説明

処理液塗布装置及び処理液塗布方法

本発明は、半導体ウェハなどの基板の表面に微細な回路パターンを形成するリソグラフィ工程に好適に使用される処理液塗布装置及び処理液塗布方法に利用可能である。本発明の処理液塗布装置は、ウェハ(W)を保持して回転させる基板保持部(1)と、基板保持部(1)に保持されたウェハ(W)に離間して配置される処理液供給部2とを備える。処理液供給部(2)は、ウェハ(W)の表面の中心部(C)を含む複数の部位に処理液を供給する複数の供給口(5,6)を有する。レジスト液又は現像液が処理液として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液塗布装置及び処理液塗布方法に係り、特に半導体ウェハなどの基板の表面に微細な回路パターンを形成するリソグラフィ工程に好適に使用される処理液塗布装置及び処理液塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、半導体ウェハ等の基板の表面に微細な回路パターンを形成するためにリソグラフィ工程が行われている。このリソグラフィ工程には、ウェハの表面にレジスト膜を形成するレジスト塗布工程、レジスト膜に回路パターンを転写するパターン露光工程、転写された回路パターンに沿ってレジスト膜に回路パターン溝を形成する現像工程などが含まれる。以下に、レジスト塗布工程、パターン露光工程、及び現像工程について詳細に説明する。
【0003】
(1)レジスト塗布工程
レジスト塗布工程は、一般に、スピンコーターと呼ばれるレジスト塗布装置を用いて行われる。このレジスト塗布工程においては、まず、絶縁膜が表面に形成されたウェハをスピンチャックに保持させ、スピンチャックを介してウェハを回転させる。この状態で、スピンチャックの中央部上方に配置されたノズルからウェハの表面中央にレジスト液を供給し、遠心力を利用してレジスト液をウェハの表面全体に行き渡らせる。レジスト液の供給を停止させた後、ウェハの回転速度を低下させ、薄膜状のレジスト膜(感光性高分子膜)をウェハの表面全体に形成する。なお、レジストには、露光された部分が現像工程により除去されるポジティブ型と、露光されていない部分が現像工程により除去されるネガティブ型の2つがある。
【0004】
(2)パターン露光工程
パターン露光工程は、一般に、ステッパと呼ばれる露光装置を用いて行われる。このパターン露光工程においては、まず、レジスト膜が表面に形成されたウェハをステージ上に載置する。ステージの上方には、i線、エキシマレーザなどの光源が配置され、ステージと光源との間には、回路パターンが形成されたマスク(レチクル)が配置されている。光源からの光は、マスクを通してウェハ上のレジスト膜に照射され、これにより、レジスト膜に回路パターンが転写される。この露光工程では、所望寸法の回路パターンをレジスト膜全体に渡ってシャープに転写することが必要とされる。
【0005】
(3)現像工程
現像工程は、一般に、現像機を用いて行われる。この現像工程では、ウェハを基板保持部により保持しつつ回転させながら、レジスト膜の中央部に現像液(現像溶液)を供給し、遠心力により現像液をレジスト膜全体に行き渡らせる。ポジティブ型のレジストを用いた場合、現像液は、レジスト膜の回路パターンが転写された露光部分と化学反応を起こし、露光部分が現像液に溶出する。一方、ネガティブ型のレジストを用いた場合、現像液は、レジスト膜の回路パターンが転写されていない未露光部分と化学反応を起こし、未露光部分が現像液に溶出する。ウェハの回転に伴って、レジスト膜に供給された現像液は新たな現像液に置換され、化学反応がさらに進行する。このようにして、回路パターン溝がレジスト膜に形成される。その後、ウェハにリンス液を供給して現像反応を停止させ、ウェハを高速で回転させてスピン乾燥を行う。
【0006】
このようなリソグラフィ工程においては、レジスト膜に転写される回路パターンの解像度を高めるために、ウェハの表面全体に渡って、所望の厚さで、かつ均一にレジスト膜を塗布することが必要とされる。また、製造コストを低減させるためには、レジスト液及び現像液の供給量をできるだけ少なくすることが要請される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したレジスト塗布工程では、遠心力によるレジスト液の拡がりを利用しているため、多量のレジスト液をウェハに供給しつつ余剰なレジスト液をウェハの周端部から振り落とすことが必要となる。このため、レジスト膜の形成に必要とされる量よりもはるかに多くのレジスト液が使用され、製造コストを上昇させる要因となっている。
【0008】
また、遠心力と表面張力とのバランスにより、周端部の膜厚が中央部の膜厚よりも厚くなった状態でレジスト膜が形成されてしまう傾向がある。このため、均一な膜厚のレジスト膜が形成されず、その後の露光工程において、回路パターンの解像度が低下するという問題が生じてしまう。
【0009】
さらに、現像工程においては、レジスト塗布工程と同様に、レジスト膜(ウェハ)の中央部に現像液が供給されるため、レジスト膜の中央部と周端部との間で現像液に接触している時間に差が生じてしまい、均一な現像処理が行われないという問題がある。また、上記現像工程では、ウェハを回転させることで、ウェハ上の現像液を新たな現像液に置換させているが、回路パターン溝においては現像液の置換が十分に行われないという問題がある。すなわち、現像液の上層部では現像液が層流となってスムーズに流れるが、レジスト膜の表面近傍では現像液が粘性流となる。このために、回路パターン溝では現像液の置換が良好に行われず、これが現像ムラを生じさせ、現像時間が長くなる原因となっている。現像処理後のリンス処理においても、上述と同様の理由により、リンス液の置換が速やかに行われないため、現像停止が意図した通りに行われず、過剰現像の原因となってしまう。
【0010】
さらに、リンス処理後の乾燥工程においては、ウェハを高速で回転させると、回路パターンを構成する壁部が倒れる、いわゆるパターン倒れと呼ばれる現象が生じてしまう。このパターン倒れを防ぐために回転速度を下げると、回路パターン溝にリンス液が残留し、ウェハを十分に乾燥させることができなくなってしまう。このようなパターン倒れは、回路パターンの微細化が進むにつれてさらに顕著に表れると予想される。
【0011】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、レジスト液や現像液などの処理液を少ない供給量で均一に基板の表面に塗布することができ、また、処理液の置換を良好に行うことができ、さらには、パターン倒れを防ぐことができる処理液塗布装置及び処理液塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板の表面に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に離間して配置され、処理液供給部とを備え、前記処理液供給部は、基板の表面の中心部を含む複数の部位に処理液を供給する複数の供給口を有し、前記処理液はレジスト液又は現像液であることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記処理液供給部は、基板上の処理液を吸引する複数の吸引口を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の供給口及び前記複数の吸引口は、それぞれ交互及び直線状に配列されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記処理液供給部は、基板の半径方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板の外周部から処理液を吸引する処理液吸引部を更に備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、基板の表面に向けて気体を噴射する気体供給部を更に備え、前記気体供給部は基板の中心部から外周部に向かって移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、基板の表面に処理液を塗布する処理液塗布方法であって、基板を回転させ、基板の表面の中心部を含む複数の部位に処理液を供給し、前記処理液はレジスト液又は現像液であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記処理液塗布方法は、基板の表面の複数の部位から処理液を吸引することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記処理液塗布方法は、基板の表面の外周部を含む複数の部位から処理液を吸引することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記処理液塗布方法は、気体を気体供給部から基板の表面に向けて供給し、前記気体供給部を基板の中心から外周部に向けて移動させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、基板の表面全体に渡って同時に処理液(例えば、レジスト液又は現像液)を供給することができるため、少量の処理液でも均一に処理液の膜(例えばレジスト膜)を基板の表面上に形成することができる。また、遠心力に頼らなくとも処理液を基板の表面全体に供給することができるため、基板を低速で回転させることが可能となる。従って、基板回転中に基板から飛散する処理液の量を低減させることができる。さらには、基板上の処理液を吸引し、乾燥気体を基板に供給することにより、基板を低速で回転させても十分に乾燥することができるのでパターン倒れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る処理液塗布装置について図面を参照して説明する。
図1Aは本発明の第1の実施形態に係る処理液塗布装置を示す平面図であり、図1Bは図1Aに示す処理液塗布装置の側面図である。
図1A及び図1Bに示すように、処理液塗布装置は、ウェハ(基板)Wを水平に保持して回転させる基板保持部1と、この基板保持部1に保持されたウェハWの上面に所定の処理液を供給する処理液供給部2と、ウェハWの外周部から処理液を吸引する処理液吸引部3と、ウェハWの上面に所定の気体を供給する気体供給部4とを備えている。
【0017】
基板保持部1は、回転軸1aと、この回転軸1aの上部に固定された円形のチャックテーブル1bとを備えている。回転軸1a及びチャックテーブル1bの内部には通孔(図示せず)が形成されており、この通孔に負圧を形成することによりウェハWがチャックテーブル1bの上面に吸着されるようになっている。回転軸1aはモータなどの駆動源(図示せず)に連結されており、チャックテーブル1b上のウェハWは、駆動源によって回転軸1aを介して回転する。
【0018】
処理液供給部2は、基板保持部1に保持されたウェハWに離間して配置されている。図1Bでは、処理液供給部2は、ウェハWの上方に位置している。処理液供給部2は略円柱状の形状を有しており、ウェハWの半径方向に沿って延びている。この処理液供給部2の下部及び側部には、ウェハWの表面に処理液を供給するための複数の第1供給口5及び第2供給口6がそれぞれ設けられている。
【0019】
処理液吸引部3は処理液供給部2に隣接して配置され、ウェハWの回転方向において処理液供給部2の前方に位置している。この処理液吸引部3は、ウェハWの外周部の上方に位置する開口部3aを有しており、ウェハWの上面に供給された処理液が処理液吸引部3の開口部3aを介して吸引されるようになっている。
【0020】
なお、本実施形態では、1つの処理液吸引部3のみが設けられているが、複数の処理液吸引部をウェハWの外周部に沿って配置してもよい。また、処理液吸引部3の配置位置は、ウェハWの上方に限られず、ウェハWの下方でもよい。さらに、ウェハWの回転軸が水平である場合には、処理液吸引部3の配置位置はウェハWの側方であってもよい。
【0021】
気体供給部4は、ウェハW(基板保持部1)の上方に配置されており、気体供給部4の下部から乾燥気体がウェハWの上面に向けて吹き付けられるようになっている。乾燥気体としては、Nガス等の不活性ガスまたは湿度10%以下の乾燥空気等が好適に使用される。この気体供給部4は、ウェハWの中心部から外周部に向かって移動可能となっている。
【0022】
上記処理液供給部の例について図2A乃至図2Cを参照して説明する。図2Aは図1Bに示す処理液供給部の拡大図であり、図2Bは図2AのIIb−IIb線断面図であり、図2Cは図2AのIIc−IIc線断面図である。
【0023】
処理液供給部2の下部及び側部には、作用面(第1作用部)K1及び作用面(第2作用部)K2がそれぞれ形成されている。これらの作用面K1,K2には複数の第1供給口5及び複数の第2供給口6がそれぞれ設けられている。第1供給口5及び第2供給口6は、処理液供給部2の長手方向、すなわちウェハWの半径方向に沿って直線状に配列されている。第1供給口5及び第2供給口6は、互いに交互に、かつ所定の間隔で配置されており、第1供給口5のうちの1つは、ウェハWの中心部Cの上方に位置している。なお、本実施形態では、図2Aに示すように、処理液供給部2の先端部に配置された第1供給口5がウェハWの中心部Cの上方に位置している。
【0024】
処理液供給部2は、その長手方向に延びる軸心を中心として90°回転可能に構成されており、作用面K1,K2のいずれか一方がウェハWの上面に対向するようになっている。作用面K1,K2にそれぞれ設けられる第1供給口5及び第2供給口6の数は、ウェハWの直径に応じて決定される。処理液供給部2は、各第1供給口5及び各第2供給口6から供給される処理液の流量を独立に調整できるように構成されている。処理液の流量を調整する手段としては、バルブなどが使用される。ウェハWの中心部からの距離(半径rとする)が長いほど、2πrで表される周長が長くなるので、ウェハWの中心部から外周部に向かうに従って各第1供給口5及び各第2供給口6からの処理液の流量が多くなるように設定する。
【0025】
図2B及び図2Cに示すように、処理液供給部2の内部には、その長手方向に沿って延びる一対の第1連通路8A,8B及び一対の第2連通路9A,9Bが形成されている。図2Bに示すように、第1の作用面K1で開口する各第1供給口5は第1連通路8Aに連通し、第2の作用面K2で開口する各第1供給口5は第1連通路8Bに連通している。また、図2Cに示すように、第1の作用面K1で開口する各第2供給口6は第2連通路9Aに連通し、第2の作用面K2で開口する各第2供給口6は第2連通路9Bに連通している。
【0026】
第1連通路8A及び第2連通路9Aは、図2Aに示す第1処理液供給源11に接続されており、この第1処理液供給源11から第1連通路8A及び第2連通路9Aに処理液(第1処理液)を供給することにより、作用面K1上に配置される第1供給口5及び第2供給口6を介して処理液がウェハWに供給されるようになっている。一方、第1連通路8B及び第2連通路9Bは、第2処理液供給源12に接続されており、この第2処理液供給源12から第1連通路8B及び第2連通路9Bに処理液(第2処理液)を供給することにより、作用面K2上に配置される第1供給口5及び第2供給口6を介して処理液がウェハWに供給されるようになっている。これらの第1処理液供給源11及び第2処理液供給源12は、処理液の流量、圧力、温度、pH、粘度などのパラメータをそれぞれ独立に調整することができるように構成されている。
【0027】
なお、第1及び第2処理液供給源12から供給される第1処理液及び第2処理液はそれぞれ同種のものであってもよく、また、異なる種類の処理液であってもよい。例えば、第1及び第2処理液供給源11,12からレジスト液を第1供給口5及び第2供給口6を介して供給することができる。また、第1処理液供給源11から作用面K1上の第1供給口5及び第2供給口6を介して現像液を供給し、作用面K2上の第2処理液供給源12から第1供給口5及び第2供給口6を介してリンス液を供給することができる。なお、第3及び第4処理液供給源(図示せず)を設けて、第1連通路8A,8B、第2連通路9A,9Bをそれぞれ第1、第2、第3、第4処理液供給源に接続してもよい。このような構成によれば、作用面K1,K2を切り替えることにより、4種類の処理液をウェハWの表面に供給することができる。
【0028】
この場合、作用面K1,K2の切り替え時、及び処理液の切り替えに際しては、第1供給口5又は第6供給口に残存している前工程で使用された処理液を気体(乾燥空気もしくは不活性ガス)や純水を吐出して除去し、その後に次の処理液を供給することが好ましい。また、更には、第1及び第2供給口5,6に残存する処理液を吸引するために、第1連通路8A,8B及び第2連通路9A,9Bに接続された図示しない配管(流路)のそれぞれにサックバックバルブ(suck back valve)を設けてもよい。サックバックバルブは、所定の信号が入力されるとその内部が負圧となり、所定量(例えば0.1〜0.2ml)の流体を内部に一旦貯蔵する。
【0029】
図2Aに示すように、処理液供給部2はウェハWの表面(上面)に近接して配置されている。処理液供給部2は上下に昇降可能な保持機構(図示せず)により保持されており、処理液供給部2とウェハWの上面(第1供給口5及び第2供給口6の先端)との距離Dが調整できるようになっている。処理液供給部2とウェハWの上面との距離Dは、好ましくは2mm以下、更に好ましくは0.5mm以下に設定される。また、上記保持部は水平方向に移動可能に構成されており、これにより、図1A及び図2Aの矢印に示すように、処理液供給部2はウェハWの半径方向(処理液供給部2の長手方向)に沿って移動可能に構成されている。
【0030】
次に、上述のように構成された処理液塗布装置の動作について説明する。
まず、処理対象となるウェハWを処理液塗布装置に搬送し、ウェハWを基板保持部1に保持させる。その後、処理液供給部2を移動させ、処理液供給部2を基板保持部1に保持されたウェハWの上方に位置させる。そして、ウェハWを所定の回転速度で回転させ、第1供給口5及び第2供給口6からレジスト液、現像液又はリンス液等の処理液をウェハWの上面に供給する。処理液は、ウェハWの中心部Cを含む半径方向に沿った複数の部位に供給され、これにより、ウェハWの上面に処理液が塗布される。このとき、遠心力によってウェハWの外周部に移動した処理液は処理液吸引部3の開口部3aから吸引される。なお、ウェハWの上面に処理液が供給されるときのウェハWの回転速度は、1000min−1以下、好ましくは500min−1以下、更に好ましくは100min−1以下、さらに好ましくは50min−1以下に設定する。また、必要に応じて、処理液を供給しながら処理液供給部2をウェハWの半径方向に沿って往復移動させてもよい。
【0031】
上記処理液塗布装置を現像装置として用いる場合には、ウェハWは次のように処理される。ウェハWを10〜300min−1の回転速度で回転させながら第1処理液供給源11に保持された現像液を作用面K1に設けられた第1供給口5及び第2供給口6から現像処理を行うウェハWに供給する。その後、第2処理液供給源12に保持されたリンス液は、作用面K2に設けられた第1供給口5及び第2供給口6からウェハWに供給され、現像を停止し、ウェハWを洗浄する。なお、洗浄効果を高めるために、ウェハW上のリンス液に向けて超音波を照射する超音波照射機構(例えば超音波振動子)を設けてもよい。
【0032】
ウェハWを洗浄した後は、気体供給部4から乾燥気体をウェハWの上面に吹き付けながら、気体供給部4をウェハWの中心部から外周部に移動させる。これにより、ウェハWの上面に残留するリンス液をウェハWの中心側から外周側に移動させてリンス液をウェハWから除去することができる。なお、パターン倒れを防止するために、乾燥処理時のウェハWの回転速度は、1000min−1以下、好ましくは500min−1以下、さらに好ましくは100min−1以下、さらに好ましくは50min−1以下に設定する。
【0033】
上記処理液装置をレジスト塗布装置として用いる場合は、ウェハWを10〜300min−1の回転速度で回転させながら、レジスト液を第1供給口5及び第2供給口6からウェハWに供給する。
【0034】
本実施形態に係る処理液塗布装置によれば、ウェハWの上面のほぼ全体に処理液(例えばレジスト液、現像液又はリンス液)が同時に供給されるため、少量の処理液でも処理液をウェハWの上面全体に均一にかつ速やかに行き渡らせることができる。具体的には、レジスト液を処理液として用いる場合、供給されるレジスト液の総量は10〜200mlであり、現像液を処理液として用いる場合、供給される現像液の総量は10〜200mlである。
【0035】
また、ウェハWを低い回転速度で回転させることができるため、ウェハWから飛散する処理液の量を低減させることができる。更に、ウェハWに供給された処理液は、他の部材に触れることなく処理液吸引部3によって吸引されるため、この処理液吸引部3を介して回収された処理液を第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に導いて再使用することができる。
【0036】
図3に示すように、処理液吸引部3から吸引された処理液は一時的に気液分離装置14に集められ、ここで処理液と気体(例えば空気)とが分離される。気液分離装置14によって回収された処理液は、送液ポンプ15によって第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に再び戻され、これにより処理液が再利用可能となる。回収された処理液が汚れている場合には、そのままでは処理液を再利用することができない。このような場合には、処理液は浄化装置17に導入され、処理液から不純物を除去することにより処理液が浄化される。浄化された処理液は、その後、第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に戻され、再利用に供される。処理液が浄化処理によっても再利用できないほどに汚れている場合には、気液分離装置14で回収された処理液は排出管18から排出される。
【0037】
なお、図1Bに示す基板保持部1は真空吸着によりウェハWを保持する真空チャック型であるが、この真空チャック型の基板保持部に代えて、複数のローラを用いて基板を保持する基板保持部を採用することもできる。以下、図4A及び図4Bを参照して複数のローラを有する基板保持部について説明する。図4Aは基板保持部の他の構成例を示す平面図である。図4Bは図4Aに示す基板保持部の断面図である。
【0038】
ウェハWを保持する基板保持部1は、ウェハWの周方向に沿って配置される複数のローラ20(図4A及び図4Bでは、1つのローラ20のみを示す)を備えている。図4A及び図4Bに示すように、ローラ20の外周面には溝状のクランプ部21が形成されている。ローラ20がウェハWに向かって移動すると、ローラ20がウェハWの周端部に所定の圧力で接触し、これによりウェハWがローラ20のクランプ部21に保持されるようになっている。この状態で、それぞれのローラ20が図示しない駆動機構によって同一回転速度かつ同一方向に回転すると、ウェハWがローラ20によって水平に保持された状態で回転する。なお、複数のローラ20のうちの少なくとも一つだけを駆動機構によって回転させてもよい。
【0039】
クランプ部21の近傍には、吸引口23を備えた吸引ノズル24がそれぞれ配置されている。吸引口23はクランプ部21に例えば5mm以下に近接して配置され、クランプ部21に付着した処理液を吸引する。また、同様にクランプ部21に洗浄液を供給する供給口25を備えた洗浄ノズル26がそれぞれローラ20のクランプ部21に近接して配置されている。吸引ノズル24の吸引口23とクランプ部21との距離は、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。同様に、洗浄ノズル26の供給口25とクランプ部21との距離は、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。ローラ20の材料としては、耐薬品性のあるフッ素系樹脂、例えばPVDF、PEEK等、またはポリウレタン等が好適に使用される。
【0040】
仮に吸引ノズル24がなければ、クランプ部21に付着した処理液はローラ20の回転に伴ってウェハWと再接触し、ウェハWおよびロータ20の接線方向Xに処理液が飛散する(図4A参照)。このような処理液の飛散を防止するために、吸引口23及び供給口25は次のように配置される。すなわち、図4A中の矢印に示すローラ20の回転方向において、クランプ部21とウェハWとの接触部Wcに対して前方に供給口25を有する洗浄ノズル26が配置され、さらに、ローラ20の回転方向において洗浄ノズル26の前方に吸引口23を有する吸引ノズル24が配置される。
【0041】
ウェハWの周端部上の処理液は、接触部Wcを介してローラ20のクランプ部21に移動する。洗浄ノズル26の供給口25からは洗浄液がクランプ部21に供給され、これにより処理液が付着したクランプ部21が洗浄される。ローラ20の回転に伴い、クランプ部21に付着した洗浄液が吸引ノズル24の吸引口23の前に到達すると、洗浄液が吸引口23から吸引される。これにより、ウェハW及びクランプ部21からの洗浄液及び処理液の飛散が防止される。
【0042】
図4Cは図4Bに示す基板保持部の変形例を示す断面図である。図4Cに示すように、クランプ部21で開口する1つ以上の開口端部を有する吸引通路27をローラ20の内部に設け、吸引通路27を介して処理液を吸引するようにしてもよい。また、洗浄が必要でない場合には、洗浄ノズル26を省略することができる。ここで、吸引ノズル24の吸引口23および吸引通路27は気液分離装置14を介して真空源13に連通し(図3参照)、真空源13により処理液を吸引する。
【0043】
吸引ノズル24および吸引通路27を介して吸引された処理液は一時的に気液分離装置14に集められ、ここで処理液と気体(例えば空気)とが分離される。気液分離装置14によって回収された処理液は、送液ポンプ15(図3参照)によって第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に再び戻され、これにより処理液が再利用可能となる。回収された処理液が汚れている場合には、そのままでは処理液を再利用することができない。このような場合には、処理液は浄化装置17(図3参照)に導入され、処理液から不純物を除去することにより処理液が浄化される。浄化された処理液は、その後、第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に戻され、再利用に供される。処理液が浄化処理によっても再利用できないほどに汚れている場合には、気液分離装置14で回収された処理液は排出管18(図3参照)から排出される。真空源としては、エジェクター、真空ポンプなどが用いられる。吸引ノズル24及び吸引通路27は、図1Aに示す処理液吸引部3と併用してもよく、処理液吸引部3の代用として用いてもよい。
【0044】
上述したように、本実施形態に係る処理液塗布装置は、真空チャック型及びローラ型のいずれのタイプの基板保持部を用いることができる。なお、ローラ型の基板保持部を用いる場合には、ウェハの下方にも処理液供給部2を配置することができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態について図5A乃至図5Cを参照して説明する。図5Aは本発明の第2の実施形態に係る処理液塗布装置に組み込まれた処理液供給部の拡大図であり、図5Bは図5AのVb−Vb線断面図であり、図5Cは図5AのVc−Vc線断面図である。なお、特に説明しない本実施形態に係る処理液塗布装置の構成及び作用は第1の実施形態と同様である。
【0046】
第2の実施形態における処理液供給部2は、第1の実施形態における処理液供給部と同様の構成を有しているが、第2連通路9A,9Bが気液分離装置14(図3参照)を介して真空源13に接続されている点で第2の実施形態は第1の実施形態と異なっている。従って、第2連通路9A,9Bに連通する第2供給口6は、ウェハW上の処理液を吸引する吸引口として機能する。以下、本実施形態では、第2供給口6を吸引口6として記載する。
【0047】
第1の実施形態と同様に、第1連通路8Aは第1処理液供給源11に接続され、第1連通路8Bは第2処理液供給源12に接続されている。処理液は、第1処理液供給源11または第2処理液供給源12から第1供給口5を介してウェハWの上面に供給される。同時に、ウェハW上に供給された処理液は、吸引口6および処理液吸引部3(図1Aおよび図1B参照)から吸引される。
【0048】
本実施形態の一例として、現像液を第1処理液供給減11に貯留させ、リンス液を第2処理液供給源12に貯留させてもよい。この場合、現像液は、作用面K1上に設けられた第1供給口5からウェハW上に供給され、ウェハW上の現像液は吸引口6から吸引される。その後、処理液供給部2はその軸心を中心として回転し、作用面K2がウェハWに対向する。そして、リンス液が、作用面K2上に設けられた第1供給口5からウェハW上に供給され、これにより現像が停止される。ウェハW上のリンス液は吸引口6から吸引される。このように、リンス液の供給および吸引がウェハW上で同時に行われるので、リンス液は新たなリンス液に速やかに置換され、これにより現像を所望のタイミングで正確に停止させることができる。
【0049】
本実施形態において、ウェハWに供給された、レジスト液、現像液又はリンス液等の処理液は、他の部材に触れることなく、吸引口6及び処理液吸引部3から吸引される。従って、吸引口6及び処理液吸引部3を介して回収された処理液を第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源に導いて再使用することができる。また、本実施形態によれば、ウェハWに供給された処理液は、吸引口6及び処理液吸引部3によって吸引されるので、ウェハWから飛散する処理液の量をほぼ0とすることができる。
【0050】
なお、第1供給口5から供給された処理液が直接吸引口6から吸引されることがないように、第1供給口5と吸引口6とをある程度離間させつつ、段差を設けることが好ましい。この場合、第1供給口5と吸引口6との間隔及び段差は、1mm以上であることが好ましい。
【0051】
この実施形態においても、吸引口6および処理液吸引部3を介して吸引された処理液は一時的に気液分離装置14(図3参照)に集められ、ここで処理液と気体(例えば空気)とが分離される。気液分離装置14によって回収された処理液は、送液ポンプ15(図3参照)によって第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に再び戻され、これにより処理液が再利用可能となる。回収された処理液が汚れている場合には、そのままでは処理液を再利用することができない。このような場合には、処理液は浄化装置17(図3参照)に導入され、処理液から不純物を除去することにより処理液が浄化される。浄化された処理液は、その後、第1処理液供給源11及び/又は第2処理液供給源12に戻され、再利用に供される。処理液が浄化処理によっても再利用できないほどに汚れている場合には、気液分離装置14で回収された処理液は排出管18(図3参照)から排出される。
【0052】
本実施形態の供給吸引構造によれば、処理液をウェハWから飛散させることなく、ほぼ全ての処理液を回収することができる。したがって、本実施形態は、第1の実施形態に比べてより多くの処理液を再利用することができるという利点がある。
【0053】
上述したように、処理液塗布装置は、基板の表面にレジスト膜を塗布する塗布装置や、回路パターンが転写されたレジスト膜に現像液を供給して回路パターン溝を形成する現像装置に好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、半導体ウェハなどの基板の表面に微細な回路パターンを形成するリソグラフィ工程に好適に使用される処理液塗布装置及び処理液塗布方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1Aは本発明の第1の実施形態に係る処理液塗布装置を示す平面図であり、図1Bは図1Aに示す処理液塗布装置の側面図である。
【図2】図2Aは図1Bに示す処理液供給部の拡大図であり、図2Bは図2AのIIb−IIb線断面図であり、図2Cは図2AのIIc−IIc線断面図である。
【図3】図3は再利用システムを示す概略図である。
【図4】図4Aは基板保持部の他の構成例を示す平面図であり、図4Bは図4Aに示す基板保持部の断面図であり、図4Cは図4Bに示す基板保持部の変形例を示す断面図である。
【図5】図5Aは本発明の第2の実施形態に係る処理液塗布装置に組み込まれた処理液供給部の拡大図であり、図5Bは図5AのVb−Vb線断面図であり、図5Cは図5AのVc−Vc線断面図である。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に離間して配置される処理液供給部とを備え、
前記処理液供給部は、基板の表面の中心部を含む複数の部位に処理液を供給する複数の供給口を有し、前記処理液はレジスト液又は現像液であることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記処理液供給部は、基板上の処理液を吸引する複数の吸引口を有することを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記複数の供給口及び前記複数の吸引口は、それぞれ交互及び直線状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の処理液塗布装置。
【請求項4】
前記処理液供給部は、基板の半径方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
基板の外周部から処理液を吸引する処理液吸引部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
基板の表面に向けて気体を噴射する気体供給部を更に備え、前記気体供給部は基板の中心部から外周部に向かって移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
基板の表面に処理液を塗布する処理液塗布方法であって、
基板を回転させ、
基板の表面の中心部を含む複数の部位に処理液を供給し、
前記処理液はレジスト液又は現像液であることを特徴とする処理液塗布方法。
【請求項8】
更に、基板の表面の複数の部位から処理液を吸引することを特徴とする請求項7に記載の処理液塗布方法。
【請求項9】
更に、基板の表面の外周部を含む複数の部位から処理液を吸引することを特徴とする請求項7に記載の処理液塗布方法。
【請求項10】
気体を気体供給部から基板の表面に向けて供給し、前記気体供給部を基板の中心から外周部に向けて移動させることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の処理液塗布方法。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2007−510283(P2007−510283A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517874(P2006−517874)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016284
【国際公開番号】WO2005/043608
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】