説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関の燃費悪化を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排気浄化装置26は、排気通路11A,11Bを通る排気ガス中に含まれるPMを捕集して除去するDPF19A,19Bと、ECU25とを有している。ECU25は、空燃比センサ22A,22Bにより検出された排気ガスの空燃比と排気温度センサ20A,20Bにより検出された排気温度とに基づいて、DPF19A,19BのPM排出量(PM堆積量)をそれぞれ推定する。そして、ECU25は、DPF19A,19BのPM排出量推定値の差が閾値よりも大きいときに、DPF19A,19BのPM排出量が等しくなるように気筒群3A,3Bの燃料噴射量をそれぞれオフセット(補正)し、その燃料噴射量に従ってメイン噴射を行うように、気筒群3A,3Bの各燃料噴射弁4をそれぞれ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2系統の気筒群を有する内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における内燃機関の排気浄化装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の排気浄化装置は、2群の気筒に接続された2つの排気通路にそれぞれ設けられ、排気ガスに含まれる黒煙粒子(PM)を捕集する2つの捕集器(捕集フィルタ)と、各捕集器における上流側と下流側との差圧をそれぞれ検出する2つの差圧検出器とを備え、これらの差圧検出器により検出された各差圧に基づいて、排気通路における排気ガス流量を推定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような内燃機関の排気浄化装置では、捕集フィルタに堆積するPMの量(PM堆積量)が多くなると、PMを燃焼させる、いわゆる捕集フィルタの再生を行う必要がある。このとき、2つの捕集フィルタのPM堆積量が異なる場合には、通常は2つの捕集フィルタのうちPM堆積量の多いほうに合わせて、捕集フィルタの再生を行うようにしている。具体的には、2つの捕集フィルタの何れか一方のPM堆積量がPM堆積限界値に達した時点で、捕集フィルタの再生が行われる。そして、吸入空気量と排気ガスの温度から各気筒の排気ガスのエネルギーを推定し、その推定算出式を補正することで捕集フィルタの再生を同時に終了させるようにしている。しかし、この場合には、PM堆積量の少ないほうの捕集フィルタについては、PM堆積量がPM堆積限界値に達する前に再生が行われることとなる。このため、再生開始までのインターバルが短くなるため、結果的に再生頻度が多くなり、燃費の悪化を招いてしまう。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料を噴射する燃料噴射弁を有する2系統の気筒群と、各気筒群とそれぞれ接続される2系統の排気通路とを具備する内燃機関の排気浄化装置において、各排気通路にそれぞれ設けられ、内燃機関から排出される粒子状物質を捕集する2系統のフィルタと、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量を推定する排出量推定手段と、排出量推定手段により推定された2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、2系統の気筒群の燃料噴射弁を個別に制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の排気浄化装置においては、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量を推定し、それらの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、2系統の気筒群の燃料噴射弁を個別に制御することにより、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量(堆積量)にズレがあっても、そのズレ量が少なくなる。このとき、2系統のフィルタのうち粒子状物質の排出量が多いほうについては、粒子状物質の排出量を減らすように対応する気筒群の燃料噴射弁を制御し、2系統のフィルタのうち粒子状物質の排出量が少ないほうについては、粒子状物質の排出量を増やすように対応する気筒群の燃料噴射弁を制御するのが好適である。この場合には、粒子状物質の堆積量が多いほうのフィルタへの粒子状物質の排出量が少なくなるため、当該フィルタへの粒子状物質の堆積量が堆積限界値に達するのが遅れるようになり、その分だけフィルタの再生を開始するタイミングを遅らすことができる。従って、再生開始までのインターバルが長くなるため、結果的に再生頻度が少なくなる。これにより、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、制御手段は、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が所定量よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が所定量よりも大きいと判断されたときに、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、2系統の気筒群の燃料噴射弁を個別に制御する。この場合には、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が所定量よりも小さいときは、2系統の気筒群の燃料噴射弁の個別制御を行わなくて済むため、余計な計算処理等が不要となり、処理の簡素化を図ることができる。
【0009】
また、好ましくは、内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段を更に備え、制御手段は、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、負荷検出手段により検出された内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量を気筒群毎に補正する補正手段と、補正手段により気筒群毎に補正された燃料噴射量に応じて燃料噴射を行うように、2系統の気筒群の燃料噴射弁を個別に制御する手段とを有する。この場合には、内燃機関の負荷(例えばアクセル開度)にかかわらず、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差を少なくすることができる。
【0010】
このとき、好ましくは、内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、補正手段は、負荷検出手段により検出された内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量と回転数検出手段により検出された内燃機関の回転数とに応じた噴射量補正マップを用いて、2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量を気筒群毎に補正する。この場合には、内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量と内燃機関の回転数とに応じた複数の噴射量補正マップを予め用意しておくことで、気筒群毎の燃料噴射量の補正処理を簡単に行うことができる。
【0011】
さらに、好ましくは、排出量推定手段は、各排気通路を通る排気ガスの空燃比をそれぞれ検出する2つの空燃比検出手段と、各排気通路を通る排気ガスの温度をそれぞれ検出する2つの温度検出手段と、空燃比検出手段により検出された排気ガスの空燃比と温度検出手段により検出された排気ガスの温度とに基づいて、フィルタへの粒子状物質の排出量を推定する手段とを有する。このように排気ガスの空燃比及び温度を検出することで、フィルタへの粒子状物質の排出量を簡単に且つ確実に推定することができる。
【0012】
また、排出量推定手段は、2系統のフィルタの上流側と下流側との間の差圧をそれぞれ検出する2つの差圧検出手段と、差圧検出手段により検出されたフィルタの上流側と下流側との間の差圧に基づいて、フィルタへの粒子状物質の排出量を推定する手段とを有していても良い。このようにフィルタの上流側と下流側との間の差圧を検出することでも、フィルタへの粒子状物質の排出量を簡単に且つ確実に推定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルタの再生頻度を減らし、内燃機関の燃費悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の一実施形態を備えた内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示した処理で使用されるPM排出量推定マップの一例を示すグラフである。
【図4】図2に示した処理で使用される噴射量オフセットマップの一例を示すグラフである。
【図5】図4に示した噴射量オフセットマップを決定するエンジン回転数及び燃料噴射量の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる内燃機関の排気浄化装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る排気浄化装置の一実施形態を備えた内燃機関を示す概略構成図である。同図において、本実施形態に係る内燃機関1は、V型8気筒のディーゼルエンジンとして構成されている。
【0017】
ディーゼルエンジン1は左右のバンク2A,2Bを備え、このバンク2A,2Bには、気筒(シリンダ)3が4つずつ設けられている。バンク2Aの4つの気筒3は一つの気筒群3Aを構成し、バンク2Bの4つの気筒3は他の一つの気筒群3Bを構成している。各気筒3には、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁4がそれぞれ設けられている。
【0018】
また、ディーゼルエンジン1は、各気筒3に空気を供給するための吸気通路5を備えている。吸気通路5は、エアクリーナ6の下流において吸気分岐路5A,5Bに分かれている。吸気分岐路5A,5Bには、ターボチャージャ7A,7Bのコンプレッサ8A,8Bがそれぞれ設けられている。吸気分岐路5A,5Bは、インタークーラ9を介してインテークマニホールド10に接続されている。インテークマニホールド10は、バンク2A,2Bと連結されている。
【0019】
バンク2A,2Bには、各気筒3から燃焼後の排気ガスを排出するための排気通路11A,11Bがエキゾーストマニホールド12A,12Bを介してそれぞれ接続されている。排気通路11A,11Bには、ターボチャージャ7A,7Bのタービン13A,13Bがそれぞれ設けられている。
【0020】
エキゾーストマニホールド12A,12Bは、排気再循環(EGR)通路14A,14Bを介してインテークマニホールド10とそれぞれ接続されている。EGR通路14A,14Bは、燃焼後の排気ガスの一部をEGRガスとして各気筒3に還流するための通路である。EGR通路14A,14Bには、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ15A,15Bと、EGRガスの還流量を調整するEGRバルブ16A,16Bとがそれぞれ設けられている。
【0021】
排気通路11A,11Bにおけるターボチャージャ7A,7Bの下流側には、排気浄化ユニット17A,17Bがそれぞれ設けられている。排気浄化ユニット17A,17Bは、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を触媒作用(酸化作用)で除去するディーゼル用酸化触媒(DOC)18A,18Bと、排気ガス中に含まれるPMを捕集して除去するディーゼル用排気微粒子除去フィルタ(DPF)19A,19Bとをそれぞれ有している。
【0022】
排気通路11A,11Bにおけるタービン13A,13Bと排気浄化ユニット17A,17Bとの間には、排気温度センサ20A,20Bがそれぞれ設けられている。排気温度センサ20A,20Bは、排気通路11A,11Bを通る排気ガスの温度(排気温度)を検出するセンサ(温度検出手段)である。なお、排気温度センサは、排気浄化ユニット17A,17BにおけるDOC18A,18BとDPF19A,19Bとの間や、排気通路11A,11Bにおける排気浄化ユニット17A,17Bの下流側にも設けられていても良い。
【0023】
排気通路11A,11Bには、差圧センサ21A,21Bがそれぞれ接続されている。差圧センサ21A,21Bは、排気浄化ユニット17A,17Bの上流側と下流側との間の差圧を検出するセンサ(差圧検出手段)である。排気通路11A,11Bにおける排気浄化ユニット17A,17Bの下流側には、空燃比センサ22A,22Bがそれぞれ設けられている。空燃比センサ22A,22Bは、排気通路11A,11Bを通る排気ガスの空燃比(A/F)を検出するセンサ(空燃比検出手段)である。
【0024】
また、ディーゼルエンジン1は、回転数センサ23と、アクセル開度センサ24と、電子制御ユニット(ECU)25とを備えている。回転数センサ23は、エンジン回転数を検出するセンサ(回転数検出手段)である。アクセル開度センサ24は、アクセルペダルの踏込み角(アクセル開度)をエンジン負荷として検出するセンサ(負荷検出手段)である。
【0025】
ECU25は、排気温度センサ20A,20B、差圧センサ21A,21B、空燃比センサ22A,22B、回転数センサ23及びアクセル開度センサ24の検出信号を入力し、所定の処理を行い、各燃料噴射弁4及びEGRバルブ16A,16Bを制御する。
【0026】
ここで、排気浄化ユニット17A,17B、排気温度センサ20A,20B、差圧センサ21A,21B、空燃比センサ22A,22B、回転数センサ23、アクセル開度センサ24及びECU25は、本実施形態の排気浄化装置26を構成している。
【0027】
図2は、ECU25により実行される処理手順を示すフローチャートである。本処理は、DPF19A,19Bに排出されるPMの量(PM排出量)を推定し、その推定結果に基づいて、DPF19A,19BのPM排出量を補正するように気筒群3A,3Bの各燃料噴射弁4を制御するような処理である。PM排出量は、DPF19A,19Bに堆積するPMの量(PM堆積量)に対応する。本処理は、一定の時間経過毎あるいは一定の距離走行毎に行われる。
【0028】
同図において、まず空燃比センサ22A,22B及び排気温度センサ20A,20Bの検出信号を取得する(手順S101)。続いて、空燃比センサ22A,22Bにより検出された排気ガスの空燃比と排気温度センサ20A,20Bにより検出された排気温度とに基づいて、DPF19A,19BのPM排出量(PM堆積量)をそれぞれ推定し、DPF19A,19BのPM排出量推定値(PM堆積量推定値)を得る(手順S102)。
【0029】
PM排出量の推定は、図3に示すようなPM排出量推定マップを用いて行う。PM排出量推定マップは、排気ガスの空燃比と排気温度とPM排出量との関係を表したマップである。PM排出量推定マップは、空燃比が大きくなるほどPM排出量が少なくなると共に、排気温度が高くなるほどPM排出量が多くなるように設定されている。
【0030】
続いて、DPF19A,19BのPM排出量推定値の差が予め決められた閾値よりも大きいかどうかを判断する(手順S103)。DPF19A,19BのPM排出量推定値の差が閾値よりも大きくないと判断されたときは、本処理を終了する。
【0031】
DPF19A,19BのPM排出量推定値の差が閾値よりも大きいと判断されたときは、回転数センサ23及びアクセル開度センサ24の検出信号を取得する(手順S104)。続いて、回転数センサ23により検出されたエンジン回転数及びアクセル開度センサ24により検出されたアクセル開度に対応する燃料噴射量に応じた噴射量オフセットマップを選択する(手順S105)。
【0032】
噴射量オフセットマップは、図4に示すように、燃料噴射量とPM排出量との関係をDPF19A,19B毎に表したものであり、燃料噴射量が多くなるほどPM排出量が多くなるように設定されている。例えば図4では、実線PがDPF19Aにおける燃料噴射量とPM排出量との関係を表し、実線QがDPF19Bにおける燃料噴射量とPM排出量との関係を表している。この時の燃料噴射量は、ディーゼルエンジン1に駆動力を発生させるための燃料噴射であるメイン噴射の燃料噴射量である。
【0033】
また、噴射量オフセットマップは、図5に示すように、エンジン回転数及び燃料噴射量に応じた領域毎に複数用意されている。なお、噴射量オフセットマップにおける実線P,Q等の特性曲線は、ディーゼルエンジン1単体のベンチ試験によって予め決定され、ディーゼルエンジン1個体毎に選択される。
【0034】
続いて、手順S105で選択された噴射量オフセットマップを用いて、DPF19A,19BへのPM排出量が等しくなるように、アクセル開度に応じて設定された気筒群3A,3Bの燃料噴射量をそれぞれオフセットする(手順S106)。なお、アクセル開度に応じて設定された気筒群3A,3Bの燃料噴射量は等しくなっている(図4中の白丸印参照)。
【0035】
例えば図4に示すように、実線Pで示すDPF19AへのPM排出量が実線Qで示すDPF19BへのPM排出量よりも多い(図中の白丸印参照)場合には、気筒群3Aの燃料噴射量を減らす方向に所望量だけオフセットし、気筒群3Bの燃料噴射量を増やす方向に所望量だけオフセットすることで、DPF19A,19BへのPM排出量を等しくする(図中の白三角印参照)。
【0036】
そして、手順S106でオフセットされた燃料噴射量に従ってメイン噴射を行うように、気筒群3A,3Bの各燃料噴射弁4をそれぞれ制御する(手順S107)。
【0037】
以上において、空燃比センサ22A,22B、排気温度センサ20A,20B及びECU25は、2系統のフィルタ19A,19Bへの粒子状物質の排出量を推定する排出量推定手段を構成する。ECU25は、排出量推定手段により推定された2系統のフィルタ19A,19Bへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、2系統の気筒群3A,3Bの燃料噴射弁4を個別に制御する制御手段を構成する。このとき、ECU25の上記手順S101,S102の処理が排出量推定手段の一部として機能し、同手順S103〜S107の処理が制御手段として機能する。
【0038】
また、ECU25の上記手順S101,S102の処理は、空燃比検出手段22A,22Bにより検出された排気ガスの空燃比と温度検出手段20A,20Bにより検出された排気ガスの温度とに基づいて、フィルタ19A,19Bへの粒子状物質の排出量を推定する手段として機能する。同手順S103の処理は、2系統のフィルタ19A,19Bへの粒子状物質の排出量の差が所定量よりも大きいかどうかを判断する手段として機能する。同手順S104〜S106は、2系統のフィルタ19A,19Bへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、負荷検出手段24により検出された内燃機関1の負荷に対応する燃料噴射量を気筒群3A,3B毎に補正する補正手段として機能する。同手順S107は、補正手段により気筒群3A,3B毎に補正された燃料噴射量に応じて燃料噴射を行うように、2系統の気筒群3A,3Bの燃料噴射弁4を個別に制御する手段として機能する。
【0039】
ところで、DPF19A,19BのPM堆積量がPM堆積限界値に達すると、DPF19A,19Bに堆積したPMを高温の燃料により酸化(燃焼)させる、いわゆるDPF19A,19Bの再生が実施される。このとき、排気通路11A,11Bを通る排気ガスの空燃比が等しくても、気筒群3Aの燃料噴射弁4の噴霧特性と気筒群3Bの燃料噴射弁4の噴霧特性とにズレがあると、DPF19A,19BのPM濃度が異なることになるため、DPF19A,19BのPM排出特性が異なり、結果的にDPF19A,19BのPM排出量(PM堆積量)にズレが生じてしまう。
【0040】
このようにDPF19A,19BのPM堆積量にズレが生じたときに、DPF19A,19BのうちPM堆積量が多いほうに合わせて再生を行うと、DPF19A,19BのうちPM堆積量が少ないほうについては、PM堆積量がPM堆積限界値に達する前に再生が行われることとなるため、前回の再生終了から次回の再生開始までのインターバル(再生インターバル)が短くならざるを得ない。その結果、再生頻度が多くなるため、燃費の悪化を招いてしまう。
【0041】
これに対し本実施形態では、空燃比センサ22A,22B及び排気温度センサ20A,20Bの検出信号に基づいてDPF19A,19BのPM排出量を推定し、DPF19AのPM排出量推定値とDPF19BのPM排出量推定値との差分が閾値よりも大きいときは、DPF19A,19BのPM排出量が等しくなるように気筒群3A,3Bの燃料噴射量を互いに反対側にオフセットし、そのオフセットされた燃料噴射量に従ってメイン噴射を行うように気筒群3A,3Bの各燃料噴射弁4をそれぞれ制御する。
【0042】
これにより、気筒群3A,3Bの燃料噴射弁4の噴霧特性の違いによって、DPF19A,19BのPM排出量にズレが生じても、DPF19A,19BのPM排出量が等しくなる。つまり、DPF19A,19BのうちPM堆積量が多いほうについては、対応する燃料噴射弁4からの燃料噴射量を減らすことで、PM排出量が少なくなり、PM堆積量が少ないほうについては、対応する燃料噴射弁4からの燃料噴射量を増やすことで、PM排出量が多くなる。このようにDPF19A,19BのうちPM排出量が多いほうについてはPM排出量が減少するため、当該DPFのPM堆積量がPM堆積限界値に達するのが遅れるようになり、その分だけDPF19A,19Bの再生開始タイミングが遅れることとなる。従って、再生インターバルが長くなるため、結果的に再生頻度が少なくなる。これにより、燃費の悪化を抑制することができる。
【0043】
また、再生頻度が少なくなるので、DOC18A,18Bの熱劣化を抑制することもできる。その結果、DOC18A,18Bの熱劣化による酸化作用を補うための貴金属(白金等)の量を低減することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、空燃比センサ22A,22Bにより検出された排気ガスの空燃比と排気温度センサ20A,20Bにより検出された排気温度とに基づいて、DPF19A,19BのPM排出量(PM堆積量)をそれぞれ推定したが、特にそれには限られず、差圧センサ21A,21Bにより検出されたDPF19A,19Bの上流側と下流側との間の差圧に基づいて、DPF19A,19BのPM排出量(PM堆積量)をそれぞれ推定しても良い。この場合、PM排出量の推定は、DPF19A,19Bの上流側と下流側との間の差圧とPM排出量との関係を表したマップ(図示せず)を用いて行う。
【0045】
また、上記実施形態では、DPF19A,19BのPM排出量が等しくなるように、気筒群3A,3Bの燃料噴射量をそれぞれオフセットするようにしたが、特にそれには限られず、DPF19A,19BのPM排出量の差が少なくなるように、気筒群3A,3Bの燃料噴射量をそれぞれオフセットすれば良い。また、図5で示すような領域毎にオフセットを行っても良く、上記処理毎にオフセット量を更新し続けても良い。
【0046】
さらに、上記実施形態の内燃機関1はV型8気筒のディーゼルエンジンであるが、本発明は、2系統の気筒群を有する内燃機関であれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…ディーゼルエンジン(内燃機関)、3A,3B…気筒群、4…燃料噴射弁、11A,11B…排気通路、19A,19B…DPF(フィルタ)、20A,20B…排気温度センサ(温度検出手段、排出量推定手段)、21A,21B…差圧センサ(差圧検出手段、排出量推定手段)、22A,22B…空燃比センサ(空燃比検出手段、排出量推定手段)、23…回転数センサ(回転数検出手段)、24…アクセル開度センサ(負荷検出手段)、25…ECU(排出量推定手段、制御手段、補正手段)、26…排気浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する燃料噴射弁を有する2系統の気筒群と、前記各気筒群とそれぞれ接続される2系統の排気通路とを具備する内燃機関の排気浄化装置において、
前記各排気通路にそれぞれ設けられ、前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集する2系統のフィルタと、
前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量を推定する排出量推定手段と、
前記排出量推定手段により推定された前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、前記2系統の気筒群の前記燃料噴射弁を個別に制御する制御手段とを備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が所定量よりも大きいかどうかを判断する手段を有し、前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が前記所定量よりも大きいと判断されたときに、前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、前記2系統の気筒群の前記燃料噴射弁を個別に制御することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、前記負荷検出手段により検出された前記内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量を前記気筒群毎に補正する補正手段と、前記補正手段により前記気筒群毎に補正された燃料噴射量に応じて燃料噴射を行うように、前記2系統の気筒群の前記燃料噴射弁を個別に制御する手段とを有することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、
前記補正手段は、前記負荷検出手段により検出された前記内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量と前記回転数検出手段により検出された前記内燃機関の回転数とに応じた噴射量補正マップを用いて、前記2系統のフィルタへの粒子状物質の排出量の差が少なくなるように、前記内燃機関の負荷に対応する燃料噴射量を前記気筒群毎に補正することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記排出量推定手段は、前記各排気通路を通る排気ガスの空燃比をそれぞれ検出する2つの空燃比検出手段と、前記各排気通路を通る排気ガスの温度をそれぞれ検出する2つの温度検出手段と、前記空燃比検出手段により検出された前記排気ガスの空燃比と前記温度検出手段により検出された前記排気ガスの温度とに基づいて、前記フィルタへの粒子状物質の排出量を推定する手段とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記排出量推定手段は、前記2系統のフィルタの上流側と下流側との間の差圧をそれぞれ検出する2つの差圧検出手段と、前記差圧検出手段により検出された前記フィルタの上流側と下流側との間の差圧に基づいて、前記フィルタへの粒子状物質の排出量を推定する手段とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96320(P2013−96320A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240572(P2011−240572)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】