説明

内燃機関の空燃比制御装置

【課題】空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じたセンサに対する排気の当たり方の強弱に起因して、上記インバランスの発生時に機関全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になることを抑制できるようにする。
【解決手段】内燃機関1での空燃比の気筒間インバランスに起因して空燃比センサ18の出力と同出力における内燃機関1の実空燃比を理論空燃比としたときの値である目標値との偏差が生じるときには、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別される。そして、上記空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられる。これにより、上記原因となっている気筒に応じて空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによるサブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される内燃機関の空燃比制御装置として、同機関における複数の気筒に繋がる排気通路の合流部分よりも下流に排気中の酸素濃度に応じた信号を出力するセンサを備え、そのセンサの出力等に基づき内燃機関の燃料噴射量を調整することによって、同機関の実空燃比を理論空燃比へと制御するものが知られている。
【0003】
同装置は、上記センサの出力と同出力における内燃機関の実空燃比を理論空燃比としたときの値である目標値との偏差に基づき増減する補正値、及び、その補正値に基づいて前記センサの出力における前記目標値に対する定常的なずれに対応する値となるよう学習される学習値を、内燃機関の燃料噴射量に反映させる。これにより、内燃機関の実空燃比が理論空燃比へと制御されるよう同機関の燃料噴射量が調整される。なお、こうした燃料噴射量の調整に用いられる上記学習値の学習については、内燃機関の運転の変動が少ない機関運転領域である学習領域にて行われる一方、その学習領域外に機関運転状態があるときには行われないようにされる。
【0004】
ここで、複数の気筒を有する内燃機関では、ある気筒での実空燃比が他の気筒での実空燃比からずれた値になるという空燃比の気筒間インバランスが生じることがある(特許文献1参照)。内燃機関において、空燃比の気筒間インバランスの発生によって上記センサ周りを通過する排気中の酸素濃度が変化すると、そのときの酸素濃度に応じたセンサの出力とその目標値との偏差に基づいて上記補正値が増減される。更に、そのときに機関運転状態が学習領域内にあれば、上記増減される補正値に基づいて上記学習値の学習も行われる。そして、それら補正値及び学習値を内燃機関の燃料噴射量に反映させることで、内燃機関で空燃比の気筒間インバランスが生じたとしても、同機関全体としての実空燃比を理論空燃比に近づけることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−16397公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機関の空燃比制御装置における上記センサの出力には、同センサ周りを通過する排気中の酸素濃度が一定である条件のもとでも、そのセンサに対する排気の当たり方の強弱によって違いが生じる。
【0007】
詳しくは、上記センサに対する排気の当たり方が強い場合には、排気中の酸素に対するセンサの感応度が高くなることから、同センサの出力がその目標値に対し増大側の値となるときに同出力の増大が過剰となる傾向がある一方、上記センサの出力がその目標値に対し減少側の値となるときに同出力の減少が過剰となる傾向がある。また、上記センサに対する排気の当たり方が弱い場合には、排気中の酸素に対するセンサの感応度が低くなることから、同センサの出力がその目標値に対し増大側の値となるときに同出力の増大が過少となる傾向がある一方、上記センサの出力がその目標値に対し減少側の値となるときに同出力の減少が過少となる傾向がある。
【0008】
そして、上記センサに対する排気の当たり方の強弱は、そのセンサ周りの排気が内燃機関の各気筒のうちのいずれの気筒から流れてきたものであるかによって変わる。すなわち、センサ周りに存在する排気が流れてきた気筒に応じて、そのセンサに対する排気の当たり方の強弱が変わる。従って、内燃機関において空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、その気筒間インバランスの状態が同じであっても同気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであるかに応じて、同センサの出力に違いが生じるようになる。これは、気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであるかに応じて、言い換えれば上記原因となっている気筒の位置に応じて、その原因となっている気筒から流れる排気の上記センサに対する当たり方の強弱が異なるためである。
【0009】
ここで、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じてセンサの出力に違いが生じることを考慮せずに、同センサの出力とその目標値との偏差に基づいて補正値を増減させ、その増減後の補正値を内燃機関の燃料噴射量に反映させると、上記原因となっている気筒の位置によっては、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、内燃機関全体としての実空燃比を理論空燃比へと制御するうえで、上記増減後の補正値が大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりして、その補正値を内燃機関の燃料噴射量に反映させたとき、内燃機関全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になる。
【0010】
ちなみに、特許文献1には、内燃機関における空燃比の気筒間インバランスが発生しているか否かを判断すること、更には上記気筒間インバランスの原因となっている気筒を判別することが開示されている。しかし、この特許文献1には、気筒間インバランスの原因となっている気筒の位置に応じてセンサの出力に違いが生じることについて何も開示されておらず、そのセンサの出力の違いに起因して上記補正値に過大や過小が生じることの対策についても開示されていない。従って、特許文献1の技術を適用したとしても、空燃比の気筒間インバランスが生じたときに内燃機関全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になるという上記問題を解消することはできない。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じたセンサに対する排気の当たり方の強弱に起因して、上記インバランスの発生時に機関全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になることを抑制できる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、内燃機関の実空燃比を理論空燃比へと制御するに当たり、同機関における複数の気筒に繋がる排気通路の合流部分よりも下流に設けられたセンサの出力、すなわち同センサ周りの排気中の酸素濃度に応じた信号の出力等に基づき、内燃機関の燃料噴射量が調整される。こうした内燃機関における燃蝋噴射量の調整には、上記センサの出力と同出力における内燃機関の実空燃比を理論空燃比としたときの値である目標値との偏差に基づき増減する補正値、及び、その補正値に基づいて前記センサの出力における前記目標値に対する定常的なずれに対応する値となるよう学習される学習値が用いられる。具体的には、上記補正値及び上記学習値を内燃機関の燃料噴射量に反映させることにより、内燃機関の実空燃比を理論空燃比へと制御するための同機関での燃料噴射量の調整が実現される。
【0013】
ここで、内燃機関での空燃比の気筒間インバランスに起因して上記センサの出力がその目標値からずれるときには、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであるかに応じて、その原因となっている気筒から流れる排気の上記センサに対する当たり方の強弱が異なり、それに起因して同センサの出力に違いが生じる。こうしたことを考慮せずに、上記センサの出力とその目標値との偏差に基づいて上記補正値を増減させ、その増減後の補正値を内燃機関の燃料噴射量に反映させた場合、内燃機関全体としての実空燃比を理論空燃比へと制御するうえで、上記増減後の補正値が大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりする。このため、上記補正値を内燃機関の燃料噴射量に反映させたとき、内燃機関全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になる。
【0014】
この点、請求項1記載の発明では、空燃比の気筒間インバランスに起因して上記センサの出力とその目標値との偏差が生じるときには、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別される。そして、上記空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記補正値に加えられる。従って、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであっても、その原因となっている気筒に対応した補正を上記補正値に加えることで、同気筒に応じて上記センサに対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによる上記補正値への影響を小さく抑えることが可能になる。そして、このように上記センサに対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記補正値への影響を小さく抑えることで、その影響を受けて内燃機関全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値となることを抑制できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、機関運転状態が学習領域内にあるときに上記補正値に基づき上記学習値の学習が行われる。また、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正を上記補正値に加えることは、機関運転状態が上記学習領域外にあるときに行われる。一方、機関運転状態が上記学習領域内にあるときには、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記補正値に加えられることはない。ここで、仮に、機関運転状態が上記学習領域内にあるとき、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記補正値に加えられたとすると、その補正が加えられた後の補正値に基づいて学習値の学習が行われる。この場合、学習が行われた後の学習値には、センサに対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記補正値への影響を小さく抑えるための補正分も取り込まれた値となる。このため、学習値がセンサの出力の目標値に対する定常的なずれに対応した値として不適切な値になるという問題がある。この点、請求項2記載の発明では、機関運転状態が学習領域内にあるとき、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記補正値に加えられないようにすることが可能であり、そのようにすることで上述した問題が生じることを回避できる。
【0016】
なお、上記補正値に基づく上記学習値の学習が完了しているときには、請求項3記載の発明のように、上記学習値の学習が行われる学習領域を縮小することが好ましい。このように学習領域を縮小することにより、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記補正値に加えられる機関運転領域を拡大することができ、より広い機関運転領域で内燃機関全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値となることを抑制できる。また、上記学習値の学習が完了する前には、その学習が行われる学習領域は縮小されていない状態となることから、学習領域が狭くなって学習値の学習機会が少なくなることはない。
【0017】
上記センサについては、請求項4記載の発明のように、内燃機関における複数の気筒に繋がる排気通路の合流部分よりも下流に設けられた触媒よりも更に下流に設けることが考えられる。この場合、内燃機関全体としての実空燃比が理論空燃比に対し過度にずれた値になったとすると、言い換えれば触媒及びセンサを通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれた値になったとすると、上記触媒での排気浄化能力が低下する。これは、同触媒は、そこを通過する排気中の酸素濃度を上記実空燃比を理論空燃比としたときの値と一致させたとき、触媒の排気浄化能力を最も良好な状態とすることができるためである。そして、上述したように触媒の排気浄化能力が低下すると、内燃機関の排気エミッション改善の妨げとなる。請求項4記載の発明では、内燃機関での空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、内燃機関全体としての実空燃比が理論空燃比に対し過度にずれた値になることを抑制できる。従って、内燃機関での空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、触媒及びセンサを通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれた値になることを抑制でき、ひいては触媒の排気浄化能力が低下することを抑制できるため、内燃機関の排気エミッションを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の空燃比制御装置が適用される内燃機関全体を示す略図。
【図2】同機関の排気系における空燃比センサの取り付け位置を示す略図。
【図3】サブフィードバック補正値に基づくサブフィードバック学習値の学習が行われるときの両者の関係を示すグラフ。
【図4】サブフィードバック学習値の学習が行われる学習領域を示す説明図。
【図5】空燃比の気筒間インバランスの発生時、その原因となっている気筒に対応した補正をサブフィードバック補正値VHに加える手順を示すフローチャート。
【図6】(a)〜(c)は、クランク角の変化に対する空燃比センサの出力の推移モデルでの変化、同空燃比センサの実際の出力の変化、及びクランクカウンタの変化を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を自動車用四気筒内燃機関の空燃比制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示される内燃機関1においては、各気筒の燃焼室2に繋がる吸気通路3にスロットルバルブ13が開閉可能に設けられており、同吸気通路3を通じて燃焼室2に空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁4から噴射された燃料が同燃焼室2に供給される。この空気と燃料とからなる混合気に対し点火プラグ5による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン6が往復移動し、内燃機関1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。
【0020】
一方、燃焼室2にて燃焼した後の混合気は、排気として各燃焼室2から排気通路8に送り出され、同排気通路8に設けられた触媒コンバータ16の三元触媒にて浄化された後に外部に放出される。この三元触媒は、触媒雰囲気の酸素濃度が理論空燃比での混合気の燃焼時の値になるとき、排気中の有害成分(HC,CO,NOx)のすべてを最も効果的に除去できるものである。
【0021】
また、排気通路8において、触媒コンバータ16の上流側及び下流側にはそれぞれ排気中の酸素濃度に応じたリニアな検出信号を出力する空燃比センサ17,18が設けられている。より詳しくは、上記空燃比センサ17は図2に示されるように内燃機関1における四つの気筒#1,#2,#3,#4の燃焼室2に各々繋がる排気通路8の集合部分の下流であって触媒コンバータ16よりも上流側に設けられ、上記空燃比センサ18は触媒コンバータ16よりも下流側に設けられている。
【0022】
内燃機関1の空燃比制御装置は、内燃機関1に関する各種制御を実行する電子制御装置21を備えている。電子制御装置21は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
【0023】
電子制御装置21の入力ポートには、図1に示すように、上記空燃比センサ17,18の他、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル27の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ28。
【0024】
・吸気通路3に設けられたスロットルバルブ13の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ30。
・吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ32。
【0025】
・クランクシャフト7の回転に対応する信号を出力し、機関回転速度の算出等に用いられるクランクポジションセンサ34。
電子制御装置21の出力ポートには、燃料噴射弁4の駆動回路、及びスロットルバルブ13の駆動回路などの各種機器の駆動回路等が接続されている。
【0026】
そして、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、機関回転速度や機関負荷(内燃機関1の1サイクル当たりに燃焼室2に吸入される空気の量)といった機関運転状態を把握する。なお、機関回転速度はクランクポジションセンサ34からの検出信号に基づき求められる。また、機関負荷は、アクセルポジションセンサ28、スロットルポジションセンサ30、及び、エアフローメータ32等の検出信号に基づき求められる内燃機関1の吸入空気量と上記機関回転速度とから算出される。電子制御装置21は、機関負荷や機関回転速度といった機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして内燃機関1における燃料噴射量制御、及び吸入空気量制御等が電子制御装置21を通じて実施される。
【0027】
内燃機関1の燃料噴射量制御は、機関回転速度及び機関負荷等に基づき、そのときに必要とされる燃料噴射量を噴射量指令値Qとして算出し、当該噴射量指令値Qに対応する量の燃料が噴射されるよう燃料噴射弁4を駆動することによって実現される。こうした燃料噴射量制御で用いられる噴射量指令値Qは、基本燃料噴射量Qbase、メインフィードバック補正値DF、及び、メインフィードバック学習値MG(i) に基づき、以下の式(1)を用いて算出される。
【0028】
Q=Qbase+DF+MG(i) …(1)
Q :噴射量指令値
Qbase :基本燃料噴射量
DF :メインフィードバック補正値
MG(i) :メインフィードバック学習値
ここで、基本燃料噴射量Qbaseは、理論空燃比の混合気を得るために必要な理論上の燃料噴射量として、機関回転速度及び機関負荷に基づいて算出される。
【0029】
メインフィードバック補正値DFは、燃料噴射量(基本燃料噴射量Qbase)を補正するためのものであって、内燃機関1の実空燃比が理論空燃比となるよう、空燃比センサ17の出力と同出力における上記実空燃比が理論空燃比となったときの値である目標値との偏差に基づき増減される。こうしたメインフィードバック補正値DFの増減を通じて、内燃機関1の実空燃比が理論空燃比となるように噴射量指令値Qが増減される。
【0030】
また、メインフィードバック学習値MG(i) も、燃料噴射量(基本燃料噴射量Qbase)を補正するためのものであって、内燃機関1における吸気系や燃料噴射系の詰まり等に起因する内燃機関1の実空燃比の理論空燃比に対する定常的なずれを補償する値となるよう更新(学習)される。こうしたメインフィードバック学習値MG(i) の学習は、基本燃料噴射量Qbaseに対するメインフィードバック補正値DFの割合であるフィードバック補正率が例えば1%以上であって、且つ、メインフィードバック補正値DFが安定していることを条件に実施される。具体的には、その時点でのメインフィードバック補正値DFをメインフィードバック学習値MG(i) とすることにより、上記メインフィードバック学習値MG(i) の学習が行われる。
【0031】
なお、メインフィードバック学習値MG(i) は機関負荷領域に応じて区分された複数の学習領域i(i=1、2、3・・・)毎に用意される。そして、内燃機関1の運転状態の変化に応じて、その運転状態に対応する学習領域iが変化すると、更新されるメインフィードバック学習値MG(i) も上記変化後の学習領域iに対応したものへと切り換えられる。こうして学習領域i毎にメインフィードバック学習値MG(i) の更新が行われるようになる。
【0032】
式(1)から分かるように、噴射量指令値Qには、上述したように算出されるメインフィードバック補正値DF及びメインフィードバック学習値MG(i) が反映される。これにより、内燃機関1の実空燃比が理論空燃比となるよう、同機関1の燃料噴射量が調整される。
【0033】
ところで、内燃機関1の排気エミッションを改善するためには、触媒コンバータ16における触媒の排気浄化能力を最大とすべく、同触媒を通過する排気中の酸素濃度が理論空燃比での混合気の燃焼時に対応した値となるようにすることが好ましい。こうしたことを実現すべく、上記空燃比センサ17の出力VAFが触媒下流の空燃比センサ18の出力に基づいて補正される。詳しくは、上記空燃比センサ17の出力VAFが、触媒下流の空燃比センサ18の出力等に基づいて求められるサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGに基づき、以下の式(2)を用いて補正される。
【0034】
VAF←最新のVAF+VH+SG …(2)
VAF:空燃比センサの出力
VH :サブフィードバック補正値
SG :サブフィードバック学習値
触媒上流の空燃比センサ17の出力VAFがサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGによって補正されるということは、空燃比センサ17の出力VAF等に基づいて求められる式(1)のメインフィードバック補正値DFがサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGによって補正されることを意味する。このことから、式(2)で用いられるサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGは、内燃機関1の燃料噴射量に反映される値であることが分かる。
【0035】
上記サブフィードバック補正値VHは、触媒下流の空燃比センサ18の出力と同出力における内燃機関1の実空燃比が理論空燃比となったときの値である目標値との偏差に基づき、その偏差を「0」として空燃比センサ18の出力を上記目標値とすべく増減される。このように増減されるサブフィードバック補正値VHが内燃機関1の燃料噴射量に反映されることで、触媒コンバータ16及び空燃比センサ18を通過する排気中の酸素濃度が同機関1全体としての実空燃比を理論空燃比としたときの値となるように、同機関1の燃料噴射量が調整される。
【0036】
上記サブフィードバック学習値SGは、触媒下流の空燃比センサ18の出力における上記目標値に対する定常的なずれ、例えば触媒の劣化等に起因する定常的なずれに対応する値となるよう、サブフィードバック補正値VHに基づき更新(学習)される。こうしたサブフィードバック学習値SGの学習には、最新のサブフィードバック補正値VHに徐変処理を施した値である更新量SGKが用いられる。詳しくは、その更新量SGKを以下の式(3)に示すように現在のサブフィードバック学習値SGに加算し、その加算後の値を新たなサブフィードバック学習値SGとすることにより、サブフィードバック学習値SGの学習が行われる。
【0037】
SG=SG+SGK …(3)
SG:サブフィードバック学習値
SGK:更新量
図3の破線は、サブフィードバック補正値VHに基づくサブフィードバック学習値SGの学習が行われるときの両者の関係を示したものである。空燃比センサ18の出力が上記目標値よりもリーン側の値(酸素過剰側の値)になり、それに伴いサブフィードバック補正値VHが基準値(例えば「0」)に対しリッチ指示寄りの値になるほど、同補正値VHに基づき式(3)を用いて学習される上記サブフィードバック学習値SGもリッチ指示寄りの値になる。一方、空燃比センサ18の出力が上記目標値よりもリッチ指示側の値(酸素過少側の値)になり、それに伴いサブフィードバック補正値VHが基準値に対しリーン指示寄りの値になるほど、同補正値VHに基づき式(3)を用いて学習される上記サブフィードバック学習値SGもリーン指示寄りの値になる。以上のように変化するサブフィードバック学習値SGが内燃機関1の燃料噴射量に反映されることで、サブフィードバック補正値VHが基準値に近づけられる。
【0038】
そして、上記サブフィードバック補正値VHが基準値にある程度近づいて安定したときのサブフィードバック学習値SGは、触媒下流の空燃比センサ18の出力における上記目標値に対する定常的なずれに対応する値になる。従って、サブフィードバック学習値SGの学習により、サブフィードバック補正値VHが基準値にある程度近づいて安定したとき、上記サブフィードバック学習値SGの学習が完了する。ちなみに、式(3)を用いてのサブフィードバック学習値SGの学習は、内燃機関1の運転の変動が少ない機関運転領域、例えば図4において実線よりも機関低回転低負荷側の領域である学習領域Gにて行われる一方、その学習領域G外に機関運転状態があるときには行われないようにされる。
【0039】
以上のように、触媒下流の空燃比センサ18の出力等に基づきサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGが求められると、それらによる触媒上流の上記空燃比センサ17の出力VAFの補正を通じて、サブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGが内燃機関1の燃料噴射量に反映される。このように内燃機関1の燃料噴射量にサブフィードバック補正値VH及びサブフィードバック学習値SGが反映されることで、触媒コンバータ16及び空燃比センサ18を通過する排気中の酸素濃度が同機関1全体としての実空燃比を理論空燃比としたときの値となるよう、内燃機関1の燃料噴射量が調整される。言い換えれば、空燃比センサ18の出力がその目標値(内燃機関1全体としての実空燃比を理論空燃比としたときの値)となるよう、内燃機関1の燃料噴射量が調整される。これにより、触媒を通過する排気中の酸素濃度が理論空燃比での混合気の燃焼時に対応した値となるよう調整される。その結果、触媒コンバータ16における触媒の排気浄化能力を最大とすることによる内燃機関1の排気エミッション改善が図られる。
【0040】
次に、内燃機関1における空燃比の気筒間インバランスが生じることによる不都合、及び、その対策について説明する。
上記空燃比の気筒間インバランスが生じることで、内燃機関1において、ある気筒での実空燃比が他の気筒での実空燃比からずれた値になると、触媒下流の空燃比センサ18周りを通過する排気中の酸素濃度が理論空燃比で混合気を燃焼させたときの値からずれる可能性が高い。そして、空燃比センサ18周りを通過する排気中の酸素濃度が変化すると、そのときの酸素濃度に応じた空燃比センサ18の出力とその目標値(理論空燃比での混合気の燃焼時の値)との偏差に基づいてサブフィードバック補正値VHが増減される。更に、そのときに機関運転状態が学習領域G内にあれば、上記増減されるサブフィードバック補正値VHに基づいてサブフィードバック学習値SGの学習も行われる。そして、それら補正値VH値及び学習値SGを内燃機関1の燃料噴射量に反映させることで、空燃比の気筒間インバランスが生じたとしても、同機関1全体としての実空燃比を理論空燃比に近づけ、ひいては触媒及びその下流の空燃比センサ18を通過する排気中の酸素濃度を上記実空燃比を理論空燃比としたときの値に近づけることが可能にはなる。
【0041】
ただし、空燃比センサ18の出力には、同センサ18周りを通過する排気中の酸素濃度が一定である条件のもとでも、その空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱によって違いが生じる。そして、空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱は、その空燃比センサ18周りの排気が内燃機関1の各気筒のうちのいずれの気筒から流れてきたものであるかによって変わる。すなわち、空燃比センサ18周りに存在する排気が流れてきた気筒に応じて、その空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱が変わる。従って、内燃機関1において空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、その気筒間インバランスの状態が同じであっても同気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであるかに応じて、空燃比センサ18の出力に違いが生じる。
【0042】
この違いを考慮せずに、空燃比センサ18の出力とその目標値との偏差に基づいてサブフィードバック補正値VHを増減させ、同補正値VHを内燃機関1の燃料噴射量に反映させると、上記原因となっている気筒の位置によっては、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、内燃機関1全体としての実空燃比を理論空燃比へと制御して触媒を通過する排気中の酸素濃度を上記実空燃比を理論空燃比としたときの値とするうえで、上記増減後のサブフィードバック補正値VHが大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりする。その結果、上記サブフィードバック補正値VHを内燃機関1の燃料噴射量に反映させたとき、内燃機関1全体としての実空燃比が理論空燃比から過度にずれて、触媒を通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれてしまう。これにより、触媒の排気浄化能力が低下して内燃機関1の排気エミッション改善が妨げられる。
【0043】
こうした不都合に対処するため、本実施形態では、空燃比の気筒間インバランスに起因して空燃比センサ18の出力とその目標値との偏差が生じるときには、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別される。そして、上記空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられる。
【0044】
従って、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒が各気筒のうちのいずれであっても、その原因となっている気筒に対応した補正を上記サブフィードバック補正値VHに加えることで、同気筒に応じて上記空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによる上記補正値VHへの影響を小さく抑えることが可能になる。そして、このように上記空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記サブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えることで、その影響を受けて上述したように内燃機関1全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になることを抑制できる。言い換えれば、触媒を通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれてしまうことを抑制できる。従って、触媒を通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれてしまい、それによって触媒の排気浄化能力が低下して内燃機関1の排気エミッション改善が妨げられることを抑制できる。
【0045】
次に、空燃比の気筒間インバランスの発生時、その原因となっている気筒に対応した補正をサブフィードバック補正値VHに加える処理について、補正処理ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して詳しく説明する。この補正処理ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0046】
同ルーチンにおいては、まず、空燃比の気筒間インバランスに起因して空燃比センサ18の出力とその目標値との偏差が生じるとき、その気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別される(S101)。
【0047】
具体的には、内燃機関1におけるクランク角の変化に対する空燃比センサ18からの出力の推移に基づき、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒が判別される。なお、内燃機関1のクランク角は、クランクポジションセンサ34からの信号に基づきクランク角の変化に応じて図6(c)に示すように変化するクランクカウンタに基づいて把握される。そして、内燃機関1での空燃比の気筒間インバランスが生じている場合、クランク角の変化に対する空燃比センサ18の出力の推移は、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じて異なったものとなる。
【0048】
ちなみに、図6(a)における実線L1、破線L2、一点鎖線L3、及び二点鎖線L4はそれぞれ、気筒#1〜#4が上記原因となっている気筒である場合の上記空燃比センサ18の出力の推移モデルを示している。これらの推移モデルは、上記原因となっている気筒での空燃比が他の気筒の空燃比に対しリッチ方向にずれた状態での空燃比の気筒間インバランスに対応している。なお、上記原因となっている気筒での空燃比が他の気筒の空燃比に対しリーン方向にずれた状態での空燃比の気筒間インバランスでは、上記各線L1〜L4を空燃比センサ18の出力の増減方向(図中の上下方向)に反転させたものがそれぞれ、気筒#1〜#4が上記原因となっている気筒である場合の上記空燃比センサ18の出力の推移モデルとなる。
【0049】
上記S101の処理では、クランク角の変化に対する空燃比センサ18の出力の実際の推移(例えば図6(b))と上記各推移モデルとを比較することで、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別されるとともに、同気筒での他の気筒に対する空燃比のずれ方向がリッチ方向であるか、あるいはリーン方向であるかが判別される。そして、それらの判別が完了すると、S102で肯定判定がなされる。この場合、サブフィードバック学習値SGの学習が完了しているか否かが判断され(S103)、ここで肯定判定であればサブフィードバック学習値SGの学習を行うための学習領域Gが縮小される(S104)。詳しくは、上記学習領域Gが、図3における実線よりも機関低回転低負荷側の領域から、図中の破線よりも機関低回転低負荷側の領域へと縮小される。
【0050】
続いてS105の処理において、機関運転状態が学習領域G内にあるか否かが判断される。S105の処理で肯定判定であれば、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じて、また同気筒での空燃比のずれ方向に応じてサブフィードバック補正値VHに補正が加えられる(S106)。
【0051】
ここで、上記原因となる気筒が同気筒から流れる排気の空燃比センサ18に対する当たり方が強い気筒であれば、上記気筒における空燃比のずれ方向がリッチ方向であることを条件にサブフィードバック補正値VHに対しリッチ指示側への補正が加えられる。これは、空燃比センサ18への上記排気の当たり方が強いと、排気中の酸素に対する同センサ18の感応度が高くなり、それが原因となってサブフィードバック補正値VHが過度にリーン指示側の値になるためである。そして、サブフィードバック補正値VHに対して上記リッチ指示側への補正が加えられることで、同補正値VHが例えば図3に破線で示す状態から実線で示す状態へと移行するようになる。なお、このときのリッチ指示側への補正量については、予め実験等により定められた最適値が用いられる。一方、上記原因となる気筒における空燃比のずれ方向がリーン方向であるときには、サブフィードバック補正値VHに対しリーン指示側への補正が加えられる。これは、空燃比センサ18への上記排気の当たり方が強いと、排気中の酸素に対する同センサ18の感応度が高くなり、それが原因となってサブフィードバック補正値VHが過度にリッチ指示側の値になるためである。なお、上記リーン指示側への補正量についても、予め実験等により定められた最適値が用いられる。
【0052】
また、上記原因となる気筒が同気筒から流れる排気の空燃比センサ18に対する当たり方が弱い気筒であれば、上記気筒における空燃比のずれ方向がリッチ方向であることを条件に、サブフィードバック補正値VHに対しリーン指示側への補正が加えられる。これは、空燃比センサ18への上記排気の当たり方が弱いと、排気中の酸素に対する同センサ18の感応度が低くなり、それが原因となってサブフィードバック補正値VHが過度にリッチ指示側の値になるためである。なお、上記リーン指示側への補正量については、予め実験等により定められた最適値が用いられる。一方、上記原因となる気筒が同気筒から流れる排気の空燃比センサ18に対する当たり方が弱い気筒であれば、上記気筒における空燃比のずれ方向がリーン方向であることを条件に、サブフィードバック補正値VHに対しリッチ指示側への補正が加えられる。これは、空燃比センサ18への上記排気の当たり方が弱いと、排気中の酸素に対する同センサ18の感応度が低くなり、それが原因となってサブフィードバック補正値VHが過度にリーン指示側の値になるためである。なお、上記リッチ指示側への補正量についても、予め実験等により定められた最適値が用いられる。
【0053】
サブフィードバック補正値VHに対し空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒に対応した補正を上記のように加えることで、上記原因となる気筒に応じて空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによる上記サブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えることが可能になる。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)内燃機関1での空燃比の気筒間インバランスに起因して空燃比センサ18の出力とその目標値との偏差が生じるときには、上記気筒間インバランスの原因となっている気筒が判別される。そして、上記空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられる。これにより、上記原因となっている気筒に応じて空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによるサブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えることが可能になる。そして、このように上記空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記サブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えることで、その影響を受けて上述したように内燃機関1全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になることを抑制できる。言い換えれば、触媒を通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれてしまうことを抑制できる。従って、触媒を通過する排気中の酸素濃度が上記実空燃比を理論空燃比としたときの値から過度にずれてしまい、それによって触媒の排気浄化能力が低下して内燃機関1の排気エミッション改善が妨げられることを抑制できる。
【0055】
(2)サブフィードバック補正値VHに基づくサブフィードバック学習値SGの学習は、機関運転状態が学習領域G内にあるときに行われる。また、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正を上記サブフィードバック補正値VHに加えることは、機関運転状態が上記学習領域G外にあるときに行われる。一方、機関運転状態が上記学習領域G内にあるときには、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正が上記サブフィードバック補正値VHに加えられることはない。ここで、仮に、機関運転状態が上記学習領域G内にあるとき、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられたとすると、その補正が加えられた後の同補正値VHに基づいてサブフィードバック学習値SGの学習が行われる。この場合、学習が行われた後のサブフィードバック学習値SGには、空燃比センサ18に対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記サブフィードバック補正値VHへの影響を小さく抑えるための補正分も取り込まれた値となる。このため、サブフィードバック学習値SGが空燃比センサ18の出力の目標値に対する定常的なずれに対応した値として不適切な値になるという問題がある。しかし、機関運転状態が学習領域G内にあるときには、上述したように、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられることはないため、上述した問題が生じることを回避できる。
【0056】
(3)サブフィードバック補正値VHに基づくサブフィードバック学習値SGの学習が完了しているときには、同学習値SGの学習が行われる学習領域Gが縮小される。このように学習領域Gを縮小することにより、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正がサブフィードバック補正値VHに加えられる機関運転領域を拡大することができ、より広い機関運転領域で上記(1)の効果、すなわち内燃機関1全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値となることを抑制できるという効果が得られる。また、上記サブフィードバック学習値SGの学習が完了する前には、その学習が行われる学習領域Gは縮小されていない状態となることから、学習領域Gが狭くなってサブフィードバック学習値SGの学習機会が少なくなるという問題が生じることもない。
【0057】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・サブフィードバック学習値SGの学習が完了したとき、必ずしも学習領域Gを縮小する必要はない。
【0058】
・空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応したサブフィードバック補正値VHの補正に関しては、必ずしもサブフィードバック学習値SGの学習領域G内で禁止する必要はない。
【0059】
・空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正をサブフィードバック補正値VHに加えるものとしたが、そうした補正をメインフィードバック補正値DFに加えるようにすることも可能である。この場合、空燃比の気筒間インバランスの原因となっている気筒に応じて触媒上流の空燃比センサ17に対する排気の当たり方の強弱が異なるとしても、それによるメインフィードバック補正値DFへの影響を小さく抑えることが可能になる。そして、このように上記空燃比センサ17に対する排気の当たり方の強弱の違いによる上記メインフィードバック補正値DFへの影響を小さく抑えることで、その影響を受けて内燃機関1全体での実空燃比が理論空燃比から過度にずれた値になることを抑制できる。
【0060】
・ハイブリッド自動車に原動機として搭載される内燃機関に本発明を適用してもよい。この場合、空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、その原因となる気筒の判別を行いやすい機関運転状態に強制的に移行しつつ、そうした機関運転状態になったときの内燃機関1の出力の過不足をハイブリッド自動車に原動機として搭載されたモータや発電機の駆動を通じて吸収することが好ましい。これにより、空燃比の気筒間インバランスが生じたとき、その原因となる気筒の判別を速やかに行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1…内燃機関、2…燃焼室、3…吸気通路、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…クランクシャフト、8…排気通路、13…スロットルバルブ、16…触媒コンバータ、17…空燃比センサ、18…空燃比センサ、21…電子制御装置(補正手段、縮小手段)、27…アクセルペダル、28…アクセルポジションセンサ、30…スロットルポジションセンサ、32…エアフローメータ、34…クランクポジションセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関における複数の気筒に繋がる排気通路の合流部分よりも下流に設けられて排気中の酸素濃度に応じた信号を出力するセンサを備え、そのセンサの出力と同出力における内燃機関の実空燃比を理論空燃比としたときの値である目標値との偏差に基づき増減する補正値、及び、その補正値に基づいて前記センサの出力における前記目標値に対する定常的なずれに対応する値となるよう学習される学習値を、内燃機関の燃料噴射量に反映させることにより、同機関の実空燃比を理論空燃比へと制御する内燃機関の空燃比制御装置において、
ある気筒の実空燃比が他の気筒の実空燃比に対しずれた値となる空燃比の気筒間インバランスに起因して前記センサの出力と前記目標値との偏差が生じるとき、前記気筒間インバランスの原因となっている気筒を判別し、その原因となる気筒に対応した補正を前記補正値に加える補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記補正値に基づく前記学習値の学習が行われる学習領域外に機関運転状態があるとき、空燃比の気筒間インバランスの原因となる気筒に対応した補正を前記補正値に加える
請求項1記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の内燃機関の空燃比制御装置において、
前記補正値に基づく前記学習値の学習が完了しているとき、前記学習領域を縮小する縮小手段を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項4】
前記センサは、内燃機関における複数の気筒に繋がる排気通路の合流部分よりも下流に設けられた触媒の下流に位置している
請求項1記載の内燃機関の空燃比制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57271(P2013−57271A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195313(P2011−195313)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】