説明

出入管理システム

【課題】 汚染区域のような区域が管理対象に含まれるような出入管理システムにおける利便性を向上する。
【解決手段】 電気錠制御装置M1では、禁止状態記憶手段が、禁止対象区域であるエリアAへの進入が禁止状態にある禁止利用者を示す情報を記憶する。禁止開始手段が、禁止原因区域であるエリアBの退出用のカードリーダCR3により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者を禁止利用者として禁止状態記憶手段に登録して禁止状態を開始させる。そして、禁止終了手段が、計時時間により所定の禁止時間の経過が計時されたとき、禁止状態記憶手段における禁止利用者の登録を消去して禁止状態を終了させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者による複数区域の出入を管理する出入管理システムに関し、特に、利用者の利便性を向上するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、研究開発施設などの各種施設において、セキュリティを確保するために出入管理システムが設置されている。典型的な出入管理システムでは、管理対象の区域の出入口に電気錠が設置される。そして、利用者のカードなどから識別コードが取得され、識別コードの認証が成功すれば、電気錠が解除される。これにより、予め登録された利用者のみが、対象区域への出入を許可される。最近は、セキュリティの高度化の要求に伴い、指紋等のバイオメトリクス情報を識別コードとして用いる技術も実用化されている。
【0003】
従来の典型的な出入管理システムは、単に、利用者の登録の有無を判定している。これに対して、出入管理システムのさらなる応用例では、特定の区域から退出する利用者に対して区域の性質に応じて制限を加えることができる。例えば、汚染区域からの退出を制限するシステムが提案されており、同システムでは、エアシャワーを利用することにより汚染レベルが低下するまでは退出が制限される(特許文献1)。
【特許文献1】特開平3−105590号公報(第2−3ページ、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、汚染区域を退出する場合には、毎回シャワー室を通過しなければならず、利便性が良いとはいえない。
【0005】
より詳細に説明すると、シャワーの利用が必要なのは、退出後に行く区域で汚染が悪影響を及ぼす可能性があるからである。しかし、利用者が、汚染区域を退出した後に、汚染の影響がある区域に向かうとは限られず、汚染の影響がない区域に行くこともある。それにも拘わらず従来は一律にシャワーの利用が要求されており、そのために入退出に手間がかかり、使い勝手が悪くなっている。
【0006】
上記においては、汚染区域を取り上げて従来の問題を説明した。しかし、汚染区域に限られず、他の区域への利用者の移動が制限されるべき原因を有する区域が管理対象に含まれる場合には、同様の問題が生じうる。
【0007】
本発明は、上記背景の下でなされたものであり、その目的は、上述の汚染区域のような区域が管理対象に含まれる場合の利便性を向上できる出入管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の出入管理システムは、複数区域の各出入部に設けられ利用者の識別コードを取得する複数のコード取得手段と、前記複数区域のうちの所定の禁止対象区域への進入が禁止状態にある禁止利用者を示す情報を記憶する禁止状態記憶手段と、前記複数区域のうちの所定の禁止原因区域の退出用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者を前記禁止利用者として前記禁止状態記憶手段に登録して禁止状態を開始させる禁止開始手段と、前記禁止利用者の禁止状態が開始してからの経過時間を計る計時手段と、前記計時手段により所定の禁止時間の経過が計時されたとき、前記禁止状態記憶手段における前記禁止利用者の登録を消去して禁止状態を終了させる禁止終了手段と、前記禁止対象区域の進入用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者が前記禁止状態記憶手段に登録されているか否かに応じて通行の許否を判定する通行許否判定手段と、を備えている。ここで、禁止原因区域は、禁止対象区域への移動が禁止されるべき禁止原因を有する区域である。また、禁止時間は、その経過により禁止原因が無くなるように予め適当に設定される。例えば、禁止原因区域が汚染区域であり、禁止対象区域が汚染の影響を受ける微生物室であり、禁止時間が汚染レベルの許容レベルへの低下に要する時間である。
【0009】
上記構成によれば、利用者が禁止原因区域から退出すると、その利用者が禁止状態記憶手段に禁止利用者として登録されて、禁止状態が設定される。そして、禁止時間が経過すると、禁止状態記憶手段の登録が消去されて、禁止状態が解除される。したがって、禁止原因区域を退出後に、禁止対象区域への進入が限定的に規制される。利用者は、禁止原因区域の退出後に禁止対象区域に行かないのであれば、禁止原因を取り除かなくてもよい。また、利用者は、禁止時間が経過するのを待てば、禁止原因を取り除く作業を行わずとも、禁止対象区域を利用できる。このようにして、本発明によれば、汚染のような禁止原因を取り除く作業を行うか否かを利用者が任意に選択可能になり、これにより利便性を向上できる。
【0010】
また、望ましくは、本発明の出入管理システムは、前記複数区域のうちの所定の禁止解除原因区域の退出用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者についての登録を前記禁止状態記憶手段から消去して、前記禁止時間の経過前でも禁止状態を解除する禁止解除手段を備えている。
【0011】
上記構成によれば、利用者が禁止解除原因区域から退出すると、禁止時間の経過前でも、禁止状態記憶手段の登録が消去されて、禁止状態が解除される。したがって、利用者は、禁止原因区域を利用した後、禁止解除原因区域を利用することで、早期に禁止対象区域を利用できる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明の出入管理システムは、汚染区域のような区域が管理対象に含まれるときの利用者の利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の出入管理システムを、管理対象施設と共に示している。図1の例では、管理対象施設にエリア(区域)A〜Eが設けられている。エリアAは微生物室であり、エリアBは汚染物室であり、エリアCはエアシャワー室である。また、エリアDは、エリアA〜C間を移動するための共用通路であり、エリアEは建物外である。
【0015】
本実施の形態の出入管理システムでは、通常はエリアA(微生物室)へ入室が許可される。ただし、エリアB(汚染物室)から出た後は、エリアBの影響がなくなるまで一定の禁止時間、エリアAへの入室が禁止される。また、禁止時間中にエリアC(エアシャワー室)を通れば、エリアAへの入室禁止がキャンセルされる。このような出入管理が、以下に説明するシステム構成により実現される。
【0016】
ここで、エリアAは、利用者の進入が禁止される区域であり、本発明の禁止対象区域に相当する。また、エリアBは、エリアAへの進入禁止の発生原因を有する区域であり、本発明の禁止原因区域に相当する。さらに、エリアCは、エリアAへの進入禁止の解除原因を有する区域であり、本発明の禁止解除原因区域に相当する。
【0017】
図1において、エリアAの出入口(エリアAとエリアDの境界)には電気錠付き扉D1と2つのカードリーダCR1、CR2が設けられている。電気錠付き扉D1は、エリア間の移動を規制する仕切りであり、カードリーダCR1、CR2は、管理対象施設に出入りする利用者が所持するIDカードから識別コードを読み取る装置である。カードリーダCR1は、エリアAの中に設けられ、エリアAからの退出時に使用される。一方、カードリーダCR2は、エリアAの外に設けられ、エリアAへの入室時に使用される。そして、電気錠付き扉D1及びカードリーダCR1、CR2は、電気錠制御装置M1と接続されており、電気錠制御装置M1は壁面等の適当な場所に設置されている。
【0018】
他の出入口にも、同様に、電気錠付き扉、カードリーダ及び電気錠制御装置が設けられている。すなわち、エリアBの出入口(エリアBとエリアDの境界)には、電気錠付き扉D2とカードリーダCR3、CR4が設置されており、これらが電気錠制御装置M2と接続されている。エリアCの出入口(エリアCとエリアDの境界)には、電気錠付き扉D3とカードリーダCR5、CR6が設置されており、これらが電気錠制御装置M3と接続されている。さらに、エリアDとエリアEの境界には、電気錠付き扉D4とカードリーダCR7、CR8が設置されており、これらは電気錠制御装置M4と接続されている。
【0019】
以下の説明では、電気錠付き扉D1〜D4を総称するときは電気錠付き扉Dといい、カードリーダCR1〜CR8を総称するときはカードリーダCRといい、電気錠制御装置M1〜M4を総称するときは、電気錠制御装置Mという。
【0020】
なお、図1の構成では、各電気錠付き扉Dごとに電気錠制御装置Mが設けられている。しかし、1つの電気錠制御装置が、複数の電気錠付き扉を集中管理するように構成されてもよい。
【0021】
次に、本実施の形態の出入管理システムの各構成要素について説明する。
【0022】
電気錠付き扉Dは電気錠を備えており、電気錠は通常時は施錠状態に維持されており、電気錠制御装置Mから解錠信号を受けた場合に所定時間だけ解錠される。利用者が所持しているIDカードに記憶されている識別コードをカードリーダCRに読み込ませるまでは、電気錠が解錠されず、利用者はエリア間を移動できない。利用者がカードリーダCRに識別コードを読み取らせると、カードリーダCRから電気錠制御装置Mに識別コードが送られる。電気錠制御装置Mで識別コードが照合され、認証が成功すれば電気錠が解錠される。
【0023】
図2は、カードリーダCRの構成を示している。カードリーダCRは、MPU等から構成される制御部10と、各カードリーダCRを識別するアドレスコード、処理プログラム、各種パラメータ、データなどを記憶する記憶部12と、電気錠制御装置Mと通信するための通信インターフェース14と、IDカードに記憶されている利用者の個人識別情報である識別コードを読み取る読取部16と、液晶モニタ、LED等で構成される表示部18とを備えている。
【0024】
IDカードは、磁気カード、ICカードまたは無線カード(送信機)等のいずれでもよい。システムの利便性の観点からは、IDカードは非接触式のカードであることが好ましい。
【0025】
また、本発明の範囲内で、識別コードの取得手段は上記のカードリーダCRに限定されない。コード取得手段は、カード以外の対象からコードを取得してもよい。例えば、コード取得手段は、個人の指紋、掌紋、声紋、虹彩等のバイオメトリクス情報を取得する装置であってもよい。取得されたバイオメトリクス情報は、個人を識別する識別コードとして処理される。このとき、バイオメトリクス情報が適当なコードに変換されてよいことはもちろんである。
【0026】
また、複数のコード取得手段が併用されてもよい。例えば、IDカードの識別コードと、識別コードとしてのバイオメトリクス情報とが併用されてもよい。この場合、カードリーダCRと共に指紋読取装置等が設けられる。
【0027】
図3は、電気錠制御装置Mの構成を示している。電気錠制御装置Mは、MPU等から構成される制御部20と、時計を利用した時間計測機能を有する計時部22と、各電気錠制御装置Mを識別するアドレスコード、管理情報、処理プログラム、各種パラメータ、データ等を記憶する記憶部24と、管理対象のカードリーダCRや電気錠と通信を行うとともに他の電気錠制御装置Mと通信を行う通信インターフェース26と、電気錠付き扉Dの施錠及び解錠を制御する電気錠制御部28とを備えている。
【0028】
電気錠制御装置Mの記憶部24には、管理情報として、(1)管理テーブル、(2)エリアテーブル、(3)制限エリアテーブル、(4)禁止テーブルが記憶されている。
【0029】
管理テーブルは、カードリーダCRの操作が許容された利用者の識別コードを記録したテーブルである。管理テーブルは、カードリーダCRで読み取られた識別コードの照合に利用される。
【0030】
エリアテーブルは、図4に示されるように、各カードリーダCRを管理する各電気錠制御装置Mのアドレスコードと、各カードリーダCRのアドレスコードと、カードリーダCRが設置されているエリアである所在エリアと、カードリーダCRに対応する電気錠と、カードリーダCRを操作した後の移動先エリアとを対応づけるテーブルである。移動先エリアは、カードリーダCRに対応する電気錠付き扉Dによって通行が規制されるエリアともいえる。
【0031】
なお、本実施の形態では、各電気錠制御装置Mは、図4のうちで自身の制御対象に関するテーブルを記憶している。例えば、電気錠制御装置M1は、図4のうちで、カードリーダCR1、CR2についてのテーブルを記憶している。ただし、各電気錠制御装置Mが、システム全体の情報(図4の全体)を記憶していてもよい。下記に述べる図5の制御エリアテーブル、図6の禁止テーブルについても同様である。
【0032】
制限エリアテーブルは、制限情報として操作されたカードリーダCRに対応して所定のカードリーダCRの操作を所定時間禁止する指示(禁止情報)を生成するための情報を有し、さらに、既に設定された禁止を解除する指示(禁止解除情報)を生成するための情報を有している。図5は、制限エリアテーブルを示しており、制限エリアテーブルでは、操作対象のカードリーダCRのアドレスコードと、制限対象のカードリーダCRのアドレスコードと、制限の種別(禁止/解除)と、禁止時間とが対応づけられている。
【0033】
具体的には、エリアBの電気錠制御装置M2の制限エリアテーブルでは、エリアBに対応する制限エリアとして、エリアAが設定されており、また、制限カードリーダとして、カードリーダCR2(エリアAへの入室用)が設定されている。そして、制限の種別が「禁止」であり、禁止時間が10時間に設定されている。禁止時間は、禁止対象となる所定区域への進入が禁止される時間であって、図5の例においては、例えば、エリアAに入っても問題がないレベルまで汚染レベルが低下するのに要する時間である。このようなテーブル設定に基づき、後述するように、エリアBのカードリーダCR3が操作されたとき、電気錠制御装置M2で制限エリアテーブルが参照されて、エリアAの電気錠制御装置M1に該当利用者の進入禁止が指示される。
【0034】
また、エリアCの電気錠制御装置M3の制限エリアテーブルでは、エリアCに対応する制限エリアとして、エリアAが設定されており、また、制限カードリーダとして、カードリーダCR2が設定されており、制限の種別が「解除」である。このような設定に従い、エリアCのカードリーダCR5が操作されたとき、電気錠制御装置M3で制限エリアテーブルが参照されて、エリアAの電気錠制御装置M1に該当利用者の進入禁止の解除が指示される。
【0035】
ここで、前述したように、エリアA、エリアB、エリアCはそれぞれ本発明の禁止対象区域、禁止原因区域、禁止解除原因区域である。上記の説明に示されるように、制限エリアテーブルは、禁止原因区域(エリアB)に対応する禁止対象区域(エリアA)を表す情報を有しており、また、禁止解除原因区域(エリアC)に対応する禁止対象区域(エリアA)を表す情報を有している。
【0036】
次に、禁止テーブルは、禁止状態にある利用者(以下、禁止利用者という)を記録するテーブルである。禁止状態とは、所定区域へと通行するためのカードリーダCRにおけるIDカードの使用を禁止する状態である。上記の制限エリアテーブルが予め設定されたテーブルであるのに対して、禁止テーブルは、逐次書き換えられるテーブルである。
【0037】
図6は禁止テーブルの例を示しており、禁止テーブルは、禁止利用者の識別コードを、禁止対象のカードリーダと対応づけている。図6はエリアAの電気錠制御装置M1の禁止テーブルであり、そして、利用者X、利用者YがカードリーダCR2と対応付けられている。この場合、利用者X、利用者Yは、カードリーダCR2を使ってエリアAに入れない状態にある。
【0038】
また、禁止テーブルには、識別コード及びカードリーダと対応付けて、禁止時間と経過時間情報が記録される。経過時間情報は、禁止状態の開始からの経過時間を表す情報であり、すなわち、禁止時間がどれくらい消化されたかを表す情報である。図6の例では、経過時間情報は経過時間そのものである。ただし、経過時間情報は、経過時間を表す他の情報でもよく、例えば、禁止時間終了までの残り時間でもよい。経過時間情報は、禁止利用者毎に管理され、時間の経過に伴い更新される。
【0039】
上記の禁止テーブルは、本発明の禁止状態記憶手段を構成している。本実施の形態では、禁止利用者を示す情報として識別コードが記録されている。しかし、本発明の範囲内で、禁止利用者を特定可能な別の情報が記録されてもよい。
【0040】
以上に、電気錠制御装置Mの記憶部24に記憶される管理用の各種テーブルについて説明した。次に、これらテーブルを用いた制御部20の制御処理について、図7及び図8のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
図7は、禁止テーブルの更新処理を示すフローチャートである。図7において、制御部20は、まず、禁止情報を受信したか否かを判定する(S10)。禁止情報が受信されると、制御部20は記憶部24の禁止テーブルに禁止情報を書き込み(S12)、禁止時間の計時を開始する(S14)。
【0042】
ここで、禁止情報は、後述する図8の処理で他の電気錠制御装置Mから送られてくる情報である。そして、禁止情報は、禁止対象のカードリーダCR(またはエリア、以下同じ)を示す情報と、禁止利用者として登録されるべき利用者の識別コードと、禁止時間とを含んでいる。ステップS12では、禁止情報に従い、図6に示されるように禁止テーブルに識別コード等の情報が書き込まれる。このとき、制御部20は、禁止状態記憶手段を構成する禁止テーブルに禁止利用者を登録して禁止状態を開始させており、本発明の禁止開始手段として機能する。また、ステップS14の計時開始処理では、制御部20が禁止テーブル中に経過時間情報を書き込む。以降、計時部22から得られる時間情報に基づいて、経過時間情報が逐次書き換えられる。
【0043】
ステップS14の後、制御部20の処理はステップS16に進む。ステップS10で禁止情報が受信されていない場合もステップS16に進む。ステップS16では、禁止解除情報が受信されたか否かが判断される。禁止解除情報が受信されていなければ、ステップS18に進み、禁止時間が経過したか否かが判定される。この判定は、禁止状態の利用者毎に行われる。そして、ある利用者の禁止時間が経過していれば、制御部20は、禁止テーブルから該当禁止情報を削除する(S20)。このとき、制御部20は、禁止利用者の登録を消去して禁止状態を終了させており、本発明の禁止終了手段として機能する。
【0044】
また、ステップS16で禁止解除情報が受信されていたとする。禁止解除情報は、上述の禁止情報と同様、後述の図8の処理で別の電気錠制御装置Mから送られてくる情報であり、禁止解除対象のカードリーダCR(またはエリア、以下同じ)を示す情報と、禁止状態を解除されるべき禁止利用者の識別コードとを含んでいる。禁止解除情報が受信された場合、制御部20は、ステップS20に進み、禁止テーブルから該当利用者の禁止情報を削除する。このとき、制御部20は、禁止利用者の登録を消去して禁止状態を解除しており、本発明の禁止解除手段として機能する。
【0045】
ステップS20での消去処理の後、または、ステップS18の判断がNoのとき、制御部20の処理はステップS10に戻る。
【0046】
次に、図8は、電気錠制御装置Mの制御部20による認証制御処理を示している。制御部20は、カードリーダCRより認証要求を受信したか否かを判定する(S30)。認証要求を受信していなければステップS30に戻る。利用者がカードリーダCRに識別コードを読み込ませると、カードリーダCRが識別コードを読み取って電気錠制御装置Mに送信し、これによりステップS30の判定がYesになり、制御部20は、認証要求に含まれる識別コードを照合する(S32)。ここでは、制御部20が、受信した識別コードを、記憶部24に記憶されている管理テーブルと照合する。そして、受信された識別コードと一致する識別コードが管理テーブルに登録されていない場合、ステップS34の判定がNoになり、認証結果がNGとなる(S38)。電気錠は解錠されず、制御部20は、通信インターフェース26を介してカードリーダCRに認証結果を送る。カードリーダCRでは通信インターフェース14により認証結果が受信される。そして、制御部10が表示部18に認証結果を出力させる。
【0047】
ステップS32で、受信された識別コードが、管理テーブル中の識別コードと一致した場合、ステップS34の照合結果がOKになる。そして、制御部20は、ステップS36にて、記憶部24の禁止テーブルを参照し、受信された識別コードが禁止状態にあるか否かを判定する(S38)。ここでは、制御部20は、受信された識別コードが禁止テーブル中に禁止状態の識別コードとして登録されているか否かを判定する。禁止状態が設定されていれば、ステップS38に進み、認証結果がNGとなる。前述したように、電気錠は解錠されず、認証結果がカードリーダCRに送信され、表示部18に表示される。
【0048】
一方、受信された識別コードに対して禁止状態が設定されていない場合、ステップS36の判断がNoになり、ステップS40にて認証結果がOKになり、制御部20は解錠制御を行う。電気錠制御部28が機能し、電気錠付き扉Dに解錠信号が送られる。電気錠付き扉Dでは、解錠信号に従い電気錠が解錠される。また、制御部20はカードリーダCRに認証結果を送り、カードリーダCRでは認証結果が表示部18より出力される。
【0049】
ステップS40にて認証がOKになると、次に、制御部20は、記憶部24の制限エリアテーブル中に、カードリーダCRに対応した制限情報が有るか否かを判定する(S42)。制限情報が無ければ、制御部20の処理はステップS30に戻る。制限情報が有る場合、制御部20は、制限情報が禁止情報を示しているか禁止解除情報を示しているかを判定する(S44)。制限情報が禁止情報を示していれば、制御部20は該当電気錠制御装置Mに禁止情報を送り(S46)、制限情報が禁止解除情報を示していれば、制御部20は該当電気錠制御装置Mに禁止解除情報を送信する(S48)。
【0050】
禁止情報及び禁止解除情報は、送信先の電気錠制御装置Mにて、図7の処理の中で使用される。禁止情報が送られると、図7のステップS10にて禁止状態が受信されたと判定され、S12で禁止情報が禁止テーブルに登録される。禁止解除情報が送られると、ステップS16にて禁止解除情報が受信されたと判定され、ステップS20にて該当する禁止情報が禁止テーブルから削除される。
【0051】
次に、本実施の形態に係る出入管理システムの具体的動作を説明する。まず、本システムで登録された利用者Xが、エリアBから出るとする。このとき、利用者Xは、エリアBのカードリーダCR3にIDカードの識別コードを読み込ませる。これにより、識別コードがカードリーダCR3から電気錠制御装置M2に送られる。
【0052】
電気錠制御装置M2は、図8のステップS30で認証要求を受信したと判定する。そして、ステップS32で識別コードが照合され、ステップS34で照合がOKになる。また、ステップS36では、利用者Xが禁止状態にはないと制御部20が判断する。これにより、ステップS40で認証結果がOKになり、解錠制御が行われ、電気錠付き扉D5の電気錠が解錠される。
【0053】
次に、ステップS42、S44にて、図5の制限エリアテーブルが参照される。図5に示されるように、電気錠制御装置M2の制限エリアテーブルでは、カードリーダCR3に対応した制限情報が存在しており、制限情報が禁止情報である。したがって、ステップS42、S44の判断がYesになり、ステップS46で禁止情報が送信される。禁止情報は、制限対象のエリアAの電気錠制御装置M1へ送られる。禁止情報としては、カードリーダCR2を示す情報と、識別コードと、禁止時間とが送られる。
【0054】
電気錠制御装置M1では、禁止情報を受信すると、図7の処理にて、ステップS10で禁止情報が受信されたと判定され、ステップS12で禁止テーブルに禁止情報が書き込まれる。ここでは、識別コード及び禁止時間が禁止テーブルに書き込まれる。そして、ステップS14にて、利用者Xについて、禁止状態設定からの経過時間の計時が開始する。
【0055】
以上が、利用者XがエリアBを出たときの動作である。次に、利用者Xが、エリアBを出た後、エリアAに行こうとしたとする。利用者Xが、エリアAの入室用のカードリーダCR2に識別コードを読み込ませると、識別コードが認証要求として電気錠制御装置M1に送られる。電気錠制御装置M1では図8のステップ30がYesになり、ステップS32以降の処理が行われる。
【0056】
しかし、この場合、電気錠制御装置M1の禁止テーブルでは、利用者Xに対して禁止状態が設定されている。そのため、ステップS36の判断がYesになり、ステップS38にて認証結果がNGになり、電気錠は解錠されない。認証結果はカードリーダCR2の表示部18に表示される。したがって、利用者XはエリアAに入ることができない。
【0057】
次に、利用者Xが、エリアBを出てから禁止時間が経過した後にエリアAに入ろうとしたとする。禁止時間は、図5の制限エリアテーブルでは、10時間に設定されている。禁止時間が経過するまで、電気錠制御装置M1では図7の処理が繰り返し行われている。そして、禁止時間が経過したとき、図7のステップS18の判断がYesになり、ステップS20で禁止テーブルから利用者Xの禁止情報が削除される。これにより、禁止状態は解除される。したがって、禁止時間の経過後に利用者Xの識別コードが送られたとき、図8のステップS36の判断がNoになり、ステップS40にて認証結果がOKになり、解錠制御が行われる。利用者XはエリアAに入室することができる。
【0058】
また、利用者Xが、禁止時間の経過前にエリアCに入り、そして、エリアCから出たとする。利用者Xが、エリアCから出るときにカードリーダCR5に識別コードを読み込ませると、識別コードが電気錠制御装置M3に送られる。電気錠制御装置M3では、図8のステップS30の判断がYesになり、ステップS32以降の処理が実行される。この場合、制御部20は、ステップS42で制御情報が存在すると判定し、ステップS44で制御情報が禁止解除情報であると判定する。そして、制御部20は、ステップS48にて、制限エリアAの電気錠制御装置M1へと、禁止解除情報を送信する。禁止解除情報としては、利用者Xの識別コードが、解除対象のカードリーダCR2を示す情報と共に送られる。
【0059】
電気錠制御装置M1では、禁止解除情報が受信されると、図7の処理において、ステップS16の判定がYesになり、ステップS20にて利用者Xの禁止情報が禁止テーブルから削除される。これにより、禁止状態は解除される。この後、利用者XがエリアAに行き、カードリーダCR2に識別コードを読み取らせたとする。禁止状態が解除されているので、電気錠制御装置M1による図8の認証制御では、認証結果がOKになり、解錠制御が行われる。したがって、利用者Xは、電気錠付き扉D1を開けてエリアAに入室できる。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、利用者XがエリアBの汚染物室を出た後は、エリアAの微生物室のみへの入室が規制される。汚染物室の影響が人体には及ばないが、微生物や小動物には問題になることが考えられる。このような場合に、汚染の悪影響が効果的に回避される。
【0061】
しかも、利用者Xは、エリアBの汚染物室を出た後にエリアAの微生物室に行く予定がなければ、エリアCのシャワー室に行かなくてよい。また、エリアBを出てから相当に時間が経過してからエリアAに行くときも、利用者XはエリアCに行かなくてよい。逆に、エリアBを出た後、比較的早くにエリアAに行くときは、利用者Xは、エリアCに行ってからエリアAに行けばよい。このように、利用者Xは、エリアB出た後にシャワーを使うように強制されず、エリアAに行くタイミングに応じて、シャワーを使うか否かを任意に選択できる。したがって、入退出にかかる手間が減り、利便性が向上する。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明した。上記の説明中で述べたように、本実施の形態では、電気錠制御装置Mの記憶部24が本発明の禁止状態記憶手段に相当し、制御部20が禁止開始手段、禁止終了手段及び禁止解除手段に相当する。そして、利用者が禁止原因区域から退出すると、その利用者が禁止状態記憶手段に禁止利用者として登録されて、禁止対象区域への進入が禁止状態になる。また、禁止時間が経過すると、禁止状態記憶手段の登録が消去されて、禁止状態が解除される。さらに、利用者が禁止解除原因区域から退出すると、禁止時間の経過前でも、禁止状態記憶手段の登録が消去されて、禁止状態が解除される。
【0063】
したがって、禁止原因区域を退出後に、禁止対象区域への進入が限定的に規制される。利用者は、禁止原因区域の退出後に禁止対象区域に行かないのであれば、禁止原因を取り除かなくてもよい。しかも、利用者は、禁止時間が経過するのを待てば、禁止原因を取り除く作業を行わずとも、禁止対象区域を利用できる。また、利用者は、禁止原因区域を利用した後、禁止解除原因区域を利用することで、禁止対象区域をすぐに利用できる。このようにして、汚染のような禁止原因を取り除く作業を行うか否かを利用者が選択可能になり、これにより利便性を向上できる。
【0064】
また、上述の実施の形態では、各出入部に制御装置を設ける分散型のシステムに本発明が適用されている。そして、禁止原因区域の制御装置から禁止対象区域の制御装置へと禁止開始の指示が送られ、また、禁止解除原因区域の制御装置から禁止対象区域の制御装置へと禁止解除の指示が送られている。このような制御装置間の連携により、特別な構成を付加することもなく、プログラム等の変更で本発明のシステムが好適に実現される。
【0065】
なお、既に述べたように、本発明は集中管理システムに適用されてもよい。図1の例を参照すると、集中管理用の制御装置が、図1の全電気錠付き扉D1〜D4及び全カードリーダCR1〜CR8と接続され、全区域の管理用のテーブルを記憶し、それらテーブルを使った制御処理を行う。この場合、制御装置間の通信及び関連処理を削減できる。
【0066】
また、本実施の形態の変形例の一つとして、下記に説明するように、禁止原因区域と禁止対象区域が同じ区域であってもよく、このような構成も本発明の範囲に含まれる。
【0067】
すなわち、上述の実施の形態では、エリアBから出てきた後にエリアAへの入室が禁止されており、退場に基づく入場制限が異なるエリアで行われた。これに対して、同じエリアにて、退場に基づいて入場が制限されてよい。この場合、図5の制限エリアテーブルにおいて、エリアBの制限エリアが、エリアAからエリアBに変更され、制限カードリーダがカードリーダCR2からカードリーダCR4(エリアBの入室用カードリーダ)に変更されればよい。さらに、エリアCの制限エリアがエリアAからエリアBに変更され、制限カードリーダがカードリーダCR2からカードリーダCR4に変更されればよい。これにより、エリアBから出た後に、所定時間が経過しないと、又はエリアCを経ないと、エリアBへの再入室ができなくなる。
【0068】
その他、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる出入管理システムは、複数区域の出入を管理することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に係る出入管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】カードリーダの構成を示すブロック図である。
【図3】電気錠制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】エリアテーブルを示す図である。
【図5】制限エリアテーブルを示す図である。
【図6】禁止テーブルを示す図である。
【図7】電気錠制御装置の制御部における禁止テーブルの更新処理を示すフローチャートである。
【図8】電気錠制御装置の制御部における認証制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
D1〜D4 電気錠付き扉
CR1〜CR8 カードリーダ
M1〜M4 電気錠制御装置
10 制御部
12 記憶部
14 通信インターフェース
16 読取部
18 表示部
20 制御部
22 計時部
24 記憶部
26 通信インターフェース
28 電気錠制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者による複数区域の出入を管理する出入管理システムであって、
前記複数区域の各出入部に設けられ利用者の識別コードを取得する複数のコード取得手段と、
前記複数区域のうちの所定の禁止対象区域への進入が禁止状態にある禁止利用者を示す情報を記憶する禁止状態記憶手段と、
前記複数区域のうちの所定の禁止原因区域の退出用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者を前記禁止利用者として前記禁止状態記憶手段に登録して禁止状態を開始させる禁止開始手段と、
前記禁止利用者の禁止状態が開始してからの経過時間を計る計時手段と、
前記計時手段により所定の禁止時間の経過が計時されたとき、前記禁止状態記憶手段における前記禁止利用者の登録を消去して禁止状態を終了させる禁止終了手段と、
前記禁止対象区域の進入用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者が前記禁止状態記憶手段に登録されているか否かに応じて通行の許否を判定する通行許否判定手段と、
を備えたことを特徴とする出入管理システム。
【請求項2】
前記複数区域のうちの所定の禁止解除原因区域の退出用のコード取得手段により識別コードが取得されたとき、取得された識別コードに対応する利用者についての登録を前記禁止状態記憶手段から消去して、前記禁止時間の経過前でも禁止状態を解除する禁止解除手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の出入管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−97386(P2006−97386A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286135(P2004−286135)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】