説明

内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】本発明は、OTP増量を行った時の燃費悪化や排気特性の悪化を抑制することを目的とする。
【解決手段】排気浄化触媒の収束温度を推定し、該推定した収束温度を用いてOTP増量値を算出する内燃機関の燃料噴射制御装置において、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときは(S103,S104)、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を零として排気浄化触媒の収束温度を推定する(S115,S107)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃料噴射量制御として、その運転状態が通常運転状態であるときよりも燃料噴射量を増量補正する、所謂OTP(0ver Temperature Protection)増量やパワー増量
が知られている。OTP増量は、排気浄化用触媒の過昇温を抑制するために行われる燃料噴射量の増量補正である。燃料噴射量を増量すると、燃料の気化熱によって排気温度が低下するため、排気浄化触媒の温度を低下させることができる。一方、パワー増量は、出力トルクを増大させるために行われる燃料噴射量の増量補正である。燃料噴射量を増量することで混合気の空燃比を出力空燃比に低下させると、出力トルクを増大させることができる。
【0003】
これらの増量補正は内燃機関の運転状態が特定の運転状態であるときに行われる。例えば、OTP増量は、高負荷・高回転運転状態のときに行われてもよく、パワー増量は、急加速が要求された高負荷運転状態のときに行われてもよい。ここで、OTP増量における燃料噴射量の増量値をOTP増量値と称し、パワー増量における燃料噴射量の増量値をパワー増量値と称する。
【0004】
特許文献1には、内燃機関の定常運転状態における触媒の定常推定温度の基本値を機関回転数及び機関負荷に基づいて求め、この基本値を、点火時期の遅角度合と、排気の吸気系への還流度合と、スロットル弁の略全開時の燃料噴射量の増量度合との少なくともいずれかに応じて補正することで、触媒の定常推定温度を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−343242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OTP増量を行う時のOTP増量値が排気浄化触媒の温度に対して過剰に大きいと、燃費悪化や排気特性の悪化を招く虞がある。そのため、OTP増量を行う際には、排気浄化触媒の温度を推定し、OTP増量値を、その推定した温度に応じた値に調整する必要がある。
【0007】
ここで、パワー増量を行った場合においても、OTP増量を行った場合と同様、燃料の気化熱によって排気の温度が低下するため、それに伴い排気浄化触媒の温度が低下する。そのため、パワー増量を行っている時に排気浄化触媒の温度を推定する場合は、通常、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を考慮する必要がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、OTP増量値をより適切な値に調整することで、OTP増量を行った時の燃費悪化や排気特性の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、排気浄化触媒の収束温度を推定し、該推定した収束温度を用いてOTP増量値を算出する内燃機関の燃料噴射制御装置において、OTP増量実行条件とパワー増量実
行条件との両方が成立したときは、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を零として排気浄化触媒の収束温度を推定するものである。
【0010】
より詳しくは、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、
排気浄化触媒の過昇温を抑制するために燃料噴射量を増量するOTP増量の実行条件であるOTP増量実行条件と、混合気の空燃比を出力空燃比とするために燃料噴射量を増量するパワー増量の実行条件であるパワー増量実行条件との両方が成立した場合、OTP増量とパワー増量とのうち増量値がより大きい方の増量補正を行う燃料噴射量制御部と、
機関回転速度及び機関負荷に基づいて算出される基準収束温度を少なくともパワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分に基づいて補正することで、内燃機関の運転状態が通常運転状態であると仮定したときの排気浄化触媒の収束温度を推定する収束温度推定部と、
内燃機関の運転状態が通常運転状態であると仮定したときの現在の排気浄化触媒の温度である通常温度を前記収束温度に基づいて推定する通常温度推定部と、
排気浄化触媒の温度が前記収束温度であると仮定した場合のOTP増量値であるOTP増量基準値を前記通常温度及び前記収束温度に基づいて補正することで、排気浄化触媒の温度が前記通常温度であると仮定した場合のOTP増量値であるOTP増量補正値を算出するOTP増量補正値算出部と、
OTP増量を行う際に、OTP増量値として前記OTP増量基準値又は前記OTP増量補正値のいずれかを選択するOTP増量値決定部と、を備え、
前記OTP増量実行条件と前記パワー増量実行条件との両方が成立しているときは、前記収束温度推定部が、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を零として前記収束温度を推定する。
【0011】
内燃機関の運転状態が一定の通常運転状態(即ち、OTP増量及びパワー増量が行われていない運転状態)である期間が継続すれば、排気浄化触媒の温度はその運転状態に応じた温度に収束する。この時の温度を収束温度と称する。また、内燃機関の運転状態が通常運転状態であると仮定したときの現在の排気浄化触媒の温度(即ち、収束温度に至る以前の温度)を通常温度と称する。
【0012】
本発明においては、OTP増量実行条件が成立したときはOTP増量が行われ、パワー増量実行条件が成立したときはパワー増量が行われる。そして、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときはOTP増量とパワー増量のうち増量値がより大きい方の増量補正が行われる。
【0013】
OTP増量を行う際のOTP増量値としては、OTP増量基準値又はOTP増量補正値のいずれかが設定される。OTP増量補正値の算出には、排気浄化触媒の収束温度及び通常温度が用いられる。
【0014】
ここで、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときに、OTP増量値の方がパワー増量値よりも大きい場合は、OTP増量が選択されて行われる。この時、パワー増量実行条件が成立していることから、パワー増量を行っている時と同様、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分に基づいて基準収束温度を補正することで収束温度を推定すると、その推定値が実際の収束温度よりも低く算出される。その結果、該収束温度の推定値を用いて求められるOTP増量補正値が不必要に大きくなる場合がある。この場合、該OTP増量補正値がOTP増量値として選択され、OTP増量が行われると、その増量分が過剰となり、燃費悪化や排気特性の悪化を招く虞がある。
【0015】
そこで、本発明では、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときは、収束温度推定部が、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を零として収
束温度を推定する。これにより、収束温度が実際の収束温度よりも低く算出されることが抑制される。その結果、OTP増量補正値が不必要に大きくなることが抑制される。そのため、OTP増量を行った際の燃費悪化や排気特性の悪化を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る燃料噴射制御装置は、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときであって、パワー増量値がOTP増量値より大きいときに、パワー増量値とOTP増量値との差分相当の燃料噴射量の増量に起因する排気浄化触媒の温度低下量を算出する温度低下量算出部をさらに備えてもよい。そして、OTP増量実行条件とパワー増量実行条件との両方が成立したときであって、パワー増量値がOTP増量値より大きいときは、収束温度推定部が、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分に代えて、温度低下量算出部によって算出された温度低下分に基づいて基準収束温度を補正することで収束温度を推定してもよい。
【0017】
これによれば、パワー増量が行われているときに算出される収束温度は、パワー増量値とOTP増量値の差分相当の燃料噴射量の増量に起因する温度低下量を反映した値となる。そして、このように算出された収束温度に基づいて通常温度が推定される。そのため、収束温度及び通常温度を用いて算出されるOTP増量補正値をより適切な値とすることができる。その結果、次回、OTP増量補正値をOTP増量値としてOTP増量を行うこととなったときに、より適切な燃料噴射量の増量補正を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、OTP増量値をより適切な値に調整することが出来る。その結果、OTP増量を行った時の燃費悪化や排気特性の悪化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る、ECUにおける燃料噴射制御に係る部分の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る、OTP増量値算出部の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図4】実施例1に係る、温度推定部の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図5】実施例1に係る、収束温度Tco、パワー増量温度補正量ΔTp、通常温度Tno、OTP増量値ekotp、パワー増量値ekpwr、増量反映値ek、及びスロットル弁の開度TAの推移を示すタイムチャートである。
【図6】実施例1に係るOTP増量値の算出フローを示すフローチャートの一部である。
【図7】実施例1に係るOTP増量値の算出フローを示すフローチャートの一部である。
【図8】実施例2に係る、温度推定部の機能構成の概略を示すブロック図である。
【図9】実施例2に係る、収束温度Tco、パワー増量温度補正量ΔTp、通常温度Tno、OTP増量値ekotp、パワー増量値ekpwr、増量反映値ek、及びスロットル弁の開度TAの推移を示すタイムチャートである。
【図10】実施例2に係るOTP増量値の算出フローを示すフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
<実施例1>
[内燃機関の吸排気系の概略構成]
図1は、本実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は、4つの気筒2を有する車両駆動用のガソリンエンジンである。ただし、本発明に係る内燃機関は、ガソリンエンジンに限られるものではなく、例えばディーゼルエンジンであってもよい。
【0022】
気筒2内にはピストン3が摺動自在に設けられている。気筒2内上部の燃焼室には吸気ポート4と排気ポート5とが接続されている。吸気ポート4および排気ポート5の燃焼室への開口部は、それぞれ吸気弁6および排気弁7によって開閉される。
【0023】
内燃機関1には、燃料噴射弁10及び点火プラグ11が設けられている。燃料噴射弁10は、吸気ポート4内に燃料を噴射する。点火プラグ11は気筒2内の燃焼室において混合気に点火する。
【0024】
吸気ポート4には吸気通路8接続されている。排気ポート5には排気通路9が接続されている。吸気通路8にはエアフローメータ12およびスロットル弁13が吸入空気の流れに沿って上流側から順に設けられている。排気通路9には排気浄化触媒17が設けられている。排気浄化触媒17は三元触媒を含んで構成されている。ただし、本発明に係る排気浄化触媒は三元触媒に限られるものではなく、例えば、酸化触媒や吸蔵還元型NOx触媒等の周知の触媒を含んで構成されてもよい。
【0025】
以上述べたように構成された内燃機関1には電子制御ユニット(ECU)20が併設されている。ECU20には、エアフローメータ12の他、クランクポジションセンサ21、アクセル開度センサ22、及び車速センサ23が電気的に接続されている。これらのセンサの出力信号がECU20に入力される。
【0026】
クランクポジションセンサ21は、内燃機関1のクランク角を検出するセンサである。アクセル開度センサ22は、内燃機関1を搭載した車両のアクセル開度を検出するセンサである。車速センサ23は、内燃機関1を搭載した車両の速度を検出するセンサである。ECU20は、クランクポジションセンサ21の検出値に基づいて内燃機関1の機関回転速度を算出する。また、ECU20は、アクセル開度センサ22の検出値に基づいて内燃機関1の機関負荷を算出する。
【0027】
また、ECU20には、燃料噴射弁10、点火プラグ11、及びスロットル弁13が電気的に接続されている。ECU20によってこれらの装置が制御される。
【0028】
[燃料噴射量制御]
内燃機関1においては、その運転状態が通常運転状態であるときは、混合気の目標空燃比を理論空燃比として燃料噴射量の制御が行われる。ただし、本発明に係る内燃機関の通常運転時の目標空燃比は理論空燃比に限られるものではない。そして、内燃機関1の運転状態が特定の運転状態であるときは、通常運転時よりも燃料噴射量を増量補正するOTP増量やパワー増量が行われる。OTP増量は、内燃機関1の運転状態が、高負荷・高回転運転状態である第一特定運転状態であるときに行われる。パワー増量は、内燃機関1の運転状態が、高負荷運転状態である第二特定運転状態であるときに行われる。第一特定運転状態及び第二特定運転状態は実験等に基づいて予め定められている。
【0029】
図2〜4は、ECU20における燃料噴射制御に係る部分の機能構成の概略を示すブロック図である。図2に示すように、ECU20は、増量値算出部201、燃料噴射量制御部202、及び温度推定部203を有している。
【0030】
増量値算出部201は、燃料噴射量の増量補正を行う時の増量値を設定する。燃料噴射量制御部202は、燃料噴射弁10からの燃料噴射量を制御する。温度推定部203は、排気浄化触媒17の収束温度及び通常温度を推定する。収束温度は、内燃機関1の運転状態が通常運転状態であると仮定したとき、即ち、内燃機関1における混合気の空燃比が理論空燃比であると仮定したときの排気浄化触媒17の収束温度である。また、通常温度は、内燃機関1の運転状態が通常運転状態であると仮定したとき、即ち、内燃機関1における混合気の空燃比が理論空燃比であると仮定したときの現在の排気浄化触媒17の温度である。温度推定部203の詳細については後述する。
【0031】
増量値算出部201は、OTP増量値算出部205、パワー増量値算出部206、及び増量値決定部207を有している。OTP増量値算出部205は、OTP増量を行う時の燃料噴射量の補正項であるOTP増量値を算出する。OTP増量値算出部205は、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態にあるときは、1より大きい値をOTP増量値として算出する。OTP増量値算出部205の詳細については後述する。
【0032】
パワー増量値算出部206は、パワー増量を行う時の燃料噴射量の補正項であるパワー増量値を、機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいて算出する。ECU20には、パワー増量値と機関回転速度NE及び機関負荷KLとの関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。パワー増量値算出部206は該マップ又は関数を用いてパワー増量値を算出する。パワー増量値算出部206は、内燃機関1の運転状態が第二特定運転状態にあるときは、1より大きい値をパワー増量値として算出する。
【0033】
増量値決定部207は、OTP増量値算出部205で算出されたOTP増量値及びパワー増量値算出部206で算出されたパワー増量値に基づいて増量値を決定する。つまり、OTP増量値が1より大きい場合は、OTP増量値を増量値に決定し、パワー増量値が1より大きい場合は、パワー増量値を増量値に決定する。
また、増量値決定部207は、OTP増量値及びパワー増量値のいずれもが1より大きい場合は、OTP増量値とパワー増量値とのうちより大きい方を選択して増量値を決定する。
【0034】
燃料噴射量制御部202は、内燃機関1の運転状態に基づいて定まる基準燃料噴射量(内燃機関1の運転状態が通常運転状態であるときの燃料噴射量)を、増量値算出部201によって算出された増量値に基づいて補正することで、燃料噴射量の増量補正を実行する。
【0035】
図3は、OTP増量値算出部205の機能構成の概略を示すブロック図である。OTP増量値算出部205は、OTP増量基準値算出部2051、OTP増量補正係数算出部2052、OTP増量補正値算出部2053、及びOTP増量値決定部2054を有している。
【0036】
OTP増量基準値算出部2051は、内燃機関1の機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいてOTP増量基準値を算出する。OTP増量基準値は、排気浄化触媒17の温度が収束温度であると仮定した場合のOTP増量値である。即ち、OTP増量基準値は、排気浄化触媒17の温度を、収束温度からOT判定温度より低い温度まで低下させるような増量値である。ここで、OT判定温度とは、排気浄化触媒17の温度が該OT判定温度以上であれば、排気浄化触媒17が過昇温していると判定される閾値となる温度である。ECU20には、内燃機関1の機関回転速度及び機関負荷とOTP増量基準値との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。OTP増量基準値算出部2051は該マップ又は関数を用いてOTP増量基準値を算出する。
【0037】
OTP増量補正係数算出部2052は、OTP増量基準値を補正するための補正係数であるOTP増量補正係数を算出する。OTP増量補正係数Cotは、温度推定部203において算出される収束温度Tco及び通常温度Tnoと、OT判定温度T0とに基づいて、下記式(1)によって算出される。
Cot=(Tno−T0)/(Tco−T0)・・・(1)
【0038】
OTP増量補正値算出部2053はOTP増量補正値を算出する。OTP増量補正値は、排気浄化触媒17の温度が通常温度であると仮定した場合のOTP増量値である。即ち、OTP増量補正値は、排気浄化触媒17の温度を、通常温度からOT判定温度より低い温度まで低下させるような増量値である。OTP増量補正値ekotpcは、OTP増量基準値ekotpb及びOTP増量補正係数Cotに基づいて、下記式(2)によって算出される。
ekotpc=Cot×ekotpb・・・(2)
【0039】
OTP増量値決定部2054は、収束温度と通常温度とを比較すると共に、OTP増量基準値とOTP増量補正値とを比較することで、OTP増量基準値又はOTP増量補正値のいずれかをOTP増量値として選択する。つまり、収束温度が通常温度よりも低い場合、又は、OTP増量基準値がOTP増量補正値よりも小さい場合、OTP増量値決定部2054はOTP増量基準値をOTP増量値に決定する。一方、通常温度が収束温度以下であって且つOTP増量補正値がOTP増量基準値以下の場合、OTP増量値決定部2054はOTP増量補正値をOTP増量値に決定する。
【0040】
排気浄化触媒17の通常温度が収束温度よりも低いときに、OTP基準増量値を増量値としてOTP増量を行うと、燃料噴射量が過剰に多くなる。OTP増量値を上記のように決定することで、このようなOTP増量を行った際の燃料噴射量の過剰な増加を抑制することができる。
【0041】
図4は、温度推定部203の機能構成の概略を示すブロック図である。温度推定部203は、OTP増量を行うか否かを判別するため、また、OTP増量を行う際のOTP増量値を求めるために用いる、排気浄化触媒17の収束温度及び通常温度を推定する。温度推定部203は、基準収束温度算出部2031、遅角温度補正量算出部2032、車速温度補正量算出部2033、パワー増量温度補正量算出部2034、収束温度算出部2035、及び通常温度算出部2036を有している。
【0042】
基準収束温度算出部2031は、内燃機関1の機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいて基準収束温度を算出する。ECU20には、内燃機関1の機関回転速度NE及び機関負荷KLと基準収束温度との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。基準収束温度算出部2031は該マップ又は関数を用いて基準収束温度を算出する。
【0043】
収束温度は、排気浄化触媒17の温度に影響を与える複数の補正項目に基づいて基準収束温度を補正することで算出される。遅角温度補正量算出部2032は、燃料噴射時期の遅角量Δtfre及び内燃機関1の機関負荷KLに基づいて遅角温度補正量を算出する。遅角温度補正量は、燃料噴射時期を遅角することに起因する排気浄化触媒17の温度上昇量である。ECU20には、燃料噴射時期の遅角量Δtfre及び内燃機関1の機関負荷KLと遅角温度補正量との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。遅角温度補正量算出部2032は該マップ又は関数を用いて遅角温度補正量を算出する。
【0044】
車速温度補正量算出部2033は、内燃機関1を搭載した車両の車速espdに基づいて車速温度補正量を算出する。車速温度補正量は、車両の走行風によって熱が持ち去られ
ることに起因する排気浄化触媒17の温度低下量である。ECU20には、車速espdと車速温度補正量との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。車速温度補正量算出部2033は該マップ又は関数を用いて車速温度補正量を算出する。
【0045】
パワー増量温度補正量算出部2034は、パワー増量値算出部206で算出されたパワー増量値に基づいてパワー増量温度補正量を算出する。パワー増量が行われた場合も、OTP増量が行われた場合と同様、燃料の気化熱によって排気の温度が低下し、それに伴い排気浄化触媒17の温度が低下する。パワー増量温度補正量は、パワー増量に起因する排気浄化触媒17の温度低下量である。ECU20には、パワー増量値とパワー増量温度補正量との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。パワー増量温度補正量算出部2034は該マップ又は関数を用いてパワー増量温度補正量を算出する。
【0046】
収束温度算出部2035は排気浄化触媒17の収束温度を算出する。収束温度Tcoは、基準収束温度Tcob、遅角温度補正量ΔTr、車速温度補正量ΔTs、及びパワー増量温度補正量ΔTpに基づいて、下記式(3)によって算出される。
Tco=Tcob−ΔTp+ΔTr−ΔTs・・・(3)
尚、本実施例においては、上記のように、基準収束温度を遅角温度補正量、車速温度補正量、及びパワー増量温度補正量に基づいて補正することで収束温度を算出したが、少なくともパワー増量温度補正量を含んでいれば、補正項目はこれらに限られるものではない。
【0047】
通常温度算出部2036は、排気浄化触媒17の通常温度を算出する。通常温度Tnoは、下記式(4)によって収束温度Tcoに対しなまし処理を行うことで算出する。
Tno(n)=Tno(n−1)+(Tco−Tno(n−1))/k・・・(4)
上記式(4)において、Tno(n)が今回算出される通常温度であり、Tno(n−1)が前回算出された通常温度である。また、kはなまし回数である。
【0048】
ここで、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態であり且つ第二特定運転状態であるときの収束温度の算出方法について説明する。上述したように、OTP増量値及びパワー増量値のいずれもが1より大きい場合(即ち、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態であり且つ第二特定運転状態である場合)は、OTP増量値とパワー増量値とのうちより大きい方に増量値が決定され、燃料噴射量の増量補正が実行される。このとき、OTP増量値の方がパワー増量値よりも大きいために、OTP増量の方が選択され行われた時において、パワー増量は行われないにも関わらず、上記式(3)によって収束温度Tcoを算出する際にパワー増量値に基づいて算出されたパワー増量温度補正量ΔTpが反映されると、収束温度Tcoが実際の値よりも低く算出される。
【0049】
そうすると、その収束温度Tcoを用いて、上記式(1)によって算出されるOTP増量補正係数Cotの値が大きくなる。その結果、上記式(2)によって算出されるOTP増量補正値ekotpcが不必要に大きくなる。このように不必要に大きいOTP増量補正値が次回のOTP増量値として選択され、OTP増量が行われると、その増量分が過剰となり、燃費悪化や排気特性の悪化を招く虞がある。
【0050】
そこで、本実施例においては、OTP増量値及びパワー増量値のいずれもが1より大きい場合は、収束温度算出部2035は、パワー増量温度補正量ΔTpを零として収束温度Tcoを算出する。これにより、収束温度が実際の値よりも低く算出されることが抑制される。その結果、OTP増量補正値ekotpcが不必要に大きくなることが抑制される。そのため、該OTP増量補正値ekotpcが次回のOTP増量値として選択され、OTP増量が行われた際に、燃費悪化や排気特性の悪化を招くことを抑制することができる。
【0051】
図5は、本実施例に係る、収束温度Tco、パワー増量温度補正量ΔTp、通常温度Tno、OTP増量値ekotp、パワー増量値ekpwr、増量反映値(最終的な増量値)ek、及びスロットル弁13の開度TAの推移を示すタイムチャートである。図5におけるTA0は、パワー増量を行うか否かの閾値となるスロットル弁13の開度を表している。つまり、スロットル弁13の開度TAがTA0以上の場合、内燃機関1の運転状態が第二特定運転状態であると判断できる。
【0052】
図5において、OTP増量値ekotp>1の期間が、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態である期間であり、パワー増量値ekpwr>1の期間が、内燃機関1の運転状態が第二特定運転状態である期間である。つまり、期間Δtsでは、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態であり且つ第二特定運転状態である。尚、期間Δtsにおいては、OTP増量基準値ekotpb>OTP増量補正値ekotpcであるため、OTP増量補正値ekotpcがOTP増量値ekotpとして選択されている(つまり、OTP増量値ekotp=OTP増量補正値ekotpcとなっている)。
【0053】
そして、期間Δtsにおいては、OTP増量値ekotp>パワー増量値ekpwrとなっているため、増量補正としてOTP増量が選択され行われる(つまり、増量反映値ek=OTP増量値ekotpとなっている)。
【0054】
この時、期間Δtsにおいて、パワー増量値ekpwrに基づいてパワー増量温度補正量ΔTpが算出されると、図5における破線で示すような値となる。そして、該パワー増量温度補正量ΔTpを反映して収束温度Tco及び通常温度Tnoが算出されると、それぞれの値が図5における破線で示すような値となる。この破線で示すように収束温度Tcoが低く算出されると、該収束温度Tcoの算出値を用いて算出されるOTP増量補正値ekotpcが図5における破線で示すように大きくなる。その結果、増量反映値ekが図5における破線で示すように不必要に大きくなる。
【0055】
しかしながら、本実施例では、上述したように、ekotp>1且つekpwr>1である期間Δtsにおいては、パワー増量温度補正量ΔTpを図5における実線で示すように零として、収束温度Tcoを算出する。これにより、収束温度Tcoは図5における実線で示すような値となる。つまり、収束温度Tcoが実際の収束温度よりも低く算出されることが抑制される。そのため、図5において、実線で示すように、OTP増量補正値ekotpcが大きくなることが抑制され、その結果、増量反映値ekが不必要に大きくなることも抑制される。
【0056】
[OTP増量値算出フロー]
図6及び7は、本実施例に係るOTP増量値の算出フローを示すフローチャートである。本実施例においては、ECU20によって本フローが所定の間隔で繰り返し実行される。
【0057】
本フローにおけるステップS101では、基準収束温度算出部2031によって、基準収束温度Tcobが算出される。次に、ステップS102において、遅角温度補正量算出部2032によって遅角温度補正量ΔTrが算出され、車速温度補正量算出部2033によって車速温度補正量ΔTsが算出される。
【0058】
次に、ステップS103において、ECU20によって、現時点のパワー増量値ekpwr(パワー増量値算出部206によって算出された値)が1より大きいか否かが判別される。ステップS103において、肯定判定された場合、次にステップS104の処理が実行され、否定判定された場合、次にステップS115の処理が実行される。
【0059】
ステップS104においては、ECU20によって、現時点のOTP増量値ekotp(前回の本フローの実行により算出された値)が1以下であるか否かが判別される。ステップS104において、肯定判定された場合、次にステップS105の処理が実行され、否定判定された場合、次にステップS115の処理が実行される。
【0060】
ステップS105においては、パワー増量温度補正量算出部2034によって、パワー増量温度補正量ΔTpが算出される。一方、ステップS115においては、ECU20によって、パワー増量温度補正量ΔTpが零に設定される。
【0061】
次に、ステップS106において、ECU20によって、内燃機関1におけるフューエルカット制御(F/C)がOFFとなっているか否かが判別される。ステップS106において、肯定判定された場合、次にステップS107の処理が実行され、否定判定された場合、次にステップS116の処理が実行される。
【0062】
ステップS107においては、収束温度算出部2035によって、上記式(3)を用いて収束温度Tcoが算出される。一方、ステップS116においては、ECU20によって、収束温度Tcoが予め定められた初期値に設定される。
【0063】
次に、ステップS108において、通常温度算出部2036によって、上記式(4)を用いて通常温度Tnoが算出される。
【0064】
次に、ステップS109において、収束温度TcoがOT判定温度T0以上であり、且つ通常温度TnoがOT判定温度T0以上であるか否かが判別される。ステップS109において、否定判定された場合、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態ではないと判断できる。この場合、次に、ステップS118において、ECU20によって、OTP増量値ekotpが1に設定される。一方、ステップS109において、肯定判定された場合、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態であると判断できる。この場合、次に、ステップS110において、OTP増量基準値算出部2051によって、OTP増量基準値ekotpbが算出される。
【0065】
次に、ステップS111において、OTP増量補正係数算出部2052によって、上記式(1)を用いてOTP増量補正係数Cotが算出される。次に、ステップS112において、OTP増量補正値算出部2053によって、上記式(2)を用いてOTP増量補正値ekotpcが算出される。
【0066】
次に、ステップS113において、OTP増量値決定部2054によって、OTP増量補正値ekotpcがOTP増量基準値ekotpbより大きいか、又は、収束温度Tcoが通常温度Tnoより小さいか否かが判別される。ステップS113において、肯定判定された場合、次に、ステップS114において、OTP増量値決定部2054によって、OTP増量基準値ekotpbがOTP増量値ekotpとして選択される。一方、ステップS113において、否定判定された場合、次に、ステップS117において、OTP増量値決定部2054によって、OTP増量補正値ekotpcがOTP増量値ekotpとして選択される。
【0067】
<実施例2>
[燃料噴射制御]
本実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成は実施例1と同様である。以下、本実施例に係る燃料噴射制御について、実施例1とは異なる点を主として説明する。
【0068】
図8は、本実施例に係る温度推定部203の機能構成の概略を示すブロック図である。本実施例に係る温度推定部203は、基準収束温度算出部2031、遅角温度補正量算出部2032、車速温度補正量算出部2033、パワー増量温度補正量算出部2034、収束温度算出部2035、通常温度算出部2036に加え、増量値差分温度補正量算出部2037を有している。この点以外のECU20における燃料噴射制御に係る部分の機能構成は実施例1と同様である。
【0069】
増量値差分温度補正量算出部2037は、パワー増量値算出部206で算出されたパワー増量値からOTP増量値算出部205で算出されたOTP増量値を減算した値に基づいて増量値差分温度補正量を算出する。増量値差分温度補正量は、パワー増量値とOTP増量値との差分相当の燃料噴射量の増量に起因する排気浄化触媒17の温度低下量である。ECU20には、パワー増量値からOTP増量値を減算した値である増量値差と増量値差分温度補正量との関係を示すマップ又は関数が予め記憶されている。増量値差分温度補正量算出部2037は該マップ又は関数を用いて増量値差分温度補正量を算出する。
【0070】
ここで、本実施例においても、実施例1と同様、OTP増量値及びパワー増量値のいずれもが1より大きい場合(即ち、内燃機関1の運転状態が第一特定運転状態であり且つ第二特定運転状態である場合)は、OTP増量値とパワー増量値とのうちより大きい方に増量値が決定され、燃料噴射量の増量補正が実行される。従って、パワー増量値がOTP増量値より大きい場合は、パワー増量が行われる。
【0071】
このとき、本実施例においては、収束温度算出部2035が、パワー増量温度補正量に代えて増量値差分温度補正量に基づいて、排気浄化触媒17の収束温度を算出する。つまり、この場合、収束温度Tcoは、基準収束温度Tcob、遅角温度補正量ΔTr、車速温度補正量ΔTs、及び増量値差分温度補正量ΔTpoに基づいて、下記式(5)によって算出される。
Tco=Tcob−ΔTpo+ΔTr−ΔTs・・・(5)
尚、この場合も、基準収束温度を補正する補正項目は、少なくとも増量値差分温度補正量を含んでいれば、遅角温度補正量及び車速温度補正量に限られるものではない。
【0072】
そして、通常温度算出部2036は、上記式(5)を用いて算出された収束温度Tcoに対し、上記式(4)によってなまし処理を行うことで通常温度Tnoを算出する。さらに、OTP増量値算出部205におけるOTP増量補正係数算出部2052は、このように算出された収束温度Tco及び通常温度Tnoと、OT判定温度T0とに基づいて、上記式(1)によってOTP増量補正係数Cotを算出する。また、OTP増量補正値算出部2053は、上記式(2)によってOTP増量補正値ekotpcを算出する。
【0073】
図9は、本実施例に係る、収束温度Tco、増量値差分温度補正量ΔTpo、通常温度Tno、OTP増量値ekotp、パワー増量値ekpwr、増量反映値ek、及びスロットル弁13の開度TAの推移を示すタイムチャートである。図9において、TA0は、図5と同様、パワー増量を行うか否かの閾値となるスロットル弁13の開度を表している。
【0074】
図9の期間Δtsにおいては、パワー増量値ekpwr>OTP増量値ekotpとなっているため、増量補正としてパワー増量が選択され行われる(つまり、増量反映値ek=パワー増量値ekpwrとなっている)。この時、本実施例では、増量値差分温度補正量ΔTpoが算出され、該増量値差分温度補正量ΔTpoを反映して収束温度Tcoが算出される。そのため、収束温度Tcoは、実施例1のようにパワー増量温度補正量ΔTp=0として上記式(3)に基づいて算出される場合(図9において破線で示す値)に比べて、低くなる。そして、このように算出された収束温度Tcoに基づいて通常温度Tno
が算出される。
【0075】
本実施例によれば、パワー増量が行われているときに算出される収束温度及び通常温度が、パワー増量値とOTP増量値の差分相当の燃料噴射量の増量に起因する温度低下量を反映した値として算出される。そのため、収束温度及び通常温度を用いて算出されるOTP増量補正値をより適切な値とすることができる。その結果、次回、OTP増量補正値をOTP増量値としてOTP増量を行うこととなったときに、より適切な燃料噴射量の増量補正を行うことが可能となる。
【0076】
[OTP増量値算出フロー]
図10は、本実施例に係るOTP増量値の算出フローを示すフローチャートの一部である。本実施例においては、ECU20によって本フローが所定の間隔で繰り返し実行される。尚、ここでは、図6に示すフローチャートにおける各ステップと同一処理を行うステップについては同一の参照番号を付し、その説明を省略する。また、ステップS108より後のフローは図7に示すフローチャートと同様である。本実施例においては、ECU20によって本フローが所定の間隔で繰り返し実行される。
【0077】
本フローでは、ステップS103において肯定判定された場合、次にステップS204の処理が実行される。ステップS204においては、ECU20によって、現時点のパワー増量値ekpwr(パワー増量値算出部206によって算出された値)が現時点のOTP増量値ekotp(前回の本フローの実行により算出された値)よりも大きいか否かが判別される。ステップS204において、肯定判定された場合、次にステップS205の処理が実行され、否定判定された場合、次にステップS115の処理が実行される。
【0078】
ステップS205においては、増量値差分温度補正量算出部2037によって、増量値差分温度補正量ΔTpoが算出される。次に、ステップS206において、ECU20によって、内燃機関1におけるフューエルカット制御(F/C)がOFFとなっているか否かが判別される。ステップS206において、肯定判定された場合、次にステップS207の処理が実行され、否定判定された場合、次にステップS116の処理が実行される。
【0079】
ステップS207においては、収束温度算出部2035によって、上記式(5)を用いて収束温度Tcoが算出される。次に、ステップS108の処理が実行される。
【0080】
本フローによれば、パワー増量値ekpwrがOTP増量値ekotpよりも大きい場合は、ステップS207において、増量値差分温度補正量ΔTpoを反映した収束温度が算出される。一方、パワー増量値ekpwrがOTP増量値ekotp以下の場合は、実施例1と同様、ステップS107において、パワー増量温度補正量ΔTpを零として収束温度が算出される。
【符号の説明】
【0081】
1・・・内燃機関
8・・・吸気通路
9・・・排気通路
10・・燃料噴射弁
13・・スロットル弁
17・・排気浄化触媒
20・・ECU
201・・増量値算出部
202・・念路湯噴射量制御部
203・・温度推定部
2031・・基準収束温度算出部
2032・・遅角温度補正量算出部
2033・・車速温度補正量算出部
2034・・パワー増量温度補正量算出部
2035・・収束温度算出部
2036・・通常温度算出部
2037・・増量値差分温度補正量算出部
205・・OTP増量値算出部
2051・・OTP増量基準値算出部
2052・・OTP増量補正係数算出部
2053・・OTP増量補正値算出部
2054・・OTP増量値決定部
206・・パワー増量値算出部
207・・増量値決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気浄化触媒の過昇温を抑制するために燃料噴射量を増量するOTP増量の実行条件であるOTP増量実行条件と、混合気の空燃比を出力空燃比とするために燃料噴射量を増量するパワー増量の実行条件であるパワー増量実行条件との両方が成立した場合、OTP増量とパワー増量とのうち増量値がより大きい方の増量補正を行う燃料噴射量制御部と、
機関回転速度及び機関負荷に基づいて算出される基準収束温度を少なくともパワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分に基づいて補正することで、内燃機関の運転状態が通常運転状態であると仮定したときの排気浄化触媒の収束温度を推定する収束温度推定部と、
内燃機関の運転状態が通常運転状態であると仮定したときの現在の排気浄化触媒の温度である通常温度を前記収束温度に基づいて推定する通常温度推定部と、
排気浄化触媒の温度が前記収束温度であると仮定した場合のOTP増量値であるOTP増量基準値を前記通常温度及び前記収束温度に基づいて補正することで、排気浄化触媒の温度が前記通常温度であると仮定した場合のOTP増量値であるOTP増量補正値を算出するOTP増量補正値算出部と、
OTP増量を行う際に、OTP増量値として前記OTP増量基準値又は前記OTP増量補正値のいずれかを選択するOTP増量値決定部と、を備え、
前記OTP増量実行条件と前記パワー増量実行条件との両方が成立しているときは、前記収束温度推定部が、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分を零として前記収束温度を推定する内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記OTP増量実行条件と前記パワー増量実行条件との両方が成立したときであって、パワー増量値がOTP増量値より大きいときに、パワー増量値とOTP増量値との差分相当の燃料噴射量の増量に起因する排気浄化触媒の温度低下量を算出する温度低下量算出部をさらに備え、
前記OTP増量実行条件と前記パワー増量実行条件との両方が成立したときであって、パワー増量値がOTP増量値より大きいときは、前記収束温度推定部が、パワー増量に起因する排気浄化触媒の温度低下分に代えて、前記温度低下量算出部によって算出された温度低下分に基づいて前記基準収束温度を補正することで前記収束温度を推定する請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−163067(P2012−163067A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25103(P2011−25103)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】