説明

分光光度計

【課題】 測定光束が試料中のどの位置に照射されるかを容易に確認しながら、試料室に試料を配置することができる分光光度計を提供すること。
【解決手段】 試料17中の被測定箇所に、紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射する照明部20と、試料17が配置されるための試料室14と、試料室14に配置された試料17中の被測定箇所を透過した透過光を検出する検出器10と、照明部20を制御する制御部30とを備える分光光度計1であって、制御部30は、試料17が試料室14に配置される前には、可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部20を自動的に制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光光度計に関し、特に紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射することができる分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
試料(例えば、樹脂、膜、結晶、ガラス、粉体等)中の被測定箇所における吸収スペクトルを測定するために、分光光度計が用いられている。
図4は、従来の分光光度計の一例を示す概略構成図である。分光光度計51は、測定光束を照射する照明部20と、試料17が配置される試料室14と、透過光を検出する積分球ユニット等の検出器10と、照明部20と検出器10とを制御するコンピュータ(制御部)60とを備える。
照明部20は、重水素ランプやハロゲンランプ等の光源23と、光源23から出射された光を分散する回折格子22と、測定光束が試料17中に照射される照射面積(例えば、8mm×8mm)を決めるとともに目的波長の測定光束を通過させるスリット21とを有する。
コンピュータ60は、CPU61を備え、さらにメモリ35と、モニタ画面等を有する表示装置33と、入力装置32であるキーボードやマウスとが連結されている。
【0003】
このような分光光度計51において、照明部20から出射された測定光束は、試料17が配置された試料室14へ導かれる。試料室14で測定光束は、試料17中の被測定箇所に照射され、試料17中の被測定箇所を通過した後で試料17中の被測定箇所から外へ透過光として出る。このとき、測定光束は、試料17中の被測定箇所による固有の吸収を受ける。そして、試料17中の被測定箇所から外へ出た透過光は、検出器10で検出される。その後、コンピュータ60は、検出器10の受光信号を解析することにより、試料17中の被測定箇所における吸収スペクトルを得る。
【0004】
ところで、このような分光光度計51では、紫外領域(180nm)から赤外領域(3000nm)までの内から選択される波長λ(例えば、200nm)から波長λ(例えば、800nm)までの測定光束を、試料17中の被測定箇所に順次照射することが回折格子22の角度や位置等を調整することで可能となっている。例えば、操作者は、入力装置32を用いて測定条件設定画像をモニタ画面23aに呼び出すことにより、入力装置32を用いて波長λや波長λ等の測定条件を入力している。これにより、試料17中の被測定箇所における波長λから波長λまでの吸収スペクトルを得ている。
また、試料17中における被測定箇所が小さい場合に、試料17中の被測定箇所に測定光束が正確に照射されるかを調べるために、波長λから波長λまでの測定光束を選択して照射する前に、入力装置32を用いて測定条件設定画像をモニタ画面23aに呼び出して、可視領域(400nm〜1000nm)の特定波長λ(例えば、550nm)の測定光束を入力することにより、試料17に特定波長λの測定光束を照射することで、測定光束が試料17中のどの位置に照射されるかを確認していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006―250836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測定光束が試料17中のどの位置に照射されるかを調べるために、波長λから波長λまでの測定光束を選択して照射する前に、特定波長λの測定光束を選択して照射するには、入力装置32等を操作する必要があり、複数の試料17を測定する場合には、試料17を交換するたびに入力装置32等を操作する必要があり、非常に手間がかかるという問題があった。
そこで、本発明は、測定光束が試料中のどの位置に照射されるかを容易に確認しながら、試料室に試料を配置することができる分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の分光光度計は、試料中の被測定箇所に、紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射する照明部と、前記試料が配置されるための試料室と、前記試料室に配置された試料中の被測定箇所を透過した透過光を検出する検出器と、前記照明部を制御する制御部とを備える分光光度計であって、
前記制御部は、前記試料が試料室に配置される前には、可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部を自動的に制御するようにしている。
【0007】
ここで、「試料が試料室に配置される前」とは、試料が、試料中の所望の被測定箇所に測定光束が照射される位置に配置される前のことをいい、試料が、試料中の所望の被測定箇所に測定光束が照射されない試料室中の仮位置に配置されることとは異なる。よって、本発明には、試料が仮位置に配置されるときには、特定波長の測定光束を照射せず、試料が仮位置に配置された後、特定波長の測定光束を照射し、その状態で試料が、試料中の所望の被測定箇所に測定光束が照射される位置に配置されることも含まれる。
また、「少なくとも一の特定波長の測定光束」とは、一の特定波長の測定光束のみであってもよく、一の特定波長から他の特定波長までの測定光束を順次照射するものであってもよく、一の特定波長と他の特定波長とが混ざった測定光束であってもよい。
本発明の分光光度計によれば、制御部は、試料が試料室に配置される前には、可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部を自動的に制御する。このように制御部が照明部を制御しているので、操作者は、測定光束が試料中のどの位置に照射されるかを確認するために、入力装置等を操作する必要もなくなる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の分光光度計によれば、測定光束が試料中のどの位置に照射されるかを容易に確認しながら、試料室に試料を配置することができる。
【0009】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の分光光度計は、前記制御部は、一の試料を測定するための前記紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射した後には、前記可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射するように照明部を自動的に制御するとともに、前記試料が試料室に配置された後には、前記可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束の照射を停止するように照明部を自動的に制御するようにしてもよい。
そして、本発明の分光光度計は、前記制御部は、前記試料が試料室に配置される前には、緑色領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部を自動的に制御するようにしてもよい。
本発明の分光光度計によれば、一般にヒトの眼には、緑色が見やすいので、緑色領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているようにすることができ、さらに初期設定として出荷時等に設定しておけば、操作者は、測定光束が試料中のどの位置に照射されるかを確認するために、入力装置等を一度も操作する必要もなくなる。
【0010】
さらに、本発明の分光光度計は、前記制御部が、前記試料が試料室に配置される前に照射している測定光束の少なくとも一の特定波長を設定する設定部を備え、前記制御部は、前記設定部に設定された測定光束の少なくとも一の特定波長に基づいて、前記照明部を自動的に制御するようにしてもよい。
本発明の分光光度計によれば、一般にヒトの眼には、緑色が見やすいので、550nm付近に設定すればよいが、試料が緑色である場合には、470nmの青色や650nmの赤色等に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である分光光度計の構成を示すブロック図である。
分光光度計1は、測定光束を照射する照明部20と、試料17が配置される試料室14と、透過光を検出する積分球ユニット等の検出器10と、照明部20と検出器10とを制御するコンピュータ(制御部)30とを備える。なお、分光光度計51と同様のものについては、同じ符号を付している。
コンピュータ30においては、CPU31を備え、さらにメモリ35と、モニタ画面等を有する表示装置33と、入力装置32であるキーボードやマウスとが連結されている。CPU31が処理する機能をブロック化して説明すると、特定波長設定λを設定する設定部43と、照明部20を制御する照明部制御部41と、検出器10を制御する検出器制御部42とを有する。
【0013】
図2は、分光光度計1により表示された初期条件設定画像の一例を示す図である。モニタ画面23aには、測光値の種類「反射率」と、検出器ユニット「積分球」と、スリット幅「8」mmと、特定波長設定λ「550」nmと、光源「自動」と、時定数「5.0」と、入力された測定条件を確定するためのOKボタンと、入力された測定条件を取消すためのCancelボタンとが表示されている。このように表示された初期条件設定画像は、入力装置32を用いてモニタ画面23aに呼び出されることになり、操作者は、初期条件設定画像を見ながら、入力装置32を用いて測定条件を入力していくことになる。
【0014】
設定部43は、特定波長設定λを設定する制御を行う。例えば、操作者によって入力装置32が操作されることにより、初期条件設定画像をモニタ画面23aに表示する。そして、操作者によって特定波長設定λ「550」nmと入力されることにより、特定波長設定λ「550」nmと設定する。このとき、一般にヒトの眼には、緑色が見やすいので、550nm付近に設定すればよいが、試料17が緑色である場合には、470nmの青色や650nmの赤色等に設定してもよい。
【0015】
照明部制御部41は、測定条件が入力された初期条件設定画像と測定条件設定画像とに基づいて、照明部20を制御する。例えば、設定部43によって特定波長設定λ「550」nmと設定されると(試料17が試料室14に配置される前には)、特定波長λの測定光束を照射する。そして、波長λ「200」nmと波長λ「800」nmと設定されると(試料17が試料室14に配置された後には)、波長λから波長λまでの測定光束を順次照射する。そして、波長λから波長λまでの測定光束を順次照射した後には、特定波長λの測定光束を照射する。このように試料17を測定しているとき以外には、特定波長λの測定光束を照射する。これにより、操作者は、入力装置32を操作する必要もなく、測定光束が試料17中のどの位置に照射されるかを確認しながら、試料17を、試料17中の所望の被測定箇所に測定光束が照射される位置に配置することができるようになっている。
検出器制御部42は、測定条件が入力された初期条件設定画像と測定条件設定画像とに基づいて、検出器10を制御する。例えば、照明部制御部41によって波長λの測定光束が照射されたときには、検出器10からの受光信号を受けることにより受光信号をメモリ35に記憶させ、照明部制御部41によって次の波長の測定光束が照射されたときには、検出器10からの受光信号を受けることにより受光信号をメモリ35に記憶させるように、照明部制御部41によって波長λから波長λまでの測定光束が順次照射されていくことにより、受光信号をメモリ35に記憶させていく。
【0016】
次に、分光光度計1により、複数の試料を順次測定する測定方法について説明する。図3は、分光光度計1による測定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、操作者は、入力装置32を用いて初期条件設定画像を呼び出し、特定波長設定λ「550」nmと入力する。
次に、ステップS102の処理において、設定部43は、特定波長設定λ「550」nmと設定して、照明部制御部41は、特定波長λの測定光束を照射する。
【0017】
次に、ステップS103の処理において、操作者は、試料17を試料室14に配置する。このとき、操作者は、特定波長λの測定光束が試料17中のどの位置に照射されているかを確認しながら、試料17を、試料17中の所望の被測定箇所に測定光束が照射される位置に配置することになる。
次に、ステップS104の処理において、操作者は、入力装置32を用いて測定条件設定画像を呼び出し、波長λ「200」nm、波長λ「800」nmと入力する。
次に、ステップS105の処理において、照明部制御部41は、試料17中の被測定箇所に照射する測定光束として、波長λから波長λまでの測定光束を順次照射していくとともに、検出器制御部42は、受光信号をメモリ35に記憶させていく。
【0018】
次に、ステップS106の処理において、照明部制御部41は、特定波長設定λ「550」nmと設定して、特定波長λの測定光束を照射する。
次に、ステップS107の処理において、操作者は、次の試料を測定するか否かを判断する。次の試料を測定すると判断したときには、ステップS108の処理において、操作者は、試料17を試料室14から除去して、ステップS103の処理に戻る。
一方、次の試料を測定しないと判断したときには、本フローチャートを終了させる。
【0019】
以上のように、本発明の分光光度計1によれば、測定光束が試料17中のどの位置に照射されるかを容易に確認しながら、試料17を、試料17中の所望の被測定箇所に測定光束が照射される位置に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射することができる分光光度計に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である分光光度計の構成を示すブロック図である。
【図2】分光光度計により表示された初期条件設定画像の一例を示す図である。
【図3】分光光度計による測定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図4】従来の分光光度計の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1:分光光度計
10:検出器
14:試料室
17:試料
20:照明部
30:コンピュータ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の被測定箇所に、紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射する照明部と、
前記試料が配置されるための試料室と、
前記試料室に配置された試料中の被測定箇所を透過した透過光を検出する検出器と、
前記照明部を制御する制御部とを備える分光光度計であって、
前記制御部は、前記試料が試料室に配置される前には、可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部を自動的に制御することを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
前記制御部は、一の試料を測定するための前記紫外領域から可視領域までの内から選択される波長の測定光束を照射した後には、前記可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射するように照明部を自動的に制御するとともに、
前記試料が試料室に配置された後には、前記可視領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束の照射を停止するように照明部を自動的に制御することを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。
【請求項3】
前記制御部は、前記試料が試料室に配置される前には、緑色領域から選択される少なくとも一の特定波長の測定光束を照射しているように照明部を自動的に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分光光度計。
【請求項4】
前記制御部が、前記試料が試料室に配置される前に照射している測定光束の少なくとも一の特定波長を設定する設定部を備え、
前記制御部は、前記設定部に設定された測定光束の少なくとも一の特定波長に基づいて、前記照明部を自動的に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分光光度計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−117171(P2010−117171A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288920(P2008−288920)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】