説明

冷凍サイクル、可変容量圧縮機および吐出弁

【課題】冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めるとともに、差圧弁による可変容量圧縮機の容量制御の精度を高める。
【解決手段】圧縮機1においては、その容量制御を行う制御弁5をいわゆる定差圧弁として構成するとともに、吐出室53の出口と圧縮機1の出口とをつなぐ冷媒通路に吐出弁7を設けた。この吐出弁7は、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が所定の開弁差圧Pds以上になると開弁し、吐出室53の吐出冷媒を凝縮器側へ導出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置に好適な冷凍サイクル、およびその冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機は、車両の走行状態によって回転数が変化するエンジンを駆動源としているため、回転数制御を行うことができない。そこで、エンジンの回転数によらず適切な冷房能力を得るために、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。
【0004】
このような圧縮機では、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。そして、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整するようにしている。この揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。このクランク室内の圧力は、縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0005】
ところで、このような圧縮機の駆動はエンジンの大きな負荷になり得る。このため、例えば車両の急加速時や登坂走行時など、エンジンの動力を車両の推進力に振り向けたい高負荷時には、その圧縮機の負荷トルクを低減する必要がある。従来においては、この負荷トルクを一時的にカットできるように、回転軸の一端にエンジンの駆動力を伝達または遮断する電磁クラッチが設けられた圧縮機も採用されていた。しかし、低コスト化等の理由から近年では電磁クラッチを用いずにエンジンと回転軸とを直結したいわゆるクラッチレス式の圧縮機が主流になりつつある。
【0006】
このクラッチレス式の圧縮機には、例えば吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、その弁部を閉じ方向に作用させるような電磁力を発生させるソレノイドとを備えた外部制御方式の制御弁が用いられる。この制御弁では、ソレノイドへの通電を遮断すると弁部が全開状態となり、クランク室内の圧力(「クランク圧力」という)Pcを吐出圧力Pdに近い圧力に維持できる。その結果、揺動板が回転軸に対してほぼ直角になり、圧縮機を最小容量運転に移行させることができる。つまり、エンジンと回転軸とが直結されていても、実質的に吐出容量をゼロに近づけることができ、それにより負荷トルクを最小化することができる。
【0007】
このような制御弁としては、例えば圧縮機の吸入圧力Psに基づいて弁開度を調整して容量制御を行ういわゆるPs感知弁や、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)に基づいて容量制御を行ういわゆるPd−Ps弁などが採用される。Ps感知弁は、蒸発器出口側の冷媒温度に比例する吸入圧力Psを制御するため、過剰冷房による蒸発器の凍結を防止する等の観点からは好ましい。しかし、吸入圧力Psに基づく制御であるため、吐出容量を制御するうえでは応答性に欠ける場合がある。一方、Pd−Ps弁は、吐出圧力Pd自体の大きさに基づいた容量制御を行うため、吐出容量を変化させるのに応答性が良いという利点がある。ただし、差圧(Pd−Ps)の制御に伴って吸入圧力Psが下がると、過剰冷房となることもあり得るため、通常は蒸発器の出口温度がフィードバックされて吸入圧力Psが下がり過ぎないような制御が行われる。
【0008】
ところで、このような制御弁により圧縮機が最小容量運転に移行しても、揺動板に若干の傾きがあるため、通常はその吐出容量を完全にゼロにすることはできない。このため、特に冬場などの低温環境下においてはその僅かな冷媒の流れによって蒸発器が凍結する可能性もあり得る。また、ソレノイドへの通電を遮断した際に吐出圧力Pdが急激に低下すると、一時的にその圧縮機出口の圧力Pdlが吐出室出口の圧力Pdhよりも高くなって、吐出冷媒が吐出室へ逆流する可能性もある。
【0009】
これに対し、例えば圧縮機の冷媒の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)に基づいて容量制御を行う構成を有するとともに、吐出室と凝縮器との間の冷媒通路に逆止弁を設けた空調装置も提案されている(例えば特許文献1参照)。このような空調装置によれば、ソレノイドへの通電遮断時に圧縮機の吐出容量ひいては負荷トルクを迅速に低下させることができるとともに、吐出室への冷媒の逆流を防止できる。
【特許文献1】特開2001−153042号公報〔段落[0081]等〕
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の従来の構成においては、逆止弁がその開弁時においても常に圧力損失を発生させるために、冷凍サイクルのエネルギー効率の低下や容量制御の精度低下の原因となっていた。図24は、従来の空調装置における冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。同図において横軸はエンタルピを表し、縦軸は圧力を表している。図25は、差圧と負荷トルクとの関係の一例を表すグラフである。同図において横軸は差圧(Pd−Ps)を表し、縦軸は圧縮機の負荷トルクを表している。
【0011】
すなわち、逆止弁には内部のスプリング等により常に吐出圧力Pdに対向する閉弁方向の付勢力が作用するため、吐出室出口の圧力Pdhと可変容量圧縮機出口の圧力Pdlとの差圧(Pdh−Pdl)がその開弁差圧P0よりも大きくならないと開弁しない。また、圧縮機の容量制御時においても、その差圧(Pdh−Pdl)がその開弁差圧P0よりも大きくないと逆止弁の開弁状態を保持することができない。このため、図24に示すように、冷凍サイクルの運転時には、吐出圧力Pdが圧力Pdhまで昇圧された後、その逆止弁を介して圧力Pdlまで減圧されて凝縮器へ供給される。つまり、圧縮機の容量制御中においては、吐出室と圧縮機出口との間に常に開弁差圧ΔP0分の圧力損失が発生することになる。このため、その圧力損失によって圧縮機による圧縮エネルギーが消費されてしまうといった問題が生じる。言い換えれば、差圧(Pd−Ps)の差圧制御において常にその開弁差圧ΔP0の影響を見越して余分に圧縮エネルギーを発生させなければならず、冷凍サイクルのエネルギー効率を悪化させる原因となっていた。
【0012】
また、図25に示すように、差圧(Pd−Ps)に応じて圧縮機の負荷トルクも変化するが、容量制御においてはその開弁差圧ΔP0に対応する余分の負荷トルクΔTを発生させる必要があり、エンジンに余分な負荷が加わる原因となっていた。さらに、この余分な負荷トルクΔTを得るために差圧(Pd−Ps)についての設定差圧を決めなければならない。つまり、その余分の負荷トルクΔTを加味した設定差圧を想定してソレノイドへの設定電流値(デューティ比等)を補正しなければならず、制御上の誤差が累積して容量制御の精度を低下させる可能性もある。
【0013】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めるとともに、圧縮機の容量制御の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の冷凍サイクルは、空調装置の冷凍サイクルにおいて、吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機と、可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、外部熱交換器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させるとともに可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が供給される電流値により設定される第1の差圧に近づくように吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を調整して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、所定の外部情報に基づいて第1の差圧を決定し、その第1の差圧に基づいて制御弁への通電制御を行う制御部と、可変容量圧縮機の吐出室と外部熱交換器との間の冷媒通路に弁部が設けられるとともに、吸入圧力およびクランク圧力のいずれか一方と吐出圧力との差圧が第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して冷媒通路を開放する一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる吐出弁と、を備える。
【0015】
この態様では、可変容量圧縮機の吐出圧力(以下「高圧側圧力」ともいう)と、吸入圧力またはクランク圧力(以下「低圧側圧力」ともいう)との差圧が第1の差圧(以下「設定差圧」ともいう)に近づくように、その可変容量圧縮機の吐出容量を制御する制御弁が設けられている。このように吐出圧力自体の大きさに基づいた容量制御を行うため、吐出容量を変化させる応答性に優れるという利点がある。
【0016】
一方、可変容量圧縮機の吐出室と外部熱交換器との間の冷媒通路に吐出弁の弁部が設けられている。この吐出弁は、高圧側圧力と低圧側圧力との差圧を感知し、その差圧が制御弁の設定差圧とは別の第2の差圧(以下「開弁差圧」ともいう)以上になったときに自律的に開弁して吐出冷媒を凝縮器側へ導出させる。このように、吐出弁は、その前後差圧が開弁差圧以上にならないと開弁しないため、可変容量圧縮機の最小容量運転時には閉弁状態となり、凝縮器側から可変容量圧縮機への吐出冷媒の逆流を抑制できる。一方、吐出弁は、少なくとも可変容量圧縮機の容量制御中においては高圧側圧力と低圧側圧力との差圧により開弁状態を保持する。このため、容量制御中においては吐出室出口の圧力と可変容量圧縮機出口の圧力との間には実質的に差圧が生じない。したがって、吐出弁において実質的に圧力損失が発生しにくいため、可変容量圧縮機における圧縮エネルギーの無駄な消費がなくなり、冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めることができる。また、その圧力損失を見越した設定差圧の補正、ひいては設定電流値の補正を行う必要がなくなるため、制御上の誤差が発生し難くなり、容量制御の精度を高めることができる。
【0017】
ただし、吐出弁により吐出冷媒の逆流を抑制できるとはいっても、最小容量運転移行初期においては高圧側圧力と低圧側圧力との差圧が開弁差圧より低下するまでには所定時間を要する。その間に逆流が生じ、クランク室内の冷媒導入量が増加してクランク圧力が急上昇すると、例えばシール部品等のクランク室内の内部構造物の耐久性が低下する可能性がある。この態様によれば、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第3の差圧(以下「閉弁差圧」ともいう)以上になったとき、つまりクランク圧力が急上昇を開始しようとしたときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じ、クランク室への冷媒の導入量を絞る。これにより、クランク室内の不要な圧力上昇を抑制することができる。
【0018】
本発明の別の態様は、可変容量圧縮機である。この可変容量圧縮機は、空調装置の冷凍サイクルを構成し、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が設定された第1の差圧に近づくように吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を調整して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、吐出室と当該可変容量圧縮機の出口とをつなぐ冷媒通路に弁部が設けられるとともに、吸入圧力およびクランク圧力のいずれか一方と吐出圧力との差圧が第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して冷媒通路を開放する一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる吐出弁と、を備える。
【0019】
この態様においても、可変容量圧縮機の出口と吐出室との間の冷媒通路に吐出弁の弁部が設けられている。この吐出弁は、高圧側圧力と低圧側圧力との差圧を感知し、その差圧が制御弁の第1の差圧(設定差圧)とは別の第2の差圧(開弁差圧)以上になったときに自律的に開弁して吐出冷媒を凝縮器側へ導出させる。一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第3の差圧(閉弁差圧)以上になったとき、つまりクランク圧力が急上昇を開始しようとしたときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる。このため、当該可変容量圧縮機を冷凍サイクルに適用することにより、上述のようにその冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めることができ、容量制御の精度を高めることもできる。また、クランク室内の不要な圧力上昇を抑制することができる。
【0020】
本発明のさらに別の態様もまた、可変容量圧縮機である。この可変容量圧縮機は、空調装置の冷凍サイクルを構成し、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が設定された第1の差圧に近づくように吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を調整して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、吐出室と当該可変容量圧縮機の出口とをつなぐ冷媒通路に弁部が設けられて、吐出圧力からなる開弁方向の高圧側圧力と、吸入圧力およびクランク圧力の少なくとも一方からなる閉弁方向の低圧側圧力とを受圧し、その高圧側圧力と低圧側圧力との差圧が第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して冷媒通路を開放する一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる吐出弁と、を備える。
【0021】
この態様では、開弁差圧として作用する低圧側圧力として、吸入圧力およびクランク圧力の双方が作用する場合が含まれる。すなわち、吐出弁は、吐出圧力とクランク圧力との差圧、または吐出圧力と吸入圧力との差圧に応じて開弁するものでもよいし、さらにクランク圧力と吸入圧力との差圧がその開弁に影響するものでもよい。ただし、後者の差圧は前者の差圧よりも小さく、実質的に無視できる場合もある。
【0022】
この態様においても、可変容量圧縮機の出口と吐出室との間の冷媒通路に吐出弁の弁部が設けられている。この吐出弁は、高圧側圧力と低圧側圧力との差圧を感知し、その差圧が制御弁の第1の差圧(設定差圧)とは別の第2の差圧(開弁差圧)以上になったときに自律的に開弁して吐出冷媒を凝縮器側へ導出させる。一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第3の差圧(閉弁差圧)以上になったとき、つまりクランク圧力が急上昇を開始したときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる。このため、当該可変容量圧縮機を冷凍サイクルに適用することにより、上述のようにその冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めることができ、容量制御の精度を高めることもできる。また、クランク室内の不要な圧力上昇を抑制することができる。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、吐出弁である。この吐出弁は、吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出するとともに、その吐出室からクランク室に導入する冷媒流量が調整されることにより吐出容量が変化する可変容量圧縮機に組み込まれ、可変容量圧縮機の出口と吐出室とをつなぐ冷媒通路を開閉して吐出冷媒の流れを制御する吐出弁において、可変容量圧縮機に組み込まれる筒状のボディと、吐出室と出口とをつなぐ第1冷媒通路に形成された弁座に着脱して第1冷媒通路を開閉する弁体と、ボディに収容されるとともに、吐出室と吸入室とをつなぐ第2冷媒通路に配設され、吐出圧力と吸入圧力との差圧を感知して進退し、吐出圧力と吸入圧力との差圧が予め設定された開弁差圧以上のときに弁体を開弁方向に付勢する第1感圧部材と、ボディに収容されるとともに、クランク室と吸入室とをつなぐ第3冷媒通路に配設され、クランク圧力と吸入圧力との差圧を感知して進退し、クランク圧力と吸入圧力との差圧が予め設定された閉弁差圧以上となったときに弁体を閉弁方向に付勢する第2感圧部材と、を備える。
【0024】
この態様の吐出弁は、可変容量圧縮機に組み込まれることにより、高圧側圧力と低圧側圧力との差圧を感知し、その差圧が制御弁の第1の差圧(設定差圧)とは別の第2の差圧(開弁差圧)以上になったときに自律的に開弁して吐出冷媒を凝縮器側へ導出させる。一方、クランク圧力と吸入圧力との差圧が第3の差圧(閉弁差圧)以上になったとき、つまりクランク圧力が急上昇を開始しようとしたときに自律的に閉弁して冷媒通路を閉じる。このため、その可変容量圧縮機が冷凍サイクルに適用されることにより、上述のようにその冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めることができ、容量制御の精度を高めることもできる。また、クランク室内の不要な圧力上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、冷凍サイクルにおけるエネルギー効率を高めるとともに、圧縮機の容量制御の精度を高めることができる。さらに、圧縮機のクランク室内の不要な圧力上昇を抑制することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【0028】
この冷凍サイクルは、車両用空調装置を構成し、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮する可変容量圧縮機(以下、単に「圧縮機」という)1、圧縮された冷媒を凝縮して冷却する凝縮器2(「外部熱交換器」に該当する)、凝縮された冷媒を断熱膨張させる膨張装置3、および膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器4を備えている。
【0029】
圧縮機1は、蒸発器4側から吸入室51に導入された冷媒ガスをシリンダ52に導入して圧縮し、吐出室53から凝縮器2側へ高温・高圧の冷媒を吐出する。この吐出冷媒の一部は可変容量圧縮機用制御弁(以下、単に「制御弁」という)5を介してクランク室54内に導入され、圧縮機1の容量制御に供される。制御弁5は、ソレノイド駆動の電磁弁として構成され、制御部6により通電制御される。クランク室54と吸入室51とを連通する冷媒通路55にはオリフィス56が設けられており、クランク室54内の圧力を減圧して吸入室51側へ導出可能になっている。また、圧縮機1の吐出室53と凝縮器2との間の冷媒通路には、後に詳述する吐出弁7が設けられている。
【0030】
図2は、圧縮機の構成を表す断面図である。
【0031】
圧縮機1は、そのハウジングとして、複数のシリンダ52が形成されたシリンダブロック101と、その前端側に接合されたフロントハウジング102と、後端側にバルブプレート103を介して接合されたリアハウジング104とを備えている。シリンダブロック101とフロントハウジング102とにより囲まれた内部空間によりクランク室54が形成されている。
【0032】
クランク室54には、その中心を貫通するように回転軸106が配置されている。この回転軸106は、シリンダブロック101に設けられた軸受107と、フロントハウジング102に設けられた軸受108とによって回転自在に支持されている。回転軸106にはラグプレート109が固定されており、そのラグプレート109に突設された支持アーム110等を介して揺動板111が支持されている。揺動板111は、回転軸106の軸線に対して傾動可能となっており、複数のシリンダ52に摺動自在に配置されたピストン112にシュー114を介して連結されている。回転軸106は、その前端部分がフロントハウジング102を貫通して外部に延出しており、その先端部分にはブラケット117が螺着されている。また、回転軸106とフロントハウジング102との前端部分の隙間を外側からシールするように、リップシール115が設けられている。
【0033】
フロントハウジング102の前端部分には、エンジンからの駆動力を伝達するプーリ118が軸受119を介して回転自在に支持されている。このプーリ118は、エンジンの駆動力をブラケット117を介して回転軸106に伝達する。
【0034】
リアハウジング104の内部には、吸入室51、吐出室53、制御弁5および吐出弁7が配設されている。吸入室51は、バルブプレート103に設けられた吸入用リリーフ弁121を介してシリンダ52に連通するとともに蒸発器4にも連通している。吐出室53は、バルブプレート103に設けられた吐出用リリーフ弁122を介してシリンダ52に連通するとともに凝縮器2にも連通している。制御弁5は、吐出室53とクランク室54との間を連通する冷媒通路に配置されている。
【0035】
圧縮機1の揺動板111は、その角度がクランク室54内でその揺動板111を付勢するスプリング125、126の荷重や、揺動板111につながるピストン112の両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この圧縮機1の揺動板111の角度は、クランク室54内に吐出冷媒の一部を導入してクランク圧力Pcを変化させ、ピストン112の両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。この揺動板111の角度の変化によってピストン112のストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量を調整するようにしている。クランク室54内の圧力は、主として制御弁5により制御される。
【0036】
制御弁5は、圧縮機1の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧(Pd−Ps)が制御目標値である設定差圧(「第1の差圧」に該当する)に近づくように吐出室53からクランク室54に導入する冷媒流量を調整する。これにより、圧縮機1の吐出容量が変化する。
【0037】
バルブプレート103の一部には連通孔105が設けられており、クランク室54内のクランク圧力Pcがこの連通孔105を介してリアハウジング104に導入され、吐出弁7に作用している。
【0038】
図1に戻り、制御部6は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部6は、エンジン回転数、車室内外の温度、蒸発器4の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて上記設定差圧を決定し、その設定差圧が保持されるソレノイド力が得られるように制御弁5への通電制御を行う。また、車両の加速時や登坂走行時などのエンジンの高負荷状態において圧縮機1の負荷トルク低減を目的とする加速カット要求があると、制御部6は、その通電を遮断または所定の下限値に抑制し、圧縮機1を最小容量運転に移行させたりする。
【0039】
膨張装置3は、いわゆる温度式膨張弁として構成されており、蒸発器4の出口側の冷媒温度をフィードバックしてその弁開度を調整し、熱負荷に応じた液冷媒を蒸発器4へ供給する。蒸発器4を通過した冷媒は圧縮機1に戻され、再び圧縮される。
【0040】
吐出弁7は、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が所定の開弁差圧Pds(「第2の差圧」に該当する)以上になると自律的に開弁する一方、クランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が所定の閉弁差圧Pcs(「第3の差圧」に該当する)以上になると自律的に閉弁する差圧感知弁として構成されている。
【0041】
なお、開弁差圧Pdsは、圧縮機1の最小容量運転時において揺動板111のわずかな傾きにより生じ得る吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの微少差圧よりも大きく設定される一方、容量制御時において制御弁5に設定され得る設定差圧よりも小さくなるように設定されている。このため、吐出弁7は、圧縮機1の最小容量運転時には閉弁状態となって凝縮器2側からの逆流を防止するが、圧縮機1の容量制御時には開弁状態を保持するので冷媒の流れを阻害することはない。
【0042】
ただし、圧縮機1のシャットダウン時に制御弁5への通電が遮断されると、その弁部が全開状態となるため、吐出室53からクランク室54への冷媒の導入量が増加する。このため、吐出室53の吐出圧力Pdhが圧縮機1の出口圧力Pdlよりも一時的に低下するため、逆流が発生してクランク圧力Pcが一気に高まりやすくなる。一方、差圧(Pd−Ps)が開弁差圧Pdsを下回るまでにはある程度の時間を要するため、吐出弁7がその開弁差圧Pdsに基づいて閉弁するまでには時間的遅れが生じる。ここでは、吐出弁7が、そのクランク圧力Pcの急激な高まりを差圧(Pc−Ps)の大きさにより感知し、その差圧(Pc−Ps)が閉弁差圧Pcs以上になると閉弁する。これにより、圧縮機1の出口側から吐出室53への逆流を抑制し、クランク圧力Pcの必要以上の高まりを防止している。
【0043】
図3は、制御弁の構成を示す断面図である。
【0044】
制御弁5は、圧縮機1の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)を設定差圧に保つように、吐出室53からクランク室54に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPd−Ps差圧弁として構成されている。
【0045】
この制御弁5は、吐出冷媒の一部をクランク室54へ導入するための冷媒通路を開閉する弁本体8と、弁本体8の弁部の開度を調整してクランク室54へ導入する冷媒流量を制御するソレノイド9とを一体に組み付けて構成される。
【0046】
弁本体8は、プレス成形により得られたボディ10の内部に弁機構を備えている。ボディ10の上部には、圧縮機1の吐出室53に連通して吐出圧力Pd(正確には吐出室53の圧力Pdh)を受けるポート11が設けられている。ポート11は、ボディ10の側部に設けられたポート13と内部で連通している。ポート13は、圧縮機1のクランク室54に連通し、そのクランク室54に制御されたクランク圧力Pcを導出する。
【0047】
ボディ10の上部においてポート11とポート13とを連通する冷媒通路には、円筒状の弁座形成部材14が圧入されており、その内部通路により弁孔15が形成されている。弁座形成部材14のクランク室54側の端面により弁座16が形成されている。弁座16にクランク室54側から対向して、長尺状の作動ロッド17の一端部からなる弁体18が接離自在に配置されている。
【0048】
ボディ10の中央部には、円筒状のガイド部材19が圧入され、その内部通路によりガイド孔20が形成されている。作動ロッド17は、このガイド孔20に摺動可能に軸支されている。弁体18は、弁孔15の下流側でクランク室54に連通する圧力室21に配置され、その先端面の外周縁が弁座16に着脱することにより弁孔15を開閉する。作動ロッド17の下端部とガイド部材19の下端面との間には、作動ロッド17をソレノイド9側、つまり開弁方向に付勢するスプリング41が介装されている。
【0049】
ボディ10の側部のポート13から下方に離間した位置には、吸入室51に連通して吸入圧力Psを受けるポート22が形成されている。ボディ10とソレノイド9とにより囲まれたこのポート22と連通する内部空間は、吸入圧力Psが導入される圧力室23を形成する。吸入圧力Psは、ソレノイド9の内部にも導入される。
【0050】
また、ボディ10の上端開口部にはストレーナ25が嵌着され、外部からポート11への異物の流入を防止している。さらに、ボディ10の側部にも、ポート13を外部から覆うようにストレーナ26が装着されている。
【0051】
一方、ソレノイド9は、ヨークとしても機能する段付円筒状のケース31と、ケース31内に配設されたコア32と、コア32と軸線方向に対向配置されたプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。ケース31は、その上端部が縮径してボディ10の下端部に圧入されている。コア32は、その上端部がケース31の縮径部に圧入されている。
【0052】
コア32には、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔35が設けられており、ソレノイド力を弁体18へ伝達するためのシャフト27を挿通している。コア32の上端開口部にはリング状の軸受部材28が圧入されており、シャフト27の上端部を摺動可能に支持している。この軸受部材28には連通孔29が設けられており、この連通孔29を介して圧力室23内の吸入圧力Psがソレノイド9の内部に導入される。
【0053】
コア32には、また、下端が閉じた有底スリーブ36が外挿されている。有底スリーブ36内においては、プランジャ33がコア32の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。有底スリーブ36は、その下端部が縮管されており、その縮管部にリング状の軸受部材37が圧入されている。この軸受部材37は、シャフト27の下端部を摺動可能に軸支している。この軸受部材37には連通孔38が設けられており、この連通孔38を介して吸入圧力Psが縮管部の内部にまで導入される。一方、プランジャ33は、段付円筒状をなし、その上部がシャフト27の下半部に圧入されている。プランジャ33とコア32との間には、プランジャ33をコア32から離間させる方向に付勢するスプリング42が介装されている。
【0054】
ケース31の下端開口部には、ソレノイド9の内部を下方から封止するように取っ手39が設けられている。取っ手39は、電磁コイル34につながる端子の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0055】
以上の構成において、作動ロッド17の径は弁孔15の内径よりもやや大きいものの、ほぼ同じ大きさを有するため、開弁時においては圧力室21に導入されたクランク圧力Pcがほぼキャンセルされる。このため、弁体18には、ほぼ弁孔15の大きさの受圧面積に対して吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が実質的に作用する。弁体18は、差圧(Pd−Ps)がソレノイド9に供給された制御電流にて設定された設定差圧に保持されるように動作する。
【0056】
次に、制御弁の基本的動作について説明する。
【0057】
図3に示した制御弁5において、ソレノイド9が非通電のときには、スプリング41およびスプリング42による開弁方向のばね荷重により弁体18が弁座16から離間して弁部が全開状態に保持される。このとき、圧縮機1の吐出室53からポート11に導入された吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート13からクランク室54へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが吐出圧力Pdに近い圧力になるため、圧縮機1は吐出容量が最小となる最小容量運転を行うことになる。
【0058】
一方、自動車用空調装置の起動時または冷房負荷が最大のときには、ソレノイド9に供給される電流値は最大になり、プランジャ33は、コア32に最大の吸引力で吸引される。このとき、弁体18を含む作動ロッド17、シャフト27およびプランジャ33が、一体になって閉弁方向に動作し、弁体18が弁座16に着座する。この閉弁動作によってクランク圧力Pcが低下するため、圧縮機1は吐出容量が最大となる最大容量運転を行うことになる。
【0059】
ここで、容量制御時においてソレノイド9に供給される電流値が所定値に設定されているときには、弁体18を含む作動ロッド17、シャフト27およびプランジャ33が一体動作する。このとき、弁体18は、作動ロッド17を開弁方向に付勢するスプリング41のばね荷重と、プランジャ33を開弁方向に付勢するスプリング42のばね荷重と、プランジャ33を閉弁方向に付勢しているソレノイド9の荷重と、弁体18が開弁方向に受圧する吐出圧力Pdによる力と、弁体18が閉弁方向に受圧する吸入圧力Psによる力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0060】
このバランスが取れた状態で、エンジンの回転数とともに圧縮機1の回転数が上がって吐出容量が増えると、差圧(Pd−Ps)が大きくなって弁体18に開弁方向の力が作用し、弁体18は、さらにリフトして吐出室53からクランク室54へ流す冷媒の流量を増やす。これにより、クランク圧力Pcが上昇し、圧縮機1は、その吐出容量を減少させる方向に動作し、差圧(Pd−Ps)が設定差圧になるように制御される。エンジンの回転数が低下した場合には、その逆の動作が行われ、差圧(Pd−Ps)が設定差圧になるように制御される。
【0061】
図4は、吐出弁の構成を示す断面図である。
【0062】
吐出弁7は、圧縮機1の吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)(正確には差圧(Pdh−Ps))が所定の開弁差圧Pds以上になったときに自律的に開弁する一方、クランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が所定の閉弁差圧Pcs以上になったときに自律的に閉弁する機械式の差圧感知弁として構成されている。
【0063】
この吐出弁7は、図2にも示されるように圧縮機1に組み込まれており、そのボディは、リアハウジング104の内部に一体成形されている。すなわち、リアハウジング104に形成された複数の冷媒通路の連通部を区画するように、吐出弁7の各構成要素が配設されている。
【0064】
吐出弁7は、圧縮機1の出口と吐出室53とをつなぐ冷媒通路57(「第1冷媒通路」に該当する)に配設された弁体61と、吐出室53と吸入室51とをつなぐ冷媒通路58(「第2冷媒通路」に該当する)に配設された感圧部材62(「第1感圧部材」に該当する)と、クランク室54と吸入室51とをつなぐ冷媒通路59(「第3冷媒通路」に該当する)に配設された感圧部材63(「第2感圧部材」に該当する)とを備える。
【0065】
リアハウジング104内には弁座65が一体成形されている。弁体61は、有底筒状の本体を有し、その開口端部の周縁が弁座65に着脱して冷媒通路57を開閉する。弁体61の先端面からは3つの脚部66が延設されている(なお、同図には1つのみ表記されている)。この脚部66が冷媒通路57に沿ってガイドされることにより、弁体61の軸線方向に沿った安定した動作が確保される。弁体61は、その底部が感圧部材62の先端面に当接可能となっている。
【0066】
感圧部材62は、後端側(図の左側)の端部外径が縮径された段付円筒状をなし、冷媒通路58を形成するガイド孔67に沿って軸線方向に摺動する。感圧部材62は、冷媒通路58を吐出圧力Pdが作用する高圧側と吸入圧力Psが作用する低圧側に区画している。ガイド孔67の後端側には、テーパ面を有する弁座形成リング68が圧入されており、感圧部材62の後端周端縁が着脱可能となっている。この感圧部材62と弁座形成リング68により弁部が構成され、感圧部材62が弁座形成リング68着座することにより、感圧部材62とガイド孔67との間隙が閉じられ、高圧側から低圧側への冷媒の漏洩が防止されるようになっている。感圧部材62の中央を軸線方向に延びる挿通孔69には、長尺状の作動ロッド70が摺動可能に挿通されている。
【0067】
感圧部材63は、円板状をなし、冷媒通路59を形成するガイド孔71に沿って軸線方向に摺動する。感圧部材63は、冷媒通路59をクランク圧力Pcが作用する側と吸入圧力Psが作用する側に区画している。感圧部材63の前方の圧力室には吸入圧力Psが導入され、後方の圧力室には連通孔105を介してクランク圧力Pcが導入される。感圧部材63の感圧部材62との対向面中央には、円溝からなる収容部72が形成されており、その収容部72に作動ロッド70の一端が保持されている。作動ロッド70の他端は挿通孔69を貫通して弁体61の底部に接離可能になっている。感圧部材62と感圧部材63との間には、両感圧部材を互いに離間する方向に付勢するスプリング73(「付勢部材」に該当する)が介装されている。
【0068】
感圧部材62は、スプリング73により前方に付勢されており、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)を感知して前後に進退する。すなわち、感圧部材62は、差圧(Pd−Ps)が予め設定された開弁差圧Pdsよりも小さいときには弁体61を閉弁方向に付勢する。一方、差圧(Pd−Ps)が開弁差圧Pds以上のときには、図示のように開弁方向に変位する。ただし、感圧部材62が弁座形成リング68に着座して係止されることにより、その開弁方向への変位は規制される。
【0069】
一方、感圧部材63は、スプリング73により後方に付勢されており、クランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)を感知して前後に進退する。すなわち、感圧部材63は、差圧(Pc−Ps)が予め設定された閉弁差圧Pcs以上になると、スプリング73の付勢力に抗して閉弁方向に変位する。このとき、差圧(Pd−Ps)が開弁差圧Pds以上であって感圧部材62が図示の開弁位置にあっても、感圧部材63が感圧部材62に近接する方向へ変位する。その結果、作動ロッド70が感圧部材63に押されて感圧部材62に対して相対変位し、感圧部材62の先端開口部から突出しつつ弁体61を閉弁方向に押圧する。これにより、弁体61が弁座65に着座して弁部を閉じる。一方、差圧(Pc−Ps)が閉弁差圧Pcsより小さいときには、感圧部材63は、図示のように開弁方向に変位する。ただし、感圧部材63がバルブプレート103に係止されることにより、その開弁方向への変位は規制される。
【0070】
図5は、吐出弁の閉弁特性を表す説明図である。同図の横軸は吐出圧力Pdを表し、縦軸はクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)を表している。同図の実線は、感圧部材63の感圧による閉弁状態が実現される境界線を示しており、その実線部よりも上の領域にてその閉弁状態が実現される。
【0071】
すなわち、吐出圧力Pdが高まるほど、弁体61ひいては感圧部材63の閉弁方向への変位の抵抗が大きくなる。このため、吐出圧力Pdが高くなるほど弁体61は閉弁し難くなるが、圧縮機1の最小容量運転移行時には吐出圧力Pdが低くなるため、比較的小さな差圧(Pc−Ps)でも閉弁状態を実現することができる。
【0072】
次に、吐出弁の動作について説明する。
図6および図7は、吐出弁の動作を表す説明図である。図6は、圧縮機1の最小容量運転移行初期の状態を表している。図7は、その最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図4は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。図8は、本実施の形態における冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。同図において横軸はエンタルピを表し、縦軸は圧力を表している。
【0073】
上述のように、吐出弁7の開弁差圧Pds(例えば0.1Mpa)は、制御弁5の容量制御時に想定される設定差圧よりも小さく設定されている。このため、容量制御時においては、図4に示すように、感圧部材62が受ける差圧(Pd−Ps)による開弁方向の荷重がスプリング73による閉弁方向の付勢力に打ち勝って開弁方向に変位する。一方、容量制御時においてはクランク圧力Pcが安定しているために差圧(Pc−Ps)も小さく、感圧部材63も開弁方向へ変位している。さらに、弁体61の背圧は若干低くなるために、弁体61が弁座65から離間して開弁状態を保持する。この容量制御時にはその開弁状態が保持されるため、吐出弁7が凝縮器2側への冷媒の流れを阻害することはない。
【0074】
この場合、弁部がその前後差圧(Pdh−Pdl)ではなく、差圧(Pd−Ps)により開弁状態となるため、吐出弁7の前後で圧力損失が生じることがない。このため、図8に示すように、吐出室53の圧力Pdhと圧縮機1の出口の圧力Phlとの間に圧力降下はなく、圧縮機1における圧縮エネルギーの無駄な消費がなくなる。
【0075】
最小容量運転移行初期においては、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧が開弁差圧Pdsよりも低下するまでに所定時間を要する。一方、制御弁5は全開状態となる。このため、圧縮機1の出口側から逆流した冷媒が制御弁5の弁部を介してクランク室54へ急激に流れ込もうとする。しかし、このようにしてクランク圧力Pcが急上昇を開始したときには、差圧(Pc−Ps)が大きくなって閉弁差圧Pcs以上となるため、図6に示すように、感圧部材63がスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ変位する。この結果、作動ロッド70が感圧部材62から突出して弁体61を閉弁方向へ押圧する。その結果、弁体61が弁座65へ着座して閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0076】
このようにして冷媒通路57が閉じられることにより、最小容量運転移行後は圧縮機1の出口側からの逆流が防止されるとともに吐出圧力Pdも低下し、さらに冷媒が圧縮機1を内部循環することにより差圧(Pc−Ps)も小さくなる。その結果、図7に示すように、感圧部材63は開弁方向に退避する。しかし、差圧(Pd−Ps)が小さくなって開弁差圧Pdsを下回ることにより、逆に感圧部材62が閉弁方向に変位して弁体61を押圧するため、弁体61の閉弁状態が保持される。
【0077】
以上に説明したように、本実施の形態の圧縮機1においては、内部に吐出弁7を組み込んだことにより、最小容量運転移行初期においてクランク室54内の不要な圧力上昇を抑制することができ、また、最小容量運転移行後は吐出冷媒の逆流を防止することができる。吐出弁7は、圧縮機1の吐出室53の圧力Pdhと出口圧力Phlとの差圧(前後差圧)で開弁する逆止弁とは異なり、差圧(Pd−Ps)により開弁状態を保持するため、吐出弁7の前後で圧力損失を生じさせず、圧縮エネルギーの無駄な消費を抑制できる。
【0078】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、吐出弁の構成が異なる以外は第1の実施の形態とほぼ同様である。このため、第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図9は、第2の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【0079】
吐出弁207は、第1の実施の形態と同様に圧縮機1に組み込まれる。吐出弁207は、冷媒通路57に配設された弁体61と、冷媒通路58および冷媒通路59をまたぐように配設された感圧部材262(「第2感圧部材」に該当する)と、冷媒通路59に配設された感圧部材63とを備える。
【0080】
感圧部材262は、その後端側(図の左側)が拡径され、その拡径部210の内方に感圧部材63を摺動可能に収容している。拡径部210の周囲には、所定深さおよび幅を有する一対のラビリンス212が並設されている。拡径部210には、その内外を連通させる連通孔213が設けられており、吸入圧力Psがその連通孔213を介して内部に導入される。拡径部210の後端開口部にはリング状のストッパ部材214が加締め接合されており、拡径部210における感圧部材63の開弁方向の相対変位を規制している。拡径部210とバルブプレート103との間には、感圧部材262を閉弁方向に付勢するスプリング220が介装されている。
【0081】
感圧部材262は、スプリング220により前方に付勢されており、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)を開弁方向の差圧として感知し、さらにクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)を閉弁方向の差圧として部分的に感知する。つまり、感圧部材262には、低圧側圧力として差圧(Pc−Ps)が作用するが、その大きさは差圧(Pd−Ps)に比べて無視できるほど小さく、感圧部材262には、実質的に差圧(Pd−Ps)が差圧として作用する。
【0082】
図10および図11は、吐出弁の動作を表す説明図である。図10は、最小容量運転移行初期の状態を表している。図11は、最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図9は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。
【0083】
容量制御時においては、差圧(Pd−Ps)による開弁方向の荷重が大きいため、図9に示すように、感圧部材262はスプリング220による閉弁方向の付勢力に抗して開弁方向に変位する。これに伴い、弁体61が弁座65から離間して開弁状態を保持する。この容量制御時にはその開弁状態が保持されるため、吐出弁7が凝縮器2側への冷媒の流れを阻害することはない。
【0084】
最小容量運転移行初期においては、差圧(Pc−Ps)が大きくなって閉弁差圧Pcs以上となるため、図10に示すように、感圧部材63がスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ変位する。その結果、作動ロッド70が感圧部材62から突出して弁体61を閉弁方向へ押圧し、閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0085】
このようにして冷媒通路57が閉じられることにより、最小容量運転移行後は圧縮機1の出口側からの逆流が防止されるとともに吐出圧力Pdも低下し、さらに差圧(Pc−Ps)も小さくなる。その結果、図11に示すように、感圧部材63は開弁方向に変位するが、差圧(Pd−Ps)が開弁差圧Pdsを下回ることにより、感圧部材262が閉弁方向に変位して弁体61を押圧するため、弁体61の閉弁状態が保持される。
【0086】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、吐出弁の構成が異なる以外は第1の実施の形態とほぼ同様である。このため、第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図12は、第3の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【0087】
吐出弁307は、第1の実施の形態と同様に圧縮機1に組み込まれる。吐出弁307は、冷媒通路57に配設された弁体361と、冷媒通路58に配設された感圧部材62と、冷媒通路59に配設された感圧部材363(「第2感圧部材」に該当する)とを備える。
【0088】
弁体361は、第1の実施の形態の弁体61とほぼ同様の構成を有するが、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔371が設けられている。一方、感圧部材363は、金属板をプレス成形して構成された有底筒状の本体を有し、その底部中央から後方にボス状に突出した挿通部372を有する。感圧部材363は、ガイド孔71に沿って軸線方向に摺動する。作動ロッド70は、その一端部が感圧部材363の挿通部372に圧入され、他端部が弁体361の挿通孔371に圧入されている。したがって、弁体361、作動ロッド70および感圧部材363は互いに固定されて弁体ユニットを構成し、一体に動作する。感圧部材363の底部とバルブプレート103との間には、その弁体ユニットを閉弁方向に付勢するスプリング320が介装されている。
【0089】
図13および図14は、吐出弁の動作を表す説明図である。図13は、最小容量運転移行初期の状態を表している。図14は、最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図12は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。
【0090】
容量制御時においては、差圧(Pd−Ps)による開弁方向の荷重が大きいため、図12に示すように、感圧部材62はスプリング73による閉弁方向の付勢力に抗して開弁方向に変位する。これに伴い、弁体361が弁座65から離間して開弁状態を保持する。
【0091】
最小容量運転移行初期においては、差圧(Pc−Ps)が大きくなって閉弁差圧Pcs以上となるため、図13に示すように、感圧部材363がスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ変位する。その結果、一体化された弁体361が閉弁方向へ変位し、閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0092】
最小容量運転移行後は、圧縮機1の出口側からの逆流が防止されるとともに吐出圧力Pdも低下する。その結果、図14に示すように、差圧(Pd−Ps)が開弁差圧Pdsを下回ることにより、感圧部材62が閉弁方向に変位して弁体361を押圧するため、弁体361の閉弁状態が保持される。このとき、差圧(Pc−Ps)が小さくなるが、感圧部材363は弁体361と一体であるため、その閉弁状態の位置を保持する。
【0093】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、吐出弁の構成が異なる以外は第1の実施の形態とほぼ同様である。このため、第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図15は、第4の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【0094】
吐出弁407は、第1の実施の形態と同様に圧縮機1に組み込まれる。吐出弁407は、有底円筒状のボディ410を有し、そのボディ410内に感圧部材462(「第1感圧部材」に該当する)および感圧部材463(「第2感圧部材」に該当する)を摺動可能に収容している。冷媒通路57には、ボディ410内に進退可能に弁体61が配設されている。ボディ410の側部中央には内外を連通させる連通孔412が設けられており、その連通孔412を介して吸入圧力Psが導入される。冷媒通路58および冷媒通路59は、それぞれの一部がボディ410の内部により形成される。ボディ410の底部中央には、内外を連通させる連通孔414が設けられており、連通孔105および414を介してクランク圧力Pcが導入される。
【0095】
感圧部材462は、感圧部材463と実質的に等しい(やや大きい)外径を有し、ボディ410の開口部側で摺動する。すなわち、ボディ410は、連通孔412よりも開口部側(図の右側)でその内径がやや拡径しており、その基端部にテーパ面を有する。感圧部材462は、その後端側外周縁がこのテーパ面に着脱可能となっており、その開弁方向への変位が規制されている。また、感圧部材462がテーパ面に着座することにより、感圧部材462とボディ410との間隙が閉じられるようになっている。感圧部材462の先端面の中央部には所定深さの凹部からなる収容部471が形成され、弁体61を底部側から収容可能に構成されている。弁体61は、この収容部471に摺動しつつ、軸線方向(つまり弁部の開閉方向)に安定に動作できる。
【0096】
感圧部材463は、有底筒状の本体を有し、その底部中央に挿通孔472が設けられている。この挿通孔472には、作動ロッド470の一端が挿通されている。作動ロッド470は、その一端が加締められて感圧部材463に固定され、他端部が感圧部材462の挿通孔69を貫通して弁体61側に延出している。作動ロッド470の他端は拡径され、その拡径部474の基端部がテーパ面となっている。この拡径部474は、そのテーパ面にて感圧部材462の中央開口端縁に形成されたテーパ状の弁座475に着脱可能となっている。したがって、収容部471には弁体61が収容可能になってはいるものの、拡径部474の長さ分の空間は形成される。拡径部474は、スプリング73による感圧部材462と感圧部材463との離間方向への相対変位を係止する係止部としても機能する。作動ロッド470は、その拡径部474の先端面にて弁体61に接離可能となっている。感圧部材463とバルブプレート103との間には、感圧部材463を閉弁方向に付勢するスプリング476が介装されている。
【0097】
以上の構成において、感圧部材462の有効受圧面積Aと感圧部材463の有効受圧面積Bとがほぼ等しくなっている。このため、感圧部材462と感圧部材463が互いに離間して作動ロッド470に係止されて一体に動作するときには、両感圧部材に作用する吸入圧力Psがキャンセルされる。その結果、感圧部材462は、その一体化した状態においては吐出圧力Pdとクランク圧力Pcとの差圧(Pd−Pc)によって開弁方向の力を受ける。すなわち、吐出弁407は、差圧(Pd−Pc)が所定の開弁差圧Pdcとなったときに開弁する。言い換えれば、吐出弁407は、差圧(Pd−Pc)が開弁差圧Pdcより小さいときには閉弁方向に動作する。この開弁差圧Pdcは、制御弁5の容量制御時に想定される設定差圧よりも小さく設定されている。このため、容量制御時にはその開弁状態が保持されるため、吐出弁407が凝縮器2側への冷媒の流れを阻害することはない。なお、通常の容量制御時には、クランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧は小さい。このため、開弁差圧Pdcとして、第1の実施の形態の開弁差圧Pdsに近似した値を設定することも可能である。
【0098】
図16および図17は、吐出弁の動作を表す説明図である。図16は、最小容量運転移行初期の状態を表している。図17は、最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図15は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。
【0099】
容量制御時においては、差圧(Pd−Pc)による開弁方向の荷重が大きく、一方、差圧(Pc−Ps)による閉弁方向の荷重は小さい。このため、図15に示すように、感圧部材462は、作動ロッド470を介して感圧部材463と一体となり、開弁方向に変位する。その際、感圧部材462が開弁方向に変位しても、ボディ410のテーパ面によって係止されることで感圧部材463への近接動作が規制される。このため、その一体化状態は保持される。この感圧部材462の変位に伴い、弁体61が弁座65から離間して開弁状態を保持する。
【0100】
最小容量運転移行初期においては、差圧(Pc−Ps)が大きくなって閉弁差圧Pcs以上となるため、図16に示すように、感圧部材463がスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ変位する。その結果、作動ロッド470が閉弁方向へ変位して弁体61を押圧し、閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0101】
最小容量運転移行後は、圧縮機1の出口側からの逆流が防止されるとともに吐出圧力Pdも低下する。その結果、図17に示すように、差圧(Pd−Pc)が開弁差圧Pdcを下回ることにより、感圧部材462が閉弁方向に変位して作動ロッド470を介して弁体61を押圧するため、閉弁状態が保持される。このとき、差圧(Pc−Ps)が小さくなるが、感圧部材463は作動ロッド470と一体であるため、その閉弁状態の位置を保持する。
【0102】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、吐出弁の構成が異なる以外は第4の実施の形態とほぼ同様である。このため、第4の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図18は、第5の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【0103】
吐出弁507は、第4の実施の形態と同様に圧縮機1に組み込まれる。吐出弁507は、筒状のボディ510内にピストン562(「第1感圧部材」に該当する)および感圧部材563(「第2感圧部材」に該当する)を摺動可能に配置して構成されている。ボディ510は、有底円筒状の第1ボディ511と段付円筒状の第2ボディ512とをその軸線方向に連設して構成されている。第2ボディ512の後端部には外方にやや延出したフランジ部513が設けられており、このフランジ部513を第1ボディ511の先端開口部に突き当てた状態で第1ボディ511の線端縁を内方に加締めることにより、両ボディが接合されている。第1ボディ511と第2ボディ512との間には、ポリイミドフィルムまたは金属薄板からなる可撓性を有するダイヤフラム521が介装され、ボディ510内を仕切るように配置されている。ボディ510の外周面とリアハウジング104の各冷媒通路の内周面との間には、図示のようにシール用のOリング531,532,533が配設されている。
【0104】
第1ボディ511の底部中央には、クランク圧力Pcを内部へ導入するための連通孔414が形成されている。また、第1ボディ511の内部には、ダイヤフラム521の一方の面に接合されたばね受け部材522が摺動可能に配置されている。ダイヤフラム521の他方の面には、収容部471を構成する有底筒状の収容部材523が配置されている。ばね受け部材522と収容部材523とは、その間にダイヤフラム521を挟むようにして互いに加締め接合されている。これら、ダイヤフラム521、ばね受け部材522および収容部材523によりピストン562が構成されている。
【0105】
感圧部材563は、第1ボディ511内に摺動可能に配置され、その底部中央に設けられた挿通孔472に作動ロッド470の一端を圧入している。作動ロッド470は、ばね受け部材522に形成された挿通孔69を貫通し、その先端に形成された拡径部474にて弁体61に接離する。作動ロッド470の基端部は、ばね受け部材522の中央開口端縁に形成されたテーパ状の弁座475に着脱可能となっている。ばね受け部材522と感圧部材563との間には、ダイヤフラム521を閉弁方向に付勢するスプリング73が介装されている。
【0106】
第2ボディ512は、その前半部の内径がやや小径化してガイド部525を形成し、そのガイド部525の基端部により弁座65が形成されている。第2ボディ512の底部および側部には、吐出室53と圧縮機1の出口とを連通させる連通孔526,527がそれぞれ形成されている。第2ボディ512の内部には、弁体61が摺動可能に配設されている。また、弁体61と第2ボディ512の底部との間には、弁体61を開弁方向に付勢するスプリング540(「付勢部材」に該当する)が介装されている。スプリング540は、スプリング73よりも小さなばね定数およびばね荷重を有する。
【0107】
以上の構成において、ばね受け部材522の有効受圧面積Cと感圧部材563の有効受圧面積Dとは実質的に等しく構成されている。このため、ピストン562と感圧部材563が互いに離間して作動ロッド470に係止されて一体に動作するときには、両部材に作用する吸入圧力Psがキャンセルされる。その結果、ピストン562は、その一体化した状態においては吐出圧力Pdとクランク圧力Pcとの差圧(Pd−Pc)によって開弁方向の力を受ける。すなわち、吐出弁507は、差圧(Pd−Pc)が所定の開弁差圧Pdcとなったときに開弁する。
【0108】
図19および図20は、吐出弁の動作を表す説明図である。図19は、最小容量運転移行初期の状態を表している。図20は、最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図18は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。
【0109】
容量制御時においては、差圧(Pd−Pc)による開弁方向の荷重が大きく、一方、差圧(Pc−Ps)による閉弁方向の荷重は小さい。このため、図18に示すように、ピストン562は、作動ロッド470を介して感圧部材563と一体となり、開弁方向に変位する。その際、ピストン562が開弁方向に変位しても、第1ボディ511のテーパ面によって係止されることで感圧部材563への近接動作が規制される。このため、その一体化状態は保持される。このピストン562の変位に伴い、弁体61が弁座65から離間して開弁状態を保持する。
【0110】
最小容量運転移行初期においては、差圧(Pc−Ps)が大きくなって閉弁差圧Pcs以上となるため、図19に示すように、感圧部材563がスプリング73の付勢力に抗して閉弁方向へ変位する。その結果、作動ロッド470が閉弁方向へ変位して弁体61を押圧し、閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0111】
最小容量運転移行後は、圧縮機1の出口側からの逆流が防止されるとともに吐出圧力Pdも低下する。その結果、図20に示すように、差圧(Pd−Pc)が開弁差圧Pdcを下回ることにより、ピストン562が閉弁方向に変位して作動ロッド470を介して弁体61を押圧するため、閉弁状態が保持される。このとき、差圧(Pc−Ps)が小さくなるが、感圧部材563は作動ロッド470と一体であるため、その閉弁状態の位置を保持する。
【0112】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、吐出弁の構成が若干異なる以外は第5の実施の形態とほぼ同様である。このため、第5の実施の形態とほぼ同様の構成部分については必要に応じて同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図21は、第6の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【0113】
吐出弁607は、第5の実施の形態と同様に圧縮機1に組み込まれる。吐出弁607の弁体661は、その底部中央に閉弁時においても吐出室53と圧縮機1の出口とを連通可能な連通孔662が形成されている。一方、弁体661と第2ボディ512の底部との間には、第5の実施の形態で示したスプリング540は設けられていない。弁体661の連通孔662は、作動ロッド470が弁体661に当接したときに閉じられるが、弁体661の背圧が小さいときなど、仮に作動ロッド470が弁体661から離間した場合には、吐出室53と圧縮機1の出口とを連通させて冷媒の流れを許容する。
【0114】
図22および図23は、吐出弁の動作を表す説明図である。図22は、最小容量運転移行初期の状態を表している。図23は、最小容量運転移行後の状態を表している。なお、既に説明した図21は、圧縮機1の定常的な容量制御時の状態を表している。
【0115】
容量制御時においては、差圧(Pd−Pc)が開弁差圧Pdcよりも大きく、図21に示すように、ピストン562が開弁方向に変位する。これに伴い、弁体661が弁座65から離間して開弁状態を保持する。
【0116】
最小容量運転移行初期においては、差圧(Pc−Ps)が閉弁差圧Pcs以上となるため、図22に示すように感圧部材563が閉弁方向へ変位する。その結果、作動ロッド470が閉弁方向へ変位して弁体661を押圧し、閉弁状態となる。これにより、クランク室54への冷媒の導入量が絞られ、クランク室54内の不要な圧力上昇が抑制される。
【0117】
最小容量運転移行後は、図23に示すように、差圧(Pd−Pc)が開弁差圧Pdcを下回ることにより、ピストン562が閉弁方向に変位して作動ロッド470を介して弁体61を押圧するため、閉弁状態が保持される。
【0118】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0119】
各実施の形態では、吐出弁を、差圧(Pd−Ps)が所定の開弁差圧Pds以上となったとき、あるいは差圧(Pd−Pc)が所定の開弁差圧Pdc以上となったときに自律的に開弁し、差圧(Pc−Ps)が所定の閉弁差圧Pcs以上となったときに自律的に閉弁
する機械式の差圧感知弁として構成した例を示した。変形例においては、ソレノイド駆動の電磁弁として構成してもよい。その場合には、その開弁差圧を適宜設定変更することができ、より幅広い制御を行うことができる。
【0120】
各実施の形態では、膨張装置3としていわゆる温度式膨張弁を採用した例を示したが、例えば固定オリフィスを有するオリフィスチューブを採用することもできる。
【0121】
各実施の形態の可変容量圧縮機は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにおいて凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0122】
各実施の形態および各変形例では、可変容量圧縮機の容量制御を行う制御弁をいわゆるPd−Ps差圧弁として構成した例を示したが、吐出圧力Pdとクランク圧力Pcとの差圧が設定差圧に近づくように吐出容量を制御するいわゆるPd−Pc差圧弁として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1の実施の形態に係る冷凍サイクルを表すシステム構成図である。
【図2】圧縮機の構成を表す断面図である。
【図3】制御弁の構成を示す断面図である。
【図4】吐出弁の構成を示す断面図である。
【図5】吐出弁の閉弁特性を表す説明図である。
【図6】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図7】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図8】本実施の形態における冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。
【図9】第2の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【図10】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図11】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図12】第3の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【図13】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図14】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図15】第4の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【図16】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図17】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図18】第5の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【図19】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図20】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図21】第6の実施の形態に係る吐出弁の構成を示す断面図である。
【図22】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図23】吐出弁の動作を表す説明図である。
【図24】従来の空調装置における冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図である。
【図25】差圧と負荷トルクとの関係の一例を表すグラフである。
【符号の説明】
【0124】
1 圧縮機、 2 凝縮器、 3 膨張装置、 4 蒸発器、 5 制御弁、 6 制御部、 7 吐出弁、 8 弁本体、 9 ソレノイド、 10 ボディ、 15 弁孔、 16 弁座、 18 弁体、 51 吸入室、 52 シリンダ、 53 吐出室、 54 クランク室、 56 オリフィス、 57 冷媒通路、 58 冷媒通路、 59 冷媒通路、 61 弁体、 62 感圧部材、 63 感圧部材、 65 弁座、 70 作動ロッド、 73 スプリング、 101 シリンダブロック、 102 フロントハウジング、 103 バルブプレート、 104 リアハウジング、 105 連通孔、 111 揺動板、 112 ピストン、 115 リップシール、 121 吸入用リリーフ弁、 122 吐出用リリーフ弁、 207 吐出弁、 210 拡径部、 262 感圧部材、 307 吐出弁、 361 弁体、 363 感圧部材、 407 吐出弁、 410 ボディ、 462 感圧部材、 463 感圧部材、 470 作動ロッド、 475 弁座、 507 吐出弁、 510 ボディ、 521 ダイヤフラム、 562 ピストン、 563 感圧部材、 607 吐出弁、 661 弁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の冷凍サイクルにおいて、
吸入室から吸入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機と、
前記可変容量圧縮機から吐出された冷媒を冷却する外部熱交換器と、
前記外部熱交換器から送出された冷媒を減圧する膨張装置と、
前記膨張装置にて減圧された冷媒を蒸発させるとともに前記可変容量圧縮機に向けて送出する蒸発器と、
前記吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、前記吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が供給される電流値により設定される第1の差圧に近づくように前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量を調整して、前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
所定の外部情報に基づいて前記第1の差圧を決定し、その第1の差圧に基づいて前記制御弁への通電制御を行う制御部と、
前記可変容量圧縮機の吐出室と前記外部熱交換器との間の冷媒通路に弁部が設けられるとともに、前記吸入圧力および前記クランク圧力のいずれか一方と前記吐出圧力との差圧が前記第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して前記冷媒通路を開放する一方、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して前記冷媒通路を閉じる吐出弁と、
を備えたことを特徴とする冷凍サイクル。
【請求項2】
空調装置の冷凍サイクルを構成し、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、
前記吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、前記吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が設定された第1の差圧に近づくように前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量を調整して、当該可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
前記吐出室と当該可変容量圧縮機の出口とをつなぐ冷媒通路に弁部が設けられるとともに、前記吸入圧力および前記クランク圧力のいずれか一方と前記吐出圧力との差圧が前記第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して前記冷媒通路を開放する一方、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して前記冷媒通路を閉じる吐出弁と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項3】
前記制御弁が、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧が外部からの供給電流により設定された前記第1の差圧に近づくように前記冷媒流量を制御する電磁弁からなり、
前記吐出弁は、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第1の差圧よりも小さい前記第2の差圧以上になったときに自律的に開弁し、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第3の差圧以上になったときに、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧にかかわらず自律的に閉弁することを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機。
【請求項4】
前記吐出弁は、
前記吐出室と前記出口とをつなぐ第1冷媒通路に形成された弁座に着脱して前記第1冷媒通路を開閉する弁体と、
前記吐出室と前記吸入室とをつなぐ第2冷媒通路に配設され、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧を感知して進退し、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第2の差圧よりも小さいときに前記弁体を閉弁方向に付勢する第1感圧部材と、
前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ第3冷媒通路に配設され、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧を感知して進退し、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第3の差圧以上となったときに前記弁体を閉弁方向に付勢する第2感圧部材と、
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機。
【請求項5】
前記第1感圧部材を前記弁部の開閉方向に貫通可能な作動ロッドを備え、
前記第2感圧部材は、前記作動ロッドを介して前記弁体を付勢することを特徴とする請求項4に記載の可変容量圧縮機。
【請求項6】
前記第2感圧部材が、前記作動ロッドを介して前記弁体に一体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機。
【請求項7】
前記第1感圧部材と前記第2感圧部材との間に介装されて、両感圧部材を互いに離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記第1感圧部材と前記第2感圧部材との離間方向への相対変位を係止する係止部と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の可変容量圧縮機。
【請求項8】
前記係止部により前記第2冷媒通路に形成された間隙を開閉可能な他の弁部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機。
【請求項9】
前記第1感圧部材の有効受圧面積と前記第2感圧部材の有効受圧面積とが、実質的に等しくなるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機。
【請求項10】
前記吐出弁は、
前記第1感圧部材、前記第2感圧部材、および前記作動ロッドを内部に収容する筒状のボディと、
前記ボディ内に変位可能に設けられ、その一端側に前記弁体を支持可能なピストンと、
前記ピストンおよび前記ボディの双方に固定されて前記第2冷媒通路を気密に区画するとともに、前記第1感圧部材を構成するダイヤフラムと、
を備えていることを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機。
【請求項11】
前記付勢部材としての第1スプリングよりも小さなばね荷重を有し、前記弁体を開弁方向へ付勢する第2スプリングが設けられていることを特徴とする請求項10に記載の可変容量圧縮機。
【請求項12】
前記弁体には前記吐出室と前記出口とを連通可能な連通孔が貫通して設けられ、
前記作動ロッドが前記弁体に当接したときに、前記連通孔が閉じられるように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の可変容量圧縮機。
【請求項13】
空調装置の冷凍サイクルを構成し、蒸発器側から吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から外部熱交換器側へ吐出する可変容量圧縮機において、
前記吸入室の吸入圧力およびクランク室のクランク圧力のいずれか一方と、前記吐出室の吐出圧力との差圧に基づいて自律的に弁部を開閉し、その差圧が設定された第1の差圧に近づくように前記吐出室から前記クランク室に導入する冷媒流量を調整して、前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁と、
前記吐出室と当該可変容量圧縮機の出口とをつなぐ冷媒通路に弁部が設けられて、前記吐出圧力からなる開弁方向の高圧側圧力と、前記吸入圧力および前記クランク圧力の少なくとも一方からなる閉弁方向の低圧側圧力とを受圧し、その高圧側圧力と低圧側圧力との差圧が前記第1の差圧とは別の第2の差圧以上になったときに自律的に開弁して前記冷媒通路を開放する一方、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第2の差圧とは別の第3の差圧以上になったときに自律的に閉弁して前記冷媒通路を閉じる吐出弁と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機。
【請求項14】
前記吐出弁は、
前記吐出室と前記出口とをつなぐ第1冷媒通路に形成された弁座に着脱して前記第1冷媒通路を開閉する弁体と、
前記吐出室と前記吸入室とをつなぐ第2冷媒通路と、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ第3冷媒通路とをまたぐように配設され、前記高圧側圧力と前記低圧側圧力との差圧を感知して進退し、前記高圧側圧力と低圧側圧力との差圧が前記第2の差圧よりも小さいときに前記弁体を閉弁方向に付勢する第1感圧部材と、
前記第1感圧部材に収容されるように配設されて前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧を感知して進退し、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第3の差圧よりも小さい間は前記第1感圧部材と一体に動作する一方、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が前記第3の差圧以上となったときには、前記第1感圧部材と独立して前記弁体を閉弁方向に付勢する第2感圧部材と、
を備えていることを特徴とする請求項13に記載の可変容量圧縮機。
【請求項15】
吸入室に導入された冷媒を圧縮して吐出室から吐出するとともに、その吐出室からクランク室に導入する冷媒流量が調整されることにより吐出容量が変化する可変容量圧縮機に組み込まれ、前記可変容量圧縮機の出口と前記吐出室とをつなぐ冷媒通路を開閉して吐出冷媒の流れを制御する吐出弁において、
前記可変容量圧縮機に組み込まれる筒状のボディと、
前記吐出室と前記出口とをつなぐ第1冷媒通路に形成された弁座に着脱して前記第1冷媒通路を開閉する弁体と、
前記ボディに収容されるとともに、前記吐出室と前記吸入室とをつなぐ第2冷媒通路に配設され、前記吐出室の吐出圧力と前記吸入室の吸入圧力との差圧を感知して進退し、前記吐出圧力と前記吸入圧力との差圧が予め設定された開弁差圧以上のときに前記弁体を開弁方向に付勢する第1感圧部材と、
前記ボディに収容されるとともに、前記クランク室と前記吸入室とをつなぐ第3冷媒通路に配設され、前記クランク室のクランク圧力と前記吸入圧力との差圧を感知して進退し、前記クランク圧力と前記吸入圧力との差圧が予め設定された閉弁差圧以上となったときに前記弁体を閉弁方向に付勢する第2感圧部材と、
を備えたことを特徴とする吐出弁。
【請求項16】
前記ボディ内に変位可能に設けられ、その一端側に前記弁体を支持可能なピストンと、
前記ピストンおよび前記ボディの双方に固定されて前記第2冷媒通路を気密に区画するとともに、前記第1感圧部材を構成するダイヤフラムと、
を備えていることを特徴とする請求項15に記載の吐出弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−23610(P2009−23610A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191322(P2007−191322)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】