説明

内視鏡システム

【課題】術者が希望する部位にオートフォーカス制御する。
【解決手段】 内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記選択部は、前記観察画像の所定の変化が所定期間継続することによって、前記複数の分割領域のうち前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域を決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス機能を有する内視鏡を用いた内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、医療用分野及び工業用分野において広く利用されている。医療用分野において使用される内視鏡は、細長な挿入部を体腔内に挿入することによって、体腔内を観察可能にすると共に、挿入部に設けられた処置具チャンネルを介して処置具を体腔内に導入することによって各種処置等を行える。
【0003】
このような内視鏡には、観察光学系の焦点を自動調節するオートフォーカス機能を有するものがある。オートフォーカス機能を有する内視鏡の一例として特許文献1に開示されたものがある。
【0004】
特許文献1で開示された内視鏡の先端部には、対物観察を行うための対物光学系が配設されている。この対物レンズの前方にはカバーガラスが覆設されており、対物レンズの後方には対物レンズによって結像された観察画像を撮像する撮像素子が配設されている。この撮像素子から撮像信号を伝送する信号線が延設されており、この信号線はプロセッサ装置に電気的に接続されている。プロセッサ装置は、モニタに映像信号を出力して観察画像を表示させるようになっている。
【0005】
また、プロセッサ装置には、マイコンによってパッシブオートフォーカス制御部が構成されている。対物光学系は、光軸方向に相対的に進退自在な複数のレンズにより構成されており、パッシブオートフォーカス制御部は、アクチュエータによってレンズを進退させることにより、オートフォーカス制御を行うようになっている。
【0006】
民生用のカメラ等においては、観察画像のほぼ中央部の被写体にオートフォーカスするようになっている。しかしながら、例えば内視鏡を管腔に挿入して管腔壁を観察する場合には、管腔壁は観察画像の周辺部に位置することから、観察画像の周辺部に観察光学系をフォーカスすることが好ましい。このように、内視鏡においては、民生用のカメラ等とは異なり、内視鏡の使用方法に応じたオートフォーカス制御が必要である。
【0007】
例えば、特許文献1では、消化器官を撮影する場合において、照明光が消化器官を覆う粘膜上で反射することによって生じるハレーションを考慮したオートフォーカス制御が開示されている。即ち、特許文献1の発明では、撮像エリアを複数に分割し、各エリア毎にハレーションの有無を判定し、ハレーションが生じているエリアを除くエリアにおいて、コントラストが最も高いエリアにフォーカスを合わせるようになっている。これにより、ハレーションが発生する場合でも精度良く合焦状態を得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−294788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、内視鏡は被写体を観察するために体腔内に挿入され、しかも患部等に対する各種処置にも用いられる。このため、患部等のフォーカスを合わせたい部位以外の部分にオートフォーカス制御されてしまうことが多い。例えば、体腔内に挿入されることから対物光学系の先端に汚れが付着することがある。この場合には、この汚れに合焦してしまう虞がある。また、観察範囲内に出血が生じていることもある。この場合には、出血部分に合焦してしまうことがある。また、鉗子等の処置具に合焦したり、患部への送水時には送水位置に合焦したりすることがある。特許文献1の装置を用いたとしても、このような場合には希望する部位以外の部位にオートフォーカス制御されてしまう。
【0010】
このように、従来、内視鏡システムにおいては、希望する部位にオートフォーカス制御されないことが多いという問題があった。
【0011】
本発明は、希望しない部位にオートフォーカス制御されることを防止して、内視鏡の操作性を向上させることができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記選択部は、前記観察画像の所定の変化が所定期間継続することによって、前記複数の分割領域のうち前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域を決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とするものであり、
また、本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記複数の分割領域のうち前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域を決定するためのデータであって、前記分割領域の輝度、色度及びコントラストのうちの少なくとも1つの状態を検出対象毎に設定した比較用データを記憶する記憶部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記選択部は、前記観察画像と前記比較用データとの比較結果の内容が所定期間変化しないことによって、前記フォーカス制御除外領域を決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とするものであり、
また、本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記選択部は、前記観察画像のうちの所定の分割領域における輝度が所定期間所定のレベル以上になることによって、前記所定の分割領域を前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域に決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とするものであり、
また、本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記フォーカス制御部は、前記観察画像の所定の変化が所定期間継続することによって、前記フォーカス制御として遠点制御を行うことを特徴とするものであり、
また、本発明に係る内視鏡システムは、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、前記分割領域の輝度、色度及びコントラストのうちの少なくとも1つの状態を検出対象毎に設定した比較用データを記憶する記憶部と、前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、前記フォーカス制御部は、前記観察画像と前記比較用データとの比較結果が所定期間維持されることによって、前記フォーカス制御として遠点制御を行うことを特徴とするものであり、
また、本発明に係る内視鏡システムは、ズームレンズを移動させ、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を拡大観察可能な内視鏡システムにおいて、フォーカス動作を制御するフォーカス制御部と、前記ズームレンズを移動させるズームレンズ移動部と、前記観察画像内の所定の領域において既知の物体を検知する検知部と、を具備し、前記フォーカス制御部は、前記拡大観察時に前記検知部が前記所定の領域において前記既知の物体を検知した場合には、前記ズームレンズ移動部を制御して前記ズームレンズを遠点観察位置に移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、希望しない部位にオートフォーカス制御されることを防止して、内視鏡の操作性を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システムの全体概略構成を示す説明図。
【図2】挿入部11の先端部に内蔵された撮像ユニットの概略構成を示す説明図。
【図3】比較用メモリ45に記憶されている比較用データの一例を示す説明図。
【図4】本実施の形態における遅延フォーカス制御を説明するためのフローチャート。
【図5】通常フォーカス制御を説明するための説明図。
【図6】鉗子が挿入された場合の遅延フォーカス制御を説明するための説明図。
【図7】鉗子口17から送水が行われた場合の遅延フォーカス制御を説明するための説明図。
【図8】近接観察時の遅延フォーカス制御を説明するための説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態において採用される動作フローを示すフローチャート。
【図10】本発明の第1の実施の形態における鉗子検出の変形例を示すフローチャート。
【図11】他の変形例を示すフローチャート。
【図12】他の変形例を示すフローチャート。
【図13】他の変形例を示すフローチャート。
【図14】横軸にフォーカス位置(距離)をとり縦軸にコントラストをとって、赤色のコントラストCR及び青色のコントラストCBの変化を示すグラフ。
【図15】変形例を説明するための説明図。
【図16】変形例を説明するための説明図。
【図17】アクティブ方式のフォーカス制御を行う内視鏡システムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡システムの全体概略構成を示す説明図である。
【0017】
図1に示すように、内視鏡システム1は、内視鏡2と、内視鏡2に照明光を供給する光源装置5と、内視鏡2によって撮像した画像の信号処理を行うプロセッサ装置4とによって構成される。
【0018】
内視鏡2は、体腔内に挿入される細長い挿入部11を有し、挿入部11の基端部には操作者に操作される操作部12が連設されている。この操作部12からユニバーサルコード13が延出されており、ユニバーサルコード13の延出端部にはスコープコネクタ14が配設されている。
【0019】
挿入部11の先端部には、観察対象を照明する照明光学系の照明レンズ15が配設されている。なお、図1では、2つの照明レンズ15を有する例を示している。照明レンズ15の後端面には、照明光を導光する図示しないライトガイドの先端部が接続されている。ライトガイドは、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタ14まで延設されている。スコープコネクタ14を光源装置5に接続することにより、ライトガイドを介して照明レンズ15に照明光を供給し、照明レンズ15から挿入部11前方の被写体に照明光を照射することが可能である。
【0020】
光源装置5はランプ56を有する。ランプ56の照明光は、制御回路51により駆動される絞り55の開口により透過光量が調整された後、回転カラーフィルタ57を介してスコープコネクタ14内のライトガイドの入射端面に入射されるようになっている。なお、これらの制御回路51、ランプ56及び絞り55には、電源回路53からの電源電圧が供給されるようになっている。なお、光源装置5にはポンプ58も設けられており、ポンプ58は、内視鏡2内の図示しない吸引チャンネルを介して吸引を行うことができるようになっている。
【0021】
内視鏡2においては、挿入部11内に、様々な処置具を挿通可能とする図示しないチャンネルが設けてある。このチャンネルは、先端部11において開口するチャンネル先端開口(以下、鉗子口という)17と、操作部12の前端付近の処置具挿入口19と、鉗子口17及び処置具挿入口19とを接続する図示しないチャンネルチューブとによって構成される。
【0022】
そして、この処置具挿入口19から処置具を挿入することにより、処置具の先端側を鉗子口17から突出させることができ、患部組織を採取したり、切除などの処置を行うことができるようになっている。また、操作部12には、挿入部11の先端を湾曲させるためのアングルノブ30、各種スイッチ31及びタッチセンサ71も配設されている。
【0023】
挿入部11の先端には、照明レンズ15に隣接して観察窓16が設けられている。観察窓16の近傍には、観察窓16に送水等を行って観察窓16を洗浄するためのノズル18が配設されている。
【0024】
図2は挿入部11の先端部に内蔵された撮像ユニットの概略構成を示す説明図である。
【0025】
図2に示すように、観察窓16の後端には、照明された被写体の光学像を結ぶ対物光学系21と、対物光学系21の結像位置に受光面が配置された固体撮像素子としての例えば電荷結像素子(以下、CCDという)22とによって構成される撮像ユニット23が配置されている。対物光学系21は、可動レンズ21a及び固定レンズ21b及び図示しないズームレンズ等によって構成されており、可動レンズ21a及び図示しないズームレンズは、レンズ駆動部24によって観察光学系の光軸方向に進退駆動されるようになっている。レンズ駆動部24としては、例えば、圧電アクチュエータ、圧電ワイヤ、モータ等が採用される。レンズ駆動部24によって可動レンズ21aを進退駆動することによって、フォーカス制御を行うようになっている。
【0026】
レンズ駆動部24からは信号線25が延出されており、この信号線25は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタ14まで延設されている。また、CCD22には、信号ケーブル26の一端が接続され、信号ケーブル26は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタ14まで延設されている。
【0027】
スコープコネクタ14には、伝送ケーブル39が接続されており、スコープコネクタ14まで延設された信号線25及び信号ケーブル26は、更に、伝送ケーブル39を介してプロセッサ装置4に接続されるようになっている。
【0028】
信号ケーブル26は、撮像素子駆動部40から供給される駆動信号をCCD22に伝送する。これにより、CCD22は駆動され、被写体の光学像を電気信号に変換して、観察画像の画像信号を信号ケーブル26を介してプロセッサ装置4のA/D変換器41に出力するようになっている。なお、駆動信号には、CCD22を駆動するための動作クロック及び電源電圧等が含まれる。
【0029】
A/D変換器41は、CCD22からの画像信号をデジタル信号に変換して、プロセッサ部42に出力する。A/D変換器41からの画像信号はプロセッサ部42の映像メモリ43に与えられる。映像メモリ43は、CCD22の撮像によって得られた画像信号を順次記憶する。映像制御部44は画像メモリ43から観察画像の画像信号を読み出して、所定の信号処理を施した後、図示しないモニタに出力することができるようになっている。こうして、モニタの表示画面上において、被写体の観察画像を表示することができる。
【0030】
映像プロセッサ部42には、駆動制御部46が設けられている。駆動制御部46は、CCD22を駆動するための基本クロックCLK等を発生して撮像素子駆動部40に出力するようになっている。撮像素子駆動部40は、入力された基本クロック等に基づいて、CCD22を駆動するための駆動信号を発生するようになっている。
【0031】
本実施の形態においては、フォーカス制御は、分割領域決定部、選択部及びフォーカス制御部としての映像制御部44によって制御されるようになっている。映像制御部44は、被写体の画像信号に基づいて、フォーカス制御のための制御信号をアクチュエータ制御回路49に出力することができるようになっている。本実施の形態においては、映像制御部44は、比較用メモリ45に記憶された比較用のデータと映像メモリ43からの観察画像とに基づいて、フォーカス制御のための制御信号を生成するようになっている。アクチュエータ制御回路49は、制御信号に基づいてレンズ駆動部24を制御することで、可動レンズ21aを進退駆動して、合焦状態を得るようになっている。
【0032】
映像制御部44は、例えば、観察画像のコントラストに応じてフォーカスを制御する。この場合において、本実施の形態においては、映像制御部44は、観察画像を複数の領域に分割し、複数の分割領域から少なくとも1つの分割領域を選択し、選択した分割領域(以下、制御対象分割領域という)の観察画像が合焦状態となるように、制御信号を発生するようになっている。例えば、映像制御部44は、制御対象分割領域の観察画像が最も高コントラストとなるように制御を行う。
【0033】
映像制御部44は、例えば、複数の分割領域のうち領域内の輝度の平均値が最も高い制御対象分割領域や、最も高輝度の部分を有する制御対象分割領域を選択する通常フォーカス制御を行うことができるようになっている。この通常フォーカス制御では、例えば、輝度が高い1つの制御対象分割領域において、最も高いコントラストが得られるように、可動レンズ21aを進退駆動するための制御信号がアクチュエータ制御回路49に出力される。
【0034】
本実施の形態においては、このような通常フォーカス制御だけでなく、内視鏡の観察画像の特殊性に応じた遅延フォーカス制御も行われるようになっている。この遅延フォーカス制御を行うか否かを判定するための比較用データが比較用メモリ45に保持されている。
【0035】
この遅延フォーカス制御においては、例えば、観察窓に汚れが付着している場合、観察範囲内に出血が生じている場合、観察範囲内に鉗子等の処置具が存在する場合、患部に送水する場合等において、フォーカス動作を制御することで、術者が希望する部位以外の部位にオートフォーカス制御されてしまうことを防止することが可能である。
【0036】
即ち、本実施の形態における遅延フォーカス制御においては、観察画像の全分割領域のうち選択すべき制御対象分割領域の候補から所定の分割領域を除外することにより、術者が希望する部位以外の部位が合焦状態となることを防止するようになっている。
【0037】
比較用メモリ45は、制御対象分割領域の候補から除外すべき分割領域(以下、フォーカス制御除外領域という)を特定するための比較データを保持する。映像制御部44は、映像メモリ43から得られる観察画像と比較データとを比較することで、フォーカス制御除外領域を特定する。
【0038】
図3は比較用メモリ45に記憶されている比較用データの一例を示す説明図である。なお、図3は説明を簡略化するために比較用データをその内容に応じた文章にて示している。図3の比較用データは、観察画像中の各被写体のうち合焦させたくない対象物(以下、検出対象という)毎に、比較に用いる領域、比較内容及び制御内容を記述したものである。なお、図3は一例であり、例えば図3の同一の検出対象についても、図3とは異なる領域、異なる比較内容、異なる制御内容を設定可能である。図3に示すように、比較用データとしては、フォーカス制御の制御内容も含んでよい。
【0039】
比較用データとしては、例えば、汚れを検出するためのもの、血液を検出するためのもの、鉗子を検出するためのもの、送水を検出するためのもの等がある。汚れについての比較用データとしては、例えば、各分割領域内の所定範囲(例えば、30%以上の範囲)において輝度が所定期間変化しない部分が存在するか否かを判定すべきであることを示すものがある。また、血液についての比較用データとしては、各分割領域において波長が例えば625〜720nm(赤い色)の範囲の成分のレベルが所定期間所定のレベルよりも高い観察画像であるか否かを判定すべきであることを示すものがある。また、鉗子についての比較用データとしては、例えば、鉗子口近傍の所定範囲の分割領域において輝度が所定期間所定のレベルよりも高いことを判定すべきであることを示すものがある。また、送水については、鉗子口近傍の所定範囲の分割領域においてコントラストが所定期間時間的にゆらいでいるか否かを判定すべきであることを示すものや、各分割領域におけるコントラストに時間的なゆらぎが所定期間生じているか否かを判定すべきであることを示すもの等が考えられる。なお、比較用データとしてはこれらに限定されるものではなく、内視鏡により撮像される観察画像の特殊性に応じて、種々設定可能である。
【0040】
例えば、映像制御部44は、各分割領域内の所定範囲(例えば、30%以上の範囲)において輝度が所定期間変化しない部分が存在する場合には、この分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。これにより、例えば、観察窓16に汚れが付着している場合において、汚れの部分が合焦状態となることを防止することができる。
【0041】
また、例えば、映像制御部44は、各分割領域が、例えば625〜720nmの波長範囲の成分のレベルが所定期間所定のレベルよりも高い観察画像の部分である場合には、これらの分割領域が出血を観察したものであると判定して、これらの分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。なお、所定領域以上(例えば50%以上)の分割領域において出血が観察されたものと判定された場合には、映像制御部44は、フォーカス制御を停止させてもよく、或いはフォーカス制御として、対物光学系を遠点観察位置に移動させる遠点制御を行うようにしてもよい。
【0042】
また、例えば、映像制御部44は、鉗子口近傍の所定範囲の分割領域において輝度が所定期間所定のレベルよりも高いことを判定した場合には、この分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。これにより、例えば、観察範囲内に鉗子等の処置具が存在する場合において、この部分が合焦状態となることを防止することができる。
【0043】
また、例えば、映像制御部44は、鉗子口近傍の所定範囲の分割領域においてコントラストのゆらぎが所定期間時間的にゆらいでいる場合には、鉗子口近傍の所定範囲の分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。これにより、例えば、鉗子口から送水が行われた場合でも、この送水部分が合焦状態となることを防止することができる。
【0044】
また、例えば、映像制御部44は、分割領域の多くの部分のコントラストに時間的なゆらぎが所定期間生じている場合には、全ての分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。これにより、例えば、送水等によって、正常にフォーカス制御を行うことができない場合でも、フォーカス動作を禁止することで、非合焦状態となることを防止することができる。
【0045】
なお、上記説明では、映像制御部44は、比較用データによって比較すべき範囲として指定される所定範囲の分割領域と、フォーカス制御除外領域とが一致する例を示したが、両者は異なる領域であってもよい。
【0046】
プロセッサ装置4の各部には、電源回路47によって駆動電圧が供給されるようになっている。また、制御回路51と映像プロセッサ部42とはケーブル52によって接続されており、制御回路51は、映像プロセッサ部42に制御されて、光源装置5内の各部を制御するようになっている。
【0047】
また、プロセッサ装置4には、図示しない入力部が設けられている。術者は、この入力部によって、上述した、比較用メモリ45に記憶させる比較用データを設定することができるようになっている。また、内視鏡2において図示しないメモリを設け、このメモリに内視鏡毎の比較用データを保持し、内視鏡2をスコープコネクタ14を介してプロセッサ装置4に接続することで、内視鏡2内のメモリから読み出した比較用データを比較用メモリ45に記憶させるようにしてもよい。
【0048】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図4〜図8を参照して説明する。図4は本実施の形態における遅延フォーカス制御を説明するためのフローチャートである。図5は通常フォーカス制御を説明するための説明図であり、図6は鉗子が挿入された場合の遅延フォーカス制御を説明するための説明図であり、図7は鉗子口17から送水が行われた場合の遅延フォーカス制御を説明するための説明図であり、図8は近接観察時の遅延フォーカス制御を説明するための説明図である。
【0049】
図5乃至図8は観察画像を示している。図5乃至図8において、格子状の線は分割領域の区分を示している。映像制御部44は、分割領域の区分を示す線をモニタ上において表示させてもよく、非表示としてもよい。図5乃至図8では、画像上のハッチング、ドット及び模様等によって輝度の変化を示している。なお、図5では斜線ハッチング部が最も輝度が高い領域であるものとする。
【0050】
図4のステップS1において、比較用メモリ45に比較用データの登録が行われる。例えば、術者が入力部を操作して、比較用データを登録してもよく、内視鏡に設けられたメモリや他の記録媒体に記録された比較用データを比較用メモリ45に転送することで、比較用データの登録を行ってもよい。
【0051】
また、内視鏡毎に、オートフォーカス制御を可能にするアクチュエータの有無、鉗子口の位置、照明レンズの位置等は既知であるので、内視鏡の種類の設定のみによって詳細な比較用データを登録することも可能である。また、分割領域の形状及びサイズについても、内視鏡に内蔵された撮像素子の解像度等に基づく規定の値を比較用データとして比較用メモリ45に記憶させておくことも可能である。
【0052】
光源装置5からのR,G,B照明光は、ライトガイドを介して挿入部11に伝達され、照明レンズ15から被写体に照射される。一方、プロセッサ装置4内の撮像素子駆動部40は、映像プロセッサ部42の駆動制御部46に制御されて、CCD22を駆動する。被写体からの光学像は、観察窓16から対物光学系21に入射して、CCD22の受光面に結像する。CCD22は、光学像を電気信号に変換して、観察画像の画像信号を出力する。この画像信号は、信号ケーブル26を介して、プロセッサ装置4のA/D変換器41に供給される。
【0053】
A/D変換器41は入力された画像信号をデジタル信号に変換して映像メモリ43に出力する。映像メモリ43は入力された画像信号を記憶する。映像制御部44から映像メモリ43に記憶された観察画像の画像信号を読み出す。映像制御部44は、読み出した画像信号に所定の信号処理を施した後、モニタに出力する。これにより、モニタの表示画面上において、観察画像が表示される。
【0054】
映像制御部44は、観察画像をモニタの表示画面上に表示させながら、同時にオートフォーカスのための制御を行う。即ち、映像制御部44は、ステップS2において分割領域を設定し、ステップS3において分割領域毎にコントラスト及び輝度を分析する。映像制御部44は、次のステップS4において、比較用メモリ45から比較用データを読み出して、分割領域毎に、コントラスト及び輝度について比較用データによって指定された比較を行う。映像制御部44は、比較結果によってフォーカス制御除外領域を設定する必要がないと判断した場合には、通常フォーカス制御を行う。
【0055】
図5(a)は、通常フォーカス制御が行われる観察画像を示している。通常フォーカス制御においては、分割領域の例えば輝度が分析され、図5(b)の太枠で示す最も輝度が高い分割領域が制御対象分割領域に設定される。そして、映像制御部44は、アクチュエータ制御回路49に制御信号を出力して、制御対象分割領域の観察画像のコントラストが最も高くなるように、対物光学系21の可動レンズ21aを進退動させる。これにより、図5(c)の太枠に示す部分に合焦した観察画像が得られる。
【0056】
(鉗子)
ここで、図6(a)に示すように、鉗子口17から体腔内に挿入された鉗子61が観察画像内に現れるものとする。鉗子61の観察画像の輝度は極めて高い。鉗子61が観察画像内に現れることによって、映像制御部44は、鉗子61が位置する高輝度の分割領域を制御対象分割領域に設定するので、鉗子61が合焦状態となる。
【0057】
一方、映像制御部44は、ステップS4において比較を行う。観察画像中において鉗子61が現れる位置は既知である。映像制御部44は、ステップS4における比較によって、鉗子61が現れるべき所定の範囲において輝度が極めて高い分割領域を検出する。これにより、映像制御部44は鉗子61が現れるべき所定の領域に鉗子61が現れた可能性があるものと判定することができる。映像制御部44は、ステップS5において、所定範囲において輝度が極めて高い分割領域が存在するものと検出した後所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間が経過していない場合には、処理をステップS3,S4に戻して、コントラスト、輝度の分析及び比較を繰返す。なお、ステップS5の所定期間は、術者によって適宜設定可能であり、所定期間の情報は各比較データ毎に比較用メモリ45に記憶されるようになっている。
【0058】
ステップS5において所定期間が経過したものと判定されると、映像制御部44は、ステップS6において比較結果が同一の内容を示すものである場合には、鉗子61が所定領域に現れたものと判断して、図6(b)の斜線にて示す所定領域をフォーカス制御除外領域に設定する(ステップS7)。
【0059】
映像制御部44は、全分割領域のうちフォーカス制御除外領域を除く領域から最も輝度が高い分割領域を制御対象分割領域に設定する。そして、映像制御部44は、再設定した制御対象分割領域の観察画像のコントラストが最も高くなるように、対物光学系21の可動レンズ21aを進退動させる。こうして、鉗子61が体腔内に挿入された場合でも、比較的短い遅延時間の後に、この鉗子61から術者が希望する部位にフォーカスを移動させることができる。
【0060】
このように、鉗子が体腔内に挿入された場合には、先ず鉗子に合焦するので、鉗子の挿入状態を観察することができると共に、所定期間後に鉗子から他の希望する部位にフォーカスが移動するので、煩雑な操作をすることなく、観察したい部位を確実に観察することができる。
【0061】
(送水)
次に、例えば鉗子口17を利用して、体腔内に送水が行われるものとする。図7(a)の塗り潰し部分は送水62が行われていることを示している。観察画像内に送水62の画像が現れると、この送水62の部分の輝度は高いので、映像制御部44は、送水62が行われている高輝度の分割領域を制御対象分割領域に設定する。これにより、送水62の部分が合焦状態となる。
【0062】
送水は鉗子口17等の規定の位置から行われるので、観察画像中において送水62が現れる位置は既知である。また、送水の観察画像はコントラストが時間的に揺らぐので、映像制御部44は、ステップS4における比較によって、送水62が現れるべき所定の範囲においてコントラストの時間的な揺らぎがある分割領域を検出する。これにより、映像制御部44は送水62が現れるべき所定の領域に送水62が現れた可能性があるものと判定することができる。映像制御部44は、ステップS5において、所定範囲においてコントラストが時間的に揺らぐ分割領域が存在するものと検出した後所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間が経過していない場合には、処理をステップS3,S4に戻して、コントラスト、輝度の分析及び比較を繰返す。
【0063】
ステップS5において所定期間が経過したものと判定されると、映像制御部44は、ステップS6において比較結果が同一の内容を示すものである場合には、送水62が所定領域に現れたものと判断して、図7(b)の斜線にて示す所定領域をフォーカス制御除外領域に設定する(ステップS7)。
【0064】
映像制御部44は、全分割領域のうちフォーカス制御除外領域を除く領域から最も輝度が高い分割領域を制御対象分割領域に設定する。そして、映像制御部44は、再設定した制御対象分割領域の観察画像のコントラストが最も高くなるように、対物光学系21の可動レンズ21aを進退動させる。こうして、送水62が観察画像中に現れた場合でも、比較的短い遅延時間の後に、この送水62の部分から術者が希望する部位にフォーカスを移動させることができる。
【0065】
このように、送水が行われた場合には、先ず送水に合焦するので、術者は送水が行われたことを観察することができると共に、所定期間後に送水部分から他の希望する部位にフォーカスが移動するので、煩雑な操作をすることなく、観察したい部位を確実に観察することができる。
【0066】
なお、図7の例は送水の発生時におけるフォーカス制御を説明するものである。送水が継続されると、被写体の多くの部分に送水が達することが考えられる。この場合には、映像制御部44は、全分割領域においてコントラストの時間的な揺らぎを検出する。所定数の分割領域においてコントラストの時間的な揺らぎが所定期間継続したことを検出すると、映像制御部44は、コントラストの時間的な揺らぎが検出された分割領域又は全分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。全分割領域をフォーカス制御除外領域に設定することは、フォーカス動作を禁止することと等価である。
【0067】
このように、送水が被写体の多くの部分に行われている場合において、送水部分からフォーカスを他の部分に移動させるようにして、観察画像の視認性が不良となることを防止することができる。
【0068】
また、ノズル18から観察窓16に、洗浄のための送水が行われることもある。この場合には、送水の範囲は既知であり、映像制御部44は、送水範囲に対応する分割領域についてコントラストの時間的な揺らぎが所定期間継続したことを検出すると、この分割領域をフォーカス制御除外領域に設定する。こうして、この場合にも、送水部分からフォーカスを他の部分に移動させるようにして、観察画像の視認性が不良となることを防止することができる。
【0069】
(近接撮影)
次に、近接撮影が行われるものとする。近接撮影時には、照明レンズ15からの照明光の影響によって、観察画像の周辺部において高輝度部分が生じる。図8(a)の領域63は照明レンズ15による高輝度部分を示している。なお、図1では2つの照明レンズ15が配設されている例を示したが、図8(a)では3つの照明レンズが配設された場合の例を示している。観察画像内に照明による高輝度部分が現れると、映像制御部44は、照明による高輝度の分割領域を制御対象分割領域に設定する。これにより、照明による高輝度部分が合焦状態となる。
【0070】
照明による高輝度部分は、照明レンズ15の位置に対応しており、既知である。映像制御部44は、ステップS4における比較によって、近接撮影時に照明レンズ15によって高輝度となる所定の範囲の輝度と観察画像の中央部分の輝度とを比較し、両者の差が所定の閾値以上となるか否かを判定する。これにより、映像制御部44は近接撮影時の照明による高輝度部分が生じた可能性があるものと判定することができる。映像制御部44は、ステップS5において、近接撮影時の照明による高輝度部分が存在するものと検出した後所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間が経過していない場合には、処理をステップS3,S4に戻して、コントラスト、輝度の分析及び比較を繰返す。
【0071】
ステップS5において所定期間が経過したものと判定されると、映像制御部44は、ステップS6において比較結果が同一の内容を示すものである場合には、近接撮影によって照明による高輝度部分が観察画像の所定領域に現れたものと判断して、図8(b)の斜線にて示す所定領域をフォーカス制御除外領域に設定する(ステップS7)。
【0072】
映像制御部44は、全分割領域のうちフォーカス制御除外領域を除く領域から最も輝度が高い分割領域を制御対象分割領域に設定する。そして、映像制御部44は、再設定した制御対象分割領域の観察画像のコントラストが最も高くなるように、対物光学系21の可動レンズ21aを進退動させる。こうして、近接撮影時に照明による高輝度部分が生じた場合でも、比較的短時間の後に、術者が希望する部位にフォーカスを移動させることができる。
【0073】
このように、近接撮影時においても、所定期間後に照明による高輝度部分から他の希望する部位にフォーカスが移動するので、煩雑な操作をすることなく、観察したい部位を確実に観察することができる。
【0074】
なお、上記各例においては、フォーカス制御を停止させる場合があることを説明したが、フォーカス制御を停止させることに代えて対物光学系を遠点観察位置に移動させる遠点制御を行うようにしてもよい。
【0075】
このように本実施の形態においては、内視鏡の観察画像の特殊性を考慮して、観察画像に所定の変化が生じたか否かを判定することで、フォーカス制御除外領域を設定することで、術者が希望する部位以外の部位が合焦状態となることを防止するようになっている。
【0076】
なお、本実施の形態においては、面順次式の内視鏡を例に説明したが、単板式の撮像素子を用いた点順次式の内視鏡等にも同様に適用可能であることは明らかである。
【0077】
(第2の実施の形態)
図9は本発明の第2の実施の形態において採用される動作フローを示すフローチャートである。図9において図4と同一の手順については同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態におけるハードウェア構成は第1の実施の形態と同様であり、遅延フォーカス制御の制御方法のみが第1の実施の形態と異なるのみである。
【0078】
第1の実施の形態においては、映像制御部44は、図4のステップS3の輝度及びコントラストの分析結果を用いて、遅延フォーカス制御とは独立して通常フォーカス制御を実施した。従って、第1の実施の形態においては、鉗子等の高輝度部分に合焦された後、術者等の設定に基づく所定期間後に、これらの高輝度部分がフォーカス制御除外領域に設定されて他の部位にフォーカスが移動するようになっている。
【0079】
これに対し、本実施の形態においては、映像制御部44は、ステップS11において遅延フォーカス制御の対象か否かを判定する。即ち、映像制御部44は、ステップS4の比較の結果によって、例えば鉗子口近傍の所定範囲が極めて高輝度になって鉗子が挿入されたことを検出した場合のように、比較用データにより指定された分割領域を制御対象分割領域から除外する可能性があるか否かを判定する。除外する可能性がない場合には、処理をステップS12に移行して、通常のフォーカス制御を行う。除外する可能性がある場合には、映像制御部44は、ステップS5,S6の判定を行って、ステップS7においてフォーカス除外領域を設定するか否かを決定する。
【0080】
従って、本実施の形態においては、観察画像に遅延フォーカス制御の対象となる画像部分が現れた場合には、ステップS5の所定期間に基づく時間だけ、フォーカス制御が禁止されることになる。例えば、鉗子が鉗子口17から体腔内に挿入された場合には、映像制御部44は、鉗子口近傍の所定領域において極めて輝度が高くなる分割領域を検出するので、フォーカス制御が禁止される。従って、この場合には、鉗子にフォーカスが移動しない。
【0081】
そして、ステップS3〜S7によってフォーカス制御除外領域が設定された後、フォーカス制御が行われる。従って、鉗子等のようにフォーカスを移動させたくない被写体に基づく画像部分には合焦されず、術者が希望する部位のみが合焦される。
【0082】
このように本実施の形態においては、術者が希望する被写体部分のみに合焦が行われるので、作業性に優れているという利点がある。
【0083】
なお、上記第1の実施の制御と第2の実施の形態の制御とを切換え可能に構成することができることは明らかである。また、比較用メモリ45に制御の切換えの情報を保持させることで、各比較用データ毎に制御を選択させることも可能である。
【0084】
(変形例)
図10は本発明の第1の実施の形態における鉗子検出の変形例を示すフローチャートである。図10は観察画像中に鉗子が現れる場合において、図4のステップS4〜S6の処理に代えて採用するフローを示している。
【0085】
本変形例は、観察画像中に鉗子の画像が存在することを判別するための他の例を示している。比較用メモリ45には、鉗子が現れるべき観察画像中の所定領域(以下、領域Bという)とその他の領域(以下、領域A)の情報が記憶されている。
【0086】
映像制御部44は、図10のステップS21において、領域Aにおける例えば輝度変化が十分に小さいか否かを判定する。例えば、映像制御部44は、領域Aの平均的な輝度変化が10%以下であるか否かを判定する。映像制御部44は、領域Aの平均的な輝度変化が10%よりも大きい場合には処理を終了する。領域Aの平均的な輝度変化が10%以下の場合には、映像制御部44は、次のステップS22において、領域Bにおける例えば輝度変化が十分に大きいか否かを判定する。例えば、映像制御部44は、領域Bの平均的な輝度変化が20%以上であるか否かを判定する。映像制御部44は、領域Bの平均的な輝度変化が20%よりも小さい場合には処理を終了する。領域Bの平均的な輝度変化が20%以上の場合には、映像制御部44は、次のステップS23において、鉗子の画像が観察画像中に現れたものと判定する。
【0087】
このように、本変形例においては、領域Aの輝度変化が十分に小さく、且つ領域Bの輝度変化が十分に大きい場合には、領域Bに鉗子の画像が現れたものと判定する。この判定によって、鉗子口17から鉗子が体腔内に挿入されたことを確実に判定することができる。
【0088】
図11は他の変形例を示すフローチャートである。図11は図4のステップS4〜S7の処理に代えて採用可能なフローを示している。図11において図10と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
本変形例は近点観察時に鉗子が挿入された場合に、遠点観察に変更するものである。図11のステップS31においては、映像制御部44は、近点観察が行われているか否かを判定する。近点観察が行われている場合には、次のステップS21,S22によって鉗子が体腔内に挿入されたか否かを判定する。近点観察時に鉗子が体腔内に挿入されたことを検出すると、映像制御部44は、対物レンズ21を遠点観察位置に設定して、遠点観察を実施する(ステップS32)。
【0090】
鉗子口17と体腔表面との間隔は比較的小さく、鉗子を必要以上に挿入すると、鉗子が体腔に穿孔する虞がある。鉗子挿入時において近点観察或いは拡大観察を行っている場合には、鉗子が非合焦となり鉗子を容易に確認することはできない。そこで、本変形例では、拡大観察時及び近点観察時に鉗子が挿入される場合には、遠点観察することで、鉗子及び体腔表面の両方を確実に視認可能にする。
【0091】
なお、比較用メモリ45に近点観察時の比較用データを記憶させておくことで、本変形例の動作が可能である。
【0092】
図12は他の変形例を示すフローチャートである。図12において図10と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
鉗子口17を介して挿入される鉗子としては、多種多様のものがある。処置に応じて特定の種類の鉗子が選択される。従って、鉗子の種類によっては、どのようなフォーカス制御にすべきかが決まっていることもある。
【0094】
本変形例はこのような場合に対応したものであり、鉗子の種類を特定することで、フォーカス制御を制御するものである。例えば、鉗子には種類に応じて色が着色されていることがある。この場合には、映像制御部44は、鉗子の色を判別することで、フォーカス制御を制御することができる。
【0095】
例えば、鉗子組織回収用のバスケットである場合にはこのバスケットに赤を着色し、鉗子が高周波スネアである場合にはこの高周波スネアに緑を着色し、その他の鉗子には青を着色しているものとする。
【0096】
映像制御部44は、図12のステップS22において、観察画像中に鉗子の画像が存在することを検出すると、ステップS41において、鉗子の色を判定する。例えば、映像制御部44は、鉗子が存在すべき分割領域において波長が625〜720nm(赤)の成分、波長が500〜565nm(緑)の成分、波長が450〜585nm(青)の成分のレベルを検出することで、鉗子の色を判定することができる。
【0097】
映像制御部44は、鉗子が赤で着色されていると判定した場合には、遠点制御する(ステップS42)。これにより、バスケットを用いた組織回収作業の視認性を向上させることができる。また、映像制御部44は、鉗子が緑で着色されていると判定した場合には、近点制御する(ステップS44)。これにより、高周波スネアを用いた焼灼作業の視認性を向上させることができる。また、映像制御部44は、鉗子が青で着色されていると判定した場合には、中点制御する(ステップS43)。これにより、その他の鉗子を用いた場合の視認性を向上させることができる。
【0098】
なお、この場合においても、比較用メモリ45に、鉗子の色、比較方法及び制御方法を比較用データとして記憶させておくことで、本変形例の動作が可能である。
【0099】
なお、本変形例では、鉗子を着色によって識別する例を説明したが、鉗子に記された記号等によっても鉗子を識別することが可能である。映像制御部44は鉗子に記された記号を判別することで、判別結果に応じたフォーカス制御が可能である。
【0100】
図13は他の変形例を示すフローチャートである。
【0101】
本変形例は映像制御部44におけるフォーカス制御の一例を示している。コントラストを用いた一般的なフォーカス制御においては、制御対象分割領域において、対物光学系21を遠点側又は近点側に移動させながらコントラストを検出し、最大コントラストが得られる対物光学系21のレンズ位置で合焦状態となったものとする。
【0102】
これに対し、本変形例では、コントラスト色収差を利用し、各色毎のコントラストの大小に基づいて対物光学系21のレンズ位置を制御するようになっている。
【0103】
図14は横軸にフォーカス位置(距離)をとり縦軸にコントラストをとって、赤色光のコントラストCR及び青色光のコントラストCBの変化を示すグラフである。図14に示すように、赤色光は比較的近点側で合焦状態となり、青色光は比較的遠点側で合焦状態となる。
【0104】
映像制御部44は、図13のステップS51において、制御対象分割領域について色別のコントラストを求める。映像制御部44は、ステップS52において、色別のコントラストを比較する。いま、赤色光のコントラストCRが青色光のコントラストCBよりも大きいものとする。この場合には、図14に示すように、フォーカスは近点側にあるので、対物光学系21の可動レンズ21aを遠点観察位置側に移動させる(ステップS54)。
【0105】
逆に、赤色光のコントラストCRが青色光のコントラストCBよりも小さい場合には、図14に示すように、フォーカスは遠点側にあるので、映像制御部44は、対物光学系21の可動レンズ21aを近点観察位置側に移動させる(ステップS55)。
【0106】
このように、映像制御部44は、CRとCBの大小を比較して、その差が0或いは所定位置になるように可動レンズ21aを移動させる。即ち、映像制御部44は、色別のコントラストを比較することで、フォーカス制御が可能である。
【0107】
本変形例によれば、色別のコントラストの大小によって可動レンズ21aの移動方向を決定することができることから、短時間で合焦させることができるという利点がある。また、可動レンズ21aの位置を検出する位置センサを設けることなく、フォーカス制御が可能である。位置センサが不要であるので、小型化が可能であるという利点もある。
【0108】
なお、本変形例においても、比較用メモリ45に、対物光学系21における色収差の情報を記憶させることで、本変形例の動作が可能である。
【0109】
図15及び図16は他の変形例を説明するための説明図である。
【0110】
上記説明においては、映像制御部44が制御対象分割領域を自動的に決定する例について説明したが、制御対象分割領域を手動で設定することも可能である。本変形例では、制御対象分割領域を指定するための入力部として、タッチセンサ71を用いる例について説明する。
【0111】
図15はタッチセンサ71を具体的に示している。タッチセンサ71は、複数の領域71a〜71d,71oに分割されており、各領域を指等で接触することによって、各領域に対応した操作信号が映像制御部44に供給されるようになっている。例えば、タッチセンサ71の中央の領域71oを所定の時間内に複数回タッチすることによって、制御対象分割領域を自動的に決定する自動モードと手動で設定する手動モードとを切換えることもできるようになっている。
【0112】
映像制御部44は、制御対象分割領域の手動モード時において、タッチセンサ71の領域71a〜71d,71oがタッチされると、観察画像72の対応する分割領域を制御対象分割領域に設定するようになっている。
【0113】
図16はタッチセンサ71の領域71a〜71d,71oに夫々対応する観察画像72の分割領域72a〜72d,72oを太線によって示している。例えば、術者がタッチセンサ71の領域71aをタッチすることによって、映像制御部44は、観察画像72中の分割領域72aを制御対象分割領域に設定する。
【0114】
このように、本変形例では、術者の手動操作によって制御対象分割領域を設定することができ、自動モードにおいて術者が希望しない部位が合焦された場合でも、手動モードに切換えて指定することより、術者が希望する分割領域に合焦させることが可能である。
【0115】
また、タッチセンサ71の各領域71a〜71d,71Oの位置と観察画像72中の各分割領域72a〜72d,72oとが、位置的に1対1に対応しているので、直感的な操作によって所望の分割領域を制御対象分割領域に設定することができるという利点もある。
【0116】
なお、分割領域72a〜72d,72oの表示については、観察画像中に表示させてもよく、表示させなくてもよい。
【0117】
また、本変形例においては、分割領域に1対1に対応する領域を有するタッチセンサ71を用いて制御対象分割領域を指定する例について説明したが、例えば、分割領域の選択操作をフットスイッチ等に割り当ててもよい。この場合には、フットスイッチを操作毎に選択する分割領域を切換えるトグル操作が可能である。
【0118】
図17はアクティブ方式のフォーカス制御を行う内視鏡システムを示す説明図である。
【0119】
上記各実施の形態においては、コントラストを用いたパッシブ方式のフォーカス制御を行う例について説明した。これに対し、図17は赤外線等の反射波の遅延時間によって被写体までの測距を行い、測距結果に基づいてフォーカスを制御するアクティブ方式の例を示している。
【0120】
なお、図17の内視鏡システムにおいては、内視鏡101は、測距のための構成を有している点を除き図1の内視鏡2と同様の構成のものを採用することができる。また、光源装置105は、測距のための構成を有している点を除き図1の光源装置5と同様の構成のものを採用することができる。また、プロセッサ装置104は、測距のための構成、測距結果に基づいてフォーカス制御及び表示を行うための構成を除き、図1のプロセッサ装置4と同様の構成のものを採用することができる。
【0121】
即ち、内視鏡101は、体腔内に挿入される細長い挿入部11を有し、挿入部11の基端部には操作者に操作される操作部12が連設されている。この操作部12からユニバーサルコード13が延出されており、ユニバーサルコード13の延出端部は図示しないスコープコネクタを介して光源装置105及びプロセッサ装置104に接続されるようになっている。
【0122】
挿入部11の先端部には、観察対象を照明する照明光学系の照明レンズ15が配設されている。なお、図17では、2つの照明レンズ15を有する例を示している。照明レンズ15の後端面には、照明光を導光するライトガイド131の先端部が接続されている。ライトガイド131は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタまで延設されている。スコープコネクタを光源装置105に接続することにより、ライトガイド131を介して照明レンズ15に照明光を供給し、照明レンズ15から挿入部11前方の被写体に照明光を照射することが可能である。
【0123】
更に、内視鏡101においては、挿入部11の先端に、照明レンズ15の出射光の被写体からの反射光を受光する受光窓20が配設されている。そして、受光窓20の後端には、先端が受光窓20に臨み、被写体からの反射光を導光するライトガイド132が配設されている。ライドガイド132は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタまで延設されている。スコープコネクタを光源装置105に接続することにより、ライトガイド132を介して被写体からの反射光が、光源装置105内の光センサ124に供給されるようになっている。
【0124】
挿入部11内には、様々な処置具を挿通可能とする図示しないチャンネルが設けてある。このチャンネルは、先端部11において開口する鉗子口17と、操作部12の前端付近の処置具挿入口19と、鉗子口17及び処置具挿入口19とを接続する図示しないチャンネルチューブとによって構成される。
【0125】
そして、この処置具挿入口19から処置具を挿入することにより、処置具の先端側を鉗子口17から突出させることができ、患部組織を採取したり、切除などの処置を行うことができるようになっている。また、操作部12には、挿入部11の先端を湾曲させるためのアングルノブ30、各種スイッチ31も配設されている。
【0126】
挿入部11の先端には、照明レンズ15に隣接して観察窓16が設けられている。なお、観察窓16の近傍には、観察窓16に送水等を行って観察窓16を洗浄するためのノズル18が配設されている。
【0127】
挿入部11の先端部には、図2に示す撮像ユニットが内蔵されている。観察窓16の後端には、照明された被写体の光学像を結ぶ対物光学系21と、対物光学系21の結像位置に受光面が配置された固体撮像素子としての例えば電荷結像素子(CCD)22とによって構成される撮像ユニット23が配置されている。
【0128】
対物光学系21は、可動レンズ21a及び固定レンズ21bによって構成されており、可動レンズ21aは、レンズ駆動部24によって観察光学系の光軸方向に進退駆動されるようになっている。レンズ駆動部24としては、例えば、圧電アクチュエータ、圧電ワイヤ、モータ等が採用される。レンズ駆動部24によって可動レンズ21aを進退駆動することによって、フォーカス制御を行うようになっている。
【0129】
レンズ駆動部24からは信号線25が延出されており、この信号線25は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタまで延設されている。また、CCD22には、信号ケーブル26の一端が接続され、信号ケーブル26は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード13を挿通されて、スコープコネクタまで延設されている。
【0130】
スコープコネクタには、図示しない伝送ケーブルが接続されており、スコープコネクタまで延設された信号線25及び信号ケーブル26は、更に、伝送ケーブルを介してプロセッサ装置104に接続されるようになっている(図示省略)。
【0131】
信号ケーブル26は、プロセッサ装置104に配設された図示しない撮像素子駆動部から供給される駆動信号をCCD22に伝送する。これにより、CCD22は駆動され、被写体の光学像を電気信号に変換して、観察画像の画像信号を信号ケーブル26を介してプロセッサ装置104に出力するようになっている。なお、駆動信号には、CCD22を駆動するための動作クロック及び電源電圧等が含まれる。
【0132】
なお、プロセッサ装置104には、駆動制御部46が設けられており、駆動制御部46は、CCD22を駆動するための基本クロックCLK等を発生して撮像素子駆動部に出力するようになっている。撮像素子駆動部は、入力された基本クロック等に基づいて、CCD22を駆動するための駆動信号を発生するようになっている。
【0133】
光源装置105はランプ56を有する。ランプ56の照明光は、回転カラーフィルタ121を介してスコープコネクタ内のライトガイド131の入射端面に入射されるようになっている。図17の例では、回転カラーフィルタ121には、R,G,B光を透過するフィルタの他に、測距を行うための赤外光又は紫外光等を透過させるフィルタが配設されている。
【0134】
回転制御回路122は、駆動制御部46によって制御されて、面順次式の撮像を可能にするために、所定のタイミングでR,G,B用のフィルタをランプ56の光軸上に配置させるという、回転カラーフィルタ121の回転制御を行う。更に、本実施の形態においては、回転制御回路1222は、フォーカス制御のための測距を行うタイミングにおいて、赤外光等を透過させるフィルタをランプ56の光軸上に配置させるために、回転カラーフィルタ121の回転制御を行う。また、回転制御回路122は、回転カラーフィルタ121から赤外光等が出射されたタイミングの情報を遅延時間比較回路123に出力するようになっている。
【0135】
ライトガイド132によって導光された被写体の反射光は、光センサ124に入射する。光センサ124は被写体の反射光を受光し、受光結果を遅延時間比較回路123に出力する。
【0136】
遅延時間比較回路123には、回転カラーフィルタ121から赤外光等が出射されたタイミングの情報と、被写体の反射光の受光結果とが与えられ、回転カラーフィルタ121を出射した赤外光等が光センサ124によって受光されるまでの遅延時間を求める。遅延時間比較回路123が求めた遅延時間の情報は、プロセッサ装置104の演算回路114に供給される。
【0137】
演算回路114には、ライトガイド131,132の長さの情報等が与えられており(図示省略)、演算回路114は遅延時間の情報とライトガイド131,132の長さの情報等に基づいて、挿入部11の先端の照明レンズ15から被写体までの距離を測距するようになっている。更に、演算回路114には、照明レンズ16、対物光学系21及びCCD22を含む撮像ユニット23の構成についての情報も与えられており、測距結果に基づいてフォーカスを制御するための制御信号をアクチュエータ制御回路49に出力するようになっている。アクチュエータ制御回路49は、制御信号に基づいてレンズ駆動部24を制御することで、可動レンズ21aを進退駆動して、合焦状態を得るようになっている。
【0138】
また、図17の例においては、演算回路114が求めた測距結果は距離表示回路115にも供給されるようになっている。距離表示回路115は、測距結果を図示しないモニタの表示画面に表示するための表示制御を行う。
【0139】
なお、プロセッサ装置104は、CCD22からの画像信号をデジタル信号に変換する図示しないA/D変換器、A/D変換器からの画像信号に基づいて観察画像をモニタに表示させるための映像制御部等を備えている。
【0140】
このように構成された内視鏡システムにおいては、ランプ56から照射された光は回転カラーフィルタ121のフィルタを透過し、ライトガイド131を介して被写体に照射される。回転カラーフィルタ121の赤外光用のフィルタがランプ56の光軸上に介在するように制御されることにより測距が行われる。この場合には、ライトガイド131によって赤外光が伝達されて被写体に照射される。
【0141】
被写体の反射光は、受光窓20からライトガイド132を介して光源装置105に伝達されて、光センサ124に入射する。光センサ124は被写体の反射光の受信結果を遅延時間比較回路123に出力する。
【0142】
遅延時間比較回路123は、回転制御回路122の出力と光センサ124の出力とから、回転カラーフィルタ121からの赤外光の出射から光センサ124への反射光の入射までの遅延時間を求めて演算回路114に出力する。
【0143】
演算回路114は、遅延時間の情報に基づいて、内視鏡101の先端から被写体までの距離を算出する。また、演算回路114は、測距結果に基づいて、最適な深度になるようにアクチュエータ制御回路49に制御信号を出力する。これにより、アクチュエータ制御回路49は、レンズ駆動部24を制御して、可動レンズ21aを進退駆動させ、合焦状態を得る。
【0144】
また、演算回路114は、測距結果を距離表示回路115に出力する。距離表示回路115は、測距結果をモニタの表示画面に表示させる。
【0145】
回転カラーフィルタ121からは、R,G,B光が順次出射されることにより、撮像ユニット23において被写体を面順次で撮像する通常撮影が行われる。この場合における撮像動作は一般的な面順次式電子内視鏡と同様であり、説明を省略する。
【0146】
このように図17の例においては、被写体までの距離を測距してオートフォーカス制御を行っている。従来、内視鏡においてアクティブ方式のフォーカス制御を行う場合には、測距センサを内蔵する必要があった。しかし、測距センサのサイズは大きく、測距センサを内蔵しようとすると内視鏡径が極めて大きくなっしまう。これに対し、図17の例では、光源装置からの出射光を利用し、ライトガイドによって内視鏡挿入部に光を伝達し、内視鏡挿入部の先端から被写体に光を照射し、その反射光をライトガイドを介して光源装置に伝達して光センサによって検出することにより、内視鏡挿入部の先端から被写体までの距離を求めるようになっている。
【0147】
このように、図17の例では、光源装置に測距用の光センサを設けており、内視鏡径を大きくすることなく、測距が可能である。被写体までの距離を測距してオートフォーカス制御を行っており、オートフォーカス制御に必要な演算量を低減して、高速なオートフォーカスが可能である。
【0148】
なお、上記説明では、測距時には、赤外光等を出射する例について説明したが、R,G,B光のいずれかを測距に用いるようにしてもよい。この場合には、光センサとして、測距に用いる色光の受光感度が高いものを採用する。なお、赤外光は減衰が比較的少ないので、測距用の光として赤外光を用いると、暗いシーンでの測距が可能であるという利点がある。
【0149】
また、図17の例では、オートフォーカス制御のための測距機能だけでなく、術者が被写体までの距離を把握するため、測距結果を表示する機能を有している。これにより、術者の処置を補助することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0150】
1…内視鏡システム、2…内視鏡、4…プロセッサ装置、5…光源装置、11…挿入部、12…操作部、15…照明レンズ、16…観察窓、17…鉗子口、42…映像プロセッサ部、43…映像メモリ、44…映像制御部、45…比較用メモリ、49…アクチュエータ制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、
前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、
前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、
前記選択部は、前記観察画像の所定の変化が所定期間継続することによって、前記複数の分割領域のうち前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域を決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、
前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、
前記複数の分割領域のうち前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域を決定するためのデータであって、前記分割領域の輝度、色度及びコントラストのうちの少なくとも1つの状態を検出対象毎に設定した比較用データを記憶する記憶部と、
前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、
前記選択部は、前記観察画像と前記比較用データとの比較結果の内容が所定期間変化しないことによって、前記フォーカス制御除外領域を決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記検出対象毎に、フォーカス制御方法を含む比較用データを保持し、
前記フォーカス制御部は、前記比較用データに基づいてフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記フォーカス制御部は、前記所定期間の間はフォーカス制御を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記観察画像の所定の変化は、輝度値の変化であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記観察画像の所定の変化は、コントラストの時間的な変化であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記記憶部は、輝度の状態を設定する比較用データを記憶することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記記憶部は、コントラストの時間的な変化の状態を設定する比較用データを記憶することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記観察画像の所定の変化は、前記複数の分割領域のうちの所定の分割領域における輝度値の変化であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記記憶部は、前記複数の分割領域のうちの所定の分割領域について輝度の状態を設定する比較用データを記憶することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記観察画像の所定の変化は、前記複数の分割領域のうちの所定の分割領域におけるコントラストの時間的な変化であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記記憶部は、前記複数の分割領域のうちの所定の分割領域についてコントラストの時間的な変化の状態を設定する比較用データを記憶することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記複数の分割領域のうちの所定の分割領域は、前記観察画像中の前記内視鏡の挿入部に配設された鉗子口近傍を撮像した領域であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記観察画像の所定の変化は、前記観察画像の中央部と周辺部との間の輝度変化であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記記憶部は、前記観察画像の中央部と周辺部との間の輝度の状態を設定する比較用データを記憶することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項16】
内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、
前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、
前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、
前記選択部は、前記観察画像のうちの所定の分割領域における輝度が所定期間所定のレベル以上になることによって、前記所定の分割領域を前記制御対象分割領域として選択しないフォーカス制御除外領域に決定し、前記フォーカス制御除外領域を除く前記複数の分割領域から前記制御対象分割領域を選択することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項17】
内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、
前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、
前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、
前記フォーカス制御部は、前記観察画像の所定の変化が所定期間継続することによって、前記フォーカス制御として遠点制御を行うことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項18】
内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を複数の分割領域に分割する分割領域決定部と、
前記複数の分割領域からフォーカス制御の対象となる制御対象分割領域を選択する選択部と、
前記分割領域の輝度、色度及びコントラストのうちの少なくとも1つの状態を検出対象毎に設定した比較用データを記憶する記憶部と、
前記制御対象分割領域の観察画像に基づいてフォーカス制御を行うフォーカス制御部とを具備し、
前記フォーカス制御部は、前記観察画像と前記比較用データとの比較結果が所定期間維持されることによって、前記フォーカス制御として遠点制御を行うことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項19】
ズームレンズを移動させ、内視鏡の撮像素子によって得られた被写体の観察画像を拡大観察可能な内視鏡システムにおいて、
フォーカス動作を制御するフォーカス制御部と、
前記ズームレンズを移動させるズームレンズ移動部と、
前記観察画像内の所定の領域において既知の物体を検知する検知部と、を具備し、
前記フォーカス制御部は、前記拡大観察時に前記検知部が前記所定の領域において前記既知の物体を検知した場合には、前記ズームレンズ移動部を制御して前記ズームレンズを遠点観察位置に移動させることを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−139760(P2011−139760A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1435(P2010−1435)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】