全反射蛍光X線分析方法及び装置
【課題】1次X線の強度を低下させることなく試料の微小領域に集光させることができるようにする。
【解決手段】試料1を載置する試料台13と、1次X線を試料1の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部2と、試料1の表面に対向して配置され、試料1から発生する蛍光X線を検出する検出器11とを備えている。1次X線照射部2は1次X線を発生するX線源3、及びその1次X線を集光して試料1に照射するポリキャピラリーX線レンズ5を備え、さらに好ましくはポリキャピラリーX線レンズ5から出射した1次X線のうち試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するスリット7を備えている。
【解決手段】試料1を載置する試料台13と、1次X線を試料1の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部2と、試料1の表面に対向して配置され、試料1から発生する蛍光X線を検出する検出器11とを備えている。1次X線照射部2は1次X線を発生するX線源3、及びその1次X線を集光して試料1に照射するポリキャピラリーX線レンズ5を備え、さらに好ましくはポリキャピラリーX線レンズ5から出射した1次X線のうち試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するスリット7を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次X線を試料表面に向かって全反射する入射角度で入射して、試料表面から発生する蛍光X線を分析する全反射蛍光X線分析方法及びそれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析装置を用いて測定の検出限界を良くするためには、試料に入射する1次X線強度を上げるだけでなく、バックグラウンドを下げることも必要である。
全反射蛍光X線分析方法はシリコンウエハのような平坦な試料表面で1次X線を全反射させ、試料表面に対向させて検出器を配置し、1次X線を受けて測定対象としての試料表面の微小領域又は試料表面上についた不純物から発生する蛍光X線を検出することにより、1次X線の散乱に起因する連続X線バックグラウンドを軽減して蛍光X線を高感度に測定する方法である。
【0003】
通常、1次X線としては幅1cm程度、厚さ数十μmから数百μmのシート状のX線ビームを用い、試料表面に対して0.1度程度の非常に浅い角度で照射する。よって、試料表面のかなり広い範囲を照射していることになる。
【0004】
試料表面自身も大面積を有しているので、1次X線により広範囲を照射し広範囲の蛍光X線分析を行う点は望ましいとも言える。しかし、近年はシリコンウエハ上に存在する微粒子の不純物分析というような微小領域の分析に対する需要が高まっている。
【0005】
そのような微小領域の分析において、例えば微粒子の直径は数μm以下であるため、もはやシリコンウエハ表面の広範囲を1次X線で照射する必要はなくなる。1次X線としてシート状のX線ビームを使用する場合には、微粒子に対して集光能力はなく、むしろ、測定対象の微粒子以外の箇所にも1次X線が照射されることによって微粒子自身の分析を困難にしてしまう。このことは、高輝度のX線源を使用して1次X線の強度を上げても解決はしない。よって、分析箇所である微小領域での1次X線の輝度を選択的に高める工夫が必要とされている。
【0006】
全反射蛍光X線分析の利点を生かしつつ、高輝度のX線を用いることなく高い分析精度を得ることを目的として、1次X線を分析箇所に集光し微小領域からの蛍光X線発生強度を増大させる試みとして、分光結晶からなる複数の分光素子を用いて異なる光路から1次X線を集光させるようにした全反射蛍光X線分析装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−317546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分光素子を用いて1次X線を集光させる方法は、分光することにより1次X線強度が低下してしまうだけでなく、複数の分光結晶を所定の位置と方向に配置するための高精度で大型の機構を必要とする。
【0008】
また、生体物質や環境物質を計測する分野では、微量の試料を扱う必要から微小流路を用いた送液や反応を行なうことのできるマイクロチップを用いたマイクロチップ分析と呼ばれる方法が試みられている。マイクロチップ分析での検出方法として全反射蛍光X線分析を応用することが考えられる。その場合、極めて微量の物質計測が要求されるとともに、小型簡便な構造であることが必須条件となる。特にX線光源の小型化は安全性の点でも必須である。
【0009】
本発明は、試料表面上の微粒子に限らず、試料の微小領域を分析することを対象にし、全反射蛍光X線分析の利点を生かしつつ、X線源から照射される1次X線の強度を低下させることなく1次X線を試料の微小領域に集光させることができるようにして、測定対象からの蛍光X線発生強度を高めて高感度な全反射蛍光X線分析を行なうことのできる方法と装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の全反射蛍光X線分析方法は、試料表面に照射する1次X線を、ポリキャピラリーX線レンズを用いて集光させる点に特徴がある。
【0011】
好ましくは、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線は、その進行方向に対して直交する方向の断面形状が線状であるようにする。
【0012】
より好ましくは、試料表面に照射する1次X線のうち、試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽する。
【0013】
この全反射蛍光X線分析方法を実現する本発明の全反射蛍光X線分析装置は、試料を載置する試料台と、1次X線を発生するX線源及びその1次X線を集光して試料台上に載置された試料に照射するポリキャピラリーX線レンズを含み、その1次X線を試料の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部と、試料台上に載置された試料の表面に対向して配置され、試料から発生する蛍光X線を検出する検出器とを備えている。
【0014】
ポリキャピラリーX線レンズは、その中をX線が全反射して伝わる細いガラス管(モノキャピラリー)が多数束ねられたものであり、キャピラリーを緩やかに曲げることによりX線の軌道を曲げ、キャピラリーから出射するX線が1点に集中するように形成されたものである。各モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもっている。ポリキャピラリーX線レンズは全反射によりX線の軌道を曲げ、分光を伴わないため、分光結晶を用いた分光素子のようなX線強度の減衰はない。
【0015】
より好ましくは、ポリキャピラリーX線レンズの構成を最適化して、分析精度の向上とエックス線光源部の小型化を図るために、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにする。そのために、ポリキャピラリーX線レンズは、X線光源に対面する入射面ではモノキャピラリーの端部が円形面状に配列され、試料に対面する出射面ではモノキャピラリーの端部が試料表面に平行な線状に、かつ放射方向が一点に向かって集光するように配列されているものとする。その集光点の位置に試料が配置される。
【0016】
全反射蛍光X線分析装置のより好ましい形態では、1次X線照射部は、ポリキャピラリーX線レンズの出射側と試料台との間にスリットを備え、そのスリットは試料台上に載置された試料の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するように配置されている。
【0017】
ここで、「スリット」の語は、一般には細長い開口を意味するが、本発明では全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線、すなわち全反射臨界角より大きい入射角をもつ1次X線を遮蔽することができればよいので、細長い開口に限らず、全反射臨界角より大きい入射角側の1次X線のみを遮蔽する遮蔽板も含む概念として使用している。
【0018】
スリットで測定に適した角度以外のX線を遮断する場合、遮断しすぎるとX線強度が極端に弱くなり、蛍光も微弱となる。X線強度が弱くなるのを補うために過大なX線源を用いると分析装置が大型になる。一方、スリットを広げて広い角度で試料に照射すると測定しようとする試料以外の部分からの1次X線や蛍光X線がノイズとしてでるため分析精度が低下する。
【0019】
そこで、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにする好ましい形態では、スリットを用いなくても測定に適した角度以外のX線が出射されないようにすることができればスリットを設けないようにして、スリットによりX線強度が弱くなる問題を避けることができる。スリットを用いるとしても、スリットの形状に沿った線状に集光させることにより、スリットにより遮断されるX線の割合は少なくてすむ。この形態では、スリットの有無にかかわらずX線強度が大幅に弱くなる問題を避けることができるので、過大なX線源を用いる必要がなくなる。
【0020】
試料台はその上に載置された試料の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料の表面の傾き方向を調整する調整機構を備えていることが好ましい。
また、試料台上に載置された試料と検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
通常の全反射蛍光X線分析は1次X線が空間的に集光されることなく広範囲を照射するものであるが、ポリキャピラリーX線レンズを用いた本発明では1次X線の強度を落とすことなく、微粒子などの微小な測定箇所に1次X線を集光させることができる。このように、試料表面での全反射条件を満たしながら集光効果が得られるので、蛍光X線強度が増大し測定感度が向上する。
【0022】
試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線をスリットにより遮蔽するようにすれば、全ての1次X線の試料表面に対する入射角を全反射臨界角以下に保つことができ、バックグラウンドをより少なくして測定限界を向上させることができる。
【0023】
さらに、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにすれば、スリットを設けなくても1次X線の試料表面に対する入射角を全反射臨界角以下に保つことができるようになるので、X線源からポリキャピラリーX線レンズに取り込まれたX線はほぼ全て試料に照射される。さらに角度の均一性は高く、全反射条件がそろうため分析精度はきわめて高いものとなり、微量分析に適した装置となる。また、X線源も相対的に小型化が可能であり、簡便な持ち運びに適した装置を可能とする。
【0024】
ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにした場合にも、スリットを付加すればさらに精度は高くなる。
【0025】
試料と検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備えれば、試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に一実施例を図1、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
図1は全反射蛍光X線分析装置の全体正面図である。図2と図3はキャピラリーX線レンズ3とスリット5の配置を示す正面断面図と上面断面図であり、それぞれの図において(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【0027】
試料台13は試料1を載置するものであり、試料台13に載置された試料1の表面に対し、1次X線を、全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部2が設けられている。1次X線照射部2は1次X線を発生するX線源3、及びその1次X線を集光して試料1に照射するポリキャピラリーX線レンズ5を備えている。ポリキャピラリーX線レンズ5により1次X線を数十μmのビーム径に集光することができる。
【0028】
ポリキャピラリーX線レンズ5は多数のモノキャピラリーを束ねた構造である。図では個々のモノキャピラリーの図示は省略されている。モノキャピラリーは内径数ミクロンの石英管である。モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもったものである。
【0029】
この実施例では、ポリキャピラリーX線レンズ5から出射した1次X線のうち試料1の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するために、基板1と平行なスリット7をさらに備えている。試料1から発生する蛍光X線を検出するために、試料台13に載置された試料1の表面に対向して検出器11が配置されている。
【0030】
試料台13はその上に載置された試料1の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料1の表面の傾き方向を調整する調整機構13a,13bを備えており、試料1の表面の測定部位が検出器11の直下に位置し、入射X線の入試角度を調整することができる。試料台13は高さ方向(Z方向)を調整する手動ジャッキ15を介して水平面内方向(X−Y方向)に移動可能な手動X−Yステージ14上に載置されている。試料台13の調整機構13a,13bは、その上面に試料1を載置して試料1の表面の水平面内及び高さ方向(X−Y−Z方向)の調整を行なうX−Y−Zステッピングモータ13aと、X−Y−Zステッピングモータ13aの下に配置され、試料1の表面の傾きを入射X線に対して調整する傾斜モータ13bとを含んでいる。試料台13は、その上に載置された試料1を支持するとともに、X,Y,Z方向の移動及び試料表面を傾斜させる回転運動を可能にしている。
【0031】
X−Y−Zステッピングモータ13aと傾斜モータ13bはモータードライブ21によって駆動され、そのモータードライブ21はパーソナルコンピュータ(PC)17によって制御されるモーターコントローラ19により制御される。
【0032】
試料台13上に載置された試料1の表面の測定部位が傾斜モータ13bの回転中心で、かつポリキャピラリーX線レンズ5による1次X線の焦点位置にくるように試料1の表面を監視するために、試料台13の斜め上方にCCDカメラ23が配置されており、CCDカメラ23により撮像された試料1の表面状態がモニタ25に映し出される。
【0033】
CCDカメラ23によるポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置の調整は次のように行う。初めに試料台13の表面又はその上に載置した平坦な基板上に、直径10μm程度のタングステン(W)ワイヤーを十字形に張りつけて、これを試料に見立てる。手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15によりその十字形タングステンワイヤーをポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置になると思われる位置に大まかに位置決めする。
【0034】
次に、X線源3からX線を照射して、十字形タングステンワイヤーからの蛍光X線をモニターしながら、X−Y−Zステッピングモータ13aを駆動してX線ビームの位置を探る。すなわち、蛍光X線の検出強度が最大になる位置がポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置である。ポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置が決まれば、そのときの十字形タングステンワイヤーにCCDカメラ23の焦点が合うようにCCDカメラ23の位置及びその焦点を調整しておく。つまり、次回からは、モニタ25を見て、CCDカメラ23で焦点があった場所がポリキャピラリーX線レンズ5によるX線ビームの焦点位置となる。
【0035】
X線源3としては市販のX線管を用い、X線源3のX線出射窓にはベリリウム、窒化ホウ素、グラファイトなどのX線透過材料が用いられている。
X線源3のX線出射窓とポリキャピラリーX線レンズ5の間には、管球由来のX線が蛍光X線測定に影響を与えるのを防ぐために、ジルコニウム、アルミニウム、真鍮など、測定対象元素に応じて適当なフィルタが設けられることがある。
【0036】
ここでは、X線源3として、モリブデンをターゲットとし、ベリリウムX線出射窓をもつX線管を使用し、X線源3のX線出射窓とポリキャピラリーX線レンズ5との間にジルコニウムフィルタを配置した。
【0037】
図2、図3に示されるように、X光源1から発生したX線はポリキャピラリーX線レンズ5により試料1の表面の微小領域9に点状に3次元的に集光される、平坦な基板1の表面に対して全反射臨界角を上回る大きな入射角度で入射する1次X線光路が発生する。そこで、図2に示されるように、ポリキャピラリーX線レンズ5と試料1との間に配置されたスリット7により、試料1の表面へ入射する1次X線のうち、その入射角θが全反射臨界角θ0を上回るものは遮蔽される。
【0038】
X線検出器には波長分散型分光器を備えたものとエネルギー分散型X線分光器を備えたものがある。波長分散型分光器は湾曲型の結晶の回折現象を用いる。エネルギー分散型X線分光器は試料から発生する全てのX線を検出器に同時に取り込み、X線のエネルギー選別を電気的に行うものである。エネルギー分散型X線分光器は波長分散型分光器に比べてエネルギー分解能が劣るものの測定時間が短くてすみ、全エネルギー範囲を同時に測定することができるという利点をもっている。それに対して波長分散型分光器は、エネルギー分散型X線分光器よりも測定時間が長くなる反面、エネルギー分解能が優れているという利点をもっている。元素分析では、これらの分解能の異なる2種類の分光器のいずれを使用してもよく、併用することもできる。ここでは、測定時間を短くするためにエネルギー分散型X線分光器を用いる。
【0039】
以下に一実施例の動作を説明する。
試料1としてシリコンウエハを取り上げる。
試料1を試料台13上に載置し、モニタ25に映し出された試料1の表面画像を見ながら、試料1の表面の測定部位が傾斜モータ13bの回転中心で、かつポリキャピラリーX線レンズ5による1次X線の焦点位置にくるように、手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15を調整する。すなわち、CCDカメラ23はポリキャピラリーX線レンズ5によるX線ビームの焦点位置に焦点が合うように予め調整されているので、モニタ25に映し出された試料1の表面画像が焦点のあった状態となるように手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15を調整する。
【0040】
次に、試料1にX線源3からX線を照射しながらX線検出器11により蛍光X線を取り込み、その強度によりX−Y−Zステッピングモータ13aと傾斜モータ13bを調整して試料1の表面のX,Y,Z方向及び傾斜角を微調整する。X線源3はMoターゲットを50KeV、0.5mAで動作させた。
【0041】
スリット7として基板1の表面に平行な30μm幅の細長い開口をもつものを配置する。その高さを調整するために、スリット7を上下方向に移動させながら試料1としてのシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線の強度をモニタして、その強度が最大となる位置に設定する。図4はそのSiKα線の強度をモニタした結果であり、この例ではスリット7を設置した基準位置から約2mm上方に移動させた位置でポリキャピラリーX線レンズ5の出射口の中央に調整され、最大強度が得られた。図4の縦軸は60秒間の検出値の積分値、横軸の数値はこの実施例についてのものであり、その数値そのものには普遍的な意味はない。
【0042】
図5は図4に示されたようにスリット7の高さを最適な位置(この場合は高さ約2mmの位置)に調整した後、傾斜モータ13bを駆動して試料1の表面の傾きを変化させて、試料1の表面に対するX線ビームの入射角度を変化させてSiKα線強度をモニタする。図5の縦軸は60秒間の検出値の積分値、横軸は傾斜ステージである傾斜モータ13bの読み値であるが、およそ1.0度あたりで強度の立ち上がりが見られることから、この実施例の装置ではこのあたりが全反射臨界角度と考えられる。
【0043】
このように調整された条件で取得したシリコンウエハの蛍光X線スペクトルを図6に示す。縦軸は蛍光X線強度を1秒当りの平均値(カウント/秒)として表わしたものである。この蛍光X線スペクトルは、試料の傾きが図5に示された傾斜モータ13bの読み値で1.0度に設定し、X線源3のMoターゲットを50KeV、0.5mAで動作させたときのものである。Siの明瞭な蛍光X線が検出されている。Arの蛍光X線も検出されているが、このArはシリコンウエハ近傍又はX線光路中の大気中のArが励起されたものと考えられる。
【0044】
図7は他の実施例を表わす。試料からの蛍光X線を受ける検出器側にもポリキャピラリーX線レンズ27が取り付けられている。そのポリキャピラリーX線レンズ27以外の構成は図1の実施例と同じである。
【0045】
このように、検出器側にもポリキャピラリーX線レンズ27を取り付けることにより、微粒子のような微小部からの信号を効率よく検出できるようになり、検出効率のみならず、微小部試料以外からのX線の信号を取り込まなくなるので、S/B(信号対バックグラウンド)比の向上にも役立つ。
【0046】
図8と図9は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズの他の実施例を表したものである。図8(A)は平面図、(B)は側面図であり、図9はモノキャピラリーの配列を概略的に示したポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。
【0047】
ポリキャピラリーX線レンズ35は図9に示されるように多数のモノキャピラリー5cを束ねた構造である。図8では個々のモノキャピラリーの図示は省略している。モノキャピラリー5cは図2,3に示したポリキャピラリーX線レンズ5を構成しているものと同じであるが、その束ね方が異なっている。
【0048】
ポリキャピラリーX線レンズ35はX線に対面する入射面5aは円形である。入射面5aは点光源であるX線源から立体的なX線の放射を受ける。入射面35aに端面が配置された各モノキャピラリー35cに入射したX線を各モノキャピラリー35cで全反射させつつ出射面35bへ伝播させるため、各モノキャピラリー35cの内径は入射側のA部からB部にかけて拡大している。さらに中間部のB−C間で面配列から直線配列に並べ直しされている。さらに、出射側のC−D間で出射方向が一点に集中するように焦点を定めて配列されている。その焦点となる位置に試料を配置する。また、C−D間ではモノキュピラリーの内径は漸次縮小している。
【0049】
このような構造で、X線源に対面するポリキャピラリーX線レンズの入射面35aでは複数のモノキャピラリー35cの端部が面状に配列されているので、X線源から立体的に放射されるX線ほぼ全量がポリキャピラリーX線レンズ35に取り込まれる。ポリキャピラリーX線レンズ35内に取り込まれたX線は各モノキャピラリー35cの内壁で全反射を繰り返しながら、入射面から出射面にかけて内径がいったん広がった後、漸次細くなるモノキャピラリー35c内を進行し、試料に対面するポリキャピラリーX線レンズの出射面35bに至る。出射面35bでは複数のモノキャピラリー端部が試料に対して同一の全反射角度になるように試料表面に平行な線状に配列されている。また、水平方向では各モノキャピラリー35cの放射方向が試料の配置される位置に集中して向かうように配列されている。
【0050】
図10は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表したものであり、モノキャピラリーの配列を概略的に示したポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。図10に示すように全反射条件が著しく変わらない範囲で、出射面35bのモノキャピラリーを垂直方向に2段又は複数段とすれば、ポリキャピラリーX線レンズ35が小型化できる利点がある。
【0051】
図11は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表した斜視図である。図11に示すように、入射面35aを球面状にしてX線源からの放射X線を受光しやすくしている。また、出射面35bを上から見て曲線状に配列して出射X線の集光度を高めている。このようなポリキャピラリーX線レンズは小型化を図る上で好都合である。
【0052】
ポリキャピラリーX線レンズは最大径(B部)のモノキャピラリー原料を束ねたものを加熱して引き伸ばすことにより製作される。A部方向には引っ張って径を縮小させ、C−D方向には配列を平面的に抑えつつ引き伸ばしてモノキャピラリーが扇状に収束する配列となるようにする。
【0053】
実施例の測定データとしては、シリコンウエハ自体のものを示したが、シリコンウエハ上のFe2O3などの単一微粒子についても同様に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、試料表面の微小領域又は試料表面についた微小物を全反射蛍光X線分析方法により元素分析するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一実施例の全反射蛍光X線分析装置を示す概略正面図である。
【図2】(A)は同実施例におけるポリキャピラリーX線レンズとスリットの配置を示す正面断面図であり、(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【図3】(A)は同実施例におけるポリキャピラリーX線レンズとスリットの配置を示す上面断面図であり、(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【図4】スリットの上下方向の移動量とシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線強度との関係を示すグラフである。
【図5】X線ビームの入射角度とシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線強度との関係を示すグラフである。
【図6】一実施例により測定されたシリコンウエハの蛍光X線スペクトルである。
【図7】他の実施例の全反射蛍光X線分析装置の要部を示す概略正面断面図である。
【図8】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズの他の実施例を表したものであり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】同ポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。
【図10】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表す斜視図である。
【図11】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 試料表面
2 1次X線照射部
3 X線源
5,27,35 ポリキャピラリーX線レンズ
7 スリット
9 照射位置
11 検出器
13 試料台
13a X−Y−Zステッピングモータ
13b 傾斜モータ
35a 入射面
35b 出射面
35c モノキャピラリー
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次X線を試料表面に向かって全反射する入射角度で入射して、試料表面から発生する蛍光X線を分析する全反射蛍光X線分析方法及びそれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析装置を用いて測定の検出限界を良くするためには、試料に入射する1次X線強度を上げるだけでなく、バックグラウンドを下げることも必要である。
全反射蛍光X線分析方法はシリコンウエハのような平坦な試料表面で1次X線を全反射させ、試料表面に対向させて検出器を配置し、1次X線を受けて測定対象としての試料表面の微小領域又は試料表面上についた不純物から発生する蛍光X線を検出することにより、1次X線の散乱に起因する連続X線バックグラウンドを軽減して蛍光X線を高感度に測定する方法である。
【0003】
通常、1次X線としては幅1cm程度、厚さ数十μmから数百μmのシート状のX線ビームを用い、試料表面に対して0.1度程度の非常に浅い角度で照射する。よって、試料表面のかなり広い範囲を照射していることになる。
【0004】
試料表面自身も大面積を有しているので、1次X線により広範囲を照射し広範囲の蛍光X線分析を行う点は望ましいとも言える。しかし、近年はシリコンウエハ上に存在する微粒子の不純物分析というような微小領域の分析に対する需要が高まっている。
【0005】
そのような微小領域の分析において、例えば微粒子の直径は数μm以下であるため、もはやシリコンウエハ表面の広範囲を1次X線で照射する必要はなくなる。1次X線としてシート状のX線ビームを使用する場合には、微粒子に対して集光能力はなく、むしろ、測定対象の微粒子以外の箇所にも1次X線が照射されることによって微粒子自身の分析を困難にしてしまう。このことは、高輝度のX線源を使用して1次X線の強度を上げても解決はしない。よって、分析箇所である微小領域での1次X線の輝度を選択的に高める工夫が必要とされている。
【0006】
全反射蛍光X線分析の利点を生かしつつ、高輝度のX線を用いることなく高い分析精度を得ることを目的として、1次X線を分析箇所に集光し微小領域からの蛍光X線発生強度を増大させる試みとして、分光結晶からなる複数の分光素子を用いて異なる光路から1次X線を集光させるようにした全反射蛍光X線分析装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−317546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分光素子を用いて1次X線を集光させる方法は、分光することにより1次X線強度が低下してしまうだけでなく、複数の分光結晶を所定の位置と方向に配置するための高精度で大型の機構を必要とする。
【0008】
また、生体物質や環境物質を計測する分野では、微量の試料を扱う必要から微小流路を用いた送液や反応を行なうことのできるマイクロチップを用いたマイクロチップ分析と呼ばれる方法が試みられている。マイクロチップ分析での検出方法として全反射蛍光X線分析を応用することが考えられる。その場合、極めて微量の物質計測が要求されるとともに、小型簡便な構造であることが必須条件となる。特にX線光源の小型化は安全性の点でも必須である。
【0009】
本発明は、試料表面上の微粒子に限らず、試料の微小領域を分析することを対象にし、全反射蛍光X線分析の利点を生かしつつ、X線源から照射される1次X線の強度を低下させることなく1次X線を試料の微小領域に集光させることができるようにして、測定対象からの蛍光X線発生強度を高めて高感度な全反射蛍光X線分析を行なうことのできる方法と装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の全反射蛍光X線分析方法は、試料表面に照射する1次X線を、ポリキャピラリーX線レンズを用いて集光させる点に特徴がある。
【0011】
好ましくは、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線は、その進行方向に対して直交する方向の断面形状が線状であるようにする。
【0012】
より好ましくは、試料表面に照射する1次X線のうち、試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽する。
【0013】
この全反射蛍光X線分析方法を実現する本発明の全反射蛍光X線分析装置は、試料を載置する試料台と、1次X線を発生するX線源及びその1次X線を集光して試料台上に載置された試料に照射するポリキャピラリーX線レンズを含み、その1次X線を試料の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部と、試料台上に載置された試料の表面に対向して配置され、試料から発生する蛍光X線を検出する検出器とを備えている。
【0014】
ポリキャピラリーX線レンズは、その中をX線が全反射して伝わる細いガラス管(モノキャピラリー)が多数束ねられたものであり、キャピラリーを緩やかに曲げることによりX線の軌道を曲げ、キャピラリーから出射するX線が1点に集中するように形成されたものである。各モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもっている。ポリキャピラリーX線レンズは全反射によりX線の軌道を曲げ、分光を伴わないため、分光結晶を用いた分光素子のようなX線強度の減衰はない。
【0015】
より好ましくは、ポリキャピラリーX線レンズの構成を最適化して、分析精度の向上とエックス線光源部の小型化を図るために、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにする。そのために、ポリキャピラリーX線レンズは、X線光源に対面する入射面ではモノキャピラリーの端部が円形面状に配列され、試料に対面する出射面ではモノキャピラリーの端部が試料表面に平行な線状に、かつ放射方向が一点に向かって集光するように配列されているものとする。その集光点の位置に試料が配置される。
【0016】
全反射蛍光X線分析装置のより好ましい形態では、1次X線照射部は、ポリキャピラリーX線レンズの出射側と試料台との間にスリットを備え、そのスリットは試料台上に載置された試料の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するように配置されている。
【0017】
ここで、「スリット」の語は、一般には細長い開口を意味するが、本発明では全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線、すなわち全反射臨界角より大きい入射角をもつ1次X線を遮蔽することができればよいので、細長い開口に限らず、全反射臨界角より大きい入射角側の1次X線のみを遮蔽する遮蔽板も含む概念として使用している。
【0018】
スリットで測定に適した角度以外のX線を遮断する場合、遮断しすぎるとX線強度が極端に弱くなり、蛍光も微弱となる。X線強度が弱くなるのを補うために過大なX線源を用いると分析装置が大型になる。一方、スリットを広げて広い角度で試料に照射すると測定しようとする試料以外の部分からの1次X線や蛍光X線がノイズとしてでるため分析精度が低下する。
【0019】
そこで、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにする好ましい形態では、スリットを用いなくても測定に適した角度以外のX線が出射されないようにすることができればスリットを設けないようにして、スリットによりX線強度が弱くなる問題を避けることができる。スリットを用いるとしても、スリットの形状に沿った線状に集光させることにより、スリットにより遮断されるX線の割合は少なくてすむ。この形態では、スリットの有無にかかわらずX線強度が大幅に弱くなる問題を避けることができるので、過大なX線源を用いる必要がなくなる。
【0020】
試料台はその上に載置された試料の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料の表面の傾き方向を調整する調整機構を備えていることが好ましい。
また、試料台上に載置された試料と検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
通常の全反射蛍光X線分析は1次X線が空間的に集光されることなく広範囲を照射するものであるが、ポリキャピラリーX線レンズを用いた本発明では1次X線の強度を落とすことなく、微粒子などの微小な測定箇所に1次X線を集光させることができる。このように、試料表面での全反射条件を満たしながら集光効果が得られるので、蛍光X線強度が増大し測定感度が向上する。
【0022】
試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線をスリットにより遮蔽するようにすれば、全ての1次X線の試料表面に対する入射角を全反射臨界角以下に保つことができ、バックグラウンドをより少なくして測定限界を向上させることができる。
【0023】
さらに、ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにすれば、スリットを設けなくても1次X線の試料表面に対する入射角を全反射臨界角以下に保つことができるようになるので、X線源からポリキャピラリーX線レンズに取り込まれたX線はほぼ全て試料に照射される。さらに角度の均一性は高く、全反射条件がそろうため分析精度はきわめて高いものとなり、微量分析に適した装置となる。また、X線源も相対的に小型化が可能であり、簡便な持ち運びに適した装置を可能とする。
【0024】
ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線が進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状となるようにした場合にも、スリットを付加すればさらに精度は高くなる。
【0025】
試料と検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備えれば、試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に一実施例を図1、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
図1は全反射蛍光X線分析装置の全体正面図である。図2と図3はキャピラリーX線レンズ3とスリット5の配置を示す正面断面図と上面断面図であり、それぞれの図において(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【0027】
試料台13は試料1を載置するものであり、試料台13に載置された試料1の表面に対し、1次X線を、全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部2が設けられている。1次X線照射部2は1次X線を発生するX線源3、及びその1次X線を集光して試料1に照射するポリキャピラリーX線レンズ5を備えている。ポリキャピラリーX線レンズ5により1次X線を数十μmのビーム径に集光することができる。
【0028】
ポリキャピラリーX線レンズ5は多数のモノキャピラリーを束ねた構造である。図では個々のモノキャピラリーの図示は省略されている。モノキャピラリーは内径数ミクロンの石英管である。モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもったものである。
【0029】
この実施例では、ポリキャピラリーX線レンズ5から出射した1次X線のうち試料1の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するために、基板1と平行なスリット7をさらに備えている。試料1から発生する蛍光X線を検出するために、試料台13に載置された試料1の表面に対向して検出器11が配置されている。
【0030】
試料台13はその上に載置された試料1の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料1の表面の傾き方向を調整する調整機構13a,13bを備えており、試料1の表面の測定部位が検出器11の直下に位置し、入射X線の入試角度を調整することができる。試料台13は高さ方向(Z方向)を調整する手動ジャッキ15を介して水平面内方向(X−Y方向)に移動可能な手動X−Yステージ14上に載置されている。試料台13の調整機構13a,13bは、その上面に試料1を載置して試料1の表面の水平面内及び高さ方向(X−Y−Z方向)の調整を行なうX−Y−Zステッピングモータ13aと、X−Y−Zステッピングモータ13aの下に配置され、試料1の表面の傾きを入射X線に対して調整する傾斜モータ13bとを含んでいる。試料台13は、その上に載置された試料1を支持するとともに、X,Y,Z方向の移動及び試料表面を傾斜させる回転運動を可能にしている。
【0031】
X−Y−Zステッピングモータ13aと傾斜モータ13bはモータードライブ21によって駆動され、そのモータードライブ21はパーソナルコンピュータ(PC)17によって制御されるモーターコントローラ19により制御される。
【0032】
試料台13上に載置された試料1の表面の測定部位が傾斜モータ13bの回転中心で、かつポリキャピラリーX線レンズ5による1次X線の焦点位置にくるように試料1の表面を監視するために、試料台13の斜め上方にCCDカメラ23が配置されており、CCDカメラ23により撮像された試料1の表面状態がモニタ25に映し出される。
【0033】
CCDカメラ23によるポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置の調整は次のように行う。初めに試料台13の表面又はその上に載置した平坦な基板上に、直径10μm程度のタングステン(W)ワイヤーを十字形に張りつけて、これを試料に見立てる。手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15によりその十字形タングステンワイヤーをポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置になると思われる位置に大まかに位置決めする。
【0034】
次に、X線源3からX線を照射して、十字形タングステンワイヤーからの蛍光X線をモニターしながら、X−Y−Zステッピングモータ13aを駆動してX線ビームの位置を探る。すなわち、蛍光X線の検出強度が最大になる位置がポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置である。ポリキャピラリーX線レンズ5の焦点位置が決まれば、そのときの十字形タングステンワイヤーにCCDカメラ23の焦点が合うようにCCDカメラ23の位置及びその焦点を調整しておく。つまり、次回からは、モニタ25を見て、CCDカメラ23で焦点があった場所がポリキャピラリーX線レンズ5によるX線ビームの焦点位置となる。
【0035】
X線源3としては市販のX線管を用い、X線源3のX線出射窓にはベリリウム、窒化ホウ素、グラファイトなどのX線透過材料が用いられている。
X線源3のX線出射窓とポリキャピラリーX線レンズ5の間には、管球由来のX線が蛍光X線測定に影響を与えるのを防ぐために、ジルコニウム、アルミニウム、真鍮など、測定対象元素に応じて適当なフィルタが設けられることがある。
【0036】
ここでは、X線源3として、モリブデンをターゲットとし、ベリリウムX線出射窓をもつX線管を使用し、X線源3のX線出射窓とポリキャピラリーX線レンズ5との間にジルコニウムフィルタを配置した。
【0037】
図2、図3に示されるように、X光源1から発生したX線はポリキャピラリーX線レンズ5により試料1の表面の微小領域9に点状に3次元的に集光される、平坦な基板1の表面に対して全反射臨界角を上回る大きな入射角度で入射する1次X線光路が発生する。そこで、図2に示されるように、ポリキャピラリーX線レンズ5と試料1との間に配置されたスリット7により、試料1の表面へ入射する1次X線のうち、その入射角θが全反射臨界角θ0を上回るものは遮蔽される。
【0038】
X線検出器には波長分散型分光器を備えたものとエネルギー分散型X線分光器を備えたものがある。波長分散型分光器は湾曲型の結晶の回折現象を用いる。エネルギー分散型X線分光器は試料から発生する全てのX線を検出器に同時に取り込み、X線のエネルギー選別を電気的に行うものである。エネルギー分散型X線分光器は波長分散型分光器に比べてエネルギー分解能が劣るものの測定時間が短くてすみ、全エネルギー範囲を同時に測定することができるという利点をもっている。それに対して波長分散型分光器は、エネルギー分散型X線分光器よりも測定時間が長くなる反面、エネルギー分解能が優れているという利点をもっている。元素分析では、これらの分解能の異なる2種類の分光器のいずれを使用してもよく、併用することもできる。ここでは、測定時間を短くするためにエネルギー分散型X線分光器を用いる。
【0039】
以下に一実施例の動作を説明する。
試料1としてシリコンウエハを取り上げる。
試料1を試料台13上に載置し、モニタ25に映し出された試料1の表面画像を見ながら、試料1の表面の測定部位が傾斜モータ13bの回転中心で、かつポリキャピラリーX線レンズ5による1次X線の焦点位置にくるように、手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15を調整する。すなわち、CCDカメラ23はポリキャピラリーX線レンズ5によるX線ビームの焦点位置に焦点が合うように予め調整されているので、モニタ25に映し出された試料1の表面画像が焦点のあった状態となるように手動X−Yステージ14と手動ジャッキ15を調整する。
【0040】
次に、試料1にX線源3からX線を照射しながらX線検出器11により蛍光X線を取り込み、その強度によりX−Y−Zステッピングモータ13aと傾斜モータ13bを調整して試料1の表面のX,Y,Z方向及び傾斜角を微調整する。X線源3はMoターゲットを50KeV、0.5mAで動作させた。
【0041】
スリット7として基板1の表面に平行な30μm幅の細長い開口をもつものを配置する。その高さを調整するために、スリット7を上下方向に移動させながら試料1としてのシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線の強度をモニタして、その強度が最大となる位置に設定する。図4はそのSiKα線の強度をモニタした結果であり、この例ではスリット7を設置した基準位置から約2mm上方に移動させた位置でポリキャピラリーX線レンズ5の出射口の中央に調整され、最大強度が得られた。図4の縦軸は60秒間の検出値の積分値、横軸の数値はこの実施例についてのものであり、その数値そのものには普遍的な意味はない。
【0042】
図5は図4に示されたようにスリット7の高さを最適な位置(この場合は高さ約2mmの位置)に調整した後、傾斜モータ13bを駆動して試料1の表面の傾きを変化させて、試料1の表面に対するX線ビームの入射角度を変化させてSiKα線強度をモニタする。図5の縦軸は60秒間の検出値の積分値、横軸は傾斜ステージである傾斜モータ13bの読み値であるが、およそ1.0度あたりで強度の立ち上がりが見られることから、この実施例の装置ではこのあたりが全反射臨界角度と考えられる。
【0043】
このように調整された条件で取得したシリコンウエハの蛍光X線スペクトルを図6に示す。縦軸は蛍光X線強度を1秒当りの平均値(カウント/秒)として表わしたものである。この蛍光X線スペクトルは、試料の傾きが図5に示された傾斜モータ13bの読み値で1.0度に設定し、X線源3のMoターゲットを50KeV、0.5mAで動作させたときのものである。Siの明瞭な蛍光X線が検出されている。Arの蛍光X線も検出されているが、このArはシリコンウエハ近傍又はX線光路中の大気中のArが励起されたものと考えられる。
【0044】
図7は他の実施例を表わす。試料からの蛍光X線を受ける検出器側にもポリキャピラリーX線レンズ27が取り付けられている。そのポリキャピラリーX線レンズ27以外の構成は図1の実施例と同じである。
【0045】
このように、検出器側にもポリキャピラリーX線レンズ27を取り付けることにより、微粒子のような微小部からの信号を効率よく検出できるようになり、検出効率のみならず、微小部試料以外からのX線の信号を取り込まなくなるので、S/B(信号対バックグラウンド)比の向上にも役立つ。
【0046】
図8と図9は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズの他の実施例を表したものである。図8(A)は平面図、(B)は側面図であり、図9はモノキャピラリーの配列を概略的に示したポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。
【0047】
ポリキャピラリーX線レンズ35は図9に示されるように多数のモノキャピラリー5cを束ねた構造である。図8では個々のモノキャピラリーの図示は省略している。モノキャピラリー5cは図2,3に示したポリキャピラリーX線レンズ5を構成しているものと同じであるが、その束ね方が異なっている。
【0048】
ポリキャピラリーX線レンズ35はX線に対面する入射面5aは円形である。入射面5aは点光源であるX線源から立体的なX線の放射を受ける。入射面35aに端面が配置された各モノキャピラリー35cに入射したX線を各モノキャピラリー35cで全反射させつつ出射面35bへ伝播させるため、各モノキャピラリー35cの内径は入射側のA部からB部にかけて拡大している。さらに中間部のB−C間で面配列から直線配列に並べ直しされている。さらに、出射側のC−D間で出射方向が一点に集中するように焦点を定めて配列されている。その焦点となる位置に試料を配置する。また、C−D間ではモノキュピラリーの内径は漸次縮小している。
【0049】
このような構造で、X線源に対面するポリキャピラリーX線レンズの入射面35aでは複数のモノキャピラリー35cの端部が面状に配列されているので、X線源から立体的に放射されるX線ほぼ全量がポリキャピラリーX線レンズ35に取り込まれる。ポリキャピラリーX線レンズ35内に取り込まれたX線は各モノキャピラリー35cの内壁で全反射を繰り返しながら、入射面から出射面にかけて内径がいったん広がった後、漸次細くなるモノキャピラリー35c内を進行し、試料に対面するポリキャピラリーX線レンズの出射面35bに至る。出射面35bでは複数のモノキャピラリー端部が試料に対して同一の全反射角度になるように試料表面に平行な線状に配列されている。また、水平方向では各モノキャピラリー35cの放射方向が試料の配置される位置に集中して向かうように配列されている。
【0050】
図10は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表したものであり、モノキャピラリーの配列を概略的に示したポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。図10に示すように全反射条件が著しく変わらない範囲で、出射面35bのモノキャピラリーを垂直方向に2段又は複数段とすれば、ポリキャピラリーX線レンズ35が小型化できる利点がある。
【0051】
図11は1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表した斜視図である。図11に示すように、入射面35aを球面状にしてX線源からの放射X線を受光しやすくしている。また、出射面35bを上から見て曲線状に配列して出射X線の集光度を高めている。このようなポリキャピラリーX線レンズは小型化を図る上で好都合である。
【0052】
ポリキャピラリーX線レンズは最大径(B部)のモノキャピラリー原料を束ねたものを加熱して引き伸ばすことにより製作される。A部方向には引っ張って径を縮小させ、C−D方向には配列を平面的に抑えつつ引き伸ばしてモノキャピラリーが扇状に収束する配列となるようにする。
【0053】
実施例の測定データとしては、シリコンウエハ自体のものを示したが、シリコンウエハ上のFe2O3などの単一微粒子についても同様に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、試料表面の微小領域又は試料表面についた微小物を全反射蛍光X線分析方法により元素分析するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一実施例の全反射蛍光X線分析装置を示す概略正面図である。
【図2】(A)は同実施例におけるポリキャピラリーX線レンズとスリットの配置を示す正面断面図であり、(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【図3】(A)は同実施例におけるポリキャピラリーX線レンズとスリットの配置を示す上面断面図であり、(B)は(A)の鎖線の円で囲った部分の拡大図である。
【図4】スリットの上下方向の移動量とシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線強度との関係を示すグラフである。
【図5】X線ビームの入射角度とシリコンウエハからの蛍光X線であるSiKα線強度との関係を示すグラフである。
【図6】一実施例により測定されたシリコンウエハの蛍光X線スペクトルである。
【図7】他の実施例の全反射蛍光X線分析装置の要部を示す概略正面断面図である。
【図8】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズの他の実施例を表したものであり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】同ポリキャピラリーX線レンズの斜視図である。
【図10】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表す斜視図である。
【図11】1次X線照射側のポリキャピラリーX線レンズのさらに他の実施例を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 試料表面
2 1次X線照射部
3 X線源
5,27,35 ポリキャピラリーX線レンズ
7 スリット
9 照射位置
11 検出器
13 試料台
13a X−Y−Zステッピングモータ
13b 傾斜モータ
35a 入射面
35b 出射面
35c モノキャピラリー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源からの1次X線を試料表面に向かって全反射を起こす入射角で入射させ、前記試料表面に対向させた検出器で前記1次X線を受けた試料表面から発生する蛍光X線を検出する全反射蛍光X線分析方法において、
前記試料表面に照射する1次X線を、ポリキャピラリーX線レンズを用いて集光させることを特徴とする全反射蛍光X線分析方法。
【請求項2】
前記ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線は、進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状である請求項1に記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項3】
前記試料表面に照射する1次X線のうち、前記試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽する請求項1又は2に記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項4】
試料表面から発生する蛍光X線を検出する検出器側にもポリキャピラリーX線レンズを配置して、試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出する請求項1から3のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項5】
試料を載置する試料台と、
1次X線を発生するX線源及びその1次X線を集光して前記試料台上に載置された試料に照射するポリキャピラリーX線レンズを含み、その1次X線を試料の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部と、
前記試料台上に載置された試料の表面に対向して配置され、試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記ポリキャピラリーX線レンズはモノキャピラリーを多数束ねたものであり、各モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもったものである請求項5に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記ポリキャピラリーX線レンズは、X線光源に対面する入射面では前記モノキャピラリーの端部が円形面状に配列され、試料に対面する出射面では前記モノキャピラリーの端部が線状に、かつ放射方向が一点に向かって集光するように配列されている請求項6に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記1次X線照射部は、ポリキャピラリーX線レンズの出射側と試料台との間にスリットを備え、該スリットは前記試料台上に載置された試料の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するように配置されている請求項5から7のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項9】
前記試料台はその上に載置された試料の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料の表面の傾き方向を調整する調整機構を備えている請求項5から8のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項10】
前記試料台上に載置された試料と前記検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備え、前記試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出するようにした請求項5から9のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項1】
X線源からの1次X線を試料表面に向かって全反射を起こす入射角で入射させ、前記試料表面に対向させた検出器で前記1次X線を受けた試料表面から発生する蛍光X線を検出する全反射蛍光X線分析方法において、
前記試料表面に照射する1次X線を、ポリキャピラリーX線レンズを用いて集光させることを特徴とする全反射蛍光X線分析方法。
【請求項2】
前記ポリキャピラリーX線レンズから出射する1次X線は、進行方向に対して直交する方向の断面形状が試料表面に平行な線状である請求項1に記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項3】
前記試料表面に照射する1次X線のうち、前記試料表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽する請求項1又は2に記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項4】
試料表面から発生する蛍光X線を検出する検出器側にもポリキャピラリーX線レンズを配置して、試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出する請求項1から3のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析方法。
【請求項5】
試料を載置する試料台と、
1次X線を発生するX線源及びその1次X線を集光して前記試料台上に載置された試料に照射するポリキャピラリーX線レンズを含み、その1次X線を試料の表面に対し全反射を起こす入射角で入射させる1次X線照射部と、
前記試料台上に載置された試料の表面に対向して配置され、試料から発生する蛍光X線を検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記ポリキャピラリーX線レンズはモノキャピラリーを多数束ねたものであり、各モノキャピラリーはその内径が受光部側の基端から放射側の先端にかけていったん拡大し、先端に向かって漸次細くなる形状をもったものである請求項5に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記ポリキャピラリーX線レンズは、X線光源に対面する入射面では前記モノキャピラリーの端部が円形面状に配列され、試料に対面する出射面では前記モノキャピラリーの端部が線状に、かつ放射方向が一点に向かって集光するように配列されている請求項6に記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記1次X線照射部は、ポリキャピラリーX線レンズの出射側と試料台との間にスリットを備え、該スリットは前記試料台上に載置された試料の表面に対して全反射条件を満たさない入射角をもつ1次X線を遮蔽するように配置されている請求項5から7のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項9】
前記試料台はその上に載置された試料の表面の水平面内方向、高さ方向及び入射X線に対するその試料の表面の傾き方向を調整する調整機構を備えている請求項5から8のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【請求項10】
前記試料台上に載置された試料と前記検出器との間にもポリキャピラリーX線レンズを備え、前記試料表面上の微小領域からの蛍光X線のみを検出するようにした請求項5から9のいずれかに記載の全反射蛍光X線分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−93593(P2007−93593A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231713(P2006−231713)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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