説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】Cuを含むNOx浄化触媒のCu粒子の凝集に起因するNOx浄化性能の低下を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路内に配置されたNOx浄化触媒と、NOx浄化触媒の劣化度合を推定するための劣化度合推定手段と、NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を制御するための空燃比制御手段とを備え、劣化度合推定手段によって推定されるNOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合に達するまでは、空燃比制御手段によってNOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチな空燃比に制御し、劣化度合推定手段によって推定されるNOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合には、空燃比制御手段によってNOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチな空燃比からリーンな空燃比に切り換えることでNOx浄化触媒の再生処理を行うようにした内燃機関の排気浄化装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関からの排気を浄化する技術として、NOx浄化触媒を使用することが知られている。しかしながら、このようなNOx浄化触媒の触媒成分として一般的に用いられる貴金属、例えば、ロジウム(Rh)等の白金族元素は、自動車の排ガス規制の強化とともに使用量が増加しており、それゆえ資源の枯渇が懸念されている。このため、白金族元素の使用量を減らすとともに、将来的には、当該白金族元素の役割を他の金属等で代替することが必要とされている。
【0003】
そこで、白金族元素の使用量を減らすための又はそれに代わる触媒成分について多くの研究が行われている。このような触媒成分の1つに銅(Cu)があり、これを用いたNOx浄化触媒及びこのようなNOx浄化触媒を備えた内燃機関の排気浄化装置について幾つかの提案がなされている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−003733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、Cu等の卑金属は、酸素過剰のリーン雰囲気や理論空燃比(ストイキ)近傍の雰囲気下ではRh等の貴金属に比べて還元能力が低く、それゆえ排気ガスの空燃比がリーン又はストイキであると排気ガス中に含まれるNOxを十分に還元浄化することができない。したがって、例えば、CuをNOx浄化触媒の触媒金属として使用する場合には、排気ガスの空燃比をリッチ雰囲気に制御することが一般に好ましい。しかしながら、Cuは、貴金属等に比べて熱的な安定性が低く、それゆえこのようなリッチ雰囲気において使用したとしても高温下に長期間さらされると、Cu粒子の凝集が生じて肥大化した粒子を形成しやすいという問題がある。そして、このようにして粒成長したCu粒子は、もはや排気ガスとの高い接触面積を維持することができなくなり、結果としてNOx浄化触媒のNOx浄化性能が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、新規な構成により、触媒金属としてCuを含むNOx浄化触媒のCu粒子の凝集に起因するNOx浄化性能の低下を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)内燃機関の排気通路内に配置され、Cuを触媒担体に担持してなる少なくとも1つのNOx浄化触媒と、
前記NOx浄化触媒の劣化度合を推定するための少なくとも1つの劣化度合推定手段と、
前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を制御するための空燃比制御手段と
を備え、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合に達するまでは、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御し、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合には、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換えることで前記NOx浄化触媒の再生処理を行うようにした、内燃機関の排気浄化装置。
(2)前記再生処理が500℃以上の温度で行われる、上記(1)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(3)前記NOx浄化触媒を少なくとも2つ備え、各NOx浄化触媒を内燃機関の排気通路内において並列に配置するとともに下流側で共通の1つの排気通路に連結し、1つのNOx浄化触媒について前記再生処理が行われている場合には、他のNOx浄化触媒においてNOxを浄化するようにした、上記(1)又は(2)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(4)前記劣化度合推定手段が、前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内に配置されたNOxセンサである、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(5)前記NOx浄化触媒の温度を検出するための少なくとも1つの触媒温度検出手段と、
前記NOx浄化触媒を加熱するための少なくとも1つの触媒加熱手段と
をさらに備え、前記再生処理が行われる場合に、該再生処理が行われるNOx浄化触媒を前記触媒加熱手段によって500℃以上の温度に加熱するようにした、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(6)前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内又は前記共通の1つの排気通路内に配置され、HC及びCOを酸化浄化するための酸化触媒と、
前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内又は前記共通の1つの排気通路内に配置され、前記酸化触媒上流の排気ガスに空気を導入するための空気導入手段と
をさらに備えた、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(7)前記酸化触媒がAgを触媒担体に担持してなる触媒である、上記(6)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、触媒金属としてCuを含むNOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合を超えたと判断した場合には、当該NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換える再生処理を施すことで、当該NOx浄化触媒を劣化した状態から活性の高い状態へ比較的短い時間で容易に回復させることができる。さらに、本発明の好ましい実施態様によれば、2つのNOx浄化触媒を内燃機関の排気通路内において並列に配置して使用することで、一方のNOx浄化触媒について上記の再生処理が行われている場合には、他方のNOx浄化触媒において排気ガス中のNOxを確実に還元浄化することが可能である。したがって、本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、NOx浄化触媒のNOx浄化性能を常に高い状態に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Cuを含むNOx浄化触媒の凝集及び再分散を模式的に示した図である。
【図2】本発明による排気浄化装置の第1の実施態様を模式的に示した図である。
【図3】本発明による排気浄化装置の第2の実施態様を模式的に示した図である。
【図4】本発明による排気浄化装置の第2の実施態様における触媒再生操作のフローチャートである。
【図5】本発明による排気浄化装置の第2の実施態様の変形態様を模式的に示した図である。
【図6】Cu/Al23触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図7】種々の時間にわたり還元処理を実施した各Cu/Al23触媒のNOx浄化率を示すグラフである。
【図8】還元処理時間の関数としてのCu/Al23触媒のNOx浄化率を示すグラフである。
【図9】還元雰囲気下700℃で30分間処理したCu/Al23触媒について300℃〜600℃の各温度で再生処理を行った後のNOx浄化率を示すグラフである。
【図10】図8(b)の各Cu/Al23触媒について再生処理を行った後のNOx浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路内に配置され、Cuを触媒担体に担持してなる少なくとも1つのNOx浄化触媒と、前記NOx浄化触媒の劣化度合を推定するための少なくとも1つの劣化度合推定手段と、前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を制御するための空燃比制御手段とを備え、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合に達するまでは、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御し、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合には、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換えることで前記NOx浄化触媒の再生処理を行うようにしたことを特徴としている。
【0011】
Cu等の卑金属は、先に述べたとおり、排気ガスの空燃比がリーン又はストイキであると排気ガス中に含まれるNOxを十分に還元浄化することができない。したがって、このような卑金属をNOx浄化触媒の触媒金属として使用する場合には、排気ガスの空燃比をリッチ雰囲気に制御することが一般に好ましい。しかしながら、例えば、Cuは、このようなリッチ雰囲気において使用したとしても、高温下、特には約700℃以上の高温下に長期間さらされると、Cu粒子の凝集が生じて肥大化した粒子を形成しやすいという問題がある。そして、このようにして粒成長したCu粒子は、もはや排気ガスとの高い接触面積を維持することができなくなり、その結果としてNOx浄化触媒のNOx浄化性能が経時的に低下してしまう。
【0012】
本発明者らは、図1の模式図に示すように、Cu粒子1を触媒担体2に担持してなるNOx浄化触媒を高温の還元雰囲気下(理論空燃比よりもリッチな空燃比に相当)にさらすと、触媒担体2上のCu粒子1が凝集してNOx浄化触媒のNOx浄化率が低下するものの、これを所定の温度、一般的には約500℃以上、特には約600℃以上の温度において理論空燃比よりもリーンな空燃比に相当する酸化雰囲気下にさらすことで、凝集したCu粒子1が原子レベルの非常に微細な粒子に再分散されることを見出した。さらに、本発明者らは、このようにしてCu粒子が再分散化されたNOx浄化触媒をリッチ雰囲気下で再び使用すると、当該NOx浄化触媒のNOx浄化率が高い状態に回復し、すなわち当該NOx浄化触媒を劣化した状態から活性の高い状態へ再生できることを見出した。
【0013】
ここで、NOx浄化触媒等の排ガス浄化用触媒において一般的に用いられる触媒金属には、高温下に長期間さらされると、当該触媒金属が触媒担体上を移動して肥大化した粒子を形成する、いわゆるシンタリングを生じる性質があることが一般に知られている。しかしながら、当該触媒金属として例えばCuを使用した場合に、高温下で凝集したCu粒子を雰囲気の変動によって微細な粒子に再分散化できるということについてはこれまで知られていない。したがって、上記のようにCu粒子の凝集に起因して劣化したNOx浄化触媒を酸化雰囲気下にさらすことで活性の高い状態へ再生できるということは極めて意外であり、また驚くべきことである。
【0014】
なお、本発明によれば、NOx浄化触媒としては、CuをNOx浄化触媒の触媒担体として一般に用いられる任意の金属酸化物、例えば、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)、セリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等に担持してなる材料を使用することができる。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の内燃機関の排気浄化装置の好ましい実施態様についてより詳しく説明するが、以下の説明は、本発明の好ましい実施態様の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施態様に限定することを意図するものではない。
【0016】
図2は、本発明による排気浄化装置の第1の実施態様を模式的に示した図である。
【0017】
図2を参照すると、内燃機関10の排気側は、排気通路11を介して触媒金属としてCuを含むNOx浄化触媒12に連結され、さらに当該NOx浄化触媒12の出口部が排気通路13に連結されている。また、本発明の第1の実施態様では、排気通路13にNOx浄化触媒12から流出する排気ガス中のNOxを検出するためのNOxセンサ14(劣化度合推定手段)が取り付けられている。そして、排気ガスの空燃比は、上記のNOxセンサ14によって検出される排気ガス中のNOx量に基づいて電子制御ユニット(ECU)15(空燃比制御手段)により制御することができる。
【0018】
本実施態様によれば、常時は、ECU15によってNOx浄化触媒12に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御され、NOx浄化触媒12によって排気ガス中のNOxが還元浄化される。一方で、加速走行時や高速走行時等の高温下ではCu粒子の凝集が生じてNOx浄化触媒12の触媒活性が次第に劣化する場合がある。そこで、NOx浄化触媒12の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合には、ECU15によってNOx浄化触媒12に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換えることでNOx浄化触媒12の再生処理が行われる。
【0019】
より具体的に説明すると、例えば、NOx浄化触媒12の下流に位置するNOxセンサ14によって検出される排気ガス中のNOx量が所定の値を超えたか否か又は当該NOx量に基づいて算出されるNOx浄化率が所定の値を下回ったか否かを判定することによって、NOx浄化触媒12の劣化度合が所定の劣化度合を超えたか否かを判断することができる。そして、NOx浄化触媒12の劣化度合が所定の劣化度合を超えたと判断した場合には、例えば、ECU15によって燃料噴射弁(図示せず)から噴射させる燃料の量(以下「燃料噴射量」という)を制御するなどして、NOx浄化触媒12に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換える。そうして、NOx浄化触媒12に流入する排気ガスの雰囲気を所定の時間だけ酸化雰囲気に維持することによってNOx浄化触媒12の再生処理が行われる。このようにすることで、NOx浄化触媒12の触媒担体上で凝集したCu粒子を原子レベルの微細な粒子に再分散させることができるので、再生処理後にNOx浄化触媒12に流入する排気ガスの空燃比を再びリッチな空燃比に戻した際に、当該NOx浄化触媒12のNOx浄化率を高い状態に回復させることが可能である。
【0020】
ここで、排気ガスの空燃比のリッチからリーンへの切り換えは、NOx浄化触媒12を再生するのに十分な時間、より具体的には凝集したCu粒子を原子レベルの微細な粒子に再分散させるのに十分な時間にわたって行えばよく、特に限定されないが、一般的には1〜60分、好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜5分程度の時間にわたって実施することができる。
【0021】
なお、本実施態様では、NOx浄化触媒12の劣化度合を推定するための劣化度合推定手段としてNOxセンサ14を使用し、当該NOxセンサ14によって検出される排気ガス中のNOx量に基づいてNOx浄化触媒12の再生処理が実施されている。しかしながら、NOx浄化触媒12の劣化度合を推定するための劣化度合推定手段としては、上記のNOxセンサ14以外にも種々の手段を使用することができる。例えば、NOx浄化触媒12のケーシングやNOx浄化触媒12出口部の排気通路13にNOx浄化触媒12の温度を検出するための温度センサを取り付け、この温度センサによって検出されるNOx浄化触媒12の温度Tの履歴から当該NOx浄化触媒12が所定の温度、例えば700℃以上の温度にどれくらいの時間さらされたかを積算し、それが一定の時間を超えた場合には、NOx浄化触媒12の劣化度合が所定の劣化度合を超えたと判断して上記の再生処理を行うようにしてもよい。
【0022】
本発明の排気浄化装置においては、再生処理は、所定の温度、一般的には約500℃以上、特には約600℃以上の温度において行われる。ここで、本発明の排気浄化装置において使用されるNOx浄化触媒12は、一般的には加速走行時や高速走行時等の高温下で使用されると、触媒成分であるCu粒子の凝集が生じてNOx浄化触媒12の触媒活性が次第に劣化する。そして、このような触媒活性の劣化は、NOx浄化触媒12が約700℃以上の高温下において使用された場合に特に顕著となる。したがって、上で説明したような再生処理を実施する場合には、通常、NOx浄化触媒12の温度はすでに約500℃以上に達しており、特にNOx浄化触媒12を約500℃以上の温度まで加熱処理する等の必要なしに、当該NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を単にリッチからリーンに切り換えるだけで、凝集したCu粒子を原子レベルの微細な粒子に再分散させることができる。
【0023】
しかしながら、触媒活性の劣化が生じたときにNOx浄化触媒12の温度が約500℃に達していない場合などは、再生処理の際にNOx浄化触媒12を約500℃以上の温度まで加熱処理することが必要である。特にNOx浄化触媒12の劣化の度合が大きい場合などは、再生処理の際にNOx浄化触媒12をより高い温度、例えば、約600℃以上の温度で加熱処理することが好ましいことがある。したがって、本発明による排気浄化装置の第1の実施態様では、任意選択で、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様に関連して以下で説明する温度センサ(触媒温度検出手段)や電気ヒータ(触媒加熱手段)を使用して、再生処理の際にNOx浄化触媒12の温度を確実に約500℃以上、特には約600℃以上になるよう制御してもよい。
【0024】
本発明において触媒成分として使用されるCuは、先に述べたとおり、排気ガスの空燃比がリーン又はストイキであると排気ガス中に含まれるNOxを十分に還元浄化することができない。したがって、上で説明した本発明による排気浄化装置の第1の実施態様では、NOx浄化触媒をリーン雰囲気下において再生処理している間は、排気ガス中のNOxを十分に還元浄化できない場合がある。そこで、このような場合においても、排気ガス中のNOxを確実に還元浄化することができる本発明による排気浄化装置の第2の実施態様について、以下に具体的に説明する。
【0025】
図3は、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様を模式的に示した図である。図3において、20は内燃機関を示し、#1〜#4はそれぞれ第1気筒、第2気筒、第3気筒及び第4気筒を示している。各気筒には、それぞれ対応して、燃料噴射弁21、22、23及び24が設けられている。また、第1気筒及び第4気筒は、排気通路25を介して第1のNOx浄化触媒27に連結されており、第2気筒及び第3気筒は、排気通路26を介して第2のNOx浄化触媒28に連結されている。そして、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の出口部がそれぞれ排気通路29及び30に連結され、これらの排気通路は、さらに下流側において共通の1つの排気通路31に合流している。
【0026】
また、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様では、排気通路29及び30に第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28から流出する排気ガス中のNOxを検出するためのNOxセンサ32及び33(劣化度合推定手段)がそれぞれ取り付けられている。そして、各NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比は、上記のNOxセンサ32及び33によって検出される排気ガス中のNOx量に基づいて電子制御ユニット(ECU)(空燃比制御手段)により制御することができる。
【0027】
また、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28には、任意選択で、これらのNOx浄化触媒の温度を検出するための温度センサ34及び35(触媒温度検出手段)がそれぞれ取り付けられている。なお、これらの温度センサ34及び35は、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の温度を検出することができればよく、例えば、これらのNOx浄化触媒の出口部に連結された排気通路29及び30内に取り付けてもよい。さらに、本実施態様では、任意選択で、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の上流側にこれらのNOx浄化触媒を加熱するための触媒加熱手段として電気ヒータ36及び37がそれぞれ配置され、これらの電気ヒータは、例えば、上記の温度センサ34及び35によって検出される第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の温度に基づいてECU(図示せず)によって制御することができる。
【0028】
第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28を加熱するための触媒加熱手段としては、上記の電気ヒータ36及び37以外にも種々の手段又は方法を使用することができる。例えば、本発明における触媒加熱手段としては、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28を内蔵したケーシングにリボンヒータ等を巻き付け、それによって第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28を加熱する方法や、あるいは第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28がコートされているハニカム基材等自体に電気を流すことで、直接的に第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28を加熱する方法を採用してもよい。
【0029】
なお、本発明による排気浄化装置の第1の実施態様に関連して説明したとおり、上記の温度センサや電気ヒータ等の触媒温度検出手段及び触媒加熱手段、特に電気ヒータ等の触媒加熱手段は、再生処理の際に必ずしも必要とされないことがある。したがって、これらの触媒温度検出手段や触媒加熱手段は、再生処理の際にNOx浄化触媒が約500℃以上の温度に達していない場合や、特にNOx浄化触媒の劣化の度合が大きく、より高温での再生処理が必要な場合等の状況に応じて適宜使用すればよい。
【0030】
図4は、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様における触媒再生操作のフローチャートである。なお、この触媒再生操作は、ECUによって予め定められた設定時間毎の割り込みによって実行されるルーチンとして行われる。
【0031】
図4を参照すると、まず初めにステップ100では、NOxセンサ32によって検出される排気ガス中のNOx量に基づいて算出された第1のNOx浄化触媒27(図4ではNOx触媒1として示す)のNOx浄化率が所定の値P%を下回っているか否かが判定され、NOx<P%の場合、すなわち第1のNOx浄化触媒27の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合にはステップ101に進む。一方で、第1のNOx浄化触媒27のNOx浄化率がNOx≧P%の場合、すなわち第1のNOx浄化触媒27が十分な触媒活性を示している場合には、ステップ200に進んで第2のNOx浄化触媒28の触媒再生操作のルーチンを開始する。
【0032】
なお、本発明の排気浄化装置において使用されるCuを触媒担体に担持してなるNOx浄化触媒は、例えば、約500℃の温度で使用した場合に、当該NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比(A/F)を約14.0程度のリッチ空燃比に制御することで、約95%以上、特にはほぼ100%又はそれに近いNOx浄化率を達成することが可能である。したがって、本実施態様では、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の劣化度合を判断する上記の閾値P%としては、例えば、90%と設定することができる。
【0033】
次に、ステップ101では、温度センサ34によって検出される第1のNOx浄化触媒27の床温度T1が、再生処理において要求される温度、すなわち500℃に達しているか否かが判定され、T1≧500℃の場合はステップ103に進む。一方、第1のNOx浄化触媒27の床温度T1が500℃に達していない場合、すなわちT1<500℃の場合にはステップ102に進む。そして、ステップ102において電気ヒータ36への給電を開始して第1のNOx浄化触媒27の加熱処理を開始し、ステップ101に戻る。
【0034】
次に、ステップ103では、第1気筒#1及び第4気筒#4の燃料噴射弁21及び24を閉にすることで、第1のNOx浄化触媒27へ空気のみを流入させるようにして再生処理が開始され、そしてステップ104に進む。ステップ104では、再生処理が完了したか否かが判定され、再生処理が完了した場合にはステップ105に進む。なお、再生処理完了の判定については、例えば、当該再生処理を開始した時点、すなわち燃料噴射弁21及び24を閉にした時点からの経過時間をタイマーによって計測し、当該タイマーによって計測される経過時間が所定の時間を超えた時に再生処理が完了したと判断するようにしてもよい。
【0035】
そして、再生処理が完了した後、ステップ105において燃料噴射弁21及び24を開にし、必要に応じてステップ106において電気ヒータ36への給電(すなわち加熱処理)を停止して第1のNOx浄化触媒27の触媒再生操作のルーチンを終了する。なお、本実施例では、燃料噴射弁21及び24を閉にして第1のNOx浄化触媒27への燃料の供給を完全に停止することにより再生処理が実施されている。しかしながら、NOx浄化触媒の再生処理は、必ずしもこのような方法には限定されず、例えば、燃料噴射弁21及び24からの燃料噴射量を少なくするよう制御して、第1のNOx浄化触媒27に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換えることによって実施してもよい。
【0036】
一方、先に記載したとおり、ステップ100において第1のNOx浄化触媒27が十分な触媒活性を示している場合には、ステップ200に進んで第2のNOx浄化触媒28の触媒再生操作のルーチンが開始される。そして、ステップ200において、NOxセンサ33によって検出される排気ガス中のNOx量に基づいて算出された第2のNOx浄化触媒28(図4ではNOx触媒2として示す)のNOx浄化率が所定の値P%を下回っているか否かが判定され、NOx<P%の場合、すなわち第2のNOx浄化触媒28の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合にはステップ201に進み、以下、第1のNOx浄化触媒27の触媒再生操作と同様にして、第2のNOx浄化触媒28の触媒再生操作が実行される。なお、ステップ200において、第2のNOx浄化触媒28のNOx浄化率がNOx≧P%の場合、すなわち第2のNOx浄化触媒28が十分な触媒活性を示している場合には、第2のNOx浄化触媒28の触媒再生操作は行わずにルーチンを終了する。
【0037】
上記のとおり、本実施態様によれば、常時は、第1のNOx浄化触媒27と第2のNOx浄化触媒28の両方のNOx浄化触媒において排気ガス中のNOxを還元浄化することができる。そして、第1のNOx浄化触媒27と第2のNOx浄化触媒28のうちいずれか一方のNOx浄化触媒が所定の劣化度合に達した場合には、当該NOx浄化触媒に流入する排気ガスの雰囲気のみを酸素過剰のリーン雰囲気に切り換えて当該NOx浄化触媒の再生処理を実施しつつ、もう一方のNOx浄化触媒によって排気ガス中のNOxを確実に還元浄化することが可能である。
【0038】
また、このようなNOx浄化触媒の再生処理は、当該NOx浄化触媒の劣化の度合並びに再生処理の際の雰囲気や温度条件等によって多少の影響は受けるものの、一般的には数分から数十分程度の時間において完了させることができる。例えば、上で説明した本発明による排気浄化装置の第2の実施態様について言えば、NOx浄化率が90%未満となったときにNOx浄化触媒が劣化したと判断して当該NOx浄化触媒の再生処理を開始する場合には、当該再生処理は、数分程度、特には3〜5分程度の時間で完了させることが可能である。
【0039】
このように、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様によれば、NOx浄化触媒の劣化を判断する際のNOx浄化率の閾値や再生処理の際の雰囲気及び温度等を適切に選択することで、NOx浄化触媒の触媒活性が大きく低下する前に当該NOx浄化触媒を比較的短い時間で確実に再生することができるので、排気ガス中のNOxを安定的に還元浄化することが可能である。
【0040】
また、本発明の排気浄化装置の上記第1及び第2の実施態様の変形態様として、例えば、NOx浄化触媒の下流側の排気通路内に主として炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化浄化するための酸化触媒を配置してもよい。このような酸化触媒としては、排ガス浄化用触媒の技術分野において当業者に公知の任意の酸化触媒を使用することができる。例えば、このような酸化触媒としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等のいわゆる白金族元素を触媒担体に担持してなる従来公知の三元触媒を使用してもよいが、当該三元触媒以外にも、例えば、銀(Ag)等の金属を触媒担体に担持してなる酸化触媒を使用することができる。
【0041】
とりわけ、Agは、HCやCOの酸化に対して活性が高く、それゆえこれを触媒担体に担持してなる酸化触媒と、触媒成分としてCuを含むNOx浄化触媒とを組み合わせて使用することで、排気ガス中の有害成分、すなわちHC、CO及びNOxを確実に酸化又は還元浄化することが可能である。なお、上記の酸化触媒においてAg等の金属を担持するための触媒担体としては、排ガス浄化用触媒の触媒担体として一般的に用いられる任意の金属酸化物、例えば、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)、セリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等を使用することができる。
【0042】
一方で、本発明の排気浄化装置においては、先に記載したとおり、NOx浄化触媒は、常時は、排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御した状態で使用される。しかしながら、Ag等の金属を触媒担体に担持してなる酸化触媒は、このような雰囲気下では排気ガス中に含まれるHCやCOを十分に酸化浄化することができない場合がある。したがって、本発明の排気浄化装置においてAg等の金属を含む酸化触媒を使用する場合には、当該酸化触媒上流の排気ガスに、例えば、空気を導入して酸化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比(ストイキ)又はそれよりもリーンな空燃比に制御することが好ましい。
【0043】
図5は、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様の変形態様を模式的に示した図である。図5を参照すると、図3の場合と同様に、第1のNOx浄化触媒27及び第2のNOx浄化触媒28の出口部がそれぞれ排気通路29及び30に連結され、これらの排気通路が下流側において共通の1つの排気通路31に合流している。そして、図5に示す排気浄化装置では、この共通の1つの排気通路31内にさらに酸化触媒38が配置され、当該酸化触媒38の上流側に排気通路31内に空気を導入するためのポンプ39(空気導入手段)が接続されている。このような排気浄化装置によれば、図3及び4に関連して説明したように排気ガス中のNOxをNOx浄化触媒27及び28によって確実に還元浄化しつつ、排ガス中の他の有害成分であるHC及びCOについても酸化触媒38によって十分に酸化浄化することが可能である。
【0044】
なお、図5では、本発明による排気浄化装置の第2の実施態様にHC及びCOを酸化浄化するための酸化触媒と空気導入手段をさらに追加した構成が示されているが、これらの酸化触媒及び空気導入手段は、本発明による排気浄化装置の第1の実施態様においても同様に使用することができる。
【0045】
以下、本発明の排気浄化装置において使用されるNOx浄化触媒の再生処理について、実験結果に基づいてより詳細に説明する。
【0046】
[再生処理によるCu粒子の再分散化]
本実験では、本発明の排気浄化装置においてNOx浄化触媒として使用されるCu担持触媒について、当該触媒のさらされる雰囲気がCu粒子の凝集や再分散にどのように作用するのかを調べた。具体的には、触媒試料としては、含浸法によって銅(Cu)をアルミナ(Al23)担体に担持したCu/Al23触媒を使用した。この触媒試料を所定の温度において還元雰囲気と酸化雰囲気にさらした結果を図6に示す。
【0047】
図6は、Cu/Al23触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図6(a)は、還元雰囲気(1%H2/N2バランス)下700℃で10分間にわたり還元処理した後のCu/Al23触媒を示し、図6(b)は、図6(a)のCu/Al23触媒を空気中500℃で10分間にわたり酸化処理した後のCu/Al23触媒を示し、さらに、図6(c)及び(d)は、図6(b)のCu/Al23触媒を還元雰囲気(1%H2/N2バランス)下700℃でそれぞれ10分間及び50時間にわたり還元処理した後のCu/Al23触媒を示している。
【0048】
まず、図6(a)を参照すると、700℃で還元処理したCu/Al23触媒では、その縁部に数nm程度の粒子径を有するCu粒子を確認することができる。次に、図6(a)の還元処理後に酸化処理を行った図6(b)のCu/Al23触媒では、図6(a)において確認されたCu粒子が消失していることがわかる。この結果は、高温の還元雰囲気下で凝集したCu粒子が、500℃以上の酸化雰囲気にさらすことで原子レベルの非常に微細な粒子に再分散化されることを示すものである。そして、図6(b)の酸化処理後にさらに還元処理を行った図6(c)のCu/Al23触媒では、図6(a)の場合と同様に、その縁部にCu粒子の凝集を確認した。そして、50時間の還元処理にさらした図6(d)のCu/Al23触媒では、反転像で示したTEM像から明らかなように、数十nm、特には約50nmを超える大きなCu粒子(図6(d)中、白い塊として示される)が多数確認された。
【0049】
[耐久試験による触媒活性の経時的変化]
次に、図6に関連して説明した還元処理を種々の時間にわたり実施した各Cu/Al23触媒について、当該還元処理後のNOx浄化率とCO吸着量を測定し、それらの関係について調べた。より具体的には、1%H2/N2バランスの還元雰囲気下700℃で所定の時間にわたり還元処理した各Cu/Al23触媒(ペレット触媒、Cu担持量:5wt%)3.0gについて、下表1に示す評価用モデルガスを温度500℃において15L/分の流量で触媒床に流し、定常状態に達した際のNO浄化率を測定した。なお、下表1に示す評価用モデルガスは、空燃比(A/F)が約14.0の排気ガスに相当するよう調製したものである。また、各Cu/Al23触媒のCO吸着量についてはCOパルス吸着法によって測定した。その結果を図7に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
図7は、種々の時間にわたり還元処理を実施した各Cu/Al23触媒のNOx浄化率を示すグラフである。図7は、横軸にCO吸着量(μL/g)を示し、縦軸にNOx浄化率(%)を示している。図7について説明すると、図中の最も右上の点は、還元処理の時間が最も短い図6(a)のCu/Al23触媒に対応するものであり、以下、NOx浄化率の低下に従って還元処理の時間が長くなっている。そして、図中の最も左下の点は50時間の還元処理を行ったCu/Al23触媒に関するものであり、それゆえ図6(d)のCu/Al23触媒に対応するものである。また、図7では、CO吸着量が大きいCu/Al23触媒ほど高いNOx浄化率が得られ、CO吸着量の減少とともにその値が低下し、すなわちCO吸着量とNOx浄化率の間に一定の相関関係が認められた。
【0052】
ここで、Cu等の卑金属の場合、貴金属の場合とは異なり、CO吸着量から粒子径を正確に算出することができない場合があるため、図7ではCO吸着量のデータをCu粒子の粒子径としては換算していない。しかしながら、図7の結果を参照すると、還元処理の時間が長くなるにつれて、NOx浄化率とCO吸着量が低下し、しかもそのNOx浄化率とCO吸着量との間に一定の相関関係が見られたことから、高温の還元雰囲気下に長期間さらされることでAl23上のCu粒子が凝集して肥大化し、それによってCu/Al23触媒のNOx浄化活性が劣化していると認められる。
【0053】
[再生処理条件の検討]
次に、劣化したCu担持触媒の再生処理条件を以下のとおり検討した。まず、図7のデータを還元処理の時間を横軸にしてプロットし直し、さらに複数の実験データを追加したものを図8に示す。図8(a)は、還元処理時間の関数としてのCu/Al23触媒のNOx浄化率を示すグラフであり、図8(b)は、図8(a)の一部を拡大したものである。特に図8(b)を参照すると、Cu/Al23触媒は、還元雰囲気下700℃の高温においても約30分間は90%を超える高いNOx浄化率を維持していることが認められる。そこで、次に、この還元雰囲気下700℃で30分間処理したCu/Al23触媒について再生処理の際の温度を検討した。その結果を図9に示す。
【0054】
図9は、還元雰囲気下700℃で30分間処理したCu/Al23触媒について300℃〜600℃の各温度で再生処理を行った後のNOx浄化率を示すグラフである。具体的には、再生処理は、1%H2/N2バランスの還元雰囲気下700℃で30分間にわたり還元処理したCu/Al23触媒について、空気中300℃〜600℃の各温度で図9に示す時間にわたり実施した。図9の結果から明らかなように、300℃及び400℃の比較的低温下における再生処理によってはCu/Al23触媒の触媒活性を十分に回復させることはできなかったが、500℃以上の温度で再生処理を行うことで、約1〜5分程度、特には約3〜5分程度の非常に短い時間でCu/Al23触媒の触媒活性を十分高い状態まで回復させることができた。
【0055】
続いて、図9において、劣化したCu/Al23触媒の再生に有効であった500℃5分間の再生処理条件を図8(b)に示す各Cu/Al23触媒に適用して、再生可能な触媒の劣化条件についてさらに検討した。その結果を図10に示す。
【0056】
図10は、図8(b)の各Cu/Al23触媒について再生処理を行った後のNOx浄化率を示すグラフである。なお、比較を容易にするために、図8(b)の各データをそのまま図10にプロットしている。図10を参照すると、還元雰囲気下700℃での処理が60分以内の各Cu/Al23触媒については、酸化雰囲気下500℃で5分間にわたり再生処理を行うことで、NOx浄化性能を十分高い状態まで回復させることができた。
【符号の説明】
【0057】
10 内燃機関
11、13 排気通路
12 NOx浄化触媒
14 NOxセンサ
15 電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路内に配置され、Cuを触媒担体に担持してなる少なくとも1つのNOx浄化触媒と、
前記NOx浄化触媒の劣化度合を推定するための少なくとも1つの劣化度合推定手段と、
前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を制御するための空燃比制御手段と
を備え、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合に達するまでは、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御し、前記劣化度合推定手段によって推定される前記NOx浄化触媒の劣化度合が所定の劣化度合を超えた場合には、前記空燃比制御手段によって前記NOx浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に切り換えることで前記NOx浄化触媒の再生処理を行うようにした、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記再生処理が500℃以上の温度で行われる、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記NOx浄化触媒を少なくとも2つ備え、各NOx浄化触媒を内燃機関の排気通路内において並列に配置するとともに下流側で共通の1つの排気通路に連結し、1つのNOx浄化触媒について前記再生処理が行われている場合には、他のNOx浄化触媒においてNOxを浄化するようにした、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記劣化度合推定手段が、前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内に配置されたNOxセンサである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記NOx浄化触媒の温度を検出するための少なくとも1つの触媒温度検出手段と、
前記NOx浄化触媒を加熱するための少なくとも1つの触媒加熱手段と
をさらに備え、前記再生処理が行われる場合に、該再生処理が行われるNOx浄化触媒を前記触媒加熱手段によって500℃以上の温度に加熱するようにした、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内又は前記共通の1つの排気通路内に配置され、HC及びCOを酸化浄化するための酸化触媒と、
前記NOx浄化触媒の下流側排気通路内又は前記共通の1つの排気通路内に配置され、前記酸化触媒上流の排気ガスに空気を導入するための空気導入手段と
をさらに備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記酸化触媒がAgを触媒担体に担持してなる触媒である、請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251466(P2012−251466A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123660(P2011−123660)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】