円筒形状の測定方法及び測定装置
【課題】 移動手段の走査動作隙間を検出して変位検出器の値を補正し、前記走査動作の機械的正確さを追求することに負荷を必要としない高精度の測定方法を提供する。
【解決手段】 円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正する。
【解決手段】 円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒体の円筒形状の測定方法及びこれに用いる装置に関するもので、特に、精度の良い円筒部材を得る手段として円筒部材の外表面を切削加工した際、精度測定に寄与する技術である。本発明で得られた測定技術の適用範囲は多岐にわたるが、本発明者らは、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンタ、同ファクシミリ、又は印刷装置の画像形成部材、又はその基体である円筒部材の測定に適応し、その効果を確認したものである。
【0002】
なお、円筒とは、中空のものだけでなく、中実のもの(円柱)も含むものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、電子写真方式の複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、印刷機等の画像形成装置における電子写真感光ドラムや現像スリーブは、形状寸法が所定の精度(マイクロメートルオーダ)に仕上げられた円筒部材を用いる。電子写真感光ドラムは所定の精度に仕上げられたドラム基体の表面に感光膜を施すことによって製造されるが、該ドラム基体の寸法精度が低いと感光膜に凹凸が生じ、このために画像形成装置の画像に欠陥が生じる。従って、精度の高い画像形成装置を得るためには、該ドラム基体のJIS B0621に定義されている円筒度および真円度等に高い精度が求められる。
【0004】
一方、こうしたドラム基体を製造する工程においても、その寸法精度を保証することを目的とした高精度な測定機能が必要であり、その方法としては、回転可能な基台に被測定円筒体を立ててこれを回転させながら、表面形状を帯状レーザーその他の測定手段によって測定する方法(例えば、下記特許文献1参照。)や、円筒体の両端を何らかの治具にて把持して回転させ、帯状レーザーを遮る寸法を測定して円筒形状を測定する方法(例えば、下記特許文献2参照。)、または、回転軸を固定することなく円筒体を回転させ、円筒体の外周部に臨む変位検出器から得た測定値を近似算出させて測定する方法(例えば、下記特許文献3参照。)等が知られている。
【特許文献1】特開平6−201375号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−5341号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平6−147879号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全ての円筒形状の測定においては、上記方法に限らず被測定円筒体の複数の円周形状を測定し、それら互いの位置関係をもって円筒度その他の測定結果としなければならないが、その互いの位置関係を正しく得るためには、円周形状を測定するセンサユニット等を被測定円筒体の軸方向に移動させる際に高精度なガイドレール等の機器を用い、またこのガイドレールと円筒体の中心軸からなる走り平行度が高くなるように調整、位置決めすることが一般的である。しかし、このような高精度なガイドレールの採用やその位置決め作業によって出された高精度な走り平行度は、長期間の機器運用に伴って発生しがちな機器の静的寸法精度、あるいは動作における精度の誤差が測定結果に反映してしまう。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑み、円筒形状の寸法測定装置に発生する長期間の機器運用に伴って発生しがちな機器の静的寸法精度、あるいは動作における精度の誤差を低減し正確な測定が継続的に実現することを意図している。
【0007】
そこで、測定された複数の円周形状同士の正しい位置関係を得るにあたって、何らかの方法を用いて、円筒体の中心軸とセンサユニットの移動軸との高い走り平行度を保つことなくこれを得ることができれば、機器製作におけるコストまたは定期的な機器メンテナンスにかかる管理コストの低減を図ることができ、ひいては製造コストの削減を期待できる。
【0008】
本発明は、被測定円筒体を中心軸周りに回転させ、変位検出器を有するセンサユニットを中心軸と平行に移動させて円筒形状を測定する方法を前提とし、円筒体の中心軸とセンサユニットの移動軸との高い走り平行度を保つことなく、簡便な手段により高精度な測定結果を得る円筒形状の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の円筒形状の測定方法は、円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の円筒形状の測定装置は、円筒体を中心軸回りに回転させる手段と、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器と、前記変位検出器を固定し前記中心軸に対して略平行に移動する手段と、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを有する円筒形状の測定装置において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、第1の変位検出器と同様に移動手段に固定されかつ移動方向と反対に配置された第2の変位検出器により、被測定円筒体の同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から、移動手段の走査動作隙間を検出して第1の変位検出器の値を補正するので、円筒体の表面形状を測定する変位検出器が回転中心軸に対し略平行に移動する手段の走査動作の機械的正確さを追求することに負荷を要することなく、2つの変位検出器という簡便な手段により高い精度を伴って円筒形状を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、円筒体の表面形状を測定する変位検出器が移動を伴う様々な測定方法において効果をなすが、以下の説明は対象となる本発明の測定方法の形態の一例であって、同様の効果は他の形態をもってしても得られる。
【0013】
図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1、図2に本発明にて提供する円筒体の測定方法に用いる測定装置の一例を示す。
【0015】
図1、図2は、測定装置の平面図及び断面図である。
【0016】
図3は、測定位置説明図である。
【0017】
まず、実施形態における測定手段の概要について述べる。
被測定円筒体(以下、「円筒体」という)1を円筒受け治具上に載置するか、回転可能な基台に円筒体1を立てるか、図1、図2に示すように両端を何らかの治具6にて円筒体1を把持して、その円周方向に回転中心軸(以下、「中心軸」という)Oの回りに回転させる。該円筒体1の中心軸直角断面上に配置されかつ該中心軸Oに対して垂直方向から該円筒体1の表面変位を計測する変位検出器と、該変位検出器を固定し中心軸Oに対し略平行に移動する手段と、変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを用いて、円筒体1の寸法精度、特に真円度、円筒度を測定する方法を前提としている。変位検出器は、変位検出器S(第1の変位検出器)と、変位検出器Sと同様に移動手段に配置されかつ移動方向と反対に移動刻み距離dの整数倍に配置された変位検出器S′(第2の変位検出器)を有し、変位検出器S′は変位検出器Sと同一の点を測定する。それぞれの測定値の差から、移動手段の走査動作隙間を検出して変位検出器Sの値を補正する。
【0018】
以下、具体的に説明する。
【0019】
図1、図2において、測定装置は、円筒体1を把持する治具6で把持して、支持台3に固定されたガイドレール4及びボールねじ5によって円筒体1の中心軸Oに平行に往復可能に設けられた取り付け台2に、円筒体1の中心軸Oに向けられ、互いに測定刻みの整数倍の間隔dで取り付け台2に固定された2個の変位検出器S,S′を有する。
【0020】
次に、前記変位検出器の走査動作隙間の測定方法とその補正方法について述べる。
【0021】
図4〜8は、走査動作隙間の算出に関する説明図であり、図9、図10は、各被測定円の真円度算出に関する説明図である。
【0022】
図3に示すように円筒体の中心軸方向に測定刻みdで最大N箇所、1箇所の測定刻みにおいて円筒体を回転させ周方向に最大M箇所測定を行った場合において、2つの変位検出器S,S′の円筒体の周方向のm箇所目、中心軸方向のn箇所目での円筒体までの距離をLmn,L′mnとする。なお、真円度を求める関係上Mは最低3である。
【0023】
いま、変位検出器S,S′の間隔dが、中心軸方向の測定刻み距離の整数倍(図では1倍)として、図4に示すように測定開始位置n=1での円周形状の測定が終わり、変位検出器が測定刻みd移動し、n=2の位置になる。n=1での変位検出器Sの位置とn=2での変位検出器S′の位置は同じとなり、台2が円筒体の中心軸と平行に移動したとすれば、走査動作隙間は発生せず、L11とL′12の値に差は生じない。m=1,n=2の測定を開始する際、走査動作隙間が発生し変位検出器が取り付けられている台2が円筒体の中心軸と平行に移動しなかった場合L11とL′12の値に差X2が生じる。
【0024】
【数1】
中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離をkとする(予め計測してある)と、L11とL′12の差X2を変位検出器の走査動作隙間と捉えn=2での中心軸Oから円筒体表面までの距離r12を求めることができる。
【0025】
【数2】
次にn+1箇所でのr1nの算出方法について述べる。図5に示すように同様にしてn+1の場合の変位検出器が取り付けられている台2の走査動作隙間Xn+1は数式(3)より求められる。
【0026】
【数3】
しかしながら、L1nとL′1,n+1の差Xn+1は求められるが、これはnとn+1での変位検出器の走査動作隙間の相対値であり、n=1で校正した前記中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離kからの絶対値ではない。よってn+1の場合、2からn+1までのX2からXn+1を積算することにより中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離kからの絶対値を数式(4)により求めることができる。
【0027】
【数4】
fn+1を求めて同様に数式(5)を使いn+1の場合の中心軸Oから円筒体表面までの距離r1,n+1を求めることができる。
【0028】
【数5】
次に、中心軸と直角を成す断面上での円周形状の測定方法について述べる。まず始めに図6に示すようにn=1の場合について述べる。円筒体の円周形状は変位検出器Sの周方向のm箇所目(m=1,2,3,・・・M)での円筒体の表面までの距離Lm1を中心軸Oまでの距離kから引いた値をM個算出することによって、円を数的に限定できる。中心軸Oから円筒体表面までの距離rm1は
【0029】
【数6】
次に図7に示すようにn=2の場合について述べる。先にも述べたように変位検出器S,S′が取り付けられている台2がn=1から2に移動する際、走査動作隙間があった場合、その値が測定値に反映してしまうが、本発明の方法を用いれば、数式(1)に示すように該走査動作隙間を求め、数式(2)に示すように該走査動作隙間を除いた円筒体の表面形状を求めることができる。よってn=2の場合、変位検出器Sによって求められた周方向のm箇所目での円筒体の表面までの距離Lm2を中心軸Oまでの距離k及び、走査動作隙間X2から引いた値rm2を数式(7)によりM個算出することによって、円を数的に限定できる。
【0030】
【数7】
次に図8に示すようにn+1の場合も同様に数式(8)から変位検出器Sによって求められた円筒体の表面までの距離Lm,n+1を中心軸Oまでの距離k、及び変位検出器の走査動作隙間の絶対値fn+1から引いた値rm,n+1をM個算出することによって、円を数的に限定できる。
【0031】
【数8】
続いて、表1に示すように求められた中心軸Oから各測定表面までの距離r11からrMNまでの全ての距離から、既知の方法である最小自乗中心法を用いて、直交座標位置における円中心位置を求め、そこから各半径方向距離を算出し、該各半径の最大値と最小値の差から真円度を求める。
【0032】
【表1】
まず、求めた円周形状から該円周の中心を求める方法について述べる。中心軸Oを直交座標位置における(0,0)としたr1nからrMnの各距離から、円周上の測定点1からMを直交座標位置として求める。図9に示すようにm箇所目での直交座標位置成分をそれぞれrxmn,rymnとすれば、
【0033】
【数9】
【0034】
【数10】
ここで被測定円の直交座標位置をOn(Oxn,Oyn)とすれば最小自乗中心法により
【0035】
【数11】
【0036】
【数12】
として求めることができる。このとき両式右項の分母に与えるMは、360°をθで割った数であり、この数はθによって変化する。
【0037】
続いて真円度Aを求める方法について述べる。
【0038】
数式(11),(12)によって求めたOn(Oxn,Oyn)を数式(9),(10)によって求められる円周上の各測定点までの距離から引いた直交座標位置成分(Rxmn,Rymn)は
【0039】
【数13】
【0040】
【数14】
として求めることができる(図10)。得られたm箇所目での直交座標位置成分(Rxmn,Rymn)より、真の各半径方向の変位量Rmnは、
【0041】
【数15】
として求めることができる。このとき中心軸直角断面円の真円度AはR1nからRMnの最大値と最小値の差として求めることができる。
【0042】
以上の測定と算出を円筒体1の所定の各中心軸直角断面円について求め、全ての中心軸直角断面円の円中心位置および、半径方向の変位量を得る。
【0043】
次に、円筒体1の円筒度を求める。
【0044】
測定された各中心軸直角断面円のうち円筒体1の両端(n=1,n=N)2つの中心軸直角断面円の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各中心軸直角断面円の交点の位置を、距離比例計算によって求める。続いて、数式(13),(14)のOxn,Oynの代わりに前記交点の座標に置き換えて、各交点と円周上の各測定点を結ぶ直線上の変位量を半径方向の距離として算出する。ここで、得られた全ての距離の、最大値と最小値の差を円筒体の円筒度として得ることができる。
【0045】
このように真円度、円筒度は、図示されていない演算装置により比較的簡単な演算により、精度よく求めることができる。
【0046】
上記実施形態では、変位検出器S,S′は、一対としたが、実施形態の変形として、変位検出器S,S′は、移動方向に配置されて同一の点を測定するものを一対として中心軸回りに等間隔に複数対(j個)有するものとしてもよい。すなわち、変位検出器Sが、円筒体の中心軸と直角を成す断面上に位置して、該円筒体の中心軸Oに向けられ、かつ中心軸Oを中心として互いに所定の角度(θ°)を挟んで扇状に配置して取り付け台に固定されたj個の複数の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)から成り、該変位検出器がM=360/θであるM個の距離データ、すなわちθ°ごとの該中心軸Oと直角を成す断面上の外周表面までの距離(L1,L2,・・・LM)を測定し、これらとは別に前記j個の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)と同様に移動手段に固定されたj個の変位検出器(S1′,S2′,・・・S′j)によって前記j個の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から移動手段の走査動作隙間を検出して変位検出器Sの値を補正する。
【0047】
以上、図1、図2に示すように両端を何らかの治具6にて円筒体1を把持して、その円周方向に回転させ、円筒体1の外周を測定する場合について説明したが、円筒体1の内周を測定することもできる。
【0048】
図11は、円筒体を横置きとし、円筒の内周を測定する例を示す図である。
【0049】
円筒体1を、両端を何らかの治具で把持せずに、下方に2箇所以上コロ8で支持し、回転ローラ7で回転させる。変位検出器S,S′を円筒体1の内部で軸方向に移動させることができる。
【0050】
また、上記特許文献1のように円筒体1を回転可能な基台に立てて載置し、円筒体1の内部に変位検出器S,S′を移動させて円筒体1の内周を測定することもできる。
【0051】
また、他の例として、図11のような円筒体1を横置きにする装置、または上記特許文献1のような縦置きにする装置を用いて、円筒体1の内周と外周を別々に測定することもできる。
【0052】
この場合、移動手段とそれに固定された変位検出器は、円筒体の内側と外側にそれぞれ配置されている。円筒体外の移動手段に変位検出器Sと変位検出器S′とを固定し、上記した方法により円筒体の外周を測定する。更に、円筒体内の移動手段に変位検出器Sと変位検出器Sの移動方向と反対に固定された変位検出器S′とを固定し、上記した方法と同様に、円筒体の内周を測定する。このように、4個の変位検出器により内外周の真円度、円筒度、及び円筒体の肉厚を求めることができる。
【0053】
更に、他の例として、被測定物の円筒体は、同一の回転中心軸を有する径の異なる複数の円筒からなる複合円筒であり、回転中心軸の長さ方向に径の異なる、例えば左端部0〜10mmと右端部90〜100mmでr=20mm、中央部10〜90mmでr=40mmのようなものである。このような複合円筒を構成する少なくとも1つの円筒に対して、上記記載の方法で測定する。測定した1つの円筒以外の円筒に対しては、移動手段の走査動作隙間を再度測定する必要がなく、それぞれ少なくとも前記第1の変位検出器と第2の変位検出器の一方を用いて円筒形状を測定し、全ての円筒において真円度、円筒度、及び同軸度を求めることができる。
【0054】
また、この測定方法を用いることのできる変位検出手段としては多岐にわたり、例えば接触式であるダイヤルゲージ、電気マイクロメータ、又は非接触式であるレーザー式、渦電流式、静電容量式等々の手段を用いることが有効である。
【0055】
以上述べた測定方法は、円筒体の表面形状を求める変位検出器の走査機構が例えば機器コストダウンによる変位検出器の走査精度の正確さが期待できない場合や機器の経時劣化などによる走査精度の正確さが期待できない場合においても有効である。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ84.0mm、内径がφ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0058】
サンプルの円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒把持治具で把持した。変位検出器はKAMAN社製渦電流式変位検出器を使用し、ガイドレールは内製品を使用した。変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み50mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって30mm、80mm、130mm、180mm、230mm、280mm、330mmの7つの、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、各変位検出器S,S′と円筒体表面との距離L,L′として表2の測定値を得た。
【0059】
【表2】
次に移動刻み50mmで変位検出器が移動した時に発生する各点での走査動作隙間を数式(3)により求め、数式(4)より前記検出器の走査動作隙間を除いた中心軸Oから円筒体表面までの各点の距離r(r11〜rMN)を求めたものを表3に示す。
【0060】
【表3】
なお、測定開始位置での中心軸Oと変位検出器S,S′までの距離は予め計測してあり、表3における変位検出器の測定値は、円筒体の中心軸と直角を成す同一断面上の円筒体表面と中心軸までの距離を測定したものを示す。
【0061】
次に各断面における円筒体の中心軸から各点までの距離を直交座標位置に変換した。こうして求まったrxmn,rymnを用いて被測定円中心座標On(Oxn,Oyn)を最小自乗法で求め、前記各点の直交座標位置(rx11,ry11)〜(rxMN,ryMN)、と中心座標(Ox1,Oy1)〜(OxN,OyN)を得たものを表4に示す。
【0062】
【表4】
続いて、測定した7つの被測定円のうち両端(n=1,n=N)に位置する2つの被測定円、すなわち中心軸方向の30mm位置と330mm位置の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各被測定円との交点の位置を、距離比例計算により求めた中心x,y座標を表5に示す。
【0063】
【表5】
次に、各被測定円ごとに各交点を基準とした円周上の各測定点のx,y座標成分としての変位量を算出したものを表6上方に示す。さらに、各座標成分としての変位量から各交点を基準とした円周上の各測定点の半径方向の変位量を求めものを表6下方に示す。
【0064】
【表6】
ここで、得られた全ての距離の、最大値(42049.4μm)と最小値(42043.9μm)の差をもって円筒体の円筒度5.5μmを得た。
【0065】
(実施例2)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ30.0mm、内径がφ28.5mm、長さ260.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0066】
この円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒受け治具上に載置した。変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み20mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって20mm、40mm、60mm、80mm、100mm、120mm、140mm、160mm、180mm、200mm、220mm、240mmの12の、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、これらに対してそれぞれ実施例1と同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
(実施例3)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ84.0mm、内径がφ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0068】
この円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒受け治具上に載置した。変位検出器はミツトヨ社製電気マイクロメータを使用し、変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み30mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって30mm、60mm、90mm、120mm、150mm、180mm、210mm、240mm、270mm、300mm、330mmの11の、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、これらに対してそれぞれ実施例1と同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表8に示す。
【0069】
【表8】
(比較例1)
実施例1に記載のサンプルを変位検出器S′を使わないで同様に測定し、変位検出器Sから円筒体表面までの距離と、中心軸から円筒体表面までの距離として表9、表10の測定値を得た。
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
次に、測定値を実施例1と同様の方法を用いて求めた中心軸Oに対する各測定点の直交座標位置(x,y座標)を表11上方に、中心座標(x,y座標)を表11下方に示す。
【0072】
【表11】
続いて、測定した7つの被測定円のうち両端に位置する2つの被測定円、すなわち中心軸方向の30mm位置と330mm位置の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各被測定円との交点の位置(x,y座標)を、距離比例計算により求めたものを表12に示す。
【0073】
【表12】
次に、各被測定円ごとに各交点を基準とした円周上の各測定点のx,y座標成分としての変位量を算出した。さらに、各座標成分としての変位量から各交点を基準とした円周上の各測定点の半径方向の変位量を求めたものを表13に示す。
【0074】
【表13】
ここで、得られた全ての距離の、最大値(42047.4μm)と最小値(42038.3μm)の差をもって円筒体の円筒度9.1μmを得た。
【0075】
(比較例2)
実施例2に記載のサンプルを変位検出器S′を使わないで同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表14に示す。
【0076】
【表14】
[評価例1]
実施例1及び比較例1(従来方法)と真円度測定器として株式会社ミツトヨ製ラウンドテストRA−H5000AHを用いて、同サンプルを同方式で各10回づつ測定した各円筒度の値とそれぞれの測定値再現性を表15及び図12に示す。図12は、実施例1及び比較例1で得た円筒度を比較するグラフである。
【0077】
【表15】
表15及び図12から、実施例1による測定値再現性が1.2μm、比較例1による測定値再現性が5.2μmであり、本発明の方式を用いれば、測定値再現性が向上する効果が確認できる。
【0078】
[評価例2]
実施例2及び比較例2(従来方法)と真円度測定器として株式会社ミツトヨ製ラウンドテストRA−H5000AHを用いて、同サンプルを同方式で各10回づつ測定した各円筒度の値とそれぞれの測定値再現性を表16及び図13に示す。図13は、実施例2及び比較例2で得た円筒度を比較するグラフである。
【0079】
【表16】
表16及び図13から、実施例2による測定値再現性が1.7μm、比較例2による測定値再現性が8.8μmであり、本発明の方式を用いれば、測定値再現性が向上する効果が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により円筒形状の測定が容易になり、本発明は精度の良い円筒部材を作る技術として利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】測定装置平面図(概略図)
【図2】測定装置断面図(概略図)
【図3】測定位置説明図
【図4】走査動作隙間の算出に関する説明図(1)
【図5】走査動作隙間の算出に関する説明図(2)
【図6】走査動作隙間の算出に関する説明図(3)
【図7】走査動作隙間の算出に関する説明図(4)
【図8】走査動作隙間の算出に関する説明図(5)
【図9】各被測定円の真円度算出に関する説明図(1)
【図10】各被測定円の真円度算出に関する説明図(2)
【図11】円筒体を横置きとし、円筒の内周を測定する例を示す図
【図12】実施例1及び比較例1で得た円筒度を比較するグラフ
【図13】実施例2及び比較例2で得た円筒度を比較するグラフ
【符号の説明】
【0082】
1…被測定円筒体
2…変位検出器取り付け台
3…支持台
4…ガイドレール
5…ボールねじ
6…円筒把持治具
O…回転中心軸
S,S′…変位検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒体の円筒形状の測定方法及びこれに用いる装置に関するもので、特に、精度の良い円筒部材を得る手段として円筒部材の外表面を切削加工した際、精度測定に寄与する技術である。本発明で得られた測定技術の適用範囲は多岐にわたるが、本発明者らは、電子写真方式の複写機やレーザービームプリンタ、同ファクシミリ、又は印刷装置の画像形成部材、又はその基体である円筒部材の測定に適応し、その効果を確認したものである。
【0002】
なお、円筒とは、中空のものだけでなく、中実のもの(円柱)も含むものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、電子写真方式の複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、印刷機等の画像形成装置における電子写真感光ドラムや現像スリーブは、形状寸法が所定の精度(マイクロメートルオーダ)に仕上げられた円筒部材を用いる。電子写真感光ドラムは所定の精度に仕上げられたドラム基体の表面に感光膜を施すことによって製造されるが、該ドラム基体の寸法精度が低いと感光膜に凹凸が生じ、このために画像形成装置の画像に欠陥が生じる。従って、精度の高い画像形成装置を得るためには、該ドラム基体のJIS B0621に定義されている円筒度および真円度等に高い精度が求められる。
【0004】
一方、こうしたドラム基体を製造する工程においても、その寸法精度を保証することを目的とした高精度な測定機能が必要であり、その方法としては、回転可能な基台に被測定円筒体を立ててこれを回転させながら、表面形状を帯状レーザーその他の測定手段によって測定する方法(例えば、下記特許文献1参照。)や、円筒体の両端を何らかの治具にて把持して回転させ、帯状レーザーを遮る寸法を測定して円筒形状を測定する方法(例えば、下記特許文献2参照。)、または、回転軸を固定することなく円筒体を回転させ、円筒体の外周部に臨む変位検出器から得た測定値を近似算出させて測定する方法(例えば、下記特許文献3参照。)等が知られている。
【特許文献1】特開平6−201375号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−5341号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平6−147879号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全ての円筒形状の測定においては、上記方法に限らず被測定円筒体の複数の円周形状を測定し、それら互いの位置関係をもって円筒度その他の測定結果としなければならないが、その互いの位置関係を正しく得るためには、円周形状を測定するセンサユニット等を被測定円筒体の軸方向に移動させる際に高精度なガイドレール等の機器を用い、またこのガイドレールと円筒体の中心軸からなる走り平行度が高くなるように調整、位置決めすることが一般的である。しかし、このような高精度なガイドレールの採用やその位置決め作業によって出された高精度な走り平行度は、長期間の機器運用に伴って発生しがちな機器の静的寸法精度、あるいは動作における精度の誤差が測定結果に反映してしまう。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑み、円筒形状の寸法測定装置に発生する長期間の機器運用に伴って発生しがちな機器の静的寸法精度、あるいは動作における精度の誤差を低減し正確な測定が継続的に実現することを意図している。
【0007】
そこで、測定された複数の円周形状同士の正しい位置関係を得るにあたって、何らかの方法を用いて、円筒体の中心軸とセンサユニットの移動軸との高い走り平行度を保つことなくこれを得ることができれば、機器製作におけるコストまたは定期的な機器メンテナンスにかかる管理コストの低減を図ることができ、ひいては製造コストの削減を期待できる。
【0008】
本発明は、被測定円筒体を中心軸周りに回転させ、変位検出器を有するセンサユニットを中心軸と平行に移動させて円筒形状を測定する方法を前提とし、円筒体の中心軸とセンサユニットの移動軸との高い走り平行度を保つことなく、簡便な手段により高精度な測定結果を得る円筒形状の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の円筒形状の測定方法は、円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の円筒形状の測定装置は、円筒体を中心軸回りに回転させる手段と、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器と、前記変位検出器を固定し前記中心軸に対して略平行に移動する手段と、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを有する円筒形状の測定装置において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、第1の変位検出器と同様に移動手段に固定されかつ移動方向と反対に配置された第2の変位検出器により、被測定円筒体の同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から、移動手段の走査動作隙間を検出して第1の変位検出器の値を補正するので、円筒体の表面形状を測定する変位検出器が回転中心軸に対し略平行に移動する手段の走査動作の機械的正確さを追求することに負荷を要することなく、2つの変位検出器という簡便な手段により高い精度を伴って円筒形状を測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、円筒体の表面形状を測定する変位検出器が移動を伴う様々な測定方法において効果をなすが、以下の説明は対象となる本発明の測定方法の形態の一例であって、同様の効果は他の形態をもってしても得られる。
【0013】
図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1、図2に本発明にて提供する円筒体の測定方法に用いる測定装置の一例を示す。
【0015】
図1、図2は、測定装置の平面図及び断面図である。
【0016】
図3は、測定位置説明図である。
【0017】
まず、実施形態における測定手段の概要について述べる。
被測定円筒体(以下、「円筒体」という)1を円筒受け治具上に載置するか、回転可能な基台に円筒体1を立てるか、図1、図2に示すように両端を何らかの治具6にて円筒体1を把持して、その円周方向に回転中心軸(以下、「中心軸」という)Oの回りに回転させる。該円筒体1の中心軸直角断面上に配置されかつ該中心軸Oに対して垂直方向から該円筒体1の表面変位を計測する変位検出器と、該変位検出器を固定し中心軸Oに対し略平行に移動する手段と、変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを用いて、円筒体1の寸法精度、特に真円度、円筒度を測定する方法を前提としている。変位検出器は、変位検出器S(第1の変位検出器)と、変位検出器Sと同様に移動手段に配置されかつ移動方向と反対に移動刻み距離dの整数倍に配置された変位検出器S′(第2の変位検出器)を有し、変位検出器S′は変位検出器Sと同一の点を測定する。それぞれの測定値の差から、移動手段の走査動作隙間を検出して変位検出器Sの値を補正する。
【0018】
以下、具体的に説明する。
【0019】
図1、図2において、測定装置は、円筒体1を把持する治具6で把持して、支持台3に固定されたガイドレール4及びボールねじ5によって円筒体1の中心軸Oに平行に往復可能に設けられた取り付け台2に、円筒体1の中心軸Oに向けられ、互いに測定刻みの整数倍の間隔dで取り付け台2に固定された2個の変位検出器S,S′を有する。
【0020】
次に、前記変位検出器の走査動作隙間の測定方法とその補正方法について述べる。
【0021】
図4〜8は、走査動作隙間の算出に関する説明図であり、図9、図10は、各被測定円の真円度算出に関する説明図である。
【0022】
図3に示すように円筒体の中心軸方向に測定刻みdで最大N箇所、1箇所の測定刻みにおいて円筒体を回転させ周方向に最大M箇所測定を行った場合において、2つの変位検出器S,S′の円筒体の周方向のm箇所目、中心軸方向のn箇所目での円筒体までの距離をLmn,L′mnとする。なお、真円度を求める関係上Mは最低3である。
【0023】
いま、変位検出器S,S′の間隔dが、中心軸方向の測定刻み距離の整数倍(図では1倍)として、図4に示すように測定開始位置n=1での円周形状の測定が終わり、変位検出器が測定刻みd移動し、n=2の位置になる。n=1での変位検出器Sの位置とn=2での変位検出器S′の位置は同じとなり、台2が円筒体の中心軸と平行に移動したとすれば、走査動作隙間は発生せず、L11とL′12の値に差は生じない。m=1,n=2の測定を開始する際、走査動作隙間が発生し変位検出器が取り付けられている台2が円筒体の中心軸と平行に移動しなかった場合L11とL′12の値に差X2が生じる。
【0024】
【数1】
中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離をkとする(予め計測してある)と、L11とL′12の差X2を変位検出器の走査動作隙間と捉えn=2での中心軸Oから円筒体表面までの距離r12を求めることができる。
【0025】
【数2】
次にn+1箇所でのr1nの算出方法について述べる。図5に示すように同様にしてn+1の場合の変位検出器が取り付けられている台2の走査動作隙間Xn+1は数式(3)より求められる。
【0026】
【数3】
しかしながら、L1nとL′1,n+1の差Xn+1は求められるが、これはnとn+1での変位検出器の走査動作隙間の相対値であり、n=1で校正した前記中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離kからの絶対値ではない。よってn+1の場合、2からn+1までのX2からXn+1を積算することにより中心軸Oからm=1,n=1での変位検出器Sまでの距離kからの絶対値を数式(4)により求めることができる。
【0027】
【数4】
fn+1を求めて同様に数式(5)を使いn+1の場合の中心軸Oから円筒体表面までの距離r1,n+1を求めることができる。
【0028】
【数5】
次に、中心軸と直角を成す断面上での円周形状の測定方法について述べる。まず始めに図6に示すようにn=1の場合について述べる。円筒体の円周形状は変位検出器Sの周方向のm箇所目(m=1,2,3,・・・M)での円筒体の表面までの距離Lm1を中心軸Oまでの距離kから引いた値をM個算出することによって、円を数的に限定できる。中心軸Oから円筒体表面までの距離rm1は
【0029】
【数6】
次に図7に示すようにn=2の場合について述べる。先にも述べたように変位検出器S,S′が取り付けられている台2がn=1から2に移動する際、走査動作隙間があった場合、その値が測定値に反映してしまうが、本発明の方法を用いれば、数式(1)に示すように該走査動作隙間を求め、数式(2)に示すように該走査動作隙間を除いた円筒体の表面形状を求めることができる。よってn=2の場合、変位検出器Sによって求められた周方向のm箇所目での円筒体の表面までの距離Lm2を中心軸Oまでの距離k及び、走査動作隙間X2から引いた値rm2を数式(7)によりM個算出することによって、円を数的に限定できる。
【0030】
【数7】
次に図8に示すようにn+1の場合も同様に数式(8)から変位検出器Sによって求められた円筒体の表面までの距離Lm,n+1を中心軸Oまでの距離k、及び変位検出器の走査動作隙間の絶対値fn+1から引いた値rm,n+1をM個算出することによって、円を数的に限定できる。
【0031】
【数8】
続いて、表1に示すように求められた中心軸Oから各測定表面までの距離r11からrMNまでの全ての距離から、既知の方法である最小自乗中心法を用いて、直交座標位置における円中心位置を求め、そこから各半径方向距離を算出し、該各半径の最大値と最小値の差から真円度を求める。
【0032】
【表1】
まず、求めた円周形状から該円周の中心を求める方法について述べる。中心軸Oを直交座標位置における(0,0)としたr1nからrMnの各距離から、円周上の測定点1からMを直交座標位置として求める。図9に示すようにm箇所目での直交座標位置成分をそれぞれrxmn,rymnとすれば、
【0033】
【数9】
【0034】
【数10】
ここで被測定円の直交座標位置をOn(Oxn,Oyn)とすれば最小自乗中心法により
【0035】
【数11】
【0036】
【数12】
として求めることができる。このとき両式右項の分母に与えるMは、360°をθで割った数であり、この数はθによって変化する。
【0037】
続いて真円度Aを求める方法について述べる。
【0038】
数式(11),(12)によって求めたOn(Oxn,Oyn)を数式(9),(10)によって求められる円周上の各測定点までの距離から引いた直交座標位置成分(Rxmn,Rymn)は
【0039】
【数13】
【0040】
【数14】
として求めることができる(図10)。得られたm箇所目での直交座標位置成分(Rxmn,Rymn)より、真の各半径方向の変位量Rmnは、
【0041】
【数15】
として求めることができる。このとき中心軸直角断面円の真円度AはR1nからRMnの最大値と最小値の差として求めることができる。
【0042】
以上の測定と算出を円筒体1の所定の各中心軸直角断面円について求め、全ての中心軸直角断面円の円中心位置および、半径方向の変位量を得る。
【0043】
次に、円筒体1の円筒度を求める。
【0044】
測定された各中心軸直角断面円のうち円筒体1の両端(n=1,n=N)2つの中心軸直角断面円の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各中心軸直角断面円の交点の位置を、距離比例計算によって求める。続いて、数式(13),(14)のOxn,Oynの代わりに前記交点の座標に置き換えて、各交点と円周上の各測定点を結ぶ直線上の変位量を半径方向の距離として算出する。ここで、得られた全ての距離の、最大値と最小値の差を円筒体の円筒度として得ることができる。
【0045】
このように真円度、円筒度は、図示されていない演算装置により比較的簡単な演算により、精度よく求めることができる。
【0046】
上記実施形態では、変位検出器S,S′は、一対としたが、実施形態の変形として、変位検出器S,S′は、移動方向に配置されて同一の点を測定するものを一対として中心軸回りに等間隔に複数対(j個)有するものとしてもよい。すなわち、変位検出器Sが、円筒体の中心軸と直角を成す断面上に位置して、該円筒体の中心軸Oに向けられ、かつ中心軸Oを中心として互いに所定の角度(θ°)を挟んで扇状に配置して取り付け台に固定されたj個の複数の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)から成り、該変位検出器がM=360/θであるM個の距離データ、すなわちθ°ごとの該中心軸Oと直角を成す断面上の外周表面までの距離(L1,L2,・・・LM)を測定し、これらとは別に前記j個の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)と同様に移動手段に固定されたj個の変位検出器(S1′,S2′,・・・S′j)によって前記j個の変位検出器(S1,S2,・・・Sj)と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から移動手段の走査動作隙間を検出して変位検出器Sの値を補正する。
【0047】
以上、図1、図2に示すように両端を何らかの治具6にて円筒体1を把持して、その円周方向に回転させ、円筒体1の外周を測定する場合について説明したが、円筒体1の内周を測定することもできる。
【0048】
図11は、円筒体を横置きとし、円筒の内周を測定する例を示す図である。
【0049】
円筒体1を、両端を何らかの治具で把持せずに、下方に2箇所以上コロ8で支持し、回転ローラ7で回転させる。変位検出器S,S′を円筒体1の内部で軸方向に移動させることができる。
【0050】
また、上記特許文献1のように円筒体1を回転可能な基台に立てて載置し、円筒体1の内部に変位検出器S,S′を移動させて円筒体1の内周を測定することもできる。
【0051】
また、他の例として、図11のような円筒体1を横置きにする装置、または上記特許文献1のような縦置きにする装置を用いて、円筒体1の内周と外周を別々に測定することもできる。
【0052】
この場合、移動手段とそれに固定された変位検出器は、円筒体の内側と外側にそれぞれ配置されている。円筒体外の移動手段に変位検出器Sと変位検出器S′とを固定し、上記した方法により円筒体の外周を測定する。更に、円筒体内の移動手段に変位検出器Sと変位検出器Sの移動方向と反対に固定された変位検出器S′とを固定し、上記した方法と同様に、円筒体の内周を測定する。このように、4個の変位検出器により内外周の真円度、円筒度、及び円筒体の肉厚を求めることができる。
【0053】
更に、他の例として、被測定物の円筒体は、同一の回転中心軸を有する径の異なる複数の円筒からなる複合円筒であり、回転中心軸の長さ方向に径の異なる、例えば左端部0〜10mmと右端部90〜100mmでr=20mm、中央部10〜90mmでr=40mmのようなものである。このような複合円筒を構成する少なくとも1つの円筒に対して、上記記載の方法で測定する。測定した1つの円筒以外の円筒に対しては、移動手段の走査動作隙間を再度測定する必要がなく、それぞれ少なくとも前記第1の変位検出器と第2の変位検出器の一方を用いて円筒形状を測定し、全ての円筒において真円度、円筒度、及び同軸度を求めることができる。
【0054】
また、この測定方法を用いることのできる変位検出手段としては多岐にわたり、例えば接触式であるダイヤルゲージ、電気マイクロメータ、又は非接触式であるレーザー式、渦電流式、静電容量式等々の手段を用いることが有効である。
【0055】
以上述べた測定方法は、円筒体の表面形状を求める変位検出器の走査機構が例えば機器コストダウンによる変位検出器の走査精度の正確さが期待できない場合や機器の経時劣化などによる走査精度の正確さが期待できない場合においても有効である。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ84.0mm、内径がφ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0058】
サンプルの円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒把持治具で把持した。変位検出器はKAMAN社製渦電流式変位検出器を使用し、ガイドレールは内製品を使用した。変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み50mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって30mm、80mm、130mm、180mm、230mm、280mm、330mmの7つの、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、各変位検出器S,S′と円筒体表面との距離L,L′として表2の測定値を得た。
【0059】
【表2】
次に移動刻み50mmで変位検出器が移動した時に発生する各点での走査動作隙間を数式(3)により求め、数式(4)より前記検出器の走査動作隙間を除いた中心軸Oから円筒体表面までの各点の距離r(r11〜rMN)を求めたものを表3に示す。
【0060】
【表3】
なお、測定開始位置での中心軸Oと変位検出器S,S′までの距離は予め計測してあり、表3における変位検出器の測定値は、円筒体の中心軸と直角を成す同一断面上の円筒体表面と中心軸までの距離を測定したものを示す。
【0061】
次に各断面における円筒体の中心軸から各点までの距離を直交座標位置に変換した。こうして求まったrxmn,rymnを用いて被測定円中心座標On(Oxn,Oyn)を最小自乗法で求め、前記各点の直交座標位置(rx11,ry11)〜(rxMN,ryMN)、と中心座標(Ox1,Oy1)〜(OxN,OyN)を得たものを表4に示す。
【0062】
【表4】
続いて、測定した7つの被測定円のうち両端(n=1,n=N)に位置する2つの被測定円、すなわち中心軸方向の30mm位置と330mm位置の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各被測定円との交点の位置を、距離比例計算により求めた中心x,y座標を表5に示す。
【0063】
【表5】
次に、各被測定円ごとに各交点を基準とした円周上の各測定点のx,y座標成分としての変位量を算出したものを表6上方に示す。さらに、各座標成分としての変位量から各交点を基準とした円周上の各測定点の半径方向の変位量を求めものを表6下方に示す。
【0064】
【表6】
ここで、得られた全ての距離の、最大値(42049.4μm)と最小値(42043.9μm)の差をもって円筒体の円筒度5.5μmを得た。
【0065】
(実施例2)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ30.0mm、内径がφ28.5mm、長さ260.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0066】
この円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒受け治具上に載置した。変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み20mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって20mm、40mm、60mm、80mm、100mm、120mm、140mm、160mm、180mm、200mm、220mm、240mmの12の、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、これらに対してそれぞれ実施例1と同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
(実施例3)
円筒体として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ84.0mm、内径がφ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
【0068】
この円筒体を図1と同様な円筒体測定器の円筒受け治具上に載置した。変位検出器はミツトヨ社製電気マイクロメータを使用し、変位検出器S′は変位検出器Sと移動刻み30mmと等しい間隔で移動方向と反対に配置されており、円筒体1の一方の端から他方の端に向かって30mm、60mm、90mm、120mm、150mm、180mm、210mm、240mm、270mm、300mm、330mmの11の、円筒体の中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、これらに対してそれぞれ実施例1と同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表8に示す。
【0069】
【表8】
(比較例1)
実施例1に記載のサンプルを変位検出器S′を使わないで同様に測定し、変位検出器Sから円筒体表面までの距離と、中心軸から円筒体表面までの距離として表9、表10の測定値を得た。
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
次に、測定値を実施例1と同様の方法を用いて求めた中心軸Oに対する各測定点の直交座標位置(x,y座標)を表11上方に、中心座標(x,y座標)を表11下方に示す。
【0072】
【表11】
続いて、測定した7つの被測定円のうち両端に位置する2つの被測定円、すなわち中心軸方向の30mm位置と330mm位置の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各被測定円との交点の位置(x,y座標)を、距離比例計算により求めたものを表12に示す。
【0073】
【表12】
次に、各被測定円ごとに各交点を基準とした円周上の各測定点のx,y座標成分としての変位量を算出した。さらに、各座標成分としての変位量から各交点を基準とした円周上の各測定点の半径方向の変位量を求めたものを表13に示す。
【0074】
【表13】
ここで、得られた全ての距離の、最大値(42047.4μm)と最小値(42038.3μm)の差をもって円筒体の円筒度9.1μmを得た。
【0075】
(比較例2)
実施例2に記載のサンプルを変位検出器S′を使わないで同様な方法で円筒度を測定した。この結果を表14に示す。
【0076】
【表14】
[評価例1]
実施例1及び比較例1(従来方法)と真円度測定器として株式会社ミツトヨ製ラウンドテストRA−H5000AHを用いて、同サンプルを同方式で各10回づつ測定した各円筒度の値とそれぞれの測定値再現性を表15及び図12に示す。図12は、実施例1及び比較例1で得た円筒度を比較するグラフである。
【0077】
【表15】
表15及び図12から、実施例1による測定値再現性が1.2μm、比較例1による測定値再現性が5.2μmであり、本発明の方式を用いれば、測定値再現性が向上する効果が確認できる。
【0078】
[評価例2]
実施例2及び比較例2(従来方法)と真円度測定器として株式会社ミツトヨ製ラウンドテストRA−H5000AHを用いて、同サンプルを同方式で各10回づつ測定した各円筒度の値とそれぞれの測定値再現性を表16及び図13に示す。図13は、実施例2及び比較例2で得た円筒度を比較するグラフである。
【0079】
【表16】
表16及び図13から、実施例2による測定値再現性が1.7μm、比較例2による測定値再現性が8.8μmであり、本発明の方式を用いれば、測定値再現性が向上する効果が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により円筒形状の測定が容易になり、本発明は精度の良い円筒部材を作る技術として利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】測定装置平面図(概略図)
【図2】測定装置断面図(概略図)
【図3】測定位置説明図
【図4】走査動作隙間の算出に関する説明図(1)
【図5】走査動作隙間の算出に関する説明図(2)
【図6】走査動作隙間の算出に関する説明図(3)
【図7】走査動作隙間の算出に関する説明図(4)
【図8】走査動作隙間の算出に関する説明図(5)
【図9】各被測定円の真円度算出に関する説明図(1)
【図10】各被測定円の真円度算出に関する説明図(2)
【図11】円筒体を横置きとし、円筒の内周を測定する例を示す図
【図12】実施例1及び比較例1で得た円筒度を比較するグラフ
【図13】実施例2及び比較例2で得た円筒度を比較するグラフ
【符号の説明】
【0082】
1…被測定円筒体
2…変位検出器取り付け台
3…支持台
4…ガイドレール
5…ボールねじ
6…円筒把持治具
O…回転中心軸
S,S′…変位検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする円筒形状の測定方法。
【請求項2】
前記第1の変位検出器と第2の変位検出器は、移動方向と反対に移動刻み距離の整数倍に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項3】
前記第1の変位検出器と第2の変位検出器を一対として、前記中心軸回りに等間隔に複数対配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項4】
前記円筒形状の測定は、真円度及び円筒度の測定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒形状の測定方法。
【請求項5】
前記変位検出器を、円筒体の内側と外側にそれぞれ配置し前記中心軸方向に移動させ、内外周の真円度、円筒度、及び円筒体の肉厚を求めることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項6】
円筒体は、同一の回転中心軸を有する径の異なる複数の円筒からなる複合円筒であり、前記複合円筒を構成する少なくとも1つの円筒に対して、請求項1〜4に記載の方法で測定し、前記1つの円筒以外の円筒をそれぞれ少なくとも前記第1の変位検出器と第2の変位検出器の一方を用いて円筒形状を測定し、全ての円筒において真円度、円筒度、及び同軸度を求めることを特徴とする円筒形状の測定方法。
【請求項7】
円筒体を中心軸回りに回転させる手段と、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器と、前記変位検出器を固定し前記中心軸に対して略平行に移動する手段と、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを有する円筒形状の測定装置において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする円筒形状の測定装置。
【請求項8】
前記変位検出器が、接触式であるダイヤルゲージ、電気マイクロメータ、又は非接触式であるレーザー式、渦電流式、静電容量式であることを特徴とする請求項7に記載の円筒形状の測定装置。
【請求項1】
円筒体を中心軸回りに回転させ、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器を移動手段により前記中心軸方向に移動させ、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算して円筒形状を測定する方法において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする円筒形状の測定方法。
【請求項2】
前記第1の変位検出器と第2の変位検出器は、移動方向と反対に移動刻み距離の整数倍に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項3】
前記第1の変位検出器と第2の変位検出器を一対として、前記中心軸回りに等間隔に複数対配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項4】
前記円筒形状の測定は、真円度及び円筒度の測定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒形状の測定方法。
【請求項5】
前記変位検出器を、円筒体の内側と外側にそれぞれ配置し前記中心軸方向に移動させ、内外周の真円度、円筒度、及び円筒体の肉厚を求めることを特徴とする請求項1に記載の円筒形状の測定方法。
【請求項6】
円筒体は、同一の回転中心軸を有する径の異なる複数の円筒からなる複合円筒であり、前記複合円筒を構成する少なくとも1つの円筒に対して、請求項1〜4に記載の方法で測定し、前記1つの円筒以外の円筒をそれぞれ少なくとも前記第1の変位検出器と第2の変位検出器の一方を用いて円筒形状を測定し、全ての円筒において真円度、円筒度、及び同軸度を求めることを特徴とする円筒形状の測定方法。
【請求項7】
円筒体を中心軸回りに回転させる手段と、前記中心軸直角断面上に配置され、円筒体の表面変位を計測する変位検出器と、前記変位検出器を固定し前記中心軸に対して略平行に移動する手段と、前記変位検出器から得られた所定の位置での複数の検出信号を演算する手段とを有する円筒形状の測定装置において、前記変位検出器は、第1の変位検出器と、前記第1の変位検出器の移動方向と反対に配置された第2の変位検出器とを有し、前記第2の変位検出器によって前記第1の変位検出器と同一の点を測定し、それぞれの測定値の差から前記移動手段の走査動作隙間を検出して前記第1の変位検出器の値を補正することを特徴とする円筒形状の測定装置。
【請求項8】
前記変位検出器が、接触式であるダイヤルゲージ、電気マイクロメータ、又は非接触式であるレーザー式、渦電流式、静電容量式であることを特徴とする請求項7に記載の円筒形状の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−266910(P2006−266910A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86362(P2005−86362)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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