された内容を判断する判断部と、判断部の判断に基づいて操作内容を実行する実行部と、実行される内容を表示する表示部とを有する電子機器としている。
【0018】
このような電子機器とすることで、精度が良いコントロールディスクとしての機能および操作のしやすい方向指示キーとしての機能を両方備える入力装置を備える電子機器となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、すなわち、コントロールディスクの良さを生かしつつ、コントロールディスクの欠点を解消した入力装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、第1の実施の形態に係る電子機器1を操作面側から見た斜視図である。
【0021】
電子機器1には、本発明の1実施例となる入力装置100および押釦スイッチ等が設けられている。したがって、電子機器1の操作面には、押釦スイッチとなるキートップ2および入力装置100の操作パネル3が配置されている。操作パネル3は、環状であり、環状の操作パネル3で囲まれた内側部分には、キートップ2やその他の押釦スイッチが配置されている。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る入力装置100において、図1中のA−A線で切断し、A−A線の矢印方向に見た場合の断面を拡大して示す拡大断面図である。図3は、図1で示すA−A線と成す角度θが22.5°のC−C線で切断した断面を、C−C線の矢印の方向に見た場合の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【0023】
キートップ2および操作パネル3の操作面と逆側(以後、操作面側を表面、操作面と逆の面側を裏面と言う。)には、弾性シート20が貼り付けられている。また、弾性シート20の裏面であって、キートップ2の裏面および操作パネル3の裏面部分には、押圧子11が形成されている。以後、キートップ2の裏面部分の押圧子11を指す場合には、押圧子11aという。また、操作パネル3の裏面部分の押圧子11を指す場合には、押圧子11bという。そして、押圧子11aおよび押圧子11bの両方を指す場合には、押圧子11と称することとする。また、弾性シート20の裏面であって、操作パネル3の裏面部分には、押圧子11bと重ならない後述の位置に、導電性弾性体21が形成されている。
【0024】
また、弾性シート20に対向して、基板30が設けられている。基板30の弾性シート20に対向する面には、センサ部23および、被押圧部材10としての固定接点13および固定接点13を覆う皿バネ状部材12が設けられている。また、皿バネ状部材12と押圧子11とは、距離Fで離間して対向するように設けられ、導電性弾性体21とセンサ部23とは、距離Gで対向するように設けられている。本実施の形態において、距離Fは、例えば、0.2〜0.35mmであり、距離Gは、0.2〜0.3mmである。
【0025】
キートップ2および操作パネル3は、樹脂、金属あるいはそれらのコンポジット等からなる部材であり、単一成形体であるか複数の層から成る成形体であるかを問わない。複数の層から成るキートップ2および操作パネル3を採用する場合、キートップ2および操作パネル3は、表面が樹脂シートで被覆されている部材が好ましく、被覆領域が一部であっても全部であっても良い。本実施の形態に係る樹脂製のキートップ2および操作パネル3の材料には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂等の各樹脂を使用できるが、特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂である。
【0026】
本実施の形態において、操作パネル3としては、例えば、外周円の直径が約20mm、内周円の直径が約7mmの平面部を有する厚さが約1mmの環状パネル3を好適に用いることができる。また、操作パネル3に指を沿わせて環状になぞることを容易にする目的で、例えば、約0.2mm間隔で同心円状の溝を形成しても良い。また、操作パネル3の位置が指触にてわかるように、操作パネル3の外周部分の厚さを外周以外の部分よりも厚くすることで、円輪状の縁を形成しても良い。
【0027】
キートップ2および操作パネル3は、弾性シート20に固定されている。具体的には、キートップ2および操作パネル3は、キートップ2および操作パネル3の裏面部分に設けられた接着層40(図6参照)を介して、弾性シート20に接着されている。弾性シート20の材料としては、上方から押した際に変形することのできる柔らかい材料が好ましい。具体的には、厚さが約10μm〜約200μmであり、かつショアーA硬度が20〜90である弾性シート20が特に好適である。そのような弾性シート20として、例えば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムあるいは天然ゴム等から成るシートが挙げられる。それらの材料の中でも、耐久性が高いウレタン系エラストマーから成るシートを用いることがより好ましい。さらに、弾性シート20は、加飾されていてもよい。また、弾性シート20は、光透過率が高いものとしても良い。光透過率が高い弾性シート20を採用した場合には、弾性シート20の裏側より照光することにより、キートップ2および操作パネル3の外周を照光できるため、暗い中でもキートップ2および操作パネル3の位置がわかりやすくなる。
【0028】
図4は、図1の一点差線で示される領域Bについて、表側より基板30を見たときの平面図であり、固定接点13を覆う皿バネ状部材12を透過して示す図である。また、図5は、操作パネル3の裏側部分について、弾性シート20の裏面側より見たときの平面図である。
【0029】
被押圧部材10aおよび被押圧部材10bは、本実施の形態に係る入力装置100に設けられると共に、入力装置100の中心部分に配置されるキートップ2にも設けられている。入力装置100において、被押圧部材10aは、環状の操作パネル3の中心開口部に設けられる。一方、被押圧部材10bは、操作パネル3の操作中心Lを基準として、例えば、直径が約16mmである第2の円15上に、円周方向にそれぞれ角度X(図5参照:スイッチ部材10bの各中心間の角度)として、90度の角度を為すように4箇所に設けられる。なお、本明細書において、被押圧部材10aおよび被押圧部材10bの両方を指す場合には、被押圧部材10という。
【0030】
被押圧部材10は、基板30側に配置される固定接点13、導電部14および皿バネ状部材12を含む。また、操作パネル3の裏面部分に設けられる押圧子11bおよび被押圧部材10bは、操作パネル3の外周側に設けられることが好ましい。すなわち、本実施の形態において、第1の円25は、第2の円15よりも直径が小さく、内側に設けられていることが好ましい。なぜなら、円状あるいは環状の十字キーを設けた場合には、使用者は、その指示方向の最も外周側を押圧する傾向があるためである。しかし、操作パネル3の直径が18mm以下の場合には、第1の円25と第2の円15とは、同一の円弧としたほうが好ましい。なぜなら、直径が18mm以下の操作パネル3は、円周が小さいため、ユーザは、操作パネル3の外周側を用いて円弧を描く傾向があるためである。押圧しやすい部分に押圧子11bおよび被押圧部材10bを設けると、被押圧部材10bの真上から被押圧部材10bが押圧されるため、スイッチを正確にオンまたはオフにできる。
【0031】
押圧子11は、固定接点13とその固定接点13を覆う皿バネ状部材12とを接触させるために、弾性シート20の裏面であって、キートップ2や操作パネル3の裏面部分に設けられる。押圧子11は、弾性シート20が押圧子11を有する形状に一体成型されていることで形成されていてもよいし、弾性シート20に接着剤等で固定されてもよい。
【0032】
被押圧部材10に含まれる固定接点13および導電部14は、基板30の上に設けられた導電部分である。具体的には、絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔等の導電体にて形成される。
【0033】
被押圧部材10に含まれる皿バネ状部材12は、ドーム形状とされ、その外縁が導電部14に接続されて、固定接点13を覆うように形成されている。この皿バネ状部材12は、固定接点13と導電部14とを接続/非接続する可動接点としての役割を担う。本実施形態における皿バネ状部材12は、例えば、厚みが約0.025mmおよび直径が4mm〜5mmである。また、本実施の形態における皿バネ状部材12の可動距離、すなわち、皿バネ状部材12を皿バネ状部材12の突出方向と逆方向に、1.0〜3.0Nの荷重で押圧した場合に、皿バネ状部材12のドーム頂点が変位できる距離は、0.10〜0.25mmである。しかし、皿バネ状部材12は、金属製に限らず、逆椀上に成型したPET樹脂に導電印刷を施したポリエステル製ドームまたは導電性樹脂等により形成されていても良い。また、例えば、短辺が3mmおよび長辺が4mmの楕円形状の皿バネ状部材12等を用いてもよい。なお、皿バネ状部材12を金属製とする場合には、よりクリック感が生じ良好な操作感覚を得ることができる。
【0034】
以上のように構成された被押圧部材10において、キートップ2あるいは操作パネル3が押下されると、押圧子11が皿バネ状部材12を押圧する。この押圧力(通常は、およそ1.0〜3.0N)によって皿バネ状部材12が座屈する。この座屈した皿バネ状部材12によって固定接点13と導電部14とが接続されて固定接点13が導通状態になる。キートップ2あるいは操作パネル3の押下が解放されると、皿バネ状部材12が復帰する。これにより、皿バネ状部材12によって接続されていた固定接点13および導通部14が非接続となり、固定接点13は、非導通状態になる。
【0035】
導電性弾性体21は、弾性シート20からセンサ部23に向かって突出する、直径が2.5mmの半球状の導電性の弾性体である。半球の導電性弾性体21の直径が2mm以上の場合には、押圧に対して急激に抵抗値が変化することがないため好ましい。また、導電性弾性体21が弾性シート20から突出している距離(以後、導電性弾性体21の高さという。)は、前述の皿バネ状部材12の可動距離よりも大きいことが好ましい。導電性弾性体21としては、操作パネル3の表面に指が触れることにより容易に変形するような弾性体であって、例えば、炭素材料等を含むショアー硬度が約50度から90度のゴム若しくはエラストマーが好ましい。ショアー硬度が50度から90度の導電性弾性体12を用いることで、ユーザが指を操作パネル3の上を滑らせた際に、操作パネル3が大きく沈み込み過ぎることがないことに加えて、ユーザの指が操作パネル3上を滑ることにより生じる圧力を、センサ部23が検出できるものとなる。
【0036】
また、本実施の形態において導電性弾性体21は、操作パネル3の操作中心Lを基準として、直径が、約10mmの第1の円25上に、円周方向に角度Y(図5参照:導電性弾性体21の各中心間の角度)として45度の角度を為して8箇所に設けられる。また、導電性弾性体21は、第2の円15よりも外側に位置する第1の円25上に設けられている被押圧部材10bに、半径方向においてそれらの中心が重ならないことが好ましい。例えば、導電性弾性体21は、操作パネル3の操作中心Lを基準として、最も接近している被押圧部材10bから、円周方向に角度Z(図5参照:導電性弾性体21の中心と被押圧部材10bの中心との間の角度)として22.5度の角度を為して設けられている。このような位置に導電性弾性体21が配置されることにより、操作パネル3を押し込む際に、導電性弾性体21が障害になりにくいので、使用者が、操作パネル3の外周の被押圧部材10bを押し込みやすい。また、誤作動しにくく、かつ、クリック感がよりよい入力装置100となる。
【0037】
センサ部23は、固定接点13と同様に、基板30に形成された導電部分である。また、センサ部23は、導電性弾性体21の直径とほぼ同じ直径内に、櫛歯状の一対の電極が互いに接触することなく噛み合った状態で形成されている。また、センサ部23は、導電性弾性体21に対向して設けられている。センサ部23は、操作パネル3上に指が触れると、触れた部分の裏側にある1つまたは複数の導電性弾性体21が押し下げられて、導電性弾性体21がセンサ部23に触れる。すると、センサ部23の電極間は、導電性弾性体21により短絡する。さらに導電性弾性体21が押圧されると、センサ部23への導電性弾性体21の接触面積が増加する。1つまたは複数のセンサ部23の接触面積の変化に応じて生じる電流量あるいは抵抗値の変化を、入力装置100の内部の中央処理装置(不図示)が測定することにより、入力装置100は、指の触れている方向と押圧強さを把握することができる。
【0038】
図6は、図2の破線で示される領域Dについて、拡大した拡大断面図である。また、図7は、図3の破線で示される領域Eについて拡大した拡大断面図である。
【0039】
操作パネル3に、指が触れていない状態において、押圧子11bと皿バネ状部材12との間の距離Gは、導電性弾性体21とセンサ部23との間の距離Fよりも大きい。距離Gが距離Fよりも大きい距離である場合には、操作パネル3に指が触れると、まず、導電性弾性体21が基板30に触れて、コントロールディスクとして機能し始めることができる。また、指が軽く触れている状態において、被押圧部材10bがOFFの状態に保たれやすくなるので、被押圧部材10bの誤動作が生じにくい入力装置とすることができる。すなわち、操作パネル3をより強く押し込んだ場合にのみ、被押圧部材10bが押圧されるものとなる。
【0040】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係る入力装置100では、環状のコントロールディスクの良さを生かしつつ、クリック感が得られる押釦スイッチを設けることができる。また、押釦スイッチを方向指示キーとする、上下左右の4方向の動操作が可能となる。
【0041】
次に、本実施の形態に係る入力装置100の製造方法について説明する。図8は、本実施の形態に係る入力装置100の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0042】
まず、センサ部23、固定接点13および導電部14が形成されている基板30を用意し、その基板30上に皿バネ状部材12を形成する(ステップS101)。ステップS101では、センサ部23、固定接点13および導電部14として所定の配線が形成されている基板30を用意する。そのプリント基板上に皿バネ状部材12を形成する。皿バネ状部材12を配置した状態で、粘着シートが皿バネ状部材12を覆うように基板30と密着されることにより、皿バネ状部材12は好適に固定される。
【0043】
また、基板30上に皿バネ状部材12を形成している間または形成前後に、別の工程にて、弾性シート20の片面に、操作パネル3およびキートップ2を、接着剤にて貼り付ける(ステップS201)。そして、弾性シート20の裏面に、接着剤にて押圧子11を貼り付ける(ステップS202)。そして、導電性弾性体21を、弾性シート20の裏側であって操作パネル3の部分に、接着剤にて貼り付ける(ステップS203)。そして、ステップS101にて用意した基板30と重ね合わせて、電子機器1の筐体に設置する。
【0044】
なお、操作パネル3およびキートップ2は、接着剤によりウレタンシートに接着することもできるし、両面テープ等の接着層を介在させる、あるいは熱融着等により接着してもよい。また、ステップS201〜S203は、上述した順序ではなくてもよい。例えば、逆の順序としたり、ステップS202を最初にしたりなど順序は、適宜変更されても良い。
【0045】
以上、本発明の実施の形態に係る入力装置100およびそれを用いた電子機器1の好適な例について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0046】
例えば、本実施の形態では、直径、角度あるいは距離等を具体的に記載しているが、これらの記載の数値に限らず、他の値でも良い。例えば、操作パネル3の大きさを変化させることで、各パラメータは変化しうるものである。また、導電性弾性体21、センサ部23、被押圧部材10bおよび押圧部11bは、必ずしも等間隔に配置されていなくてもよい。また、本明細書に記載した各数値は、その数値に限られるものではなく、誤差あるいは公差を含むものとする。たとえば、角度Zを22.5度としたが、この角度は、20〜25度の範囲であれば、省スペース等の面で好ましいものとなる。また、この角度を0度やその他の値としても良い。
【0047】
また、図4においては、被押圧部10bの中心と、センサ部23の中心とは、中心Lを基準とした径方向において重なっていないが、被押圧部10bの外周と、センサ部23の外周とは、径方向に重なっている。しかし、この径方向の重なりを全くなくすようにしてもよい。すなわち、被押圧部10bの外周とセンサ部23の外周が中心Lを基準とした径方向に重ならないように配置すると、より好ましいものとなる。なお、押圧子11bと導電性弾性体21とは、図5に示すように、径方向で全く重ならないような配置かつ形状とされており、好ましいものとなっているが、それらの中心が径方向で重ならないが外周が径方向でわずかに重なるように配置してもよい。あるいは、図9は、被押圧部10bとセンサ部23の基板上の配置の変形例を示す。図9に示すように、押圧子11bの中心と導電性弾性体21の中心が、同一の円周上に配置されてもよい。
【0048】
また、本実施の形態において、導電性弾性体21およびセンサ部23を、それぞれ8箇所に設けたが、操作パネル3、被押圧部材10b、押圧子11b、導電性弾性体21およびセンサ部23の厚さおよび大きさにより、7箇所以下でもよいし、9箇所以上でもよい。導電性弾性体21およびセンサ部23を8箇所よりも少なく設ける際には、3箇所以上設けることにより、コントロールディスクとして十分機能することができる。また、同様に、被押圧部材10bおよび押圧子11bは、それぞれ4箇所に設けたが、何箇所に設けてもよい。また、操作パネル3の中心に位置するキートップ2は、1つではなく複数としても良い。
【0049】
また、本実施の形態において、センサ部23は、櫛歯型の電極パターンを有するものとしているが、そのような形状に限らない。たとえば、同心円状のパターンを有するセンサ部23としてもよいし、他の形状でもよい。また、静電容量により導電性弾性体の圧縮量が測定されるようなセンサを用いてもよい。また、圧縮されることにより導電率が向上するような導電性弾性体や圧縮されることにより電流抵抗値が変化するような導電性弾性体を用いることにより、その導電性弾性体に加わる圧力を測定するようなシステムにしてもよい。
【0050】
また、本実施の形態において、距離Gは、距離Fよりも大きいものとしている。しかし、このような形態に限らない。距離Gは、距離Fと同じ、あるいは、距離Gは、距離Fよりも小さいものとしてもよい。しかし、距離Gが距離Fより大きい場合には、導電性弾性体21が基板30に触れる前に、被押圧部材10bと押圧子11bとが接触することがない。そのため、被押圧部材10bと押圧子11bとが障害とならず、操作パネル3を基板30へ向かって押し込みやすくない。したがって、距離Gが距離Fより大きい場合には、わずかな荷重の違いにより、導電性弾性体21の基板30への接触量を変化させることができる。すなわち、操作パネル3に加えられたわずかな荷重の差を検出することができるコントロールディスクになる。
【0051】
また、本実施の形態では、押釦スイッチとしてもコントロールディスクとしても機能する入力装置100としているが、このような形態に限らない。例えば、押釦スイッチとしてのみ機能させる、あるいはコントロールディスクとしてのみ機能させてもよい。さらに、ユーザが、押釦スイッチとしてのみ機能させるか、コントロールディスクとしてのみ機能させるか、あるいは、押釦スイッチとしてもコントロールディスクとしても機能させるかを選択できる電子機器1としてもよい。
【0052】
また、本実施の形態においては、キートップ2および操作パネル3と、弾性シート20とを接着剤により張り合わせたが、接着剤以外のものを用いてもよい。例えば、両面テープで貼り合わせても良いし、熱融着等により張り合わせても良い。また、キートップ2および操作パネル3の弾性シート20に対向する平面部は、全面を弾性シート20に固定される必要はない。例えば、隣接するキートップ2の間あるいは、操作パネル3の外周は、弾性シート20に接着しないようにしてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、導電性弾性体21の形状は、半球であるものとしているが、このような形態に限らない。例えば、先端部の曲率半径が2〜25mm程度の凸状物あるいは突起を用いてもよい。また、導電性弾性体21の硬度、先端形状あるいは基板30からの距離Fを適宜調整することで、動作安定性および操作感を調節することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、押圧子11の貼付工程(ステップS202)は、必ずしも行わなくて良い。かかる場合には、ステップS202を、予め押圧子11の形状を付与したキーシートを貼付する工程とするのが好ましい。また、弾性シート20への各部材への形成は、インサートモールド成形やアウトサートモールド成形等により、1つのステップで行うようにしてもよい。
【0055】
また、本実施の形態に係る入力装置100は、環状の操作パネル3よりも内側、すなわち、操作パネル3に囲まれた内側部分に、押釦スイッチを含むものとしているが、押釦スイッチは必須ではない。すなわち、押釦スイッチ以外の入力用部材をコントロールディスクに隣接して設けるような形態としてもよい。あるいは、コントロールディスクとして機能する部分のみを有する入力装置100としてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、環状の操作パネル3としているが、環状に限らない。例えば、環の一部分のみを用いてもよい。あるいは、円、十字、直線、三角、四角以上の多角形、曲線、あるいは楕円等、どのような形態でもよい。しかし、環状の場合には、指の動きを止めることなく、動かし続けて操作するような入力装置100とすることができる。
【実施例1】
【0057】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0058】
(試料作製方法)
まず、導電部材としてケッチェンブラックを50重量部配合したシリコーンゴムコンパウンドKE951(信越化学工業株式会社製)に、架橋剤C8(信越化学工業株式会社製)を加えて混練した。混練された未加硫導電ゴムを、プレス機で加熱成型し、直径が2.5mm、高さが0.2mm、先端部の曲率半径が25mmおよび硬度が70の導電性弾性体21を成型した。
【0059】
また、弾性シート20として、シリコーンゴムパウンドKE951Uを100重量部および架橋剤C8(信越化学工業株式会社製)を1重量部の割合で、配合し混練した未加硫ゴムを準備した。
【0060】
次に、成型した導電性弾性体21が第1の円25上に配置され、かつ第2の円15上に押圧子11bが形成されるような凹部を有する成型金型を用意し、成型した導電性弾性体21を成型金型に配置した。そして、未加硫ゴムを配置して、180℃で3分間、加熱および加圧した。このようにして、導電性弾性体21および押圧子11bがシリコーンゴム製の弾性シート20上に一体的にインサート成型された。
【0061】
次に、弾性シート20の押圧子11bおよび導電性弾性体21が形成されていない方の面に、外径20mmおよび内径7mmの円盤状の操作パネル3を、両面テープ(日東電工製)にて貼り付けた。両面テープ(日東電工製#5002)は、シリコーン用の粘着剤を有する面を弾性シート20側に、アクリル用の粘着剤を有する面を操作パネル3側に貼り付ける。
【0062】
次に、直径4mm、動作を開始するために必要な動作荷重が1.8Nおよび可動距離が0.18mmの金属製の皿バネ状部材12を、用意した。そしてその皿バネ状部材12を基板30となるプリント基板の第2の円15上に設けた。なお、金属製の皿バネ状部材12は、固定接点13をまたがるように設けられ、固定接点13の両側に設けられた導電部14に接続および固定した。皿バネ状部材12の固定には、0.025mmの基材厚さで接着剤層を有するポリエチレンテレフタレートシートを使用した。操作パネル3が貼り付けられた弾性シート20の、押圧子11bと金属製の皿バネ状部材12とが向かいあうように設置した入力装置100を作製した。押圧子11bと金属製の皿バネ状部材12との間隙の距離Fを変化させた実施例、および第1の円15と第2の円25の直径を変化させた実施例を作製し、各実施例に係る入力装置100の操作感および誤動作の状況を評価した。その評価結果を、表1に示す。
【0063】
(判定基準)
入力装置100の操作感および誤動作の状況を以下の基準で評価した。
◎・・・押釦スイッチとしてもコントロールディスクとしても操作しやすく、誤動作がない。
○・・・押釦スイッチとしてあるいはコントロールディスクとして用いる際に違和感があるが誤動作はない。
△・・・押釦スイッチとしてあるいはコントロールディスクとして用いる際に誤動作がある。
【0064】
【表1】

【0065】
第1の円が9.8mm、および第2の円が15.4mmである(すなわち、第1の円が第2の円よりも外側にある)実施例1〜5の各入力装置100について動作を評価した。距離Gと距離Fとが同じである実施例5は、誤動作が多い入力装置100となった。一方、距離Gが距離Fよりも大きい実施例1〜4の入力装置では、良好に動作する入力装置100であった。
【0066】
特に、距離Gが、0.3mm以内である実施例1および実施例2は、コントロールディスクとして動作させる場合および押釦スイッチとして動作させる場合の両方の場合において、操作感が良好な入力装置100であった。具体的には、コントロールディスクとして動作させる場合には、軽く触れるだけでよく、一方、押釦スイッチとして動作させる場合には、クリック感が得られる入力装置100であった。
【0067】
実施例4の距離Gと距離Fとの距離差は、実施例1と同じであるが、距離Gが実施例1よりも大きいため、距離Fが他の実施例の入力装置100よりも大きい。そのため、操作パネル3の裏面に配置された押圧子11bと金属製の皿バネ状部材21との間隙が大きすぎるために、被押圧部材10bを押し込むためには、より大きく操作パネルを上下する必要があった。したがって、被押圧部材10bを押し込むための操作が重く感じられる入力装置100であった。
【0068】
距離Gが0.35mmであり、距離Fは、他の実施例と同じ0.2mmの実施例3の入力装置100では、操作パネル3の裏面に配置された押圧子11bと金属製の皿バネ状部材21との間隙が大きすぎるために、被押圧部材10bを押し込むためには、操作パネル3が大きく上下する必要があるものとなった。したがって、被押圧部材10bを押し込むための操作が重く感じられる入力装置100になった。
【0069】
実施例4の入力装置100において、距離Gと距離Fとの距離差は、実施例1と同じであるが、距離Gが実施例1よりも大きい。その結果、実施例4の入力装置100において距離Fは、他の実施例の入力装置100よりも大きい。そのため、コントロールディスクとして動作させる際に、操作感が重かった。これは、導電性弾性体21が基板に到達するまでの距離(距離F)が大きいので、コントロールディスクとして動作させると、操作パネル3が大きく沈みこんでしまうためである。
【0070】
第1の円が15mm、および第2の円が8.5mmである、すなわち、第1の円が第2の円よりも内側にある入力装置100として、実施例6の入力装置100について動作を評価した。第1の円が第2の円よりも内側にある場合には、距離Gが距離Fよりも大きく、かつ距離Gが、0.3mm以内である場合にも、誤動作が多い入力装置100となった。したがって、被押圧部材10bを押し込むための操作が重く感じられる入力装置100になった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、各種の入力装置に利用できる。特に、電子機器の入力装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器を操作面側から見た斜視図である。
【図2】図1中のA−A線で切断した断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図1中のC−C線で切断した断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図1の領域Bについて、表側より基板を見たときの平面図である。
【図5】図1の領域Bについて操作パネルの裏側部分を見た図で、弾性シートの裏面側より弾性シートの面を見たときの平面図(押圧子を省略)である。
【図6】図2のDで示す領域の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】図3のEで示す領域の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図8】本実施の形態に係る入力装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図9】本実施の形態の変形例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 電子機器
3 操作パネル
10 被押圧部材
10a 被押圧部材
10b 被押圧部材
11 押圧子(押圧部材)
11a 押圧子
11b 押圧子
12 皿バネ状部材(被押圧部材の一部)
13 固定接点(被押圧部材の一部)
14 導電部(被押圧部材の一部)
21 導電性弾性体
23 センサ部
L 操作中心
F 押圧子と被押圧部材との間
G 導電性弾性体とセンサ部との間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面を有する操作パネルと、
上記操作パネルの平面部と対向して配置される基板と、
上記操作パネルに固定された導電性弾性体と対向するように上記基板に設置されたセンサ部と、
上記操作パネルに固定された押圧子に対向し、かつ上記操作パネルの操作中心を基準とし、上記センサ部とはその中心が放射方向において重ならないように上記基板に設置された被押圧部材と、
を有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記操作パネルは、円状、環状あるいは円若しくは環の一部とされ、
前記センサ部は、前記操作パネルの中心と同一の中心を有する第1の円の円上に配置され、前記被押圧部材は、前記操作パネルの中心と同一の中心を有し、かつ第1の円よりも大きい直径を有する第2の円の円上に配置される少なくとも1以上の皿バネ状部材からなることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記センサ部と前記導電性弾性体は、円周方向に第1の間隔にて等角度間隔に複数配置され、
前記被押圧部材と前記押圧子は、円周方向に第2の間隔にて等角度間隔に複数配置され、
前記センサ部と前記導電性弾性体の配置位置は、前記被押圧部材と前記押圧子の配置位置とは半径方向に重ならない位置とされることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記押圧子と、前記被押圧部材との間を、
前記導電性弾性体と、前記センサ部との間隙より大きいことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記センサ部と前記導電性弾性体は、直径5mm以上の円周上にそれぞれの中心が45度の角度を為して各8つ配置され、
前記被押圧部材と前記押圧子は、直径10mm以上の円周上にそれぞれの中心が90度の角度を為して各4つ配置され、
前記センサ部と、前記センサ部に最も接近している前記被押圧部材とは、前記操作中心を基準としてそれぞれの中心が円周方向に20〜25度の角度を為していることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
請求項1から6のいずれか1項に記載の入力装置と、
上記入力装置からの信号に基づいて操作された内容を判断する判断部と、
上記判断部の判断に基づいて操作内容を実行する実行部と、
実行される内容を表示する表示部と、を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−50028(P2010−50028A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215288(P2008−215288)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】