説明

分析装置

【課題】確実に測定セルに検体が吐出されたことを監視する。
【解決手段】検体である血液24を測定セル41内に吐出する検体吐出手段と、前記測定セル41内に溶血剤を吐出させて検査試料を作製する検査試料作製手段と、前記測定セル41内の液体の吸光度情報を検出する検出手段と、前記検出手段が時系列的に検出した前記溶血剤吐出前の吸光度情報と前記溶血剤吐出後の吸光度情報とに基づき監視対象情報を作成する作成手段14と、作成された監視対象情報と所定閾値とを用いて前記検体の吐出量の適否を判定する判定手段15とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吐出量監視が可能な分析装置に関するものであり、特に有効には全血から免疫反応や血球計数を測定する分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測定セルに検体が適正に吐出されたか否かを検出する手法としては、圧力変化を利用したもの(特許文献1参照)や気泡検出を利用したもの(特許文献2参照)が知られている。
【0003】
更に、サブ反応容器に残余の検体を吐き出す制御部を有する装置において、上記サブ反応容器に測定光を照射して吸光度を測定する測光部を備え、この測光部によって測定した吸光度が所定値未満であった場合に規定量の検体がメイン反応容器に吐き出されなかったと判定する装置が知られている(特許文献3)。
【0004】
また、反応容器に分注された色素溶液を透過する光の強度を測定して、設定分注量毎に評価吸光度を求め、予め測定された基準吸光度に対する前記評価吸光度の比率を設定分注量毎に求めて最大比率と最小比率の差分と平均比率から乖離を演算して、分注精度が許容範囲であるかを判定する装置も知られている(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、上記圧力変化を利用したものや気泡検出を利用したものにあっては、圧力検出センサや気泡検出センサなどの専用センサが必要となり、構成が大掛かりとなり、コスト高にもつながるという問題があった。
【0006】
上記の残余の検体が吐出されたサブ反応容器における吸光度測定によりメイン反応容器へ適正に検体の吐出がなされたかを検出する特許文献3に記載の手法は、推定による手法であり、サブ反応容器に残余分相当量の検体が吐出されたからといって必ずしもメイン反応容器へ適正に検体の吐出がなされたことが確実であるという訳ではなく、確実性に難がある検出手法である。
【0007】
また、設定分注度毎に予め測定された基準吸光度に対する評価吸光度の比率を求める特許文献4に記載の手法は、設定分注度毎に測定と演算が必要であり、測定の工数と時間を多く要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4275608号明細書
【特許文献2】特許第3043510号明細書
【特許文献3】特開2009−168738号公報
【特許文献4】特開2009−281914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような分析装置における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、確実に測定セルに検体が吐出されたことを監視することができ、かつ測定に多くの工数と時間を要することのない分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る分析装置は、検体である血液を測定セル内に吐出する検体吐出手段と、前記測定セル内に溶血剤を吐出させて検査試料を作製する検査試料作製手段と、前記測定セル内の液体の吸光度情報を検出する検出手段と、前記検出手段が時系列的に検出した前記溶血剤吐出前の吸光度情報と前記溶血剤吐出後の吸光度情報とに基づき監視対象情報を作成する作成手段と、作成された監視対象情報と所定閾値とを用いて前記検体の吐出量の適否を判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る分析装置では、更に、少なくとも前記監視対象情報又は前記所定閾値の少なくとも一方を、ヘモグロビン濃度またはヘマトクリット値に基づいて補正する補正手段を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る分析装置では、検出手段は、検体の特性を考慮したサンプリング期間において吸光度情報を検出することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る分析装置では、検出手段は、光波長650nm以上の光を用いて吸光度情報を検出することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る分析装置は、温度センサと、測定セルに含まれる試薬の許容温度と前記温度センサにより得られる温度応じてアラームを出力する温度アラーム制御手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る分析装置は、測定セルに含まれる試薬の許容温度に応じて装置温度を制御する温度制御機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る分析装置は、測定セル内の液体の吸光度情報を検出し、時系列的に検出した前記溶血剤吐出前の吸光度情報と前記溶血剤吐出後の吸光度情報とに基づき監視対象情報を作成し、作成された監視対象情報と所定閾値とを用いて前記検体の吐出量の適否を判定するので、測定セルへの吐出を確実に監視することができ、溶血剤吐出後の所定時間までの測定が可能であるから測定に多くの工数と時間を要さないという利点がある。
【0017】
本発明に係る装置では、更に、少なくとも前記監視対象情報又は前記所定閾値の少なくとも一方を、ヘモグロビン濃度またはヘマトクリット値に基づいて補正する補正手段を有するので、適切に吐出量監視を行うことが可能である。
【0018】
本発明に係る分析装置によれば、検出手段が、検体の特性を考慮したサンプリング期間において吸光度情報を検出するので、無駄なく且つ適切に吐出量監視を行うことが可能である。
【0019】
本発明に係る分析装置によれば、検出手段は、光波長650nm以上の光を用いて吸光度情報を検出するので、検体である血液に適応して適切に吐出量監視を行うことが可能である。
【0020】
本発明に係る分析装置によれば、温度センサと、測定セルに含まれる試薬の許容温度と前記温度センサにより得られる温度に応じてアラームを出力する警報出力制御手段とを具備するので、温度により不適切な監視状態となることを知らせることができる。
【0021】
本発明に係る分析装置によれば、測定セルに含まれる試薬の許容温度に応じて装置温度を制御する温度制御機構を備えるので、試薬の許容温度において適切な状態での吐出量監視が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る分析装置の実施形態の構成図。
【図2】本発明に係る分析装置の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明に係る分析装置の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】本発明に係る分析装置の実施形態による監視結果による吸光度変化曲線を示す図。
【図5】個人差による、検体吐出及び溶血剤吐出後の吸光度変化曲線を示す図。
【図6】検体が適切に吐出された場合の測定セル内の変化を説明する図。
【図7】検体が適切に吐出されなかった場合の測定セル内の変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明に係る分析装置の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に、実施形態に係る分析装置のブロック図を示す。この分析装置は、例えばCRP(C-Reactive Protein)を測定することが可能である。
【0024】
測定器は、検体としての血液(全血)を吸引し又吐出する検体吸引吐出部20、溶血剤の吸引と吐出を行う溶血剤吸引吐出部30、測定セル41の保持及び測定セル41内の液体を攪拌する測定セル保持機構40、CPUなどにより構成される演算処理部10を主な構成要素とする。
【0025】
検体吸引吐出部20は、演算処理部10に制御されて動作する。検体吸引吐出部20は吸引吐出のためのアクチュエータとしてモータなどを備え、血液を吸引するためのノズル21が結合されており、ノズル21は測定器における筐体の外部へ延在している。また、検体吸引吐出部20には、測定セル保持機構40の保持位置Sに保持された測定セル41へ検体を吐出するためのノズル22が結合されている。検体吸引吐出部20には、ノズル22を上下動させる駆動手段が備えられている。この駆動手段により、ノズル22は測定セル41へ挿入され、また抜去される。なお、ノズル22を設けずノズル21が駆動し、測定セル41へ挿入され、また抜去される構成としてもよい。
【0026】
溶血剤吸引吐出部30は、演算処理部10に制御されて動作する。溶血剤吸引吐出部30には、溶血剤タンク31が付設されており、この溶血剤タンク31内へノズル32が延在している。また、溶血剤吸引吐出部30は、測定セル保持機構40の保持位置Sに保持された測定セル41へ検体を吐出するためのノズル33を備えている。溶血剤吸引吐出部30には、ノズル33を上下動させる駆動手段が備えられている。この駆動手段により、ノズル33は測定セル41へ挿入され、また抜去される。なお、ノズル33を設けずノズル32が駆動し測定セル41へ挿入され、また抜去される構成としてもよい。
【0027】
測定セル保持機構40は、測定用の試薬(ここではCRP測定用の試薬)が予め封入された測定セル41を着脱可能に把持する把持部42と、演算処理部10の把持部42を回転や転倒させるなどの運動により攪拌を行う撹拌機構43とを備えている。オペレータは、試薬が封入された測定セル41を測定セル保持機構40の把持部42へセットして把持させ、測定後に取り外し廃棄することができる。
【0028】
演算処理部10には、操作部51、表示部52、温度センサ53、発光素子54及び受光素子55が接続されている。操作部51には、スタートスイッチやモード選択キーなどが備えられ、スタート指示やモード選択指示を演算処理部10に与えることができる。
【0029】
表示部52は、情報を表示するLEDやLCDにより構成されるものであり、測定結果やアラームなどの表示がなされるように構成されている。演算処理部10には、測定器に内蔵或いは外付けでプリンタを接続して測定結果などをプリントアウトできるように構成しても良い。
【0030】
温度センサ53は、測定器内の、特に測定セル保持機構40の保持位置Sに近接したエリアの温度を検出する位置に設けられる。温度センサ53により計測された温度データは演算処理部10に取り込まれてディジタル化される。
【0031】
発光素子54及び受光素子55は、測定セル保持機構40の保持位置Sに保持された測定セル41を挟んで対抗する位置に配置されている。測定セル41は、透明或いは半透明の樹脂製の容器であり、発光素子54から射出される光を透過する。透過した光は受光素子55が受光し、光電変換して電圧として演算処理部10へ送られる。ここに、発光素子54から射出される光の波長は、検体である血液の波長(赤色の領域)から外れていることが求められ、光波長650nm以上の光を用いた場合に好適な結果を得ることができる。図6、図7に示すように、発光素子54は2個のLED54A、54Bから構成されており、受光素子55も2個のフォトダイオード55A、55Bから構成され、これらは本来のCRP測定に用いられるが、分析装置には、下側に設けられたLED54Bとフォトダイオード55Bのペアが用いられる。従って、吐出量監視のために新たなセンサを設けなくとも良い利点がある。演算処理部10はフォトダイオード55Bから出力された電圧をA/D変換してサンプリングして用いる。
【0032】
演算処理部10には、検体制御手段11、検査試料作製手段12、検出処理手段13、作成手段14、判定手段15、報知出力制御手段16、温度アラーム制御手段17、測定処理手段18が備えられている。検体制御手段11は、検体吸引吐出部20を制御して試験管(或いはキャピラリー)23に入れられた検体である血液24を吸引させて保持させ、その後に測定セル41へ吐出させる制御を行うものである。
【0033】
検査試料作製手段12は、溶血剤吸引吐出部30を制御して測定セル41内に溶血剤を吐出させて検査試料を作製するものである。検出処理手段13は、発光素子54を制御して発光を生じさせ、受光素子55から吸光度情報を得て測定セル41内の液体の吸光度情報を検出するものである。作成手段14は、検出処理手段13が時系列的に検出した溶血剤吐出前の吸光度情報と溶血剤吐出後の吸光度情報とに基づき監視対象情報を作成するものである。判定手段15は、作成された監視対象情報と所定閾値とを用いて上記検体の吐出量の適否を判定するものである。報知出力制御手段16は、判定手段15による判定結果を表示手段52に表示するものである。
【0034】
更に、温度アラーム制御手段17は、温度センサ53から温度情報を得て、測定セル41に含まれる試薬(ここでは、CRP測定の試薬)の許容温度と上記温度センサ53により得られる温度情報に応じて例えば表示手段52にアラームを出力するものである。アラームの出力は、スピーカを設けて音声により行っても良く、また、LEDなど光によりアラーム出力を行っても良い。
【0035】
測定処理手段18は、検査試料作製手段12により測定セル41内に作製された検査試料に対して、この測定器の本来的な機能を実現して測定を行うものであり、ここではCRP測定を行うものである。測定処理手段18は、発光素子54として2個のLED54A、54B、及び受光素子55として2個のフォトダイオード55A、55Bを使用して測定処理を行う。
【0036】
以上のように構成された測定器は、演算処理部10が図2、図3に示すようなフローチャートに対応するプログラムを実行することにより、各手段が実現される。以下、このフローチャートに基づき、測定器の動作を説明する。測定セル41を測定セル保持機構40の保持位置Sに保持させ、スタートスイッチを操作することにより動作がスタートとなる。オペレータは、検体である血液24が入った試験管(或いはキャピラリー)23をノズル22の直下に保持しておくと、検体制御手段11の制御により検体吸引吐出部20が動作し、ノズル21が降下させられて先端部が血液24に浸され、所定量の検体の吸引が行われる(S11)。所定量の検体の吸引が終了すると、検体吸引吐出部20はノズル21をホームポジションへ戻す。
【0037】
次に、検査試料作製手段12は溶血剤吸引吐出部30を制御して溶血剤タンク31からノズル32により溶血剤を所定量吸引させる(S12)。溶血剤の所定量の吸引が完了すると、検出処理手段13は発光手段54であるLED54Bを点灯する(S13)。更に、検出処理手段13は受光手段55であるフォトダイオード55Bの出力を得て吸光度(受光電圧)のサンプリングを開始する(S14)。
【0038】
検査試料作製手段12はLED54Bの点灯から所定時間t1秒の経過を監視しており(S15)、所定時間t1秒が経過すると検体吸引吐出部20を制御してノズル22から検体を測定セル41へ吐出させ(S16)、更に、溶血剤吸引吐出部30を制御してノズル33から溶血剤を測定セル41内へ吐出させる(S17)。上記所定時間t1秒は、LED54Bが点灯してから安定するまでの時間を設定することができる。
【0039】
次に、検出処理手段13は、サンプリングの結果により所定回数分の吸光度情報が収集済みとなったかを検出する(S18)。ここで、所定回数分の吸光度情報を収集する意味は次の通りである。受光手段55であるフォトダイオード55Bの出力から得られる吸光度(受光電圧)の変化は、例えば図4に示すようになり、検体吐出に続き溶血剤の吐出が時刻T1おいて行われると検体としての血液の色が溶血剤により薄められてゆくから、測定セル41内の溶液の吸光度は最大値(下に凸のピーク)を迎えた後に徐々に低下してゆく。受光電圧は下に凸の吸光度変化曲線Lgを描く。
【0040】
この吸光度変化曲線Lgは、複数の被験者から得てみると、個人の血液中のヘモグロビン濃度やヘマトクリット値(%)に依存しており、図5に示すように、下に凸のパルス状の部分における幅Wと深さDが様々な値をとることが分かる。ここで、図5(a)は例えば貧血のデータであり、幅Wと深さDが共に小さく、図5(b)はヘモグロビン濃度が高濃度のデータであり、幅Wと深さDが共に大きい。図5(a)によれば、長時間のサンプリングを行うと、下に凸のパルス状の部分を越えてもサンプリングがなされ、意味のないサンプリングが行われることが分かる。また、図5(a)と図5(b)によれば、溶血剤の吐出の時刻T1からある程度の期間はサンプリングに有効な期間と考えられる。従って、検出処理手段13と発光素子54及び受光素子55により構成される検出手段は、検体の特性を考慮した所定サンプリング期間において吸光度情報を検出する。この実施形態では、100msecによるサンプリング周期で、4回のサンプリングを行っている。概ね300msecから500msecの間においてサンプリングを行えば、検体の特性によらずLED54Bを点灯した初期の電圧から1/2以上低下した電圧となり、必要十分なデータを得ることができる。この間に、サンプリング周期によってサンプリング回数を変更することができる。また、別途被験者のヘモグロビン濃度やヘマトクリット値(%)を測定しておき、その値に基づいてサンプリング周期やサンプリング回数を自動的に補正することも可能である。
【0041】
上記のようにしてステップS18において所定回数のデータを得たことが検出されると、検出処理手段13は、検体吐出前の吸光度と検体吐出後の吸光度とを用いて監視対象情報を作成する(S18)。
【0042】
上記ステップS18の具体的な一例を説明する。図4において、サンプリングポイントは黒いドットによって示されている。図4の時刻T0がLED54Bの点灯時刻であり、このときから3回のサンプリングポイントの値VS0、VS1、VS2を得て、これらの平均値Vaveを算出する。平均値Vaveを平均値Vaveにより除した値(=1)をV1とする。
【0043】
時刻T0から0.6 s、0.7 s、0.8 s、0.9 sのサンプリング値VS6、VS7、VS8、VS9を得て、それぞれを上記平均値Vaveにより除した値V2、V3、V4、V5を得る。この値(V1、V2、V3、V4、V5)を監視対象情報とし、この監視対象情報を用いて吐出量適否の判定を行う(S20)。このとき、吸光度のサンプリングを終了する(S21)。サンプリングを行っても良いが、既に必要十分なデータが得られている。
【0044】
本実施形態では、値V2、V3、V4、V5をそれぞれV1から引き、(V1−V2)、(V1−V3)、(V1−V4)、(V1−V5)を算出し、これらの和の値SUM={(V1−V2)+(V1−V3)+(V1−V4)+(V1−V5)}を得て、閾値THと比較して、SUM≧THであれば吐出量は適正であるとする。
【0045】
更に、(V1−V2)、(V1−V3)、(V1−V4)、(V1−V5)の平均を求めて、上記とは別の閾値と比較しても良い。
【0046】
本実施形態では、V1との差を用いたが、V1により除しても良い。V1を適当な係数で加工(加減乗除)した値を用いても良い。このようにした値の和や平均値を求めて上記とは異なる閾値と比較して判定を行っても良い。また、別途被験者のヘモグロビン濃度やヘマトクリット値(%)を測定しておき、その値に基づいて閾値を手動または自動的に補正してもよい。
【0047】
上記のようにステップS20において吐出量の適否判定を行った後、ステップS21からステップS22へと進み、吐出量が適正であったか否かを検出して(S22)、適正であった場合には、検査試料作製手段12は更に溶血剤の吐出や撹拌機構43による攪拌などにより更に検査試料の作製を行い、測定セル41に試料が完成した場合に、測定処理手段18が測定(ここではCRP測定)を実行して(S23)、検査結果を表示手段52などに出力する(S24)。
【0048】
一方、上記ステップS22において吐出量が不適切とされた場合には、吐出量が不適切であることを表示手段52などに出力し、作製中の試料(測定セル41)を廃棄する示唆のメッセージを表示手段52などに出力する処理を報知出力制御手段16が実行してエンドとなり、オペレータの介入を待つことになる。
【0049】
図4には、適正に検体が吐出された場合の吸光度変化曲線Lgと適正に検体が吐出されなかった場合の吸光度変化曲線Lnとが示されている。吸光度変化曲線Lgでは、図6(a)に示されるようにノズル22からCRP測定用の試薬60に血液24が吐出されるので、溶血剤が吐出された溶血検体63は図6(b)のようにヘモグロビンの色素によりピンク色を呈し、吸光度は図4のように上昇(電圧は低下)する。
【0050】
上記に対し、吸光度変化曲線Lnでは、図7(a)に示されるようにノズル22からCRP測定用の試薬60に血液24が破線により示されているように吐出されないので、溶血剤が吐出されると測定セル41内には検体が存在せず、図7(b)のようにほぼ透明色を呈し、吸光度は図4のように低下する。
【0051】
吸光度変化曲線Lgのように変化する場合にも又吸光度変化曲線Lnのように変化する場合にも、前述の通りに監視対象情報を求めて所定閾値と比較することにより、検体の吐出量の適否を的確に判定することができる。
【0052】
上記の分析のときにも又測定処理手段18による測定処理中においても、温度アラーム制御手段17は温度センサ53から温度情報を得て、測定セル41に含まれる試薬の許容温度と温度センサ53により得られる温度情報に応じてアラームを表示手段52などから出力する。例えば、許容範囲が30℃〜15℃の場合、35℃を越えた場合または10℃を下回った場合にアラームを出力する。
【0053】
なお、温度アラーム制御手段17を備えず、試薬の許容温度に応じて装置温度を制御する温度制御機構を備えるようにしても良い。例えば、ペルチェ素子を用いた温度制御機構を設け、温度センサ53の出力に応じて許容範囲温度となるように温度制御を行うように構成しても良い。
【符号の説明】
【0054】
10 演算処理部
11 検体制御手段
12 検査試料作製手段
13 検出処理手段
14 作成手段
15 判定手段
16 報知出力制御手段
17 温度アラーム制御手段
18 測定処理手段
20 検体吸引吐出部
30 溶血剤吸引吐出部
31 溶血剤タンク
40 測定セル保持機構
41 測定セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体である血液を測定セル内に吐出する検体吐出手段と、
前記測定セル内に溶血剤を吐出させて検査試料を作製する検査試料作製手段と、
前記測定セル内の液体の吸光度情報を検出する検出手段と、
前記検出手段が時系列的に検出した前記溶血剤吐出前の吸光度情報と前記溶血剤吐出後の吸光度情報とに基づき監視対象情報を作成する作成手段と、
作成された監視対象情報と所定閾値とを用いて前記検体の吐出量の適否を判定する判定手段と
を具備することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
更に、少なくとも前記監視対象情報又は前記所定閾値の少なくとも一方を、ヘモグロビン濃度またはヘマトクリット値に基づいて補正する補正手段を有することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
検出手段は、検体の特性を考慮したサンプリング期間において吸光度情報を検出することを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
検出手段は、光波長650nm以上の光を用いて吸光度情報を検出することを特徴とする請求項1または3に記載の分析装置。
【請求項5】
温度センサと、
測定セルに含まれる試薬の許容温度と前記温度センサにより得られる温度情報に応じてアラームを出力する温度アラーム制御手段と
を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
測定セルに含まれる試薬の許容温度に応じて装置温度を制御する温度制御機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−37478(P2012−37478A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180258(P2010−180258)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】