説明

冷却システム

【課題】車両の状態に応じてより適切に複数の電力変換回路を冷却する。
【解決手段】車両の状態に応じてモータMG1を駆動するインバータやモータMG2を駆動するインバータ,昇圧コンバータのいずれかを他に比して優先して冷却する必要があるか否かを判断し(S110〜S150)、この判断に基づいてモータMG1用のインバータを冷却する第1熱交換部の第1バルブ,モータMG2用のインバータを冷却する第2熱交換部の第2バルブ,昇圧コンバータを冷却する第3熱交換部の第3バルブの開閉状態を設定する(S160〜S190)。これにより、車両の状態に応じて発熱が予測される二つのインバータや昇圧コンバータのいずれかの温度上昇に先立ってその冷却に用いる熱交換部における冷却媒体の流量を大きくし、その温度上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関し、詳しくは、車載された走行用の電動機を駆動するために電力変換するインバータを含む複数の電力変換回路を冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却システムとしては、車両のアクセル開度から決定された交流モータの要求出力に基づいて電流指令を生成し、実際のモータ電流が電流指令と一致するようにインバータのスイッチング素子をスイッチングするインバータを冷却する冷却システムにおいて、アクセル開度に基づいてインバータに発生する損失を推定し、この推定した損失に基づいて冷却水の目標流量を設定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この冷却システムでは、上述のように冷却水の目標流量を設定して冷却水の循環ポンプを駆動制御することにより、インバータの熱的保護と冷却システムの省電力化とを両立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−253098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のモータを駆動するために複数のインバータを備える車両における冷却システムでは、アクセル開度に対して全てのモータを駆動するインバータに発生する損失が一様に変化するものではなく、加速時や減速時、高速巡航時などの走行状態によって各モータを駆動するインバータに発生する損失は異なるものとなるから、アクセル開度だけに基づいて冷却水の目標流量を設定することができない。また、複数のインバータに対してどのように冷却水の流路を設定するかによっても冷却水の目標流量は異なるものとなる。
【0005】
本発明の冷却システムは、車両の状態に応じてより適切に複数の電力変換回路を冷却することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷却システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の冷却システムは、
車載された走行用の電動機を駆動するために電力変換するインバータを含む複数の電力変換回路を冷却する冷却システムであって、
冷却媒体の循環流路において並列に配置され、前記複数の電力変換回路の各々を冷却媒体との熱交換により冷却する複数の熱交換部と、
前記複数の熱交換部の各々の冷却媒体の流量を調節する複数の流量調節弁と、
車両の状態と前記複数の流量調節弁の開閉状態との関係を予め定めて弁開閉状態設定用関係として記憶する関係記憶手段と、
車両の状態に対して前記関係記憶手段に記憶された前記弁開閉状態設定用関係を適用して得られる前記複数の流量調節弁の開閉状態となるよう前記複数の流量調節弁を開閉制御する弁開閉制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の冷却システムでは、複数の電力変換回路の各々を冷却媒体との熱交換により冷却する複数の熱交換部を冷却媒体の循環流路において並列に配置し、複数の熱交換部の各々の冷却媒体の流量を調節する複数の流量調節弁を設ける。そして、車両の状態と複数の流量調節弁の開閉状態との関係を予め定めて弁開閉状態設定用関係として記憶しておき、車両の状態に対して記憶しておいた弁開閉状態設定用関係を適用して得られる複数の流量調節弁の開閉状態となるよう複数の流量調節弁を開閉制御する。これにより、車両の状態に応じて複数の流量調節弁をより適切な開閉状態とすることができる。この結果、車両の状態に応じてより適切に複数の電力変換回路を冷却することができる。
【0009】
こうした本発明の冷却システムにおいて、前記車両は、内燃機関と、発電機としても駆動可能な第1の電動機と、前記第1の電動機を駆動するための第1のインバータと、前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸とに3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を出力する発電機としても駆動可能な第2の電動機と、前記第2の電動機を駆動するための第2のインバータと、バッテリと、前記バッテリの電力を昇圧して前記第1のインバータおよび第2のインバータに供給する昇圧コンバータと、を備え、前記複数の電力変換回路は前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータであり、前記弁開閉状態設定用関係は、車両の状態が前記内燃機関を始動するためにクランキングするクランキング時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第2のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第1のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が高車速で巡航している高速巡航時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第2のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第1のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が低車速で加速している低車速加速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が中車速以上で加速している中高車速加速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が減速している減速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となる関係である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としての冷却システムを搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】熱交換部64の概略の構成を模式的に示す模式的構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるバルブ開閉制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての冷却システムを搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという。)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、バッテリ50と、バッテリ50からの電力を昇圧してインバータ41,42に供給したりモータMG1,MG2を回生制御することによって得られる電力を降圧してバッテリ50を充電する昇圧コンバータ46と、昇圧コンバータ46の図示しないスイッチング素子やインバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという。)40と、インバータ41,42,昇圧コンバータ46を冷却する冷却システム60と、シフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションやアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジション,車速センサ88からの車速を入力すると共にエンジンECU24やモータECU40と通信して車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0013】
冷却システム60は、水などの冷却媒体を循環させる循環流路61と、循環流路61に冷却媒体を循環させるためのポンプ62と、循環流路61に組み込まれて外気により冷却媒体を冷却する熱交換器63と、循環流路61に組み込まれインバータ41,42および昇圧コンバータ46の基盤に取り付けられて伝熱により冷却媒体によってインバータ41,42および昇圧コンバータ46を冷却する熱交換部64と、を備える。熱交換部64は、図2に示すように、循環流路61から冷却媒体を流入する流入流路65と、インバータ41を冷却するための第1熱交換部66aと、インバータ42を冷却するための第2熱交換部66bと、昇圧コンバータ46を冷却するための第3熱交換部66cと、第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cに通流する冷却媒体の流量を調節する3つの電磁流量調節弁としての第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cと、これら第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cから流出した冷却媒体を循環流路61に送り出す流出流路68と、から構成されている。冷却システム60のポンプ62や第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cは、信号ラインによってハイブリッド用電子制御ユニット70に接続されており、ハイブリッド用電子制御ユニット70による駆動制御を受けている。
【0014】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
【0015】
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比で除して得られる回転数や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPr*を計算すると共に計算した走行用パワーPr*からバッテリ50の残容量(SOC)に基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0016】
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0017】
次に、実施例のハイブリッド自動車20に搭載された冷却システム60の動作について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるバルブ開閉制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0018】
バルブ開閉制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、車両の状態を入力する(ステップS100)。ここで、車両の状態としては、シフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPやアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジションBP,車速センサ88からの車速V,図示しない加速度演算ルーチンにより車速Vから演算される加速度α,モータECU40から通信により入力するモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,エンジンECU24から通信により入力するエンジン22の回転数Ne,図示しない駆動制御ルーチンからの要求トルクTr*,要求パワーPe*,エンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,エンジン22の始動指示,停止指示などが該当する。
【0019】
続いて、入力した車両の状態が、エンジン22を始動するためにクランキングしているクランキング時であるか否か(ステップS110)、比較的高車速で巡航している高速巡航時であるか否か(ステップS120)、比較低車速で加速している低速加速時であるか否か(ステップS130)、中車速や高車速で加速している中高速加速時であるか否か(ステップS140)、減速している減速時であるか否か(ステップS150)、を判定する。クランキング時であるか否かについては、エンジン22の始動指示がなされいる状態でモータMG1によりトルク出力しているか否かにより判定することができる。高速巡航時であるか否かについては、車速Vが高速であると判定するために予め定められた高速判定用車速(例えば、80km/hや90km/hなど)以上の状態で加速度αが値0を含んで比較的小さな範囲として予め設定された巡航判定用加速度範囲以内であるか否か、これに加えてアクセル開度Accの変化やブレーキポジションBPの変化が値0を含んで比較的小さな変化量として予め定められた巡航判定用変化量以下であるか否か、により判定することができる。低速加速時であるか否かについては、車速Vが低車速であると判定するために予め定められた低車速判定用車速(例えば、20km/hや30km/hなど)以下の状態でアクセル開度Accが加速時であると判定するために予め定められた加速時判定用開度(例えば、40%や50%など)以上であるか否か、或いは、車速Vが低車速判定用車速以下の状態で加速度αが加速時であると判定するために予め定められた加速時判定用加速度であるか否かにより判定することができる。中高速加速時であるか否かについては、車速Vが低車速判定用車速より大きい状態でアクセル開度Accが加速時判定用開度以上であるか否か、或いは、車速Vが低車速判定用車速より大きい状態で加速度αが加速時判定用加速度であるか否かにより判定することができる。減速時であるか否かについては、車速Vが値0でない状態でブレーキポジションBPが減速時であると判定するために予め定められた減速時判定用ポジション以上であるか否か、或いは、車速Vが値0でない状態で加速度αが減速時であると判定するために予め定められた減速時判定用加速度以下であるか否かにより判定することができる。
【0020】
車両の状態がクランキング時であると判定されたときには、モータMG1の回転数Nm1は小さいがモータMG1のトルク指令Tm1*には大きな値が設定されるためにモータMG1を駆動するインバータ41に発熱が生じることが予想され、インバータ41をインバータ42や昇圧コンバータ46に優先して冷却すべきと判断し、インバータ41を冷却するための第1熱交換部66aにおける冷却媒体の流量を大きくするために第1バルブ67aを開状態とすると共に第2バルブ67bおよび第3バルブ67cを閉状態として(ステップS160)、本ルーチンを終了する。こうしたバルブ操作により、インバータ41の温度上昇に先立ってインバータ41を冷却する第1熱交換部66aにおける冷却媒体の流量を迅速に大きくすることができるから、インバータ41の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0021】
車両の状態が高速巡航時であると判定されたときには、モータMG1のトルク指令Tm1*には小さな値が設定されるがモータMG1の回転数Nm1が大きいためにモータMG1を駆動するインバータ41に発熱が生じることが予想され、インバータ41をインバータ42や昇圧コンバータ46に優先して冷却すべきと判断し、インバータ41を冷却するための第1熱交換部66aにおける冷却媒体の流量を大きくするために第1バルブ67aを開状態とすると共に第2バルブ67bおよび第3バルブ67cを閉状態として(ステップS160)、本ルーチンを終了する。こうしたバルブ操作により、インバータ41の温度上昇に先立ってインバータ41を冷却する第1熱交換部66aにおける冷却媒体の流量を大きくすることができるから、インバータ41の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0022】
車両の状態が低速加速時であると判定されたときには、モータMG2の回転数Nm2は小さいがモータMG2のトルク指令Tm2*には大きな値が設定されるためにモータMG2を駆動するインバータ42に発熱が生じることが予想され、インバータ42をインバータ41や昇圧コンバータ46に優先して冷却すべきと判断し、インバータ42を冷却するための第2熱交換部66bにおける冷却媒体の流量を大きくするために第2バルブ67bを開状態とすると共に第1バルブ67aおよび第3バルブ67cを閉状態として(ステップS170)、本ルーチンを終了する。こうしたバルブ操作により、インバータ42の温度上昇に先立ってインバータ42を冷却する第2熱交換部66bにおける冷却媒体の流量を大きくすることができるから、インバータ42の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0023】
車両の状態が中高速加速時であると判定されたときには、バッテリ50から出力される電流IBが大きくなるために昇圧コンバータ46に発熱が生じることが予想され、昇圧コンバータ46をインバータ41,42に優先して冷却すべきと判断し、昇圧コンバータ46を冷却するための第3熱交換部66cにおける冷却媒体の流量を大きくするために第3バルブ67cを開状態とすると共に第1バルブ67aおよび第2バルブ67bを閉状態として(ステップS180)、本ルーチンを終了する。こうしたバルブ操作により、昇圧コンバータ46の温度上昇に先立って昇圧コンバータ46を冷却する第3熱交換部66cにおける冷却媒体の流量を大きくすることができるから、昇圧コンバータ46の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0024】
車両の状態が減速時であると判定されたときには、バッテリ50を充電する電流IBが大きくなるために昇圧コンバータ46に発熱が生じることが予想され、昇圧コンバータ46をインバータ41,42に優先して冷却すべきと判断し、昇圧コンバータ46を冷却するための第3熱交換部66cにおける冷却媒体の流量を大きくするために第3バルブ67cを開状態とすると共に第1バルブ67aおよび第2バルブ67bを閉状態として(ステップS180)、本ルーチンを終了する。こうしたバルブ操作により、昇圧コンバータ46の温度上昇に先立って昇圧コンバータ46を冷却する第3熱交換部66cにおける冷却媒体の流量を大きくすることができるから、昇圧コンバータ46の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0025】
車両の状態がクランキング時や高速巡航時,低速加速時,中高速加速時,減速時のいずれでもないとき、即ち、低車速や中車速での巡航時あるいは停車時には、インバータ41,42や昇圧コンバータ46のいずれかを他に比して優先して冷却する必要はないと判断し、第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cに冷却媒体が通流するように第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cの全てを開状態として(ステップS190)、本ルーチンを終了する。
【0026】
以上説明した実施例の冷却システムによれば、車両の状態に応じてインバータ41,42や昇圧コンバータ46のいずれかを他に比して優先して冷却する必要があるか否かを判断し、この判断に基づいて第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cの開閉状態を決定して操作することにより、インバータ41,42や昇圧コンバータ46の温度上昇に先立ってインバータ41,42や昇圧コンバータ46を冷却する第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cにおける冷却媒体の流量を大きくすることができる。したがって、インバータ41,42や昇圧コンバータ46の温度上昇を検出してからバルブ操作するものに比して、インバータ41,42や昇圧コンバータ46の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0027】
実施例の冷却システムでは、車両の状態に応じてインバータ41,42や昇圧コンバータ46のいずれかを他に比して優先して冷却する必要があると判断したときには、優先して冷却する必要があると判定された熱交換部に取り付けられたバルブを開状態とすると共に他のバルブを閉状態としたが、優先して冷却する必要があると判定された熱交換部への冷却媒体の流量を他の熱交換部への流量より大きくすればよいから、優先して冷却する必要があると判定された熱交換部に取り付けられたバルブを全開状態とすると共に他のバルブを1/3の開度や1/4の開度あるいは1/5の開度の状態とするものとしてもよい。
【0028】
実施例の冷却システムでは、第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cの流出側に第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cを取り付けるものとしたが、第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cの流入側に第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cを取り付けるものとしてもよい。
【0029】
実施例の冷却システムでは、エンジン22と、モータMG1と、エンジン22のクランクシャフト26とモータMG1の回転軸と駆動軸36と3つの回転要素であるキャリアとサンギヤとリングギヤとが接続されたプラネタリギヤ30と、駆動軸36に取り付けられたモータMG2と、バッテリ50と、バッテリ50の電力を昇圧してモータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42に供給する昇圧コンバータ46と、を備えるハイブリッド自動車20に搭載するものとしたが、インバータや昇圧コンバータなどの電力変換回路を複数搭載する車両であれば、如何なる構成の車両に搭載されるものとしてもよい。この場合、車両の状態から搭載したインバータや昇圧コンバータなどの複数の電力変換回路の発熱状態を想定し、発熱が生じると予測される電力変換回路の冷却が優先して行なわれるよう熱交換部のバルブ操作を行なえばよい。
【0030】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、インバータ41,42と昇圧コンバータ46とが「複数の電力変換回路」に相当し、第1熱交換部66a,第2熱交換部66b,第3熱交換部66cが「複数の熱交換部」に相当し、第1バルブ67a,第2バルブ67b,第3バルブ67cが「複数の流量調節弁」に相当し、図3のバルブ開閉制御ルーチンを記憶するハイブリッド用電子制御ユニット70が「関係記憶手段」に相当し、図3のバルブ開閉制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「弁開閉制御手段」に相当する。
【0031】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0032】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車載用の冷却システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、46 昇圧コンバータ、50 バッテリ、60 冷却システム、61 循環流路、62 ポンプ、63 熱交換器、64 熱交換部、65 流入流路、66a 第1熱交換部、66b 第2熱交換部、66c 第3熱交換部、67a 第1バルブ、67b 第2バルブ、67c 第3バルブ、68 流出流路、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載された走行用の電動機を駆動するために電力変換するインバータを含む複数の電力変換回路を冷却する冷却システムであって、
冷却媒体の循環流路において並列に配置され、前記複数の電力変換回路の各々を冷却媒体との熱交換により冷却する複数の熱交換部と、
前記複数の熱交換部の各々の冷却媒体の流量を調節する複数の流量調節弁と、
車両の状態と前記複数の流量調節弁の開閉状態との関係を予め定めて弁開閉状態設定用関係として記憶する関係記憶手段と、
車両の状態に対して前記関係記憶手段に記憶された前記弁開閉状態設定用関係を適用して得られる前記複数の流量調節弁の開閉状態となるよう前記複数の流量調節弁を開閉制御する弁開閉制御手段と、
を備える冷却システム。
【請求項2】
請求項1記載の冷却システムであって、
前記車両は、内燃機関と、発電機としても駆動可能な第1の電動機と、前記第1の電動機を駆動するための第1のインバータと、前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸とに3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を出力する発電機としても駆動可能な第2の電動機と、前記第2の電動機を駆動するための第2のインバータと、バッテリと、前記バッテリの電力を昇圧して前記第1のインバータおよび第2のインバータに供給する昇圧コンバータと、を備え、
前記複数の電力変換回路は、前記第1のインバータと前記第2のインバータと前記昇圧コンバータであり、
前記弁開閉状態設定用関係は、車両の状態が前記内燃機関を始動するためにクランキングするクランキング時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第2のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第1のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が高車速で巡航している高速巡航時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第2のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第1のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が低車速で加速している低車速加速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が中車速以上で加速している中高車速加速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となり、車両の状態が減速している減速時であるときには前記複数の流量調節弁は前記第1のインバータと前記第2のインバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が小さくなり且つ前記昇圧コンバータを冷却する熱交換部への冷却媒体の流量が大きくなる開閉状態となる関係である、
冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−165588(P2012−165588A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24842(P2011−24842)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】