説明

内燃機関の排気浄化システム

【課題】本発明は、内燃機関の排気通路に選択還元型NOx触媒およびパティキュレートフィルタが設けられている場合において、選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出を抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、選択還元型NOx触媒と、該選択還元型NOx触媒に尿素を供給する尿素供給手段と、パティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタを昇温させるフィルタ昇温制御を実行するフィルタ昇温手段と、を備えている。そして、フィルタ昇温制御の実行条件が成立したときは(S101)、尿素供給手段による選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止すると共に(S102)、選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止した時点から所定期間が経過してからフィルタ昇温手段によってフィルタ昇温制御を実行する(S103、S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒および排気中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタを備えた内燃機関の排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気浄化システムとして、内燃機関の排気通路に設けられアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒を備えたものが知られている。このような排気浄化システムでは選択還元型NOx触媒に尿素が供給される。供給された尿素は選択還元型NOx触媒に一旦吸着し、吸着した尿素が加水分解することでアンモニアが生じる。このアンモニアが還元剤となって排気中のNOxが還元される。
【0003】
また、内燃機関の排気通路に排気中の粒子状物質(Particulate Matter :以下、PMと称する)を捕集するパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタと称する)が設けられる場合がある。この場合、フィルタに捕集されたPMを除去すべく該フィルタを昇温させる場合がある。
【0004】
特許文献1には、排気通路に酸化触媒、フィルタ、排気中に尿素系液体を噴射する液体噴射ノズル、選択還元型NOx触媒、アンモニアスリップ防止触媒を上流から順に配置した構成が開示されている。この特許文献1には、EGRパイプおよびEGR弁が更に設けられている。そして、内燃機関の運転状態に基づいて液体噴射ノズルおよびEGR弁が制御される。
【特許文献1】特開2004−270565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の排気通路に選択還元型NOx触媒およびフィルタが設けられている場合、フィルタを昇温させたときに選択還元型NOx触媒の温度も上昇する場合がある。選択還元型NOx触媒の温度が急激に上昇すると、該選択還元型NOx触媒に吸着していた尿素の加水分解が急激に促進され、アンモニアの生成量が急増する。その結果、NOxの還元に消費されずに選択還元型NOx触媒から排出されるアンモニアが増加する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、内燃機関の排気通路に選択還元型NOx触媒およびフィルタが設けられている場合において、選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィルタの昇温を実行する条件が成立した場合、選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止すると共に、尿素の供給を停止してから所定期間経過後にフィルタの昇温を実行するものである。
【0008】
即ち、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、
内燃機関の排気通路に設けられアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
該選択還元型NOx触媒に尿素を供給する尿素供給手段と、
前記排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタと、
該パティキュレートフィルタを昇温させるフィルタ昇温制御を実行するフィルタ昇温手
段と、を備え、
前記フィルタ昇温制御の実行条件が成立したときは、前記尿素供給手段による前記選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止すると共に、前記尿素供給手段による前記選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止した時点から所定期間が経過してから前記フィルタ昇温手段によって前記フィルタ昇温制御を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、フィルタ昇温制御の実行条件が成立すると選択還元型NOx触媒への尿素の供給が停止される。そして、選択還元型NOx触媒への尿素の供給が停止された時点から所定期間が経過してからフィルタ昇温制御が実行される。
【0010】
これによれば、フィルタ昇温制御の実行条件が成立するまでの間に選択還元型NOx触媒に吸着した尿素が所定期間中にアンモニアとなりNOxの還元に消費される。そして、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が減少してからフィルタ昇温制御が実行される。そのため、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒の温度が上昇したときの該選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出を抑制することが出来る。
【0011】
本発明においては、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量を推定する尿素吸着量推定手段をさらに備えてもよい。この場合、フィルタ昇温制御の実行条件が成立したときに選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が第一所定吸着量以上である場合に、尿素供給手段による選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止してもよい。
【0012】
ここで、第一所定吸着量は、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が該第一所定吸着量以上のときにフィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒の温度が上昇すると、選択還元型NOx触媒から過剰な量のアンモニアが排出されると判断できる閾値である。
【0013】
上記によっても、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒の温度が上昇したときの該選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出を抑制することが出来る。
【0014】
また、上記の場合、所定期間は、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が第一所定吸着量よりも少ない第二所定吸着量以下に減少するまでの期間であってもよい。
【0015】
ここで、第二所定吸着量は、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が該第二所定吸着量以下であれば、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒の温度が上昇しても、選択還元型NOx触媒から排出されるアンモニアの量は許容範囲内となると判断できる閾値である。
【0016】
これによれば、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が十分に減少した状態でフィルタ昇温制御を実行することが出来る。
【0017】
また、本発明においては、選択還元型NOx触媒より下流側の排気通路に設けられアンモニアを酸化する機能を有するアンモニア酸化触媒と、所定期間中に選択還元型NOx触媒を昇温させるNOx触媒昇温制御を実行するNOx触媒昇温手段と、をさらに備えてもよい。この場合、NOx触媒昇温制御においては、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒が昇温するときの昇温速度よりも低い所定昇温速度で選択還元型NOx触媒が昇温される。
【0018】
NOx触媒昇温手段によって選択還元型NOx触媒が昇温された場合も、選択還元型NOx触媒における尿素の加水分解は促進され、該選択還元型NOx触媒から排出されるアンモニアは増加する。しかしながら、所定昇温速度は、フィルタ昇温制御の実行に伴って
前記選択還元型NOx触媒が昇温するときの昇温速度よりも低い速度である。そのため、NOx触媒昇温制御を実行することにより選択還元型NOx触媒が昇温されたときのアンモニアの排出量は、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒が昇温したときのアンモニアの排出量よりも少ない。
【0019】
また、所定昇温速度は、選択還元型NOx触媒から排出されるアンモニアの量がアンモニア酸化触媒で十分に酸化することが可能な範囲内となると判断できる値である。つまり、選択還元型NOx触媒が所定昇温速度で昇温した場合、選択還元型NOx触媒から排出されたアンモニアはアンモニア酸化触媒で十分に酸化されるため、アンモニア酸化触媒よりも下流側へのアンモニアの流出は抑制される。
【0020】
従って、上記によれば、所定期間中に、アンモニア酸化触媒よりも下流側へのアンモニアの流出を抑制しつつより速やかに選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量を減少させることが出来る。そのため、所定期間がある一定の期間である場合は、該所定期間中に選択還元型NOx触媒おける尿素の吸着量をより減少させることが出来る。その結果、フィルタ昇温制御を実行したときの選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出量をより抑制することが出来る。また、所定期間が、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が第一所定吸着量以上から第二所定吸着量以下に減少するまでの期間である場合は、所定期間を可及的に短くすることが出来る。その結果、フィルタ昇温制御をより早期に実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、内燃機関の排気通路に選択還元型NOx触媒およびフィルタが設けられている場合における選択還元型NOx触媒からのアンモニアの排出を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムの具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
<実施例1>
<内燃機関およびその吸排気系の概略構成>
図1は、本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は4つの気筒2を有する車両駆動用のディーゼルエンジンである。各気筒2には該気筒2内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁3がそれぞれ設けられている。
【0024】
内燃機関1には、インテークマニホールド5およびエキゾーストマニホールド7が接続されている。インテークマニホールド5には吸気通路4の一端が接続されている。エキゾーストマニホールド7には排気通路6の一端が接続されている。本実施例において、排気通路6はエキゾーストマニホールド7の4番気筒近傍の位置に接続されている。
【0025】
吸気通路4にはターボチャージャ8のコンプレッサハウジング8aが設置されている。排気通路6にはターボチャージャ8のタービンハウジング8bが設置されている。吸気通路4におけるコンプレッサハウジング8aよりも上流側にはエアフローメータ15が設けられている。
【0026】
エキゾーストマニホールド7には排気中に燃料を添加する燃料添加弁9が設けられている。排気通路6におけるタービンハウジング8bより下流側には、酸化触媒11およびフィルタ12、選択還元型NOx触媒13、アンモニア酸化触媒14が上流から順に直列に配置されている。選択還元型NOx触媒13はアンモニアを還元剤として排気中のNOx
を還元する触媒である。尚、フィルタ12には酸化触媒等の酸化機能を有する触媒が担持されていてもよい。
【0027】
排気通路6におけるフィルタ12と選択還元型NOx触媒13との間には温度センサ16および尿素添加弁10が設けられている。温度センサ16は排気の温度を検出するセンサである。尿素添加弁10は排気中に尿素水溶液を添加する弁である。尿素添加弁10には、尿素水溶液が貯留された尿素水溶液タンク(図示略)から尿素水溶液が供給される。本実施例においては、尿素添加弁10が本発明に係る尿素供給手段に相当する。
【0028】
尿素添加弁10からは選択還元型NOx触媒13が活性状態にあるときに尿素水溶液が添加され、該尿素水溶液が選択還元型NOx触媒13に供給される。選択還元型NOx触媒13に供給された尿素水溶液中の尿素は選択還元型NOx触媒13に一旦吸着し、吸着した尿素が加水分解することでアンモニアが生じる。このアンモニアが還元剤となって排気中のNOxが還元される。
【0029】
内燃機関1には電子制御ユニット(ECU)20が併設されている。このECU20は内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。ECU20には、エアフローメータ15および温度センサ16が電気的に接続されている。そして、これらの出力信号がECU20に入力される。
【0030】
また、ECU20には、燃料噴射弁3および燃料添加弁9、尿素添加弁10が電気的に接続されている。そして、ECU20によってこれらが制御される。
【0031】
<フィルタ再生制御>
本実施例では、フィルタ12に捕集されたPMを除去するためのフィルタ再生制御が行われる。フィルタ再生制御は燃料添加弁9から燃料を添加することで行われる。燃料添加弁9から添加された燃料は酸化触媒11に供給され該酸化触媒11において酸化される。このときに生じる酸化熱によってフィルタ12が昇温される。フィルタ再生制御ではフィルタ12の温度をPMの酸化が可能な目標温度まで上昇させる。これにより、PMが酸化されフィルタ12から除去される。尚、本実施例においては、フィルタ再生制御が、本発明に係るフィルタ昇温制御に相当する。
【0032】
フィルタ再生制御が実行されると、酸化触媒11およびフィルタ12の昇温に伴って選択還元型NOx触媒13の温度も上昇する。しかしながら、選択還元型NOx触媒13の温度が急激に上昇すると、選択還元型NOx触媒13に吸着していた尿素の加水分解が急激に促進されることで選択還元型NOx触媒13から排出されるアンモニアが増加する虞がある。
【0033】
<フィルタ再生制御のルーチン>
そこで、実施例では、フィルタ再生制御を実行する前に尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止させる。以下、本実施例に係るフィルタ再生制御のルーチンについて、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。本ルーチンは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1の運転中、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0034】
本ルーチンでは、ECU20は、先ずS101において、フィルタ再生制御の実行条件が成立したか否かについて判別する。フィルタ再生制御の実行条件としては、フィルタ12におけるPMの捕集量の推定値が所定量以上となったとき等を例示することが出来る。本実施例においては、フィルタ再生制御の実行条件が、本発明に係るフィルタ昇温制御の実行条件に相当する。S101において、肯定判定された場合、ECU20はS102に進み、否定判定された場合、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0035】
S102において、ECU20は、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止する。
【0036】
次に、ECU20は、S103に進み、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止した時点から所定期間Δtsが経過したか否かについて判別する。本実施例に係る所定期間Δtsは予め定められた一定の期間である。S103において、肯定判定された場合、ECU20はS104に進み、否定判定された場合、ECU20はS103を繰り返す。
【0037】
S104に進んだECU20は、燃料添加弁9からの燃料添加を開始して、フィルタ再生制御を実行する。その後、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。本実施例においては、S104を実行するECU20が、本発明に係るフィルタ昇温手段に相当する。
【0038】
以上説明したルーチンによれば、フィルタ再生制御の実行条件が成立すると、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加が停止される。即ち、選択還元型NOx触媒13への尿素水溶液の供給が停止される。そして、選択還元型NOx触媒13への尿素水溶液の供給が停止された時点から所定期間Δtsが経過してからフィルタ再生制御が実行される。
【0039】
これによれば、フィルタ再生制御の実行条件が成立するまでの間に選択還元型NOx触媒13に吸着した尿素が所定期間Δts中にアンモニアとなりNOxの還元に消費される。そして、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が減少してからフィルタ再生制御が実行される。そのため、フィルタ再生制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13の温度が上昇したときの該選択還元型NOx触媒13からのアンモニアの排出を抑制することが出来る。
【0040】
<変形例>
図3は、本実施例の変形例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図である。本変形例においては、排気通路6におけるタービンハウジング8bよりも下流側には、酸化触媒17、選択還元型NOx触媒13、酸化触媒11、フィルタ12が上流から順に直列に配置されている。そして、排気通路6における酸化触媒17と選択還元型NOx触媒13との間に尿素添加弁10が設けられている。また、排気通路6における選択還元型NOx触媒13と酸化触媒11との間に温度センサ16が設けられている。その他の構成は、図1に示す概略構成と同様である。
【0041】
本変形例のような構成の場合であっても、フィルタ再生制御は燃料添加弁9から燃料を添加することで行われる。燃料添加弁9から添加された燃料は酸化触媒17および酸化触媒11において酸化され、このときに生じる酸化熱によってフィルタ12が昇温される。
【0042】
そして、このような場合においても、酸化触媒17において燃料が酸化することで生じる酸化熱によって選択還元型NOx触媒13が昇温する。つまり、フィルタ再生制御が実行されると選択還元型NOx触媒13の温度も上昇する。そのため、本変形例に係るフィルタ再生制御においても、図2に示すようなルーチンを適用してもよい。これにより、図1に示すような概略構成の場合と同様の効果を得ることが出来る。
【0043】
<実施例2>
本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成は実施例1と同様である。また、本実施例においても、実施例1と同様のフィルタ再生制御が行われる。
【0044】
<フィルタ再生制御のルーチン>
ここで、本実施例に係るフィルタ再生制御のルーチンについて、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。本ルーチンは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1の運転中、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0045】
本ルーチンでは、ECU20は、先ずS201において、フィルタ再生制御の実行条件が成立したか否かについて判別する。フィルタ再生制御の実行条件は実施例1と同様である。S201において、肯定判定された場合、ECU20はS202に進み、否定判定された場合、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0046】
S202において、ECU20は、現時点の選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Quを算出する。選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Quは、内燃機関1の運転状態および選択還元型NOx触媒13に流入する排気の温度の履歴、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加量の積算値等から算出することが出来る。
【0047】
次に、ECU20は、S203に進み、S202において算出された選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Quが第一所定吸着量Q1以上であるか否かを判別する。ここで、第一所定吸着量Q1は、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Quが該第一所定吸着量Q1以上のときにフィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13の温度が上昇すると、選択還元型NOx触媒13から過剰な量のアンモニアが排出されると判断できる閾値である。S203において、肯定判定された場合、ECU20はS204に進み、否定判定された場合、ECU20はS208に進む。
【0048】
S204において、ECU20は、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止する。これにより、選択還元型NOx触媒13への尿素水溶液の供給が停止する。その結果、上述したように、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が減少し始める。
【0049】
次に、ECU20は、S205に進み、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止してからの選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量の減少量ΔQuを算出する。この減少量ΔQuは、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止してからの内燃機関1の運転状態および選択還元型NOx触媒13に流入する排気の温度の履歴等から算出することが出来る。
【0050】
次に、ECU20は、S206に進み、S202において算出された選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量QuからS205において算出された尿素の吸着量の減少量ΔQuを減算することで、現時点の選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Qu´を算出する。尚、本実施例では、S202およびS206を実行するECU20が、本発明に係る尿素吸着量推定手段に相当する。
【0051】
次に、ECU20は、S207に進み、S206において算出された選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Qu´が第二所定吸着量Q2以下であるか否かを判別する。ここで、第二所定吸着量Q2は、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量Qu´が該第二所定吸着量Q2以下であれば、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13の温度が上昇しても、選択還元型NOx触媒13から排出されるアンモニアの量は許容範囲内となると判断できる閾値である。S207において、肯定判定された場合、ECU20はS208に進み、否定判定された場合、ECU20はS205に戻る。
【0052】
S208において、ECU20は、燃料添加弁9からの燃料添加を開始して、フィルタ再生制御を実行する。その後、ECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。尚、本実施例においては、S208を実行するECU20が、本発明に係るフィルタ昇温手段に相当する。
【0053】
以上説明したルーチンによれば、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が第一所定吸着量以上のときにフィルタ再生制御の実行条件が成立した場合は、選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が第二所定吸着量以下まで減少してからフィルタ再生制御が実行される。つまり、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が十分に減少した状態でフィルタ再生制御を実行することが出来る。従って、フィルタ再生制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13の温度が上昇したときの該選択還元型NOx触媒13からのアンモニアの排出を抑制することが出来る。
【0054】
尚、本実施例においては、選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が第一所定吸着量以上から第二所定吸着量以下に減少するまでの期間が、本発明に係る所定期間に相当する。
【0055】
また、本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を上述した実施例1の変形例のような構成とした場合にも、フィルタ再生制御において、図4に示すようなルーチンを適用してもよい。この場合も、図1に示すような概略構成の場合と同様の効果を得ることが出来る。
【0056】
<実施例3>
本実施例に係る内燃機関およびその給排気系の概略構成は実施例1と同様である。また、本実施例においても、実施例1と同様のフィルタ再生制御が行われる。
【0057】
<フィルタ再生制御のルーチン>
ここで、本実施例に係るフィルタ再生制御のルーチンについて、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。本ルーチンは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1の運転中、所定の間隔で繰り返し実行される。尚、図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートにS305を加えたものである。そのため、S305についてのみ説明し、その他のステップの説明は省略する。
【0058】
本ルーチンでは、ECU20は、S204の後、S305に進む。S305において、ECU20は、選択還元型NOx触媒13を昇温させるNOx触媒昇温制御を実行する。
【0059】
本実施例に係るNOx触媒昇温制御は、フィルタ再生制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13が昇温するときの昇温速度よりも低い所定昇温速度で選択還元型NOx触媒13を昇温させる制御である。また、所定昇温速度は、選択還元型NOx触媒13から排出されるアンモニアの量がアンモニア酸化触媒14で十分に酸化することが可能な範囲内となる値である。該昇温速度は実験等によって予め定められている。
【0060】
具体的には、NOx触媒昇温制御は、フィルタ再生制御の実行時よりも少ない量の燃料を燃料添加弁9から添加することで行われる。燃料添加弁9から添加された燃料が、フィルタ再生制御の場合と同様、酸化触媒11に供給され該酸化触媒11において酸化される。このときに生じる酸化熱によって選択還元型NOx触媒13が昇温される。燃料添加弁9からの燃料添加量を制御することで選択還元型NOx触媒13の昇温速度を所定昇温速度に制御する。
【0061】
本実施例においては、S305を実行するECU20が、本発明に係るNOx触媒昇温手段に相当する。S305の後、ECU20はS205に進む。
【0062】
以上説明したルーチンによれば、フィルタ再生制御の実行条件が成立したときに選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量が第一所定量以上の場合、尿素添加弁10から
の尿素水溶液の添加が停止されると共に、NOx触媒昇温制御が実行される。
【0063】
NOx触媒昇温制御が実行された場合も、フィルタ再生制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13の温度が上昇した場合と同様、選択還元型NOx触媒13における尿素の加水分解は促進され、該選択還元型NOx触媒13から排出されるアンモニアは増加する。しかしながら、NOx触媒昇温制御においては、選択還元型NOx触媒13は所定昇温速度で昇温される。そのため、選択還元型NOx触媒13から排出されるアンモニアの量は、フィルタ昇温制御の実行に伴って選択還元型NOx触媒13が昇温したときよりも少なく、該アンモニアはアンモニア酸化触媒14で十分に酸化される。従って、アンモニア酸化触媒14よりも下流側へのアンモニアの流出は抑制される。
【0064】
従って、NOx触媒昇温制御を実行することで、アンモニア酸化触媒14よりも下流側へのアンモニアの流出を抑制しつつより速やかに選択還元型NOx触媒13における尿素の吸着量を第二所定吸着量以下に減少させることが出来る。その結果、フィルタ昇温制御をより早期に実行することが可能となる。
【0065】
尚、本実施例に係るNOx触媒昇温制御においては、燃料添加弁9からの燃料添加に代えて、内燃機関1から排出される排気を昇温させることで選択還元型NOx触媒13を昇温させてもよい。
【0066】
また、本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を上述した実施例1の変形例のような構成とした場合にも、フィルタ再生制御において、図5に示すようなルーチンを適用してもよい。この場合も、図1に示すような概略構成の場合と同様の効果を得ることが出来る。
【0067】
実施例1のように、尿素添加弁10からの尿素水溶液の添加を停止させた時点からある一定の期間である所定期間Δtsが経過した後、フィルタ再生制御を実行する場合においても、所定期間Δts中に実施例3に係るNOx触媒昇温制御を実行してもよい。この場合、所定期間Δts中に、アンモニア酸化触媒14よりも下流側へのアンモニアの流出を抑制しつつ選択還元型NOx触媒13おける尿素の吸着量をより減少させることが出来る。その結果、フィルタ再生制御を実行したときの選択還元型NOx触媒13からのアンモニアの排出量をより抑制することが出来る。
【0068】
尚、上記各実施例に係るフィルタ再生制御においては、燃料添加弁9からの燃料添加に代えて、内燃機関1から排出される排気を昇温させることでフィルタ12を昇温させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図。
【図2】実施例1に係るフィルタ再生制御のルーチンを示すフローチャート。
【図3】実施例1の変形例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図。
【図4】実施例2に係るフィルタ再生制御のルーチンを示すフローチャート。
【図5】実施例3に係るフィルタ再生制御のルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0070】
1・・・内燃機関
6・・・排気通路
7・・・エキゾーストマニホールド
9・・・燃料添加弁
10・・尿素添加弁
11・・酸化触媒
12・・パティキュレートフィルタ
13・・選択還元型NOx触媒
14・・アンモニア酸化触媒
15・・エアフローメータ
16・・温度センサ
17・・酸化触媒
20・・ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
該選択還元型NOx触媒に尿素を供給する尿素供給手段と、
前記排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタと、
該パティキュレートフィルタを昇温させるフィルタ昇温制御を実行するフィルタ昇温手段と、を備え、
前記フィルタ昇温制御の実行条件が成立したときは、前記尿素供給手段による前記選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止すると共に、前記尿素供給手段による前記選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止した時点から所定期間が経過してから前記フィルタ昇温手段によって前記フィルタ昇温制御を実行することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
【請求項2】
前記選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量を推定する尿素吸着量推定手段をさらに備え、
前記フィルタ昇温制御の実行条件が成立したときに前記尿素吸着量推定手段によって推定される前記選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が第一所定吸着量以上である場合に、前記尿素供給手段による前記選択還元型NOx触媒への尿素の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項3】
前記所定期間が、前記尿素吸着量推定手段によって推定される前記選択還元型NOx触媒における尿素の吸着量が前記第一所定吸着量よりも少ない第二所定吸着量以下に減少するまでの期間であることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項4】
前記選択還元型NOx触媒より下流側の前記排気通路に設けられアンモニアを酸化する機能を有するアンモニア酸化触媒と、
前記所定期間中に、前記フィルタ昇温制御の実行に伴って前記選択還元型NOx触媒が昇温するときの昇温速度よりも低い所定昇温速度で前記選択還元型NOx触媒を昇温させるNOx触媒昇温制御を実行するNOx触媒昇温手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−255905(P2008−255905A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99761(P2007−99761)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】