内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置
【課題】燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することのできる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を提供する。
【解決手段】このブローバイガス還元装置60は、燃料圧力の実際値を変更後の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行うエンジン10について、そのクランク室32内の換気を行うものであって、クランク室32内からサージタンク47内に供給されるブローバイガスの流量を調整するPCVバルブ63を備えて構成される。そして、燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因してインジェクタ52の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときにPCVバルブ63の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる。
【解決手段】このブローバイガス還元装置60は、燃料圧力の実際値を変更後の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行うエンジン10について、そのクランク室32内の換気を行うものであって、クランク室32内からサージタンク47内に供給されるブローバイガスの流量を調整するPCVバルブ63を備えて構成される。そして、燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因してインジェクタ52の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときにPCVバルブ63の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて変更する燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブローバイガス還元装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のものを含めて、電子制御式ブローバイガス還元装置は一般に、吸気通路のスロットルバルブの吸気下流側とクランク室内とを接続してクランク室内のブローバイガスを吸気通路に供給する第1の換気通路と、吸気通路のスロットルバルブの吸気上流側とクランク室内とを接続して吸入空気をクランク室内に供給する第2の換気通路と、第1の換気通路に設けられてその通路面積を変更する電子制御式の換気弁とにより構成されている。そして、内燃機関の運転中においては、機関運転状態に基づいてブローバイガスの流量の要求値が設定され、実際のブローバイガスの流量がこの要求値となるように換気弁の開度の操作が行われる。
【特許文献1】特開2005−42575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記ブローバイガス還元装置を備えた内燃機関において、クランク室内の換気を促進させる要求があるときには、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増大させることによりその要求に応じることは可能となる。しかし、ブローバイガス中に含まれる燃料量が多いときには、ブローバイガスの流量の増大にともない燃焼室に供給される燃料量の増加分もそれに応じて大きくなり、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量に対して過度に多いものとなるため、このような場合には換気弁の操作に併せて燃料噴射弁の噴射量を減少させることが必要となる。
【0004】
ここで、燃料噴射弁の噴射量を減少させることにより、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量から過度に乖離したものとなることを抑制することが一応は可能になるものの、ブローバイガス中に含まれる燃料量が著しく多いときには、これに応じて燃料噴射弁に対して要求される噴射量の減少量も多くなるため、燃料噴射弁の開弁時間の操作だけではそうした減少量の要求に応じることが困難となる。
【0005】
そこで、例えばブローバイガス中に含まれる燃料量が多いと推定されるときには、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を低下させる燃圧制御を実行し、燃料噴射弁の噴射量の最小値をより小さいものに変更することによって、上記減少量の要求に応じることが考えられる。すなわち、換気弁の操作に併せて燃圧制御を実行することにより、クランク室内の換気を促進することと燃焼室に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることが可能となる。しかし、このように燃圧制御を実行する場合には、新たに次のような問題をまねくことが懸念される。
【0006】
すなわち、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を減少側に変更し、燃料圧力の実際値をこの変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御が行われているとき、燃料圧力の実際値の変化は燃料圧力の目標値の変化に対して応答遅れを生じるため、この応答遅れが生じている期間において、実際に得られる燃料噴射弁の噴射量の最小値は燃料圧力の目標値に基づく最小値よりも大きなものとなる。換言すると、燃料噴射弁の噴射量の最小値を十分に小さくすべく燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量を予定どおりに小さくすることのできない状況が生じるようになる。
【0007】
そして、このような状況のもとでは、例えば噴射量の実際値を燃料圧力の目標値に応じた噴射量の最小値にまで減少させる必要が生じたとしても、実際には燃料圧力の目標値に応じた噴射量の最小値よりも大きい値、すなわち燃料圧力の実際値に応じた噴射量の最小値までにしか噴射量の実際値を減少させることができないため、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離した事態をまねくようになる。
【0008】
なお、こうした問題は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を増大側に変更し、燃料圧力の実際値をこの変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う場合においても同様に生じ得るものと考えられる。またさらに、クランク室内の換気を促進させる要求に基づいて燃圧制御が実行される場合に限られず、例えば機関負荷からの要求に基づいて燃圧制御が実行される場合等、燃圧制御の実行がいずれの要求に基づくものであるにせよ、燃圧制御の実行にともない燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れが生じるときであれば、上述した問題はやはり生じるようになる。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することのできる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0011】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしている。これにより、ブローバイガスの流量が減少する分に応じてクランク室内から吸気通路に供給される燃料量も少なくなるため、燃焼室に供給される実際の燃料量を要求量に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0012】
(2)請求項2に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0013】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしている。従って、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0014】
(3)請求項3に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0015】
(4)請求項4に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0016】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、噴射制御による噴射量の要求値の減少側への変化とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項3に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項4に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0017】
(5)請求項5に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0018】
(6)請求項6に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0019】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、減速要求に基づく噴射量の要求値の設定とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項5に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項6に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0020】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載される内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最小値を下回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を減少させる前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0021】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値を低下させる前記要求を設定するものであり、前記燃圧制御は、この制御手段による要求に基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させるものであることを要旨としている。
【0022】
上記発明では、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いとき、すなわちブローバイガス中に含まれる燃料量が比較的多いことによりクランク室内の換気を促進することが要求されるとき、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値を低下させるようにしている。これにより、燃料噴射弁の噴射量の最小値がより小さいものに変更されるため、多量の燃料を含むブローバイガスが吸気通路に供給されるときにも、これに応じた分だけ燃料噴射弁の噴射量を減少させることができるようになる。従って、クランク室内の換気を促進することと燃焼室に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることができるようになる。
【0023】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0024】
上記発明では、燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の目標値に到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないおそれのあるときに限り、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かの判定を行うようにしている。従って、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因した上記問題が生じるおそれのないときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量が不要に少なくされることを的確に抑制することができるようになる。
【0025】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最小値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0026】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、噴射量の要求値とその時点での噴射量の最小値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0027】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載される内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0028】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、燃料圧力の目標値と実際値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0029】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0030】
上記発明では、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、空燃比の実際値をより的確に目標値に近づけることができるようになる。
【0031】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正することを要旨としている。
【0032】
(14)請求項14に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0033】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしている。これにより、ブローバイガスの流量が増加する分に応じてクランク室内から吸気通路に供給される燃料量も多くなるため、燃焼室に供給される実際の燃料量を要求量に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0034】
(15)請求項15に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つこの応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0035】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしている。従って、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0036】
(16)請求項16に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0037】
(17)請求項17に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0038】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、噴射制御による噴射量の要求値の増加側への変化とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項16に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項17に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0039】
(18)請求項18に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0040】
(19)請求項19に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0041】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、加速要求に基づく噴射量の要求値の設定とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項18に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項19に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0042】
(20)請求項20に記載の発明は、請求項14〜19のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最大値を上回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を増加させる前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0043】
(21)請求項21に記載の発明は、請求項14〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0044】
上記発明では、燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の目標値に到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないおそれのあるときに限り、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かの判定を行うようにしている。従って、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因した上記問題が生じるおそれのないときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量が不要に多くされることを的確に抑制することができるようになる。
【0045】
(22)請求項22に記載の発明は、請求項14〜21のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最大値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0046】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、噴射量の要求値とその時点での噴射量の最大値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0047】
(23)請求項23に記載の発明は、請求項14〜22のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0048】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、燃料圧力の目標値と実際値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0049】
(24)請求項24に記載の発明は、請求項14〜23のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0050】
上記発明では、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、空燃比の実際値をより的確に目標値に近づけることができるようになる。
【0051】
(25)請求項25に記載の発明は、請求項14〜24のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正することを要旨としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
(第1実施形態)
図1〜図9を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を車両用の筒内噴射式内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置として具体化した第1実施形態について説明する。
【0053】
図1に示すように、筒内噴射式のエンジン10は、空気及び燃料からなる混合気の燃焼を通じて動力を発生させるためのエンジン本体20と、外部の空気をエンジン本体20に取り入れるための吸気装置40と、エンジン本体20内の燃焼室31に燃料を供給するための燃料供給装置50と、エンジン本体20内のブローバイガスを吸気装置40に供給するための電子制御式のブローバイガス還元装置60と、これら装置を統括的に制御する電子制御装置70とを備えて構成されている。
【0054】
エンジン本体20は、燃焼室31にて混合気を燃焼させるためのシリンダブロック21と、このシリンダブロック21と協働してクランクシャフト26を支持するためのクランクケース22と、エンジンオイルを貯留するためのオイルパン23と、動弁系の部品を配置するためのシリンダヘッド24と、エンジンオイルの外部への飛散を抑制するためのヘッドカバー25とにより構成されている。また、シリンダブロック21及びクランクケース22により形成されるクランク室32と、シリンダヘッド24及びヘッドカバー25により形成される動弁室33とは、シリンダブロック21に形成された連通室34により接続されている。
【0055】
吸気装置40は、外気を当該装置内に取り込むためのエアインテーク41と、このエアインテーク41を介して取り込まれた空気(以下、「吸気」)中の異物を捕捉するためのエアクリーナ42と、スロットルバルブ45の開閉を通じて吸気の流量を調整するためのスロットルボディ44と、エアクリーナ42の吸気下流側とスロットルボディ44の吸気上流側とを接続するインテークホース43と、スロットルボディ44の吸気下流側とシリンダヘッド24の吸気上流側とを接続するインテークマニホールド46とにより構成されている。このインテークマニホールド46には、スロットルボディ44を通過した吸気を滞留させるためのサージタンク47と、サージタンク47内の吸気をシリンダヘッド24の各インテークポートに送り込むための複数のサブパイプ48とが設けられている。すなわち吸気装置40においては、エアインテーク41内の通路と、エアクリーナ42内の通路と、インテークホース43内の通路と、スロットルボディ44内の通路と、インテークマニホールド46内の通路とにより、吸気をエンジン本体20に送り込むための吸気通路49が形成されている。
【0056】
燃料供給装置50は、燃料を貯留する燃料タンク、及びこのタンク内の燃料を加圧して吐出する高圧ポンプ、及びこのポンプにより加圧された燃料を高圧の状態で貯留する蓄圧配管からなる供給装置本体51と、エンジン本体20に設けられて蓄圧配管からの高圧燃料を燃焼室31内に直接的に噴射するインジェクタ52とにより構成されている。
【0057】
ブローバイガス還元装置60は、燃焼室31内からクランク室32内に流れ出たブローバイガスを吸気装置40内におけるスロットルバルブ45の吸気下流側に供給する機能、及びエアクリーナ42により浄化された吸気を吸気装置40内におけるスロットルバルブ45の吸気上流側からクランク室32内に供給する機能、及びエンジン本体20内から吸気装置40内に供給されるブローバイガスの流量を調整する機能を備える装置として構成されている。
【0058】
具体的には、クランク室32内のブローバイガスを動弁室33内からサージタンク47内に送り込むための通路として、ヘッドカバー25とサージタンク47とを接続する態様で形成された第1換気通路61が設けられている。また、インテークホース43内の吸気を動弁室33内に送り込むための通路、あるいは動弁室33内からインテークホース43内にブローバイガスを送り込むための通路として、ヘッドカバー25とインテークホース43とを接続する態様で形成された第2換気通路62が設けられている。また、動弁室33内からサージタンク47内に向けて流れるブローバイガスの流量を調整するための弁として、ヘッドカバー25に設けられて第1換気通路61の通路面積を変更するPCVバルブ63が設けられている。そして、同一の機関運転条件のもとでは、PCVバルブ63の開度(以下、「PCV開度TB」)が大きくされることにより、動弁室33内からサージタンク47内に供給されるブローバイガスの流量が増大するようになる。
【0059】
ここで図2に示されるように、機関低負荷時においては、スロットルバルブ45の吸気下流側の負圧が大きいため、クランク室32内から連通室34及び動弁室33及び第1換気通路61を介してサージタンク47内にブローバイガスが流れ込むようになる。またこのとき、インテークホース43内から第2換気通路62を介して動弁室33に吸気が流れ込むようになる。
【0060】
また図3に示されるように、機関高負荷時においては、クランク室32及び動弁室33内の圧力が大きいため、クランク室32内から連通室34及び動弁室33及び第1換気通路61を介してサージタンク47内にブローバイガスが流れ込むとともに、動弁室33内から第2換気通路62を介してインテークホース43内にもブローバイガスが流れ込むようになる。
【0061】
さて、先の図1に示されるようにエンジン10においては、電子制御装置70による機関制御を補助するための各種センサとして、車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル操作量AC」)に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサ71、及びクランクシャフト26の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に応じた信号を出力するクランクポジションセンサ72、及び吸気通路49を流れる吸気の質量流量(以下、「吸気流量GA」)に応じた信号を出力するエアフロメータ73、及びスロットルバルブ45の開度(以下、「スロットル開度TA」)に応じた信号を出力するスロットルポジションセンサ74、及びエンジン本体20を冷却する機関冷却水の温度に応じた信号を出力する冷却水温度センサ75、及びインジェクタ52に供給される燃料の圧力(以下、「燃料圧力PI」)に応じた信号を出力する燃圧センサ76、及び排気中の酸素濃度に基づいて混合気の空燃比(以下、「空燃比AF」)に応じた信号を出力する空燃比センサ77が設けられている。
【0062】
電子制御装置70は、上記各センサの検出結果に基づいて運転者の要求及び機関運転状態及びを把握したうえで、吸気流量GAを調整するスロットル制御、及びインジェクタ52による燃料噴射量(以下、「噴射量QI」)を調整する噴射制御、及びインジェクタ52に供給される燃料圧力PIを調整する燃圧制御、及び混合気の空燃比AFを目標値に近づける空燃比制御、及びエンジン本体20内から吸気装置40内に供給されるブローバイガスの流量(以下、「PCV流量GB」)を目標値に近づける換気制御等の各種制御を行う。
【0063】
ここでスロットル制御においては、アクセル操作量AC及び機関回転速度NEに基づいて機関負荷の要求値を把握し、この要求値に対応する吸気流量GAを目標値として設定し、エアフロメータ73による吸気流量GAをこの目標値に近づけるべくスロットルバルブ45の開度を制御する。
【0064】
また噴射制御においては、エアフロメータ73による吸気流量GAに対して混合気の空燃比が目標値となる噴射量QIを基本噴射量として設定し、この基本噴射量に対して別途の制御を通じて設定される補正噴射量を反映させたものを噴射量QIの最終値(以下、「噴射量の要求値QIT」)として設定し、実際の噴射量QI(以下、「噴射量の実際値QIR」)をこの要求値QITにすべくインジェクタ52の開弁態様を制御する。
【0065】
また燃圧制御においては、機関負荷に基づいて目標の燃料圧力PI(以下、「燃料圧力の目標値PIT」)を設定し、燃圧センサ76による燃料圧力PI(以下、「燃料圧力の実際値PIR」)をこの目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。そして、この燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRがより低いものに変更された場合には、インジェクタ52の噴射量QIの最小値(以下、「最小噴射量QImin」)及び最大値(以下、「最大噴射量QImax」)がこれに応じてより小さな値に変更される。反対に、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRがより高いものに変更された場合には、インジェクタ52の最小噴射量QImin及び最大噴射量QImaxがこれに応じてより大きな値に変更される。
【0066】
また空燃比制御においては、目標の空燃比AF(以下、「空燃比の目標値AFT」)と空燃比センサ77による空燃比AF(以下、「空燃比の実際値AFR」)との乖離量及び乖離傾向に基づいて、空燃比の実際値AFRを目標値AFTに近づけるためのインジェクタ52の補正噴射量を設定する。
【0067】
そして換気制御においては、機関負荷及び機関回転速度NEに基づいて要求されるPCV流量GB(以下、「PCV流量の要求値GBT」)を設定し、実際のPCV流量GB(以下、「PCV流量の実際値GBR」)がこの要求値GBTに維持されると見込まれるPCV開度TBを要求値(以下、「PCV開度の要求値TBT」)として設定し、実際のPCV開度TB(以下、「PCV開度の実際値TBR」)をこの要求値TBTに維持すべくPCVバルブ63の開度を制御する。
【0068】
なお機関負荷は、例えばそのときどきにおいて燃焼室31内に供給することのできる吸気量の最大値に対する実際の吸気量の割合、あるいはインジェクタ52の噴射量QIの最大値に対する噴射量QIの実際値(噴射量QIの要求値)の割合を指標として把握することができる。
【0069】
図4を参照して、先の[発明が解決しようとする課題]の欄において述べた事項の具体的な態様、並びに本実施形態においてはこれがどのように解決されるのかについて説明する。
【0070】
ここで、図4に示される時刻t11以前において、クランク室32内の換気を促進させる要求に基づいてPCV開度TBが比較的大きなもの(PCV開度TB11)に維持されている状況を想定する。
【0071】
こうした状況のもと時刻t11において、ブローバイガスとともにエンジン本体20内から吸気装置40内に供給される燃料量が比較的多いため、これにより最小噴射量QIminをより小さいものに変更する必要がある旨判定されたとすると、すなわちインジェクタ52の開弁時間の操作だけでは対応しきれない噴射量QIの減量要求に備える必要がある旨判定されたとすると、図4(A)に示されるように、燃圧制御を通じて燃料圧力の目標値PITがそれまでの目標値PIT11よりも小さい目標値PIT12に変更されるとともに、燃料圧力の実際値PIRをこの変更後の目標値PIT12に近づけるべく高圧ポンプの吐出量が制御される。なお、ここでの燃料圧力の目標値PIT12は、インジェクタ52に対して要求される最小噴射量QIminの大きさ(以下、「最小噴射量の要求値QITmin」)に基づいて設定される。すなわち、燃料圧力の実際値PIRが目標値PIT12に維持されているときに、実際の最小噴射量QImin(以下、「最小噴射量の実際値QIRmin」)として上記最小噴射量の要求値QITminを得ることのできる値が設定される。
【0072】
ここで、燃料圧力の目標値PITの変更にともない、燃料圧力の実際値PIRを変更前の目標値PIT11から変更後の目標値PIT12に向けて低下させる燃圧制御が行われているとき(時刻t11〜時刻t14)、図4(A)に示されるように、燃料圧力の実際値PIRの変化は目標値PITの変化に対して応答遅れを生じるため、図4(B)に示されるように、この期間における最小噴射量の実際値QIRminは燃料圧力の目標値PIT12に基づく最小噴射量QIminよりも大きなものとなる。すなわち、仮に燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じることなく変化したとすると、この場合には最小噴射量QIminは図4(B)において二点鎖線で示される態様をもって変化するようになるが、実際には上記のごとく燃料圧力の応答遅れが生じるため、最小噴射量の実際値QIRminはこれ起因して一点鎖線で示される態様をもって変化するようになる。換言すると、最小噴射量QIminを十分に小さくする意図のもとに燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して最小噴射量の実際値QIRminを予定どおりに小さくすることのできない状況、すなわち燃料圧力の目標値PITを変更したとおりに小さくすることのできない状況が生じるようになる。
【0073】
そしてこのような状況のもと、各センサからの検出結果に基づいて、機関負荷を低下させる要求すなわち機関回転速度NEに対する減速要求がある旨判定されたとすると、図4(B)において破線にて示されるように、機関負荷の要求値に応じて噴射量の要求値QITがより小さい値に変更されるようになる。このとき、噴射量の要求値QITが最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)よりも大きい場合には、図4(B)において実線にて示されるように、噴射量の実際値QIRとして要求値QITと同一のものが維持されるようになる。しかし、噴射量の要求値QITが燃料圧力の実際値PIRに基づく最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)を下回った場合には(時刻t12〜時刻t13)、そのような噴射量の要求がなされているとはいえ、噴射量の実際値QIRは燃料圧力の実際値PIRに基づく最小噴射量の実際値QIRminまでにしか減少させることができないため、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じることにより、燃焼室31内に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離する事態をまねくようになる。
【0074】
本実施形態のブローバイガス還元装置60では、以上の事項に鑑み、燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、この応答遅れに起因して噴射量の要求値QIT(図4(B)の破線)がその時点における最小噴射量の実際値QIRmin(図4(B)の一点鎖線)を下回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITを上回るときには、図4(D)に示されるようにPCVバルブ63を閉弁側に操作し、これによってPCV流量GBを減少させるようにしている。
【0075】
より具体的には、燃料圧力の実際値PIRを目標値PITに向けて低下させる燃圧制御が実行されているとき、且つこの制御により燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、機関負荷の要求に基づく噴射量の要求値QITの減少、及び燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して、同要求値QITがその時点における最小噴射量の実際値QIRminを下回ることにより、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じると推定されるとき、すなわち噴射量の実際値QIRが噴射量の要求値QITを上回ると推定されるときには、この乖離する分をPCVバルブ63の操作に基づくPCV流量GBの減量により補償するようにしている。
【0076】
これにより、噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものにならないとはいえ、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値、すなわちインジェクタ52による供給燃料とブローバイガスによる供給燃料とを合わせたものは、上記PCVバルブ63の操作を実行しない場合と比較して燃焼室31内への供給燃料量の要求値により近いものとなり、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値が要求値から過度に乖離することは抑制されるようになる。また当該エンジン10のように空燃比制御を実行するものにおいて、上記噴射量の要求値QITと実際値QIRとの乖離が生じた場合には、これに起因して、図4(C)に示されるように空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリッチ化した状態をまねくようになるものの(破線)、上記PCVバルブ63の操作を実行することによりこうした過度のリッチ化が生じることも抑制されるようになる(実線)。
【0077】
図5〜図9を参照して、電子制御装置70による上記制御の具体的な態様について説明する。なお、図5の「燃料圧力変更処理」は燃圧制御の一つとして実行される処理の流れを示すものであり、また図6の「PCV開度変更処理」は換気制御の一つとして実行される処理の流れを示すものであり、また図8及び図9の「PCV開度補正処理」は「PCV開度変更処理」の一部として実行される処理の流れを示すものである。また、これら「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」は、それぞれに対して予め設定された所定の周期毎に電子制御装置70を通じて繰り返し実行される。
【0078】
図5に示すように、「燃料圧力変更処理」ではまずステップS110において、燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求があるか否かを判定する。ここで同要求は、別途の処理を通じて設定されるものであって、オイルパン23内のエンジンオイルの燃料希釈率が判定希釈率よりも高いこと、及びエンジンオイルからの希釈燃料の蒸発が生じていることを条件に設定される。すなわち、これら条件が満たされるときには、ブローバイガス中に比較的多くの燃料が含まれていることにより、クランク室32内の換気をより促進させること、さらにはインジェクタ52の最小噴射量QIminをより小さいものに変更することが要求されるため、上記別途の処理ではこれを実現すべく、上述した条件の成立に基づいて燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求を設定するようにしている。
【0079】
ステップS110の判定処理において、燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求がある旨判定したとき、ステップS120においてその時点での燃料圧力の目標値PITよりも小さいものを新たな目標値PITとして設定する。この新たな目標値PITは、燃料圧力の実際値PIRが同目標値PITに維持されているときに最小噴射量の実際値QIRminとして要求値QITminが得られるように設定される。また、最小噴射量の要求値QITminは、PCV流量GB及び燃料希釈率に基づいて、すなわちブローバイガスとともに吸気装置40内に供給される燃料量と相関を有するパラメータに基づいて算出される。
【0080】
そして次のステップS130においては、燃料圧力の実際値PIRを変更後の目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。一方、ステップS110の判定処理において燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求がない旨判定したときには、ステップS140において燃料圧力の実際値PIRをその時点での目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。なお、ステップS140の処理を行う場合において、別途の処理により燃料圧力の目標値PITの変更が行われたときには、それに応じた燃料圧力の実際値PIRの変更が許容される。
【0081】
図6に示すように、「PCV開度変更処理」ではまずステップS210において、機関負荷及び機関回転速度NEに基づいてPCV開度TBの基本値を設定する。具体的には、電子制御装置70に予め記憶されているマップであってPCV流量の要求値GBTを算出するためのマップについて、これにそのときの機関負荷及び機関回転速度NEを適用し、その時点での機関運転状態に応じたPCV流量GB(PCV流量の要求値GBT)を算出する。そして、スロットル開度TA及び機関回転速度NEに基づいて、すなわちPCV流量GBに影響を及ぼすパラメータに基づいて、PCV流量の実際値GBRを上記算出した要求値GBTとするために必要となるPCV開度TBを算出し、これをPCV開度TBの基本値として設定する。
【0082】
ここで、PCV流量の要求値GBTを算出するための上記マップは、例えば図7に示す態様をもって構成することができる。このマップにおいては、機関負荷及び機関回転速度NEの一つの組み合わせに対して一つの要求値GBTが設定されており、エンジン10の全運転領域(破線内)において機関負荷及び機関回転速度NEの各組み合わせに対応する要求値GBTが設定されている。また、曲線GBT1〜曲線GBT5はそれぞれPCV流量の要求値GBTが同一であることを示すものであり、これら曲線同士の間における要求値GBTの大きさの関係は、以下の式(1)のように設定されている。
【0083】
GBT1>GBT2>GBT3>GBT4>GBT5 … (1)
さらに、PCV流量の要求値GBTが互いに異なる一の曲線と他の曲線との間(例えば曲線GBT1と曲線GBT2との間)において、PCV流量の要求値GBTは、要求値GBTの大きい曲線(曲線GBT1)から要求値GBTの小さい曲線(曲線GBT2)に向かうにつれて次第に小さくなる態様で設定されている。なお、この設定態様に代えて、例えばPCV流量の要求値GBTが互いに同一または異なる一の曲線と他の曲線との間において、要求値GBTをこれら曲線のいずれか一方の値に統一することもできる。
【0084】
またさらに、図7に示すマップにおいて機関負荷及び機関回転速度NEとPCV流量の要求値GBTとの関係は次のように設定されている。すなわち、機関負荷が中負荷領域にあるときに要求値GBTは最も大きく設定され、機関負荷がこの領域から高負荷領域に移行するにつれて要求値GBTは次第に小さくなり、最も高負荷側の領域において最小となるように設定されている。また、機関負荷が中負荷領域から低負荷領域に移行するにつれて要求値GBTは次第に小さくなり、低負荷領域のうちの高回転低負荷領域では他の低負荷領域よりも要求値GBTが小さく設定されている。
【0085】
さて、図6に示されるステップS210において上記マップからPCV流量の要求値GBTを算出した後、次のステップS220においては、「PCV開度補正処理(図8及び図9)」の実行条件が成立しているか否かを判定する。ここでは、先の「燃料圧力変更処理(図5)」により燃料圧力の実際値PIRを低下させる燃圧制御が実行されている最中であることをもって上記実行条件が成立している旨判定するようにしている。また、先に述べた燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れは、通常であれば上記燃圧制御を実行しているときに限って生じるものであるため、それ以外のときには、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値と要求値とが過度に乖離した状態をまねくことはないと予測される。すなわち、「PCV開度補正処理」を実行しなくとも格別の問題が生じることはないと予測される。そこでステップS220の判定処理では、「PCV開度補正処理」が不要に実行されることを回避する意図のもと、上記実行条件の成否を判定するようにしている。なお、こうした制御態様に代えて、上記燃圧制御が実行されているか否かにかかわらず「PCV開度変更処理」において常に「PCV開度補正処理」を実行することもできる。
【0086】
ステップS220の判定処理により上記実行条件が成立している旨判定したとき、ステップS230において「PCV開度補正処理」を実行し、先のステップS210によるPCV開度TBの基本値を補正したものをPCV開度の要求値TBTとして設定する。一方、ステップS220の判定処理により上記実行条件が成立していない旨判定したときには、ステップS240において、PCV開度TBの基本値をPCV開度の要求値TBTとして設定する。そして、これらステップS230またはS240のいずれかの処理を経た後、PCV開度の実際値TBRを要求値TBTに維持すべくPCVバルブ63の制御を実行する。
【0087】
図8及び図9に示すように、「PCV開度補正処理」ではまずステップS310において、エンジンオイルの燃料希釈率が基準希釈率よりも大きいか否かを判定する。ここで、燃料希釈率が小さい場合には、ブローバイガスの供給にともないインジェクタ52に対して要求される噴射量QIの減少量も小さくなるため、こうした状況においては、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値と要求値とが過度に乖離した状態をまねくことはないと予測される。すなわち、以降の処理を通じてPCV開度TBの補正を実行しなくとも格別の問題が生じることはないと予測される。そこでステップS310の判定処理では、PCV開度TBの補正が不要に実行されることを回避する意図のもと、PCV開度TBの補正の必要性を燃料希釈率に基づいて判定するようにしている。すなわち上記基準希釈率は、燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れが生じているときにおいて、燃料希釈率が大きいことにともなうインジェクタ52の噴射量QIの減少量が許容範囲を超えるか否かを判定するための値として予め設定される。
【0088】
ステップS310の判定処理において、燃料希釈率が基準希釈率よりも大きい旨判定したとき、ステップS320〜S350を通じて、PCV開度TBの補正を行う必要があることを示す開度補正フラグについて、これをオンとオフとの間で切り替える処理を行う。
【0089】
具体的には、ステップS320において噴射量の要求値QITが復帰噴射量QIHよりも大きいか否かを判定し、大きい旨判定したときにはオンに設定されている開度補正フラグをオフに設定する。また、開度補正フラグがすでにオフに設定されているときにはその状態を維持する。なお、上記復帰噴射量QIHは開度補正フラグのオン及びオフの操作に対してヒステリシス特性をもたせるためのものであって、具体的にはその時点での最小噴射量QImin(最小噴射量の実際値QIRmin)に所定値を加えた値、すなわち最小噴射量の実際値QIRminよりも所定値だけ大きい値として算出される。
【0090】
次のステップS330においては、噴射制御により設定された噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QImin(最小噴射量の実際値QIRmin)よりも小さいか否かを判定し、小さい旨判定したときには開度補正フラグをオンに設定する。ここで、最小噴射量の実際値QIRminはそのときどきの燃圧センサ76の検出値に基づいて、すなわち燃料圧力の実際値PIRに基づいて算出される。
【0091】
次のステップS340においては、開度補正フラグをオンに設定しているか否かを判定し、この判定結果に応じてPCV開度TBの基本値に対する補正値の設定態様を選択する。すなわち、開度補正フラグをオンに設定している旨判定したときには、ステップS370において、PCV開度TBの補正値としてPCV開度TBの基本値を減少させる値を設定する。ここでは、PCV開度TBの補正値として予め設定された固定値が用いられる。一方で、開度補正フラグをオフに設定している旨判定したときには、ステップS380において、PCV開度TBの補正値としてPCV開度TBの基本値を変化させない値すなわち「0」を設定する。
【0092】
そして、これらステップS370またはS380のいずれかの処理を経た後、ステップS390においてPCV開度TBの基本値に補正値を反映させたものをPCV開度の要求値TBTとして設定し、図6の「PCV開度変更処理」のステップS250に移行する。
【0093】
[実施形態の効果]
以上詳述したように、本実施形態の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置によれば以下に示す効果が得られるようになる。
【0094】
(1)本実施形態では、燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れ及び噴射量の要求値QITの減少側への変更に起因して、噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QIminを下回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものとはならないことに起因して、燃焼室31内への供給燃料量の実際値が要求値を大きく上回るおそれのあるときに、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させるようにしている。これにより、PCV流量GBが減少する分に応じてクランク室32内からサージタンク47内に供給される燃料量も少なくなるため、燃焼室31内への供給燃料量の実際値を要求値に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して同供給燃料量の実際値と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。またこれに併せて、空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリッチ化することを抑制することができるようにもなる。
【0095】
(2)本実施形態では、エンジンオイルの燃料希釈率が判定希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求を設定し、燃料圧力の実際値PIRをこの要求に基づいて変更された新たな目標値PITに向けて低下させるようにしている。すなわち、ブローバイガス中に含まれる燃料量が比較的多いことによりクランク室32内の換気を促進することが要求されるとき、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRを低下させるようにしている。これにより、インジェクタ52の最小噴射量QIminがより小さいものに変更されるため、多量の燃料を含むブローバイガスがサージタンク47内に供給されるときにも、これに応じた分だけインジェクタ52の噴射量QIを減少させることができるようになる。従って、クランク室32内の換気を促進することと燃焼室31内に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることができるようになる。
【0096】
[実施形態の変形例]
上記実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記実施形態においては、PCV開度TBの補正値として予め設定された固定値を用いるようにしているが、噴射量の要求値QITと最小噴射量の実際値QIRminとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(B)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの噴射量の要求値QIT(破線)と最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0097】
・また、上記補正値の別の設定態様として、燃料圧力の目標値PITと実際値PIRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(A)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの燃料圧力の目標値PIT(破線)と実際値PIR(実線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合にも、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0098】
・またさらに、上記補正値の別の設定態様として、空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(C)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの差であってリッチ側においての差が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、空燃比の実際値AFRをより的確に目標値AFTに近づけることができるようになる。
【0099】
・上記実施形態の「PCV開度変更処理(図6)」及び「PCV開度補正処理(図8及び図9)」によるPCVバルブ63の制御態様を次のように変更することもできる。すなわち、燃圧制御により燃料圧力の目標値PITの変更が行われた後、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達した旨判定するまでの間に限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいてPCVバルブ63の操作を行うこともできる。なお、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達したか否かについては、例えば燃圧センサ76の検出値と目標値PITとの対比に基づいて判定することができる。
【0100】
この変形例では、燃料圧力の目標値PITの変更が行われてから実際値PIRが変更後の目標値PITに到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れに起因して噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものとはならないおそれのあるときに限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させる必要があるか否かの判定を行うようにしているため、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因した先の問題が生じるおそれのないときに、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBが不要に少なくされることを的確に抑制することができるようになる。
【0101】
(第2実施形態)
図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の電子制御式ブローバイガス還元装置は、前記第1実施形態の装置に対して、以下の趣旨でその制御態様に変更を加えたものとして構成されている。
【0102】
すなわち第1実施形態では、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRが低下する状況において、この実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値が要求値から過度に乖離した事態が生じる場合を想定したが、こうした供給燃料量の実際値と要求値との乖離は、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRが新たな目標値PITに向けて増大される場合においても同様に生じ得るものである。そこで、本実施形態では後者の課題を解決することをそのねらいとして、燃料圧力の実際値PIRを増大させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最大噴射量QImaxを上回るときにPCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを増大させるようにしている。
【0103】
ここで、図10に示される時刻t21以前において、クランク室32内の換気を促進させる要求に基づいてPCV開度TBが比較的大きなもの(PCV開度TB21)に維持されている状況を想定する。
【0104】
こうした状況のもと時刻t21において、クランク室32内の換気が十分になされたことによりインジェクタ52の最小噴射量QImin及び最大噴射量QImaxを通常の値に復帰させる必要がある旨判定されたとすると、図10(A)に示されるように、燃圧制御を通じて燃料圧力の目標値PITがそれまでの目標値PIT21よりも大きい目標値PIT22に変更されるとともに、燃料圧力の実際値PIRをこの変更後の目標値PIT22に近づけるべく高圧ポンプの吐出量が制御される。
【0105】
ここで、燃料圧力の目標値PITの変更にともない、燃料圧力の実際値PIRを変更前の目標値PIT21から変更後の目標値PIT22に向けて増大させる燃圧制御が行われているとき(時刻t21〜時刻t24)、図10(A)に示されるように、燃料圧力の実際値PIRの変化は目標値PITの変化に対して応答遅れを生じるため、図10(B)に示されるように、この期間における実際の最大噴射量QImax(以下、「最大噴射量の実際値QIRmax」)は燃料圧力の目標値PIT22に基づく最大噴射量QImaxよりも小さなものとなる。すなわち、仮に燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じることなく変化したとすると、この場合には最大噴射量QImaxは図10(B)において二点鎖線で示される態様をもって変化するようになるが、実際には上記のごとく燃料圧力の応答遅れが生じるため、最大噴射量の実際値QIRmaxはこれ起因して一点鎖線で示される態様をもって変化するようになる。換言すると、最大噴射量QImaxを十分に大きくする意図のもとに燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して最大噴射量の実際値QIRmaxを予定どおりに大きくすることのできない状況、すなわち燃料圧力の目標値PITを変更したとおりに大きくすることのできない状況が生じるようになる。
【0106】
そしてこのような状況のもと、各センサからの検出結果に基づいて、機関負荷を増大させる要求すなわち機関回転速度NEに対する加速要求がある旨判定されたとすると、図10(B)において破線にて示されるように、機関負荷の要求値に応じて噴射量の要求値QITがより大きい値に変更されるようになる。このとき、噴射量の要求値QITが最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)よりも小さい場合には、図10(B)において実線にて示されるように、噴射量の実際値QIRとして要求値QITと同一のものが維持されるようになる。しかし、噴射量の要求値QITが燃料圧力の実際値PIRに基づく最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)を上回った場合には(時刻t22〜時刻t23)、そのような噴射量の要求がなされているとはいえ、噴射量の実際値QIRは燃料圧力の実際値PIRに基づく最大噴射量の実際値QIRmaxにまでしか増加させることができないため、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じることにより、燃焼室31内に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離する事態をまねくようになる。
【0107】
本実施形態のブローバイガス還元装置60では、以上の事項に鑑み、燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、この応答遅れに起因して噴射量の要求値QIT(図10(B)の破線)がその時点における最大噴射量の実際値QIRmax(図10(B)の一点鎖線)を上回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITを下回るときには、図10(D)に示されるようにPCVバルブ63を開弁側に操作し、これによってPCV流量GBを増加させるようにしている。
【0108】
より具体的には、燃料圧力の実際値PIRを目標値PITに向けて増大させる燃圧制御が実行されているとき、且つこの制御により燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、機関負荷の要求に基づく噴射量の要求値QITの増加、及び燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して、同要求値QITがその時点における最大噴射量の実際値QIRmaxを上回ることにより、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じると推定されるとき、すなわち噴射量の実際値QIRが噴射量の要求値QITを下回ると推定されるときには、この乖離する分をPCVバルブ63の操作に基づくPCV流量GBの増量により補償するようにしている。
【0109】
これにより、噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものにならないとはいえ、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値、すなわちインジェクタ52による供給燃料とブローバイガスによる供給燃料とを合わせたものは、上記PCVバルブ63の操作を実行しない場合と比較して燃焼室31内への供給燃料量の要求値により近いものとなり、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値が要求値から過度に乖離することは抑制されるようになる。また当該エンジン10のように空燃比制御を実行するものにおいて、上記噴射量の要求値QITと実際値QIRとの乖離が生じた場合には、これに起因して、図10(C)に示されるように空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリーン化した状態をまねくようになるものの(破線)、上記PCVバルブ63の操作を実行することによりこうした過度のリーン化が生じることも抑制されるようになる(実線)。
【0110】
なお、電子制御装置70による上記制御の具体的な処理手順は、先の第1実施形態の「燃料圧力変更処理(図5)」及び「PCV開度変更処理(図6)」及び「PCV開度補正処理(図8及び図9)」について、これを以上にて説明した事項に適合させたものに相当する。
【0111】
[実施形態の効果]
以上詳述したように、本実施形態の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置によれば、先の第1実施形態による(1)及び(2)の効果に準じた効果が得られるようになる。
【0112】
[実施形態の変形例]
上記実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記実施形態において、噴射量の要求値QITと最大噴射量の実際値QIRmaxとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(B)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの噴射量の要求値QIT(破線)と最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0113】
・また、上記補正値の別の設定態様として、燃料圧力の目標値PITと実際値PIRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(A)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの燃料圧力の目標値PIT(破線)と実際値PIR(実線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合にも、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0114】
・またさらに、上記補正値の別の設定態様として、空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(C)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの差であってリーン側においての差が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、空燃比の実際値AFRをより的確に目標値AFTに近づけることができるようになる。
【0115】
・上記実施形態によるPCVバルブ63の制御態様として、次のものを採用することもできる。すなわち、燃圧制御により燃料圧力の目標値PITの変更が行われた後、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達した旨判定するまでの間に限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを増大させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいてPCVバルブ63の操作を行うこともできる。
【0116】
(その他の実施形態)
その他、上記各実施形態に共通して変更することのできる形態を以下に示す。
・上記第1実施形態による「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」及び「PCV開度補正処理」と、上記第2実施形態による「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」及び「PCV開度補正処理」とを併せて実行することもできる。すなわち、燃料圧力の実際値PIRを低下させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QIminを下回るときにPCVバルブ63を閉弁側に操作する第1実施形態の処理と、燃料圧力の実際値PIRを増大させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最大噴射量QImaxを上回るときにPCVバルブ63を開弁側に操作する第2実施形態の処理とを併せて実行することもできる。
【0117】
・上記各実施形態では、クランク室32内の換気に対する要求に基づいて、燃料圧力の実際値PIRを低下または増大させる要求を設定するようにしたが、この実際値PIRを低下または増大させる要求は例えば機関負荷に対する要求等、その他の条件に基づいて設定することもできる。要するに、いずれの要求に基づいて燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの変更が行われる場合であれ、上記各実施形態に準じた態様をもってPCVバルブ63の制御を行うことにより、各実施形態に準じた作用効果を奏することはできる。
【0118】
・上記各実施形態では筒内噴射式のエンジンを想定したが、インジェクタに供給される燃料圧力の実際値を低下または増大させる要求があることに基づいて同実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて変更する燃圧制御について、これを行うものであればいずれ形式のエンジンに対しても本発明を適用することはできる。また、ブローバイガス還元装置としても、電子制御式のPCVバルブを備えるものであればその他の具体的な構造は上記実施形態にて例示した構造に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を具体化した第1実施形態について、このブローバイガス還元装置を備える筒内噴射式内燃機関の構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の筒内噴射式内燃機関について、機関低負荷時におけるブローバイガス及び吸気の流れの態様を示す模式図。
【図3】同実施形態の筒内噴射式内燃機関について、機関高負荷時におけるブローバイガス及び吸気の流れの態様を示す模式図。
【図4】同実施形態の噴射制御及び燃圧制御及び換気制御にともなう(A)燃料圧力及び(B)噴射量及び(C)空燃比及び(D)PCV開度のそれぞれの変化態様を示すタイミングチャート。
【図5】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「燃料圧力変更処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度変更処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理において用いられるPCV流量要求値の演算マップ。
【図8】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理手順の前半部分を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理手順の後半部分を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を具体化した第2実施形態について、同実施形態の噴射制御及び燃圧制御及び換気制御にともなう(A)燃料圧力及び(B)噴射量及び(C)空燃比及び(D)PCV開度のそれぞれの変化態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0120】
10…エンジン、20…エンジン本体、21…シリンダブロック、22…クランクケース、23…オイルパン、24…シリンダヘッド、25…ヘッドカバー、26…クランクシャフト、31…燃焼室、32…クランク室、33…動弁室、34…連通室、40…吸気装置、41…エアインテーク、42…エアクリーナ、43…インテークホース、44…スロットルボディ、45…スロットルバルブ、46…インテークマニホールド、47…サージタンク、48…サブパイプ、49…吸気通路、50…燃料供給装置、51…供給装置本体、52…インジェクタ、60…ブローバイガス還元装置、61…第1換気通路、62…第2換気通路、63…PCVバルブ、70…電子制御装置、71…アクセルポジションセンサ、72…クランクポジションセンサ、73…エアフロメータ、74…スロットルポジションセンサ、75…冷却水温度センサ、76…燃圧センサ、77…空燃比センサ。
【技術分野】
【0001】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて変更する燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブローバイガス還元装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のものを含めて、電子制御式ブローバイガス還元装置は一般に、吸気通路のスロットルバルブの吸気下流側とクランク室内とを接続してクランク室内のブローバイガスを吸気通路に供給する第1の換気通路と、吸気通路のスロットルバルブの吸気上流側とクランク室内とを接続して吸入空気をクランク室内に供給する第2の換気通路と、第1の換気通路に設けられてその通路面積を変更する電子制御式の換気弁とにより構成されている。そして、内燃機関の運転中においては、機関運転状態に基づいてブローバイガスの流量の要求値が設定され、実際のブローバイガスの流量がこの要求値となるように換気弁の開度の操作が行われる。
【特許文献1】特開2005−42575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記ブローバイガス還元装置を備えた内燃機関において、クランク室内の換気を促進させる要求があるときには、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増大させることによりその要求に応じることは可能となる。しかし、ブローバイガス中に含まれる燃料量が多いときには、ブローバイガスの流量の増大にともない燃焼室に供給される燃料量の増加分もそれに応じて大きくなり、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量に対して過度に多いものとなるため、このような場合には換気弁の操作に併せて燃料噴射弁の噴射量を減少させることが必要となる。
【0004】
ここで、燃料噴射弁の噴射量を減少させることにより、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量から過度に乖離したものとなることを抑制することが一応は可能になるものの、ブローバイガス中に含まれる燃料量が著しく多いときには、これに応じて燃料噴射弁に対して要求される噴射量の減少量も多くなるため、燃料噴射弁の開弁時間の操作だけではそうした減少量の要求に応じることが困難となる。
【0005】
そこで、例えばブローバイガス中に含まれる燃料量が多いと推定されるときには、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を低下させる燃圧制御を実行し、燃料噴射弁の噴射量の最小値をより小さいものに変更することによって、上記減少量の要求に応じることが考えられる。すなわち、換気弁の操作に併せて燃圧制御を実行することにより、クランク室内の換気を促進することと燃焼室に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることが可能となる。しかし、このように燃圧制御を実行する場合には、新たに次のような問題をまねくことが懸念される。
【0006】
すなわち、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を減少側に変更し、燃料圧力の実際値をこの変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御が行われているとき、燃料圧力の実際値の変化は燃料圧力の目標値の変化に対して応答遅れを生じるため、この応答遅れが生じている期間において、実際に得られる燃料噴射弁の噴射量の最小値は燃料圧力の目標値に基づく最小値よりも大きなものとなる。換言すると、燃料噴射弁の噴射量の最小値を十分に小さくすべく燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量を予定どおりに小さくすることのできない状況が生じるようになる。
【0007】
そして、このような状況のもとでは、例えば噴射量の実際値を燃料圧力の目標値に応じた噴射量の最小値にまで減少させる必要が生じたとしても、実際には燃料圧力の目標値に応じた噴射量の最小値よりも大きい値、すなわち燃料圧力の実際値に応じた噴射量の最小値までにしか噴射量の実際値を減少させることができないため、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離した事態をまねくようになる。
【0008】
なお、こうした問題は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を増大側に変更し、燃料圧力の実際値をこの変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う場合においても同様に生じ得るものと考えられる。またさらに、クランク室内の換気を促進させる要求に基づいて燃圧制御が実行される場合に限られず、例えば機関負荷からの要求に基づいて燃圧制御が実行される場合等、燃圧制御の実行がいずれの要求に基づくものであるにせよ、燃圧制御の実行にともない燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れが生じるときであれば、上述した問題はやはり生じるようになる。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することのできる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0011】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしている。これにより、ブローバイガスの流量が減少する分に応じてクランク室内から吸気通路に供給される燃料量も少なくなるため、燃焼室に供給される実際の燃料量を要求量に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0012】
(2)請求項2に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0013】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしている。従って、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0014】
(3)請求項3に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0015】
(4)請求項4に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0016】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、噴射制御による噴射量の要求値の減少側への変化とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項3に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項4に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0017】
(5)請求項5に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0018】
(6)請求項6に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0019】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、減速要求に基づく噴射量の要求値の設定とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく上回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項5に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最小値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項6に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0020】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載される内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最小値を下回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を減少させる前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0021】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値を低下させる前記要求を設定するものであり、前記燃圧制御は、この制御手段による要求に基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させるものであることを要旨としている。
【0022】
上記発明では、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いとき、すなわちブローバイガス中に含まれる燃料量が比較的多いことによりクランク室内の換気を促進することが要求されるとき、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値を低下させるようにしている。これにより、燃料噴射弁の噴射量の最小値がより小さいものに変更されるため、多量の燃料を含むブローバイガスが吸気通路に供給されるときにも、これに応じた分だけ燃料噴射弁の噴射量を減少させることができるようになる。従って、クランク室内の換気を促進することと燃焼室に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることができるようになる。
【0023】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0024】
上記発明では、燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の目標値に到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないおそれのあるときに限り、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かの判定を行うようにしている。従って、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因した上記問題が生じるおそれのないときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量が不要に少なくされることを的確に抑制することができるようになる。
【0025】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最小値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0026】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、噴射量の要求値とその時点での噴射量の最小値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0027】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載される内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0028】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、燃料圧力の目標値と実際値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0029】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0030】
上記発明では、ブローバイガスの流量の減少させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、空燃比の実際値をより的確に目標値に近づけることができるようになる。
【0031】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正することを要旨としている。
【0032】
(14)請求項14に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0033】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしている。これにより、ブローバイガスの流量が増加する分に応じてクランク室内から吸気通路に供給される燃料量も多くなるため、燃焼室に供給される実際の燃料量を要求量に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0034】
(15)請求項15に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つこの応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0035】
上記発明では、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して燃料噴射弁の噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るとき、すなわち燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回るおそれのあるときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしている。従って、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0036】
(16)請求項16に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0037】
(17)請求項17に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0038】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、噴射制御による噴射量の要求値の増加側への変化とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項16に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項17に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0039】
(18)請求項18に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0040】
(19)請求項19に記載の発明は、燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備えることを要旨としている。
【0041】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れと、加速要求に基づく噴射量の要求値の設定とが併せて生じるときには、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないことに起因して、燃焼室に供給される実際の燃料量が要求量を大きく下回る状況をまねく可能性はより一層高められるようになる。こうした事項に鑑み、請求項18に記載の発明では、噴射量の要求値がその時点における噴射量の最大値を上回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。また請求項19に記載の発明では、噴射量の実際値が噴射量の要求値を下回るときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させるようにしているため、燃料圧力の変更に起因して燃焼室に供給される実際の燃料量と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。
【0042】
(20)請求項20に記載の発明は、請求項14〜19のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最大値を上回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を増加させる前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0043】
(21)請求項21に記載の発明は、請求項14〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行うことを要旨としている。
【0044】
上記発明では、燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の目標値に到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値どおりのものとはならないおそれのあるときに限り、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かの判定を行うようにしている。従って、燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因した上記問題が生じるおそれのないときに、換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量が不要に多くされることを的確に抑制することができるようになる。
【0045】
(22)請求項22に記載の発明は、請求項14〜21のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最大値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0046】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、噴射量の要求値とその時点での噴射量の最大値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0047】
(23)請求項23に記載の発明は、請求項14〜22のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0048】
燃料圧力の目標値に対する実際値の応答遅れに起因して、燃料噴射弁の噴射量の実際値が要求値から乖離する量は、燃料圧力の目標値と実際値との乖離度合に応じたものとなる。上記発明ではこの点に鑑み、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、燃焼室に供給される実際の燃料量をより的確に要求量に近づけることができるようになる。
【0049】
(24)請求項24に記載の発明は、請求項14〜23のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定することを要旨としている。
【0050】
上記発明では、ブローバイガスの流量の増加させる際の換気弁の操作量を上記乖離度合に基づいて設定するようにしているため、空燃比の実際値をより的確に目標値に近づけることができるようになる。
【0051】
(25)請求項25に記載の発明は、請求項14〜24のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正することを要旨としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
(第1実施形態)
図1〜図9を参照して、本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を車両用の筒内噴射式内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置として具体化した第1実施形態について説明する。
【0053】
図1に示すように、筒内噴射式のエンジン10は、空気及び燃料からなる混合気の燃焼を通じて動力を発生させるためのエンジン本体20と、外部の空気をエンジン本体20に取り入れるための吸気装置40と、エンジン本体20内の燃焼室31に燃料を供給するための燃料供給装置50と、エンジン本体20内のブローバイガスを吸気装置40に供給するための電子制御式のブローバイガス還元装置60と、これら装置を統括的に制御する電子制御装置70とを備えて構成されている。
【0054】
エンジン本体20は、燃焼室31にて混合気を燃焼させるためのシリンダブロック21と、このシリンダブロック21と協働してクランクシャフト26を支持するためのクランクケース22と、エンジンオイルを貯留するためのオイルパン23と、動弁系の部品を配置するためのシリンダヘッド24と、エンジンオイルの外部への飛散を抑制するためのヘッドカバー25とにより構成されている。また、シリンダブロック21及びクランクケース22により形成されるクランク室32と、シリンダヘッド24及びヘッドカバー25により形成される動弁室33とは、シリンダブロック21に形成された連通室34により接続されている。
【0055】
吸気装置40は、外気を当該装置内に取り込むためのエアインテーク41と、このエアインテーク41を介して取り込まれた空気(以下、「吸気」)中の異物を捕捉するためのエアクリーナ42と、スロットルバルブ45の開閉を通じて吸気の流量を調整するためのスロットルボディ44と、エアクリーナ42の吸気下流側とスロットルボディ44の吸気上流側とを接続するインテークホース43と、スロットルボディ44の吸気下流側とシリンダヘッド24の吸気上流側とを接続するインテークマニホールド46とにより構成されている。このインテークマニホールド46には、スロットルボディ44を通過した吸気を滞留させるためのサージタンク47と、サージタンク47内の吸気をシリンダヘッド24の各インテークポートに送り込むための複数のサブパイプ48とが設けられている。すなわち吸気装置40においては、エアインテーク41内の通路と、エアクリーナ42内の通路と、インテークホース43内の通路と、スロットルボディ44内の通路と、インテークマニホールド46内の通路とにより、吸気をエンジン本体20に送り込むための吸気通路49が形成されている。
【0056】
燃料供給装置50は、燃料を貯留する燃料タンク、及びこのタンク内の燃料を加圧して吐出する高圧ポンプ、及びこのポンプにより加圧された燃料を高圧の状態で貯留する蓄圧配管からなる供給装置本体51と、エンジン本体20に設けられて蓄圧配管からの高圧燃料を燃焼室31内に直接的に噴射するインジェクタ52とにより構成されている。
【0057】
ブローバイガス還元装置60は、燃焼室31内からクランク室32内に流れ出たブローバイガスを吸気装置40内におけるスロットルバルブ45の吸気下流側に供給する機能、及びエアクリーナ42により浄化された吸気を吸気装置40内におけるスロットルバルブ45の吸気上流側からクランク室32内に供給する機能、及びエンジン本体20内から吸気装置40内に供給されるブローバイガスの流量を調整する機能を備える装置として構成されている。
【0058】
具体的には、クランク室32内のブローバイガスを動弁室33内からサージタンク47内に送り込むための通路として、ヘッドカバー25とサージタンク47とを接続する態様で形成された第1換気通路61が設けられている。また、インテークホース43内の吸気を動弁室33内に送り込むための通路、あるいは動弁室33内からインテークホース43内にブローバイガスを送り込むための通路として、ヘッドカバー25とインテークホース43とを接続する態様で形成された第2換気通路62が設けられている。また、動弁室33内からサージタンク47内に向けて流れるブローバイガスの流量を調整するための弁として、ヘッドカバー25に設けられて第1換気通路61の通路面積を変更するPCVバルブ63が設けられている。そして、同一の機関運転条件のもとでは、PCVバルブ63の開度(以下、「PCV開度TB」)が大きくされることにより、動弁室33内からサージタンク47内に供給されるブローバイガスの流量が増大するようになる。
【0059】
ここで図2に示されるように、機関低負荷時においては、スロットルバルブ45の吸気下流側の負圧が大きいため、クランク室32内から連通室34及び動弁室33及び第1換気通路61を介してサージタンク47内にブローバイガスが流れ込むようになる。またこのとき、インテークホース43内から第2換気通路62を介して動弁室33に吸気が流れ込むようになる。
【0060】
また図3に示されるように、機関高負荷時においては、クランク室32及び動弁室33内の圧力が大きいため、クランク室32内から連通室34及び動弁室33及び第1換気通路61を介してサージタンク47内にブローバイガスが流れ込むとともに、動弁室33内から第2換気通路62を介してインテークホース43内にもブローバイガスが流れ込むようになる。
【0061】
さて、先の図1に示されるようにエンジン10においては、電子制御装置70による機関制御を補助するための各種センサとして、車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル操作量AC」)に応じた信号を出力するアクセルポジションセンサ71、及びクランクシャフト26の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に応じた信号を出力するクランクポジションセンサ72、及び吸気通路49を流れる吸気の質量流量(以下、「吸気流量GA」)に応じた信号を出力するエアフロメータ73、及びスロットルバルブ45の開度(以下、「スロットル開度TA」)に応じた信号を出力するスロットルポジションセンサ74、及びエンジン本体20を冷却する機関冷却水の温度に応じた信号を出力する冷却水温度センサ75、及びインジェクタ52に供給される燃料の圧力(以下、「燃料圧力PI」)に応じた信号を出力する燃圧センサ76、及び排気中の酸素濃度に基づいて混合気の空燃比(以下、「空燃比AF」)に応じた信号を出力する空燃比センサ77が設けられている。
【0062】
電子制御装置70は、上記各センサの検出結果に基づいて運転者の要求及び機関運転状態及びを把握したうえで、吸気流量GAを調整するスロットル制御、及びインジェクタ52による燃料噴射量(以下、「噴射量QI」)を調整する噴射制御、及びインジェクタ52に供給される燃料圧力PIを調整する燃圧制御、及び混合気の空燃比AFを目標値に近づける空燃比制御、及びエンジン本体20内から吸気装置40内に供給されるブローバイガスの流量(以下、「PCV流量GB」)を目標値に近づける換気制御等の各種制御を行う。
【0063】
ここでスロットル制御においては、アクセル操作量AC及び機関回転速度NEに基づいて機関負荷の要求値を把握し、この要求値に対応する吸気流量GAを目標値として設定し、エアフロメータ73による吸気流量GAをこの目標値に近づけるべくスロットルバルブ45の開度を制御する。
【0064】
また噴射制御においては、エアフロメータ73による吸気流量GAに対して混合気の空燃比が目標値となる噴射量QIを基本噴射量として設定し、この基本噴射量に対して別途の制御を通じて設定される補正噴射量を反映させたものを噴射量QIの最終値(以下、「噴射量の要求値QIT」)として設定し、実際の噴射量QI(以下、「噴射量の実際値QIR」)をこの要求値QITにすべくインジェクタ52の開弁態様を制御する。
【0065】
また燃圧制御においては、機関負荷に基づいて目標の燃料圧力PI(以下、「燃料圧力の目標値PIT」)を設定し、燃圧センサ76による燃料圧力PI(以下、「燃料圧力の実際値PIR」)をこの目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。そして、この燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRがより低いものに変更された場合には、インジェクタ52の噴射量QIの最小値(以下、「最小噴射量QImin」)及び最大値(以下、「最大噴射量QImax」)がこれに応じてより小さな値に変更される。反対に、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRがより高いものに変更された場合には、インジェクタ52の最小噴射量QImin及び最大噴射量QImaxがこれに応じてより大きな値に変更される。
【0066】
また空燃比制御においては、目標の空燃比AF(以下、「空燃比の目標値AFT」)と空燃比センサ77による空燃比AF(以下、「空燃比の実際値AFR」)との乖離量及び乖離傾向に基づいて、空燃比の実際値AFRを目標値AFTに近づけるためのインジェクタ52の補正噴射量を設定する。
【0067】
そして換気制御においては、機関負荷及び機関回転速度NEに基づいて要求されるPCV流量GB(以下、「PCV流量の要求値GBT」)を設定し、実際のPCV流量GB(以下、「PCV流量の実際値GBR」)がこの要求値GBTに維持されると見込まれるPCV開度TBを要求値(以下、「PCV開度の要求値TBT」)として設定し、実際のPCV開度TB(以下、「PCV開度の実際値TBR」)をこの要求値TBTに維持すべくPCVバルブ63の開度を制御する。
【0068】
なお機関負荷は、例えばそのときどきにおいて燃焼室31内に供給することのできる吸気量の最大値に対する実際の吸気量の割合、あるいはインジェクタ52の噴射量QIの最大値に対する噴射量QIの実際値(噴射量QIの要求値)の割合を指標として把握することができる。
【0069】
図4を参照して、先の[発明が解決しようとする課題]の欄において述べた事項の具体的な態様、並びに本実施形態においてはこれがどのように解決されるのかについて説明する。
【0070】
ここで、図4に示される時刻t11以前において、クランク室32内の換気を促進させる要求に基づいてPCV開度TBが比較的大きなもの(PCV開度TB11)に維持されている状況を想定する。
【0071】
こうした状況のもと時刻t11において、ブローバイガスとともにエンジン本体20内から吸気装置40内に供給される燃料量が比較的多いため、これにより最小噴射量QIminをより小さいものに変更する必要がある旨判定されたとすると、すなわちインジェクタ52の開弁時間の操作だけでは対応しきれない噴射量QIの減量要求に備える必要がある旨判定されたとすると、図4(A)に示されるように、燃圧制御を通じて燃料圧力の目標値PITがそれまでの目標値PIT11よりも小さい目標値PIT12に変更されるとともに、燃料圧力の実際値PIRをこの変更後の目標値PIT12に近づけるべく高圧ポンプの吐出量が制御される。なお、ここでの燃料圧力の目標値PIT12は、インジェクタ52に対して要求される最小噴射量QIminの大きさ(以下、「最小噴射量の要求値QITmin」)に基づいて設定される。すなわち、燃料圧力の実際値PIRが目標値PIT12に維持されているときに、実際の最小噴射量QImin(以下、「最小噴射量の実際値QIRmin」)として上記最小噴射量の要求値QITminを得ることのできる値が設定される。
【0072】
ここで、燃料圧力の目標値PITの変更にともない、燃料圧力の実際値PIRを変更前の目標値PIT11から変更後の目標値PIT12に向けて低下させる燃圧制御が行われているとき(時刻t11〜時刻t14)、図4(A)に示されるように、燃料圧力の実際値PIRの変化は目標値PITの変化に対して応答遅れを生じるため、図4(B)に示されるように、この期間における最小噴射量の実際値QIRminは燃料圧力の目標値PIT12に基づく最小噴射量QIminよりも大きなものとなる。すなわち、仮に燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じることなく変化したとすると、この場合には最小噴射量QIminは図4(B)において二点鎖線で示される態様をもって変化するようになるが、実際には上記のごとく燃料圧力の応答遅れが生じるため、最小噴射量の実際値QIRminはこれ起因して一点鎖線で示される態様をもって変化するようになる。換言すると、最小噴射量QIminを十分に小さくする意図のもとに燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して最小噴射量の実際値QIRminを予定どおりに小さくすることのできない状況、すなわち燃料圧力の目標値PITを変更したとおりに小さくすることのできない状況が生じるようになる。
【0073】
そしてこのような状況のもと、各センサからの検出結果に基づいて、機関負荷を低下させる要求すなわち機関回転速度NEに対する減速要求がある旨判定されたとすると、図4(B)において破線にて示されるように、機関負荷の要求値に応じて噴射量の要求値QITがより小さい値に変更されるようになる。このとき、噴射量の要求値QITが最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)よりも大きい場合には、図4(B)において実線にて示されるように、噴射量の実際値QIRとして要求値QITと同一のものが維持されるようになる。しかし、噴射量の要求値QITが燃料圧力の実際値PIRに基づく最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)を下回った場合には(時刻t12〜時刻t13)、そのような噴射量の要求がなされているとはいえ、噴射量の実際値QIRは燃料圧力の実際値PIRに基づく最小噴射量の実際値QIRminまでにしか減少させることができないため、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じることにより、燃焼室31内に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離する事態をまねくようになる。
【0074】
本実施形態のブローバイガス還元装置60では、以上の事項に鑑み、燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、この応答遅れに起因して噴射量の要求値QIT(図4(B)の破線)がその時点における最小噴射量の実際値QIRmin(図4(B)の一点鎖線)を下回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITを上回るときには、図4(D)に示されるようにPCVバルブ63を閉弁側に操作し、これによってPCV流量GBを減少させるようにしている。
【0075】
より具体的には、燃料圧力の実際値PIRを目標値PITに向けて低下させる燃圧制御が実行されているとき、且つこの制御により燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、機関負荷の要求に基づく噴射量の要求値QITの減少、及び燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して、同要求値QITがその時点における最小噴射量の実際値QIRminを下回ることにより、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じると推定されるとき、すなわち噴射量の実際値QIRが噴射量の要求値QITを上回ると推定されるときには、この乖離する分をPCVバルブ63の操作に基づくPCV流量GBの減量により補償するようにしている。
【0076】
これにより、噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものにならないとはいえ、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値、すなわちインジェクタ52による供給燃料とブローバイガスによる供給燃料とを合わせたものは、上記PCVバルブ63の操作を実行しない場合と比較して燃焼室31内への供給燃料量の要求値により近いものとなり、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値が要求値から過度に乖離することは抑制されるようになる。また当該エンジン10のように空燃比制御を実行するものにおいて、上記噴射量の要求値QITと実際値QIRとの乖離が生じた場合には、これに起因して、図4(C)に示されるように空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリッチ化した状態をまねくようになるものの(破線)、上記PCVバルブ63の操作を実行することによりこうした過度のリッチ化が生じることも抑制されるようになる(実線)。
【0077】
図5〜図9を参照して、電子制御装置70による上記制御の具体的な態様について説明する。なお、図5の「燃料圧力変更処理」は燃圧制御の一つとして実行される処理の流れを示すものであり、また図6の「PCV開度変更処理」は換気制御の一つとして実行される処理の流れを示すものであり、また図8及び図9の「PCV開度補正処理」は「PCV開度変更処理」の一部として実行される処理の流れを示すものである。また、これら「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」は、それぞれに対して予め設定された所定の周期毎に電子制御装置70を通じて繰り返し実行される。
【0078】
図5に示すように、「燃料圧力変更処理」ではまずステップS110において、燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求があるか否かを判定する。ここで同要求は、別途の処理を通じて設定されるものであって、オイルパン23内のエンジンオイルの燃料希釈率が判定希釈率よりも高いこと、及びエンジンオイルからの希釈燃料の蒸発が生じていることを条件に設定される。すなわち、これら条件が満たされるときには、ブローバイガス中に比較的多くの燃料が含まれていることにより、クランク室32内の換気をより促進させること、さらにはインジェクタ52の最小噴射量QIminをより小さいものに変更することが要求されるため、上記別途の処理ではこれを実現すべく、上述した条件の成立に基づいて燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求を設定するようにしている。
【0079】
ステップS110の判定処理において、燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求がある旨判定したとき、ステップS120においてその時点での燃料圧力の目標値PITよりも小さいものを新たな目標値PITとして設定する。この新たな目標値PITは、燃料圧力の実際値PIRが同目標値PITに維持されているときに最小噴射量の実際値QIRminとして要求値QITminが得られるように設定される。また、最小噴射量の要求値QITminは、PCV流量GB及び燃料希釈率に基づいて、すなわちブローバイガスとともに吸気装置40内に供給される燃料量と相関を有するパラメータに基づいて算出される。
【0080】
そして次のステップS130においては、燃料圧力の実際値PIRを変更後の目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。一方、ステップS110の判定処理において燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求がない旨判定したときには、ステップS140において燃料圧力の実際値PIRをその時点での目標値PITに維持すべく高圧ポンプの吐出量を制御する。なお、ステップS140の処理を行う場合において、別途の処理により燃料圧力の目標値PITの変更が行われたときには、それに応じた燃料圧力の実際値PIRの変更が許容される。
【0081】
図6に示すように、「PCV開度変更処理」ではまずステップS210において、機関負荷及び機関回転速度NEに基づいてPCV開度TBの基本値を設定する。具体的には、電子制御装置70に予め記憶されているマップであってPCV流量の要求値GBTを算出するためのマップについて、これにそのときの機関負荷及び機関回転速度NEを適用し、その時点での機関運転状態に応じたPCV流量GB(PCV流量の要求値GBT)を算出する。そして、スロットル開度TA及び機関回転速度NEに基づいて、すなわちPCV流量GBに影響を及ぼすパラメータに基づいて、PCV流量の実際値GBRを上記算出した要求値GBTとするために必要となるPCV開度TBを算出し、これをPCV開度TBの基本値として設定する。
【0082】
ここで、PCV流量の要求値GBTを算出するための上記マップは、例えば図7に示す態様をもって構成することができる。このマップにおいては、機関負荷及び機関回転速度NEの一つの組み合わせに対して一つの要求値GBTが設定されており、エンジン10の全運転領域(破線内)において機関負荷及び機関回転速度NEの各組み合わせに対応する要求値GBTが設定されている。また、曲線GBT1〜曲線GBT5はそれぞれPCV流量の要求値GBTが同一であることを示すものであり、これら曲線同士の間における要求値GBTの大きさの関係は、以下の式(1)のように設定されている。
【0083】
GBT1>GBT2>GBT3>GBT4>GBT5 … (1)
さらに、PCV流量の要求値GBTが互いに異なる一の曲線と他の曲線との間(例えば曲線GBT1と曲線GBT2との間)において、PCV流量の要求値GBTは、要求値GBTの大きい曲線(曲線GBT1)から要求値GBTの小さい曲線(曲線GBT2)に向かうにつれて次第に小さくなる態様で設定されている。なお、この設定態様に代えて、例えばPCV流量の要求値GBTが互いに同一または異なる一の曲線と他の曲線との間において、要求値GBTをこれら曲線のいずれか一方の値に統一することもできる。
【0084】
またさらに、図7に示すマップにおいて機関負荷及び機関回転速度NEとPCV流量の要求値GBTとの関係は次のように設定されている。すなわち、機関負荷が中負荷領域にあるときに要求値GBTは最も大きく設定され、機関負荷がこの領域から高負荷領域に移行するにつれて要求値GBTは次第に小さくなり、最も高負荷側の領域において最小となるように設定されている。また、機関負荷が中負荷領域から低負荷領域に移行するにつれて要求値GBTは次第に小さくなり、低負荷領域のうちの高回転低負荷領域では他の低負荷領域よりも要求値GBTが小さく設定されている。
【0085】
さて、図6に示されるステップS210において上記マップからPCV流量の要求値GBTを算出した後、次のステップS220においては、「PCV開度補正処理(図8及び図9)」の実行条件が成立しているか否かを判定する。ここでは、先の「燃料圧力変更処理(図5)」により燃料圧力の実際値PIRを低下させる燃圧制御が実行されている最中であることをもって上記実行条件が成立している旨判定するようにしている。また、先に述べた燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れは、通常であれば上記燃圧制御を実行しているときに限って生じるものであるため、それ以外のときには、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値と要求値とが過度に乖離した状態をまねくことはないと予測される。すなわち、「PCV開度補正処理」を実行しなくとも格別の問題が生じることはないと予測される。そこでステップS220の判定処理では、「PCV開度補正処理」が不要に実行されることを回避する意図のもと、上記実行条件の成否を判定するようにしている。なお、こうした制御態様に代えて、上記燃圧制御が実行されているか否かにかかわらず「PCV開度変更処理」において常に「PCV開度補正処理」を実行することもできる。
【0086】
ステップS220の判定処理により上記実行条件が成立している旨判定したとき、ステップS230において「PCV開度補正処理」を実行し、先のステップS210によるPCV開度TBの基本値を補正したものをPCV開度の要求値TBTとして設定する。一方、ステップS220の判定処理により上記実行条件が成立していない旨判定したときには、ステップS240において、PCV開度TBの基本値をPCV開度の要求値TBTとして設定する。そして、これらステップS230またはS240のいずれかの処理を経た後、PCV開度の実際値TBRを要求値TBTに維持すべくPCVバルブ63の制御を実行する。
【0087】
図8及び図9に示すように、「PCV開度補正処理」ではまずステップS310において、エンジンオイルの燃料希釈率が基準希釈率よりも大きいか否かを判定する。ここで、燃料希釈率が小さい場合には、ブローバイガスの供給にともないインジェクタ52に対して要求される噴射量QIの減少量も小さくなるため、こうした状況においては、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値と要求値とが過度に乖離した状態をまねくことはないと予測される。すなわち、以降の処理を通じてPCV開度TBの補正を実行しなくとも格別の問題が生じることはないと予測される。そこでステップS310の判定処理では、PCV開度TBの補正が不要に実行されることを回避する意図のもと、PCV開度TBの補正の必要性を燃料希釈率に基づいて判定するようにしている。すなわち上記基準希釈率は、燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れが生じているときにおいて、燃料希釈率が大きいことにともなうインジェクタ52の噴射量QIの減少量が許容範囲を超えるか否かを判定するための値として予め設定される。
【0088】
ステップS310の判定処理において、燃料希釈率が基準希釈率よりも大きい旨判定したとき、ステップS320〜S350を通じて、PCV開度TBの補正を行う必要があることを示す開度補正フラグについて、これをオンとオフとの間で切り替える処理を行う。
【0089】
具体的には、ステップS320において噴射量の要求値QITが復帰噴射量QIHよりも大きいか否かを判定し、大きい旨判定したときにはオンに設定されている開度補正フラグをオフに設定する。また、開度補正フラグがすでにオフに設定されているときにはその状態を維持する。なお、上記復帰噴射量QIHは開度補正フラグのオン及びオフの操作に対してヒステリシス特性をもたせるためのものであって、具体的にはその時点での最小噴射量QImin(最小噴射量の実際値QIRmin)に所定値を加えた値、すなわち最小噴射量の実際値QIRminよりも所定値だけ大きい値として算出される。
【0090】
次のステップS330においては、噴射制御により設定された噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QImin(最小噴射量の実際値QIRmin)よりも小さいか否かを判定し、小さい旨判定したときには開度補正フラグをオンに設定する。ここで、最小噴射量の実際値QIRminはそのときどきの燃圧センサ76の検出値に基づいて、すなわち燃料圧力の実際値PIRに基づいて算出される。
【0091】
次のステップS340においては、開度補正フラグをオンに設定しているか否かを判定し、この判定結果に応じてPCV開度TBの基本値に対する補正値の設定態様を選択する。すなわち、開度補正フラグをオンに設定している旨判定したときには、ステップS370において、PCV開度TBの補正値としてPCV開度TBの基本値を減少させる値を設定する。ここでは、PCV開度TBの補正値として予め設定された固定値が用いられる。一方で、開度補正フラグをオフに設定している旨判定したときには、ステップS380において、PCV開度TBの補正値としてPCV開度TBの基本値を変化させない値すなわち「0」を設定する。
【0092】
そして、これらステップS370またはS380のいずれかの処理を経た後、ステップS390においてPCV開度TBの基本値に補正値を反映させたものをPCV開度の要求値TBTとして設定し、図6の「PCV開度変更処理」のステップS250に移行する。
【0093】
[実施形態の効果]
以上詳述したように、本実施形態の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置によれば以下に示す効果が得られるようになる。
【0094】
(1)本実施形態では、燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れ及び噴射量の要求値QITの減少側への変更に起因して、噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QIminを下回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものとはならないことに起因して、燃焼室31内への供給燃料量の実際値が要求値を大きく上回るおそれのあるときに、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させるようにしている。これにより、PCV流量GBが減少する分に応じてクランク室32内からサージタンク47内に供給される燃料量も少なくなるため、燃焼室31内への供給燃料量の実際値を要求値に近づけることができるようになる。すなわち、燃料圧力の変更に起因して同供給燃料量の実際値と要求量との間に過度の乖離が生じることを的確に抑制することができるようになる。またこれに併せて、空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリッチ化することを抑制することができるようにもなる。
【0095】
(2)本実施形態では、エンジンオイルの燃料希釈率が判定希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値PIRを低下させる要求を設定し、燃料圧力の実際値PIRをこの要求に基づいて変更された新たな目標値PITに向けて低下させるようにしている。すなわち、ブローバイガス中に含まれる燃料量が比較的多いことによりクランク室32内の換気を促進することが要求されるとき、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRを低下させるようにしている。これにより、インジェクタ52の最小噴射量QIminがより小さいものに変更されるため、多量の燃料を含むブローバイガスがサージタンク47内に供給されるときにも、これに応じた分だけインジェクタ52の噴射量QIを減少させることができるようになる。従って、クランク室32内の換気を促進することと燃焼室31内に供給される燃料量を適切なものに維持することとの両立を図ることができるようになる。
【0096】
[実施形態の変形例]
上記実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記実施形態においては、PCV開度TBの補正値として予め設定された固定値を用いるようにしているが、噴射量の要求値QITと最小噴射量の実際値QIRminとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(B)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの噴射量の要求値QIT(破線)と最小噴射量の実際値QIRmin(一点鎖線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0097】
・また、上記補正値の別の設定態様として、燃料圧力の目標値PITと実際値PIRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(A)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの燃料圧力の目標値PIT(破線)と実際値PIR(実線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合にも、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0098】
・またさらに、上記補正値の別の設定態様として、空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図4(C)に示される時刻t12〜時刻t13の期間について、ここでの空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの差であってリッチ側においての差が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの閉弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、空燃比の実際値AFRをより的確に目標値AFTに近づけることができるようになる。
【0099】
・上記実施形態の「PCV開度変更処理(図6)」及び「PCV開度補正処理(図8及び図9)」によるPCVバルブ63の制御態様を次のように変更することもできる。すなわち、燃圧制御により燃料圧力の目標値PITの変更が行われた後、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達した旨判定するまでの間に限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいてPCVバルブ63の操作を行うこともできる。なお、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達したか否かについては、例えば燃圧センサ76の検出値と目標値PITとの対比に基づいて判定することができる。
【0100】
この変形例では、燃料圧力の目標値PITの変更が行われてから実際値PIRが変更後の目標値PITに到達するまでの間、すなわち燃料圧力の目標値PITに対する実際値PIRの応答遅れに起因して噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものとはならないおそれのあるときに限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを減少させる必要があるか否かの判定を行うようにしているため、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因した先の問題が生じるおそれのないときに、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBが不要に少なくされることを的確に抑制することができるようになる。
【0101】
(第2実施形態)
図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の電子制御式ブローバイガス還元装置は、前記第1実施形態の装置に対して、以下の趣旨でその制御態様に変更を加えたものとして構成されている。
【0102】
すなわち第1実施形態では、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRが低下する状況において、この実際値PIRの応答遅れに起因して燃焼室31内への供給燃料量の実際値が要求値から過度に乖離した事態が生じる場合を想定したが、こうした供給燃料量の実際値と要求値との乖離は、燃圧制御を通じて燃料圧力の実際値PIRが新たな目標値PITに向けて増大される場合においても同様に生じ得るものである。そこで、本実施形態では後者の課題を解決することをそのねらいとして、燃料圧力の実際値PIRを増大させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最大噴射量QImaxを上回るときにPCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを増大させるようにしている。
【0103】
ここで、図10に示される時刻t21以前において、クランク室32内の換気を促進させる要求に基づいてPCV開度TBが比較的大きなもの(PCV開度TB21)に維持されている状況を想定する。
【0104】
こうした状況のもと時刻t21において、クランク室32内の換気が十分になされたことによりインジェクタ52の最小噴射量QImin及び最大噴射量QImaxを通常の値に復帰させる必要がある旨判定されたとすると、図10(A)に示されるように、燃圧制御を通じて燃料圧力の目標値PITがそれまでの目標値PIT21よりも大きい目標値PIT22に変更されるとともに、燃料圧力の実際値PIRをこの変更後の目標値PIT22に近づけるべく高圧ポンプの吐出量が制御される。
【0105】
ここで、燃料圧力の目標値PITの変更にともない、燃料圧力の実際値PIRを変更前の目標値PIT21から変更後の目標値PIT22に向けて増大させる燃圧制御が行われているとき(時刻t21〜時刻t24)、図10(A)に示されるように、燃料圧力の実際値PIRの変化は目標値PITの変化に対して応答遅れを生じるため、図10(B)に示されるように、この期間における実際の最大噴射量QImax(以下、「最大噴射量の実際値QIRmax」)は燃料圧力の目標値PIT22に基づく最大噴射量QImaxよりも小さなものとなる。すなわち、仮に燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じることなく変化したとすると、この場合には最大噴射量QImaxは図10(B)において二点鎖線で示される態様をもって変化するようになるが、実際には上記のごとく燃料圧力の応答遅れが生じるため、最大噴射量の実際値QIRmaxはこれ起因して一点鎖線で示される態様をもって変化するようになる。換言すると、最大噴射量QImaxを十分に大きくする意図のもとに燃圧制御が実行されているとはいえ、燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して最大噴射量の実際値QIRmaxを予定どおりに大きくすることのできない状況、すなわち燃料圧力の目標値PITを変更したとおりに大きくすることのできない状況が生じるようになる。
【0106】
そしてこのような状況のもと、各センサからの検出結果に基づいて、機関負荷を増大させる要求すなわち機関回転速度NEに対する加速要求がある旨判定されたとすると、図10(B)において破線にて示されるように、機関負荷の要求値に応じて噴射量の要求値QITがより大きい値に変更されるようになる。このとき、噴射量の要求値QITが最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)よりも小さい場合には、図10(B)において実線にて示されるように、噴射量の実際値QIRとして要求値QITと同一のものが維持されるようになる。しかし、噴射量の要求値QITが燃料圧力の実際値PIRに基づく最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)を上回った場合には(時刻t22〜時刻t23)、そのような噴射量の要求がなされているとはいえ、噴射量の実際値QIRは燃料圧力の実際値PIRに基づく最大噴射量の実際値QIRmaxにまでしか増加させることができないため、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じることにより、燃焼室31内に供給される実際の燃料量が要求される燃料量から過度に乖離する事態をまねくようになる。
【0107】
本実施形態のブローバイガス還元装置60では、以上の事項に鑑み、燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、この応答遅れに起因して噴射量の要求値QIT(図10(B)の破線)がその時点における最大噴射量の実際値QIRmax(図10(B)の一点鎖線)を上回るとき、すなわち噴射量の実際値QIRが要求値QITを下回るときには、図10(D)に示されるようにPCVバルブ63を開弁側に操作し、これによってPCV流量GBを増加させるようにしている。
【0108】
より具体的には、燃料圧力の実際値PIRを目標値PITに向けて増大させる燃圧制御が実行されているとき、且つこの制御により燃料圧力の実際値PIRが目標値PITに対して応答遅れを生じているときであって、機関負荷の要求に基づく噴射量の要求値QITの増加、及び燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの応答遅れに起因して、同要求値QITがその時点における最大噴射量の実際値QIRmaxを上回ることにより、噴射量の要求値QITと実際値QIRとの間に乖離が生じると推定されるとき、すなわち噴射量の実際値QIRが噴射量の要求値QITを下回ると推定されるときには、この乖離する分をPCVバルブ63の操作に基づくPCV流量GBの増量により補償するようにしている。
【0109】
これにより、噴射量の実際値QIRが要求値QITどおりのものにならないとはいえ、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値、すなわちインジェクタ52による供給燃料とブローバイガスによる供給燃料とを合わせたものは、上記PCVバルブ63の操作を実行しない場合と比較して燃焼室31内への供給燃料量の要求値により近いものとなり、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値が要求値から過度に乖離することは抑制されるようになる。また当該エンジン10のように空燃比制御を実行するものにおいて、上記噴射量の要求値QITと実際値QIRとの乖離が生じた場合には、これに起因して、図10(C)に示されるように空燃比の実際値AFRが目標値AFTに対して過度にリーン化した状態をまねくようになるものの(破線)、上記PCVバルブ63の操作を実行することによりこうした過度のリーン化が生じることも抑制されるようになる(実線)。
【0110】
なお、電子制御装置70による上記制御の具体的な処理手順は、先の第1実施形態の「燃料圧力変更処理(図5)」及び「PCV開度変更処理(図6)」及び「PCV開度補正処理(図8及び図9)」について、これを以上にて説明した事項に適合させたものに相当する。
【0111】
[実施形態の効果]
以上詳述したように、本実施形態の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置によれば、先の第1実施形態による(1)及び(2)の効果に準じた効果が得られるようになる。
【0112】
[実施形態の変形例]
上記実施形態は、例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
・上記実施形態において、噴射量の要求値QITと最大噴射量の実際値QIRmaxとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(B)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの噴射量の要求値QIT(破線)と最大噴射量の実際値QIRmax(一点鎖線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0113】
・また、上記補正値の別の設定態様として、燃料圧力の目標値PITと実際値PIRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(A)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの燃料圧力の目標値PIT(破線)と実際値PIR(実線)との差の絶対値が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合にも、燃焼室31内に供給される燃料量の実際値をより的確に要求値に近づけることができるようになる。
【0114】
・またさらに、上記補正値の別の設定態様として、空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの乖離度合に基づいてPCV開度TBの補正値を可変設定することもできる。具体的には、図10(C)に示される時刻t22〜時刻t23の期間について、ここでの空燃比の目標値AFTと実際値AFRとの差であってリーン側においての差が大きくなるにつれて、PCV開度TBの補正値すなわちPCV開度TBの開弁側への変更量を大きくすることもできる。この場合には、空燃比の実際値AFRをより的確に目標値AFTに近づけることができるようになる。
【0115】
・上記実施形態によるPCVバルブ63の制御態様として、次のものを採用することもできる。すなわち、燃圧制御により燃料圧力の目標値PITの変更が行われた後、燃料圧力の実際値PIRが変更後の目標値PITに到達した旨判定するまでの間に限り、PCVバルブ63の操作を通じてPCV流量GBを増大させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいてPCVバルブ63の操作を行うこともできる。
【0116】
(その他の実施形態)
その他、上記各実施形態に共通して変更することのできる形態を以下に示す。
・上記第1実施形態による「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」及び「PCV開度補正処理」と、上記第2実施形態による「燃料圧力変更処理」及び「PCV開度変更処理」及び「PCV開度補正処理」とを併せて実行することもできる。すなわち、燃料圧力の実際値PIRを低下させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最小噴射量QIminを下回るときにPCVバルブ63を閉弁側に操作する第1実施形態の処理と、燃料圧力の実際値PIRを増大させる燃圧制御により噴射量の要求値QITがその時点での最大噴射量QImaxを上回るときにPCVバルブ63を開弁側に操作する第2実施形態の処理とを併せて実行することもできる。
【0117】
・上記各実施形態では、クランク室32内の換気に対する要求に基づいて、燃料圧力の実際値PIRを低下または増大させる要求を設定するようにしたが、この実際値PIRを低下または増大させる要求は例えば機関負荷に対する要求等、その他の条件に基づいて設定することもできる。要するに、いずれの要求に基づいて燃圧制御による燃料圧力の実際値PIRの変更が行われる場合であれ、上記各実施形態に準じた態様をもってPCVバルブ63の制御を行うことにより、各実施形態に準じた作用効果を奏することはできる。
【0118】
・上記各実施形態では筒内噴射式のエンジンを想定したが、インジェクタに供給される燃料圧力の実際値を低下または増大させる要求があることに基づいて同実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて変更する燃圧制御について、これを行うものであればいずれ形式のエンジンに対しても本発明を適用することはできる。また、ブローバイガス還元装置としても、電子制御式のPCVバルブを備えるものであればその他の具体的な構造は上記実施形態にて例示した構造に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を具体化した第1実施形態について、このブローバイガス還元装置を備える筒内噴射式内燃機関の構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の筒内噴射式内燃機関について、機関低負荷時におけるブローバイガス及び吸気の流れの態様を示す模式図。
【図3】同実施形態の筒内噴射式内燃機関について、機関高負荷時におけるブローバイガス及び吸気の流れの態様を示す模式図。
【図4】同実施形態の噴射制御及び燃圧制御及び換気制御にともなう(A)燃料圧力及び(B)噴射量及び(C)空燃比及び(D)PCV開度のそれぞれの変化態様を示すタイミングチャート。
【図5】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「燃料圧力変更処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度変更処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理において用いられるPCV流量要求値の演算マップ。
【図8】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理手順の前半部分を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の筒内噴射式内燃機関の電子制御装置により実行される「PCV開度補正処理」について、その処理手順の後半部分を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかる内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置を具体化した第2実施形態について、同実施形態の噴射制御及び燃圧制御及び換気制御にともなう(A)燃料圧力及び(B)噴射量及び(C)空燃比及び(D)PCV開度のそれぞれの変化態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0120】
10…エンジン、20…エンジン本体、21…シリンダブロック、22…クランクケース、23…オイルパン、24…シリンダヘッド、25…ヘッドカバー、26…クランクシャフト、31…燃焼室、32…クランク室、33…動弁室、34…連通室、40…吸気装置、41…エアインテーク、42…エアクリーナ、43…インテークホース、44…スロットルボディ、45…スロットルバルブ、46…インテークマニホールド、47…サージタンク、48…サブパイプ、49…吸気通路、50…燃料供給装置、51…供給装置本体、52…インジェクタ、60…ブローバイガス還元装置、61…第1換気通路、62…第2換気通路、63…PCVバルブ、70…電子制御装置、71…アクセルポジションセンサ、72…クランクポジションセンサ、73…エアフロメータ、74…スロットルポジションセンサ、75…冷却水温度センサ、76…燃圧センサ、77…空燃比センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項2】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項3】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項4】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項5】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項6】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最小値を下回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を減少させる前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値を低下させる前記要求を設定するものであり、
前記燃圧制御は、この制御手段による要求に基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させるものである
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最小値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項14】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項15】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項16】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項17】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項18】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項19】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最大値を上回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を増加させる前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最大値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項25】
請求項14〜24のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項1】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項2】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項3】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項4】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関負荷を低下させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて低下させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の減少側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項5】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項6】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を低下させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する減速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を減少させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記減速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最小値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最小値を下回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を減少させる前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、機関潤滑油の燃料希釈率が基準希釈率よりも高いことに基づいて燃料圧力の実際値を低下させる前記要求を設定するものであり、
前記燃圧制御は、この制御手段による要求に基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて低下させるものである
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最小値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を減少させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項14】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項15】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御による燃料圧力の実際値の変更にともないこの実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき且つ、この応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項16】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項17】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関負荷を増大させる要求があることに基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値を燃料圧力の目標値に向けて増大させる処理が実行されているとき、且つこの燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときであって、前記噴射制御による燃料噴射弁の噴射量の増加側への変化及び前記燃圧制御による前記燃料圧力の実際値の応答遅れに起因して前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項18】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を上回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項19】
燃料噴射弁に供給される燃料圧力の実際値を増大させる要求があることに基づいて燃料圧力の目標値を変更し、燃料圧力の実際値を変更後の燃料圧力の目標値に向けて増大させる燃圧制御、及び機関回転速度に対する加速要求に基づいて燃料噴射弁の噴射量を増加させる噴射制御を行う内燃機関について、そのクランク室内の換気を行うものであって、クランク室内から吸気通路に供給されるブローバイガスの流量を調整する電子制御式の換気弁を備える内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているとき、且つ前記燃料噴射弁の噴射量の実際値が前記噴射制御により前記加速要求に基づいて設定される前記燃料噴射弁の噴射量の要求値を下回るときに前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の実際値が燃料圧力の目標値に対して応答遅れを生じているときにおいて、燃料圧力の実際値に基づいてその時点における前記燃料噴射弁の噴射量の最大値を算出し、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値がこの算出した最大値を上回る旨の判定結果が得られたことをもって前記ブローバイガスの流量を増加させる前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃圧制御により燃料圧力の目標値の変更が行われてから燃料圧力の実際値が変更後の燃料圧力の目標値に到達するまでの間に限り、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる必要があるか否かを判定し、その結果に基づいて前記換気弁の操作を行う
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料噴射弁の噴射量の要求値とその時点での前記燃料噴射弁の噴射量の最大値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記燃料圧力の目標値と前記燃料圧力の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、空燃比の目標値と空燃比の実際値との乖離度合に基づいて、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際の前記換気弁の開度の変更量を設定する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【請求項25】
請求項14〜24のいずれか一項に記載の内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置において、
前記制御手段は、前記換気弁の操作を通じてブローバイガスの流量を増加させる際、機関運転状態に基づいて設定された前記換気弁の開度の基本値を閉弁側に補正する
ことを特徴とする内燃機関の電子制御式ブローバイガス還元装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−209703(P2009−209703A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51125(P2008−51125)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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