説明

再剥離性圧着記録用紙

【課題】 高速輪転インクジェット印字におけるインクジェット印字画像濃度、印字の転移防止性、耐水性・鮮明性及び塗工安定性が向上され、実用的に高品位である再剥離性圧着記録用紙の提供。
【解決手段】 この課題は、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能な感圧接着剤層を少なくとも片面に有する圧着記録用紙において、基紙のステキヒトサイズ度が10秒以上70秒未満であり、該感圧接着剤層が少なくとも、微粒子充填剤、カチオン性樹脂、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤、および高い造膜性の接着剤を含有しており、該微粒子充填剤が平均粒子径3μm以上9μm未満かつ吸油度が250ml/100g以上350ml/100g未満の非晶質シリカであり、該非晶質シリカが感圧接着剤成分総量の30質量%以上50質量%未満、該カチオン性樹脂が感圧接着剤成分総量の5質量%以上15質量%未満、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の15質量%以上25質量%未満、高い造膜性の接着剤成分が感圧接着剤成分総量の20質量%以上35質量%未満であり、かつ、高い造膜性の接着剤成分の30質量%以上50質量%未満がポリビニルアルコールであることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性インクを使用した高速輪転インクジェット記録用再剥離性圧着記録用紙におけるインクジェット記録画像の印字濃度、印字の転写防止性、耐水性・鮮明性に関するものである。ここで述べる再剥離性圧着記録用紙とは、通常の状態では粘着性も接着性も示さずに、加圧時に接着性を示し、且つ加圧接着(以下、「圧着」という。)後に剥離可能な感圧接着剤を基紙に設けたものである。
【背景技術】
【0002】
個人情報に関わる書類の郵送には、プライバシー保護の観点から記録情報を隠蔽する必要がある。近年、郵便法の改正に伴い必要情報を記録した用紙を二つ折り又は情報を多く記録できる三つ折りにし、情報を隠蔽した親展葉書、所謂「圧着葉書」が実用化され普及している。このような圧着葉書には、少なくとも一方の面に通常は接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧することによって接着性を示し、且つ接着後は再剥離可能な接着剤層を有する再剥離性圧着記録用紙が使用されている。
【0003】
再剥離性圧着記録用紙は、葉書として定形事項を印刷した後、個人情報などの秘密にしたい情報を感圧接着剤層面に、宛先等を他の部分にプリンター等で印字し、ドライシーラー等で情報を外部から見えないように加圧接着して圧着葉書となる。圧着葉書は、受取人が該感圧接着層から剥離させることによって情報を得ることができ、一旦剥離すると該感圧接着面は接着性がないので剥離前の状態には戻すことはできない。
【0004】
通常、圧着葉書は、オフセット印刷にて葉書としての定形事項を印刷後、高速レーザープリンターで住所等の個人情報とそれに関連した秘匿情報を個別に印字し、ドライシーラーで圧着という工程を経て、発送されている。印字スピードをより高速化するため、レーザープリンター方式から、大量に処理することのできる乾燥設備を備えたインクジェットプリンター方式に変化しつつある。近年、高速輪転インクジェット方式が注目されるようになった。この高速輪転インクジェット方式は、輪転印刷機と同様に巻取紙に連続インクジェット方式で直接印字を行うという方式であり、大量の情報処理が可能になるので、ランニングコストを極めて低くできる。この高速輪転インクジェット方式に使用される代表的な水溶性インクとしては、サイテックス社のインクが挙げられる。
【0005】
高速輪転インクジェットプリンター方式は、多量のインクを急速に乾燥し、且つ定着させることが必要となるが、インク吸収性が不十分な記録シートに高速印字を行うと、インクが乾燥しないまま走行してしまい、該プリンター内のロールに未乾燥のインクが転移して、ロール上で蓄積することによって、蓄積されたインクが該ロールから記録シート表面に転移して、結果として印字面への汚れが生じる。
このため、インク吸収速度を早めるために、該感圧接着剤層中のシリカ配合量を増量するか、又は該感圧接着剤層を厚く塗工する等の対策若しくは特定の粒子径、BET比表面積、吸油量を有する微粒子充填剤を疑似接着剤層に配合したインクジェット記録用圧着紙が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【特許文献1】特開平11−334201号公報
【特許文献2】特開2002−220573号公報
【特許文献3】特開2005−133234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた従来の圧着葉書では、前記感圧接着剤層中の接着剤及び感圧接着剤配合比率が高いと高速輪転インクジェットプリンターではインク吸収速度不足となり、好ましくない。
【0007】
一方、シリカを増量すると塗工層強度が低下して紙紛が発生しやすくなるばかりか、オフセット印刷適性も低下し好ましくない。また、塗工層を厚くすることも製造上の負担が大きくなり、コストアップにつながるので好ましくない。さらに、また、圧着葉書は、情報を隠蔽するために圧着されるが、インク定着性が悪いと印字情報が印字面の反対側に転移するトラブルを生じる。
【0008】
このように高速輪転インクジェットプリンター適性とその他の性能をバランスすることが困難であることから、乾燥性の低さを補うために、ライン速度を下げて印字しており、高速輪転インクジェットプリンターの性能が十分発揮されていない。
【0009】
再剥離性圧着記録用紙では、インクジェット適性があること、ブロッキングが少ないこと、剥離強度の経時劣化が少ないこと及びオフセット印刷時の耐刷性があることを要求される。しかし、高速輪転インクジェット記録用途には、一般圧着葉書用途よって更に印字画像の耐水性や鮮明性が高いこと、インク吸収性が高いこと及び剥離後に印字画像が転移しにくいことが特に必要な特性として要求される。
【0010】
したがって、本発明の目的は、高速輪転インクジェット印字におけるインクジェット印字画像濃度、印字の転移防止性、耐水性・鮮明性及び塗工安定性が向上され、実用的に高品位である再剥離性圧着記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記の目的を達成するために鋭意研究を行った結果、通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能な感圧接着剤層を少なくとも片面に有する再剥離性圧着記録用紙において、基紙のステキヒトサイズ度が10秒以上70秒未満であり、該感圧接着剤層が少なくとも、非晶質シリカ、カチオン性樹脂、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤、および高い造膜性の接着剤を含有しており、該非晶質シリカが平均粒子径3μm以上9μm未満かつ吸油度が250ml/100g以上350ml/100g未満であり、該非晶質シリカが感圧接着剤成分総量の30質量%以上50質量%未満、該カチオン性樹脂が感圧接着剤成分総量の5質量%以上15質量%未満、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の15質量%以上25質量%未満、高い造膜性の接着剤成分が感圧接着剤成分総量の20質量%以上35質量%であり、かつ高い造膜性の接着剤成分の30質量%以上50質量%未満がポリビニルアルコールとしたものである。
【発明の効果】
【0012】
前記構成をとることによって、高速輪転インクジェット印字適性、接着及び再剥離性を満足する再剥離性圧着記録用紙が得られる。
【0013】
本発明で使用される基紙については、ステキヒトサイズ度(JIS P 8122:2004「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」準拠)が10秒以上70秒未満であれば、上質紙、中質紙、合成紙等を用いることができる。特に限定はないが紙類が安価な為、好ましく用いられる。これらは表面処理されたものを用いてもよい。勿論、古紙パルプを含んでいてもよく、抄紙方法なども特に限定するものではない。さらに、サイズ剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤及び紙力増強剤等の各種添加剤を混合して長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の抄紙機で基紙を得る。ステキヒトサイズ度が70秒以上では、感圧接着剤層を通過したインクの吸収性が悪くなったり、感圧接着剤層と基紙との密着性が悪くなったりする虞がある。
【0014】
本発明で使用される非晶質シリカは、平均粒子径3μm以上9μm未満、好ましくは3.5〜8μmかつ吸油度が250ml/100g以上350ml/100g未満であれば、特に限定されるものではない。
本発明においては、平均粒子径が1μmに満たない非晶質シリカを使用した場合にはブロッキングし易くなり、9μmを超える非晶質シリカを使用した場合には塗工層からの非晶質シリカの脱落が発生し易くなる等の問題や網点再現性等の印字適性が悪くなる等の問題がある。また、非晶質シリカの配合量が感圧接着剤成分総量の30重量%未満では感圧接着剤層を圧着させた後、開封する際に紙破壊することなく剥離することが困難になり、50重量%を超える場合には、剥離強度が低下し、適正な剥離強度を得る為にドライシーラーで圧着条件が厳しくなり、圧着後の葉書形態でのカールなどの問題がある。
なお、平均粒子径の測定方法はマイクロトラック(レーザー回析法)による。
また、該感圧接着剤層のインク吸収性は、シリカ微細孔によるインク吸着に影響されるため、吸油量の大きなシリカを用いることが好ましい。非晶質シリカの吸油量は、250ml/100g以上350ml/100g未満、好ましくは260〜300ml/100g、特に好ましくは265〜290ml/100gであり、270ml/100gが最適である。吸油量が250ml/100g未満ではシリカへのインク吸収性が十分でなく、インク吸収速度が遅くなる虞があり、インクが塗工層中に浸透せずに、塗工面の表面に固着されてしまうため、耐水性が悪化する虞がある。また、350ml/100gを超えると感圧接着剤及び接着剤の水分を過剰に吸収してしまい、塗工液粘度が上昇する虞がある。非晶質シリカの配合量は、感圧接着剤成分総量の30〜50質量%であることが好ましい。非晶質シリカの更に好ましい配合量は、35〜48重量%である。配合量が30質量%未満では、インクジェットインク吸収速度や吸収量が低下しすぎるばかりか、剥離強度が強くなりすぎ、再剥離時に紙破壊が起こる虞がある。また、50質量%を越えると、剥離強度が低下しすぎる虞がある。
なお、吸油量の測定は、JIS K 5101:1991「顔料試験方法」による。
【0015】
本発明で使用されるカチオン性樹脂は、ポリアミン、ポリアルキルアミン及び変性ポリアミン系などのポリアミン系樹脂、ポリジメチルジアリル系樹脂、ポリアミド・エポキシ樹脂、アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂などが使用できる。特にアミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂を使用することが望ましい。また、カチオン性樹脂の配合量は、感圧接着剤成分総量の5〜15質量%であることが望ましい。5質量%未満では、インクジェット印字した後、圧着し、再剥離すると非印字面に印字が転写する及び/又は耐水性が十分でなくなる虞があり、配合量が15質量%を越えると、感圧接着剤層表面でインク固着が起こり、塗工層中へのインク吸収速度が低下し、高速輪転インクジェット方式のプリンター内のロールに未乾燥のインクが転移して、ロール上で蓄積することによって、蓄積されたインクが該ロールから記録シート表面に転移して、結果として印字面への汚れが生じる虞がある。カチオン性樹脂の更に好ましい配合量は、感圧接着剤成分総量の5.5〜14質量%であり、特に好ましい配合量は6.0〜13.7質量%である。
【0016】
本発明で使用される不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤の不飽和モノマーとして、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド及びメタクリル酸グリシジルを例示できる。その中でも特にメタクリル酸メチルが好ましい。グラフト化反応を起こすのに必要な不飽和モノマーは、天然ゴム系接着剤固形分100質量部に対して10〜40質量部添加するのが好ましい。10質量部未満では、機械的安定性が不安定であり、40質量部を超えると剥離強度が低下する傾向にある。また、天然ゴム系接着剤の配合量は、感圧接着剤成分総量の15質量%以上25質量%未満、殊に15.5〜24.5質量%であることが好ましい。15質量%未満では、剥離強度不足であり、25質量%以上では、塗工層中へのインク吸収速度が低下し、ロールにインクが転移して、ロール上で蓄積することによって印字面への汚れが生じる虞がある。
【0017】
本発明の感圧接着剤層には、不飽和モノマーをグラフト重合した天然ゴム系接着剤と非晶質シリカ、カチオン性樹脂の他に、造膜性の高い接着剤成分を配合する。該接着剤成分は、造膜性が高く、オフセット印刷の耐刷性を向上させる。しかし、剥離強度及びインク吸収性を低下させる。感圧接着剤層中の該接着剤成分は、感圧接着剤成分総量の20質量%以上35質量%、好ましくは23〜34質量%、特に好ましくは25〜34質量%であり、20質量%未満では、オフセット輪転印刷時のインキ着肉性が十分ではなく、35質量%を超えると剥離強度の低下が大きく、実使用に耐えられない。
【0018】
造膜性の高い接着剤成分の中でもポリビニルアルコールは、耐刷性を向上させてインク吸収性の阻害が小さい。ただし、耐刷性とインク吸収性とを満足させるには鹸化度が90%以上であることが必要である。しかし、ポリビニルアルコールが耐刷性とインク吸収性を両立できるとしても、インク吸収性を阻害する成分である為、該接着剤成分量の30質量%以上50質量%未満、好ましくは34〜49質量%、特に35〜48質量%に鹸化度90%以上のポリビニルアルコールを使用することで、インク吸収性を阻害する問題を解消し、品質が向上する。該接着剤の種類としては、ポリビニルアルコールの他に、ポリエチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0019】
本発明の感圧接着剤層には、必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、分散剤、離型剤、サイズ剤、着色染料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、カチオン性、ノニオン性又は両性の界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤、pH調整剤などの助剤を添加することができる。
【0020】
前記感圧接着剤層の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによってなされるが、塗工量は乾燥質量で3〜15g/mの範囲で調整するのが望ましい。塗工量を前記範囲に限定した理由は、3g/m以下ではインクジェット用インク受理層、かつ、オフセットインキ受理層として、インク受理量が低下し、印字品位や印刷上がりなどの視感的な面で劣り、更にインクジェット用インクの耐水定着性や感圧接着剤層としての剥離強度が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/mを越えると、印字品位や印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、紙粉が発生しやすく、感圧接着層としての剥離強度が強すぎて印字面の紙表面破壊を起こし、好ましくない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を次に示す実施例、比較例を用いて更に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、実施例、比較例の質量部数は、すべて固形分換算での数値で示すものとする。
【実施例1】
【0022】
非晶質シリカ(平均粒子径4μm、吸油度270ml/100g)100質量部に対しメタクリル酸メチル(MMA)を(天然ゴム系接着剤100質量部に25質量部)グラフト重合させた天然ゴム系接着剤50質量部、重量平均分子量10000のカチオン性樹脂(アミン・エピクロロヒドリン縮合樹脂)15質量部、高い造膜性の接着剤としてポリビニルアルコール(鹸化度98%、分子量1700)25質量部および粘度600mPas(25℃)のポリエチレン酢酸ビニル樹脂45質量部を配合して本発明の目的とする感圧接着剤塗工液を得た。次に、この感圧接着剤塗工液をステキヒトサイズ度が57秒で坪量105g/mの基紙に片面当たりの塗工量が10g/m(乾燥質量)になるように両面塗工して乾燥させ、感圧接着剤層を形成し、再剥離性圧着記録用紙を得た。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験によって評価した結果を表1に示す。
【実施例2】
【0023】
実施例1の感圧接着剤塗工液の天然ゴム系接着剤50質量部を35質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例2とした。
【実施例3】
【0024】
実施例1の感圧接着剤塗工液のカチオン性樹脂15質量部を35質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例3とした。
【実施例4】
【0025】
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリビニルアルコール25質量部を40質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例4とした。
【実施例5】
【0026】
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリエチレン酢酸ビニル樹脂45質量部を30質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例5とした。
【実施例6】
【0027】
実施例1でステキヒトサイズ度57秒の基紙をステキヒトサイズ度23秒の基紙に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例6とした

【0028】
(比較例1)
実施例1の感圧接着剤塗工液の非晶質シリカを平均粒子径4μm、吸油度270g/100mlから平均粒子径8μm、吸油度200ml/100gに変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例1とした。
【0029】
(比較例2)
実施例1の感圧接着剤塗工液の非晶質シリカを平均粒子径4μm、吸油度270g/100mlから平均粒子径2.3μm、吸油度280ml/100gに変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例2とした。
【0030】
(比較例3)
実施例1の感圧接着剤塗工液の非晶質シリカを平均粒子径4μm、吸油度270g/100mlから平均粒子径9.5μm、吸油度300ml/100gに変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例3とした。
【0031】
(比較例4)
実施例1の感圧接着剤塗工液の非晶質シリカ100質量部を50質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例4とした。
【0032】
(比較例5)
実施例1の感圧接着剤塗工液の非晶質シリカ100質量部を150質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例5とした。
【0033】
(比較例6)
実施例1の感圧接着剤塗工液の天然ゴム系接着剤50質量部を25質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例6とした。
【0034】
(比較例7)
実施例1の感圧接着剤塗工液の天然ゴム系接着剤50質量部を85質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例7とした。
【0035】
(比較例8)
実施例1の感圧接着剤塗工液のカチオン性樹脂15質量部を5質量部に変更した以外は
、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例8とした。
【0036】
(比較例9)
実施例1の感圧接着剤塗工液のカチオン性樹脂15質量部を45質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例9とした。
【0037】
(比較例10)
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリビニルアルコール25質量部を15質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例10とした

【0038】
(比較例11)
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリビニルアルコール25質量部を50質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例11とした

【0039】
(比較例12)
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリビニルアルコール25質量部を15質量部、ポリエチレン酢酸ビニル45質量部を25質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例12とした。
【0040】
(比較例13)
実施例1の感圧接着剤塗工液のポリビニルアルコール25質量部を40質量部、ポリエチレン酢酸ビニル45質量部を60質量部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例13とした。
【0041】
(比較例14)
実施例1でステキヒトサイズ度57秒の基紙をステキヒトサイズ度95秒の基紙に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例14とした。
【0042】
以上、実施例1〜6及び比較例1〜14の再剥離性圧着記録用紙の要点について、表1にまとめた。
【0043】
【表1】

【0044】
以上の実施例及び各比較例で得られた再剥離性圧着記録用紙を次に示す試験方法に従って諸物性の評価を行なった。
【0045】
(1)インクジェット印字品位
インクジェットプリンター(キヤノン株式会社製BJ300)のインクタンクにフルカラー用インクであるサイテックス2001CYANインク、サイテックス2002MAGENTAインク、サイテックス2003BLACKインク、サイテックス2014YELLOWインクを注射器で注入後、接着層面にテスト印字パターン(文字、線、ベタ、画像)を印字画像の滲み及び画像鮮明性を視感で評価した。
◎印:滲みが全くなく非常に優れている。
○印:滲みが僅かに認められるが実用上問題ない。
△印:滲みが発生し、実用的に不安がある。
×印:滲みが発生し、実用的ではない。
(2)インク吸収速度
インクジェットプリンター(キヤノン株式会社製BJ300)のインクタンクにフルカラー用インクであるサイテックス2001CYANインク、サイテックス2002MAGENTAインク、サイテックス2003BLACKインク、サイテックス2014YELLOWインクを注射器で注入後、接着層面にテスト印字パターン(ベタ、画像)を印字後、上質紙を印字部分に押し重ねてから引き剥がし、上質紙へのインク転移状態を視感で評価した。
◎印:インク転移が全くなく、優れている。
○印:インクの転移が僅かにあるが、実用上問題ない。
△印:インクが転移しており、実使用に不安がある。
×印:インクが転移して実用的ではない。
(3)インク耐水性
インクジェットプリンター(キヤノン株式会社製BJ300)のインクタンクにフルカラー用インクであるサイテックス2001CYANインク、サイテックス2002MAZGENTAインク、サイテックス2003BLACKインク、サイテックス2014YELLOWインクを注射器で注入し、ベタ印字を行う。次に水を張った容器にテスト印字パターン(ベタ部)を印字面が水に接するように浮かべ、5分間後のインク濃度及び滲みを視感で評価した。画像、印字に滲み、インクの溶出及び滲みを視感で評価した。
◎印:滲みが全くなく非常に優れている。
○印:滲みが僅かに認められるが実用上問題ない。
△印:滲みが発生し、実用的に不安がある。
×印:滲みが発生し、実用的ではない。
(4)インク転写
インクジェットプリンター(キヤノン株式会社製BJ300)のインクタンクにフルカラー用インクであるサイテックス2001CYANインク、サイテックス2002MAGENTAインク、サイテックス2003BLACKインク、サイテックス2014YELLOWインクを注射器で注入し、テスト印字パターン(文字、線、ベタ)を該再剥離性圧着記録用紙の巾300mm×長さ100mmの巾方向3等分の中央に印字し、印字1時間後に巾100mm×流れ100mmの大きさになるように3つ折りにして、ドライシーラー(プレッスルエコノ:トッパン・フォームズ株式会社製)を用いて目盛26で加圧接着した。剥離後の印字面の対向面へのインクの転写状態を視感で評価した。
◎印:インク転写が全くなく、優れている。
○印:インクの転写が僅かにあるが、実用上問題ない。
△印:インクが転写しており、実使用に不安がある。
×印:インクが転写して実用的ではない。
(5)剥離強度
試料を幅100mm、長さ100mmに裁断し、試料の感圧接着剤組成物の塗工面同士を重ね合わせてドライシーラー(プレッスルエコノ:トッパン・フォームズ株式会社製)を用いて目盛22で加圧接着した。次に23℃、50%RH環境下でフォースゲージ(日本電産シンポ株式会社製)を用いて速度300m/分、T型剥離を行い、剥離強度g/25mmを求めて評価する。
◎:100〜150g/25mm。
○:50〜100g/25mm未満。
△:20〜50 g/25mm未満。
×:0〜20 g/25mm未満。
◎と○は実用レベルの剥離強度を示し、△と×は実用に耐えないレベルを示す。
(6)耐印刷性
RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を使用して、試料の感圧接着剤組成物の塗工面の耐刷力を評価した。インキはプロセスインキ(東洋インキ製造株式会社製、PRINTING INK、墨、SMX、TV−25)を0.4ml、印刷速度:60rpm、4回刷り。視感で評価した。
◎:塗工層の剥がれなし。
○:わずかに塗工層が剥がれているが、良好。
△:塗工層剥がれがあり、実使用には不安がある。
×:はっきりとした塗工層剥がれがあり、実用上問題となるレベル。
(7)耐ブロッキング性
ブロッキング適性試験:感圧接着剤組成物を両面塗工した試料を重ね合わせ、23℃、50%RH環境下で500g/cmの荷重をかけて放置し、24時間後に手で剥がし、評価した。
◎:ブロッキングが全く発生していなく、優れている。
○:ブロッキングがほとんど発生していなく、実用上問題ない。
△:少しブロッキングが発生しており、実使用に不安がある。
×:完全にブロッキングして実用的ではない。
(8)総合評価
◎印:圧着葉書適性、高速輪転インクジェット印字適性に非常に優れる。
○印:圧着葉書適性、高速輪転インクジェット印字適性に優れる。
△印:圧着葉書適性、高速輪転インクジェット印字適性に多少問題があり、実使用上不安がある。
×印:圧着葉書適性、高速輪転インクジェット印字適性に問題があり、実使用性に欠ける

【0046】
前記の方法に従って試験を行い、その評価結果を次の表2に示した。
【0047】
【表2】

@0002
【0048】
表2の結果から、基紙のステキヒトサイズ度が10秒以上70秒未満であり、感圧接着剤層に含有される該微粒子充填剤が平均粒子径3μm以上9μm未満かつ吸油度が250ml/100g以上350ml/100g未満の非晶質シリカであり、該非晶質シリカが感圧接着剤成分総量の30質量%以上50質量%未満、該カチオン性樹脂が感圧接着剤成分総量の5質量%以上15質量%未満、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の15質量%以上25質量%未満、高い造膜性の接着剤成分が感圧接着剤成分総量の20質量%以上35質量%未満であり、かつ、該接着剤成分の30質量%以上50質量%未満がポリビニルアルコールである実施例1〜6の場合には、インク吸収速度に優れ、剥離強度及び印刷強度ともに優れていることが分かる。
【0049】
これに対して、微粒子充填剤である非晶質シリカの吸油度が250ml/100g以下である比較例1、吸油量を満たした非晶質シリカ含有であるが感圧接着剤成分総量30質量%未満である比較例4、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の25質量%以上である比較例7、カチオン製樹脂が感圧接着剤成分総量の15質量%以上である比較例9、接着剤成分が感圧接着剤成分総量35質量%以上である比較例13、及びステキヒトサイズ度が70秒以上の基紙に塗工した比較例14はインク吸収速度が十分ではなく、高速輪転インクジェット印字適性を満足する再剥離性圧着記録用紙が得られない。
【0050】
また、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の15質量%未満である比較例6及び接着剤成分の50質量%以上がポリビニルアルコールである比較例11は、剥離強度の低下が大きく、剥離強度を満足する再剥離性圧着記録用紙が得られない。
さらに、微粒子充填剤である非晶質シリカの平均粒子径が3μm未満である比較例2、微粒子充填剤である非晶質シリカの平均粒子径が9μm以上であるである比較例3、微粒子充填剤である非晶質シリカが感圧接着剤成分総量の50質量%以上である比較例5、及び接着剤成分が感圧接着剤成分総量の20質量%未満である比較例12は、耐印刷性が不十分であり、満足な再剥離性圧着記録用紙が得られない。
【0051】
カチオン性樹脂が感圧接着剤成分総量の5質量%未満である比較例8は、インク耐水性不足であり、また接着剤成分の30質量%未満がポリビニルアルコールである比較例10は耐ブロッキング性が悪く、満足な再剥離性圧着記録用紙も得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、接着後に剥離可能な感圧接着剤層を少なくとも片面に有する圧着記録用紙において、基紙のステキヒトサイズ度が10秒以上70秒未満であり、該感圧接着剤層が少なくとも、微粒子充填剤、カチオン性樹脂、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤、および高い造膜性の接着剤を含有しており、該微粒子充填剤が平均粒子径3μm以上9μm未満かつ吸油度が250ml/100g以上350ml/100g未満の非晶質シリカであり、該非晶質シリカが感圧接着剤成分総量の30質量%以上50質量%未満、該カチオン性樹脂が感圧接着剤成分総量の5質量%以上15質量%未満、不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム系接着剤が感圧接着剤成分総量の15質量%以上25質量%未満、高い造膜性の接着剤成分が感圧接着剤成分総量の20質量%以上35質量%未満であり、かつ、高い造膜性の接着剤成分の30質量%以上50質量%未満がポリビニルアルコールであることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。

【公開番号】特開2008−45115(P2008−45115A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184030(P2007−184030)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】