説明

冷却機構、処理室、処理室内部品及び冷却方法

【課題】真空気化冷却に必要な熱媒体を削減し、高効率に被冷却部材を冷却することができる冷却機構及び冷却方法を提供する。
【解決手段】被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却機構6に、前記被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室60と、減圧室60の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部64と、噴霧部64から噴霧された熱媒体を減圧室60の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生用電源68と、減圧室60の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧以下になるように、減圧室60を排気する排気部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却部材の温度を目標温度に冷却し維持するよう制御する冷却機構及び冷却方法、並びに該冷却機構を構成する処理室及び処理室内部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置には、しばしば被処理体としての半導体ウエハにエッチングなどの処理を施すためにプラズマを用いるが、このプラズマにより、半導体ウエハや処理室内壁面が不必要に加熱され高温になることがある。また、半導体ウエハを処理する際に高温にすることが必要な半導体製造装置も使用されるが、このような装置であっても、処理後には搬送など他の処理のために冷却する必要がある。それゆえ、半導体製造装置は、半導体ウエハ、処理室壁面、高温部材等を冷却する冷却機構を備える。冷却機構は、例えば、半導体ウエハが載置される載置台の内部に形成された流路に冷却用の液体(以下、熱媒体という)を循環させることによって冷却を行っている(例えば、特許文献1,2)。熱媒体を循環させる冷却方式を強制対流伝熱方式という。
【0003】
ところが、強制対流伝熱方式の冷却では、流路伝熱特性に一定の限界があるため、半導体ウエハ等の均一な冷却が困難であり、温度制御の応答性も悪いという問題があった。もちろん、熱媒体と冷却部との間の熱交換量を大きくすべく、流路内にフィン等を設けて流路伝熱特性を上昇させることも考えられるが、流路伝熱特性と、圧力損失とは相反する関係にあるため、流路伝熱特性を上昇させると、流路の圧力損失が大きくなり、熱媒体を送出するポンプの消費エネルギーが増大するという問題が発生する。逆に、省エネを図るべく、圧力損失を低減させると、熱媒体の入側及び出側の温度差が大きくなり、流路伝熱特性が低下して、半導体ウエハの均一な冷却が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−44176号公報
【特許文献2】特開平7−235588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題を解決すべく、本願発明者は、載置台に形成された減圧室の内面(内部側壁面、内部天面、内部底面)のうち、冷却を行いたい部分に液相の熱媒体を吹き付け、該内面において熱媒体の相変化が誘起されるように減圧室内の圧力を制御することにより、従来の冷却方法に比べて、半導体ウエハの均一な冷却、高伝熱、高応答性、省エネルギー化を実現することができる冷却機構を考案している。このような熱媒体の相変化を利用した冷却方式を、相変化伝熱方式又は真空気化冷却方式という。
【0006】
ところが、実験を試みたところ、単純に低圧の減圧室の内面に熱媒体を吹き付ける構成では、積極的に熱媒体を減圧室の内面に誘導する機構が存在しないため偶発的に内面に付着するに任せるしか無く、それゆえ液相の熱媒体が内面に付着し難く、理論上必要とされる熱媒体の量より多量の熱媒体を減圧室内に供給する必要があるという新たな問題に直面した。
また、熱媒体の量を増加させれば、減圧室の内面に液相の熱媒体を付着させることは可能であるが、減圧室内に供給された多量の熱媒体を十分に真空引きできない状態に陥った場合、減圧室の内面に付着した熱媒体が相変化を起こしにくくなり、効果的に載置台を冷却することができなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室内に噴霧された熱媒体を、電界によって該減圧室の内面に引き込むことによって、真空気化冷却に必要な熱媒体量を削減し、高効率に被冷却部材を冷却することができる冷却機構及び冷却方法、並びに該冷却機構を構成する処理室及び処理室内部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷却機構は、被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却機構において、前記被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室と、該減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と、前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧以下になるように、前記減圧室を排気する排気部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る冷却機構は、前記噴霧部は、前記熱媒体を前記減圧室に噴霧するためのノズルを有し、該ノズルと、前記熱媒体との摩擦によって該熱媒体を帯電させるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る冷却機構は、前記噴霧部に電圧を印加する電圧印加部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る冷却機構は、前記減圧室は、前記被冷却部材の内部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る冷却機構は、前記減圧室は、前記被冷却部材の外部に配されており、前記減圧室及び被冷却部材は接触していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る冷却機構は、前記被冷却部材は、基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る冷却機構は、前記被冷却部材は、基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室内に配されている処理室内部品であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る冷却機構は、前記処理室内部品は、前記処理室内に基板を載置するための載置台であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る冷却機構は、被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却機構において、前記被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室と、該減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と、前記被冷却部材の温度を検出する被冷却部材温度検出部と、該被冷却部材温度検出部にて検出された温度が目標温度になるように、前記減圧室を排気する排気部とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る処理室は、基板に所定の処理を行うための処理室において、壁内に形成された減圧室と、該減圧室の内面に目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る処理室内部品は、基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室内に配されるべき処理室内部品において、内部に形成された減圧室と、該減圧室の内面に目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る冷却方法は、被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室を用いて、該被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却方法において、前記減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧するステップと、噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させるステップと、前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧以下になるように、前記減圧室を排気するステップとを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る冷却方法は、前記減圧室を排気するステップにおいて、前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧と等しくなるように、前記減圧室を排気することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る冷却方法は、被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室を用いて、該被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却方法において、前記減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧するステップと、噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させるステップと、前記被冷却部材の温度を検出するステップと、検出された温度が目標温度になるように、前記減圧室を排気するステップとを有することを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、被冷却部材に対して冷却用の減圧室が熱的に接続されている。減圧室の内面、即ち被冷却面には目標温度以下の液相の熱媒体が噴霧される。噴霧された熱媒体は、電界発生部で発生した電界によって減圧室の内面に引き付けられ、付着する。排気部は、減圧室の内圧が目標温度における熱媒体の飽和蒸気圧以下又は該飽和蒸気圧と等しくなるように、減圧室を排気する。このため、減圧室の内面に付着する前の熱媒体は液相であり、内面に付着した熱媒体は目標温度超に上昇するため、気相に相変化する。
従って、被冷却部材を、熱媒体の潜熱によって冷却することが可能になる。また、クーロン力によって、熱媒体を効果的に減圧室の内面に付着させることが可能である。よって、単に熱媒体を吹き付ける構成に比べて、真空気化冷却に必要な熱媒体を削減することが可能である。更に、単に熱媒体を吹き付ける構成に比べて、余分な熱媒体を噴霧する必要が無いため、減圧室を十分に減圧することができ、効果的に被冷却部材を冷却することが可能である。更に、熱媒体の送出量を削減することができるため、熱媒体を送出するポンプの消費エネルギーも削減することが可能である。
なお、本発明に係る冷却方法は、液相の熱媒体を噴霧するステップと、電界を発生させるステップと、減圧室を排気するステップとで構成されるが、各ステップは任意の手順で実行すれば良く、略同時的に実行しても良い。
【0023】
本発明にあっては、噴霧部のノズルと、熱媒体との摩擦によって、熱媒体を帯電させる。噴霧され、帯電した熱媒体の粒子は、クーロン力によって互いに反発し合うため、微細な粒子状のまま減圧室の内面に引き付けられ、付着する。つまり、噴霧された熱媒体が帯電していない場合、熱媒体の粒子が表面張力によって集合してしまい、減圧室の内面に到達しにくくなるが、熱媒体が帯電していると、熱媒体粒子の集合を防ぐことができる。従って、効果的に熱媒体を減圧室の内面に付着させることが可能である。
【0024】
本発明にあっては、電圧印加部によって、噴霧部に電圧を印加することにより、熱媒体を帯電させることが可能である。熱媒体を帯電させることによって得られる作用は上述の通りである。
【0025】
本発明にあっては、減圧室は被冷却部材の内部に形成されている。従って、被冷却部材を効果的に冷却することが可能である。また、冷却機構を小型化することが可能である。
【0026】
本発明にあっては、減圧室は被冷却部材の外部に配されており、減圧室と被冷却部材とが接触することによって、熱的に接続されている。従って、減圧室を内部に形成することが難しい被冷却部材を冷却することが可能である。
【0027】
本発明にあっては、基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室を冷却する。
【0028】
本発明にあっては、基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室内に配された処理室内部品を冷却する。
【0029】
本発明にあっては、基板処理装置の処理室内に基板を載置する載置台を冷却する。
【0030】
本発明にあっては、被冷却部材の温度を被冷却部材温度検出部にて検出し、排気部は、検出された温度が目標温度以下になるように、減圧室を排気する。
なお、本発明に係る冷却方法は、液相の熱媒体を噴霧するステップと、電界を発生させるステップと、温度を検出するステップと、減圧室を排気するステップとで構成されるが、各ステップは任意の手順で実行すれば良く、略同時的に実行しても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室内に噴霧された熱媒体を、電界によって該減圧室の内面に引き込むことによって、真空気化冷却に必要な熱媒体を削減し、高効率に被冷却部材を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成を示す模式図である。
【図2】排気部及び冷水製造器の構成を示す模式図である。
【図3】冷却に係る制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】真空気化冷却条件を概念的に示す状態図である。
【図5】変形例1に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。
【図6】変形例2に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。
【図7】変形例3に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。
【図8】変形例4に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る冷却機構6を有する半導体製造装置の一構成を示す模式図である。本実施の形態に係る半導体製造装置は、例えば、平行平板型のプラズマエッチング装置である。なお、平行平板型のプラズマエッチング装置は、プラズマ処理装置の一例であり、これに限定されるものでは無い。半導体製造装置は、中空円筒状の処理室1を備える。処理室1は、例えばアルミニウム製であり、接地されている。
【0034】
処理室1の底面略中央部には、半導体ウエハWを載置すると共に、下部電極として機能する円盤状の載置台2が円盤状絶縁体21を介して設けられている。載置台2は、例えばアルミニウム製であり、減圧室60を内部に有する。減圧室60は、被冷却部材である載置台2を目標温度に冷却する冷却機構6の各構成部に接続されており、冷却機構6の一部を構成している。冷却機構6によって載置台2を冷却することにより、載置台2上に載置された半導体ウエハWがプロセス温度に冷却される。また、載置台2には、バイアス電圧を発生させるための高周波を印加する高周波電源4が接続されている。ここで、目標温度とは、被冷却部材である載置台2の制御の目標となる温度であり、理想的には半導体ウエハWについて制御されるべきプロセス温度と一致するが、載置台2と半導体ウエハWとの熱抵抗などを考慮した場合、プロセス温度よりも低く設定してもよい。
【0035】
また、処理室1の天面略中央部には、載置台2と対向するように上部電極3が設けられている。処理室1と上部電極3との間には、環状絶縁体14が介装されている。上部電極3にはプラズマ発生用の高周波電源5が接続されている。また、上部電極3は中空状に形成されており、載置台2に対向する面に図示しない複数のプロセスガス供給孔を備えたガスシャワーヘッドを構成している。上部電極3の上面中央には、上部電極3へプロセスガスを供給するプロセスガス供給管31が設けられており、上部電極3はガスシャワーヘッドとしての機能により処理室1内にプロセスガスを供給する。
【0036】
更に、排気機構として、例えば、処理室1の底面寄り側面部分には、排気管12が接続されており、排気管12の下流に設けられた図示しない真空ポンプによって、処理室1内を真空排気するように構成されている。なお、排気機構は、処理室1の底部から排気する構造としてもよい。
更にまた、処理室1の側面には、半導体ウエハWの搬送口11が形成されており、搬送口11はゲートバルブ13によって開閉可能に構成されている。
【0037】
載置台2に形成された減圧室60は、円形の底面部、周面部及び円形の天面部を有する円柱状である。底面部は、減圧室60内部の気体及び水を排出する排出口を適宜箇所に形成している。
【0038】
冷却機構6は、各構成部の動作を制御する制御部61を備える。制御部61は、例えばCPUを備えたマイクロコンピュータであり、CPUには、制御部61の動作に必要なコンピュータプログラムや、半導体製造プロセスに必要なプロセス温度等の各種情報を記憶した記憶部、各種情報及び制御信号を入出力するための入出力部等が接続されている。
【0039】
また、冷却機構6は、被冷却部材である載置台2の冷却に必要な、温度制御器62、噴霧部64、排気部65、冷水製造器651、水供給ポンプ66、流量制御弁67及び電界発生用電源68を備える。排気部65としては、以下の実施形態においてはエゼクタ真空ポンプを使用した例について主に説明するが、後述の通り水を分離するセパレータとロータリーポンプとを組み合わせてもよく、また同等の機能を持つものであれば他の排気装置であってもよい。
【0040】
温度制御器62は、後述の冷水製造器651から供給された冷水の温度を、制御部61からの制御信号に従って噴霧温度に制御し、温度制御された水を、配管63aを通じて、噴霧部64へ供給する。ここで、噴霧温度は、噴霧されミスト状となった水が凍結する温度よりは高く、且つ、減圧室の内面に到達するまでに蒸発する温度よりは低くなければならない。ミスト状となった水が蒸発する下限温度は、即ち前記の目標温度であるので、言い換えれば、噴霧温度は、凍結温度よりは高く、目標温度以下とする必要がある。なお、被冷却部材である載置台の内壁はミストが気化する際の気化熱により冷却されるので、冷却の効果はミスト自身の温度には依存しない。
【0041】
噴霧部64は、減圧室60の周面部に設けられており、配管63aを通じて温度制御器62に接続されている。噴霧部64は、温度制御器62から供給された噴霧温度の液相の水(熱媒体)を減圧室60の内面、例えば天面部に噴霧するためのミストノズル(ノズル)64aを有し、ミストノズル64aと、水との摩擦によって該熱媒体を帯電させるようにしてある。例えば、ミストノズル64aをステンレス又は樹脂等で形成することによって、噴霧される水を帯電させることが可能である。帯電する電荷の大きさ及び極性は、ミストノズル64aを形成する材質と水とが帯電列においてどのような位置関係にあるかに依存し、帯電列における位置が離れているほど大きな電荷量で帯電し、また、水がミストノズルの材質よりも帯電列上負側に位置すれば負に帯電し、正側に位置すれば正に帯電する。また、ミストノズルと水との摩擦により水だけでなくミストノズルにも電荷が発生するので、ミストノズルが帯電し続けることを防ぐために、噴霧部64は接地されている。
【0042】
電界発生用電源(電界発生部)68は、噴霧部64から噴霧された水を減圧室60の内面、例えば天面部に付着させるための電界を発生させる直流電源である。例えば、減圧室60の天側には、非接地状態にある線状又はシート状の導電性部材(電界発生部)68aが設けられており、該導電性部材68aに電圧を印加することによって、減圧室60の内部から天面部へ向かう電界、又は減圧室60の天面部から内部へ向かう電界を発生させることができる。導電性部材68aの設置の仕方としては、減圧室60の天側に導電性部材68aを設置してこれを減圧室60の天井部とし、天井部と、その他の部分とを絶縁し、減圧室60の天井部に電圧を印加するように構成しても良い。その際、導電性部材68aと載置台2とが直流電流が導通しないよう、導電性部材68aが設置される減圧室60の天側の内面は絶縁被膜等の絶縁部材68bで直流的に絶縁しておく必要がある。また、導電性部材68aが噴霧された水に対して露出されることを避けたい場合には、導電性部材68aの減圧室60に向いた面を誘電体から成る被膜等で覆い、更に減圧室60の内部の底側などにこれと対となる接地電極を設けるようにして電界を発生させるようにしても良い。この場合、接地電極を誘電材料で挟んだ構造とし、噴霧された水にも露出せず載置台2とも直流的に絶縁が保てるようにするのがよい。
電界は、噴霧部64から噴霧された水が減圧室60の天面部に引き付けられるように発生させる。水が正に帯電している場合、減圧室60の内部の静電ポテンシャルの方が天面部の静電ポテンシャルよりも高くなるような電界を発生させ、水が負に帯電している場合、減圧室60の内部の静電ポテンシャルの方が天面部の静電ポテンシャルよりも低くなるような電界を発生させれば良い。
【0043】
図2は、排気部65及び冷水製造器651の構成を示す模式図である。排気部65は、一般に液体を気化させて蒸気とし、蒸気を高速で噴出する際に生じる吸引力によって内部を排気すべき容器内に存在する気体を吸引し排気するもので、本願におけるエゼクタ真空ポンプの場合においては液体として水を利用する。エゼクタ真空ポンプとしての排気部65は、配管63dを通じて供給された水を貯留する貯水槽65dと、配管65g,65iを通じて貯水槽65dの水を圧送する圧送ポンプ65hと、圧送された水から水蒸気を生成する真空容器65jと、真空容器65jから配管65kを通じて供給された水蒸気を噴射するエゼクタノズル65bと、エゼクタノズル65bが配された吸込み室65aと、ディフューザ65cとを接続して構成され、吸込み室65aは配管63bと連通している。特に貯水槽65dには、載置台2の減圧室60から排出された水蒸気を凝縮するための凝縮器65eが設けられている。また、貯水槽65dの適宜箇所には、オーバーフロー管65fが設けられている。
【0044】
このように構成された排気部65は、貯水槽65dの水を圧送ポンプ65hでエゼクタノズル65bへ供給し、ディフューザ65c及び貯水槽65dを経て循環させることによって、吸込み室65aで真空吸引力を得るものである。排気部65は、該真空吸引力によって、減圧室60から、該減圧室60内の気体及び減圧室60内に残留する液体の温調媒体、即ち水を排出させる。より詳細には、排気部65は、載置台2の冷却を行う場合、気化した水蒸気のみならず、気化しなかった液体の水も減圧室60内から排出させる。また、排気部65は、載置台2の加熱を行う場合、水蒸気だけではなく、凝縮した液体の水も減圧室60内から排出させる。
【0045】
冷水製造器651は、吸込み室65aと連通した冷水貯留槽651aと、貯水槽65dから冷水貯留槽651aへ水を供給するための配管651fと、配管651fに設けられたフロート弁651gと、配管651bを通じて冷水貯留槽651aの水を圧送する冷水製造用圧送ポンプ651cと、圧送された水を冷却する冷凍室651dと、冷水貯留槽651a内に配された蒸発器651eとを備える。蒸発器651eから噴射された水の一部は水蒸気として蒸発し、蒸発の際、該蒸発に必要な潜熱を残りの水から奪うことによって、該水を冷却する。
冷水貯留槽651aは、配管63cと連通しており、配管63cを通じて、冷水貯留槽651aから温度制御器62へ冷水が送出されるように構成されている。
【0046】
水供給ポンプ66は、配管63cに介設されている。水供給ポンプ66は、例えばダイアフラム式のポンプであり、制御部61からの制御信号に従って駆動し、冷水製造器651で冷却された水を温度制御器62へ送出する。
【0047】
流量制御弁67は、水供給ポンプ66よりも温度制御器62側の配管63cに介設されている。流量制御弁67は、制御部61からの制御信号に従って、水供給ポンプ66から送出された水の流量を制御し、流量制御された水を温度制御器62へ送出する。
【0048】
冷却機構6は、更に被冷却部材温度検出部69a、圧力検出部69b、及び流量検出部69c、水温検出部69dを備える。被冷却部材温度検出部69aは、例えば被冷却部材である載置台2の適宜箇所に埋没した熱電対温度計であり、載置台2の温度を検出し、検出した温度の情報を制御部61へ出力する。圧力検出部69bは、配管63bに接続されており、減圧室60内部の圧力を検出し、検出した圧力の情報を制御部61へ出力する。流量検出部69cは、配管63cを流れる水の流量を検出し、検出した流量の情報を制御部61へ出力する。水温検出部69dは、配管63cを流れ温度制御器62によって温度制御されノズルにより噴出される水の温度を検出し、検出した水温の情報を制御部61へ出力する。制御部61は、入出力部を介して載置台温度、圧力、流量、水温の情報を取り込み、取り込んだ情報に基づいて冷却に係る処理を実行し、排気部65、水供給ポンプ66及び流量制御弁67の動作を制御する制御信号を各部へ出力する。なお、半導体ウエハWは、載置台2上に熱伝達効率よく載置され、載置台2を介して温度制御が行われることになる。
【0049】
図3は、冷却に係る制御部61の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、理想的な場合として、目標温度がプロセス温度に等しいとする。制御部61は、排気部65及び水供給ポンプ66等を駆動させる。また、電界発生用電源68によって減圧室60内にミスト引き込み用の電界を発生させておく(ステップS11)。そして、制御部61は、図示しない記憶部から、温度制御の目的である半導体製造プロセスに必要なプロセス温度を読み出す(ステップS12)。次いで、制御部61は、被冷却部材温度検出部69aにて、載置台2の温度を検出する(ステップS13)。
【0050】
そして、制御部61は、プロセス温度を目標温度とし、被冷却部材温度検出部69aにて検出した載置台2の温度がプロセス温度超であるか否かを判定する(ステップS14)。以下、被冷却部材温度検出部69aにて検出した載置台2(被冷却部材)の温度を検出温度という。検出温度がプロセス温度以下である場合(ステップS14:NO)、すなわち目標温度以下である場合には、載置台2をこれ以上冷却する必要が無いので、制御部61は、流量制御弁67を閉状態に制御する(ステップS15)。
【0051】
検出温度がプロセス温度超であると判定した場合(ステップS14:YES)、制御部61は、天面部へ噴射されるべき水の設定水温及び設定流量を決定し(ステップS16)、減圧室60内の設定圧力を決定する(ステップS17)。ここで、設定水温、設定流量及び設定圧力について説明する。
【0052】
図4は、真空気化冷却条件を概念的に示す状態図である。横軸は温度、縦軸は圧力である。グラフ中の曲線は、水の飽和蒸気圧Psv(T)を示している。Psv(T)は温度Tの関数である。検出温度がプロセス温度T1超である場合、載置台2の温度を下げる必要があるため、制御部61は、プロセス温度T1よりも低い温度領域にあるハッチングで示した温度圧力範囲内で、プロセス温度T1(=目標温度)以下で設定される設定温度に対応した設定圧力を決定する。設定温度はプロセス温度T1と等しく設定してもよいが、載置台が目標温度(=プロセス温度T1)に収束するのを早めるためにプロセス温度T1よりも少し低めに設定してもよい。ノズルから噴出される水の設定水温は、前述の噴霧温度に制御されている。このとき、設定水温(=噴霧温度)は、噴出された水が途中で完全に蒸発してしまわないよう、上記の設定圧力を飽和蒸気圧とした時の水の温度、即ち、設定水温よりも低くしなければならない。ただし、低くし過ぎると凍ってしまうため、凍結しない温度とする必要がある。ノズルから噴出された水は目的とする減圧室60内の天面部に到達後、天面部により温度が上昇し、設定水温よりも高いため気化する。気化の際、気化熱として天面部から熱を奪い、天面部の温度を下げる。こうして天面部がプロセス温度T1まで冷却されるまで、噴霧から気化の一連の流れが繰り返される。なお、載置台2が目標温度に達すればそれよりも更に冷却する必要は無いため、理想的には減圧室60内の圧力をプロセス温度における飽和蒸気圧よりも低く設定する必要は無いが、現実的には、半導体ウエハWと、温度制御される載置台2との間の熱伝達において熱抵抗が存在し温度勾配が発生することも考えられるため、目標温度をプロセス温度よりも低く設定し、設定圧力をプロセス温度における飽和蒸気圧よりも低く、目標温度における飽和蒸気圧に等しい圧力に設定することがあってもよい。また、フィードバックを用いた温度制御においては目標とする温度の近辺を振動しながら目標温度に収束していくこともあることから、設定圧力が目標温度における飽和蒸気圧よりも低くなることがあっても良い。水の流量については、天面部に噴射された水の気化によって、減圧室60内の圧力が上記温度圧力範囲から外れないように決定すれば良い。つまり、真空ポンプで排気可能な水蒸気量より少ない水が噴射されるように設定流量を決定すれば良い。
具体的には、制御部61は、プロセス温度(=設定温度)と、設定水温と、設定流量と、設定圧力とを対応付けたテーブルを予め記憶しておき、ステップS12で読み出したプロセス温度と、前記テーブルとに基づいて、設定水温、設定流量及び設定圧力を決定すれば良い。
【0053】
ステップS17の処理を終えた制御部61は、設定流量に基づいて、流量制御弁67の開度を制御し、流量を設定流量になるように制御する(ステップS18)。
【0054】
次いで、制御部61は、水の温度を該設定水温(=噴霧温度)に一致させるべく、設定水温に基づいて、水温検出部69dにより水温を検出しながら温度制御器62の動作をフィードバック制御し、水温を設定水温になるように制御する(ステップS19)。そして、制御部61は、減圧室60内の圧力を設定圧力に一致させるべく、設定圧力に基づいて、圧力検出部69bにより圧力を検出しながら排気部65の動作をフィードバック制御し、圧力が設定圧力になるように制御する(ステップS20)。ステップS18の制御、ステップS19及びステップS20のフィードバック制御によって設定流量、設定水温、設定圧力に到達した後は、この設定流量、設定水温、設定圧力により載置台2をプロセス温度まで冷却し、必要に応じ冷却処理を定常状態として、半導体ウエハWに半導体製造プロセスを施している間プロセス温度を維持し続ける。冷却が進み、載置台2の温度が目標温度よりも下がろうとした時は、設定圧力においては目標温度以下の水は蒸発しないため、それ以上冷却が進まず過冷却となることは無い。
【0055】
所定のプロセス条件における半導体ウエハWへの半導体製造プロセス、例えばエッチングプロセスなどのプラズマ処理が終了し、これに伴い冷却に係るステップS20又はステップS15の処理を終えた場合、制御部61は、他のプロセス温度により半導体製造プロセスを行う次プロセスへ移行するか否かを判定する(ステップS21)。次プロセスへ移行すると判定した場合(ステップS21:YES)、制御部61は、処理をステップS12へ戻し、新たなプロセス温度を取得して上記の冷却処理を繰り返す。
【0056】
次プロセスへ移行しないと判定した場合(ステップS21:NO)、制御部61は、プラズマ処理を終了するか否かを判定する(ステップS22)。同一のプロセス条件により他の新たな半導体ウエハWの処理を続ける場合など、プラズマ処理を終了しないと判定した場合(ステップS22:NO)、制御部61は、処理をステップS13へ戻す。プラズマ処理を終了すると判定した場合(ステップS22:YES)、制御部61は、冷却に係る処理を終了する。なお、上記において処理をステップS13へ戻す際、載置台2の温度が変化していないことが明らかで改めて設定水温、設定流量、設定圧力を決める必要が無い時は、ステップS13ではなくステップS18に処理を戻してもよい。
【0057】
実施の形態に係る冷却機構6及び冷却方法、並びに冷却機構6を構成する載置台2にあっては、減圧室60の天面部に吹き付けた水を低温で蒸発させ蒸発潜熱で載置台2を冷却するので、従来の冷却方法に比べて、半導体ウエハWの均一な冷却及び高応答性を実現することができる。
【0058】
また、減圧室60内に噴霧された水を電界によって効率的に天面部に引き込むことができ、真空気化冷却に必要な水を削減し、高効率に載置台2を冷却することができる。真空気化冷却に必要な水量を削減することによって、省エネルギー化を図ることができる。
【0059】
更に、電界を用いず単に熱媒体を吹き付ける構成に比べて、余分な水を噴霧する必要が無いため、減圧室60を十分に減圧することができ、効果的に載置台2を冷却することが可能である。
【0060】
更にまた、噴霧部64から噴霧される水は、ミストノズル64aとの摩擦によって帯電するため、霧状の水粒子は、クーロン力によって互いに反発し合う。このため、噴霧された水は、微細な粒子状のまま減圧室60の天面部に引き付けられ、付着する。従って、効果的に水を減圧室60の内面に付着させ、載置台2を冷却することができる。
【0061】
更にまた、載置台2の内部に減圧室60を構成しているため、載置台2を効率的に冷却することができ、また冷却機構6の省スペース化を図ることができる。
【0062】
なお、実施の形態では、載置台2の内部に減圧室60を設ける例を説明したが、処理室1の内部に配されるべき他の処理室内部品に減圧室を設け、本実施の形態に係る冷却機構を構成しても良い。処理室の壁内に減圧室を設ける例は後述する。
【0063】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る冷却機構106を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。変形例1に係る半導体製造装置及び冷却機構106は、実施の形態と同様の構成であり、更に、噴霧部64に電圧を印加する電圧印加部164bを備える。電圧印加部164bは、噴霧部64から噴霧される水を帯電させるための直流電源である。電界発生用電源68によって、減圧室60の内部から天面部に向かう電界が発生している場合、噴霧部64に正電位を印加し、減圧室60の天面から内部に向かう電界が発生している場合、噴霧部64に負電位を印加する。
【0064】
変形例1にあっては、噴霧部64に電圧を印加することによって、噴霧部64から噴霧される水を効果的に帯電させ、水を減圧室60の天面部に引き込み、付着させることができる。
【0065】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る冷却機構206を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。変形例2に係る半導体製造装置及び冷却機構206は、実施の形態と同様の構成であり、処理室(被冷却部材)201の壁内部にも減圧室260及び噴霧部264を設け、該処理室201の内壁の所望の場所を冷却するように構成してある点が実施の形態と異なる。冷却する処理室201の内壁の所望の場所は、内壁の一部であってもよいし、全部であってもよい。以下では、主に上記相異点について説明する。
【0066】
変形例2に係る半導体製造装置の処理室201は、該処理室201を冷却するための減圧室260を壁内部に有する。なお、作図の便宜上、処理室201に一部に減圧室260が形成されているが、あくまで一例であり、処理室201の全周に亘って減圧室260を設けても良いし、天側の一部、その他の部分に減圧室260を設けても良い。即ち、処理室201の内壁のうち冷却が必要とされる箇所に対応する部分に減圧室260を設ければよい。また、減圧室260は必ずしも処理室201の壁の内部に納まる必要は無く、外部に向って突出する構造となっていても良い。減圧室260の底部には、減圧室260内部の気体及び水を排出する排出口を適宜箇所に形成しており、該排出口には配管263bを通じて排気部65に接続されている。
【0067】
噴霧部264は、減圧室260の外周側に設けられており、配管63aを通じて温度制御器62に接続されている。噴霧部264は、ミストノズル264aを有しており、具体的構成は実施の形態と同様である。
【0068】
電界発生用電源268は、噴霧部264から噴霧された水を減圧室260の内面、例えば、内周側の面に付着させるための電界を発生させる直流電源である。減圧室260の内周側の壁内には、非接地状態にある線状又はシート状の導電性部材268cが設けられており、該導電性部材268cに電圧を印加することによって、高い電位から低い電位に向う方向を電界の向きとして、減圧室260の外周側から内周側へ向かう電界、又は減圧室260の内周側から外周側へ向かう電界を発生させることができる。導電性部材268cと載置台2とが直流電流が導通しないよう、導電性部材268cが設置される減圧室260の壁内には絶縁被膜等の絶縁部材268dが設けられている。
また、電界発生用電源268は、実施の形態と同様、導電性部材268a及び絶縁性部材268bを備え、減圧室60の天面部へ熱媒体である水を引き込む電界を発生させる。
【0069】
変形例2にあっては、処理室201の内壁の冷却が必要な箇所を冷却することができ、プラズマ処理により処理室壁が高温になることを防ぐことができるほか、高温により成膜を行うCVD用のガスの使用時であれば低温にすることにより処理室内面に堆積物が成長することを防ぐことができ、また、反応生成物が低温の部位に堆積しやすいエッチングプロセスにおいては、内壁に更に内壁との熱伝達よく取り外し可能な保護壁を設けることにより反応生成物を積極的に保護壁へ堆積させ他の箇所への堆積を抑制することができる。
変形例2においては、冷却する内壁部が天板であってもよい。一般に、サセプタや側壁などを冷却する場合には、目的とする場所以外が不要に冷却され冷却効率が下がるのを防ぐために、極力、ミストが減圧室底部に液体と成って溜まるのを防がなければならない。しかし天板を冷却する場合には冷却の目的とする場所がまさに減圧室の底部であるため、ミストを底部に向って吹き付けてもよく、重力によりミストが落下するに任せてもよい。
【0070】
(変形例3)
図7は、変形例3に係る冷却機構306を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。変形例3に係る冷却機構306は、被冷却部材としての載置台2及び処理室(被冷却部材)301を冷却するための第1及び第2減圧室360,370をその外部に有する。
【0071】
第1減圧室360は、中空円柱状をなし、処理室301の底面略中央部に固定され、天側には円盤状絶縁体21を介して載置台2が固定されている。第1減圧室360は、実施の形態で説明した減圧室60と同様の構成であり、第1減圧室360の周面部に第1噴霧部364が設けられている。また、第1減圧室360の天側には、第1絶縁部材368bで絶縁され、非接地状態にある第1導電性部材368aが設けられており、第1導電性部材368aには電界発生用電源368によって電圧が印加されている。更に、第1減圧室360の底面部には、第1減圧室360内部の気体及び水を排出する排出口が形成されており、該排出口から排出された気体及び水は、配管363bを通じて、排気部65に供給される。
【0072】
第2減圧室370は、変形例2に係る減圧室260を処理室301の外周側に設けたような構成であり、第2噴霧部371が設けられている。また、第2減圧室370の内周側の壁内には、第2絶縁部材368dで絶縁され、非接触状態にある第2導電性部材368cが設けられており、第2導電性部材368cには電界発生用電源368によって電圧が印加されている。更に、第2減圧室370の底面部には、第2減圧室370内部の気体及び水を排出する排出口が形成されており、該排出口から排出された気体及び水は、配管363bを通じて、排気部65に供給される。
【0073】
変形例3にあっては、実施の形態と同様の効果を奏する。
【0074】
(変形例4)
図8は、変形例4に係る冷却機構を有する半導体製造装置の一構成例を示す模式図である。上記の実施の形態においては排気部としてエゼクタポンプを用いた場合を説明したが、エゼクタポンプの代わりに、図8に示すようにロータリーポンプ465を使用しても良い。この場合、ロータリーポンプ465の上流側に、液体となった水を分離するセパレータ465aを設置する。セパレータ465aで分離された水は、一旦ドレインタンク465bにて貯水した後、水供給ポンプ66を通して再び噴霧ノズルへ循環させてもよいし、そのまま排出してもよい。あるいは、ドレインタンク465bを用いないで直接排出してもよい。水供給ポンプ66を通じて再循環させる場合にも、流量調整の必要が無いようであればドレインタンク465bを経由せず直接循環させてもよいが、ドレインタンク465bを用いれば必要以上の水を排出することができるというメリットがある。また、水供給ポンプ66へは、前記セパレータ465aからの水とは別に、配管63dを通じて不足分の水を供給してもよい。あるいは、セパレータ465aからの水の循環だけで十分にまかなえる時は、定常的には配管63dを通じて水を供給しなくてもよい。セパレータ465aの下流側に用いるポンプは、ロータリーポンプに限らず、大気から低真空度の圧力において使用できるポンプであればよい。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 処理室
2 載置台
3 上部電極
4,5 高周波電源
6 冷却機構
60、260 減圧室
360 第1減圧室
370 第2減圧室
61 制御部
62 温度制御器
64 噴霧部
64a ミストノズル
364 第1噴霧部
371 第2噴霧部
65 排気部
68 電界発生用電源(電界発生部)
68a 導電性部材(電界発生部)
368a 第1導電性部材
368c 第2導電性部材
164b 電圧印加部
69a 被冷却部材温度検出部
69b 圧力検出部
69c 流量検出部
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却機構において、
前記被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室と、
該減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、
該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と、
前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧以下になるように、前記減圧室を排気する排気部と
を備えることを特徴とする冷却機構。
【請求項2】
前記噴霧部は、
前記熱媒体を前記減圧室に噴霧するためのノズルを有し、該ノズルと、前記熱媒体との摩擦によって該熱媒体を帯電させるようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却機構。
【請求項3】
前記噴霧部に電圧を印加する電圧印加部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却機構。
【請求項4】
前記減圧室は、
前記被冷却部材の内部に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の冷却機構。
【請求項5】
前記減圧室は、
前記被冷却部材の外部に配されており、前記減圧室及び被冷却部材は接触している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の冷却機構。
【請求項6】
前記被冷却部材は、
基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の冷却機構。
【請求項7】
前記被冷却部材は、
基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室内に配されている処理室内部品である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の冷却機構。
【請求項8】
前記処理室内部品は、
前記処理室内に基板を載置するための載置台である
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却機構。
【請求項9】
被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却機構において、
前記被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室と、
該減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、
該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と、
前記被冷却部材の温度を検出する被冷却部材温度検出部と、
該被冷却部材温度検出部にて検出された温度が目標温度になるように、前記減圧室を排気する排気部と
を備えることを特徴とする冷却機構。
【請求項10】
基板に所定の処理を行うための処理室において、
壁内に形成された減圧室と、
該減圧室の内面に目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、
該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と
を備えることを特徴とする処理室。
【請求項11】
基板に所定の処理を行う基板処理装置の処理室内に配されるべき処理室内部品において、
内部に形成された減圧室と、
該減圧室の内面に目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧する噴霧部と、
該噴霧部から噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させる電界発生部と
を備えることを特徴とする処理室内部品。
【請求項12】
被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室を用いて、該被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却方法において、
前記減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧するステップと、
噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させるステップと、
前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧以下になるように、前記減圧室を排気するステップと
を有することを特徴とする冷却方法。
【請求項13】
前記減圧室を排気するステップにおいて、
前記減圧室の内圧が前記目標温度における前記熱媒体の飽和蒸気圧と等しくなるように、前記減圧室を排気する
ことを特徴とする請求項12に記載の冷却方法。
【請求項14】
被冷却部材に対して熱的に接続された減圧室を用いて、該被冷却部材の温度を目標温度に冷却する冷却方法において、
前記減圧室の内面に前記目標温度以下の液相の熱媒体を噴霧するステップと、
噴霧された熱媒体を前記減圧室の内面に付着させるための電界を発生させるステップと、
前記被冷却部材の温度を検出するステップと、
検出された温度が目標温度になるように、前記減圧室を排気するステップと
を有することを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169552(P2012−169552A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31213(P2011−31213)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】