説明

判定装置、判定方法および判定プログラム

【課題】危険運転データを適切に抽出すること。
【解決手段】判定装置は、車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、該速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する。そして、判定装置は、速度データと同期をとって測定された車両を利用する利用者の脈拍データのうち、抽出した箇所に対応する脈拍データに基づいて、該箇所を採用するか否かを判定する。例えば、判定装置は、抽出した箇所に対応する脈拍データを用いて、所定時間あたりの拍数の変化量および/または拍間隔の変化量を算出する。そして、判定装置は、算出した変化量が閾値以上である場合に採用すると判定し、算出した変化量が閾値以下である場合に採用しないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、判定方法および判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の運行に関するデータを記録する装置があり、例えば、貨物運送車両に対して装着される運行記録計やドライブレコーダなどがある。運行記録計は、時間と距離と速度とを記録し、例えば、時刻に対応付けて、所定時間あたりの走行距離と走行速度とを記録する。なお、運行記録計によって記録される時間と距離と速度とを、法定3要素とも称されている。ここで、運行記録計に記録されたデータから、危険な運転状態を示す危険運転データを抽出する抽出技術が知られている。
【0003】
具体的には、抽出技術を実行する装置は、危険運転データとして、運行記録計に記録されたデータのうち急加速や急減速が行われた箇所を抽出する。例えば、抽出技術を実行する装置は、1秒間に9km/h以上減速した場合に急減速とする場合には、運行記録計に記録されたデータのうち、1秒間に9km/h以上減速したことを示す箇所を抽出する。
【0004】
なお、運転者の心拍数と車両の加速度との分布状況を分析して、運転者の活性度を判定する活性度判定技術も開示されている。また、運転者の心拍信号のグラフを用いて心理状態を判定し、運転者の心理状態に応じて車両の操舵特性を変更する操舵技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−312653号公報
【特許文献2】特開2004−196102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の抽出技術では、危険運転データを適切に抽出できないという課題があった。具体的には、従来の抽出技術は、急加減速が行われた箇所を抽出しているにすぎず、危険運転データを抽出しているとは限らなかった。例えば、高速走行中に運転者がアクセルを離しただけであっても、1秒間に9km/h以上減速したことを示すデータを運行記録計が記録することがある。この場合、抽出技術を実行する装置は、危険な運転ではないにも係わらず、車両停止の直前に運転者がアクセルを離しただけの箇所について、危険運転データとして抽出していた。
【0007】
なお、上記した活性度判定技術は、運転者の活性度を判定しているにすぎず、また、上記した操舵技術は、車両の操舵特性を変更しているにすぎなかった。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、危険運転データを適切に抽出可能な判定装置、判定方法および判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示する判定装置は、一つの態様において、車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、該速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する抽出部を備える。また、判定装置は、前記速度データと同期をとって測定された前記車両を利用する利用者の脈拍データのうち、前記抽出部によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、危険な運転状態を示す危険運転データとして該箇所を採用するか否かを判定する判定部を備える。
【発明の効果】
【0010】
開示する判定装置の一つの態様によれば、危険運転データを適切に抽出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係る判定装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係る判定装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、実施例2における脈拍データの一例を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例2における運行記録データ記憶部によって記憶されたデータの一例について説明するための図である。
【図5−1】図5−1は、実施例2における心拍数の変化の一例について説明するための図である。
【図5−2】図5−2は、実施例2における心拍数の変化の一例について説明するための図である。
【図6−1】図6−1は、実施例2における心拍信号が連続している場合の一例を説明するための図である。
【図6−2】図6−2は、実施例2における心拍信号に不連続がある場合の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例2における時間軸上での心拍間隔について説明するための図である。
【図8−1】図8−1は、実施例2における周波数解析結果にギャップが含まれる場合を説明するための図である。
【図8−2】図8−2は、実施例2における周波数解析結果にギャップが含まれない場合を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例2に係る判定装置による運行記録データや脈拍データの入力処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、実施例2に係る判定装置による危険運転データ抽出処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【図11−1】図11−1は、実施例3における車速変動の後に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【図11−2】図11−2は、実施例3における車速変動の後に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【図11−3】図11−3は、実施例3における車速変動の後に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【図12−1】図12−1は、実施例3における車速変動の前に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【図12−2】図12−2は、実施例3における車速変動の前に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【図13】図13は、実施例2に係る出力プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する判定装置、判定方法および判定プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0013】
まず最初に、実施例1に係る判定装置100の構成の一例を説明する。図1は、実施例1に係る判定装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。図1に示すように、判定装置100は、抽出部101と判定部102とを有する。
【0014】
抽出部101は、車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する。また、判定部102は、速度データと同期をとって測定された車両を運転する利用者の脈拍データのうち、抽出部101によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、該箇所を採用するか否かを判定する。
【0015】
すなわち、実施例1に係る判定装置100は、車両を運転している利用者が危険を感じると脈拍データに変化が発生することを踏まえ、車両の速度に閾値以上の変化が発生したことを示す箇所について、脈の状態に基づいて危険運転データとして採用するかを判定する。
【0016】
上記したように、実施例1によれば、判定装置100は、車両の速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する。そして、判定装置100は、速度データと同期をとって測定された脈拍データのうち、抽出部101によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、危険な運転状態を示す危険運転データとして該箇所を採用するか否かを判定する。この結果、実施例1によれば、急加速や急減速の有無のみを用いる手法と比較して、危険運転データを高精度に抽出可能である。
【実施例2】
【0017】
次に、実施例2に係る判定装置200について説明する。以下では、実施例2に係る判定装置200の構成、実施例2に係る判定装置200による処理の流れ、実施例2の効果について順に説明する。
【0018】
[実施例2に係る判定装置の構成]
図2を用いて、実施例2に係る判定装置200の構成の一例を説明する。図2は、実施例2に係る判定装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。判定装置200は、図2に示す例では、運行記録データ用センサ201と生体情報センサ202と記憶部300と制御部400とを有する。
【0019】
判定装置200は、車両の運行に関する運行記録データを記録し、例えば、車両に搭載される運行記録計やドライブレコーダなどが該当する。ここで、運行記録計は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条により、陸上貨物運送事業車に装着されることが義務付けられている。具体的には、運行記録計は、車両総重量が8トン以上または最大積載量5トン以上の車両や、車両総重量が8トン以上または最大積載量5トン以上の車両に該当する非牽引車を牽引する車両、特別積み合わせ運送事業の運行車両に装着されることが義務付けられている。
【0020】
運行記録データ用センサ201は、記憶部300内にある運行記録データ記憶部301と接続される。運行記録データ用センサ201は、車両に搭載された各種センサが該当し例えば、車速センサが該当する。運行記録データ用センサ201は、車両の運行が開始されると、判定装置200が搭載された車両の運行記録データを測定する。ここで、運行記録データ用センサ201によって測定される運行記録データには、車両の速度データが含まれる。
【0021】
また、運行記録データ用センサ201は、運行記録データを測定すると、測定した運行記録データを運行記録データ記憶部301に入力する。例えば、運行記録データ用センサ201は、車両の速度データとして、測定時刻と該測定時刻に測定された車両の速度との対応付けや、車両の運行が開始されてからの経過時間と車両の速度との対応付けなどを入力する。例えば、運行記録データ用センサ201は、測定時間「17:00」と速度「35km/h」との対応付けを入力し、あるいは、経過時間「0(時間):00(分):05(秒)」と速度「35km/h」との対応付けを入力する。
【0022】
生体情報センサ202は、記憶部300内にある脈拍データ記憶部302と接続され、例えば、脈拍センサや心電センサが該当する。生体情報センサ202は、車両の運行が開始されると、運行記録データ用センサ201によって測定される運行記録データと同期をとって車両の利用者の脈拍データを測定し、例えば、図3に示すような心拍信号を測定する。なお、図3は、実施例2における脈拍データの一例を説明するための図である。
【0023】
また、生体情報センサ202は、脈拍データを測定すると、測定した脈拍データを脈拍データ記憶部302に入力する。例えば、生体情報センサ202は、脈拍データとして、脈拍データを測定した測定時刻と心拍信号との対応付けや、車両の運行が開始されてからの経過時間と心拍信号との対応付けなどを入力する。
【0024】
なお、生体情報センサ202は、例えば、利用者に接触している電極に対して電圧を印加し、各電極から測定される電位信号の電位差を用いて利用者の心拍信号を測定する。ここで、生体情報センサ202によって用いられる電極は、例えば、車両のハンドルやシートの座面に埋め込まれる。
【0025】
なお、以下では、特に言及しない限り、運行記録データ用センサ201は、車両の速度データとして、測定時刻と該測定時刻に測定された車両の速度との対応付けを入力する場合を例に説明する。また、生体情報センサ202は、脈拍データとして、測定時刻と心拍信号との対応付けを入力する場合を例に説明する。
【0026】
また、以下では、実施例2に係る判定装置200内にある運行記録データ用センサ201や生体情報センサ202が運行記録データや脈拍データを測定する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。言い換えると、判定装置200自身が運行記録データや脈拍データを測定しなくても良い。例えば、判定装置200は、他の装置によって測定された運行記録データや脈拍データをネットワークを介して受信し、受信した運行記録データや脈拍データを用いて後述する処理を行っても良い。
【0027】
図2の説明に戻ると、記憶部300は、運行記録データ用センサ201と生体情報センサ202と制御部400と接続され、制御部400による各種取得処理に用いられるデータを記憶する。記憶部300は、例えば、RAM(Random Access Memory)や ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置である。記憶部300は、図2に示す例では、運行記録データ記憶部301と脈拍データ記憶部302とを有する。
【0028】
運行記録データ記憶部301は、運行記録データ用センサ201と、制御部400内にある抽出部401と接続される。運行記録データ記憶部301は、運行記録データを記憶し、例えば、図4に示すように、測定時刻と該測定時刻に測定された車両の速度との対応付けを記憶する。なお、図4は、実施例2における運行記録データ記憶部によって記憶されたデータの一例について説明するための図である。図4の縦軸は車両の速度を示し、図4の横軸が時刻を示す。図4に示すように、車両が速度を加速した場合には、時刻の経過に従って車両の速度が速くなったことを示すデータを記憶し、車両が速度を減速した場合には、時刻の経過に従って車両の速度が遅くなったことを示すデータを記憶する。
【0029】
また、運行記録データ記憶部301によって記憶された運行記録データは、運行記録データ用センサ201によって入力され、抽出部401によって用いられる。
【0030】
脈拍データ記憶部302は、生体情報センサ202と、制御部400内にある判定部402と接続される。脈拍データ記憶部302は、運行記録データ記憶部301に記憶された運行記録データと同期をとって測定された脈拍データを記憶する。例えば、脈拍データ記憶部302は、図3に示すように、測定時刻と心拍信号との対応付けを記憶する。なお、脈拍データ記憶部302によって記憶される脈拍データは、車両を利用する利用者の脈拍データであり、例えば、車両のハンドルを握っている運転者の脈拍データが該当する。
【0031】
ここで、生体情報センサ202について説明する際に記載したように、運行記録データ記憶部301に記憶された運行記録データと、脈拍データ記憶部302に記憶された脈拍データとは、同期して測定されている。例えば、車両の速度に対応付けられた時刻と、脈拍データに対応付けられた時刻とが対応し、同じ時刻に対応付けられたデータは、同時刻に測定されたことを示す。
【0032】
また、以下では、記憶部300には、運行記録データや脈拍データが予め入力されており、予め入力された運行記録データや脈拍データを用いて後述する処理を行う場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、現に測定している運行記録データや脈拍データを用いて、後述する処理をリアルタイムに行っても良い。
【0033】
制御部400は、記憶部300と接続され、各種の処理手順などを規定したプログラムを記憶するための内部メモリを有し、種々の取得処理を実行する。制御部400は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。制御部400は、図2に示す例では、抽出部401と判定部402と出力部403とを有する。
【0034】
抽出部401は、運行記録データ記憶部301と判定部402と接続される。抽出部401は、処理タイミングになると、運行記録データ記憶部301に記憶された車両の運行記録データを取得する。なお、処理タイミングとは、例えば、判定装置200を利用する者によって指定されたタイミングや、予め設定された定期的なタイミングなどが該当する。
【0035】
また、抽出部401は、運行記録データに含まれる車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出する。そして、抽出部401は、急加速や急減速があった箇所があるかを判定し、あると判定する場合には、車両の速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する。つまり、抽出部401は、車両の速度データのうち、急加速や急減速があった箇所を抽出し、例えば、図4の(1)や(2)に示す箇所を抽出する。例えば、図4の(1)に示す例では、「t1」から「t2」の間にある速度データすべてを抽出したり、「t1」から「t2」の間にある速度データの平均速度を抽出したり、「t1」から「t2」という時間帯を抽出したりする。
【0036】
例えば、抽出部401は、車両の運行記録データのうち、1秒間に「7km/h」以上加速した箇所を急加速があった箇所として抽出し、1秒間に「9km/h」以上減速した箇所を急減速があった箇所として抽出する。なお、抽出部401が運行記録データのうち急加速や急減速を抽出する手法については、1秒間に「7km/h」以上加速した箇所を抽出する手法や、1秒間に「9km/h」以上減速した箇所を抽出する手法に限定されるものではない。具体的には、判定装置200を利用する者が任意の速度に設定して良く、例えば、「10km/h」以上加速してはじめて急加速があった箇所として抽出してもよく、1秒間に「13km/h」以上減速してはじめて急減速があった箇所として抽出してもよい。
【0037】
また、抽出部401は、速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出すると、速度データのうち抽出した箇所を判定部402に送る。
【0038】
判定部402は、脈拍データ記憶部302と抽出部401と出力部403と接続される。また、判定部402は、運行記録データと同期をとって測定された脈拍データのうち、抽出部401によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用するか否かを判定する。
【0039】
具体的には、判定部402は、抽出部401によって抽出された箇所を抽出部401から受信する。そして、判定部402は、速度データのうち抽出された箇所に対応する脈拍データを脈拍データ記憶部302から取得し、取得した脈拍データを用いて、所定時間あたりの拍数の変化量や拍間隔の変化量を算出する。そして、判定部402は、算出した変化量が閾値以上になるかを判別し、閾値以上になる場合には危険運転データとして採用すると判定し、算出した変化量が閾値以下である場合に採用しないと判定する。
【0040】
例えば、判定部402は、速度データのうち抽出された箇所を抽出部401から受信すると、脈拍データ記憶部302から取得した脈拍データのうち、抽出部401から受信した箇所の測定時刻に対応する脈拍データを取得する。そして、判定部402は、取得した脈拍データにおいて、心拍数が急激に変化したかや、RRI(R−R Interval)が急激に変化したか、周波数解析結果にギャップが含まれるかを判別する。なお、RRIは、図3に示すように、連続する2つのR波間の間隔であり、心拍間隔を示す。
【0041】
なお、速度データのうち抽出された箇所の測定時刻に対応する脈拍データとは、速度データのうち抽出された箇所の測定時刻と完全一致する測定時刻に対応付けられた脈拍データに限定されるものではなく、抽出された箇所の測定時刻から所定の時間内にある脈拍データが該当する。例えば、速度データのうち抽出された箇所の測定時刻を中心として「5〜10」秒の間にある脈拍データが該当する。
【0042】
また、例えば、判定部402は、心拍数が急激に変化したと判別したり、RRIが急激に変化したと判別したり、周波数解析結果にギャップが含まれると判別したりすると、危険運転データとして採用すると判定する。一方、判定部402は、心拍数が急激に変化したと判別せず、RRIが急激に変化したと判別せず、周波数解析結果にギャップが含まれると判別すると、危険運転データとして採用しないと判定する。
【0043】
また、判定部402は、抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用すると判定すると、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を出力部403に送る。
【0044】
ここで、判定部402が、心拍数が急激に変化したかや、RRIが急激に変化したか、周波数解析結果にギャップが含まれるかを判別する点について、さらに説明する。
【0045】
心拍数や脈拍数が急激に変化したかを判別する点について説明する。判定部402は、図3の「心拍間隔、RRI」に示すように、心拍信号から心拍間隔を算出し、算出した心拍間隔の逆数を算出することで心拍数を取得する。なお、以下では、心拍間隔の逆数を算出することで取得した心拍数を「瞬時心拍数」と記載する。また、判定部402は、瞬時心拍数を算出する際、心拍間隔を何拍分か用いて算出し、例えば、4〜5拍分の心拍間隔を用いて瞬時心拍数を算出する。例えば、4拍分の心拍間隔を用いる場合には、3つの心拍間隔についてそれぞれ逆数を算出し、算出した4つの逆数の平均値を算出することで瞬時心拍数を算出する。
【0046】
そして、判定部402は、瞬時心拍数と、利用者の平均心拍数とを比較することで拍数が閾値よりも変化しているかを判別し、危険運転データとして採用するかを判定する。例えば、瞬時心拍数が平均心拍数より15%〜25%以上増加していると判別する場合に、危険運転データとして採用すると判定する。平均心拍数が「70拍」程度の人を例に説明すると、瞬時心拍数が平均心拍数よりも「15〜30拍」多い場合に、危険運転データとして採用すると判定する。
【0047】
すなわち、判定部402は、図5−1や図5−2に示すように、危険を感じると心拍数が増加することを踏まえ、脈拍数や心拍数が増加したり、RRIの距離が狭くなったりした場合に、採用すると判定する。なお、図5−1や図5−2は、実施例2における心拍数の変化の一例について説明するための図である。
【0048】
図5−1に示す例では、利用者が、突発的な事象やミスにヒヤリとしたりハッとしたりし、危険度が比較的小さいと感じた場合における心拍数の変化の一例である。図5−1に示すように、利用者の心拍数は、20%から40%上昇し、5分程度で平均心拍数に戻る。このような場合に、判定部402は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用する。
【0049】
また、図5−2に示す例では、利用者が、突発的な事象やミスにヒヤリとしたりハッとしたりし、危険度が比較的大きいと感じた場合における心拍数の変化の一例である。図5−2に示すように、利用者の心拍数は、100%以上上昇し、2〜3分程度で平均心拍数に戻る。このような場合に、判定部402は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用する。
【0050】
ここで、瞬時心拍数が平均心拍数より15%〜25%以上増加していると判別する場合に、危険運転データとして採用すると判定する点についてさらに説明する。人の瞬時心拍数は、平均心拍数からプラスマイナス10%程度は危険を感じていなくても変動する。このため、危険を感じていなくても変動しうるプラスマイナス10%の幅以上に心拍数が変化したかを判別するための閾値として、10%より大きい閾値を用い、例えば、15%〜25%を用いる。閾値については、この例示に限るものではなく、判定装置200を利用する者が任意の値に設定して良い。
【0051】
なお、人間の脈は時々不定期に脈飛びが発生することが知られており、緊張状態にあると通常時よりも脈飛びが多く発生する傾向がある。しかしながら、少し脈が飛んだぐらいでは心拍数や脈拍数に影響は現れず、心拍数や脈拍数を用いて危険運転データとして採用するか否かを判定したとしても問題ない。
【0052】
次に、RRIが急激に変化したかを判別する点について説明する。具体的には、RRIが急激に変化する場合とは、脈飛びが発生した場合であり、判定部402は、心拍信号に心拍間隔の不連続があるか否かを判別することで、脈飛びの有無を判別する。例えば、図6−1に示すように、心拍間隔が連続しているか、図6−2の点線で囲んだ部分に示すように、心拍間隔に不連続があるかを判別することで、脈飛びが発生しているかを判別する。
【0053】
すなわち、判定部402は、緊張状態では脈が飛びやすい傾向があることを踏まえ、そして、判定部402は、脈飛びがあると判別する場合に、危険運転データとして採用すると判定する。なお、図6−1は、心拍信号が連続している場合の一例を説明するための図である。また、図6−2は、心拍信号に不連続がある場合の一例を説明するための図である。
【0054】
次に、周波数解析結果にギャップが含まれるかを判別する点について説明する。判定部402は、図7の(1)に示すように、心拍信号を取得すると、R波ごとに心拍間隔を取得することで、図7の(2)に示すように、心拍間隔の時間経過による変化を示す心拍間隔変動データを算出する。なお、図7は、実施例2における時間軸上での心拍間隔について説明するための図である。図7の(1)の横軸は時間の経過を示し、縦軸が心電の強さを示す。また、図7の(2)の横軸は時間の経過を示し、縦軸が心拍間隔を示す。
【0055】
そして、判定部402は、図7の(2)に示すグラフに対して周波数解析を行い、例えば、FFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)を行うことで、図8−1や図8−2に示すような周波数成分についての解析結果となるグラフを算出する。そして、判定部402は、周波数解析結果となるグラフにギャップがあるかを判別し、あると判別すると、危険運転データとして採用すると判定する。図8−1は、実施例2における周波数解析結果にギャップが含まれる場合を説明するための図である。また、図8−2は、実施例2における周波数解析結果にギャップが含まれない場合を説明するための図である。
【0056】
図8−1や図8−2では、横軸は時間の経過を示し、縦軸が、心拍間隔のゆらぎが反映された周波数を示す。また、図8−1や図8−2では、周波数を示す軸と時間を示す軸によって表される平面上の色が、周波数のパワーを示し、例えば、周波数のパワーが強ければ強いほど濃い色を示し、周波数のパワーが弱ければ弱い程薄い色を示す。
【0057】
図8−1に示すように、心拍間隔に不連続がある場合には、心拍間隔のゆらぎが反映されたゆらぎ周波数にも変化が発生する結果、パワーのピークを時間の経過に従って追っていくと、図8−1の矢印の部分に示すように、急激な変化を示すギャップが発生する。一方、図8−2に示すように、心拍間隔に不連続がない場合には、図8−1の点線で囲んだ部分に示すように、矢印の部分に示すように、パワーのピークを時間の経過に従って追っていっても、ギャップが発生しない。
【0058】
すなわち、判定部402は、緊張状態では脈が飛びやすく、脈が飛ぶと心拍間隔の周波数解析結果として得られるグラフに急激な変化が発生することを踏まえ、周波数解析結果にギャップが発生したかを判別する。そして、判定部402は、ギャップが発生したと判別すると、危険運転データとして採用すると判定する。
【0059】
出力部403は、判定部402と接続される。また、出力部403は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を判定部402から受信すると、受信した箇所についての情報を利用者に出力したり、ログとして所定の記憶部に入力したりする。
【0060】
例えば、出力部403は、判定部402から受信した情報そのものや、判定部402から受信した箇所に対応する測定時刻、判定部402から受信した箇所の個数を利用者に出力する。また、例えば、出力部403は、車両の速度データを併せて利用者に出力し、利用者に出力する車両の速度データのうち、判定部402から受信した箇所に対応する箇所を目立たせて出力する。なお、出力部403は、例えば、利用者に出力する情報を判定装置200に接続されたディスプレイ上に表示し、あるいは、電気通信回線を介して、利用者によって利用される端末へと送信する。
【0061】
なお、判定装置200は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、PDA(Personal Digital Assistant)などの情報処理装置に、上記した各部の各機能を搭載することによって実現してもよい。
【0062】
[実施例2に係る判定装置による処理]
次に、実施例2における判定装置200による処理の流れについて説明する。以下では、運行記録データや脈拍データを入力する処理の流れと、判定装置200による危険運転データ抽出処理の流れについて順に説明する。
【0063】
[運行記録データや脈拍データの入力処理]
図9を用いて、実施例2に係る判定装置200による運行記録データや脈拍データの入力処理の流れの一例について説明する。なお、図9は、実施例2に係る判定装置による運行記録データや脈拍データの入力処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【0064】
図9に示すように、実施例2に係る判定装置200は、車両の運行が開始されると(ステップS101肯定)、運行記録データと心拍信号とを同期をとって測定する(ステップS102)。具体的には、車両の運行が開始されると、運行記録データ用センサ201は、車両の運行記録データを測定し、生体情報センサ202が、運行記録データ用センサ201によって測定される運行記録データと同期をとって、車両の利用者の脈拍データを測定する。
【0065】
そして、判定装置200は、測定したデータを記憶部に入力する(ステップS103)。具体的には、運行記録データ用センサ201は、測定した運行記録データを運行記録データ記憶部301に入力し、生体情報センサ202が、測定した脈拍データを脈拍データ記憶部302に入力する。
【0066】
[危険運転データ抽出処理]
図10を用いて、実施例2に係る判定装置200による危険運転データ抽出処理の流れの一例について説明する。なお、図10は、実施例2に係る判定装置による危険運転データ抽出処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【0067】
図10に示すように、実施例2に係る判定装置200は、処理タイミングになると(ステップS201肯定)、抽出部401が、運行記録データ記憶部301に記憶された車両の運行記録データを取得する(ステップS202)。そして、抽出部401は、運行記録データに含まれる車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出する(ステップS203)。
【0068】
そして、抽出部401は、急加速や急減速があった箇所があるかを判定する(ステップS204)。ここで、抽出部401は、あると判定する場合には(ステップS204肯定)、車両の速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出することで、急加速や急減速があった箇所を抽出する(ステップS205)。
【0069】
なお、抽出部401は、急加速や急減速があった箇所がないと判定する場合には(ステップS204否定)、そのまま処理を終了する。
【0070】
そして、判定部402は、抽出部401によって抽出された箇所に対応する脈拍データを脈拍データ記憶部302から取得する(ステップS206)。そして、判定部402は、取得した脈拍データにおいて、心拍数が急激に変化したかを判別する(ステップS207)。また、判定部402は、RRIが急激に変化したかを判別し(ステップS208)、周波数解析結果にギャップが含まれるかを判別する(ステップS209)。
【0071】
ここで、判定部402が、心拍数が急激に変化したと判別したり、RRIが急激に変化したと判別したり、周波数解析結果にギャップが含まれると判別したりした場合について説明する(ステップS207肯定orS208肯定orS209肯定)。この場合、判定部402は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用すると判定する(ステップS210)。
【0072】
また、判定部402が、心拍数が急激に変化したと判別せず、RRIが急激に変化したと判別せず、周波数解析結果にギャップが含まれると判別しない場合について説明する(ステップS207否定&S208否定&S209否定)。この場合、判定部402は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を危険運転データとして採用しないと判定する(ステップS211)。
【0073】
なお、判定装置200が処理する順序は、図10に示す順序に限定されるわけではなく、例えば、判定装置200は、脈拍データのうち変化量が閾値以上である部分を取得し、その後、速度データのうち取得した部分に対応する箇所に急加減速を示すデータがあるかを判別してもよい。つまり、図10に示した処理のうち、ステップS204とS205を実行する前に、ステップS207からステップS209を実行しても良い。
【0074】
また、例えば、判定装置は、脈拍データのうち変化量が閾値以上である部分を抽出し、並行して、運行記録データのうち該部分に対応する箇所の変位量が閾値以上になる箇所を抽出する。そして、判定装置は、抽出した部分と箇所が対応する場合に運行記録データとして採用すると判定してもよい。つまり、図10に示した処理のうち、ステップS204とS205の処理と、ステップS207からステップS209の処理とを並行して実行しても良い。
【0075】
[実施例2の効果]
上記したように、実施例2によれば、判定装置200は、車両の速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する。そして、判定装置200は、速度データと同期をとって測定された脈拍データのうち、抽出部401によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、危険な運転状態を示す危険運転データとして該箇所を採用するか否かを判定する。この結果、脈の状態変化が小さければ棄却し、状態変化が大きければ採用することで、危険運転データを適切に取得可能である。
【0076】
すなわち、本当に危険な場面であったならば利用者の脈拍データに変動が発生するはずであることを踏まえ、急加減速が行われた箇所に対応する脈拍データに基づいて危険運転データとして採用するか否かを判定する。この結果、急加減速を示す箇所のうち、実際に危険な運行状態であった箇所を示す危険運転データを採用でき、急加速や急減速の有無のみを用いる手法と比較して危険運転データを高精度に抽出可能である。
【0077】
また、実施例2によれば、運行記録データに記録されたデータから、危険行為とみなされる急減速、急加速を高精度に抽出することができ、運転者への注意喚起、安全運転励行、事故の防止に用いることが可能である。言い換えると、実施例2によれば、脈拍データを用いることで、運行記録データに記録されたデータから、運転者の運転中の状態変化(通常と違う状態、危険状態含む)を示す箇所を高精度で抽出することが可能である。
【実施例3】
【0078】
さて、これまで、実施例1や2として、急加減速があり、脈拍に変化がある箇所を危険運転データとして採用すると判定する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに、採用すると判定した危険運転データを危険行為の類型ごとに分類分けしてもよい。具体的には、車両の速度が変化するタイミングと脈拍データが変化するタイミングとの関係や変化の仕方に基づいて、危険運転データを分類分けしてもよい。
【0079】
そこで、以下では、危険行為の類型ごとに危険運転データを分類分けする場合について説明する。なお、以下では、実施例1に係る判定装置と同様の点については、簡単に説明し、または、説明を省略する。また、以下では、脈拍データとして心拍数を例に用いて説明する。
【0080】
判定部402は、速度データのうち抽出部401によって抽出された箇所を受信し、また、受信した箇所に対応する脈拍データを脈拍データ記憶部302から取得する。そして、判定部402は、速度が上昇したタイミングと心拍数が上昇したタイミングとの関係と変化の仕方とを識別する。そして、識別した関係や変化の仕方に対応する危険行為の類型へと、危険運転データを分類する。
【0081】
まず、車両の速度の変化の後に、心拍数が変化する場合について説明する。このような場合に、判定部402は、利用者が予測していなかった事態に起因する危険行為であると分類する。
【0082】
例えば、図11−1や図11−2に示すように、車両の速度が上昇した後に、心拍数が上昇している場合には、判定部402は、利用者が予測していなかった事態に起因する危険行為であると分類する。図11−1や図11−2に示す例は、利用者が利用する車両が他の車両を追い越す運転操作を行った場合に測定される車両の速度データや心拍数の一例である。なお、図11−1や図11−2は、実施例3における車速変動の後に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【0083】
図11−1や図11−2に示す例では、追い越しを開始して車両の速度が上昇した時点では心拍数に変動はない。しかし、その後、利用者が予測していなかった事態が起こり、例えば、他の車両に並んで追い越す瞬間に他の車両が自車両に接近したり、他の車両が速度を上げた結果なかなか追い越しできなかったりしたという予測していなかった事態が起こり、その結果、心拍数があがっている。なお、図11−1は、心拍数があがった後すぐに心拍数が元に戻った場合の一例を示し、図11−2は、心拍数があがった後すぐに心拍数が元に戻らなかった場合の一例を示した。
【0084】
また、例えば、図11−3に示すように、車両の速度が下降した後に、心拍数が上昇している場合には、判定部402は、利用者が予測していなかった事態に起因する危険行為であると分類する。図11−3に示す例は、利用者が利用する車両の前に自転車が急に飛び出した場合に測定される車両の速度データや心拍数の一例である。なお、図11−3は、実施例3における車速変動の後に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【0085】
図11−3に示す例では、利用者が利用する車両の前に自転車が急に飛び出した結果、利用者がまずは反射的に車両の速度をさげ、その後、利用者が危険を感じたことにより心拍数があがっている。
【0086】
次に、心拍数が変化した後に、車両の速度が変化する場合について説明する。このような場合に、判定部402は、利用者が予測していた事態に起因する危険行為であると分類する。つまり、利用者自らが車両の速度を変化させたことに起因する危険行為であると分類する。
【0087】
例えば、図12−1や図12−2に示すように、心拍数が上昇した後に、車両の速度が上昇している場合には、判定部402は、利用者が予測していた事態に起因する危険行為であると分類する。図12−1と図12−2に示す例は、高速道路で他の車を追い越す場合に測定される車両の速度データや心拍数の一例である。なお、図12−1や図12−2は、実施例3における車速変動の前に心拍変動が来る場合について説明するための図である。
【0088】
図12−1や図12−2に示す例では、利用者が追い越しを実行すると決めた時点において心拍数が上昇し、その後、実際に車両の速度が上昇している。なお、図12−1は、心拍数があがった後すぐに心拍数が元に戻った場合の一例を示し、図12−2は、心拍数があがった後すぐに心拍数が元に戻らなかった場合の一例を示した。
【0089】
また、判定部402は、危険運転データを分類した危険行為の類型を出力部403に出力し、その後、出力部403が、危険運転データとして採用すると判定された箇所についての情報とともに出力される。
【0090】
[実施例3の効果]
上記したように、実施例3によれば、危険運転データを危険行為の類型ごとに分類するので、危険運転データがどのように危険であったかを判定装置を利用する者が把握することが可能である。
【実施例4】
【0091】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、その他の実施例にて実施されてもよい。そこで、以下では、その他の実施例について説明する。
【0092】
[脈拍データを用いる手法]
例えば、上記した実施例では、急加速や急減速の有無と脈拍データとを併せて用いて、危険運転データとして採用するかを判定する手法について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、心拍信号のみを用いて危険運転データを抽出してもよい。例えば、判定装置は、脈拍データ記憶部302から脈拍データすべてを取得し、取得した脈拍データのうち、算出した変化量が閾値以上である部分を取得する。そして、判定装置は、速度データのうち、取得した部分に対応する箇所を危険運転データとして採用すると判定してもよい。
【0093】
[車両の速度データを用いた処理と脈拍データを用いた処理との関係]
また、例えば、上記した実施例では、速度データのうち変化量が閾値以上になる箇所を抽出し、その後、該箇所に対応する脈拍データに基づいて危険運転データとして採用するかを判定する手法について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、判定装置は、脈拍データのうち変化量が閾値以上である部分を取得し、その後、速度データのうち取得した部分に対応する箇所に急加減速を示すデータがあるかを判別する。そして、判定装置は、急加減速を示すデータがあると判別した場合に、速度データのうち取得した部分に対応する箇所を危険運転データとして採用すると判定してもよい。
【0094】
また、例えば、判定装置は、脈拍データのうち変化量が閾値以上である部分を抽出し、並行して、運行記録データのうち該部分に対応する箇所の変位量が閾値以上になる箇所を抽出する。そして、判定装置は、抽出した部分と箇所が対応する場合に運行記録データとして採用すると判定してもよい。
【0095】
[利用者]
また、例えば、上記した実施例では、利用者として、車両を運転する運転者の脈拍データを用いる場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、運転者以外の同乗者の脈拍データを用いても良い。例えば、助手席の座部やシートベルトに脈拍センサを設けることによって、助手席に座っている同乗者の脈拍データを測定して用いても良い。これにより、車両の速度データのうち、助手席に座っている同乗者が危険を感じた箇所を危険運転データとして採用することが可能である。
【0096】
[システム構成]
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなってもよく、例えば、利用者が手動で脈拍データを記録しても良い。
【0097】
この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については(例えば、図1〜図12)、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、図10に示した処理の内、ステップS207〜S209の順番を入れ替えても良い。
【0098】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2に示す例では、運行記録データ用センサ201や生体情報センサ202を判定装置とは別装置としてもよい。そして、判定装置は、運行記録データ用センサ201や生体情報センサ202からネットワークを介して運行記録データや脈拍データを受信し、上記した判定処理を実行してもよい。
【0099】
[コンピュータ]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図13を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する判定プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。なお、図13は、実施例2に係る判定プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【0100】
図13に示すように、コンピュータ3000は、車速センサ3001、生体情報センサ3002、通信部3006、CPU(Central Processing Unit)3010、ROM(Read Only Memory)3011、HDD(Hard Disk Drive)3012、RAM(Random Access Memory)3013をバス3009などで接続して構成されている。なお、車速センサ3001と生体情報センサ3002とは、それぞれ、図2に示した運行記録データ用センサ201と生体情報センサ202とに対応する。
【0101】
ROM3011には、上記の実施例1で示した抽出部401と、判定部402と、出力部403と同様の機能を発揮する制御プログラム、つまり、図13に示すように、抽出プログラム3011aと、判定プログラム3011bと、出力プログラム3011cとが予め記憶されている。なお、これらのプログラム3011a〜3011cについては、図2に示した判定装置200の各構成要素と同様、適宜統合または分離してもよい。
【0102】
そして、CPU3010が、これらのプログラム3011a〜3011cをROM3011から読み出して実行することにより、図13に示すように、各プログラム3011a〜3011cについては、抽出プロセス3010aと、判定プロセス3010bと、出力プロセス3010cとして機能するようになる。なお、各プロセス3010a〜3010cは、図2に示した、抽出部401と、判定部402と、出力部403とにそれぞれ対応する。
【0103】
そして、HDD3012には、運行記録データテーブル3012aと、脈拍データテーブル3012bとが設けられている。なお、各テーブル3012a〜3012bは、図2に示した、運行記録データ記憶部301と、脈拍データ記憶部302とにそれぞれ対応する。
【0104】
そして、CPU3010は、運行記録データテーブル3012aと、脈拍データテーブル3012bとを読み出してRAM3013に格納し、RAM3013に格納された運行記録データ3013aと、脈拍データ3013bとを用いて、判定プログラムを実行する。
【0105】
[その他]
なお、本実施例で説明した判定プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、判定プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0106】
100 判定装置
101 抽出部
102 判定部
201 運行記録データ用センサ
202 生体情報センサ
300 記憶部
301 運行記録データ記憶部
302 脈拍データ記憶部
400 制御部
401 抽出部
402 判定部
403 出力部
3000 コンピュータ
3001 車速センサ
3002 生体情報センサ
3006 通信部
3009 バス
3010a 抽出プロセス
3010b 判定プロセス
3010c 出力プロセス
3011a 抽出プログラム
3011b 判定プログラム
3011c 出力プログラム
3012a 運行記録データテーブル
3012b 脈拍データテーブル
3013a 運行記録データ
3013b 脈拍データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、該速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する抽出部と、
前記速度データと同期をとって測定された前記車両を利用する利用者の脈拍データのうち、前記抽出部によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、該箇所を採用するか否かを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記抽出部によって抽出された箇所に対応する脈拍データを用いて、所定時間あたりの拍数の変化量および/または拍間隔の変化量を算出し、算出した変化量が閾値以上である場合に採用すると判定し、算出した変化量が閾値以下である場合に採用しないと判定することを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、該速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する抽出ステップと、
前記速度データと同期をとって測定された前記車両を利用する利用者の脈拍データのうち、前記抽出ステップによって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、危険な運転状態を示す危険運転データとして該箇所を採用するか否かを判定する判定ステップと、
を含んだことを特徴とする判定方法。
【請求項4】
車両の速度データを用いて所定時間あたりの速度の変化量を算出し、該速度データのうち算出した変化量が閾値以上になる箇所を抽出する抽出手順と、
前記速度データと同期をとって測定された前記車両を利用する利用者の脈拍データのうち、前記抽出手順によって抽出された箇所に対応する脈拍データに基づいて、該箇所を採用するか否かを判定する判定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−28332(P2011−28332A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170474(P2009−170474)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】