説明

分光装置、電子内視鏡、および電子内視鏡システム

【課題】光の利用効率が高い波長可変型の分光装置を提供する。
【解決手段】表面に電極膜と反射膜が積層形成された一対の基板と、所定の間隔で対向配置された一対の基板の間に形成された液晶層とを有し、常光と異常光の双方を透過させる、少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと、波長固定フィルタとを備え、常光と異常光の少なくとも一方が所定の受光面に到達するよう、少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと波長固定フィルタとが光源から所定の面に至る光路上に配置された分光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に適した分光を行う分光装置に関連し、より具体的には、常光と異常光の双方を利用可能とした光の利用効率の優れた分光装置、該分光装置を備えた電子内視鏡および電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内を診断するためのシステムとして、先端部に撮像素子を備えた電子内視鏡と、撮像素子により生成された画像信号を処理してモニタに出力するビデオプロセッサを備えた電子内視鏡システムが広く知られており、実用に供されている。この種の電子内視鏡システムには、特定の対象物(病変部等)からの戻り光に対応する特徴的な波長帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタを通して観察対象を撮像し、それによって得られた画像信号を処理して当該対象物をモニタ上で強調表示させるものがある。
【0003】
このような電子内視鏡システムは、従来、対象物毎に対応するバンドパスフィルタを交換する必要があり、その交換機構および付随作業は技術的負担であった。しかし、近年、透過スペクトルをコントロールできる波長可変型のバンドパスフィルタを搭載した電子内視鏡システムが実用化され、機構および付随作業の省略が可能となっている。電子内視鏡システムに適する波長可変型のバンドパスフィルタとしては、例えば特許文献1に開示される光変調素子が挙げられる。
【0004】
特許文献1の光変調素子は、2枚の偏光板を光路上に配置し、偏光板の間にスタックされた複数枚の液晶パネルを配置することにより構成されている。そして、液晶パネルに封入された複屈折性と色分散を有する液晶分子の配向を制御することによって液晶パネルを透過する光の偏光状態をコントロールし、特定の偏光成分の波長帯域の光のみを後段の偏光板から射出させるように構成されている。当該光変調素子の透過スペクトルのピークは、高い電圧が液晶パネルに印加されるほど短波長側にシフトする(特許文献1の図8参照)。
【特許文献1】特開平5−27254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1によれば、特定の偏光成分を含まない光は全て、偏光板によってカットされてしまう。また、後段の偏光板を透過する偏光成分の光も偏光板によって一定の吸収を受ける。このため、光の利用効率が低く、撮像素子に到達する光量が少ないという不利な点がある。このような不利な点を解消するため、例えば撮像素子の感度を増加させることが考えられるが、これはSN比の低下や検出時間の増大などの好ましくない効果を同時にもたらす。そのため、光の利用効率が高い波長可変型のバンドパスフィルタが望まれている。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光の利用効率が高い波長可変型の分光装置、電子内視鏡、および電子内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る分光装置は、光源から照射された光を所定の受光面に適するように分光する装置であり、表面に電極膜と反射膜が積層形成された一対の基板と、所定の間隔で対向配置された一対の基板の間に形成された液晶層とを有し、常光と異常光の双方を透過させる、少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと、波長固定フィルタとを備え、常光と異常光の少なくとも一方が所定の受光面に到達するよう、少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと波長固定フィルタとが光源から所定の面に至る光路上に配置されたことを特徴とした装置である。
【0008】
すなわち本発明によれば、常光と異常光の双方を撮像や撮影に利用できるようにした光の利用効率が高い分光装置が提供される。
【0009】
このような分光装置に備えられる波長可変ファブリペロー型フィルタには、一対の基板との表面に形成された電極膜間の印加電圧に応じて異常光の透過スペクトルが変化する構成が適する。
【0010】
また、例えば、電極膜は、互いに絶縁された複数の電極膜を含み、波長可変ファブリペロー型フィルタの上記所定の受光面に対応する領域毎に異なる電圧を印加することにより該領域毎の異常光の透過スペクトルを変化させることが可能である。
【0011】
液晶層は、通常ホモジニアス配向させたp型液晶、又はホメオトロピック配向させたn型液晶、或いはツイストネマティック配向させた液晶の何れかのタイプの液晶が利用可能であるが、それに限られるものではない。
【0012】
また、所定の受光面は、撮像素子の受光面であることが好ましい。
【0013】
波長固定フィルタは、透過スペクトルが互いに異なる複数種類の波長固定フィルタからなる構成としてもよい。このような構成においては、例えば波長可変ファブリペロー型フィルタに印加される電圧に応じて、複数種類の波長固定フィルタのうち第1の波長固定フィルタを透過して所定の面に到達する光は略異常光に制限され、第1の波長固定フィルタとは別の第2の波長固定フィルタを透過して所定の面に到達する光は略常光に制限され得る。また、例えばR、G、Bの3原色の波長固定フィルタを含む。
【0014】
また、波長固定フィルタは、所定の受光面に対して並列に配列された複数の波長固定フィルタから構成されたものとしてもよい。当該複数の波長固定フィルタにおいては、複数種類の波長固定フィルタが所定の受光面の画素毎に対応させて並べられている構成が好ましい。
【0015】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡は、所定の受光面を有する撮像素子および上述した分光装置を先端部に配置したことを特徴とした装置である。
【0016】
このように構成された電子内視鏡によれば、常光と異常光の双方を利用した光の利用効率が高い撮像処理を行うことができる。
【0017】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡システムは、照明光を発生する光源と、照明光を伝達するライトガイドと、ライトガイドによって伝達された照明光により照明された対象物を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子が出力する画像信号をモニタに表示可能に処理するビデオプロセッサとを備え、上述した少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタが光源とライトガイドの一端との間に配置され、かつ、上述した複数の波長固定フィルタが所定の受光面である撮像素子の受光面の直前に配置されていることを特徴としたシステムである。
【0018】
このように構成された電子内視鏡システムによれば、常光と異常光の双方を利用した光の利用効率が高い撮像処理を行うことができるとともに、所望の帯域に制限された照明光により照明された対象物の画像をモニタに表示させることができる。
【0019】
また、上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡システムは、照明光を発生する光源と、照明光を伝達するライトガイドと、ライトガイドによって伝達された照明光により照明された対象物を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子が出力する画像信号をモニタに表示可能に処理するビデオプロセッサとを備え、上述した波長固定フィルタが光源の直後に配置された面順次方式に対応するフィルタ配置であり、上述した少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタが光源から所定の受光面である撮像素子の受光面に至る光路上に配置されていることを特徴としたシステムである。
【0020】
このように構成された電子内視鏡システムによれば、常光と異常光の双方を利用した光の利用効率が高い撮像処理を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、常光と異常光の双方を撮像や撮影に利用できるようにした光の利用効率が高い分光装置、電子内視鏡、および電子内視鏡システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の波長可変型のバンドパスフィルタを備えた電子内視鏡システムについて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の概略外観図である。また、図2は、電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。これらの図に示されるように、電子内視鏡システム1は、光源装置100、電子内視鏡200、ビデオプロセッサ300、およびモニタ400から構成される。
【0024】
電子内視鏡200の基端部には、撮像素子用ドライバ216、液晶用ドライバ218等の回路基板を収容するコネクタユニット210が備えられている。コネクタユニット210からは二本のケーブルが延び、それぞれの先端部にはピンプラグ212、214が設けられている。ピンプラグ212が光源装置100のジャック110に差し込まれることにより、光源装置100と電子内視鏡200が光学的に接続される。また、ピンプラグ214がビデオプロセッサ300のジャック310に差し込まれることにより、ビデオプロセッサ300と電子内視鏡200が電気的に接続される。ビデオプロセッサ300とモニタ400は所定のケーブルを介して電気的に接続されている。
【0025】
上述のように電子内視鏡システム1の各要素が接続され、それぞれの電源が投入されると、術者は、電子内視鏡システム1を使用して患者を診断できるようになる。具体的には、術者は、可撓性を有する挿入部230を患者の体腔内に挿入して操作部220を操作し、先端部240を観察対象近傍に導く。そして、操作部220を操作するとともに、ビデオプロセッサ300の操作部320も操作して、その結果得られる画像をモニタ400で確認する。術者は、モニタ400を通じて患者の体腔内を観察し、患者の健康状態を検査する。
【0026】
図2に示されるように、光源装置100はランプ120と集光レンズ130を備えている。このようなランプ120には、白色光を照射するメタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等が適している。ランプ120が照射した白色光は、集光レンズ130により集光される。ここで、上述したようにジャック110とピンプラグ212とが接続されると、電子内視鏡200のライトガイド250の入射端250aが集光レンズ130の焦点近傍の位置に固定される。集光レンズ130で集光された光束は、光ファイバ束であるライトガイド250の入射端250aから当該ライトガイド250内に入射される。
【0027】
なお、図2においては図面の簡略化のため、電子内視鏡200と光源装置100およびビデオプロセッサ300との接続部分の図示を省略している。また、操作部220の図示も省略している。
【0028】
ライトガイド250は、電子内視鏡200内部を電子内視鏡200の長手方向に沿って配線され、他端(射出端250b)が先端部240の内部に配置されている。そして、射出端250bの前方に位置する先端部240の前面には、配光レンズ260が設けられている。よって、入射端250aからライトガイド250に入射された入射光は、ライトガイド250内を伝播して射出端250bから射出され、配光レンズ260を介して先端部240から外部に照射されて観察対象を照明する。
【0029】
先端部240内部には、光軸AX上に先端から順に、カバーレンズ、アパーチャ、対物レンズ等で構成される対物光学系270、波長可変型バンドパスフィルタ280、280’、および撮像素子290が配置されている。そして、照明された観察対象からの反射光は、対物光学系270を構成する各光学素子、波長可変型バンドパスフィルタ280、および280’を介して撮像素子290の受光面290sで光学像を結ぶ。波長可変型バンドパスフィルタ280、280’は、光軸AX上にスタックされ、或いは僅かに離隔して配置されている。これらの波長可変型バンドパスフィルタの構成および作用については後に詳説する。なお、先端部240の内径は約φ8〜15mmであり、波長可変型バンドパスフィルタ280、280’ は約5〜10mm角の板状素子である。
【0030】
撮像素子290は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCDであり、図2に示されるように、受光面290sが波長可変型バンドパスフィルタ280および280’のフィルタ面と平行になるように配置されている。そして、撮像素子290の受光面290s前面には、画素に対応したR(Red)、G(Green)、B(Blue)の3原色マイクロフィルタがベイヤ配列されたオンチップカラーフィルタ292が搭載されている。
【0031】
ここで、図10に、ベイヤ配列されたオンチップカラーフィルタ292を構成する各マイクロフィルタと、撮像素子290の受光面290s上の各画素との対応関係を説明する図を示す。図10において「R」、「G」、「B」が記されたマイクロフィルタはそれぞれ、R色、G色、B色に対応するマイクロフィルタを意味する。図10では便宜上、受光面290s上の一部の画素、およびオンチップカラーフィルタ292を構成する一部のマイクロフィルタのみを示す。
【0032】
オンチップカラーフィルタ292は、フィルタ面が撮像素子290の受光面290sと平行になるように配置されている。附言するに、オンチップカラーフィルタ292を構成する各マイクロフィルタは、受光面290sに並列に配置されており、受光面290s上の一の画素に対応して並んでいる。つまり、オンチップカラーフィルタ292を構成するマイクロフィルタは、受光面290s上の画素に1:1で対応するように並べられている。このため、図10のマイクロフィルタ2920Gを透過した光は、対応する画素、ここでは受光面290s上の画素2901で光学像を結ぶこととなる。また、他のマイクロフィルタ2920B、2920R、2921Gを透過した光もそれぞれ同様に、対応する画素、すなわち画素2902、2903、2904で光学像を結ぶこととなる。
【0033】
撮像素子290は、撮像素子用ドライバ216から信号ケーブル298を介して送られる駆動信号に従って駆動し、各画素上で結像した光学像をその光量に応じた電荷として蓄積して、画像信号に変換する。変換された画像信号は、信号ケーブル298を伝送してビデオプロセッサ300の絶縁回路330に入力され、次いで、絶縁回路330を介して前段処理回路350に入力される。なお、絶縁回路330は、電子内視鏡200とビデオプロセッサ300との間を伝送する信号を、例えばフォトカップラ等を使用して、電気絶縁性の媒体を伝播する非電気信号(ここでは光)として伝送する区間を設けることにより、電子内視鏡200とビデオプロセッサ300とを電気的に絶縁させている。
【0034】
ビデオプロセッサ300は、ビデオプロセッサ300全体を統括的に制御するシステムコントロールユニット340を備えている。前段処理回路350は、システムコントロールユニット340の制御下で動作し、電子内視鏡200から入力される画像信号に対して増幅、A/D変換等の処理を施して画像メモリ360に出力する。なお、システムコントロールユニット340は、撮像素子用ドライバ216を介して撮像素子290の駆動タイミングも制御している(図面の簡略化のため、電子内視鏡200側の各要素とシステムコントロールユニット340との結線は省略する)。
【0035】
画像メモリ360は画像信号をフレーム単位で格納する。そして、画像メモリ360に格納されたフレーム単位の画像信号は、所定のタイミング毎にビデオ信号処理回路370に出力される。この出力タイミングは、システムコントロールユニット340からの同期パルスに従って決定される。この同期パルスは、画像メモリ360と撮像素子用ドライバ216の双方に同一タイミングで出力される。すなわち同期パルスにより、ビデオプロセッサ300側での信号処理のタイミングと撮像素子290の駆動タイミングとが同期する。
【0036】
ビデオ信号処理回路370は、画像メモリ360からの画像信号に周知の画素補間処理を施すとともに、画素補間処理した画像信号をモニタ400で表示可能な形態(カラー信号と輝度信号)に変換する。そして、変換して得られたカラー信号および輝度信号を出力回路380に出力する。
【0037】
出力回路250は、カラー信号および輝度信号を各形式のビデオ信号(例えばコンポジットビデオ信号やSビデオ信号或いはRGBビデオ信号等)に変換してモニタ400に出力する。これにより、患者の体腔内の映像がモニタ400に表示され、術者は患者の体腔内を観察できるようになる。
【0038】
次に、波長可変型バンドパスフィルタ280について詳説する。波長可変型バンドパスフィルタ280は、波長可変型の狭帯域フィルタであり、液晶用ドライバ218を介したシステムコントロールユニット340の制御下で透過スペクトルがコントロールされる。システムコントロールユニット340は、術者による操作部320の操作に従って液晶用ドライバ218を制御する。
【0039】
図3(a)および(b)は、波長可変型バンドパスフィルタ280の構造を概略的に示す図である。図3(a)および(b)に示されるように、波長可変型バンドパスフィルタ280は、液晶層281を、2枚のガラス基板282から構成されるファブリペロー型干渉フィルタ内に封入して構成されている。ガラス基板282は、例えばNA35等の無アルカリガラスやBK7で構成される。各ガラス基板282には、ガラス基板282側から液晶層281側に向かって反射膜283、導電膜284、液晶配向膜285が順に堆積されている。すなわち液晶層281は、一対の液晶配向膜285に挟まれて構成されており、その層厚dはスペーサ286により規定されている。
【0040】
導電膜284は透光性を有する電極膜であり、ITO(インジウムスズ酸化物)で構成されている。反射膜283は半透過性の反射膜であり、金属反射膜や好ましくはDBR(Distributed Bragg Reflector)の構成を用いることが可能である。本発明の構成例ではSiO膜とTiO膜とを交互に堆積して構成されている。詳しくは、前段の反射膜283は、ガラス基板282側から導電膜284側に向かってTiO膜、SiO膜、TiO膜、SiO膜が順に堆積され、それぞれの膜厚が60nm、90nm、60nm、90nmである。後段の反射膜283も同様に、ガラス基板282側から導電膜284側に向かってTiO膜、SiO膜、TiO膜、SiO膜が順に堆積され、それぞれの膜厚が60nm、90nm、60nm、90nmである。
【0041】
一対の反射膜283は、液晶層281を挟んでおよそ距離dだけ離間し、互いに平行に配置されている。従って、液晶層281の屈折率を「n」とした場合、反射膜283間の光学的距離は「nd」となる(説明の便宜上、液晶配向膜285の厚みは無視する)。
【0042】
波長可変型バンドパスフィルタ280に入射された入射光は、一対の反射膜283の間(すなわち液晶層281内)を多重反射する。そして、反射光間の干渉により、光学的距離ndによって決まる所定の波長帯域の光のみが波長可変型バンドパスフィルタ280を透過する。
【0043】
液晶層281には、ホモジニアス配向させたp型液晶が封入されている。すなわち、液晶層281の液晶分子は、電場がかけられていないときには図3(a)に示されるように、一様にガラス基板282の面(光軸AXと直交する面)に平行に配向している。また、液晶用ドライバ218により導電膜284に電圧を印加して液晶層281内に電場を発生させた場合、各液晶分子は、発生した電場(あるいは印加電圧)に応じた角度だけガラス基板282の上記面に対し傾斜する。各液晶分子は、最大で、図3(b)に示されるように、長軸がガラス基板282の面と略垂直な方向を向くまで傾斜する。
【0044】
液晶層281に封入された液晶分子は、一軸性結晶と同様の光学的性質を有し、屈折率異方性、すなわち複屈折性を有する。詳細には、本実施形態で使用される液晶は、配向方向(液晶分子の長軸方向)と平行な振動電場をもつ光(異常光)に対しては屈折率neを有し、当該配向方向と垂直な振動電場をもつ光(常光)に対しては屈折率noを有する。このため、液晶用ドライバ218による印加電圧により液晶分子の長軸方向を入射光の振動面内で変えることにより、異常光に対する液晶層281の実効的な屈折率が、常光に対する値(屈折率no)から屈折率nemaxまでの範囲で変化する。一方、常光に対する液晶層281の屈折率は、印加電圧による液晶分子の回転によっては変化しない。
【0045】
このように常光に対する液晶層281の屈折率は変化しないため、常光の光学的距離ndは一定である。従って、常光に対する波長可変型バンドパスフィルタ280の透過スペクトルは、液晶層281に印加される電圧に拘わらず、常に同じものとなる。これに対して、異常光に対する液晶層281の屈折率は液晶層281に印加される電圧に応じて増大し、その屈折率変化によって異常光の光学的距離ndが増大する。このため、異常光に対する波長可変型バンドパスフィルタ280の透過スペクトルは、液晶層281に印加される電圧に応じて変化する。その様子を図4(a)〜(f)を用いて説明する。
【0046】
図4(a)〜(f)は、常光と異常光に対する波長可変型バンドパスフィルタ280の透過スペクトルを示す図である。縦軸が透過率を示し、横軸が波長を示す。また、実線が常光に対する透過スペクトルを示し、一点鎖線が異常光に対する透過スペクトルを示す。
【0047】
図4(a)は、液晶層281に電圧が印加されていない状態における透過スペクトルを示す。この場合、液晶層281において異常光と常光に対する屈折率は略等しく、反射膜283間での多重反射干渉の波長特性も実質的に同じである。このため、常光、異常光の双方に対する透過スペクトルが略同じとなる。
【0048】
図4(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ、0.5V、1V、4V、6V、7Vが液晶層281に印加されたときの透過スペクトルを示す。液晶層281に印加される電圧を増加させるほど、液晶層281において異常光に対する実効的な屈折率が増大し、光学的距離ndが増大する。これにより、反射膜283間での多重反射干渉の条件が常光と異常光とで異なったものとなり常光と異常光に対する透過スペクトルにも差が生じる。本実施形態の波長可変型バンドパスフィルタ280の構成によれば、図4(b)〜(f)に示されるように、液晶層281に印加される電圧を増加させるほど、異常光における透過スペクトルのピークが長波長側にシフトする。
【0049】
波長可変型バンドパスフィルタ280を透過した常光および異常光は、次に、波長可変型バンドパスフィルタ280’に入射される。なお、波長可変型バンドパスフィルタ280’は、液晶層の厚みを除いて波長可変型バンドパスフィルタ280と同一の構成を有する。従って、波長可変型バンドパスフィルタ280’の詳細な説明は、波長可変型バンドパスフィルタ280の説明をもって省略する。
【0050】
図5は、図4(b)と同様の図であって、波長可変型バンドパスフィルタ280’の液晶層に0.5Vが印加されたときの、常光と異常光に対する波長可変型バンドパスフィルタ280’の透過スペクトルを示す図である。波長可変型バンドパスフィルタ280’は、波長可変型バンドパスフィルタ280と比較して液晶層の厚さが大きく(例えば3倍程度)、液晶層の光路長が長い。このように、液晶層の光路長を長くすることにより、波長可変型バンドパスフィルタ280’の透過スペクトルは、波長可変型バンドパスフィルタ280の透過スペクトルと比較してピークが鋭く、かつ各ピークが狭い波長間隔で配置されたものとなる。
【0051】
図6は、図4や図5と同様の図であって、波長可変型バンドパスフィルタ280に1V、波長可変型バンドパスフィルタ280’に0.5Vが印加された状態における、波長可変型バンドパスフィルタ280と波長可変型バンドパスフィルタ280’の透過スペクトルを重畳した透過スペクトル(以下、「第1段階の重畳透過スペクトル」と記す)を示す図である。図4と同様に、実線が常光に対する透過スペクトルを示し、一点鎖線が異常光に対する透過スペクトルを示す。
【0052】
図6に一点鎖線で示される異常光の第1段階の重畳透過スペクトルには、470nm付近(B帯域)、570nm付近(G帯域)、および700nm付近(R帯域)において、半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が10〜20nm程度となる狭帯域のピークが配置されている。これらのピークは、異常光のピークであるため、各液晶層に印加される電圧に応じて長波長又は短波長側にシフト可能である。また、実線の常光のスペクトルには、680nm付近(R帯域)にFWHMが20nm程度となる狭帯域のピークが配置されている。このピークは、常光のピークであるため、各液晶層に印加される電圧に拘わらず680nm付近に固定され、シフトすることがない。
【0053】
すなわち、第1段階の重畳透過スペクトルには、光の利用効率が高まるように常光、異常光それぞれに対応する狭帯域のピークが配置され、常光と異常光の双方を撮像に利用できるようになっている。具体的には、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’を透過する偏波を制限する偏光板を配置しない構成を採用しているために、常光と異常光の両偏光成分を含む透過スペクトルが得られている。
【0054】
このため、波長可変型バンドパスフィルタ280に入射された入射光は、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’において、図6に例示される異常光の透過ピークのみが波長シフト可変な第1段階の重畳透過スペクトルによってフィルタリングされた後、波長可変型バンドパスフィルタ280’から射出されて、撮像素子290上のオンチップカラーフィルタ292に入射される。上述したように、常光と異常光は何れも各バンドパスフィルタ280,280’によってカットされることなく、低損失で透過するため、十分な光量の光がオンチップカラーフィルタ292に到達することになる。
【0055】
図7は、撮像素子290のオンチップカラーフィルタ292の透過スペクトルと、R帯域の第1段階の重畳透過スペクトルとの重畳を説明するための図である(なお、説明の便宜上、透過率は正規化されている)。292B、292G、292Rはそれぞれ、オンチップカラーフィルタ292を構成するB、G、R画素用のマイクロフィルタの透過スペクトルである。B、G画素用のマイクロフィルタの透過スペクトルはそれぞれ、470nm付近、540nm付近に透過率のピークを有する。R画素用のマイクロフィルタの透過スペクトルは、600nm以上の帯域に高い透過率を有する。
【0056】
従って、撮像素子290のB、G、R画素の前段にはそれぞれ、図6の第1段階の重畳透過スペクトルと図7のB、G、R画素用のマイクロフィルタのいずれかの透過スペクトルとを重畳させた透過スペクトル(以下、「第2段階の重畳透過スペクトル」と記す)のフィルタが配置されていることになる。例えば、R画素に入射される帯域の光は、波長可変型バンドパスフィルタ280、280’、およびオンチップカラーフィルタ292のR画素用のマイクロフィルタ292Rにより、図7に斜線で示される透過スペクトル292R’にフィルタリングされる。すなわち、B、G、Rの各画素には、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’を透過し、かつ、それぞれのマイクロフィルタによって各色成分に帯域制限された光のみが受光される。本実施形態によれば、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’において常光と異常光の双方を透過させつつ、各画素のマイクロフィルタにおいて不要な帯域をカットする構成を採用することにより、常光と異常光の双方を撮像に利用できるようにした光の利用効率が高いフィルタが提供されている。
【0057】
このように、第2段階の重畳透過スペクトルは、第1段階の重畳透過スペクトルと各画素用のマイクロフィルタの透過スペクトルとを重畳させたものであるため、第1段階の重畳透過スペクトルの変化に応じて変化する。すなわち、第2段階の重畳透過スペクトルは、波長可変型バンドパスフィルタ280と280’の各液晶層に電圧を印加して第1段階の重畳透過スペクトルを変化させることにより、コントロールされる。
【0058】
術者は、操作部320を操作して、例えば観察したい対象物からの戻り光に対する透過率が最も高くなるように第1段階の重畳透過スペクトルをコントロールする。例えばを重点的に観察したい波長域が決まっている場合には、第1段階の重畳透過スペクトルを図6に示されるようなスペクトルにコントロールすればよい。
【0059】
図6の異常光の透過スペクトルには、透過率が最も高いピークが700nmに配置されている。すなわち、撮像素子290は、第1段階の重畳透過スペクトルが図6に示されるものであるとき、波長700nm付近の光に対して最も高い感度を有する。従って、観察領域中に波長700nm付近の光を強く反射する部位があるとき、観察領域からの700nm付近の反射光は波長可変型バンドパスフィルタ280、280’及びR画素用マイクロフィルタによって略減衰されることなくR画素で受光される。また、B成分やG成分は波長可変型バンドパスフィルタ280および280’とR画素用マイクロフィルタ等により減衰される。当該B、G画素に対応する色はビデオ信号処理回路370が施す画素補間処理により補間され、当該部位(波長可変型バンドパスフィルタを透過した波長に対応する部位)が強調された画像がモニタ400に表示が可能になる。
【0060】
また、第1段階の重畳透過スペクトルのピークがR帯域に設定されている場合、ビデオプロセッサ300は、入射光量の多いR画素周辺のB、G画素の画像信号を無視して画像処理するようにしてもよい。
【0061】
ところで、上述したように、第1段階の重畳透過スペクトルには、波長シフト不能な固定ピーク(常光によるピーク)と波長シフト可能なピーク(異常光によるピーク)が配置されている。このようなピークの性質を利用して、例えば特定の対象物が常に強調表示され、かつ必要に応じて任意の対象物が選択的に強調表示できるように波長可変型バンドパスフィルタ280および280’が構成される。
【0062】
図8は、別の実施の形態の波長可変型バンドパスフィルタ280および280’による第1段階の重畳透過スペクトルを示す図である。図8の第1段階の重畳透過スペクトルは、図4(a)と同様に、液晶層に電圧が印加されていない状態を示し、常光と異常光の透過スペクトルが一致している。別の実施の形態では、波長可変型バンドパスフィルタ280や280’の材料や層構造、膜厚等を本実施形態に対して適宜変更することにより、図8に示される第1段階の重畳透過スペクトルを得ることができる。また、別の実施の形態の波長可変型バンドパスフィルタ280および280’は、ランプ120の直後に配置されている。従って、観察領域には、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’によりフィルタリングされた光が照射される。
【0063】
図8の第1段階の重畳透過スペクトルによれば、常光の透過ピークが、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい波長である450nm、540nm付近に配置されている。このようなスペクトルをもつ光を観察領域に照射することにより、粘膜表層の毛細血管や粘膜微細模様等がモニタ400に強調表示されるようになる。また、それと同時に、波長可変型バンドパスフィルタ280や280’の液晶層に電圧を印加して異常光の透過ピークを所望の波長にシフトさせることにより、特定の病変部等を選択的に強調表示させることができる。常光、異常光の双方を有効利用して、複数の対象物を一画面中に強調表示させることができる。この場合、複数の対象物の相関関係等を一画面中で確認できるメリットがある。
【0064】
続いて図9に、更に別の実施の形態の電子内視鏡システム1zの構成をブロック図で示す。電子内視鏡システム1zは、撮像方式が周知の面順次方式に対応して構成されており、図9に示されるように、光源装置100z、電子内視鏡200z、ビデオプロセッサ300z、およびモニタ400から構成される。
【0065】
電子内視鏡システム1zは、光源装置100zが回転フィルタ140およびモータ150を備え、かつ電子内視鏡200zが撮像素子290zを備える点において電子内視鏡システム1と相違し、他の構成要素については電子内視鏡システム1と同一又は同様である。厳密には、電子内視鏡システム1zは撮像方式が周知の面順次方式に対応して構成されているため、画像メモリ360がRGBの各色成分に対応した3つのフレームメモリで構成される点等の相違があるが、そのような相違点は便宜上、図面には示していない。
【0066】
電子内視鏡システム1zは、上述したように、撮像方式が周知の面順次方式に対応した構成となっている。このため、システムコントロールユニット340がモータ150を駆動制御して回転フィルタ140を回転させると、ランプ120が照射する白色光が回転フィルタ140によりR光、G光、B光に順次変換されて集光レンズ130に入射し、ライトガイド250および配光レンズ260を介して体腔内を順に照明する。次いで、R光、G光、B光で照明された体腔内からの戻り光が対物光学系270に入射し、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’によりフィルタリングされた後、撮像素子290zに順に受光される。撮像素子290zは例えばモノクロCCDであり、撮像素子用ドライバ216からの駆動信号により回転フィルタ140の回転に同期してR光、G光、B光に対応する各像の画像信号を順次出力する。出力されたR光、G光、B光に対応する各像の画像信号は、信号ケーブル298を順次伝送して絶縁回路330および前段処理回路350を介して画像メモリ360の各フレームメモリに保持される。そして、各フレームメモリの画像信号が同時に読み出されてビデオ信号処理回路370により同時化された後、出力回路380を介してモニタ400に出力される。これにより、患者の体腔内の映像がモニタ400に表示され、術者は患者の体腔内を観察できるようになる。
【0067】
本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば仕様に合わせた最適な第1段階の重畳透過スペクトルを得るためには、液晶層281や反射膜283等の材料や層構造、膜厚等が適宜採用される。
【0068】
ホモジニアス配向させたp型液晶の代替として、図11(a)および(b)に示されるホメオトロピック配向させたn型液晶、又は図12(a)および(b)に示されるツイストネマティック配向させたp型液晶の何れかを液晶層281として使用してもよい。なお、図11および12は図3と同様の図であるため、これらの図面の詳細な説明は省略する。
【0069】
図11(a)および12(a)は、液晶層281の液晶分子が電場にかけられていない状態を示す。また、図11(b)および12(b)は、液晶層281の液晶分子が電場にかけられている状態を示す。図11(a)および(b)に示されるように、ホメオトロピック配向させたn型液晶は、ホモジニアス配向させたp型液晶とは逆に、電場非印加時には液晶分子の長軸がガラス基板282の面と略垂直な方向に向き、電場印加時には該長軸がガラス基板282の面に平行に向く。ホメオトロピック配向させたn型液晶の場合、液晶層281に印加される電圧を増加させるほど、異常光の透過ピークが短波長側にシフトする。
【0070】
図12(a)に示されるように、ツイストネマティック配向させたp型液晶は、電場非印加時には液晶分子が液晶層281内で90度ねじれて配列された状態にある。そして、電場印加時には図12(b)に示されるように、液晶分子は、長軸がガラス基板282の面と略垂直な方向を向いた状態に配列される。ツイストネマティック配向させたp型液晶の場合、液晶層281に印加される電圧を増加させるほど、ホモジニアス配向させたp型液晶と同様に、異常光の透過ピークが長波長側にシフトする。
【0071】
また、導電膜284を複数の透光性を有する線状電極が画素間隔で配列された構成とし、それぞれの線状電極群が互いに直交するように液晶層281を挟んで一対の導電膜284が配置された構成を採用してもよい。ここで、図13(a)および(b)に、このような一対の導電膜284(導電膜2841と2842)の概略構成を図示する。例えば、導電膜2841は前段すなわち対物光学系270側に、導電膜2842は後段すなわち撮像素子290側に配置されている。そして、これらの導電膜は、図13(a)および(b)に示されるように、互いの線状電極群が直交するように配置されている。この場合、液晶層281を周知の単純マトリクス方式で動作させることができる。導電膜2841と2842の線状電極群の本数や配置間隔等を適切に設計することにより、波長可変型バンドパスフィルタ280や280’の透過スペクトルを例えば画素単位でコントロールできるようになる。
【0072】
また、波長可変型バンドパスフィルタ280および280’は、撮像素子290の受光面290s上に積層された構成としてもよい。この場合、撮像素子290の受光面290s上に波長可変型バンドパスフィルタ280、280’、オンチップカラーフィルタ292を何れの順序で積層してもよい。
【0073】
また、集光レンズ130の前段に波長可変型バンドパスフィルタ280を、撮像素子290(オンチップカラーフィルタ292)の前段に波長可変型バンドパスフィルタ280’を配置する構成を採用してもよい。波長可変型バンドパスフィルタは、用途や仕様に応じて、ランプ120から撮像素子290(又は撮像素子290z)の受光面290sに至る光路中の何れの位置にも配置され得る。
【0074】
また、波長可変型バンドパスフィルタの数は2枚に限らず、1枚又は3枚以上としてもよい。
【0075】
また、撮像素子290はCCDに限らず、C−MOSとしてもよい。
【0076】
また、オンチップカラーフィルタ292は、RGBの原色系フィルタに限らず、シアン、マゼンタ、イエローからなる補色系フィルタとしてもよい。
【0077】
また、波長可変型バンドパスフィルタは、波長可変型バンドパスフィルタ280や280’のように所定の波長を透過させる透過型フィルタに限定されず、入射面から射出される反射型フィルタであってもよい。波長可変型バンドパスフィルタは、例えば反射膜283の膜構成が変更されて反射率が高められることにより、透過型フィルタとしての機能を具備した構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの概略外観図である。
【図2】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態のホモジニアス配向のp型液晶を用いた場合の波長可変型バンドパスフィルタの積層構造を概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の前段側の波長可変型バンドパスフィルタの透過スペクトルを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の後段側の波長可変型バンドパスフィルタの透過スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の二枚の波長可変型バンドパスフィルタの重畳透過スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態のオンチップカラーフィルタの透過スペクトルと、R帯域の重畳透過スペクトルとの重畳を説明するための図である。
【図8】別の実施の形態の二枚の波長可変型バンドパスフィルタの重畳透過スペクトルを示す図である。
【図9】別の実施の形態の電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図10】ベイヤ配列されたオンチップカラーフィルタを構成する各マイクロフィルタと、撮像素子の受光面上の各画素との対応関係を説明する図である。
【図11】別の実施の形態のホメオトロピック配向させたn型液晶を用いた場合の波長可変型バンドパスフィルタの積層構造を概略的に示す図である。
【図12】別の実施の形態のツイストネマティック配向させたp型液晶を用いた場合の波長可変型バンドパスフィルタの積層構造を概略的に示す図である。
【図13】別の実施の形態の波長可変型バンドパスフィルタを構成する導電膜の概略構成図である。
【符号の説明】
【0079】
1 電子内視鏡システム
100 光源装置
200 電子内視鏡
280、280’ 波長可変型バンドパスフィルタ
290 撮像素子
292 オンチップカラーフィルタ
300 ビデオプロセッサ
400 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光を所定の受光面に適するように分光する分光装置であって、
表面に電極膜と反射膜が積層形成された一対の基板と、
所定の間隔で対向配置された前記一対の基板の間に形成された液晶層と
を有し、常光と異常光の双方を透過させる、少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと、
波長固定フィルタと
を備え、
前記常光と異常光の少なくとも一方が前記所定の受光面に到達するよう、前記少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタと前記波長固定フィルタとが前記光源から前記所定の受光面に至る光路上に配置されたことを特徴とする分光装置。
【請求項2】
前記波長可変ファブリペロー型フィルタは、前記一対の基板の表面に形成された電極膜間の印加電圧に応じて異常光の透過スペクトルが変化することを特徴とする請求項1に記載の分光装置。
【請求項3】
前記電極膜は、互いに絶縁された複数の電極膜を含み、前記波長可変ファブリペロー型フィルタの前記所定の受光面に対応する領域毎に異なる電圧を印加することにより該領域毎の異常光の透過スペクトルを変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の分光装置。
【請求項4】
前記液晶層は、ホモジニアス配向させたp型液晶、又はホメオトロピック配向させたn型液晶、或いはツイストネマティック配向させた液晶の何れかのタイプの液晶からなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の分光装置。
【請求項5】
前記所定の受光面が撮像素子の受光面であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の分光装置。
【請求項6】
前記波長固定フィルタは、透過スペクトルが互いに異なる複数種類の波長固定フィルタからなることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の分光装置。
【請求項7】
前記波長可変ファブリペロー型フィルタに印加される電圧に応じて、前記複数種類の波長固定フィルタのうち第1の波長固定フィルタを透過して前記所定の面に到達する光は略異常光に制限され、前記第1の波長固定フィルタとは別の第2の波長固定フィルタを透過して前記所定の面に到達する光は略常光に制限されることを特徴とする請求項6に記載の分光装置。
【請求項8】
前記複数種類の波長固定フィルタは、R、G、Bの3原色の波長固定フィルタを含むことを特徴とする請求項6又は請求項7の何れかに記載の分光装置。
【請求項9】
前記波長固定フィルタは、前記所定の受光面に対して並列に配列された複数の波長固定フィルタから構成されていることを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の分光装置。
【請求項10】
前記複数の波長固定フィルタにおいては、前記複数種類の波長固定フィルタが前記所定の受光面の画素毎に対応させて並べられていることを特徴とする請求項9に記載の分光装置。
【請求項11】
前記所定の受光面を有する撮像素子および請求項1から請求項10の何れかに記載の分光装置を先端部に配置したことを特徴とする電子内視鏡。
【請求項12】
照明光を発生する光源と、前記照明光を伝達するライトガイドと、前記ライトガイドによって伝達された照明光により照明された対象物を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子が出力する画像信号をモニタに表示可能に処理するビデオプロセッサとを備えた電子内視鏡システムにおいて、
請求項1から請求項10の何れかに記載の少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタが前記光源と前記ライトガイドの一端との間に配置され、
請求項1から請求項10の何れかに記載の前記波長固定フィルタが前記所定の受光面である前記撮像素子の受光面の直前に配置されていることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項13】
照明光を発生する光源と、前記照明光を伝達するライトガイドと、前記ライトガイドによって伝達された照明光により照明された対象物を撮像する撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子が出力する画像信号をモニタに表示可能に処理するビデオプロセッサとを備えた電子内視鏡システムにおいて、
請求項1から請求項8の何れかに記載の前記波長固定フィルタが前記光源の直後に配置された面順次方式に対応するフィルタ配置であり、
請求項1から請求項8の何れかに記載の少なくとも1段の波長可変ファブリペロー型フィルタが前記光源から前記所定の受光面である前記撮像素子の受光面に至る光路上に配置されていることを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−168597(P2009−168597A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6663(P2008−6663)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】