説明

内燃機関制御装置

【課題】電磁負荷を駆動する内燃機関制御装置において、電磁負荷の駆動周期が短い場合でも、該電磁負荷の故障診断精度を向上させ、ノイズに影響されない高速制御を安定して行う。逆起エネルギーの回生回路に対しても、信頼度の高い故障診断を行う。
【解決手段】内燃機関における燃料噴射装置などの電磁負荷の駆動周期が短くなった場合でも高い故障診断精度を確保するため、診断部位の電位を調整するための電流源あるいは電圧源を設ける。加えて、ノイズのような突発的な外乱に影響されない診断精度を確保するため、診断タイミングを最適に設定したり、平均化のための判定回数を増やしたりする。更に、該昇圧回路に回生させる回路の故障診断については、該電磁負荷の駆動用スイッチ素子の入出力電圧もしくは回生電流を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンや軽油等を燃料とする、自動車、オートバイ、農耕機、工機、船舶機等の内燃機関制御装置に関し、特に、バッテリ電圧あるいは昇圧したバッテリ電圧により駆動される、燃料噴射装置等の電磁負荷制御装置と、その駆動及び故障診断に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや軽油等を燃料とする、自動車、オートバイ、農耕機、工機、船舶機等の内燃機関制御装置には、燃費や出力向上の目的で、気筒内に直接燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)が備えられている。このような気筒内直接噴射型インジェクタは、高圧燃料を使用するため、開弁動作に多くのエネルギーを必要とする。また、制御性能(応答性)向上や高速回転(高速度制御)に対応するために、インジェクタに対する上記エネルギーの供給時間や遮断時間を短くする必要がある。つまり、電磁負荷に流れる電磁負荷電流を短時間で遮断する必要がある。燃料噴射を制御する内燃機関制御装置の従来技術の例として、特許文献1に示されているものがある。
【0003】
電磁負荷電流を短時間で遮断し、電磁負荷に蓄積されている多くの上記エネルギーを電磁負荷から急速に移動させる(消費させる)ために、例えば、駆動回路内でツェナーダイオード効果を用いて熱エネルギーに変換する方式が考案されている。また、特許文献2に記載されているような、電磁負荷に蓄積されたエネルギーを昇圧回路に回生させる方式も提案されている。この方式には、電流回生ダイオード等の回生素子を用いて回生させる方法があり、大電流が流れる駆動回路の発熱を比較的低減させることができるため、燃料にガソリンを使用する直噴エンジンでも広く使用されている。
【0004】
電磁負荷の駆動中または停止途中に、電磁負荷に何らかの故障(天絡、地絡、短絡、開放)が生じた場合、即座にその故障内容を検出し、診断する必要がある。しかし、従来の内燃機関制御装置では、駆動周期が短くなった場合(つまり、内燃機関の回転数が増加した場合)には、故障検出タイミング制御が上手く設定できず、診断回路は、例えば、駆動回路及び電磁負荷は正常であるにもかかわらず、天絡が生じたという誤診断をすることがある。また、診断部位の電位を初期状態に戻すのに多大な時間を要していたため、制御性能向上の障害となる場合もある。加えて、上記診断回路はノイズのような突発的な外乱により、誤診断をする場合もある。
【0005】
また、上記回生素子は、規定以上のエネルギーを掛けられて破壊した場合、エネルギーを回生することができなくなり、装置の発熱ひいては発火という重大事故に繋がる可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3871168号公報
【特許文献2】特開2001−234793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インジェクタ(燃料噴射装置)などの電磁負荷を駆動する内燃機関制御装置において、内燃機関の回転数が高くなった場合、すなわち、電磁負荷の駆動周期が短くなった場合でも、該電磁負荷の故障診断精度を向上させること及び高速制御を安定して行うことを目的とする。加えて、ノイズに影響されない内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
更に、バッテリ電圧の昇圧回路を有する上記内燃機関制御装置において、該電磁負荷の駆動時に発生する逆起エネルギーを該昇圧回路に回生させる回路に対しても、信頼度の高い故障診断を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、内燃機関における燃料噴射装置などの電磁負荷の駆動周期が短くなった場合でも高い故障診断精度を確保するため、診断部位の電位を調整するための電流源あるいは電圧源を設けることにある。加えて、ノイズのような突発的な外乱に影響されない診断精度を確保するため、診断タイミングを最適に設定したり、平均化のための判定回数を増やしたりすることにある。
【0010】
更に、該昇圧回路に回生させる回路の故障診断については、該電磁負荷の駆動用スイッチ素子の入出力電圧もしくは回生電流を検出することで、上述の目的を達成できる。
【0011】
具体的には、本発明による電磁負荷制御装置の構成は、基本的には以下のようになる。
電磁負荷と、前記電磁負荷の電源と、前記電磁負荷を駆動するために少なくとも前記電源と前記電磁負荷との間及び前記電磁負荷と電源グラウンドとの間のいずれか一方に配置されたドライバ用のスイッチ素子と、前記電磁負荷と前記スイッチ素子との間の電圧異常を検出することにより回路構成の故障を診断する診断手段とを備えた電磁負荷制御装置において、電磁負荷遮断時に生じる逆起エネルギーを急速に減衰させる手段、前記電圧異常の検出する時間帯を設定する手段、及び前記電圧異常の確証を得るための手段のうち少なくとも一つを備える。
【発明の効果】
【0012】
電磁負荷を駆動する内燃機関制御装置において、内燃機関の駆動周期が短くなった場合でも、該電磁負荷の故障診断の信頼性、精度を保証することができる。加えて、ノイズに影響されない故障診断を保証できる。更に、逆起エネルギーを該昇圧回路に回生させる回路の故障診断を確実に行うことができるため、従来よりも安全性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による実施例1の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図2】本発明による実施例2の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図3】実施例1の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図4】本発明による実施例3の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図5】実施例3の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図6】本発明による実施例4の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図7】実施例4の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図8】本発明による実施例5の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図9】実施例5の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図10】本発明による実施例6の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図11】実施例6の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図12】本発明による実施例7の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図13】実施例7の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図14】本発明による実施例8の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図15】本発明による実施例9の内燃機関制御装置の回路構成図である。
【図16】実施例8の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図17】実施例9の内燃機関制御装置における回路の動作波形の一例を示す図である。
【図18】実施例1において、第1電流量調整回路18が設けられていない回路構成を比較のために示す図である。
【図19】実施例1において、第1電流量調整回路18が設けられていない構成の回路における動作波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による内燃機関制御装置の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1と図3を使用して、本発明による内燃機関制御装置の第1の実施例を説明する。
【0016】
図1は、内燃機関制御装置2の回路構成であり、バッテリ電圧1、バッテリ電圧1を昇圧する昇圧回路3、昇圧回路3と電源グランド37との間に設置された電磁負荷5を有する。
【0017】
また、内燃機関制御装置2には、電磁負荷5から見てバッテリ電圧側と電源グランド37側とに、それぞれ電磁負荷用のドライバを構成するスイッチ素子(例えばFET)、すなわちハイサイドドライバ4とロウサイドドライバ10が設置されている。ここでは、電磁負荷5から見てバッテリ電圧側をハイサイド(上流)、電源グランド37側をロウサイド(下流)と称する。
【0018】
更に、内燃機関制御装置2は、マイクロプロセッサ30、ロジック回路31、ハイサイドドライバ用の駆動信号生成回路28、及びロウサイドドライバ用の駆動信号生成回路12を有する。また、電磁負荷5の故障診断のために、電圧検出回路15と診断回路25を有する。
【0019】
昇圧回路3は、バッテリ電圧1を昇圧し、この昇圧電圧が電磁負荷5に、ハイサイドドライバ4及びロウサイドドライバ10を介して印加される。この昇圧電圧により、インジェクタ等の電磁負荷5に流れる電流5Aを短時間に上昇させる。すなわち、内燃機関制御装置2は、ハイサイドドライバ4とロウサイドドライバ10を駆動させて電磁負荷5を駆動する。この過程を、以下に説明する。マイクロプロセッサ30から出力されたコントロール信号29は、ロジック回路31に入力される。このコントロール信号に基づいて、ロジック回路31は、ロジックのハイサイドドライバ駆動信号26とロウサイドドライバ駆動信号13をそれぞれのアナログ駆動信号生成回路28及び12に出力する。駆動信号生成回路28及び12は、入力されたロジック信号26及び13に基づきアナログのハイサイドドライバ駆動信号27及びロウサイドドライバ駆動信号11を生成する。このアナログ駆動信号27及び11によって、ハイサイドドライバ4とロウサイドドライバ10が通電(オン)して、電磁負荷5に電磁負荷電流5Aが流れ、電磁負荷5が駆動する。
【0020】
この電磁負荷電流5Aは、例えばインジェクタのような電磁負荷5の弁体を応答良く駆動(例えば開弁)するのに必要な程度の比較的大きな電流である。電磁負荷5の駆動後は、引き続き駆動後の弁体の状態を維持する程度の電流が、次のようにして所定時間、電磁負荷5に供給される。この場合には、ロウサイドドライバ駆動信号がオン状態を維持し(すなわち、ロウサイドドライバ10がオン状態)、一方、ハイサイドドライバ駆動信号がオフ(ハイサイドドライバ4がオフ)し、更に、チョッピング駆動信号生成回路108を介して電磁負荷5がチョッピングされて、電磁負荷5の駆動後の状態が維持される。チョッピング駆動信号109は、マイクロプロセッサ30からのコントロール信号29に基づき、ロジック回路31から出力される。この詳細は、図3を用いて後述する。
【0021】
電磁負荷5の故障診断は、診断回路25が行う。電圧検出回路15は、ロウサイドドライバ10のドレイン電圧46を検出し、診断フラグ信号14を診断回路25に出力する。
【0022】
例えば、ロウサイドドライバ10のドレイン電圧46が上昇してバッテリ電圧1に近い電圧まで達した場合、すなわちロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡検出の閾値を超えていれば、診断回路25は、電磁負荷5が天絡したという天絡診断をする。
【0023】
一方、ロウサイドドライバ10のドレイン電圧46が下降してグランドレベルの電圧まで達した場合、すなわち、ロウサイドドライバドレイン電圧46が地絡検出の閾値を下回っていれば、診断回路25は、電磁負荷5が地絡したという地絡診断をする。
【0024】
更に、内燃機関制御装置2は、第1電流量調整回路18、第2電流量調整回路20及び電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111を有する。第1電流量調整回路18は、第1電流源17からなる。第2電流量調整回路20は、第2電流源19及び第3電流源21からなる。切り替えスイッチ111は、ドレイン電圧検出回路15の出力信号に応じて第1、第2の電流量調整回路(18、20)の電流源17、19、21を選択的に切り替え制御するためのものである。
【0025】
このうち第2電流量調整回路20は、電磁負荷のスイッチング素子(ロウサイドドライバ10)側のドレイン電圧を検出して、電磁負荷駆動時のドレイン電圧を所定の電圧レベルに保つためのものである。例えば、ドレイン電圧が低い場合には、ドレイン電圧検出回路15、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111を介して第3電流源(電源側電流源)21をオンしてドレイン電圧を上昇させ、逆にドレイン電圧が高い場合には、第2電流源(グラウンド側電流源)19をオンしてドレイン電圧を減少させ、最終的にドレイン電圧を一定レベルに保つ。この場合、第2電流源19は、グランド側に接続されているが、ドレイン電圧を所定レベルに収束させるために、緩やかにドレイン電圧を下降させる仕様になっている。
【0026】
一方、第1電流量調整回路18に用いられる第1電流源17は、電磁負荷5の通電を遮断した時(非駆動にした時:ハイサイド及びロウサイドドライバ4、10をオフした時)に電磁負荷によりロウサイドドライバ10のドレイン側に生じる逆起エネルギーによる跳ね上がり電圧を急速に減衰させる役割をなす。ひいては、この逆起エネルギーの急速減衰により、電圧検出回路15による天絡、地絡の検出動作を行うタイミングでの天絡の誤診断を防止するようにしてある。ちなみに、天絡、地絡の検出動作を行うタイミングは、マイクロプロセッサ30からのコントロール信号29が立ち上がる時、すなわち、電磁負荷5の駆動開始タイミング(ハイサイド及びロウサイドドライバ4、10をオンした時の立ち上がり)に行われる。この詳細は、図3及び図19のタイミングチャートを用いて後述する。
【0027】
第1電流量調整回路18に用いる第1電流源17は、第2電流量調整回路20に用いる第2電流源19と同様に、ロウサイドドライバ10のドレイン側とグラウンド間に接続されるが、次のような相違点がある。すなわち、第2電流源19がドレイン電圧を所定レベルに収束させる収束用シンク電流源であるのに対して、第1電流源17が逆起エネルギー急速減衰(跳ね上がりドレイン電圧急速減衰)用であるため、その仕様が異なる。
【0028】
また、内燃機関制御装置2には、電磁負荷5の入力信号及び出力信号を、外部からのサージやノイズのような外乱から保護するために、ノイズ・サージ保護用コンデンサ(上流)7とノイズ・サージ保護用コンデンサ(下流)9が設けられている。
【0029】
更に内燃機関制御装置2は、逆流防止ダイオード6、及び電流回生ダイオード8を有する。逆流防止ダイオード6は、電磁負荷5のチョッピング制御時の電流の逆流を防止する。また、電流回生ダイオード8は、コントロール信号29の立ち下がりでロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11がオフになったとき、ロウサイドドライバ10の逆起エネルギーによる回生電流を、昇圧回路3に回生させる。
【0030】
次に、第1の実施例の動作を、図3のタイミングチャートを用いて説明する。
【0031】
マイクロプロセッサ30から出力されたコントロール信号29がオンになると、ロウサイドドライバ10及びハイサイドドライバ4の駆動信号、すなわちロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11及びハイサイドドライバ駆動信号(アナログ)27がオンになり、電磁負荷5に電磁負荷電流5Aが流れる。
【0032】
電磁負荷電流5Aは、昇圧回路3で昇圧されたバッテリ電圧1により、通電初期のピーク電流通電期間に、ピーク電流閾値100まで短時間で上昇する。ピーク電流閾値100は、電流を停止する値であり、予め定めてある。ピーク電流閾値100に達した電磁負荷電流5Aは、保持区間に遷移し、ハイサイドドライバ4がオフ(ハイサイド電流81Aがオフ)になった後、チョッピング駆動信号生成回路108によってチョッピングされる。
このときの電磁負荷上流電圧103の波形は、図3に示したようになる。電磁負荷の動作が終了すると、電磁負荷を初期状態に速やかに戻すために、電磁負荷電流5Aを短い通電電流下降期間で急速に遮断する。
【0033】
コントロール信号29がオフになると、コントロール信号29の立ち下がりでロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11がオフになる。このロウサイドドライバ駆動信号11(ゲート信号)の立ち下がりタイミング39で、ロウサイドドライバ10のドレイン側に、電磁負荷5による逆起エネルギーが発生する。ロウサイドドライバドレイン電圧46は、この逆起エネルギーにより、ある特定の電圧(跳ね上がり電圧300)まで跳ね上がる。跳ね上がり電圧300は、ノイズ・サージ保護用コンデンサ(下流)9に蓄積される。同時に、跳ね上がり電圧300は、ロウサイドドライバドレイン電圧46として電圧検出回路15に入力される。そして、電圧検出回路15の検出結果に従い、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111によって、第1電流量調整回路18及び第2電流量調整回路20が制御される。
【0034】
このとき、図3に示すように、ロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値104よりも高い場合、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第1電流源制御信号16がハイ出力され、第1電流源17がオンとなる。これにより、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、ノイズ・サージ保護用コンデンサ(下流)9に蓄積された電荷をディスチャージし、跳ね上がり電圧300を急激に減衰することができる。そして、ロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値104以下になると、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111により第1電流源制御信号16がロウ出力となり、第1電流源17はオフになる。この第1電流源制御信号立ち下がりタイミング33で、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第2電流源制御信号24がハイ出力され、第2電流源19がオンになる。これにより、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、急速に減衰するが下がり過ぎることなく一定値105に収束し、定常状態に達する。
【0035】
天絡状態であるかどうかを診断するタイミングは、コントロール信号29の立ち上がりに合わせる。コントロール信号29の立ち上がり以外は、電磁負荷5を急速に立ち上げたり逆起エネルギーが発生したりする状態であるので、天絡の判断が困難である。この天絡検出タイミング116で、ロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値104を超えていた場合、天絡状態であると判断する。
【0036】
本実施例によれば、ロウサイドドライバドレイン電圧46が逆起エネルギーによりある特定の電圧まで跳ね上がり、ノイズ・サージ保護用コンデンサ9にチャージされても、天絡検出タイミング116までに、チャージされた電圧を急激に減衰することができる。
【0037】
従って、内燃機関の回転数が増加してコントロール信号29の駆動周期が短くなり、天絡検出タイミング116の間隔が狭まった場合でも、駆動回路及び電磁負荷は正常であるにもかかわらず天絡が生じるという誤診断をすることがなく、電磁負荷5を高精度に診断し、高速度で制御することができる。
【0038】
また、以上の方法により、第1電流源17による電流は、ロウサイドドライバドレイン電圧46が逆起エネルギーによりある特定の電圧まで跳ね上がった場合にのみ流れるようにすることができるので、発熱を低減することができるというメリットもある。
【0039】
なお、上記の第1、第2電流量調整回路18、20のうち、第1電流量調整回路18(第1電流源17)が設けられておらず、第2電流量調整回路20(第2電流源19、第3電流源21)だけが設けられている構成、すなわち、図18の比較図に示したような構成では、上記のような逆起エネルギー急速減衰(跳ね上がりドレイン電圧急速減衰)を期待することができない。図18において、第1実施例と同一の符号は、第1実施例と同一或いは共通する要素を示す。すなわち、図18の状態で、仮に電磁負荷5の通電を遮断させた場合に、その跳ね上がりドレイン電圧をドレイン電圧検出回路15が検出して第2電流源19をオンしたとしても、第2電流源19は、その仕様から、ノイズ・サージ保護用コンデンサ9にチャージされた逆起エネルギーによる電圧を急速に放出することはできない。従って、図19に示すタイミングチャートの符号300に示すように逆起エネルギーの跳ね上がりドレイン電圧は、緩やかな減衰カーブを描いて所定のドレイン電圧に落ち着く。
【0040】
この場合には、内燃機関の回転数が増加してコントロール信号29の駆動周期が短くなり、天絡検出タイミング116の間隔が狭まった場合には、この逆起エネルギーのドレイン電圧が天絡検出閾値を下回らない時に天絡検出タイミング116に入り、駆動回路及び電磁負荷は正常であるにもかかわらず天絡が生じているとの誤診断をする可能性が高まる。
【実施例2】
【0041】
図2に、本発明による内燃機関制御装置の第2の実施例を説明する。
【0042】
本実施例の構成は、図1に示す第1電流源17を、第1電流源用抵抗32に変更したものである。第1電流源用抵抗32は、シンク電流用抵抗としての役割を果たす。ノイズ・サージ保護用コンデンサ9にチャージされたロウサイドドライバドレイン電圧46は、第1電流源用抵抗32により消費されディスチャージするので、図3に示した実施例1の場合と同様に急激に減衰することができる。従って、このような構成によっても、実施例1と同様な効果を得ることが可能である。
【実施例3】
【0043】
図4、5を使用して、本発明による内燃機関制御装置の第3の実施例を説明する。
【0044】
本実施例の構成は、図4に示すように、実施例1(図1)において、診断回路25とその周辺回路の位置を、電磁負荷5の下流から上流に変更したものである。前記周辺回路には、第1電流量調整回路18、第2電流量調整回路20、電圧検出回路15、及び電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111が含まれる。実施例1では、電磁負荷5の故障診断は、ロウサイドドライバドレイン電圧46を検出することにより実施していた。本実施例での電磁負荷5の故障診断は、ハイサイドドライバドレイン電圧114(ハイサイドドライバのドレイン電圧)を電圧検出回路15で検出し、診断回路25で診断することにより実施する。
【0045】
本実施例での動作を、図5のタイミングチャートに示した。ハイサイドドライバドレイン電圧114は、ハイサイドドライバゲート信号立ち下がりタイミング48で、逆起エネルギーにより、跳ね上がり電圧300まで上昇する。このとき、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第1電流源制御信号16がハイ出力され、第1電流源17がオンとなり、ハイサイドドライバドレイン電圧114は急激に減衰する。そして、ハイサイドドライバドレイン電圧114が天絡閾値104以下になり、第1電流源制御信号16がロウ出力となり第1電流源17がオフする。一方、第1電流源制御信号立ち下がりタイミング33で、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第2電流源制御信号24がハイ出力され、ここでは、第2電流源19がオンする。これにより、ハイサイドドライバドレイン電圧114は一定値106に収束する。
【0046】
以上説明したように、本実施例での動作は、ロウサイドドライバドレイン電圧46がハイサイドドライバドレイン電圧114に替わっている以外は、実施例1とほぼ同じである。従って、本実施例の構成によっても、実施例1と同様に、内燃機関の回転数が増加してコントロール信号29の駆動周期が短くなり、天絡検出タイミング116の間隔が狭まった場合でも、駆動回路及び電磁負荷は正常であるにもかかわらず天絡が生じるという誤診断をすることがなく、電磁負荷5を高精度に診断し、高速度で制御することができる。
【実施例4】
【0047】
図6、7を使用して、本発明における内燃機関制御装置の第4の実施例を説明する。実施例1から3は、天絡、地絡検出のうち、天絡検出において誤診断を予防できる装置の例であったが、本実施例では、地絡検出で誤診断を予防できる装置の例である。
【0048】
図6に示すように、本実施例における内燃機関制御装置2は、図4に示した実施例3の内燃機関制御装置2において電磁負荷5の下流に設置されているノイズ・サージ保護用コンデンサ(下流)9、ロウサイドドライバ10、及びロウサイドドライバ用の駆動信号生成回路12を省いた構成となっている。
【0049】
ロジック回路31は、マイクロプロセッサ30から出力されたコントロール信号29を受信し、ハイサイドドライバ用の駆動信号生成回路28にハイサイドドライバ駆動信号(ロジック)26を出力する。ハイサイドドライバ駆動信号(ロジック)26を受信したハイサイドドライバ用の駆動信号生成回路28は、ハイサイドドライバ駆動信号(アナログ)27をハイサイドドライバ4に出力する。ハイサイドドライバ4は、ハイサイドドライバ駆動信号(アナログ)27によって駆動し、電磁負荷5に電磁負荷電流5Aを流す。電磁負荷5の故障診断は、ハイサイドドライバ4のソース電圧115を電圧検出回路15で検出し診断回路25で行う。
【0050】
本実施例での動作を、図7のタイミングチャートを用いて説明する。
【0051】
マイクロプロセッサ30からのコントロール信号29がオンになると、ハイサイドドライバ4の駆動信号、すなわちハイサイドドライバ駆動信号(アナログ)27がオンになり、電磁負荷5に電磁負荷電流5Aが流れる。
【0052】
コントロール信号29がオフになると、ハイサイドドライバ4のゲート信号がオフになる。このハイサイドドライバゲート信号立ち下がりタイミング48で、ハイサイドドライバ4のソース電圧115は、逆起エネルギーにより、ある特定の電圧(落込み電圧302)まで落ち込む。落込み電圧302により、ノイズ・サージ保護用コンデンサ(上流)7の電荷はディスチャージされ減少する。同時に、落込み電圧302は、ハイサイドドライバソース電圧115として電圧検出回路15に入力される。そして、電圧検出回路15の検出結果に従い、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111によって、第1電流量調整回路18及び第2電流量調整回路20が制御される。
【0053】
このとき、ハイサイドドライバソース電圧115が地絡閾値44よりも低い場合、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第1電流源制御信号16がハイ出力され、第1電流源17がオンとなる。これにより、ハイサイドドライバソース電圧115は、図7に示すように急激に上昇する。そして、ハイサイドドライバソース電圧115が地絡閾値44以上になると、第1電流源制御信号16がロウ出力となり第1電流源17はオフになる。この第1電流源制御信号立ち下がりタイミング33で、電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111から第2電流源制御信号24がハイ出力され、第3電流源21がオンになる。これにより、ハイサイドドライバソース電圧115は一定電圧値107に収束する。
【0054】
地絡状態であるかどうかを診断するタイミングは、実施例1での天絡状態の診断と同様に、コントロール信号29の立ち上がりに合わせる。この地絡検出タイミングで、ハイサイドドライバソース電圧115が地絡閾値44を下回っていた場合、地絡状態であると判断する。
【0055】
しかし、上述のような動作によって、ハイサイドドライバソース電圧115が逆起エネルギーによりある特定の電圧まで落ち込みノイズ・サージ保護用コンデンサ7をディスチャージした場合でも、前記地絡検出タイミングまでに、ディスチャージした電圧を急激に上昇させることが出来る。
【0056】
従って、内燃機関の回転数が増加してコントロール信号29の駆動周期が短くなり、地絡検出タイミングの間隔が狭まった場合でも、駆動回路及び電磁負荷は正常であるにもかかわらず地絡が生じるという誤診断をすることがなく、電磁負荷5を高精度に診断し、高速度で制御することができる。
【実施例5】
【0057】
図8、9を用いて、本発明における内燃機関制御装置の第5の実施例を説明する。
【0058】
本実施例の内燃機関制御装置2は、第1の実施例同様の回路構成をなすものであるが、次の点が相違する。本実施例では、図1に示す電流回生ダイオード8及びチョッピング駆動信号生成回路108が省略され(ただし電流回生ダイオード8及びチョッピング駆動信号生成回路108を設けてもよい)、また、以下に示すフィルタ時間生成回路50、診断ウィンドウ生成回路58、及び遅延時間可変回路301を有する。
【0059】
フィルタ時間生成回路50により、ロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13には所定の遅延時間が設けられ、コントロール信号29の立ち上がりまたは立ち下がりから遅れてハイまたはロウになる。前記遅延時間は、内燃機関制御装置2が備えられた内燃機関の高速運転に支障がない程度の時間である。前記遅延時間が設けられたロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13、つまり遅延ロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13aが、ロウサイドドライバ用の駆動信号生成回路12に入力される。このため、コントロール信号29とロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11との間にも、前記遅延時間と同じだけの遅延時間が生じる。この遅延時間の間では、コントロール信号29が入力されても、電磁負荷電流5Aの制御は開始されないので、ロウサイドドライバドレイン電圧46の電位レベル変動は発生しない。
【0060】
また、フィルタ時間生成回路50により生成された遅延時間は、診断ウィンドウ生成回路58に入力される。診断ウィンドウ生成回路58からは、遅延時間の間だけ診断ウィンドウ信号112が出力されて、診断回路25に入力される。診断回路25は、診断ウィンドウ信号112がオンになっている間、診断カウンタが動作し、ロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値または地絡閾値を超えた場合に、その超えた時間をカウントする。
【0061】
以上のような回路構成の内燃機関制御装置2に対し、ノイズ等の外乱がロウサイドドライバドレイン電圧46に混入した場合のタイミングチャートを図9に示す。電磁負荷5の天絡や地絡の診断は、コントロール信号29の立ち上がりタイミング51をトリガとして開始し、診断ウィンドウ信号112がオンとなっている間、クロック信号の立ち上がりに同期して行う。診断ウィンドウ信号112は、コントロール信号29の立ち上がりタイミング51でオンとなり、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11の立ち上がりタイミング53でオフとなる。ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11は、コントロール信号29の立ち上がりタイミング51から、遅延時間56だけ遅れている。すなわち、診断ウィンドウ信号112は、遅延時間56の間はオンとなっている。
【0062】
診断ウィンドウ信号112がオンとなっている間、診断回路25の診断カウンタは、上述したようにロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値を超えた時間または地絡閾値を下回った時間をカウントし、天絡や地絡の診断を行う。この診断においては、前記診断カウンタのカウントアップする回数が予め定めた診断カウント数よりも少ない場合は、診断フラグ信号14は出力されないようになっている。前記診断カウント数は、例えば、遅延時間56の間に前記クロック信号が立ち上がる回数に等しいと予め定めることができる。
【0063】
図9には、ロウサイドドライバドレイン電圧46がノイズ等の混入により上昇した場合について説明してある。なお、前記診断カウント数は、12回と予め定めたものとする。
図9に示すように、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、ノイズ等により電位変動113が生じる。前記診断カウンタは、ロウサイドドライバドレイン電圧46が天絡閾値104を超えている間、クロック信号の立ち上がりに同期して初期状態54からカウントアップする。図9では、カウントアップ(1)74とカウントアップ(2)55の2回カウントアップしている。このカウントアップ数は、前記診断カウント数より少ないので、診断フラグ信号14は出力されない。このため、ノイズによる電位変動113を天絡と診断しないので、誤診断が起こらない。
【0064】
もし、前記カウントアップ数が、予め定めた前記診断カウント数(本実施例の場合は12回)以上の場合には、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11の立ち上がりタイミング53で、診断フラグ信号14がオンになり、天絡が生じたと診断する。
【0065】
以上、ロウサイドドライバドレイン電圧46がノイズ等により上昇した場合について述べた。ロウサイドドライバドレイン電圧46が下降した場合についても同様に、診断ウィンドウ信号112がオンになっている間は、前記カウントアップ数と前記診断カウント数とを比較することにより、誤って地絡と診断してしまうことを防ぐことができる。上述の方法により、ノイズのような突発的な外乱により、電磁負荷5に天絡や地絡が生じたと誤診断をするのを防ぐことができる。
【0066】
また、図8に示すように、本実施例の内燃機関制御装置2は、遅延時間可変回路301を有するので遅延時間56を変えることができ、前記診断カウント数を変更して診断フラグ信号14をオンにする条件を変えることもできる。従って、遅延時間56や前記診断カウント数を変えることにより、さまざまな条件下でも誤診断の発生を防止することができるというメリットもある。
【実施例6】
【0067】
図10、11を使用して、本発明における内燃機関制御装置の第6の実施例を説明する。本実施例は、電流回生ダイオードの破壊または開放状態を検知することのできる内燃機関制御装置の例である。
【0068】
本実施例の内燃機関制御装置2は、第1実施例同様の回路構成をなすものであるが、次の点が相違する。本実施例では、図1に示す回生チョッピング駆動信号生成回路108が省略され(ただしチョッピング駆動信号生成回路108を設けてもよい)、また、以下に示すアクティブクランプ回路61が設けられ、かつ電圧検出回路15は、ロウサイドドライバ10のゲート信号11を検出するようにしてある。
【0069】
アクティブクランプ回路61は、ロウサイドドライバドレイン電圧46が所定値を超えた場合に、ロウサイドドライバ10のゲートに電流を供給して強制的に前記ゲート信号をハイとし、ロウサイドドライバ10をオンにする。
【0070】
診断回路25は、電圧検出回路15からの診断フラグ信号14と、ロジック回路31からのロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13とが入力され、この2つの信号を比較することにより、電流回生ダイオード8の破壊または開放状態を検知する。
【0071】
図11を参照して、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態に陥った場合について説明する。電流回生ダイオード8は、電流回生ダイオード破壊・開放時間62の間、破壊または開放状態に陥ったとする。通常、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、電流回生ダイオード8により昇圧電圧値63まで上昇する。しかし、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態に陥った場合は、電流回生ダイオード破壊・開放時間62の間、逆起エネルギーは昇圧回路3に回生できないため、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、昇圧電圧値63を超えて更に上昇する。ロウサイドドライバドレイン電圧46が予め定めた電流回生ダイオード破壊検出閾値(2)70を超えると、アクティブクランプ回路61がオンとなる。すると、ロウサイドドライバ10のドレインからゲートに電流が供給され、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11、すなわちロウサイドドライバ10のゲート信号は、少なくとも後述するフィルタ時間65の間、強制的に持ち上げられる。これにより、ロウサイドドライバ10がオンとなり、跳ね上がった逆起エネルギーは、クランプ電圧値64にクランプされる。
【0072】
ここで、電流回生ダイオード8の破壊または開放状態を検知する方法を説明する。
【0073】
跳ね上がった逆起エネルギーは、クランプ電圧値64にクランプされている。このとき、前記ゲート信号は、上述したように電位が上昇している。電圧検出回路15は、前記ゲート信号の電位を検出し、予め定めた電流回生ダイオード破壊検出閾値(1)66を超えている場合には、診断フラグ信号14をハイ出力する。前記ゲート信号が強制的に持ち上げられてから、診断フラグ信号14がハイ出力するまでの時間をフィルタ時間65と呼ぶ。
【0074】
一方、図11に示したように、前記ゲート信号がアクティブクランプ回路61によって強制的に持ち上げられたとき、コントロール信号29は常にロウとなっている。従って、コントロール信号29に制御されるロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13も常にロウとなっている。
【0075】
従って、診断回路25は、診断フラグ信号14がハイに、ロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)13がロウになっている状態を検知する。これは、ロウサイドドライバ10の制御信号がロウになっているのにも関わらず、フィルタ時間65の間は前記ゲート信号の浮きが発生している状態である。このことは、アクティブクランプ回路61が動作しており、電流回生ダイオード8が破壊もしくは開放状態にあるということを意味する。以上により、電流回生ダイオード8が破壊もしくは開放状態にあるということを高精度に検知することができる。
【0076】
更に、ロウサイドドライバ10のゲートにノイズ等の外乱が生じた場合でも高い検出精度を保証するために、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11の立ち下がりからフィルタ時間65内で電流回生ダイオード8の状態を検知するようにしている。
【実施例7】
【0077】
図12、13を使用して、本発明における内燃機関制御装置の第7の実施例を説明する。本実施例は、電流回生ダイオードの破壊または開放状態を検知することのできる内燃機関制御装置の別の例である。検知方法として、実施例6では、ロウサイドドライバ10のゲート信号の電圧を利用していたが、本実施例では、ロウサイドドライバ10のドレイン電圧46を利用する。第1、第2電流量調整回路18、20、及び電流回生ダイオード8の動作は、第1実施例と同様である。
【0078】
図12は、本実施例における内燃機関制御装置2の回路を示した図である。実施例6とは、電圧検出回路15にロウサイドドライバ10のドレイン電圧46が入力される点が異なっている。図13に示すタイミングチャートは、実施例6と同様である。
【0079】
実施例6で述べたように、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態に陥った場合、図13に示すように、電流回生ダイオード破壊・開放時間62の間は、逆起エネルギーは昇圧回路3に回生することができない。このため、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、電流回生ダイオード破壊検出閾値(2)70を超え、クランプ電圧値64まで跳ね上がる。
【0080】
ここで、本実施例での、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態になったことを検知する方法を説明する。跳ね上がったロウサイドドライバドレイン電圧46は、電圧検出回路15によって検出される。そして、電流回生ダイオード破壊検出閾値(2)70を超えると、診断フラグ信号14が診断回路25に出力される。診断回路25は、診断フラグ信号14をハイ出力する。これにより、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態になったことを検知することができる。
【0081】
加えて、ロウサイドドライバ10のゲートにノイズ等の外乱が生じた場合でも高い検出精度を保証するために、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11の立ち下がりからフィルタ時間65内で検知する。
【0082】
以上のような方式をとれば、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態になったことをより高精度に検知できる。
【実施例8】
【0083】
図14、16を使用して、本発明における内燃機関制御装置の第8の実施例を説明する。本実施例は、電流回生ダイオードの破壊または開放状態を検知することのできる内燃機関制御装置の別の例である。検知方法として、本実施例では、昇圧回路3とハイサイドドライバ4との間に流れる電流(以下、ハイサイド電流と称する)の逆電流の有無を調べる。
【0084】
図14は、本実施例における内燃機関制御装置2の回路を示した図である。実施例7と異なるのは、昇圧回路3とハイサイドドライバ4の間に電流検出抵抗81と電流検出回路80を設け、電流検出回路80で検出した電流が電圧検出回路15に入力される点である。また、第1電流量調整回路18、第2電流量調整回路20、第1電流源17、第2電流源19、第3電流源21、及び電流調整用駆動信号切り替えスイッチ111は記載を省略した。図16に示すタイミングチャートは、実施例7と同様であるが、電流検出抵抗81に流れるハイサイド電流81Aの波形が追加されている。
【0085】
実施例6及び7で述べたように、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態に陥った場合、図16に示すように、電流回生ダイオード破壊・開放時間62の間は、逆起エネルギーは昇圧回路3に回生することができない。このため、ロウサイドドライバドレイン電圧46は、電流回生ダイオード破壊検出閾値(2)70を超え、クランプ電圧値64まで跳ね上がる。
【0086】
ここで、本実施例での、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態になったことを検知する方法を説明する。図16に示すように、コントロール信号29がオンになってロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11がオンになると、ハイサイド電流81Aは、上流から下流に向かって流れ、ピーク電流84のような波形を示す。ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11がオフとなると、通常は、電流回生ダイオード8に回生電流が流れ、電流検出抵抗81に流れるハイサイド電流81Aは逆電流85となる。
【0087】
しかし、電流回生ダイオード8が破壊または開放となった場合は、回生電流を流すことができないため、電流検出抵抗81には逆電流85は流れない。図16に示したハイサイド電流81Aの波形のうち、点線部は、電流回生ダイオード8が正常の場合に流れるはずの逆電流85を示している。逆電流85が流れないことを電流検出回路80で検出することにより、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態であることを検知できる。
【実施例9】
【0088】
図15、17を使用して、本発明における内燃機関制御装置の第9の実施例を説明する。本実施例は、電流回生ダイオードの破壊または開放状態を検知することのできる内燃機関制御装置の別の例である。検知方法として、本実施例では回生電流の有無を調べる。
【0089】
本実施例における内燃機関制御装置を図15に示す。内燃機関制御装置2は、図14に示した実施例8のものと同じであるが、電流検出回路80と電流検出抵抗81の設置位置を変更し、電流回生ダイオード8とロウサイドドライバ10の間に設置したものである。
電流検出抵抗81には、回生電流81Bが流れる。図17に示すタイミングチャートも実施例8と同様であるが、ハイサイド電流81Aに替わって、回生電流81Bの波形が記されている。
【0090】
実施例8で説明したように、ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)11がオフになると、回生電流81Bは、通常、電流回生ダイオード8に流れ、電流検出抵抗81にも流れる。
【0091】
しかし、電流回生ダイオード8が破壊または開放となった場合、回生電流81Bは、電流検出抵抗81に流れない。図17に示した回生電流81Bの波形のうち、点線部は、電流回生ダイオード8が正常の場合に流れるはずの回生電流を示している。回生電流81Bが流れないことを電流検出回路80で検出することにより、電流回生ダイオード8が破壊または開放状態であることを検知できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、ガソリンや軽油等を燃料とする、自動車、オートバイ、農耕機、工機、船舶機等において、バッテリ電圧あるいは昇圧したバッテリ電圧により、燃料噴射装置等の電磁負荷を駆動する内燃機関制御装置に関する。加えて、内燃機関のような駆動周期が変化する制御装置に関して、高い診断性能が必要な装置に適用される。
【符号の説明】
【0093】
1…バッテリ電圧、2…内燃機関制御装置、3…昇圧回路、4…ハイサイドドライバ、5…電磁負荷、5A…電磁負荷電流、6…逆流防止ダイオード、7…ノイズ・サージ保護用コンデンサ(上流)、8…電流回生ダイオード、9…ノイズ・サージ保護用コンデンサ(下流)、10…ロウサイドドライバ、11…ロウサイドドライバ駆動信号(アナログ)、12…ロウサイドドライバ用の駆動信号生成回路、13…ロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)、13a…遅延ロウサイドドライバ駆動信号(ロジック)、14…診断フラグ信号、15…電圧検出回路、16…第1電流源制御信号、17…第1電流源、18…第1電流量調整回路、19…第2電流源、20…第2電流量調整回路、21…第3電流源、24…第2電流源制御信号、25…診断回路、26…ハイサイドドライバ駆動信号(ロジック)、27…ハイサイドドライバ駆動信号(アナログ)、28…ハイサイドドライバ用の駆動信号生成回路、29…コントロール信号、30…マイクロプロセッサ、31…ロジック回路、32…第1電流源用抵抗、33…第1電流源制御信号立ち下がりタイミング、37…電源グランド、39…ロウサイドドライバゲート信号立ち下がりタイミング、44…地絡閾値、46…ロウサイドドライバドレイン電圧、48…ハイサイドドライバゲート信号立ち下がりタイミング、50…フィルタ時間生成回路、51…コントロール信号立ち上がりタイミング、53…ロウサイドドライバ駆動信号立ち上がりタイミング、54…診断カウンタの初期状態、55…カウントアップ2、56…遅延時間、58…診断ウィンドウ生成回路、61…アクティブクランプ回路、62…電流回生ダイオード破壊・開放時間、63…昇圧電圧値、64…クランプ電圧値、65…フィルタ時間、66…電流回生ダイオード破壊検出閾値1、70…電流回生ダイオード破壊検出閾値2、74…カウントアップ1、80…電流検出回路、81…電流検出抵抗、81A…ハイサイド電流、81B…回生電流、84…ピーク電流、85…逆電流、100…ピーク電流閾値、103…電磁負荷上流電圧、104…天絡閾値、105…ロウサイドドライバドレイン電圧の一定値、106…ハイサイドドライバドレイン電圧の一定値、107…ハイサイドドライバソース電圧の一定値、108…チョッピング駆動信号生成回路、109…チョッピング駆動信号、111…電流調整用駆動信号切り替えスイッチ、112…診断ウィンドウ信号、113…ノイズによる電位変動、114…ハイサイドドライバドレイン電圧、115…ハイサイドドライバソース電圧、116…天絡検出タイミング、300…跳ね上がり電圧、301…遅延時間可変回路、302…落込み電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁負荷と、前記電磁負荷の電源と、前記電磁負荷を駆動するために少なくとも前記電源と前記電磁負荷との間及び前記電磁負荷と電源グラウンドとの間のいずれか一方に配置されたドライバ用のスイッチ素子と、前記電磁負荷と前記スイッチ素子との間の電圧異常を検出することにより回路構成の故障を診断する診断手段と、を備えた電磁負荷制御装置において、
電磁負荷遮断時に生じる逆起エネルギーを急速に減衰させる手段、前記電圧異常の検出する時間帯を設定する手段、及び前記電圧異常の確証を得るための手段のうち少なくとも一つ、を備えることを特徴とする電磁負荷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁負荷制御装置において、
前記電圧異常の検出タイミングを、電磁負荷遮断と電磁負荷の通電とが繰り返される電磁負荷の通電開始タイミングに合わせて設定してあり、かつ電磁負荷遮断時に生じる逆起エネルギーを急速に減衰させる手段として電流量調節手段が設けられている電磁負荷制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁負荷制御装置において、
前記電圧異常の検出タイミングを、前記スイッチ素子を駆動させるための制御信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングで行うように設定され、かつ電磁負荷遮断時に生じる逆起エネルギーを急速に減衰させる手段として電流量調節手段が設けられている電磁負荷制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁負荷制御装置において、
前記逆起エネルギーの急速減衰手段は、前記逆起エネルギーにより跳ね上がり電圧が生じる箇所と電源グラウンドとの間に設置される電流量調節手段であり、この電流量調節手段は、前記電磁負荷と前記スイッチ素子との間の電圧検出信号に応じて作動するように設定してある電磁負荷制御装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに1項に記載の電磁負荷制御装置において、
前記逆起エネルギーにより跳ね上がり電圧が生じる箇所と電源グラウンドとの間に、前記電磁負荷に流れる電流が所定のレベルに保つように収束させる電流源と並列に前記電流量調節手段が設置されている電磁負荷制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電磁負荷制御装置において、
前記スイッチ素子のゲートに入力される駆動信号を、マイクロコンピュータの制御信号より所定時間だけ遅延させる遅延手段を設け、この所定時間の遅延範囲を前記電圧異常検出するための時間帯として設定している電磁負荷制御装置。
【請求項7】
請求項1記載の電磁負荷制御装置において、
前記スイッチ素子のゲートに入力される駆動信号を、マイクロコンピュータの制御信号より所定時間だけ遅延させる遅延手段を設け、この所定時間の遅延範囲を前記電圧異常検出するための時間帯として設定し、
前記電圧異常の確証を得るための手段は、前記時間帯で検出される異常電圧値が所定時間以上継続するか否か判定する手段により構成されている電磁負荷制御装置。
【請求項8】
請求項1記載の電磁負荷制御装置において、
前記電圧異常の確証を得るための手段は、異常電圧値が検出された時に前記スイッチ素子の制御信号がオフ状態を保っているか否か判別する手段により構成されている電磁負荷制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の電磁負荷制御装置において、
前記電圧異常を検出する手段は、電磁負荷回路の天絡、地絡、及び電磁負荷の通電を遮断した時の逆起エネルギーを回生させる回生ダイオードの破壊或いは開放のうち少なくとも一つに基づく電圧異常を検出する電磁負荷制御装置。
【請求項10】
請求項1記載の電磁負荷制御装置において、
前記電磁負荷の回路に、電磁負荷の通電を遮断した時の逆起エネルギーを回生させる回生ダイオードを備え、前記電圧異常を検出する手段は、前記回生ダイオードの破壊或いは開放に基づく電圧異常を検出し、前記電圧異常の確証を得るための手段は、前記電圧異常が検出された時に前記回生ダイオードに電流が流れているか否かを判別する手段により構成されている電磁負荷制御装置。
【請求項11】
請求項1記載の電磁負荷制御装置において、
前記電磁負荷の回路に、電磁負荷の通電を遮断した時の逆起エネルギーを回生させる回生ダイオードを備え、前記電圧異常を検出する手段は、前記回生ダイオードの破壊或いは開放に基づく電圧異常を検出し、前記電圧異常の確証を得るための手段は、異常電圧値が検出された時に前記スイッチ素子の制御信号がオフ状態を保っているか否か判別する手段により構成されている電磁負荷制御装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、前記回生ダイオードの破壊或いは開放に基づく電圧異常電圧を検出する手段は、前記電圧異常が所定閾値を超えるとこれをクランプして前記電磁負荷のスイッチング素子のゲートをオンさせるクランプ回路と、このクランプにより前記スイッチング素子が通電した時のゲート電位を検出する検出回路とから構成されている電磁負荷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−233252(P2010−233252A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143295(P2010−143295)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【分割の表示】特願2008−11584(P2008−11584)の分割
【原出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】