説明

内燃機関用のカムシャフト調節装置

本発明は、内燃機関用のカムシャフト調節装置(1)であって、駆動車(2)と、カムシャフトに配属された被駆動エレメントとの間における相対的な角度関係が、外側ロータ(3)と内側ロータ(6)との間における圧力室(9,10)の液圧負荷によって調節可能であり、駆動車(2)がプラスチックから製造されていて、駆動車(2)に対応配置された外側ロータ(3)が金属から製造されている形式のものに関する。
このような形式のカムシャフト調節装置において、特に良好な結合形式を得るため及び組立てにおける多様性を減じるために、本発明の構成では、外側ロータ(3)と内側ロータ(6)との間における少なくとも1つの軸受面(4)が、プラスチック製の駆動車(2)内に素材結合式又は形状結合式に受容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式の内燃機関用のカムシャフト調節装置、すなわち、内燃機関用のカムシャフト調節装置であって、駆動車と、カムシャフトに配属された被駆動エレメントとの間における相対的な角度関係が、外側ロータと内側ロータとの間における圧力室の液圧負荷によって調節可能であり、駆動車がプラスチックから製造されていて、駆動車に対応配置された外側ロータが金属から製造されている形式のものに関する。
【0002】
背景技術
DE10211607A1に基づいて、内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの相対的な回転角位置を調節及び固定するカムシャフト調節装置が公知である。この場合液圧式の調節装置は、駆動車に配属された外側ロータと、被駆動エレメントを介してカムシャフトに結合された内側ロータとを有している。外側ロータと内側ロータとの間には圧力室が形成されており、これらの圧力室における液圧的な負荷によって、駆動車と被駆動エレメントとの間における角度関係が変化可能である。
【0003】
前記刊行物には、駆動車と、その他の機能部分のうちの少なくとも1つを、高負荷可能なプラスチックから一体的に製造することが提案されている。第1実施形態によれば、駆動車及び外側ロータ並びに別の2つの構成エレメントが一体的にプラスチックから製造されている。択一的な構成では、外側ロータは別体の部材として、プラスチックから又は金属のような汎用の材料から製造されていて、駆動車と一体的に形成されたカバー内に挿入されている。
【0004】
発明の課題
本発明の課題は、良好な製造可能性、所要構成エレメントの僅かな数及び軽い重量という利点と共に、適宜な機能を有するもしくは機能を最適化されたカムシャフト調節装置を提供することである。
【0005】
発明の開示
この課題を解決するために本発明の構成では、請求項1の特徴部に記載のように、すなわち冒頭に述べた形式のカムシャフト調節装置において、外側ロータの少なくとも1つの軸受面が、金属製の挿入体を備えて形成されていて、該挿入体が、プラスチック製の保持体内に素材結合式又は形状結合式に受容されているようにした。
【0006】
本発明は次のような認識、すなわち、DE10211607A1の前記第1実施形態では、軸受面がプラスチックから形成されており、このような構成は金属製の接触対偶に対してもプラスチック製の接触対偶に対しても、軸受特性、滑り特性及び摩耗並びに運転強度に関して、最適ではない、という認識に基づいている。例えば外側ロータのために、熱硬化性樹脂であるプラスチックが使用されると、このような熱硬化性樹脂は鉱物を含有しているおそれのあることが分かっている。このような鉱物は、鋼製であっても内側ロータの滑り面において、激しい摩耗及び摩擦を生ぜしめ、最悪の場合にはカムシャフト調節装置の故障を惹起する。また、DE10211607A1の前記第1実施形態では、金属製の軸受面を該軸受面を取り囲むプラスチック体に挿入する作業が、付加的な、もしくは不要な組立てステップを必要としている。さらにこのような挿入作業によって、軸受面に対してさらなる自由度又は遊び及び製造の不正確さが生じることになり、これによってカムシャフト調節装置の運転が損なわれるおそれがある。
【0007】
従って本発明によれば、外側ロータの軸受面が、金属製の挿入体を備えて形成されていて、該挿入体が、プラスチック製の保持体内に素材結合式に受容されている。このような素材結合式の受容によって、不都合な自由度、遊び及び不都合な組立てステップを回避することができる。従って、本発明によれば金属製の挿入体を使用することができるので、金属製の軸受面が得られ、これによって滑り面における摩耗及び摩擦の増大を回避することができる。本発明による保持体は、駆動車自体であっても、フランジのような別の構成エレメントであってもよく、後者の場合フランジは、相応な固定エレメントを介して、摩擦力結合式、形状結合式及び/又は素材結合式に、場合によっては別の構成エレメントを介して、駆動車と結合されている。
【0008】
本発明の別の構成では、挿入体が周方向において環状に形成されていて、軸受面に加えて圧力室の画成部を形成している。従って挿入体は、支承装置の機能と運転強度のある圧力室の構成というマルチ機能をもって形成されている。この場合挿入体は圧力室を半径方向外側に向かって画成しかつ/又は周方向において画成し、しかも内側ロータの画成部又はストッパをも形成することができる。周方向における挿入体の環状の構成によって、閉鎖された剛性のリング構造体が形成されている。これによってさらに挿入体は、全周にわたって分配配置された複数の圧力室のポジション及び方向付けを修正する。
【0009】
外側ロータと支持体との間における素材結合式の結合を改善するために、上述の構成エレメントのうちの少なくとも1つが結合エレメントを有することができる。このような結合エレメントとしては、リブ、半径方向の突出部又は半径方向の凹設部を挙げることができ、これらには、接着剤、前記構成エレメントのうちの1つの溶融された材料又は吹き付けられる物質のような結合手段を、装入もしくは付着させることができる。これによって、素材結合式の結合手段と外側ロータもしくは保持体との間における接触箇所の表面を、増大させることができる。同時に、外側ロータと保持体との間において伝達される力は、結合エレメントによって大きな面を介して支持されることになる。伝達される力は、結合エレメントによって、周面の領域における剪断力と垂直力との間における適宜な構成において、半径方向の突出部及び凹設部によって伝達されることができる。
【0010】
本発明による有利なカムシャフト調節装置では、駆動車が複合材料又は線維複合材料から製造されている。例えばこの場合熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することも、又は可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とから一緒に製造された材料を使用することも可能である。これによって材料選択及び材料組合せに相応して、駆動車の金属特性に適宜な影響を与えることができる。
【0011】
本発明の別の構成では、内側ロータがプラスチックから形成されている。そして内側ロータは、該内側ロータに素材結合式に結合された金属製の少なくとも1つの軸受面を有している。このようになっていると、ロータ自体に対しても、プラスチック製の構成に対して公知の、例えばDE10211607A1に記載された利点を、得ることができる。さらに、内側ロータ及び外側ロータは金属製の軸受面を有しており、このことは、滑り特性及び運転強度に関して有利であることが判明している。
【0012】
本発明の別の構成では、ベルト車又はスプロケットを備えた駆動車がプラスチックから形成されていて、固定エレメントを介して、フランジとして形成されたプラスチック製の保持体と結合されており、該保持体が素材結合式に挿入体に結合されている。このように構成されていると、例えば複雑な歯列構造を有する歯列の取付けを必要とする駆動車の製造を、挿入体を備えたフランジの製造と別個に行うことができ、この場合同じ又は異なった製造方法及び同じ又は異なった材料を、必要に応じて使用することができる。しかしながら同様に、駆動車とフランジとの間における固定エレメント並びにフランジと挿入体との間における素材結合式の結合によって、運転強度のある結合を得ることができる。
【0013】
固定エレメントを駆動車もしくはフランジの使用材料と共働させることが望まれていない場合には、固定エレメントが駆動車及び/又はフランジの補強挿入体と共働するようになっていると、有利である。このような補強挿入体は例えばインサートのような金属挿入体であり、この金属挿入体は例えばその周面で、駆動車又はフランジの別の材料に対して支持されていて、良好な力導入が保証されている。補強挿入体が受容切欠きを有している場合には、固定エレメントとの結合のために有利な構成を得ることができる。この場合例えばこのような受容切欠きに、固定エレメントがねじ結合されるねじ山が形成されている。これによってカムシャフト調節装置の特にコンパクトな構造が得られると同時に、良好な力導入及び力伝達が可能になる。
【0014】
本発明の別の構成では、フランジとスプロケット又はベルト車との間における結合が、スプロケット又はベルト車の歯列の半径方向内側において行われる。この場合、スプロケット又はベルト車もしくは該スプロケット又はベルト車の歯列の軸方向における寸法が、チェーン又はベルトのような駆動手段によって伝達される力に関連して所定されており、これによってカムシャフト調節装置の軸方向における構造長さの最小値が与えられている。本発明のように構成されていると、構造空間は最適に利用することができる。それというのは、いずれにせよ存在しているスプロケット又はベルト車の内室が、フランジとスプロケットとの間における結合箇所を配置するために利用されるからである。この場合例えばスプロケット又はベルト車は、半径方向内側に向かって張り出したウェブを有しており、このウェブはフランジとねじ結合される。本発明による別の利点としては、ベルトのような駆動手段によって駆動車に伝達される力が、大きな傾倒モーメントをもって、内側ロータ及び、カムシャフト調節装置の別の構成エレメントに伝達されない、ということが挙げられる。最適な解決策では、ウェブ、フランジもしくはウェブとフランジとの間における結合箇所が、ほぼ軸方向で見てほぼ真ん中で駆動車に配置されている。
【0015】
本発明によるカムシャフト調節装置のさらにコンパクトな構成を得るために有利な構成では、固定エレメントが、圧力室の外径よりも小さな半径のところで作用するようになっている。このように構成されていると一方では、特に圧力室とベルト車との間において、使用されない不要な構造空間が回避されるので、カムシャフト調節装置の半径方向の構造寸法を減じることができる。他方では、駆動車の所与の寸法に対して、圧力室の外径を増大させることができ、これによって液圧作用を変化させることなしに、改善された操作を得ることができる。
【0016】
さらに改善されたカムシャフト調節装置を得るためには、挿入体と保持体とが射出成形プロセスを介して素材結合式に互いに結合されていると有利である。従って挿入体は運転中におけるその機能の他に、製造中に射出成形プロセスのための形状付与面としても使用することができ、この場合にはこの材料の上に射出成形が行われる。射出成形プロセスは、同時に、挿入体と保持体との間における特に良好な素材結合式の結合部を保証する。
【0017】
図面の簡単な説明
次に図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0018】
図1は、本発明によるカムシャフト調節装置の一部を示す図であって、外側ロータとプラスチック製の保持体と該保持体に素材結合式に結合された挿入体と、外側ロータ内に回転可能に支承された内側ロータとを示す横断面図であり、
図2は、プラスチック製の駆動車が固定エレメントを介してフランジに結合されている、本発明によるカムシャフト調節装置の上半分を示す縦断面図であり、
図3は、固定エレメントを受容するための半径方向内側に向かって張り出した舌片を備えた、本発明によるプラスチック製の駆動歯車を示す図であり、
図4は、ウェブ又は舌片と該ウェブ又は舌片に挿入されたインサートを備えた駆動車の上半分を示す縦断面図であり、
図5は、半径方向内側に向かって張り出した舌片と該舌片内に配置されたインサートとを備えた駆動歯車を部分的に示す横断面図であり、
図6は、固定エレメントが半径方向内側に向かって引き込まれていて、カムシャフト調節装置の長手方向軸線からの固定エレメントの間隔が圧力室の外径よりも小さくなっている、本発明によるカムシャフト調節装置を示す横断面図であり、
図7は、保持体を介してカムシャフト調節装置のハウジングに結合されているプラスチック製の駆動歯車を示す図である。
【0019】
実施例の記載
本発明は、自体公知の構造形式の液圧式のカムシャフト調節装置1に関する。カムシャフト調節装置は、図示の実施例ではベルト車として形成された駆動車2を有している。駆動車2には外側ロータ3が堅く結合されており、この外側ロータ3は特に、駆動車2の半径方向内側に位置するように配置されている。外側ロータ3は軸受面4と圧力室5用の突出部とを備えて形成されており、軸受面4のセグメントはシリンダの周面に相当している。図1に示された実施例に示されているように、4つの軸受面4と4つの圧力室5とが設けられていて、これらの軸受面4及び圧力室5は全周にわたって均一に分配配置されている。外側ロータ3内には、カムシャフト調節装置1の長手方向軸線を中心にして外側ロータ3に対して回転可能に、内側ロータ6が配置されており、この内側ロータ6はカムシャフトに回動不能に結合可能又は結合されている。内側ロータ6は、外側ロータ3の軸受面4に対応するように形成された軸受面7と、羽根状の半径方向の延長部8とを有しており、この場合図1に示された実施例では4つの軸受面7と4つの延長部8とが設けられており、これらの軸受面及び延長部は任意に又は均一に内側ロータの全周にわたって分配配置されている。軸受面4,7は周方向におけるシール部を形成しており、延長部8の端面は半径方向内側に位置していて、シール作用をもって、対応配置された圧力室5に接触しており、これによって周方向で見て延長部の両側に圧力室9,10が形成されている。圧力室9,10の適宜な負荷によって、外側ロータ3と内側ロータ6との間における相対的な角度位置が変化可能であり、これによって、弁の開放時間の調節を目的として、駆動車2とカムシャフトとの間における角度関係を変化させることができる。
【0020】
図1に示されているように、圧力室5及び軸受面4は、周方向に延びる金属製の挿入体11によって形成されており、この挿入体11はほぼコンスタントな壁厚を有している。挿入体11は素材結合式に保持体12内に受容されており、この保持体12は、図1に示された実施例では駆動車2に一体的に形成されているか又は、駆動車2と堅く結合可能な別体の部材として形成されている。
【0021】
図2にはカムシャフト調節装置1′が縦断面図で示されている。このカムシャフト調節装置1′では、駆動車2′に、半径方向内側に向かって突出していて軸方向ではほぼ真ん中に配置されている複数の舌片13が一体的に形成されており、これらの舌片13は、カムシャフト調節装置1′の長手方向軸線X−Xの方向で駆動車2′の転動歯列の幅の1/3〜1/4にわたって延びていて、任意に又は均一に全周にわたって分配配置されている(図3参照)。舌片13の一方の端面にはフランジ14が接触しており、このフランジ14は外側ロータ3′と一体的に形成されている。舌片13とフランジ14とは摩擦力結合式、形状結合式又は素材結合式に互いに結合されていてかつ/又は、図2にねじとして形成された固定エレメント15を介して互いに結合されている。そのために舌片13及びフランジ14は、ねじ山を備えた又はねじ山のない適宜な孔16を有している。ねじ山を備えた又はねじ山のない適宜な孔16はこの場合、駆動車を形成する材料に直接的に形成されていても又は、図4に示されているように補強挿入体17によって準備されてもよく、この補強挿入体17は特に、例えば金属製のインサートであり、有利には駆動車2の別の一体的なエレメントに素材結合式に結合されている。
【0022】
駆動車2、外側ロータ3、軸受面4、内側ロータ6、軸受面7、延長部8、挿入体11、保持体12、舌片13及び/又はフランジ14に関しては、以下に記載の構成が可能である:
上述の構成エレメントは、任意のプラスチックから製造することも又は繊維複合材料から製造することも可能である。特に、任意の組成の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0023】
さらに、鉄金属又は非鉄金属を含むプラスチックのような任意の複合材料を設けることができる。熱膨張係数に関しては、熱膨張係数は相互に合わせることができるので、例えばプラスチック、線維複合材料又は複合材料は、他の材料から成る隣接する構成エレメントと同じ熱膨張係数を有している。特に、被駆動側に配置された構成エレメント、つまりカムシャフトと堅く結合された構成エレメントは、駆動側に配置された構成エレメントよりも大きな熱膨張係数を有している。
【0024】
これらの構成エレメントは、単数又は複数部分から形成されたユニットにまとめられることができる。例えば駆動車2、外側ロータ3、挿入体11を備えた軸受面4、舌片13及び保持体12並びにフランジ14は、単数又は複数の材料又は複合材料から成っていて構造空間を最適化された一体的な構成エレメントとして形成されている。
【0025】
重量の軽減化のため及び組付け可能性の改善のために、これらの構成エレメントにはポケットが設けられていてもよい。
【0026】
駆動車2と挿入体11とは、場合によっては別の部材を介して、例えばねじ結合によって摩擦力結合式に互いに結合されていても、例えばリベットによって形状結合式に互いに結合されていても、又は例えば接着、射出成形又は一体的な製造によって素材結合式に互いに結合されていてもよく、またこれらの結合可能性を互いに組み合わせることも可能である。
【0027】
非プラスチックエレメントは、例えば「モールドイン」又は「アフタモールディング」技術によって、ねじ結合のための補助手段として使用することができる。「モールドイン」技術では、ねじ山を備えた金属ブシュが、型の中で包埋射出成形されるのに対して、「アフタモールディング」技術では例えば、ねじ山を備えた金属ブシュが射出成形加工後にプラスチック部分内に挿入される。
【0028】
膨張の均一化及び/又は補強、支持材料の形成及び部材強度の上昇のために、金属製のエレメント又は部材を、補強物質として別の材料内に入れることができる。
【0029】
材料の選択及び材料の方向付けの選択は、エレメント及びその容積率に応じて膨張係数を所望の目標値に調節する熱的な構造パラメータとして使用することができる。
【0030】
補強挿入体又はインサートの使用は特に、セット力損失(Setzkraftverlust)を最小にするため及び直接的なねじ結合を可能にするために働くことができる。
【0031】
図1に示されているように外側ロータは、直接的にプラスチック材料内に埋め込まれることができる。このプラスチック材料を外側ロータと1つにまとめることは、例えば直接的に射出成形プロセスにおいて行うことも、又は後での組付けによって行うこともできる。
【0032】
図6には、図2に示された実施例に対応する部分横断面図が示されている。この図6から分かるように、フランジ14はフランジ14は円形の外輪郭を有しているのではなく、舌片13との結合領域において半径方向外側に向かって突出している。さらに図面から分かるように、外側ロータ3は圧力室5を備えた部分領域を有しており、これらの部分領域は、半径方向外側に向かって突出していて、固定エレメント15は凹設部18の領域又は半径方向内側に向かって方向付けられたポケットの領域において外側ロータ3と結合されている。これによって固定エレメント15は小さな半径に引き下げられ、その結果固定エレメント15は、圧力室5の外径の領域に位置している半径又は圧力室5の外径よりも小さな半径のところで作用する。この場合固定エレメント15、舌片13及び場合によって設けられているフランジ14は、軸方向において駆動車2′の両端面の間に設けられており、その結果軸方向において小さな構造寸法が得られる。
【0033】
図7には、所属の構成エレメント、ここでは歯環19、保持体20及びハウジング21を備えた駆動車2′′のための実施例が示されている。
【0034】
ハウジング21は特に、ほぼ円筒形の周面22を備えた金属薄板部材として形成されていて、カムシャフト調節装置1の別の構成エレメントを有している。周面22には保持体20が堅く、特に素材結合式の結合によって支持されている。そのために保持体20は中空円筒形のストッパウェブ23を有しており、このストッパウェブ23は半径方向内側に位置していて周面22に接触しており、かつ少なくとも1つの軸方向の端面においてハウジング21と素材結合式に結合されている。ストッパウェブ23は、特に移行半径を介して、円形リングプレート形状の保持体24に移行しており、この保持体24は、長手方向軸線X−Xに対して同軸的に方向付けられていて、さらに、中空円筒形の外側体25に移行しており、この外側体25は、保持体24とは反対側の端部領域に環状の段部26又はカラーを備えている。
【0035】
歯環19は、1つの軸方向端面の領域において段部26に接触しており、これに対して歯環19の、反対側に位置している端面は、半径方向内側に向かって張り出した半径方向の付加部27を有しており、この付加部27は保持体24に、もしくは保持体24と外側体25との間の移行領域に接触している。歯環19は、半径方向内側に、特にほぼ真ん中に、環状の又は全周の一部にわたって設けられた結合領域28を有しており、この結合領域28は歯環19のほぼ半分の幅にわたって延びている。結合領域28は外側体25の外周面と形状結合式、摩擦力結合式又は素材結合式に結合されている。
【0036】
歯環19、保持体20及びハウジング21のためには、既に述べたすべての材料又は材料組合せを使用することができる。別の実施例としては、歯環19をプラスチック、特に熱硬化性樹脂から製造し、それに対して保持体20及びハウジング21を金属から製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるカムシャフト調節装置の一部を示す図であって、外側ロータとプラスチック製の保持体と該保持体に素材結合式に結合された挿入体と、外側ロータ内に回転可能に支承された内側ロータとを示す横断面図である。
【図2】プラスチック製の駆動車が固定エレメントを介してフランジに結合されている、本発明によるカムシャフト調節装置の上半分を示す縦断面図である。
【図3】固定エレメントを受容するための半径方向内側に向かって張り出した舌片を備えた、本発明によるプラスチック製の駆動歯車を示す図である。
【図4】ウェブ又は舌片と該ウェブ又は舌片に挿入されたインサートを備えた駆動車の上半分を示す縦断面図である。
【図5】半径方向内側に向かって張り出した舌片と該舌片内に配置されたインサートとを備えた駆動歯車を部分的に示す横断面図である。
【図6】固定エレメントが半径方向内側に向かって引き込まれていて、カムシャフト調節装置の長手方向軸線からの固定エレメントの間隔が圧力室の外径よりも小さくなっている、本発明によるカムシャフト調節装置を示す横断面図である。
【図7】保持体を介してカムシャフト調節装置のハウジングに結合されているプラスチック製の駆動歯車を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 カムシャフト調節装置
2 駆動車
3 外側ロータ
4 外側ロータの軸受面
5 圧力室
6 内側ロータ
7 内側ロータの軸受面
8 延長部
9 圧力室
10 圧力室
11 挿入体
12 保持体
13 舌片
14 フランジ
15 固定エレメント
16 孔
17 補強挿入体
18 凹設部
19 歯環
20 保持体
21 ハウジング
22 周面
23 ストッパウェブ
24 保持体
25 外側体
26 段部
27 付加部
28 結合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用のカムシャフト調節装置(1)であって、駆動車(2)と、カムシャフトに配属された被駆動エレメントとの間における相対的な角度関係が、外側ロータ(3)と内側ロータ(6)との間における圧力室(9,10)の液圧負荷によって調節可能であり、駆動車(2)がプラスチックから製造されていて、駆動車(2)に対応配置された外側ロータ(3)が金属から製造されている形式のものにおいて、
外側ロータ(3)の少なくとも1つの軸受面(4)が、金属製の挿入体(11)を備えて形成されていて、該挿入体(11)が、プラスチック製の保持体(12)内に素材結合式又は形状結合式に受容されていることを特徴とする、内燃機関用のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項2】
挿入体(11)が周方向において環状に形成されていて、軸受面(4)に加えて圧力室(9,10)の画成部を形成している、請求項1記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項3】
外側ロータ(3)及び/又は保持体(12)が結合エレメントを有している、請求項1又は2記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項4】
駆動車(2)が複合材料又は線維複合材料から製造されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項5】
内側ロータ(3)が、プラスチックから形成されており、該内側ロータ(3)に形状結合式又は素材結合式に結合された金属製の少なくとも1つの軸受面(4)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項6】
歯環(19)、ベルト車又はスプロケットを備えた駆動車(2)がプラスチックから形成されていて、固定エレメント(15)を介してプラスチック製のフランジ(14)と結合されており、該フランジ(14)が素材結合式に挿入体(11)に結合されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項7】
固定エレメント(15)が、フランジ(14)及び/又は歯環(19)の補強挿入体(17)と共働する、請求項6記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項8】
フランジ(14)と歯環(19)との結合が、該歯環(19)の半径方向内側において行われる、請求項6又は7記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項9】
固定エレメント(15)が、圧力室(5)の外径よりも小さな半径のところで作用する、請求項6から8までのいずれか1項記載のカムシャフト調節装置(1)。
【請求項10】
挿入体(11)と保持体(12)とが射出成形プロセスによって素材結合式に互いに結合されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のカムシャフト調節装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525688(P2008−525688A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547210(P2007−547210)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012097
【国際公開番号】WO2006/074737
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】