説明

内燃機関

【課題】オイル室でのオイル放熱量を増やすことができる内燃機関を提供する。
【解決手段】クランクケース24に形成されるクランク側オイル室RAを分室して第1オイル室RO1と第2オイル室RO2を設け、第1オイル室RO1に、変速機ケース61Aに形成される変速機側オイル室に通じる第1開口部211〜213を設け、変速機側オイル室に、第2オイル室RO2に通じる第2開口部215を設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル室を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジン(内燃機関とも言う)には、クランク軸を支持するクランクケースの一側に変速機ケースを備え、この変速機ケースに側方を覆うカバー部材を設け、この変速機ケースとカバー部材とによって変速機を収容するものがある。
この種のエンジンは、クランクケースの下部にオイル室を形成し、クランクケースと変速機ケースの間に設けられるオイルポンプによってオイル室のオイルを、エンジンのシリンダなどへ圧送している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−170314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の構成では、シリンダなどに圧送されて熱せられたオイルがオイル室に戻ると、直ぐにオイルポンプでシリンダなどへ圧送されるので、オイルはオイル室に戻った短時間の間だけクランクケースの外表面を介して若干の放熱を行うものの、その放熱量が少ないため、温度が高い常に高い状態で溜められる。
空冷エンジンにおいては、シリンダに設けられる放熱フィンによりエンジン自体の冷却を行うものの、別途オイルクーラを追加しない限り、オイルの冷却が殆ど行われない。したがって、従来のオイルクーラ無しのエンジンでは、エンジンが駆動中であれば、オイルが基本的に熱し続けられる。
一方、大型オイルクーラを追加してオイルの強制冷却を行うことが考えられるが、部品点数が増えてコストおよび重量の増大を招くだけでなく、部品の配置スペースも確保する必要があるため、配置スペースを確保できない場合はオイルクーラ追加が困難である。
【0004】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、オイル室でのオイル放熱量を増やすことができる内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、クランク軸を支持するクランクケースの一側に、変速機を収容する変速機ケースを備え、クランクケースの下部にクランク側オイル室を設けた内燃機関において、前記変速機ケースの下部に変速機収容部と区画された変速機側オイル室を設け、この変速機側オイル室を通してオイルの循環をすることを特徴とする。
この発明によれば、変速機ケースの下部に変速機収容部と区画された変速機側オイル室を設け、この変速機側オイル室を通してオイルの循環をするので、オイル室でのオイル流れ経路を長くすることができると共にオイル滞留時間を長くでき、オイル室でのオイル放熱量を増やすことができる。
【0006】
上記構成において、前記クランク側オイル室は、分室された第1オイル室と第2オイル室とを有し、前記第1オイル室に、前記変速機側オイル室に通じる第1開口部を設け、前記変速機側オイル室に、前記第2オイル室に通じる第2開口部を設けるようにしてもよい。この構成によれば、クランク側オイル室の第1オイル室に入ったオイルを、変速機側オイル室および第2オイル室を順に経由して流すことができ、オイル室でのオイル放熱量を効率よく増やすことができる。
【0007】
上記構成において、前記第2オイル室に、オイルポンプのストレーナに通じる第3開口部を設けるようにしてもよい。この構成によれば、第1オイル室や変速機側オイル室内のオイルは第2オイル室を経てストレーナ室へ入るので、放熱されたオイルをストレーナへ供給することができる。
また、上記構成において、前記第1オイル室を、前記内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルが落下する位置に設け、この第1オイル室の後方に前記第2オイル室を設け、この第2オイル室の前方かつ前記第1オイル室の下方に、前記ストレーナ室を設けるようにしてもよい。この構成によれば、シリンダ部からの戻りオイルを第1オイル室に確実に落下させてオイル室での放熱を効率よく行わせることができると共に、第1オイル室とストレーナ室とを上面視で重ねて配置でき、限られたスペースを効率よく利用して第1オイル室、第2オイル室およびストレーナ室を配設することができる。
【0008】
また、上記構成において、前記第2開口部は、前記第1開口部よりも低い位置にあり、前記第3開口部は、前記第2開口部よりも低い位置にあるようにしてもよい。この構成によれば、重力を利用してオイルを第1オイル室から変速機側オイル室へとスムーズに流すことができると共に、変速機側オイル室ら第2オイル室へとスムーズに流すことができる。
また、上記構成において、前記変速機側オイル室は、前記変速機ケースが変速機を収容する変速機室の下方に位置するようにしてもよい。この構成によれば、変速機側オイル室のオイル放熱面を広くすることができる。
【0009】
また、上記構成において、前記クランクケースの内側に、前記内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルを、前記変速機側オイル室に案内するガイド部材を設けるようにしてもよい。この構成によれば、シリンダ部からの戻りオイルを変速機側オイル室にスムーズに案内することができる。
また、上記構成において、前記ガイド部材は、前記クランクケースの左右の壁間に渡って設けられるようにしてもよい。この構成によれば、シリンダ部からの戻りオイルをより確実に変速機側オイル室に案内することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、変速機ケースの下部に変速機収容部と区画された変速機側オイル室を設け、この変速機側オイル室を通してオイルの循環をするので、オイル室でのオイル流れ経路を長くすることができると共にオイル滞留時間を長くでき、オイル室でのオイル放熱量を増やすことができ、オイル溜まりのオイルは放熱されたものが溜まっていくことになる。
また、クランク側オイル室は、分室された第1オイル室と第2オイル室とを有し、第1オイル室に、変速機側オイル室に通じる第1開口部を設け、変速機側オイル室に、第2オイル室に通じる第2開口部を設けたので、オイル室でのオイル放熱量を効率よく増やすことができる。
また、第2オイル室に、オイルポンプのストレーナに通じる第3開口部を設けるので、第1オイル室や変速機側オイル室内のオイルは第2オイル室を経てストレーナへ入るので、放熱されたオイルをストレーナへ供給することができる。
【0011】
また、第1オイル室を、内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルが落下する位置に設け、この第1オイル室の後方に第2オイル室を設け、この第2オイル室の前方かつ第1オイル室の下方に、ストレーナ室を設けるので、シリンダ部からの戻りオイルを第1オイル室に確実に落下させてオイル室での放熱を効率よく行わせることができると共に、限られたスペースを効率よく利用して第1オイル室、第2オイル室およびストレーナ室を配設することができる。
また、第2開口部は、第1開口部よりも低い位置にあり、第3開口部は、第2開口部よりも低い位置にあるので、重力を利用してオイルを第1オイル室から変速機側オイル室へとスムーズに流すことができると共に、変速機側オイル室ら第2オイル室へとスムーズに流すことができる。
【0012】
また、変速機側オイル室は、変速機ケースが変速機を収容する変速機室の下方に位置するので、変速機側オイル室の外表面を使って放熱ができ、オイル放熱面を広くすることができる。
また、クランクケースの内側に、内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルを、変速機側オイル室に案内するガイド部材を設けるので、シリンダ部からの戻りオイルを変速機側オイル室にスムーズに案内することができる。
また、ガイド部材は、クランクケースの左右の壁間に渡って設けられるので、シリンダ部からの戻りオイルをより確実に変速機側オイル室に案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印Fは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印Uは車体上方をそれぞれ示す。
図1は、本発明の実施形態を適用した自動二輪車1の側面図である。
この自動二輪車1の車体フレーム2は、車体前部のヘッドパイプ3と、同ヘッドパイプ3から後方へ斜め下向きに傾斜して延出する1本のメインフレーム4と、同メインフレーム4の後部に下方へ向けて延出固着される左右一対のピボットブラケット5と、メインフレーム4の後部でピボットブラケット5の固着位置の前付近から後方へ斜め上向きに延出して途中で屈曲して後端に至る左右一対のシートレール6と、ピボットブラケット5と上記シートレール6の中央部との間を補強する左右一対の補強フレーム7とを備えている。
【0014】
車体フレーム2の左右一対のシートレール6上方には、乗車用シート8が設けられ、その下部には収納部(収納ボックス)9が設けられる。車体前部上方には、ヘッドパイプ3に軸支されたハンドル10が設けられ、その下方にフロントフォーク11、11が延びてその下端に前輪12が軸支される。車体中央のピボットブラケット5には、ピボット軸13によりリヤフォーク14が前端を揺動可能に軸支されて後方に延びており、リヤフォーク14の後端部には、後輪15が軸支される。リヤフォーク14の後部とシートレール6との間には左右一対のリヤクッション16が介挿される。
【0015】
メインフレーム4の下方かつピボットブラケット5の前方には、内燃機関であるエンジン(パワーユニットとも言う)20が懸架される。エンジン20の上部は、メインフレーム4の中央部に垂設された支持ブラケット17に吊り下げられ、エンジン20の後部は、ピボットブラケット5に2箇所で固定される。すなわち、エンジン20は、メインフレーム4の後部下側に吊り下げる態様で支持されている。また、車体フレーム2は、各部に分割された合成樹脂製の車体カバー18で覆われている。
【0016】
エンジン20は、単気筒の4サイクル空冷エンジンであり、シリンダ部22がクランクケース24の前面から略水平に近い状態まで大きく前傾した水平エンジンに構成されている。このため、車体を低重心化できるとともに、図示のようにメインフレーム4を低くして乗車時に運転者が跨ぐ跨ぎ部Mを低くでき、乗降性を向上できる。また、クランクケース24の左側面前部には、発電機カバー25が取り付けられている。車体カバー18は、図1に示すように、車体側面視でクランクケース24の外縁近傍まで車体を覆うカバー形状を有し、発電機カバーを含むクランクケース24側面を外部に露出させる。
【0017】
このエンジン20のシリンダ部22上側には、吸気管26が接続され、この吸気管26は上方に延出してメインフレーム4に支持されたスロットルボディ27およびエアクリーナ28に接続される。シリンダ部22下側には、排気管29が接続され、この排気管29は下方に延出した後に屈曲して後方へ延び、後輪15右側に配置されたマフラー30に接続される。
また、クランクケース24の左側面後部には、エンジン20の出力軸31がその先端を露出させて軸支されている。この出力軸31の先端には、駆動スプロケット32が取り付けられ、この駆動スプロケット32と、後輪15に一体に設けられた従動スプロケット33との間に動力伝達チェーン34(図1参照)が巻回されてチェーン伝動機構が構成される。したがって、このエンジン20の出力軸31の回転は、チェーン伝動機構を介して後輪15へ伝達される。なお、このチェーン伝動機構は、各スプロケット32、33の歯数比によって出力軸31と後輪軸との間の減速比(二次減速比)を設定する二次減速機構としても機能する。また、図中、符号35はチェーン伝動機構を覆うカバーである。
【0018】
クランクケース24下部には、車体左右方向に延出するステップバー36が取り付けられ、このステップバー36両端には運転者が足を載せる一対のステップ36A、36Aが取り付けられる。
また、この自動二輪車1には、エンジン20を始動するキック式始動装置140の一部を構成するキック部材(始動系部材)37がクランクケース24左側方に配設されている。すなわち、このキック部材37は、クランクケース24に先端を露出させて軸支されたキック軸38に取り付けられたキックアーム39と、このキックアーム39の先端部に回動自在に取り付けられたキックペダル40とを備え、運転者がキックペダル40を踏むことによってキック軸38を回転させてエンジン20を始動できる。
さらに、この自動二輪車1には、キック式始動装置140に加えて、エンジン始動用のスタータモータ41も配設されている。このスタータモータ41は、クランクケース24上面前部に取り付けられており、このスタータモータ41を作動させることでエンジン20を始動できる。すなわち、この自動二輪車1では、キック式およびスタータモータ式のいずれの方法でもエンジン20を始動することが可能に構成されている。
【0019】
図2は、エンジン20の内部構造を車体右側から示す図であり、動力伝達系および始動系の主要な回転軸の位置を示している。また、シリンダ軸線L1も示している。また、図3は、図2のIII−III断面を示す図である。
図2および図3に示すように、エンジン20のシリンダ部22は、クランクケース24前面に連結されるシリンダブロック22Aと、シリンダブロック22A前面に連結されるシリンダヘッド22Bと、シリンダヘッド22Bの前面を覆うヘッドカバー22Cとを備える。シリンダヘッド22Bには、燃焼室22Dと、燃焼室22Dにつながる不図示の吸気ポートと排気ポートが形成され、燃焼室22Dに先端が臨むように点火プラグ23が配置され、吸気ポート入口に上記吸気管26が接続され、排気ポート出口に上記排気管29が接続されるようになっている。また、図2中、符号22Fは、シリンダ部22に設けられる放熱フィンであり、この放熱フィン22Fによりシリンダ部22が空冷される。
【0020】
図3に示すように、エンジン20のクランクケース24は、左クランクケース24Aと右クランクケース24Bとからなる左右2分割構造で形成され、クランクケース24前部には、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)45、45を介してクランク軸51が軸心C1を車両進行方向と直交させて横向きに軸支される。
このクランク軸51は、回転中心となるクランクジャーナル51Aと、クランクジャーナル51Aよりも大径に形成されるクランクウェブ51Bと、このクランクウェブ51Bを介して支持されるクランクピン(偏心軸)51Cとを備え、クランクウェブ51Bおよびクランクピン51Cが、左右一対の軸受45、45間に位置する。また、クランクウェブ51Bには、回転バランスをとるためのバランスウエイト(以下、ウエイトという)51Dが設けられている。
【0021】
クランク軸51のクランクピン51Cには、シリンダ部22内をシリンダ軸線L1に沿って摺動自在に配置されたピストン21Aがコンロッド21Bを介して連結される。また、図3中、符号55Aは、クランク軸51に設けられたスプロケットであり、符号55Bは、シリンダ部22のヘッドカバー22C内に設けられたカム軸55Cに設けられたスプロケットであり、スプロケット55A、55B間はカムチェーン55Dを介して連結される。これによって、クランク軸51の回転に応じてカム軸55Cが回転し、シリンダヘッド22Bに設けられた不図示の吸排気バルブを押動させる動弁機構が駆動される。
【0022】
このクランク軸51の右側(一側)には、ベルト式無段変速機60が設けられ、このクランク軸51の左側(他側)には、発電機180が設けられる。
詳述すると、クランク軸51の左端は、左クランクケース24A内を左方に延出し、この左クランクケース24Aの左側開口(外側開口)を覆うように取り付けられた発電機カバー25近傍まで延出し、この発電機カバー25と左クランクケース24Aとによって囲まれる空間内に発電機180を収容する。この発電機180は、クランク軸51に固定されるロータ181と、ロータ181内に配置されるステータ182とを備え、ステータ182は発電機カバー25に固定される。
【0023】
ベルト式無段変速機60は、エンジンオイルによる潤滑が行われない乾式の動力伝達機構であり、クランク軸51の右側(一側)に設けられた変速機収容部61に収容される。この変速機収容部61は、エンジンオイルによる潤滑が行われるクランクケース24とは別室を形成して油液のない室を形成し、変速機収容部61の本体部を構成する変速機ケース61Aと、この変速機ケース61Aの外側開口(右側開口)を覆う変速機カバー(カバー部材)61Bとの左右二分割構造で形成されている。
詳述すると、クランク軸51の右端は、右クランクケース24Bを貫通して更に右方へ延出し、この右クランクケース24Bの右側にボルト連結された変速機ケース61Aを貫通し、変速機ケース61Aに連設される変速機カバー61B近傍まで延出し、この右端部が、ベルト式無段変速機60の駆動プーリ軸(駆動軸)51Rとして使用され、この駆動プーリ軸51Rに駆動プーリ63が取り付けられる。
【0024】
クランクケース24後部には、ベルト式無段変速機60の従動プーリ軸(従動軸)64が軸心C2を車両進行方向と直交させて横向きに軸支される。この従動プーリ軸64は、駆動プーリ軸51Rの後方に平行に位置し、右クランクケース24Bと変速機収容部61(変速機ケース61A)とに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)65、65を介して軸支される。
この従動プーリ軸64には、従動プーリ67が取り付けられ、駆動プーリ63と従動プーリ67との間にVベルト68が掛け回され、駆動プーリ63の回転が従動プーリ67へと伝達される。なお、変速機収容部61と各プーリ軸51R、64との間には、クランクケース24側のエンジンオイルが変速機収容部61内に侵入するのを阻止するためのシール部材69A、69Bが介挿されており、変速機収容部61がクランクケース24との間でシールされる。
【0025】
駆動プーリ63は、駆動プーリ軸51Rとともに回転する固定半体63Aと可動半体63Bとを有し、固定半体63Aは、駆動プーリ軸51Rに固定され、可動半体63Bは、固定半体63Aよりも左側で軸方向に移動自在に固定される。この可動半体63Bは、クランク軸51とともに回転し、遠心力により遠心方向に移動するウエイトローラ70の作用により軸方向に摺動して固定半体63Aに接近あるいは離反し、両プーリ半体63A、63B間に挟まれたVベルト68の巻き掛け径を変える。
ベルト式無段変速機60の従動プーリ67は、従動プーリ軸64とともに回転する固定半体67Aと可動半体67Bとを有し、固定半体67Aが可動半体67Bよりも左側に固定される。可動半体67Bは、従動プーリ軸64の右端部に環状スライダ71を介して軸方向に移動自在に配置され、コイルばねである付勢部材72により左方(固定半体67A側)に付勢されている。このため、駆動プーリ63の両半体63A、63B間に挟まれたVベルト68の巻き掛け径が大きくなると、反対に従動プーリ67の両半体67A、67Bの間隔がコイルばね72の付勢力に抗して拡がり、Vベルト68の巻き掛け径を小さくし、自動的に無段変速が行われる。
【0026】
従動プーリ軸64は、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの間に形成された空間(後述するクラッチ室R1)に配設された遠心クラッチ80を介してクランクケース24内に配設された動力伝達機構81に動力を伝達する。
遠心クラッチ80は、エンジンオイルにより各部の潤滑および冷却が行われる湿式のクラッチであり、従動プーリ軸64にスプライン嵌合されるクラッチインナ83と、従動プーリ軸64の左端部に相対回転自在に設けられたクラッチ出力ギア84に連結されたクラッチアウタ85とを備えており、クラッチインナ83の外周端側に突設された複数の支軸86にクラッチウエイト87が設けられている。このため、従動プーリ軸64の回転速度が所定速度を超えた場合に、遠心力により遠心方向に移動するクラッチウエイト87がクラッチアウタ85に係合し、従動プーリ軸64と一体にクラッチアウタ85を回転させてクラッチ出力ギア84を回転させる。
なお、図中、符号88は、クラッチアウタ85が遠心方向へ拡がるのを抑えるためのクラッチ補強用プレートであり、符号90は、クラッチ出力ギア84と従動プーリ軸64との間に配置されるリテーナである。このリテーナ90は、周方向に間隔を空けて配置される軸受用ローラのローラ列を、軸方向に2列有しており、この2列のローラ列によってクラッチ出力ギア84を従動プーリ軸64に対して相対回転させる。
【0027】
動力伝達機構81は、ベルト式無段変速機60とエンジン20の出力軸31との間の動力伝達を行うものであって、かつ、一次減速機構として機能する機構である。この動力伝達機構81は、従動プーリ軸64と出力軸31との間に設けられ、従動プーリ軸64に設けられた上記クラッチ出力ギア84の回転を所定の減速比に減速して出力軸31に伝達する中間歯車軸(減速ギア軸)91を備えている。なお、図2中、中間歯車軸91の軸心を符号C3で示し、出力軸31の軸心を符号C4で示している。
【0028】
中間歯車軸91は、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)92、92に回転自在に軸支され、右クランクケース24Bの壁部を貫通する貫通軸部91Aを有している。この貫通軸部91Aには、従動プーリ軸64に設けられたクラッチ出力ギア84に噛み合う大径の中間軸従動ギア(減速ギア)93が固定され、左右のクランクケース24A、24Bの間のスペースに、出力軸31に固定されたファイナルギア95に噛み合う小径の中間軸駆動ギア94が固定される。これにより、クランクケース24外側に位置するクラッチ出力ギア84の回転が、中間歯車軸91を介してクランクケース24内に位置する出力軸31のファイナルギア95へと所定の減速比で伝達される。
出力軸31は、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)96、96に支持される。この出力軸31には、ファイナルギア95が回転自在に設けられ、このファイナルギア95の回転がギアダンパ97を介して当該出力軸31に伝達されるようになっている。
【0029】
すなわち、このエンジン20では、左右のクランクケース24A、24Bで囲まれる空間(以下、クランク室R0という)の右隣に、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとで囲まれる空間(以下、クラッチ室R1)が形成される。つまり、変速機ケース61Aは、右クランクケース24Bに連結されることでクラッチケースを構成するクラッチケース部材を兼ねている。
そして、このクランク室R0とクラッチ室R1とが、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われる室とされており、クランクケース24下部と変速機ケース61A下部とにオイル溜まり部が形成される。
また、このクラッチ室R1の右隣には、変速機ケース61Aと変速機カバー61Bとで囲まれる空間(以下、変速機室R2という)が形成され、この変速機室R2は、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われない室とされる。つまり、このエンジン20では、エンジンオイルが介在する室と介在しない室とが車幅方向で明確に区画されている。
【0030】
次にキック式始動装置140について説明する。
図4は、図2のIV−IV断面を示す図であり、キック式始動装置140の機構部分を周辺構成とともに示している。このキック式始動装置140は、エンジン20下方(主にクランクケース24下方)に収容されている。
キック軸38は、従動プーリ軸64の前下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重ならない位置に配置されており(図2参照)、左右のクランクケース24A、24Bに形成された軸受部(本例では貫通孔で形成されたすべり軸受)141、142に回転自在に軸支されている。このキック軸38の左端部は左クランクケース24Aの壁部に形成された軸受部141を貫通して左方に突出し、この貫通軸部38Aに、キックペダル40を先端に取り付けたキックアーム39の基端部が固定される。また、左クランクケース24Aには、キック軸38との間の隙間を塞ぐシール部材143が設けられる。このクランクケース24内において、キック軸38の右側部分には、キック軸38をキック方向とは逆方向に付勢するリターンスプリング145と、このリターンスプリング145の付勢力で回転するキック軸38をキック操作開始位置で停止させるストッパ146とが配設されており、キック軸38の左側部分には、軸受部141に隣接する大径のキックドライブギア147が設けられている。
【0031】
このキック軸38とクランク軸51との間には、キック軸38の回転をクランク軸51に伝達するキック中間軸150が配置される。本構成のキック中間軸150は2軸構成とされ、キック軸38により回転駆動される第1キック中間軸151と、第1キック中間軸151の回転をクランク軸51に伝達する第2キック中間軸155とを備えている。ここで、図2には、キック軸38の軸心を符号K1で示し、第1キック中間軸151の軸心を符号K2で示し、第2キック中間軸155の軸心を符号K3で示している。
第1キック中間軸151は、図2に示すように、従動プーリ軸64とクランク軸51との中間位置下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重なる位置に横置き配置され、図4に示すように、左右のクランクケース24A、24Bに設けられた左右一対の軸受部(本例では非貫通孔で形成されたすべり軸受)161、162に回転自在に軸支される。この第1キック中間軸151は、クランクケース24内に完全に収容され、キックドライブギア147に噛み合う小径の第1キック中間軸従動ギア(キックドリブンギア)163が一体に形成されると共に、このギア163の右方に第1キック中間軸従動ギア163よりも大径の第1キック中間軸駆動ギア(第1アイドルギア)164が隣接して固定される。
【0032】
第2キック中間軸155は、図2に示すように、クランク軸51の後下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重ならない位置に横置き配置され、図4に示すように、左クランクケース24Aと変速機ケース61Aとに設けられた左右一対の軸受部(本例では非貫通孔で形成されたすべり軸受)166、167に回転自在に軸支される。すなわち、この第2キック中間軸155は、第1キック中間軸151よりも長い軸に形成されることによって、左端部が左クランクケース24Aに支持された状態で、右クランクケース24Bの壁部に形成された開口部24B1を貫通して延出し、この延出軸部155Aが、クランクケース24と変速機ケース61Aとの間の空間(クラッチ室R1)を跨いで変速機ケース61Aに軸支される。この第2キック中間軸155のクランクケース24内の軸部には、第1キック中間軸151の第1キック中間軸駆動ギア164に噛み合う小径の第2中間軸従動ギア(第2アイドルギア)168が一体に形成され、このキック中間軸155のクランクケース24外の延出軸部155Aには、飛び込みギア機構170が配設される。
【0033】
この飛び込みギア機構170は、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの間に位置しており、第2キック中間軸155に対して軸方向に移動自在に設けられる飛び込みギア171と、飛び込みギア171をクランク軸51に設けられたキック始動用従動ギア172と噛み合わない待避位置に付勢する付勢部材173と、飛び込みギア171に巻き付いて変速機ケース61Aに支持されるフリクションスプリング174とを備え、キック時の第2キック中間軸155の回転により飛び込みギア171が左側にスライドしてキック始動用従動ギア172と噛み合う機構に構成されている。なお、図示の例では、付勢部材173にコイルスプリングを使用した場合を示したが、板ばねや皿ばねなどのコイルスプリング以外のものを用いてもよい。
したがって、キックペダル40が踏み込まれ、キック軸38がリターンスプリング145の付勢力に抗して回転すると、キック軸38の回転が第1キック中間軸151および第2キック中間軸155のギア列を介して伝達され、飛び込みギア171をキック始動用従動ギア172に噛み合う方向へと移動してクランク軸51を強制的に回転し、エンジン20を始動させることができる。
【0034】
図2に示すように、このエンジン20のクランクケース24内には、エンジンオイルをエンジン20の各部に供給するオイルポンプ100が設けられている。このオイルポンプ100は、クランク軸51の前方斜め下方に設けられており、カムチェーン駆動によりクランク軸51の回転力で駆動されてエンジンオイルを吐出し、このエンジンオイルを、クランク軸51を支持する軸受45、45などの各軸受、シリンダ部22の動弁機構(不図示)、遠心クラッチ80および動力伝達機構81などに供給する。
【0035】
また、このエンジン20には、エンジン20から延出する延出部106が設けられ、この延出部106に放熱フィンを形成すると共に、オイル通路(油路)108を形成することによってオイルの冷却を行っている。
詳述すると、延出部106は、変速機収容部61の本体部を構成する変速機ケース61Aからシリンダ軸線L1に略沿って車体前側に延出し、この延出部106には、油路カバー107がボルト連結される。この延出部106と油路カバー107との間には略環状のオイル通路108が形成されると共に、放熱フィンが設けられ、この放熱フィンによりオイル通路108を流れるオイルが走行風で効率よく冷却され、また、延出部106および油路カバー107の断面係数が高くなり、剛性が十分に確保される。つまり、延出部106および油路カバー107は、エンジン一体型の小型のオイルクーラ105(図2、図3参照)として機能する。
【0036】
本構成では、オイルポンプ100から圧送されたオイルを分岐し、そのうちの一系統のオイルがシリンダ部22へとつながるオイル通路(不図示)を通ってシリンダ部22の各部を潤滑した後に、自然落下によりクランクケース24下部のオイル溜まり部へと戻り、他の一系統が、オイルクーラ105を通った後に、図3に符号110で示すオイル通路を通ってクランク軸51の各部を潤滑した後に自然落下してオイル溜まり部へ戻るようになっている。なお、オイルポンプ100から圧送されたオイルをオイルクーラ105を通した後に分岐させるようにしてもよいことは勿論である。
【0037】
図5に示すように、本構成では、オイルポンプ100からのオイルが圧送されるオイル通路110が、クランク軸51を支持する左右一対の軸受45のうちの右側の軸受45と、クランク軸51と右クランクケース24Bとの間をシールするシール部材69Cとの間にオイルを供給するように構成されている。
そして、このオイル通路110から流出したオイルは、右側の軸受45とクランク軸51との間に形成されたオイル通過用溝51Mを通ってクランクケース24内に入り、クランクピン51Cに形成された不図示のオイル通路を通ってコンロッド21Bの大端部へと供給される。
すなわち、本構成では、クランク軸51の外周面に、右側の軸受45との間に隙間を形成してクランクピン51C側へオイルを通過させるオイル通過用溝51Mを形成することによって、クランク軸51内にオイル通路を形成することなく、コンロッド21Bの摺動面などへオイルを供給することが可能に構成されている。なお、オイル通過用溝51Mは、クランク軸51の周方向に間隔を空けて複数本形成してもよいし、十分に潤滑可能なときは一本でもよい。
【0038】
また、図5に示すように、本構成では、キック始動用従動ギア172の内周には、Oリング175が配置されず、クランク軸51にキック始動用従動ギア172を挿入した後に、このギア172の端面に当接するまで挿入されるカラー172Aの内周に、Oリング175を配置している。仮に、キック始動用従動ギア172と上記カラー172Aとを一体の部品で製作した場合には、その内周にOリング175を配置するため、Oリング組付時にOリングの位置がずれないように注意する必要がある。
これに対し、本構成では、キック始動用従動ギア172と上記カラー172Aとが別体であり、これら部品間にOリング175を配置するため、Oリング175をクランク軸51の組み付け位置に組み付けた後、カラー172Aをクランク軸51に挿入すればよい。従って、Oリング175を位置ずれなく容易に組み付けることができ、Oリング175の組付性が向上する。
この場合、同図に示すように、カラー172Aの内周側の隙間(クランク軸51との間の隙間)がOリング175でシールされ、カラー172Aの外周側の隙間(変速機ケース61Aとの間の隙間)がシール部材69Aでシールされるので、変速機収容部61とクランクケース24との間のシール性を十分に確保できる。
【0039】
ところで、シリンダなどに圧送されて熱せられたオイルが、オイル溜まり部であるオイル室に戻って直ぐにオイルポンプ100でシリンダ部22などへ圧送される構成の場合には、オイル室ではオイルが殆ど冷却されず、上記したオイル通路108を設けたとしても、平均気温が高い使用環境ではオイル冷却能力の増大が望まれる。一方、エンジン別体型の大型オイルクーラを追加してオイル冷却能力を増やす方法では、部品点数が増えてコストおよび重量の増大を招くだけでなく、本車両のような小型車両では大型オイルクーラの配置スペースを確保することが困難である。
そこで、本エンジン20では、クランクケース24のオイル溜まり部として機能するクランク側オイル室RAを第1オイル室RO1と第2オイル室RO2とに分室し、シリンダ部22などで熱せられたオイルを、第1オイル室RO1から、変速機ケース61Aのオイル溜まり部として機能する変速機側オイル室RBへと流し、変速機側オイル室RBから第2オイル室へと流した後にオイルポンプで吸い出す構成にすることによって、オイル室でのオイル放熱量を増やすようにしている。以下、このオイル室構造について詳述する。
【0040】
図6は右クランクケース24Bを内側(左側)から見た図であり、図7は外側(右側)から見た図である。また、図8は左クランクケース24Aを内側(右側)から見た図である。また、図9は、変速機ケース61Aを右クランクケース24B側(左側)から見た図である。
右クランクケース24Bの内側には、図6に示すように、右クランクケース24Bの底側空間を上下に仕切る上下仕切り用リブ191と、この上下仕切り用リブ191で仕切られた上側空間を前後に仕切る前後仕切り用リブ192とが設けられており、左クランクケース24Aの内側にも、図7に示すように、上記上下仕切り用リブ191と連設するように左クランクケース24Aの底側空間を上下に仕切る上下仕切り用リブ193が設けられると共に、上記前後仕切り用リブ192と連設するように左クランクケース24Aの上下仕切り用リブ193で仕切られた上側空間を前後に仕切る前後仕切り用リブ194が設けられる。
【0041】
すなわち、左右の上下仕切り用リブ191、193と前後仕切り用リブ192、194とは、左右のクランクケース24A、24Bの割り面を挟んで左右対称形状に形成されており、クランクケース24の左右の壁間に渡って延在する。このため、前後仕切り用リブ192、194によってクランクケース24内が前後に仕切られ、前側室が第1オイル室RO1とされ、後側室が第2オイル室RO2とされる。
この第1オイル室RO1は、クランクケース24内の前側に形成されることによってシリンダ部22の各部を潤滑したオイルが入るだけでなく、クランク軸51の各部を潤滑したオイル、つまり、エンジン20の各部で熱せられた戻りオイルが最初に入るオイル室として機能する。
ここで、第1オイル室RO1の後端を区画する前後仕切り用リブ192、194は、図6および図8に示すように、クランク軸51の後下方に設けられ、より具体的には、クランク軸51の後下方に位置する第2キック中間軸155(軸心K3)の下方で上下に延在し、これによって、シリンダ部22およびクランク軸51側からの戻りオイルが、この前後仕切り用リブ192、194を超えて第2オイル室RO2に直接入ることがなく、第1オイル室RO1に確実に入るように構成されている。
【0042】
また、第2オイル室RO2は、右クランクケース24Bでは、図6に示すように、上下仕切り用リブ191の下端から後方へ延びた後に上方に凸状の壁部を形成して右クランクケース24Bの底板24B1につながるリブ195によって上下に仕切られているが、左クランクケース24Aでは、図8に示すように、第2オイル室RO2を上下に区画する上記リブ195のようなリブがなく、これによって、第2オイル室RO2は、左クランクケース24A内でリブ195を上下にまたぐように上下に連続する。
また、左右の上下仕切り用リブ191、193は、左右のクランクケース24A、24B内を前方に延出して前端がクランクケース24A、24Bの底板24A1、24B1につながり(図6、図7参照)、これによって、第1オイル室RO1と、この第1オイル室RO1の下方の空間部196とを完全に仕切る。
【0043】
この下方の空間部196は、左右のクランクケース24A、24Bに渡って延在し、第2オイル室RO2の一部を構成する。この空間部196の側方(右方)、つまり、右クランクケース24Bの側壁を挟んだ反対側には、図7に示すように、オイルポンプ100がオイルを吸い出すストレーナを構成するストレーナ室101が形成されており、このストレーナ室101と、上記第2オイル室RO2の一部を構成する空間部196とは、空間部196の側壁に形成された開口部(以下、第3開口部という)197を介して互いに連通するように構成されている。なお、このストレーナ室101には、上方に位置するオイルポンプ100から下方に延びる吸込通路102が連通し、この吸込通路102の下方にはストレーナ(フィルタ)103が配置されるようになっている。
【0044】
また、本構成では、変速機ケース61Aの下部にもオイル溜まり部となる変速機側オイル室RBが形成されており、より具体的には、変速機ケース61Aの下部は、変速機ケース61Aの側壁の最も左側(クランクケース24側)に突出した部分(例えば、図3に示す駆動プーリ軸51Rが貫通する部分)よりも右側に凹んでおり、この凹部198(図9参照)を含む変速機ケース61Aの側壁とクランクケース24との間が変速機側オイル室RBとして機能する。
ここで、図9に示すように、変速機ケース61Aには、右クランクケース24Bに形成されたストレーナ室101の側方開口を覆うストレーナ室覆い部199が一体に形成されており、これによって、変速機側オイル室RBは、ストレーナ室101と直接連通しないように構成されている。なお、このストレーナ室覆い部199には、ストレーナ室101の空間を拡げるように幅方向に凹む凹部199Aが形成されており、この凹部199Aによってストレーナ室101を変速機ケース61A側まで拡げるようにしている。
【0045】
また、変速機ケース61Aには、この変速機ケース61Aの側壁から前後方向に延びるように突出するオイル受け用リブ201が形成されている。このリブ201は、変速機ケース61Aとクランクケース24間に配置される部品(クランク軸51、第2キック中間軸155、従動プーリ軸64およびこれらに支持されるギアや遠心クラッチ80)の下方に渡って延在し、各部品を潤滑したオイルを受け、所定箇所に設けられた孔201Aを介してオイルを変速機側オイル室RBに落下させる。このように、各部品を潤滑したオイルを所定箇所に設けた孔201Aに集めて落下させるため、オイル中の泡の発生を抑えることができる。
なお、図7に示すように、右クランクケース24Bの変速機側オイル室RB側にも、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの割り面を挟んで、上記オイル受け用リブ201および孔201Aと略左右対称形状に形成されたオイル受け用リブ203および孔203Aが設けられており、左右のオイル受け用リブ201、203によって、各部品からのオイルを受けて所定箇所から変速機側オイル室RBに落下させるように構成されている。
【0046】
ここで、変速機側オイル室RBは、変速機ケース61Aの下部前後に渡って延在しており、上記クランクケース24内の第1オイル室R01および第2オイル室RO2と側面視で重なる位置に設けられている。
また、図6に示すように、右クランクケース24Bの側壁には、第1オイル室RO1を変速機側オイル室RBに通じさせる第1開口部211、212、213が形成されると共に、変速機側オイル室RBを、第2オイル室RO2に通じさせる第2開口部215が形成されている。これによって、第1オイル室RO1に入ったオイルを、第1開口部211〜213を通して変速機側オイル室RBへと流し、変速機側オイル室RBのオイルを、第2開口部215を通して第2オイル室RO2へと流し、この第2オイル室RO2へ入ったオイルを、上記第3開口部197を通じてストレーナ室101(図7参照)へと流し、オイルポンプ100によって吸い出すようにしている。
このため、オイルの流れの方向を簡単に説明すると、第1オイル室RO1に入ったオイルは、まず、第1開口部211〜213を通ってエンジン20の右方向に移動して変速機側オイル室RBへ入り、この変速機側オイル室RBでは、エンジン20の後方向(後方向)に移動した後に、第2開口部215を通ってエンジン20の左方向に移動して第2オイル室RO2へ入り、第2オイル室RO2では、エンジン20の前方向に移動した後に第3開口部197を通ってエンジン20の右方向に移動してストレーナ室101へと入る。
【0047】
このように、エンジンオイルがエンジン20内をエンジン幅方向および前後方向に巡回する巡回経路を通ってストレーナ室101へと流れるので、オイル室(クランク側オイル室RA、変速機側オイル室RB)でのオイル流れ経路を長くすることができると共にオイル滞留時間を長くでき、その分、オイル放熱量を増やすことができる。しかも、上記オイル室の巡回経路がクランクケース24および変速機ケース61Aに渡って形成されるので、クランクケース24および変速機ケース61Aの両方の外表面を利用してオイルの放熱を行うことができ、オイルの放熱面が広くなることによってもオイルの放熱量を増やすことができる。
【0048】
しかも、上記したように、本構成では、シリンダ部22やクランク軸51の各部で熱せられた戻りオイルが第1オイル室RO1へ入るように構成されるので、エンジン20の高熱部分を通った戻りオイルを最も長いオイル流れ経路を通して効率よく冷却することができる。
また、本構成では、図6および図7に示すように、第1オイル室RO1を変速機側オイル室RBに連通させる第1開口部211〜213よりも低い位置に、変速機側オイル室RBを第2オイル室RO2に連通させる第2開口部215を設け、この第2開口部215よりも低い位置に、第2オイル室RO2をストレーナ室101へつなげる第3開口部197を設けているので、重力を利用して第1オイル室RO1→変速機側オイル室RB→第2オイル室RO2→ストレーナ室101へとスムーズにオイルを流すことができ、上記流れの方向と逆方向に流れる事態を回避できる。
【0049】
さらに、本構成では、上記第1開口部211〜213と第2開口部215とを前後に間隔を空けて形成すると共に、第2開口部215と第3開口部197についても前後に間隔を空けて形成するので、オイル室でのエンジン前後方向への移動距離を効率よく長くすることができる。より具体的には、少なくともクランクケース24の底部前端に第1開口部211を形成し、クランクケース24の底部後端に第2開口部215を形成し、クランクケース24の底部前側に第3開口部197を形成することによって、エンジン前後方向への移動距離を長くし、オイル放熱量を効率よく増やすことができる。
【0050】
また、本構成では、第1開口部211〜213を、前後方向に間隔を空けて複数個(本例では3個)形成しているので、第1オイル室RO1から変速機側オイル室RBへのオイル通路を広く確保できると共に、第1オイル室RO1の前側、前後中間部および後部の各々の箇所に入ったオイルを直ぐに変速機側オイル室RB側へと流しやすくすることができる。エンジン駆動中は、クランクケース24よりも変速機ケース61Aの方が温度が低いと考えられるため、クランクケース24内のオイルを直ぐに変速機側オイル室61Aへと流せば、効率よくオイルの放熱を行うことができ、これによってもオイル放熱量を増やすことができる。
また、図6に示すように、第1開口部213を、上下仕切り用リブ191(および193)と前後仕切り用リブ192(および194)とによって形成される角部に沿って形成しているので、これらリブ191〜194に沿って流れる戻りオイルをこの第1開口部213を介して変速機側オイル室RBへとスムーズに流すことができる。つまり、上下仕切り用リブ191、193と前後仕切り用リブ192、194とを、シリンダ部22からの戻りオイルを変速機側オイル室RBに案内するガイド部材として機能させることができる。
【0051】
さらに、本構成では、変速機側オイル室RBが、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの間に跨って形成されており、図7に示すように、右クランクケース24B側には、第1開口部211〜213と第2開口部215との間の上下に仕切る隔壁217が設けられており、変速機ケース61A側には、このような隔壁は設けられていない。このため、第1開口部211〜213を通って変速機側オイル室RBに入ったオイルは、単純にエンジン20の後方に流れて第2開口部215に入るのではなく、上記隔壁217によってこの後方への流れが止められてエンジン20の右方向に流れることで、隔壁217を避けて第2開口部215に入るようになっている。これによって、変速機側オイル室RBでのオイル流れ経路を長くすることができ、オイル放熱量をより増やすことができる。
また、本構成では、第1オイル室RO1および第2オイル室RO2がクランクケース24の全幅に渡って形成されるので、クランクケース24の底板24A1、24B1だけでなく両側壁を介してもオイルの熱を放熱でき、さらに、変速機側オイル室RBによって変速機ケース61Aの底板および側壁を介してもオイルの熱を外部に放出できる。従って、オイル放熱面を広く確保でき、オイル放熱量をより増やすことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、変速機ケース61Aの下部に変速機収容部61と区画された変速機側オイル室RBを設け、この変速機側オイル室RBを通してオイルの循環をするように構成したので、オイル室でのオイル流れ経路を長くすることができると共にオイル滞留時間を長くでき、オイル室でのオイル放熱量を増やすことができる。したがって、オイル溜まりのオイルは放熱されたものが溜まっていくことになる。これにより、大型オイルクーラを追加しなくても、空冷エンジンでのオイル冷却量を向上できる。
しかも、本構成では、クランクケース24に形成されるクランク側オイル室RAを分室して第1オイル室RO1と第2オイル室RO2を設け、第1オイル室RO1に、変速機ケース61Aに形成される変速機側オイル室RBに通じる第1開口部211〜213を設け、変速機側オイル室RBに、第2オイル室RO2に通じる第2開口部215を設けたので、オイル室でのオイル流れ経路を効率よく長くすることができると共にオイル滞留時間を効率よく長くできる。したがって、オイル室でのオイル放熱量を効率よく増やすことができる。
また、第2オイル室RO2に、オイルポンプ100がオイルを吸い出すストレーナ室101に通じる第3開口部197を設けたので、第1オイル室RO1や変速機側オイル室RB内のオイルは第2オイル室RO2を経てストレーナ室101へ入る。このため、戻りオイルがストレーナ室101へ直接入る構成に比して、オイル室でのオイル流れ経路およびオイル滞留時間を長くすることができ、オイル室でのオイル放熱量を増やすことができる。これにより、放熱されたオイルをストレーナ103へ供給することができる。
【0053】
また、第1オイル室RO1を、シリンダ部22からの戻りオイルが落下する位置に設け、この第1オイル室RO1の後方に第2オイル室RO2を設け、この第2オイル室RO2の前方かつ第1オイル室RO1の下方に、ストレーナ室101を設けたので、シリンダ部22からの戻りオイルを確実に第1オイル室RO1に落下させてオイル室での放熱を効率よく行わせることができると共に、第1オイル室RO1とストレーナ室101とを上面視で重ねて配置でき、限られたスペースを効率よく利用して第1オイル室RO1、第2オイル室RO2およびストレーナ室101を配設することができる。
また、第2開口部215は、第1開口部211〜213よりも低い位置にあり、第3開口部197は、第2開口部215よりも低い位置にあるため、重力を利用してオイルを第1オイル室RO1から変速機側オイル室RBへとスムーズに流すことができると共に、変速機側オイル室RBから第2オイル室RO2へとスムーズに流すことができる。
【0054】
また、変速機ケース61Aの下部を、変速機室R2側に凹ませて変速機側オイル室RBを形成するため、この変速機側オイル室RBが変速機室R2の下方に位置する。変速機側オイル室RBが変速機室R2の下方に位置すれば、変速機側オイル室RBの変速機室R2側の外表面もオイル放熱面として機能させることができ、オイル放熱面が広くなる分、オイル放熱量を増やすことができる。
さらに、本構成では、クランクケース24の左右の壁間に渡って上下仕切り用リブ191、193と前後仕切り用リブ192、194とを設け、これらリブ191〜194に沿って流れるシリンダ部22からの戻りオイルを変速機側オイル室RBへ流す位置に第1開口部213を設けたので、これらリブ191〜194を、戻りオイルを変速機側オイル室RBにスムーズに案内するガイド部材として機能させることができる。この場合、このガイド部材が、クランクケース24の左右の壁間に渡って設けられるので、シリンダ部22からの戻りオイルをより確実に変速機側オイル室RBに案内することができる。
【0055】
次にベルト式無段変速機60の導風構造について説明する。
変速機室R2、つまり、変速機収容部61内には、外気が導入され、この導入した外気でベルト式無段変速機60を冷却するように構成されている。
図2に示すように、駆動プーリ63の上方に相当する変速機ケース61Aの前上部には、外気吸気口115が設けられ、従動プーリ67の上方に相当する変速機ケース61Aの後上部には、外気排気口116が設けられる。これら外気吸気口115および外気排気口116は、前後に間隔を空けて設けられ、後上がりに上方へ平行に延びるダクト部115A、116Aを有しており、変速機ケース61Aに一体に形成されている。そして、これら外気吸気口115および外気排気口116の上端部には、図示せぬダクトが接続され、このダクトを介して外気が流通自在に構成される。なお、図2中、符号62は、変速機ケース61A内(変速機室R2内)の水を排出するための水抜き部である。
【0056】
変速機収容部61内に配置された駆動プーリ63の固定半体63Aには、この駆動プーリ63を送風ファンとして機能させるための送風用フィン63Cが設けられ、駆動プーリ63の回転によって送風用フィン63Cが回転すると、外気吸気口115から変速機室R2内に外気が取り込まれる。
さらに、変速機収容部61内の従動プーリ67の固定半体67Aにも、従動プーリ67を送風ファンとして機能させるための送風用フィン67Cが設けられており、送風用フィン67Cの回転により、外気吸気口115から取り込まれた外気を変速機室R2内で従動プーリ67側へと引き込むことができ、外気排気口116から排気させることができる。これによって、変速機室R2内に駆動プーリ63側から従動プーリ67側へと向かう外気の流れが生じ、ベルト式無段変速機60が強制空冷されるようになっている。
なお、図2には、駆動プーリ63と従動プーリ67の回転方向を矢印で示しており、いずれも右側面視で右回りに回転することによって、外気吸気口115からスムーズに外気を吸い込み、吸い込んだ外気を外気排気口116からスムーズに排気できるようになっている。
【0057】
図10は、エンジン20を下側から見た図である。上述したように、このエンジン20では、クランクケース24が、左クランクケース24Aと右クランクケース24Bとからなり、右クランクケース24Bの右側に変速機ケース61Aが連結され、この変速機ケース61Aが遠心クラッチ80を覆うクラッチケースとしても機能している。この変速機ケース61Aの下部にもオイル溜まり部が形成されるため、クランクケース24の下面と変速機ケース61Aの下面とはオイル溜まり部(クランク側オイル室RA、変速機側オイル室RB)の底面となり、ほぼ同じ高さに揃う(図2参照)。
本構成では、このクランクケース24のオイル溜まり部(クランク側オイル室RA)に下方に突出する前後一対のボス部(ステップバー支持部)36Bを設けると共に、変速機ケース61Aの下部のオイル溜まり部(変速機側オイル室RB)にも下方に突出する前後一対のボス部(ステップバー支持部)36Bを設け、これらボス部36Bに、車体左右方向に延出するステップバー36を取り付ける図示せぬフランジボルトを締結するようにしている。
これにより、ステップバー36の左右の支持間隔を、クランクケース24だけで支持する場合よりも広く確保することができる。
【0058】
次にギアダンパ97について説明する。
図11は、出力軸31に設けられるギアダンパ97を周辺構成と共に示す図である。
出力軸31には、ファイナルギア95の右側に隣接してダンパ保持部材98が設けられ、このダンパ保持部材98は、圧入によって出力軸31に固定されることによって出力軸31と一体に回転する。
また、ファイナルギア95は、出力軸31に回転自在に保持されており、出力軸31のファイナルギア95左側には、ばね受け部となる拡径部31Aが一体に設けられ、この拡径部31Aとファイナルギア95の左端面との間には、ばね部材(本例では複数枚の皿ばね)99が介挿され、このばね部材99の弾性力によりファイナルギア95がダンパ保持部材98側へ付勢される。
【0059】
図12(A)は、ファイナルギア95の側面図であり、図12(B)は、ファイナルギア95のA1−A1断面を示す図である。また、図13(A)は、ダンパ保持部材98の側面図であり、図13(B)は、ダンパ保持部材98のA2−A2断面を示す図である。
これら図に示すように、ファイナルギア95のダンパ保持部材98側の面には、複数(本例では3つ)の凹カム95Aが等角度間隔で形成されており、ダンパ保持部材98のファイナルギア95側の面には、上記凹カム95Aに各々噛み合う凸カム98Aが形成される。
エンジン20側から駆動トルクが作用し、駆動輪側(後輪15側)から駆動方向と逆方向のトルク(いわゆるバックトルク)が作用していない場合には、ファイナルギア95の凹カム95Aとダンパ保持部材98の凸カム98Aとが噛み合い、エンジン20側からの駆動トルクにより出力軸31が回転駆動し、駆動輪である後輪15が駆動される。
一方、駆動輪側(後輪15側)からバックトルクが作用した場合には、ファイナルギア95がばね部材99の弾性力に抗してダンパ保持部材98の凸カム98Aがファイナルギア95の凹カム95Aに対して周方向に滑り、エンジン20側へのバックトルクの伝達を緩和する。これによって、駆動輪側からのバックトルクを吸収するカム式のギアダンパがクランクケース24内に配設される。
【0060】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、上述の実施形態では、従動プーリ軸(従動軸)64を、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとに各々配置した左右一対の軸受65、65に支持したが、これに限らず、図14に一例を示すように、右クランクケース24Bの左端を、右クランクケース24Bを貫通させて左に延ばし、左クランクケース24Aに配置した軸受65に支持するようにしてもよい。この構成では、従動プーリ軸64に設けられるクラッチ出力ギア84が、左右のクランクケース24A、24B内に配置されるので、このクラッチ出力ギア84に噛み合う中間軸従動ギア(減速ギア)93が左右のクランクケース24A、24B内に位置し、この中間軸従動ギア93の抜け止めを行う部材が不要になる。
【0061】
また、この図14で示す構成では、エンジン20の出力軸31にギアダンパ97を備えない代わりに、出力軸31に、上記中間軸従動ギア93の回転を出力軸31に伝達する中間軸駆動ギア94に噛み合う出力軸ギア31Xを圧入又はスプライン結合することによって、出力軸31が回転駆動される。このように、ギアダンパ97の有無、従動プーリ軸(従動軸)64の支持位置などを容易に設計変更可能である。
また、上記実施形態では、単気筒のエンジンに本発明を適用する場合について説明したが、これに限らず、各気筒を所定の挟み角度で配置したいわゆるV型エンジン、或いは、各気筒を並列に配置した並列型エンジンに本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、自動二輪車用の内燃機関に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、自動二輪車以外の他の車両などに使用される内燃機関に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態を適用した自動二輪車の側面図である。
【図2】自動二輪車のエンジンの内部構造を車体右側から示す図である。
【図3】図2のIII−III断面を示す図である。
【図4】図2のIV−IV断面を示す図である。
【図5】エンジンのクランク軸を周辺構成と共に示す図である。
【図6】右クランクケースを内側(左側)から見た図である。
【図7】右クランクケースを外側(右側)から見た図である。
【図8】左クランクケースを内側(右側)から見た図である。
【図9】変速機ケースを右クランクケース側(左側)から見た図である。
【図10】エンジンを下側から見た図である。
【図11】ギアダンパを周辺構成と共に示す図である。
【図12】(A)はファイナルギアの側面図であり、(B)はファイナルギアのA1−A1断面を示す図である。
【図13】(A)はダンパ保持部材の側面図であり、(B)はダンパ保持部材のA2−A2断面を示す図である。
【図14】変形例の説明に供する図である。
【符号の説明】
【0063】
1 自動二輪車
20 エンジン(内燃機関)
22 シリンダ部
24 クランクケース
24A 左クランクケース
24B 右クランクケース
31 出力軸
51 クランク軸
51R 駆動プーリ軸(駆動軸)
60 ベルト式無段変速機
61 変速機収容部
61A 変速機ケース(クラッチケースを兼ねる)
61B 変速機カバー(カバー部材)
63 駆動プーリ
64 従動プーリ軸(従動軸)
67 従動プーリ
68 Vベルト
81 動力伝達機構
100 オイルポンプ
101 ストレーナ室
140 キック式始動装置
191、193 上下仕切り用リブ(ガイド部材)
192、194 前後仕切り用リブ(ガイド部材)
197 第3開口部
201、203 オイル受け用リブ
211、212、213 第1開口部
215 第2開口部
RA クランク側オイル室(オイル溜まり部)
RB 変速機側オイル室(オイル溜まり部)
RO1 第1オイル室
RO2 第2オイル室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を支持するクランクケースの一側に、変速機を収容する変速機ケースを備え、クランクケースの下部にクランク側オイル室を設けた内燃機関において、
前記変速機ケースの下部に変速機収容部と区画された変速機側オイル室を設け、この変速機側オイル室を通してオイルの循環をすることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記クランク側オイル室は、分室された第1オイル室と第2オイル室とを有し、
前記第1オイル室に、前記変速機側オイル室に通じる第1開口部を設け、前記変速機側オイル室に、前記第2オイル室に通じる第2開口部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第2オイル室に、オイルポンプのストレーナに通じる第3開口部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記第1オイル室を、前記内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルが落下する位置に設け、この第1オイル室の後方に前記第2オイル室を設け、この第2オイル室の前方かつ前記第1オイル室の下方に、前記ストレーナ室を設けたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記第2開口部は、前記第1開口部よりも低い位置にあり、前記第3開口部は、前記第2開口部よりも低い位置にあることを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記変速機側オイル室は、前記変速機ケースが変速機を収容する変速機室の下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記クランクケースの内側に、前記内燃機関のシリンダ部からの戻りオイルを、前記変速機側オイル室に案内するガイド部材を設けることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記クランクケースの左右の壁間に渡って設けられることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−236521(P2010−236521A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88261(P2009−88261)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】