説明

切削加工部品洗浄装置

【課題】精密工作機械の切削加工による加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置を提供する。
【解決手段】精密工作機械の切削加工により加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置10であって、前記被洗浄物にエアーブローを施す空圧除去領域部30と、前記被洗浄物を水中で洗浄する水中洗浄領域部と、前記空圧除去領域部と前記水中洗浄領域部40の間を上下に移動する昇降領域部50と、該昇降領域部及び前記空圧除去領域部30を制御する制御領域部70とを、其々本体領域部に配設した構成から成る手段を採る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密工作機械の切削加工による加工部品に付着した切り粉及び切削油を、水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品をNC工作機械等で切削加工すると、該加工部品の表面には加工によって生じた切り粉や切削油が付着する。該加工部品を産業用ロボットハンドで次工程に搬送する場合や出荷用の包装箱へ収める際には、当該加工によって付着した切り粉や切削油を可能な限り除去しなければならない。その手段として、浸漬による水中洗浄方式やエアーブローによる空中洗浄方式を用いるのが一般的である。これらの作業は手作業で行うか、或いは全自動方式の洗浄装置を用いて行っている。
【0003】
しかしながら、人為的なエアーブローによる空中洗浄方式での除去手段は、NC工作機械等を操作する作業者等により、エアーガンを用いた手作業で噴射除去する人為的作業工程を必要とするものであり、加工部品の外部から一方向に圧縮空気を吹き付けるため、複雑な形状の加工品では持ち手の角度を変えたり、持ち換えたりしなければ加工品の全面を満遍なくブローすることができず、洗浄品質のバラつき避けられないという問題があった。また、労力負担も大きく作業時間の効率もよくないという問題もある。
【0004】
係る問題点に鑑みて、空中洗浄方式による除去手段を産業用ロボットに行なわせている工場等もある。係る設備は、大量生産される大規模工場のような場合では費用対効果の面からも高効率化を図れると思われるが、このような設備は高い導入コストを必要とするため、小・中規模の工場に取り入れることは難しいという問題がある。
【0005】
そこで、上記の問題点を解決しようと、従来より種々の技術提案がなされている。例えば、1または2以上の加工ステーションを経て切削加工されるワークを加工ステーションから次の加工ステーション或はアンローダステーションへ搬送する搬送ライン上に、内部を洗浄液のチャンバに形成した門型フレーム状をなすノズルチャンバを跨設し、該ノズルチャンバの前記搬送ラインに対向した面に、複数の洗浄液噴射ノズルを設け、前記チャンバに洗浄液と圧搾空気を混合供給するように形成して成り、前記搬送ライン上のワークが前記ノズルチャンバ内を通過するとき、各噴射ノズルから洗浄液と圧搾空気を混合して噴出させることにより、当該ノズルチャンバを通過するワークを洗浄するようにした「ワ−クの洗浄装置及び洗浄方法」(特許文献1参照)である。
【0006】
しかしながら、係る技術は、加工後のワークを次の加工ステーション或はアンローダステーションへ搬送するステーション間のワーク搬送中に、ワークを停止させることなく、そのワークに付着している切り粉等を高い洗浄力で洗い落とすことができるワークの洗浄装置及び洗浄方法を提供しようとしているが、専用の工作機械ならびに洗浄装置が搬送ライン上に一直線に整列する必要性があることから、大量生産ならびに複数の加工ステーションを必要とするワーク加工に限定されるもので、一般的な汎用NC工作機械は部品投入口が前面に配設されているものが多いため、少数多品種生産を必要とする中小企業における切削加工部品洗浄装置としては適さないものであり、さらに洗浄方式が空中洗浄方式のみであるため、細い溝や小さな穴の中に潜り込んだ切り粉や切削油がノズルチャンバによる噴射圧でさらに押し込まれ、除去し切れない問題点があるものであった。
【0007】
また、洗浄室内に多数のノズルを有したスプレー水ノズル部材を設け、洗浄室の下部に、駆動ベースが載っており、またその駆動ベース上に水平駆動部材,水平可動部材が固定され、上部に垂直回転駆動部材とその左右にワークケースがあることでワークのセットができ、それによりワーク部が垂直に回転しながら同時に洗浄室内を水平に回転してスプレーする「洗浄機」(特許文献2参照)も提案されている。
【0008】
しかしながら、係る技術は、機械加工された洗浄部品の内径加工部を高清浄に洗浄する時、部品内部に切り粉が残り易い形状の洗浄部品であると洗浄は困難となる上、多数個の洗浄部品を同時に洗浄するのには無理がある問題を解決しようとワーク部が垂直に回転すると同時に洗浄室内を水平に回転してスプレー洗浄する手段を取っているが、該洗浄方式が空中洗浄方式のみであるため、ワーク表面に付着している切り粉や切削油は除去することができるが、複雑な形状に入り組んだ細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切り粉や切削油は回転による遠心力や洗浄ノズルの噴射圧だけでは除去し切れない問題点がある。
【0009】
また、筐体内において、テーブル上に被洗浄部品を載置し、該テーブル或いは洗浄パイプを回動し、該洗浄パイプの多数の噴射ノズルより洗浄液を噴射する式のものにおいて、筐体内で前記テーブルの下方に洗浄液の受板を設けると共に該受板の下方の該筐体内に温水タンクと洗剤液タンクを配設し、受板に、これら温水タンクと洗剤液タンクにそれぞれ連通する第1第2開閉弁を設けると共に、洗浄パイプと前記各タンクとを循環パイプにより接続し、該循環パイプに切換弁とポンプとを介在し、先に切換弁を温水タンク側に切換えると共に第1開閉弁を開けて温水の洗浄を行い、次に切換弁を洗剤液タンク側に切換え、第1開閉弁を閉じると共に第2開閉弁を開けて洗剤液の洗浄を行う「自動部品洗浄機」(特許文献3参照)が提案されている。
【0010】
しかしながら上記の係る技術は、洗剤を長期間使用可能にすると共に、洗剤の効果を長期間保持させようと、テーブルの上に置かれたワークを温水タンクと洗剤液タンクから開閉弁を介して多数の噴射ノズルで噴射洗浄する手段を採っているが、洗浄方式が空中洗浄方式のみであるため、ワークの表面に付着している切り粉や切削油は比較的容易に除去することができるが、複雑な形状に入り組んだ細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切り粉や切削油はテーブルの回転や温水と洗剤液によるノズル噴射圧だけでは除去し切れない問題点があるものであった。
【0011】
また、リニア振動フィーダにおけるトラフの上方に張架した移送路板には多数の開口を形成させ、この上に切削油を分離し、かつ切粉を除去すべきナットを振動により移送させ、この途上、直上方に配設された洗浄油噴出装置から洗浄油を噴出させ、ナットに付着している切削油を洗い流し、かつ切り粉を吹き落とす「切削加工部品の洗浄装置」(特許文献4参照)が提案されている。
【0012】
しかしながら上記の係る技術は、ボルトやナットのような切削加工部品に付着している切削油を分離し、かつ切屑などの付着物を自動的に、かつ確実に除去することを目的とした洗浄装置であるが、切削加工部品の搬送手段がトラフの上方に張架した移送路板上をリニア振動フィーダによる振動によって搬送する手段を採っているため、大量生産されるナットやボルトなどの比較的加工表面や加工精度を必要としない切削加工部品に限定されるもので精密切削加工部品等を洗浄する切削加工部品洗浄装置としては適さないものである。
【0013】
一方、浸漬による水中洗浄方式における除去手段は、NC工作機械で加工部品を切削加工した後、加工した部品を洗浄籠等にまとめて収納して、超音波や振動機能を備える洗浄槽に浸漬させて洗浄するものであるが、装置自体が高度な機能を有するためコスト高であると同時に大型で設置スペースを必要とし、さらに洗浄槽の液面管理ならびに清掃管理を必要とするものであり、また加工部品の表面上の小さくて軽い切り粉や細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切削油は流し出して洗浄することができるが、大きくて重い切り粉などは除去し切れない問題点があるものであった。例えばボルト、ナット等の量産加工部品においては、加工した部品を洗浄籠等にまとめて収納することができるが、精密加工部品においては、表面の損傷を避けるため部品毎に搬送しなければならないことから、作業効率が極めて悪いという問題点を併せ持つものである。
【0014】
上記の問題点を解決しようとする提案も種々なされている。例えば、部品を機械加工する前に予め洗浄剤液に浸漬した後に乾燥し、洗浄剤を部品に付着させた状態で機械加工を行ない、その後に部品に付着している洗浄剤、汚れを洗い落とす工程を有する「部品洗浄方法及び洗浄装置」(特許文献5参照)である。
【0015】
しかしながら上記の係る技術は、機械加工工程を有する金属部品類、プラスチック部品類の洗浄工程において洗浄効率が高い洗浄方法ならびに洗浄装置を提供しようとするものではあるが、部品を機械加工する前に予め洗浄剤液に浸漬した後に乾燥し、該洗浄剤を部品に付着させた状態で機械加工を行なわなければならず、通常の洗浄工程より作業工数が増加するものであり、また細い溝や小さな穴の中に入り込んだ比較的重い切り粉は、シャワーノズルの噴射圧と洗浄剤を部品に付着させた手段では除去し切れない問題点があるものであった。
【0016】
また、洗浄槽の上方に操作盤を配設し、この操作盤内に搖動駆動装置を収容して洗浄物ホルダーを搖動自在に連結し、被洗浄物を洗浄槽の洗浄液中に搖動自在に浸漬するようにしている。そして、特に搖動駆動装置をエアーシリンダーとしてそのエアーの排気を操作盤内に行って操作盤内を外部よりも少し圧力の高い正圧状態になるようにした「部品洗浄機」(特許文献6参照)が提案されている。
【0017】
しかしながら上記の係る技術は、精密部品や電子部品などの部品洗浄機を、できるだけ小型化し、安価に製造することを目的とした部品洗浄機であるが、洗浄方式が水中洗浄方式のみであるため、ワークの表面に付着した切り粉や切削油は比較的容易に除去することができるが、複雑な形状に入り組んだ細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切り粉や切削油はテーブルの回転や温水と洗剤液によるノズル噴射圧だけでは除去し切れない問題点があるものであった。
【0018】
以上のように、単体の空中洗浄機方式又は水中洗浄機方式よって切り粉や切削油を除去する切削加工部品洗浄装置が種々提案されているが、さらに除去効率と除去効果を高めるために空中洗浄機方式と水中洗浄機方式を合体させた切削加工部品洗浄装置も提案されている。例えば、洗浄物を回転させて洗浄する装置であって、洗浄物を長手方向の両端にて保持手段の回転アームによって保持し、かつ洗浄室の洗浄位置へ移動し、洗浄物に対して洗浄液を洗浄ノズルから噴射することにより空中洗浄を行ない、上記洗浄液により洗浄室内を満たして洗浄物を沈水状態とし、洗浄液を洗浄ノズルから噴射することにより水中洗浄を行ない、その後洗浄室から全洗浄液を排出する「洗浄物回転型空中水中洗浄装置」(特許文献7参照)である。
【0019】
しかしながら上記の係る技術は、切削加工等において生じた切り粉や切削油等の付着物を迅速確実に除去しようとするものではあるが、装置自体が大型で広い設置スペースを必要とするため、大企業における大量生産ならびに大型のワーク加工に限定されるもので、一般的な汎用NC工作機械は部品投入口が前面にあるものが多いため少数多品種加工を必要とする中小企業における洗浄装置としては適さないものであった。
【0020】
また、洗浄室の傾斜角度を調節できるように支持し、その内部に被洗浄物を収納して回転させる洗浄籠と、洗浄液を噴射する多数のノズルとを設ける。洗浄室の下面にはバルブ付きの排出口を設け、また高さ調節可能なオーバーフローパイプを設けておく。バルブを開閉することにより、空中洗浄、液中洗浄、空中洗浄を連続的に行うことができる「部品洗浄機」(特許文献8参照)が提案されている。
【0021】
しかしながら上記の係る技術は、能率的に均一洗浄することができる水中洗浄方式ならびに空中洗浄方式を採用した部品洗浄機であるが、ナットやボルトなどの大量生産加工部品等の比較的加工表面や加工精度を必要としない切削加工部品に限定されるもので精密切削加工部品等の切削加工部品洗浄装置としては適さないものであった。
【0022】
そこで本出願人は、洗浄効率と洗浄効果を高め、さらに部品精度を維持するために、水中洗浄方式と空中洗浄方式とを合体させることに着目し、さらに空中洗浄時と水中洗浄時の両方に回転と上下揺動を加えることによって能率的かつ効果的に洗浄することができるではないかという着想の下、精密工作機械の切削加工により、加工部品に付着した切り粉及び切削油を、水中洗浄ならびに空中洗浄で容易に除去することができる、本願発明に係る「切削加工部品洗浄装置」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平10-251880号公報
【特許文献2】特開平10-230228号公報
【特許文献3】実開平5-95686号公報
【特許文献4】特開平5-285461号公報
【特許文献5】特開平7-328886号公報
【特許文献6】登録実用新案第3030449号公報
【特許文献7】特許第3009879号公報
【特許文献8】実開平6-34781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、精密工作機械の切削加工による加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の切削加工部品洗浄装置は、精密工作機械の切削加工により加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置であって、前記被洗浄物にエアーブローを施す空圧除去領域部と、前記被洗浄物を水中で洗浄する水中洗浄領域部と、前記空圧除去領域部と前記水中洗浄領域部の間を上下に移動する昇降領域部と、該昇降領域部及び前記空圧除去領域部を制御する制御領域部とを、其々本体領域部に配設した構成から成り、前記空圧除去領域部は、開閉シャッターと1以上の圧縮空気噴射ノズルを備え、前記水中洗浄領域部は、洗浄槽と、該洗浄槽を着脱自在に配置する基台とから構成され、前記昇降領域部は、回転テーブルと保持具から構成される昇降台と、該昇降台を上下に昇降させるための昇降装置と、該昇降装置により上下する前記昇降台を案内するための2本のガイドシャフトと、前記昇降台上に設けられる回転テーブルと、該回転テーブルを回転駆動させる駆動モーターと、該駆動モーターの駆動伝達軸から前記回転テーブルへ回転駆動力を伝達するための動力伝達機構と、から構成され、前記制御領域部は、制御手段としてプログラマブルロジックコントローラを用いたシーケンス制御により、前記空圧除去領域部における開閉シャッターの開閉制御、及び圧縮空気噴射ノズルからのエアーブロー制御、並びに、前記昇降領域部における前記回転テーブルの回転制御、及び前記昇降装置の昇降制御を行い、前記洗浄槽の水中内において、前記回転テーブル上に保持具で保持した被洗浄物に回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながら洗浄し、その後、該被洗浄物を上昇させて前記空圧除去領域部において回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながらエアーブローする手段を採る。
【0026】
また、本発明の切削加工部品洗浄装置は、前記動力伝達機構が、前記回転テーブルを1基乃至3基まで駆動できる伝達機構を備え、前記昇降台上に備える該回転テーブルを駆動する歯車伝達軸を3本有し、該回転テーブルを2基以上備えた場合に、隣設する回転テーブル同士の回転方向が逆方向となる手段を採る。
【0027】
また、本発明の切削加工部品洗浄装置は、前記昇降台を上下に昇降させるための昇降装置が、モーター駆動式である手段を採る。
【0028】
また、本発明の切削加工部品洗浄装置は、前記昇降台を上下に昇降させるための昇降装置が、エアーシリンダー駆動式である手段を採る。
【0029】
また、本発明の切削加工部品洗浄装置は、前記洗浄槽に、天板取外し式ペール缶を利用し、前記空圧除去領域部及び前記昇降領域部の各構成部材の寸法が、該ペール缶に対応する寸法で構成されている手段を採る。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る切削加工部品洗浄装置によれば、被洗浄物に回転と上下揺動を与えて空中でエアーブローすることによって複雑な形状に入り組んだ細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切り粉や切削油を噴き飛ばすことができると共に、水中で被洗浄物に回転と上下揺動を与えて水圧抵抗流を発生させることによって複雑な形状に入り組んだ細い溝や小さな穴の中に入り込んだ切り粉や切削油を洗い落とすことができるという優れた効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係る切削加工部品洗浄装置によれば、被洗浄物にエアーブローを施す空圧除去領域部と、被洗浄物を水中で洗浄する水中洗浄領域部と、空圧除去領域部と水中洗浄領域部の間を上下に移動する昇降領域部と、該昇降領域部及び空圧除去領域部を制御する制御領域部とが、本体に対して垂直に配設される構造であるため、設置スペースが加工ステーションの中間に配置できるという優れた効果を奏する。
【0032】
また、本発明に係る切削加工部品洗浄装置によれば、洗浄槽に切削油や潤滑油が充填される天板取外し式ペール缶(T型1種又T方2種:JISZ1620)を利用することによって、装置のコストダウンが図られると共に、取り付け、取り外しが自在であるため洗浄槽の洗浄液の交換ならびに清掃作業が容易に行えるという優れた効果を奏する。
【0033】
また、本発明に係る切削加工部品洗浄装置によれば、洗浄槽の洗浄液を温度ヒータで保温維持することによって、被洗浄物表面の切削油の除去が容易になるという優れた効果を奏する。
【0034】
また、本発明に係る切削加工部品洗浄装置によれば、装置自体を加工ステーションの中間に配置することができることによって、自動化ラインの組み込みが容易にできる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における切削加工部品洗浄装置の加工前の状態を示す模式的透視斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明における切削加工部品洗浄装置の加工後の状態を示す模式的透視斜視図である。
【図3】本本発明における切削加工部品洗浄装置の洗浄加工の工程手順(その1)を示す説明図である。
【図4】本本発明における切削加工部品洗浄装置の洗浄加工の工程手順(その2)を示す説明図である。
【図5】本発明における切削加工部品洗浄装置の動力伝達機構に別の実施形態を示す説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の切削加工部品洗浄装置は、水中洗浄領域部において、回転テーブル上に保持具で保持した被洗浄物に回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながら洗浄し、その後、該被洗浄物を上昇させて空圧除去領域部において回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながらエアーブローする手段を採ったことを最大の特徴とするもので、以下実施例を図面に基づいて説明する。なお、下記の図面の図示は理解し易いように一部を省略したり、意図的に表示を拡大したりしている模式的説明図である。また、以下の実施例の説明において用いる寸法等の具体的な数値はあくまでも例示であって、これらに限定されるものではなく、本願発明は、これらの実施例に具現されている技術的思想、即ち、本願発明として同一性を失わない範囲内のものに及ぶものである。
【実施例1】
【0037】
図1ならび図2は、本発明における切削加工部品洗浄装置の加工前の状態と加工後の状態を示す模式的透視斜視図である。
本発明の切削加工部品洗浄装置10は、電源仕様AC100V及び200V、全体寸法が横幅400mm、奥行400mm、高さ1.700mm、重量略60kgを有し、精密工作機械の切削加工により加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄並びに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置であって、被洗浄物Wにエアーブローを施す空圧除去領域部30と、被洗浄物Wを水中で洗浄する水中洗浄領域部40と、該空圧除去領域部30と水中洗浄領域部40の間を上下に移動する昇降領域部50と、該昇降領域部50及び空圧除去領域部30を制御する制御領域部70とを、其々本体領域部20に配設して構成される。
【0038】
開閉シャッター22は、下方が開放された円筒状のカバー体で形成されて空圧除去領域部30内の略中央高さ位置に配設され、電動駆動モーターやエアーシリンダー等の駆動手段25で円周方向に回動させて開閉するものである。水中洗浄と空中洗浄が行われて状態では閉鎖され、被洗浄物Wを取り出しならびにセット時は、制御領域部70におけるプログラマブルロジックコントローラを用いたシーケンス制御により開閉制御されるものである。尚、開閉シャッター22の全体ならびに保持構造は省略して図示している。
【0039】
圧縮空気噴射ノズル31は、本体領域部20の上部に設けられている制御領域部70の下方から空圧除去領域部30の開閉シャッター22内の回転テーブル54の後方位置に固定配置され、回転テーブル54に載置されている被洗浄物Wをエアーブローによって噴射洗浄するもので、本体領域部20外に設けられるコンプレッサーに接続され、制御領域部70におけるプログラマブルロジックコントローラを用いたシーケンス制御によりエアーブロー制御されるものである。
【0040】
洗浄槽41は、上部に持ち手部を有する着脱自在の洗浄用水槽であって、剛性や耐腐食性に優れた金属等により、昇降台51及び、ワークが備えられた回転テーブル54が内部で回転できる寸法を考慮して専用容体を成形して成るが、請求項5に係る発明では、天板取外し式のペール缶42を用いて資源の有効活用を図っている。また、該洗浄槽42に貯留される洗浄水は、AC100V-1KW程度の温度調整機能付き温熱ヒータ44により、約40度から50度に暖めた温水を使用して洗浄することが望ましい。
【0041】
請求項5に係るペール缶42は、NC工作機械等の切削加工に使用される切削油や潤滑油が充填される天板取外し式ペール缶(T型1種又T方2種:JISZ1620)を被洗浄物Wが浸漬される洗浄槽41として利用するもので、交換作業ならびに取り扱いが容易である上、洗浄槽41の製造コストがかからない製造コストメリットがあるものである。
【0042】
基台43は、洗浄槽41又はペール缶42を載置する載せ台であって、本体領域部20の下部に設けられ、載置される洗浄槽41又はペール缶42の持手位置が、作業性を考慮して人が立った時の770mm程度に配置されるような高さ寸法に形成されるものである。
【0043】
昇降台51は、昇降装置52の最下端に設けられ、動力伝達機構60から内設される歯車伝達軸61を介して回転テーブル54と保持具62に連結される被洗浄物Wが載置される載せ台である。
【0044】
昇降装置52は、モーター駆動式及びエアーシリンダー駆動式によって昇降台51を上下に昇降させるための装置であって、垂直に並設されるガイドシャフト53に連結するスライドアーム56の中央に連結され、昇降台51を昇降させるものである。
【0045】
ガイドシャフト53は、昇降装置52により垂下上下する昇降台51を昇降ガイドするための2本のガイドシャフトで、一方は本体天板21に設けられるスライド軸受け23でスライド可能に軸受けされ、もう一方は、軸空洞部内に回転テーブル54を回転させる駆動伝達軸57を通嵌させて昇降台51にラジアル軸受け24を介して連結されるものである。
【0046】
回転テーブル54は、被洗浄物Wが保持具62に載置されて設定回転数が100〜500rpmで回転するテーブルであって、内部には平歯車が1〜3個内設されて被洗浄物Wが回転する構造を有して昇降台51上に設けられるものである。
【0047】
駆動モーター55は、回転テーブル54を回転駆動させる電動モーターで、ガイドシャフト53の一方に上端に連結・固定され、駆動モーター55の駆動伝達軸57から回転テーブル54へ回転駆動力を伝達するための動力伝達機構60を構成して、回転テーブル54を回転させるものである。
【0048】
動力伝達機構60は、駆動モーター55の駆動伝達軸57から回転テーブル54へ回転駆動力を伝達する構造を有してギヤ、ベルト、あるいはプーリーなどで構成されるものである。
【0049】
制御領域部70は、制御手段としてプログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)を用いたシーケンス制御により、空圧除去領域部30における開閉シャッター22の開閉制御、及び圧縮空気噴射ノズル31からのエアーブロー制御、並びに、昇降領域部50における回転テーブル54の回転制御、及び昇降装置52の昇降制御を行うものである。
【0050】
図3は、本発明における切削加工部品洗浄装置の洗浄加工の工程手順(その1)を示す説明図である。
(1)前工程の精密工作機械から被洗浄物Wが産業用ロボットハンドRで搬送され、回転テーブル54の保持具62に装着される。
(2)開閉シャッター22が回動駆動手段25によって円周方向に回動して閉鎖される。
(3)被洗浄物Wが駆動モーター55ならびに動力伝達機構60によって回転し始める。
(4)被洗浄物Wが載置された回転テーブル54が昇降装置52によって下降し、ペール缶42で形成される洗浄槽41に浸漬される。
(5)被洗浄物Wが載置された回転テーブル54は浸漬された状態で駆動モーター55と昇降装置52によって回転ならびに上下揺動し、浸漬抵抗流を利用して洗浄される。
(6)一定時間浸漬洗浄された後、被洗浄物Wが載置された回転テーブル54が昇降装置52によって上降し、ペール缶42で形成される洗浄槽41から引き上げられる。
【0051】
図4は、本発明における切削加工部品洗浄装置の洗浄加工の工程手順(その2)を示す説明図である。前記洗浄加工の工程手順(6)から続く。
(7)被洗浄物Wが載置された回転テーブル54が、駆動モーター55と昇降装置52によって回転ならびに上下揺動している状態で圧縮空気噴射ノズル31によってエアーブローされ、圧縮空気圧によって切り粉と切削油が除去される。
(8)エアーブローが停止し、回転テーブル54の回転ならびに上下揺動も停止する。
(9)開閉シャッター22が回動駆動手段25によって円周方向に逆回動して開扉される。
(10)被洗浄物Wが、回転テーブル54の保持具62から産業用ロボットハンドRによって着脱され、後工程の精密工作機械に搬送される。
【0052】
以上のように本発明における切削加工部品洗浄装置10は、水中洗浄と空中洗浄の両方の洗浄時に回転と上下揺動を加えることによって、精密工作機械の切削加工により加工部品に付着した切り粉及び切削油を能率的かつ効果的に洗浄除去することができる切削加工部品洗浄装置を提供するものである。
【実施例2】
【0053】
図5は、本発明における切削加工部品洗浄装置の動力伝達機構に別の実施形態を示す説明図である。図5(a)は回転テーブルが1基の場合を示し、図5(b)は回転テーブルが2基の場合を示し、図5(c)は回転テーブルが3基の場合を示す。
動力伝達機構60が、回転テーブル54を1基乃至3基まで駆動できる伝達機構を備え、昇降台51上に備える該回転テーブル54を駆動する歯車伝達軸61を3本有し、該回転テーブル54を2基以上備えた場合に、隣設する回転テーブル54同士の回転方向が逆方向となる構造を有するものである。
【0054】
歯車伝達軸61が3本有して回転テーブル54を2基以上備えた場合は、隣設する回転テーブル54同士の回転方向が逆方向となって被洗浄物Wの円周方向から満遍なく噴射することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の切削加工部品洗浄装置は、小型軽量で省スペース設計であることから産業ロボットなどの供給・離脱・搬送装置と連結させて多方面に利用することができるもので、本発明の切削加工部品洗浄装置の産業上の利用可能性は大とするものと解する。
【符号の説明】
【0056】
10 切削加工部品洗浄装置
20 本体領域部
21 本体天板
22 開閉シャッター
23 スライド軸受け
24 ラジアル軸受け
25 回動駆動手段
30 空圧除去領域部
31 圧縮空気噴射ノズル
40 水中洗浄領域部
41 洗浄槽
42 ペール缶
43 基台
44 温度調整機能付き温熱ヒータ
50 昇降領域部
51 昇降台
52 昇降装置
53 ガイドシャフト
54 回転テーブル
55 駆動モーター
56 スライドアーム
57 駆動伝達軸
60 動力伝達機構
61 歯車伝達軸
62 保持具
70 制御領域部
R 産業用ロボットハンド
W 被洗浄物
S 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密工作機械の切削加工により加工部品に付着した切り粉及び切削油を水中洗浄ならびに空中洗浄で除去する切削加工部品洗浄装置であって、
前記被洗浄物にエアーブローを施す空圧除去領域部と、
前記被洗浄物を水中で洗浄する水中洗浄領域部と、
前記空圧除去領域部と前記水中洗浄領域部の間を上下に移動する昇降領域部と、
該昇降領域部及び前記空圧除去領域部を制御する制御領域部とを、
其々本体領域部に配設した構成から成り、
前記空圧除去領域部は、自動開閉シャッターと1以上の圧縮空気噴射ノズルを備え、
前記水中洗浄領域部は、
洗浄槽と、
該洗浄槽を着脱自在に配置する基台とから構成され、
前記昇降領域部は、
回転テーブルと保持具から構成される昇降台と、
該昇降台を上下に昇降させるための昇降装置と、
該昇降装置により上下する前記昇降台を案内するための2本のガイドシャフトと、
前記昇降台上に設けられる回転テーブルと、
該回転テーブルを回転駆動させる駆動モーターと、
該駆動モーターの駆動伝達軸から前記回転テーブルへ回転駆動力を伝達するための動力伝達機構と、
から構成され、
前記制御領域部は、制御手段としてプログラマブルロジックコントローラを用いたシーケンス制御により、前記空圧除去領域部における開閉シャッターの開閉制御、及び圧縮空気噴射ノズルからのエアーブロー制御、並びに、前記昇降領域部における前記回転テーブルの回転制御、及び前記昇降装置の昇降制御を行い、
前記洗浄槽の水中内において、前記回転テーブル上に保持具で保持した被洗浄物に回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながら洗浄し、その後、該被洗浄物を上昇させて前記空圧除去領域部において回転運動と上下運動の二つの動作を同時に与えながらエアーブローすることを特徴とする切削加工部品洗浄装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構が、前記回転テーブルを1基乃至3基まで駆動できる伝達機構を備え、前記昇降台上に備える該回転テーブルを駆動する歯車伝達軸を3本有し、該回転テーブルを2基以上備えた場合に、隣設する回転テーブル同士の回転方向が逆方向となることを特徴とする請求項1に記載の切削加工部品洗浄装置。
【請求項3】
前記昇降台を上下に昇降させるための昇降装置が、モーター駆動式であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削加工部品洗浄装置。
【請求項4】
前記昇降台を上下に昇降させるための昇降装置が、エアーシリンダー駆動式であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削加工部品洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄槽に、天板取外し式ペール缶を利用し、前記空圧除去領域部及び前記昇降領域部の各構成部材の寸法が、該ペール缶に対応する寸法で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削加工部品洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108161(P2013−108161A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256680(P2011−256680)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【特許番号】特許第5175971号(P5175971)
【特許公報発行日】平成25年4月3日(2013.4.3)
【出願人】(511285417)
【Fターム(参考)】