説明

内燃機関の制御装置

【課題】フューエルカット中に燃料が気化したことに起因する燃料噴射復帰時のラフアイドルを防止可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】ポート噴射インジェクタ10a及び直噴インジェクタ10bを備えたエンジン1において、フューエルカット解除条件が成立した際のポート噴射インジェクタ先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度まで上昇している場合には、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止し、直噴インジェクタ10bのみから燃料噴射を行う。その後、積算吸入空気量が、ポート噴射インジェクタ先端温度を燃料の飽和蒸気圧温度まで低下させるのに必要な冷却必要吸入空気量に達すると、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される内燃機関の制御装置に係る。特に、本発明は、フューエルカット(アクセルオフ等に伴うインジェクタからの燃料噴射の停止)からの燃料噴射復帰時の制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1及び特許文献2に開示されているように、走行駆動力源としてエンジン(内燃機関)を搭載した自動車の走行中において、エンジン回転数が所定値以上(または吸入空気量が所定量以上)であり且つドライバがアクセルペダルの踏み込みを解除(アクセルオフ)してエンジンが被駆動状態になると、フューエルカット条件が成立したとしてインジェクタからの燃料噴射を停止(フューエルカット)し、燃料消費量の削減を図るようにしている。また、一般に、このフューエルカット中にあっては、スロットルバルブの開度を小さくし、ポンピングロスを大きくすることで、ドライバのアクセルオフ操作に対応した車両の減速度が得られるようにしている。
【0003】
また、このフューエルカット中にドライバがアクセルペダルの踏み込み操作(アクセルオン)を行うなどして要求駆動力が大きくなった場合には、フューエルカット解除条件が成立したとしてインジェクタからの燃料噴射を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−270615号公報
【特許文献2】特開2011−183986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンに設けられるインジェクタとしては、吸気ポート内に向けて燃料を噴射するもの(以下、「ポート噴射インジェクタ」と呼ぶ場合もある)や、筒内に直接的に燃料を噴射するもの(以下、「直噴インジェクタ」と呼ぶ場合もある)が知られている。
【0006】
そして、前記ポート噴射インジェクタを備えたエンジンにおいて、例えば高負荷運転が行われていることに起因してエンジン温度(冷却水温度や油温に相関がある)が比較的高い状態で前記フューエルカット条件が成立し、ポート噴射インジェクタからの燃料噴射が停止され且つスロットルバルブの開度が小さくなった場合には、以下の課題が生じる可能性がある。
【0007】
つまり、スロットルバルブの開度が小さくなった(例えば開度「0」となった)場合に、インジェクタの先端温度が上昇してしまう可能性がある。これは、スロットルバルブの開度が小さくなったことに伴って吸気ポートを流れる吸気の量が少なくなり、それまで(フューエルカット条件が成立するまで)、この吸気によって冷却されていたインジェクタの先端部分が冷却されなくなるためである。
【0008】
このインジェクタの先端温度はフューエルカット継続時間が長くなるに従って上昇していき、このインジェクタの先端温度が所定温度以上に達した場合には、このインジェクタの内部に存在している燃料の温度がその飽和蒸気圧温度まで上昇し、燃料にベーパ(気泡)が発生してしまう可能性がある。
【0009】
このベーパが発生している状況で前記フューエルカット解除条件が成立して燃料噴射が復帰されると、前記ベーパの影響によって適正な燃料噴射量が得られなくなり(安定した燃焼を行うための十分な燃料噴射量が得られなくなり)、アイドリング運転時においてエンジン回転数が大きく変動するラフアイドル状態となったり、場合によってはエンジンストールに至ってしまう可能性もある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フューエルカット中に燃料が気化したことに起因する前記課題を回避可能とする内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
−発明の概要−
前記の目的を達成するために講じられた本発明の概要は、フューエルカット解除条件が成立した際にポート噴射インジェクタ内の燃料にベーパが発生している可能性がある場合には、このポート噴射インジェクタからの燃料噴射を禁止し、他の手段で駆動力を得るようにしている。
【0012】
−解決手段−
具体的に、本発明は、吸気通路に向けて燃料を噴射する吸気通路噴射弁を備え、所定のフューエルカット条件が成立した場合に前記吸気通路噴射弁からの燃料噴射を停止すると共に、所定のフューエルカット解除条件が成立した場合に前記吸気通路噴射弁からの燃料噴射を再開する内燃機関の制御装置を前提とする。そして、この内燃機関の制御装置は、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達している場合に、この吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止する燃料噴射制御手段を備えている。
【0013】
この特定事項により、吸気通路噴射弁の内部の燃料にベーパが発生している状況で、この吸気通路噴射弁から燃料噴射が実行されるといった状況を回避でき、ベーパの影響によって適正な燃料噴射量が得られず内燃機関の運転が不安定になるといったことを防止できる。
【0014】
前記禁止された吸気通路噴射弁からの燃料噴射が許可される構成としては以下のものが挙げられる。つまり、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達しており、吸気通路噴射弁からの燃料噴射が禁止された場合に、その後に吸気通路を流れる吸入空気量が、吸気通路噴射弁における燃料のベーパを解消可能な所定の冷却必要吸入空気量に達した時点で吸気通路噴射弁からの燃料噴射を許可するようにしている。
【0015】
このように、吸気通路を流れる吸入空気による冷却作用を利用して吸気通路噴射弁を冷却して燃料のベーパを解消する場合に、吸気通路を流れる吸入空気量が、ベーパの解消が可能な冷却必要吸入空気量になった時点で、吸気通路噴射弁からの燃料噴射を許可することで、必要以上に吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止するといったことがなくなり、吸気通路噴射弁からの燃料噴射復帰タイミングを適切に設定することができる。
【0016】
前記吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止した場合に、内燃機関に必要駆動力を得るための手段としては以下のものが挙げられる。つまり、燃料噴射弁として、前記吸気通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を備えさせる。そして、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が、燃料のベーパ発生温度に達している場合には、この吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止すると共に、要求駆動力が得られる量の燃料を前記筒内噴射弁から噴射する構成としている。
【0017】
これによれば、吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止した場合であっても、筒内噴射弁からの燃料噴射によって、内燃機関に要求されている駆動力を得ることができ、吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止したことに伴う駆動力不足が生じることはない。
【0018】
前記吸気通路噴射弁の温度として、具体的には、吸気通路に臨んでいる吸気通路噴射弁の先端部分の温度である。
【0019】
この吸気通路噴射弁の先端部分は、吸気通路に臨んでいることから内燃機関の駆動時には、吸気通路を流れる吸入空気によって冷却されるため、この吸気通路噴射弁内で燃料にベーパが発生することはない。ところが、フューエルカット条件が成立し、吸気通路に吸入空気が流れなくなると、この冷却効果が発揮されなくなり、吸気通路噴射弁の温度が上昇し、燃料にベーパが発生する可能性がある。また、吸気通路噴射弁の先端部分は特に熱容量が小さいため、これによっても温度が上昇しやすく、燃料にベーパが発生する可能性がある。このような状況において、フューエルカット解除条件の成立後に、吸気通路に吸入空気を流すことで、吸気通路噴射弁の先端部分は急速に冷却され、ベーパの発生が解消されることになる。
【0020】
また、前記吸気通路噴射弁の先端部分の温度は、前記フューエルカット解除条件が成立した時点における内燃機関冷却水温度、及び、フューエルカット継続時間に基づいて推定される。
【0021】
フューエルカット解除条件が成立した時点における内燃機関冷却水温度及びフューエルカット継続時間と、吸気通路噴射弁の先端部分の温度(以下、単に「先端部温度」という)との関係としては、フューエルカット解除条件が成立した時点における内燃機関冷却水温度が高いほど、また、フューエルカット継続時間が長いほど、先端部温度としては高くなる傾向がある。また、フューエルカット中は燃焼室内での燃焼が行われないため内燃機関の温度(油温等)は次第に低下していき、それに伴って内燃機関冷却水温度も低下していくことになる。つまり、内燃機関の温度が吸気通路噴射弁の先端部分の温度に対して与える影響度は変化する。このように、吸気通路噴射弁の先端部分の温度を大きく左右するパラメータに基づいて先端部温度を推定することにより、その推定精度を高めることができる。
【0022】
内燃機関を電動機によって回転させることが可能な構成の場合(例えばハイブリッド車両においてモータによって内燃機関をモータリングさせることが可能な場合)、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達している場合において、内燃機関が停止している場合には、吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止すると共に、前記電動機によって内燃機関の駆動軸を回転させて吸気通路に空気を流通させるようにしている。
【0023】
これにより、内燃機関に駆動力が要求されていない状況であっても、電動機によって内燃機関の駆動軸を回転させて吸気通路に空気を流通させ、この空気による冷却作用によって吸気通路噴射弁の先端部分は急速に冷却され、ベーパが早期に解消されることになる。
【0024】
また、走行用駆動源として前記内燃機関及び発電電動機が設けられた構成の場合(例えばモータ走行が可能なハイブリッド車両等の場合)、車両減速時に前記発電電動機による回生発電を行う回生モードでの運転が可能となっており、前記フューエルカット解除条件が成立した際、前記回生モードでは、吸気通路に設けられたスロットルバルブを開放する構成となっている。
【0025】
これにより、発電電動機による回生発電による車両の減速度を確保しながら、スロットルバルブを開放することで吸気通路に空気を流通させ、この空気による冷却作用によって吸気通路噴射弁の先端部分を急速に冷却させることができる。その結果、ベーパが早期に解消されることになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、フューエルカット解除条件が成立した際に吸気通路噴射弁内の燃料にベーパが発生している可能性がある場合には、この吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止している。このため、適正な燃料噴射量が得られないことで内燃機関の運転が不安定になるといったことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図2】ハイブリッド車両に搭載されたエンジンの概略構成を示す図である。
【図3】ハイブリッド車両の制御系を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係るF/C復帰制御の手順を示すフローチャート図である。
【図5】冷却必要吸入空気量設定マップの一例を示す図である。
【図6】積算吸入空気量とインジェクタ先端温度との関係を示す図である。
【図7】インジェクタ先端温度の経時変化の一例を示す図である。
【図8】第2実施形態におけるポート噴射制御の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明する。
【0029】
図1は本実施形態に係るハイブリッド車両を示す概略構成図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両HVは、車両走行用の駆動力を発生するエンジン(内燃機関)1、主に発電機として機能する第1モータジェネレータMG1(第1の発電電動機)、主に電動機として機能する第2モータジェネレータMG2(第2の発電電動機)、動力分割機構3、リダクション機構4、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、前輪車軸(ドライブシャフト)61,61、前輪(駆動輪)6L,6R、及び、ECU(Electronic Control Unit)100などを備えており、このECU100により実行されるプログラムによって本発明の制御装置が実現される。
【0030】
なお、ECU100は、例えば、HV(ハイブリッド)ECU、エンジンECU、モータECU、バッテリECUなどによって構成されており、これらのECUが互いに通信可能に接続されている。
【0031】
次に、エンジン1、各モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構3、リダクション機構4、及び、ECU100などの各部について説明する。
【0032】
−エンジン−
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの動力装置であって、燃料を燃焼させて動力を出力する。
【0033】
図2は、このエンジン1の概略構成(一つの気筒のみ)を示している。この図2に示すように、エンジン1は、火花点火式レシプロエンジン1であり、ポート噴射式のインジェクタ(ポート噴射インジェクタ;吸気通路噴射弁)10a及び筒内直噴式のインジェクタ(直噴インジェクタ;筒内噴射弁)10bを備え、少なくとも何れかのインジェクタ10a,10bから噴射された燃料により燃焼室12内で混合気を生成するようになっている。
【0034】
また、エンジン1の各気筒11内にはピストン13が設けられており、前記混合気の燃焼に伴ってこのピストン13が気筒11内で往復運動する。
【0035】
前記各インジェクタ10a,10bは、それぞれ燃料蓄圧容器としてのデリバリパイプ10c,10dに接続されており、このデリバリパイプ10c,10dから燃料が供給されるようになっている。また、ポート噴射インジェクタ10aには比較的低圧の燃料が、直噴インジェクタ10bには比較的高圧の燃料(図示しない高圧燃料ポンプによって昇圧された燃料)がそれぞれ供給される。また、直噴インジェクタ10bには燃料圧力を調整するためのインジェクションドライバ10eが接続されている。インジェクタ10a,10bによって燃焼室12内に向けて噴射された燃料は、吸気通路14の一部を構成するインテークマニホールド14aを通って燃焼室12内へ導入される空気Aと共に混合気を形成し、点火プラグ15で着火されて燃焼する。混合気の燃焼圧力はピストン13に伝えられ、ピストン13を往復運動させる。吸気バルブ16は、吸気カムシャフト16aにより駆動される。この吸気カムシャフト16aは、クランクシャフト18から取り出される動力がタイミングベルト等によって伝達されて回転駆動される。
【0036】
ピストン13の往復運動はコネクティングロッド13aを介してクランクシャフト18に伝えられ、ここで回転運動に変換されて、エンジン1の出力として取り出される。このエンジン1の出力は、クランクシャフト18及びダンパ20(図1を参照)を介してインプットシャフト21に伝達される。このダンパ20は、例えばコイルスプリング式トランスアクスルダンパであってエンジン1のトルク変動を吸収する。
【0037】
また、燃焼後の混合気は排気ガスExとなり、排気バルブ17の開弁動作に伴って排気通路19の一部であるエキゾーストマニホールド19aへ排出される。排気ガスExは、エキゾーストマニホールド19aの下流側に設けられた触媒コンバータ19bにより浄化された後、大気中へ放出される。前記排気バルブ17は、排気カムシャフト17aにより駆動される。この排気カムシャフト17aは、クランクシャフト18から取り出される動力がタイミングベルト等によって伝達されて回転駆動される。
【0038】
また、エンジン1は、吸気通路14におけるエアクリーナ14bの下流側に設けられたスロットルボディ8により吸入空気量が調整される。このスロットルボディ8は、バタフライバルブで成るスロットルバルブ81と、このスロットルバルブ81を開閉駆動するスロットルモータ82と、スロットルバルブ81の開度を検出するスロットル開度センサ103とを備えている。ECU100は、ドライバ(運転者)により操作されるアクセルの開度を検知するアクセル開度センサ101からの出力を取得して、スロットルモータ82に制御信号を送り、スロットル開度センサ103からのスロットルバルブ81の開度のフィードバック信号に基づいて、スロットルバルブ81を適切な開度に制御する。これにより、エンジン1の気筒11内へ導入する空気Aの量を制御する。また、後述するように、フューエルカット中にはスロットルバルブ81の開度は略「0」に制御される。
【0039】
エンジン1には、その運転を制御するために運転に関する情報、及び、エンジン1の制御に関する情報を取得するためのセンサ類が取り付けられる。このセンサ類としては、前記アクセル開度センサ101、エンジン回転数の検知に利用されるクランクポジションセンサ102、吸入空気量を検出するエアフローメータ108、吸入空気温度を検出する吸気温センサ109、ウォータジャケット内の冷却水温度を検出する水温センサ107、排気ガスEx中の酸素濃度を検出するO2センサ110、ノック判定制御に使用するためにシリンダブロックの振動を検出する振動検出センサで成るノックセンサ111等がある。
【0040】
本実施形態に係るエンジン1は、前記2種類のインジェクタ10a,10bを備えていることにより、例えばポート噴射駆動モード、筒内噴射駆動モード及び共用噴射駆動モードの何れかの駆動モードでの燃料噴射形態が実現可能となっている。
【0041】
ポート噴射駆動モードでは、エアクリーナ14bにより清浄された空気をスロットルバルブ81を介して吸気ポートに取り入れると共にポート噴射インジェクタ10aから燃料を噴射して吸入空気と燃料とを混合させ、この混合気を吸気バルブ16の開弁に伴って燃焼室12に吸入すると共に点火プラグ15による電気火花によって燃焼させる。このエネルギにより押し下げられるピストン13の往復運動は、クランクシャフト18の回転運動に変換される。このポート噴射駆動モードは、例えばエンジン1に要求される駆動力が比較的低い低負荷運転時に実行される。また、筒内噴射駆動モードでは、前述のようにして空気を燃焼室12に吸入すると共に吸気行程の途中あるいは圧縮行程に至ってから直噴インジェクタ10bより燃料を燃焼室12に噴射し、混合気を点火プラグ15による電気火花によって爆発燃焼させてクランクシャフト18の回転運動を得る。この筒内噴射駆動モードは、例えばエンジン1に要求される駆動力が比較的高い高負荷運転時に実行される。共用噴射駆動モードでは、空気を燃焼室12に吸入する際にポート噴射インジェクタ10aから燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で直噴インジェクタ10bから燃料を燃焼室12に噴射してクランクシャフト18の回転運動を得る。これらの駆動モードは、エンジン1の運転状態やハイブリッドシステムにおいてエンジン1に要求される駆動力などに基づいて切り替えられる。尚、エンジン1からの排気は、触媒コンバータ19bによって浄化された後、外気へ排出される。
【0042】
−モータジェネレータ−
第1モータジェネレータMG1は、インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG1Rと、3相巻線が巻回されたステータMG1Sとを備えた交流同期発電機であって、発電機として機能するとともに電動機(電動モータ)としても機能する。また、第2モータジェネレータMG2も同様に、インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG2Rと、3相巻線が巻回されたステータMG2Sとを備えた交流同期発電機であって、電動機(電動モータ)として機能するとともに発電機としても機能する。
【0043】
図3に示すように、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2は、それぞれインバータ200を介してバッテリ(蓄電装置)300に接続されている。インバータ200はECU100によって制御され、そのインバータ200の制御により各モータジェネレータMG1,MG2の回生または力行(アシスト)が設定される。その際の回生電力はインバータ200を介してバッテリ300に充電される。また、各モータジェネレータMG1,MG2の駆動用電力はバッテリ300からインバータ200を介して供給される。
【0044】
−動力分割機構−
図1に示すように、動力分割機構3は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS3と、サンギヤS3に外接しながらその周辺を自転しつつ公転する外歯歯車のピニオンギヤP3と、ピニオンギヤP3と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR3と、ピニオンギヤP3を支持するとともに、このピニオンギヤP3の公転を通じて自転するプラネタリキャリアCA3とを有する遊星歯車機構によって構成されている。プラネタリキャリアCA3はエンジン1側のインプットシャフト21に回転一体に連結されている。サンギヤS3は、第1モータジェネレータMG1のロータMG1Rに回転一体に連結されている。
【0045】
この動力分割機構3は、エンジン1及び第2モータジェネレータMG2の少なくとも一方の駆動力を、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、及び、ドライブシャフト61,61を介して左右の駆動輪6L,6Rに伝達する。
【0046】
−リダクション機構−
リダクション機構4は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS4と、キャリア(トランスアクスルケース)CA4に回転自在に支持され、サンギヤS4に外接しながら自転する外歯歯車のピニオンギヤP4と、ピニオンギヤP4と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR4とを有する遊星歯車機構によって構成されている。リダクション機構4のリングギヤR4と、前記動力分割機構3のリングギヤR3と、カウンタドライブギヤ51とは互いに一体となっている。また、サンギヤS4は第2モータジェネレータMG2のロータMG2Rと回転一体に連結されている。
【0047】
このリダクション機構4は、第2モータジェネレータMG2の駆動力を適宜の減速比で減速する。この減速された駆動力は、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、及び、ドライブシャフト61を介して左右の駆動輪6L,6Rに伝達される。
【0048】
−シフト操作装置−
ハイブリッド車両HVにおける運転席の近傍にはシフト操作装置7(図3参照)が配置されている。このシフト操作装置7にはシフトレバー71が変位可能に設けられている。そして、この例のシフト操作装置7には、前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)、アクセルオフ時の制動力(エンジンブレーキ)が大きな前進走行用のブレーキレンジ(Bレンジ)、後進走行用のリバースレンジ(Rレンジ)、中立のニュートラルレンジ(Nレンジ)が設定されており、ドライバが所望のレンジへシフトレバー71を変位させることが可能となっている。これらDレンジ、Bレンジ、Rレンジ、Nレンジの各位置はシフトポジションセンサ104によって検出される。シフトポジションセンサ104の出力信号はECU100に入力される。なお、駐車ポジション(Pポジション)は別配置のPスイッチによって設定することができる。
【0049】
−ECU−
ECU100は、エンジン1の運転制御、エンジン1及びモータジェネレータMG1,MG2の協調制御などを含む各種制御を実行する電子制御装置であって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAMなどを備えている。
【0050】
ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは図示しないイグニッションスイッチのOFF時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0051】
ECU100には、図3に示すように、前記アクセル開度センサ101、クランクポジションセンサ102、スロットル開度センサ103、シフトポジションセンサ104、車輪6L,6Rの回転速度を検出する車輪速センサ105、ブレーキペダルに対する踏力(ブレーキ踏力)を検出するブレーキペダルセンサ106、前記水温センサ107、前記エアフローメータ108、吸気温センサ109、O2センサ110、ノックセンサ111等が接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力されるようになっている。また、バッテリ300の充放電電流を検出する図示しない電流センサ、バッテリ温度センサなども接続されており、これらの各センサからの信号もECU100に入力されるようになっている。
【0052】
また、ECU100には、エンジン1のスロットルバルブ81を開閉駆動するスロットルモータ82、前記ポート噴射インジェクタ10a、直噴インジェクタ10b(インジェクションドライバ10e)、前記点火プラグ15の点火タイミングを調整するイグナイタ15aなどが接続されている。
【0053】
そして、ECU100は、前記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットル開度制御(吸入空気量制御)、燃料噴射量制御、及び、点火時期制御などのエンジン1の各種制御を実行する他、ハイブリッドシステム全体の制御を行う。
【0054】
さらに、ECU100は、バッテリ300を管理するために、前記電流センサにて検出された充放電電流の積算値や、バッテリ温度センサにて検出されたバッテリ温度などに基づいて、バッテリ300の充電状態(SOC:State of Charge)や、バッテリ300の入力制限Win及び出力制限Woutなどを演算する。
【0055】
また、ECU100には前記インバータ200が接続されている。インバータ200は、各モータジェネレータMG1,MG2それぞれの制御用のIPM(Intelligent Power Module:インテリジェントパワーモジュール)を備えている。その各IPMは、複数(例えば6個)の半導体スイッチング素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などによって構成されている。
【0056】
インバータ200は、例えば、ECU100からの指令信号(例えば、第1モータジェネレータMG1のトルク指令値、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値)に応じてバッテリ300からの直流電流を、モータジェネレータMG1,MG2を駆動する電流に変換する一方、エンジン1の動力により第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流、及び、回生ブレーキにより第2モータジェネレータMG2で発電された交流電流を、バッテリ300に充電するための直流電流に変換する。また、インバータ200は、第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流を走行状態に応じて、第2モータジェネレータMG2の駆動用電力として供給する。
【0057】
−走行モード−
本実施形態に係るハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン1の運転効率が悪い場合には、第2モータジェネレータMG2のみにより走行(以下、「EV走行」ともいう)を行う。また、車室内に配置された走行モード選択スイッチによって運転者がEV走行モードを選択した場合にもEV走行を行う。
【0058】
一方、通常走行時には、例えば前記動力分割機構3によりエンジン1の動力を2経路に分け、一方で駆動輪6L,6Rの直接駆動(直達トルクによる駆動)を行い、他方で第1モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。この時、発生する電力で第2モータジェネレータMG2を駆動して駆動輪6L,6Rの駆動補助を行う(電気パスによる駆動)。このように、前記動力分割機構3が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジン1からの動力の主部を駆動輪6L,6Rに機械的に伝達し、そのエンジン1からの動力の残部を第1モータジェネレータMG1から第2モータジェネレータMG2への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される変速機(電気式無段変速機)としての機能が発揮される。これにより、駆動輪6L,6R(リングギヤR3,R4)の回転数及びトルクに依存することなく、エンジン回転数及びエンジントルクを自由に操作することが可能となり、駆動輪6L,6Rに要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジンの運転状態を得ることが可能となる。
【0059】
また、高速走行時には、さらにバッテリ(走行用バッテリ)300からの電力を第2モータジェネレータMG2に供給し、この第2モータジェネレータMG2の出力を増大させて駆動輪6L,6Rに対して駆動力の追加(駆動力アシスト;力行)を行う。
【0060】
更に、減速時には、第2モータジェネレータMG2が発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリ300に蓄える。尚、バッテリ300の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン1の出力を増加して第1モータジェネレータMG1による発電量を増やしてバッテリ300に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時においても必要に応じてエンジン1の駆動力を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリ300の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン1の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合や、車両が急加速する場合等である。
【0061】
さらに、前記ハイブリッド車両においては、車両の運転状態やバッテリ300の状態によって、燃費を向上させるために、エンジン1を停止させる。そして、その後も、車両の運転状態やバッテリ300の状態を検知して、エンジン1を再始動させる。このように、ハイブリッド車両においては、イグニッションスイッチがON位置であってもエンジン1は間欠運転される。
【0062】
−フューエルカット制御の概要−
前記ECU100は、燃料消費量の削減を図るために、以下のフューエルカット制御も実行する。
【0063】
このフューエルカット制御は、例えば前記クランクポジションセンサ102によって検出されるエンジン回転数が予め定められた所定値(フューエルカット回転数:例えば1000rpm)以上で且つ前記アクセル開度センサ101によって検出されるアクセルペダルの開度が「0」(アクセルOFF)とされた場合にフューエルカット条件が成立したと判断し、前記各インジェクタ10a,10bからの燃料噴射を停止するようにしている。これにより、燃料消費量の削減や排気エミッションの改善が図れる。また、このフューエルカット中にあっては、スロットルバルブ81の開度を小さくし、ポンピングロスを大きくすることで、ドライバのアクセルオフ操作に対応した車両の減速度が得られるようにする。また、この際、前記第2モータジェネレータMG2が回生発電を行う場合もある。
【0064】
なお、前記フューエルカット中にアクセルペダルが踏まれた場合(加速要求時)には、フューエルカット解除条件が成立し、フューエルカットを中止して、少なくとも一方のインジェクタ10a,10bからの燃料噴射を再開する。この燃料噴射再開時に使用されるインジェクタ10a,10bとしては、基本的には、エンジン1の運転状態に応じて決定されるモード(前記ポート噴射駆動モード、筒内噴射駆動モードおよび共用噴射駆動モードの何れか)により燃料噴射形態が決定されるが、本実施形態の場合には、後述するように所定条件にある場合にはポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射禁止することになる(詳細は後述する)。
【0065】
−フューエルカットからの復帰制御−
本実施形態の特徴は前述したフューエルカット制御の実行中に、ドライバがアクセルペダルの踏み込み操作を行うなどして要求駆動力が大きくなり、フューエルカット解除条件が成立した場合の復帰制御(以下、「F/C復帰制御」と呼ぶ場合もある)に特徴がある。以下、このフューエルカットからの復帰制御についての複数の実施形態を説明する。
【0066】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。本実施形態では、理解を容易にするために、フューエルカット解除条件成立時には、エンジン1からの駆動力が要求されており、少なくとも何れかのインジェクタ10a,10bから燃料噴射が行われてエンジン1から駆動力が出力される場合について説明する。
【0067】
先ず、復帰制御の概要について説明する。例えば高負荷運転が行われていることに起因してエンジン温度(冷却水温度)が比較的高い状態で前記フューエルカット条件が成立し、インジェクタ10a,10bからの燃料噴射が停止され且つスロットルバルブ81の開度が小さくなった場合、ポート噴射インジェクタ10aの先端温度が上昇してしまう可能性がある。これは、吸気通路14、特にインテークマニホールド14a内の吸気通路を流れる吸気の量が少なくなり、それまで(フューエルカット条件が成立するまで)、この吸気によって冷却されていたポート噴射インジェクタ10aの先端部分が冷却されなくなるためである。
【0068】
このポート噴射インジェクタ10aの先端温度はフューエルカット継続時間が長くなるに従って上昇していき、この先端温度が所定温度以上(例えば120℃以上)に達した場合には、このポート噴射インジェクタ10aの内部に存在している燃料の温度がその飽和蒸気圧温度まで上昇し、燃料にベーパ(気泡)が発生してしまう可能性がある。
【0069】
このベーパが発生している状況でフューエルカット解除条件が成立し、燃料噴射が復帰されると、前記ベーパの影響によって適正な燃料噴射量が得られなくなり(燃焼室12内での燃焼が安定して得られる十分な燃料噴射量が得られなくなり)、アイドリング運転時におけるエンジン回転数が大きく変動するラフアイドル状態となったり、場合によってはエンジンストールに至ってしまう可能性もある。
【0070】
このような現象を回避するべく、本実施形態におけるフューエルカットからの復帰制御では、ポート噴射インジェクタ10aの先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度まで上昇している場合には、フューエルカット解除条件が成立してもポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止し(本発明でいう燃料噴射制御手段による燃料噴射禁止動作)、直噴インジェクタ10bのみから燃料噴射を行って、エンジン1に要求されている駆動力を発生させる。その後、ポート噴射インジェクタ10aの先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度未満まで低下したことを条件として、このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可するようにしている。
【0071】
以下、このフューエルカットからの復帰制御を図4のフローチャートに沿って具体的に説明する。このフローチャートは、前記フューエルカット解除条件が成立した後、数msec毎、または、クランクシャフト18が所定回転角度だけ回転する毎に繰り返して実行される。
【0072】
先ず、ステップST1において、ポート噴射インジェクタ10aの先端温度(以下、「インジェクタ先端温度」と呼ぶ)の推定を行う。具体的には、前記フューエルカット解除条件が成立した時点における冷却水温度、及び、フューエルカット継続時間に基づいて、インジェクタ先端温度の推定を行う。前記冷却水温度は、前記水温センサ107によって検出される。また、フューエルカット継続時間は、フューエルカット条件が成立してから(前記アクセル開度センサ101によって検出されるアクセルペダルの開度が「0」(アクセルOFF)とされてフューエルカット条件が成立してから)フューエルカット解除条件が成立するまで(前記アクセル開度センサ101によって検出されるアクセルペダルの開度が大きくなり(アクセルON)とされてフューエルカット解除条件が成立するまで)の期間を前記ECU100に備えられたカウンタにより計測することで得られる。そして、前記ROMには、これらフューエルカット解除条件が成立した時点における冷却水温度とフューエルカット継続時間とをパラメータとしてインジェクタ先端温度を推定するための先端温度推定マップが記憶されており、この先端温度推定マップが参照されることでインジェクタ先端温度が推定される。この先端温度推定マップは、予め実験やシミュレーションによって作成されてROMに記憶されており、フューエルカット解除条件が成立した時点における冷却水温度が高いほど、また、フューエルカット継続時間が長いほど、インジェクタ先端温度としては高い値が推定値として取得されるようになっている。尚、フューエルカット中は燃焼室12内での燃焼が行われないためエンジン1の温度(油温等)は次第に低下していき、それに伴って冷却水温度も低下していくことになる。つまり、エンジン1の温度がインジェクタ先端温度に対して与える影響度は時間とともに変化する。このように、インジェクタ先端温度を大きく左右するパラメータに基づいてインジェクタ先端温度を推定することにより、その推定精度を高めることができるようにしている。
【0073】
インジェクタ先端温度の推定を行った後、ステップST2に移り、この推定されたインジェクタ先端温度が、燃料の飽和蒸気圧温度(ベーパが発生する温度;本発明でいうベーパ発生温度)を超えているか否かを判定する。この飽和蒸気圧温度としては、例えば120℃に設定されている。尚、燃料にベーパが発生する温度は、燃圧によっても左右されるため、この燃圧に応じてベーパ発生温度を算出し、この算出したベーパ発生温度と前記推定されたインジェクタ先端温度とを比較することが好ましい。
【0074】
インジェクタ先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度以下となっており、ステップST2でNO判定された場合には、ポート噴射インジェクタ10aの内部の燃料にベーパは発生していないとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可するべく、そのままリターンされる。つまり、この場合、フューエルカット解除条件が成立した後に前記ポート噴射駆動モードや共用噴射駆動モードとなった場合には、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射が開始されることになる。
【0075】
一方、インジェクタ先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度を超えており、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、ポート噴射インジェクタ10aの内部の燃料にベーパが発生している可能性があるとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止する。このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射が禁止されたことに伴い、燃焼室12内には、直噴インジェクタ10bのみからの燃料噴射が行われ、この燃料によってエンジン1に要求されている駆動力を発生させる。つまり、エンジン1に要求されている駆動力を得るための燃料噴射量を算出し、その要求燃料噴射量の全量を直噴インジェクタ10bから噴射することになる。尚、このフューエルカット解除条件の成立に伴ってスロットルバルブ81は開放され、エンジン負荷に応じた開度に調整されることになる。
【0076】
その後、ステップST4において、フューエルカット解除条件が成立した時点からの積算吸入空気量(以下、単に「積算吸入空気量」と呼ぶ)が、冷却必要吸入空気量を超えたか否かを判定する。この積算吸入空気量は、フューエルカット解除条件が成立した時点から前記エアフローメータ108によって検出されている吸入空気量を積算していくことにより得られる。また、冷却必要吸入空気量は、飽和蒸気圧温度を超えたインジェクタ先端温度が飽和蒸気圧温度以下となるのに要する吸入空気量である。つまり、吸気通路14に吸入空気が流れることで、この吸入空気によってポート噴射インジェクタ10aの先端部分の熱が奪われ、インジェクタ先端温度は次第に低下していくが、この際のインジェクタ先端温度が飽和蒸気圧温度以下となるのに要する吸入空気量が冷却必要吸入空気量として与えられている。この冷却必要吸入空気量は、ポート噴射インジェクタ10aの先端部分の形状及び熱容量や、フューエルカット解除条件が成立した時点でのインジェクタ先端温度によって決定される。ポート噴射インジェクタ10aの先端部分の形状及び熱容量はポート噴射インジェクタ10aの構成によって一定であるため、フューエルカット解除条件が成立した時点でのインジェクタ先端温度をパラメータとして冷却必要吸入空気量を設定するための冷却必要吸入空気量設定マップが前記ROMに記憶されている。この冷却必要吸入空気量設定マップが参照されることで冷却必要吸入空気量が設定される。この冷却必要吸入空気量設定マップは、予め実験やシミュレーションによって作成されており、フューエルカット解除条件が成立した時点でのインジェクタ先端温度が高いほど冷却必要吸入空気量としては大きな値が取得されるようになっている。図5は、この冷却必要吸入空気量設定マップの一例を示す図である。この図5に示すように、インジェクタ先端温度が飽和蒸気圧温度(ベーパ発生温度)Tvを超える領域では、インジェクタ先端温度が高いほど冷却必要吸入空気量としては大きな値が取得される。尚、図6は、積算吸入空気量とインジェクタ先端温度との関係を示す図である。このように、積算吸入空気量が多いほどインジェクタ先端温度の低下量も多くなっていくため、インジェクタ先端温度が高いほど冷却必要吸入空気量を多く設定することで、インジェクタ先端温度を飽和蒸気圧温度(ベーパ発生温度)まで低下させることが可能となる。
【0077】
前記積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量以下である場合には、ステップST4でNO判定され、積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量を超えるのを待つ。
【0078】
一方、積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量を超えて、ステップST4でYES判定された場合には、ステップST5に移り、ポート噴射インジェクタ10aの内部のベーパは解消されたとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可する。つまり、前記ポート噴射駆動モードや共用噴射駆動モードである場合には、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を開始する。
【0079】
以上の動作が繰り返されることにより、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが存在している可能性がある場合には、このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止し、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが存在していない場合や、ベーパの存在が解消された場合には、このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可することになる。
【0080】
図7は、前述したF/C復帰制御を実行した場合のインジェクタ先端温度の経時変化の一例を示す図である。この図7では、フューエルカット解除条件が成立した時点でのインジェクタ先端温度がベーパ発生温度Tvを超えている場合を実線で、ベーパ発生温度Tvを超えていない場合を一点鎖線でそれぞれ示している。
【0081】
この図7に示すように、フューエルカットが開始されると、スロットルバルブ81の開度が小さくなるに従ってインジェクタ先端温度は上昇していく。そして、フューエルカット解除条件が成立した時点でのインジェクタ先端温度がベーパ発生温度Tvを超えている場合(実線)には、フューエルカット解除条件の成立後、インジェクタ先端温度がベーパ発生温度Tvに低下するまでは燃料噴射が禁止されている(図中の「ポート噴射インジェクタの燃料噴射禁止期間」を参照)。
【0082】
以上説明したように、本実施形態では、フューエルカット解除条件成立時におけるポート噴射インジェクタ10aの先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度まで上昇している場合には、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止し、直噴インジェクタ10bのみから燃料噴射を行って、エンジン1に要求されている駆動力を発生させている。このため、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが発生している状況で、このポート噴射インジェクタ10aから燃料噴射が行われてしまって適正な燃料噴射量が得られず、ラフアイドル状態となったりエンジンストールに至ってしまうといったことが回避できる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、前述した第1実施形態に加えて、フューエルカット中における車両の減速度を得る手法として、前記スロットルバルブ81の開度を小さくする場合と、前記第2モータジェネレータMG2での回生発電を行う場合とを考慮したものである。以下、具体的に説明する。
【0084】
図8は、本実施形態に係るポート噴射制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、図示しないイグニッションスイッチのON後、数msec毎に繰り返して実行される。
【0085】
先ず、ステップST11において、現在のエンジン1の運転状態はフューエルカット中であり、且つスロットルバルブ81は開放可能な状態であるか否かを判定する。現在のエンジン1の運転状態がフューエルカット中であるか否かの判定としては、前記フューエルカット条件が成立している状態であって、未だフューエルカット解除条件が成立していない場合に、フューエルカット中であると判定される。また、スロットルバルブ81が開放可能な状態であるか否かの判定は、スロットルバルブ81を開放しても車両の減速度が確保できる運転状態であるか否かを判定するものである。つまり、前述した如く、フューエルカット中は、スロットルバルブ81の開度を小さくし、ポンピングロスを大きくすることで、ドライバのアクセルオフ操作に対応した車両の減速度が得られるようにしているのが一般的であるが、この車両の減速度が他の手段で得られている場合にはスロットルバルブ81の開度を大きくすることが可能である。例えば、前記第2モータジェネレータMG2が回生発電を行っている場合には、この回生エネルギ分だけ車両の減速度が得られているため、スロットルバルブ81の開度を大きくすることが可能である。そして、フューエルカット中であれば、スロットルバルブ81の開度を大きくしてもエンジン回転数が吹け上がる(急上昇する)ことはない。
【0086】
ステップST11でYES判定された場合には、ステップST12に移り、スロットルバルブ81を開放する。一方、ステップST11でNO判定された場合には、ステップST13に移り、スロットルバルブ81を閉鎖する。
【0087】
その後、ステップST14において、上述した第1実施形態の場合と同様に、フューエルカット解除条件の成立に伴ってインジェクタ先端温度の推定を行う。具体的には、前記フューエルカット解除条件が成立した時点における冷却水温度、及び、フューエルカット継続時間に基づいて、インジェクタ先端温度の推定を行う。この推定動作は、前記第1実施形態における図4のフローチャートのステップST1と同様にして行われる。
【0088】
その後、ステップST15に移り、この推定されたインジェクタ先端温度が、燃料の飽和蒸気圧温度(ベーパが発生する温度)を超えているか否かを判定する。この判定動作は、前記第1実施形態における図4のフローチャートのステップST2と同様にして行われる。
【0089】
インジェクタ先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度以下となっており、ステップST15でNO判定された場合には、ポート噴射インジェクタ10aの内部の燃料にベーパは発生していないとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可するべく、そのままリターンされる。
【0090】
一方、インジェクタ先端温度が燃料の飽和蒸気圧温度を超えており、ステップST15でYES判定された場合には、ステップST16に移り、ポート噴射インジェクタ10aの内部の燃料がベーパは発生している可能性があるとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止する。
【0091】
このようにしてポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射が禁止された後、ステップST17に移り、現在、エンジン1は停止中(回転数が「0」)であるか否かを判定する。この判定は、前記クランクポジションセンサ102によって検出されるエンジン回転数に基づいて行われる。または、ECU100からの駆動力要求信号として、エンジン1に対する要求駆動力が「0」となっているか否かによって判定することもできる。例えば、車両が前記EV走行中である場合や、車両停車状態において燃料消費量を削減するためにアイドリング運転を停止している状態(所謂アイドリングストップ)となっている場合には、ステップST17でYES判定される。
【0092】
エンジン1が駆動中であり、ステップST17でNO判定された場合には、吸気通路14には空気が流れており、ポート噴射インジェクタ10aの先端は冷却される状況にあるとしてステップST19に移る。
【0093】
一方、エンジン1が停止中であり、ステップST17でYES判定された場合には、ステップST18に移り、吸気通路14に吸入空気を流すべく、エンジン1を回転させる。このエンジン1を回転させるための手段としては、直噴インジェクタ10bからの燃料噴射及び点火プラグ15の点火を行ってエンジン1をアイドリング運転させる(具体的には前記第1モータジェネレータMG1によってエンジン1をクランキングした状態で直噴インジェクタ10bからの燃料噴射及び点火プラグ15の点火を行う)場合と、直噴インジェクタ10bからの燃料噴射及び点火プラグ15の点火を共に禁止し、前記第1モータジェネレータMG1によってクランクシャフト18を回転させる(一般に、「モータリング」と呼ばれる)場合とが挙げられる。このようにしてエンジン1を回転させることで吸気通路14に吸入空気が流れ、これによってポート噴射インジェクタ10aの先端部分が冷却されることになる。
【0094】
その後、ステップST19に移り、フューエルカット解除条件が成立した時点からの積算吸入空気量(積算吸入空気量)が、冷却必要吸入空気量を超えたか否かを判定する。この判定動作は、前記第1実施形態における図4のフローチャートのステップST4と同様にして行われる。
【0095】
前記積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量以下である場合には、ステップST19でNO判定され、積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量を超えるのを待つ。
【0096】
一方、積算吸入空気量が冷却必要吸入空気量を超えて、ステップST19でYES判定された場合には、ステップST20に移り、ポート噴射インジェクタ10aの内部のベーパは解消されたとして、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可する。つまり、前記ポート噴射駆動モードや共用噴射駆動モードである場合には、ポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を開始する。
【0097】
以上の動作が繰り返されることにより、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが存在している可能性がある場合には、このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を禁止し、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが存在していない場合や、ベーパの存在が解消された場合には、このポート噴射インジェクタ10aからの燃料噴射を許可することになる。
【0098】
本実施形態においても、ポート噴射インジェクタ10aの内部にベーパが発生している状況で、このポート噴射インジェクタ10aから燃料噴射が行われてしまって適正な燃料噴射量が得られず、ラフアイドル状態となったりエンジンストールに至ってしまうといったことを回避することができる。また、本実施形態の場合には、第1モータジェネレータMG1によってエンジン1のクランクシャフト18を回転させて吸気通路14に空気を流通させ、この空気による冷却作用によってインジェクタ先端温度を急速に冷却させ、ベーパを早期に解消することができる。更に、第2モータジェネレータMG2による回生発電による車両の減速度を確保しながら、スロットルバルブ81を開放することで吸気通路14に空気を流通させ、この空気による冷却作用によってインジェクタ先端温度を急速に冷却させることもできる。これによっても、ベーパを早期に解消することができる。
【0099】
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両の制御に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両や、4輪駆動方式のハイブリッド車両の制御にも適用できる。また、ハイブリッド車両に限らず、走行用駆動源としてエンジンのみを備えたコンベンショナル車に対しても適用が可能である。
【0100】
また、各実施形態では、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の2つの電動機が搭載されたハイブリッド車両に本発明を適用した例を示したが、1つの電動機が搭載されたハイブリッド車両の制御や、3つ以上の電動機が搭載されたハイブリッド車両の制御にも適用可能である。
【0101】
また、各実施形態では、自動車に搭載されたガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型やV型や水平対向型等の別)についても特に限定されるものではない。
【0102】
また、本発明は、インジェクタとして、直噴インジェクタ10bを備えておらず、ポート噴射インジェクタ10aのみを備えたエンジンを搭載したハイブリッド車両に対しても適用が可能である。この場合、直噴インジェクタ10bからの燃料噴射が禁止された場合には、モータ(例えば前記第2モータジェネレータMG2)によって走行駆動力を得ることになる。
【0103】
また、前記各実施形態では、冷却必要吸入空気量を、インジェクタ先端温度が飽和蒸気圧温度以下となるのに要する吸入空気量として設定していた。本発明はこれに限らず、ポート噴射インジェクタ10aの内部のベーパを確実に解消するべく、インジェクタ先端温度が飽和蒸気圧温度以下となるのに要する吸入空気量に更に所定量の吸入空気量を加算したものを冷却必要吸入空気量として設定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、ポート噴射インジェクタ及び直噴インジェクタを備えたエンジンにおけるフューエルカット解除条件成立時の燃料噴射制御に適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 エンジン(内燃機関)
10a ポート噴射インジェクタ(吸気通路噴射弁)
10b 直噴インジェクタ(筒内噴射弁)
14 吸気通路
81 スロットルバルブ
82 スロットルモータ
MG1 第1モータジェネレータ(電動機)
MG2 第2モータジェネレータ(発電電動機)
100 ECU
101 アクセル開度センサ
102 クランクポジションセンサ
107 水温センサ
108 エアフローメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に向けて燃料を噴射する吸気通路噴射弁を備え、所定のフューエルカット条件が成立した場合に前記吸気通路噴射弁からの燃料噴射を停止すると共に、所定のフューエルカット解除条件が成立した場合に前記吸気通路噴射弁からの燃料噴射を再開する内燃機関の制御装置において、
前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達している場合には、この吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止する燃料噴射制御手段が設けられていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記燃料噴射制御手段は、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達しており、吸気通路噴射弁からの燃料噴射が禁止された場合には、その後に吸気通路を流れる吸入空気量が、吸気通路噴射弁における燃料のベーパを解消可能な所定の冷却必要吸入空気量に達した時点で吸気通路噴射弁からの燃料噴射を許可する構成となっていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内燃機関の制御装置において、
燃料噴射弁として、前記吸気通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を備え、
前記燃料噴射制御手段は、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が、燃料のベーパ発生温度に達している場合には、この吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止すると共に、要求駆動力が得られる量の燃料を前記筒内噴射弁から噴射するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気通路噴射弁の温度は、吸気通路に臨んでいる吸気通路噴射弁の先端部分の温度であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気通路噴射弁の先端部分の温度は、前記フューエルカット解除条件が成立した時点における内燃機関冷却水温度、及び、フューエルカット継続時間に基づいて推定されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の内燃機関の制御装置において、
内燃機関の駆動軸には電動機が連結されており、前記フューエルカット解除条件が成立した際の吸気通路噴射弁の温度が燃料のベーパ発生温度に達している場合において、内燃機関が停止している場合には、吸気通路噴射弁からの燃料噴射を禁止すると共に、前記電動機によって内燃機関の駆動軸を回転させて吸気通路に空気を流通させる構成となっていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の内燃機関の制御装置において、
車両に適用され、
前記走行用駆動源として前記内燃機関及び発電電動機が設けられ、車両減速時に前記発電電動機による回生発電を行う回生モードでの運転が可能となっており、
前記フューエルカット解除条件が成立した際、前記回生モードでは、吸気通路に設けられたスロットルバルブを開放する構成となっていることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100780(P2013−100780A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245382(P2011−245382)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】