説明

制御ラジカル重合用触媒及びそれを用いた制御ラジカル重合方法

【課題】分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にし、重合後の除去が容易である制御ラジカル重合用触媒、及びその制御ラジカル重合用触媒を用いた制御ラジカル重合方法を提供する。
【解決手段】少なくとも下記一般式(1)で表される単量体(a)を重合して得られる重合体(A)と、遷移金属化合物とから形成される遷移金属錯体からなる制御ラジカル重合用触媒を用いて重合する。


(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にし、重合後の除去が容易である制御ラジカル重合用触媒、及びその制御ラジカル重合用触媒を用いた制御ラジカル重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のラジカル重合では制御困難とされていたブロック共重合体や分子量分布の狭い重合体の合成が可能となる制御ラジカル重合法が開発されている。制御ラジカル重合法の中でも、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒としてビニル単量体を重合する方法は、開始剤や触媒の設計の自由度が大きく、重合制御が容易であることから、好ましく用いられる。
【0003】
遷移金属錯体を触媒としてビニル単量体を重合する方法としては、例えば、特許文献1及び非特許文献1に記載の方法が挙げられる。しかしながら、これらの重合法では、得られた重合体中に低分子量の遷移金属錯体が混入するため、重合後に吸着剤等を用いて遷移金属錯体を除去する必要がある。
【0004】
重合後の遷移金属錯体の除去を不要とするため、担体に配位子を担持させ、これに遷移金属化合物を配位させた遷移金属錯体が、制御ラジカル重合用触媒として提案されている(非特許文献2、3)。非特許文献2では、イミノピリジル基で表面を修飾した溶剤不溶の担体に遷移金属化合物を配位させ、得られる遷移金属錯体を制御ラジカル重合に用いている。非特許文献3では、架橋したポリスチレンのビーズやシリカの粒子表面にビピリジル基や多価アミンを導入して、遷移金属化合物との錯体を形成させ、制御ラジカル重合に用いている。
【0005】
しかし、非特許文献2で提案されている方法では、重合後に制御ラジカル重合用触媒を除去することは容易であるが、溶剤不溶の担体と配位子の距離が近いため、重合制御の観点から、溶剤に可溶な制御ラジカル重合用触媒に劣るものである。非特許文献3で提案されている方法では、重合制御という観点では良好であるが、−78℃でn−ブチルリチウムを反応させることや、合成ステップが多い等、合成上の課題が多く、汎用性の高い制御ラジカル重合用触媒とは言い難い。
【特許文献1】国際公開第96/30421号パンフレット
【非特許文献1】Macromolecules、1995年、28巻、1721頁〜1723頁
【非特許文献2】Chem. Commun.、1999年、99頁〜100頁
【非特許文献3】Macromolecules、2002年、35巻、7592頁〜7605頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にし、重合後の除去が容易である制御ラジカル重合用触媒、及びその制御ラジカル重合用触媒を用いた制御ラジカル重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、アミノ基を二つ有する単量体を重合して得られる重合体を制御ラジカル重合用触媒として用いることにより、分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にし、重合後の除去が容易であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の制御ラジカル重合用触媒は、少なくとも下記一般式(1)で表される単量体(a)を重合して得られる重合体(A)と、遷移金属化合物とから形成される遷移金属錯体からなる。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基を表す。)
本発明の制御ラジカル重合方法は、上記の制御ラジカル重合用触媒を用いる。
【発明の効果】
【0009】
少なくとも単量体(a)を重合して得られる重合体(A)は、遷移金属化合物と組み合わせることにより、制御ラジカル重合用触媒として好適に用いることができる。本発明の制御ラジカル重合用触媒は、分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にし、重合後の除去が容易である。本発明のラジカル重合方法は、分子量分布の狭い重合体又はブロック共重合体の合成を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の制御ラジカル重合用触媒を形成する重合体(A)は、少なくとも単量体(a)を重合して得られるものである。単量体(a)は、下記一般式(1)で表される。
【化2】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基を表す。)
【0011】
一般式(1)で表される単量体(a)の2つのアミノ基が、得られる重合体と遷移金属化合物とが錯体形成する配位子として機能する部分である。一般式(1)で表される単量体(a)の中でも、合成の容易さの観点から、Rがメチル基である、メタクリル酸2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エチル(以下、「DMAEMAEMA」という。)が好ましい。
【0012】
単量体(a)は、公知の合成方法を組み合わせて合成可能である。例えば、対応するアミノアルコールの水酸基と(メタ)アクリル酸クロリドとを脱水反応をさせる方法や、対応するアミノアルコールとメタクリル酸無水物とを反応させ合成する方法、更には(メタ)アクリル酸メチルのような(メタ)アクリル酸エステルと対応するアミノアルコールとのエステル交換反応により合成する方法、(メタ)アクリル酸と対応するアミノアルコールとの脱水反応により合成する方法(例えば非特許文献 Biomacromolecules、2004年、5巻、32頁〜39頁)が挙げられる。これらの中でも、合成のし易さ、単量体(a)の精製工程の簡略化の観点から、対応するアミノアルコールとメタクリル酸無水物とを反応させ合成する方法、又は(メタ)アクリル酸メチルのような(メタ)アクリル酸エステルと対応するアミノアルコールとのエステル交換反応により合成する方法が好ましい。
【0013】
重合体(A)は、少なくとも単量体(a)を重合して得られる。単量体(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。重合体(A)は、少なくとも単量体(a)を重合したものであることから多数の配位子を有するものとなり、多数の遷移金属化合物との錯体を形成することが可能となる。
【0014】
重合体(A)は、単量体(a)のみを重合して得られるものでも構わないが、単量体(a)と他の単量体(b)とを共重合して得られるものでも構わない。他の単量体(b)は、重合体(A)から得られる制御ラジカル重合用触媒が、制御ラジカル重合で重合する単量体との相溶性に優れることが好ましいことから、制御ラジカル重合で重合する単量体と同じであることがより好ましい。例えば、メタクリル酸メチルを制御ラジカル重合で重合する触媒を形成するために用いる重合体(A)の場合には、他の単量体(b)としてメタクリル酸メチルを共重合して得られるものであることが好ましい。以上の観点から、他の単量体(b)としては、制御ラジカル重合に適した単量体が挙げられる。
【0015】
他の単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル単量体;パーフルオロエチレン、弗化ビニリデン等の弗素含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の珪素含有単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル又はジアルキルエステル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル又はジアルキルエステル等のフマル酸系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニルが挙げられる。
他の単量体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。他の単量体(b)の中では、得られる重合体(A)の特性の観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等の芳香族ビニル単量体、シアノ基含有単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、シアノ基含有単量体がより好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを示す。
【0016】
単量体(a)と他の単量体(b)とを共重合して得られる重合体(A)(100モル%)中の単量体(a)単位の含有率は、重合体(A)が遷移金属化合物と形成する制御ラジカル重合用触媒の溶解性の観点から、10〜90モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。重合体(A)(100モル%)中の単量体(a)単位の含有率が、10モル%以上であれば、制御ラジカル重合に用いる重合体(A)の添加量が増加せず、効率的に重合を行なうことができ、90モル%以下であれば、遷移金属化合物との錯体形成により、重合体(A)の溶媒への溶解性が低下することがない。
【0017】
共量体(a)と他の単量体(b)とを共重合して得られる重合体(A)(100モル%)中の他の単量体(b)単位の含有率は、重合体(A)が遷移金属化合物と形成する制御ラジカル重合用触媒の溶解性の観点から、10〜90モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。重合体(A)(100モル%)中の他の単量体(b)単位の含有率が、10モル%以上であれば、遷移金属化合物との錯体形成により、重合体(A)の溶媒への溶解性が低下することがなく、90モル%以下であれば、制御ラジカル重合に用いる重合体(A)の添加量が増加せず、効率的に重合を行なうことができる。
【0018】
重合体(A)の数平均分子量は、5000〜50万であることが好ましく、5000〜10万であることがより好ましい。数平均分子量が5000以上であれば、遷移金属化合物との錯体を形成し、制御ラジカル重合に用いた場合に、重合後の除去が容易であり、50万以下であれば、制御ラジカル重合の終了後、溶媒変更等により、得られた重合体との分離が容易である。
【0019】
本発明の制御ラジカル重合用触媒を形成する重合体(A)は、公知の重合方法によって製造することができる。重合系としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合、懸濁重合が挙げられる。また、重合方法としては、ラジカル重合又はアニオン重合が好ましく、ラジカル重合がより好ましい。
【0020】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤の中では、取り扱い性の観点から、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルが好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合体(A)の製造に用いる単量体1モルに対して0.00001〜0.01モルであることが好ましく、0.0001〜0.01モルであることがより好ましい。
【0021】
その他、重合体(A)の分子量を調節するために、メルカプタン等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0022】
重合体(A)を得るためのラジカル重合は、無溶媒又は各種の溶媒中で行なうことができる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、超臨界CO2を媒体とする系でも重合を行なうことができる。
【0023】
重合の雰囲気は、特に限定されないが、酸素不存在雰囲気が好ましい。酸素はラジカルと容易に反応し、重合を阻害するためである。重合温度は、−50〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
【0024】
本発明の制御ラジカル重合用触媒は、重合体(A)と、遷移金属化合物とから形成される遷移金属錯体からなる。ここでいう遷移金属化合物としては、特許文献1で例示されている遷移金属化合物が挙げられ、例えば、
MXn
(MはCu、Fe、Ru、Cr、Mo、W、Rh、Re、Co、V、Zn、Au、Agからなる群から選ばれ、Xはハロゲン原子、nは金属の形式電荷(0≦n≦7)である)
が挙げられる。これらの中でも、重合体(A)への配位の容易さ、更には、制御ラジカル重合触媒としての制御能の観点から、MはCuが好ましく、Xは塩素、臭素、沃素が好ましく、nは0〜2が好ましい。更に、重合制御能の観点から、これらの中でも、銅、塩化第一銅、臭化第一銅が好ましい。
【0025】
遷移金属化合物と重合体(A)の割合は、重合体(A)中に含まれる単量体(a)単位1モルに対し、遷移金属化合物が0.01〜1モルであることが好ましい。遷移金属化合物が0.01モル以上であれば、遷移金属錯体を形成する単量体(a)単位は少なく、単量体(a)単位が効果的に使用される。また、遷移金属化合物が1モル以下であれば、遷移金属化合物は効率的に遷移金属錯体を形成し、重合の阻害を抑制できる。
より好ましい割合としては、重合体(A)中に含まれる単量体(a)単位1モルに対し、遷移金属化合物が0.1〜0.5モルである。
【0026】
本発明の制御ラジカル重合用触媒は、上述の重合体(A)を得るために使用する溶媒として例示した各種溶剤に可溶であり、この溶剤を溶媒として用いた均一系遷移金属錯体として使用することが可能である。更には、本発明の制御ラジカル重合用触媒は、制御ラジカル重合に使用後、制御ラジカル重合用触媒の溶解性を変化させることで回収も容易である。例えば、冷却したメタノールに投入することで触媒のみ溶解させ、制御ラジカル重合により得られた重合体のみ沈殿させることで回収することもできる。
【0027】
本発明の制御ラジカル重合方法について、説明する。
遷移金属錯体を用いた制御ラジカル重合においては、遷移金属錯体が重合体の末端からハロゲン原子を引き抜き、引き抜かれた分子からラジカル重合が進行する。しかしながら引き抜かれたハロゲン原子は遷移金属錯体から非常に速い速度で重合中の成長ラジカルに再付加し、重合を一時的に停止する。
成長ラジカルに付加したハロゲン原子は再び、遷移金属錯体により引き抜かれ、再び引き抜かれた分子からラジカル重合が進行する。このサイクルを繰り返し続けることで、分子量分布の狭い重合体やブロック共重合体を合成することが可能となる。
【化3】

この際、遷移金属錯体がハロゲン原子を引き抜く速度を調整することは重要な因子となる。遷移金属錯体が不溶又は不溶の担体に担持されている場合には、遷移金属錯体がハロゲン原子を引き抜くに十分な酸化還元電位を有していたとしても、ハロゲン原子との接触回数が少なければ、ラジカルが発生しにくくなり、制御ラジカル重合は非常に重合速度の遅いものになってしまう。
一方で、遷移金属錯体を用いた制御ラジカル重合は、制御ラジカル重合後、遷移金属錯体を除去する必要がある。除去しない場合には、得られた重合体中に遷移金属錯体が残存し、透明性等の光学的特性を低下させたり、耐候性を低化させたりする要因となる。
【0028】
本発明の制御ラジカル重合用触媒を用いた制御ラジカル重合を行なうに際し、使用できる単量体としては、他の単量体(b)として例示した単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの内では、生成物の物性の観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等の芳香族ビニル単量体、シアノ基含有単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、シアノ基含有単量体がより好ましい。
【0029】
制御ラジカル重合は、無溶媒又は各種の溶媒中で行なうことができる。溶媒としては、重合体(A)の重合に用いる溶媒として例示した溶媒が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、超臨界CO2を媒体とする系でも重合を行なうことができる。
【0030】
制御ラジカル重合に用いる重合開始剤としては、例えば、1官能性、2官能性、又は多官能性の有機ハロゲン化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は目的に応じて使い分けることができる。A−Bジブロック共重合体を製造する場合には、1官能性の有機ハロゲン化合物を用いることが好ましい。A−B−A型のトリブロック共重合体、B−A−B型のトリブロック共重合体を製造する場合には、反応工程数、製造時間短縮の点から2官能性の有機ハロゲン化合物を用いることが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、製造時間短縮の点から多官能性の有機ハロゲン化合物を用いることが好ましい。
【0031】
1官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、
1−C(H)(X)−COOR2
1−C(CH3)(X)−COOR2
1−C(H)(X)−CO−R2
1−C(CH3)(X)−CO−R2
1−C(H)(X)−CN、
1−C(CH3)(X)−CN、
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。Xは、塩素、臭素又は沃素を表す。R2は炭素数1〜20の1価の有機基を表す。)
で示される化合物が挙げられる。
【0032】
1の、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。R2の、炭素数1〜20の1価の有機基としては、R1として例示した、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0033】
1官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、メチル−2−ブロモプロピオネート、エチル−2−ブロモプロピオネート、n−ブチル−2−ブロモプロピオネート、t−ブチル−2−ブロモプロピオネート、メチル−2−ブロモイソブチレート、エチル−2−ブロモイソブチレート、n−ブチル−2−ブロモイソブチレート、t−ブチル−2−ブロモイソブチレート、2−ブロモプロピオノニトリル、2−ブロモイソブチロニトリルが挙げられる。これらの中では、メチル−2−ブロモイソブチレート、エチル−2−ブロモイソブチレート、n−ブチル−2−ブロモイソブチレート、t−ブチル−2−ブロモイソブチレート、2−ブロモプロピオノニトリルが、ハロゲン基の脱離速度が速い点から好ましい。
【0034】
2官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、
XCH(COOR3)−(CH2n−CH(COOR3)−X、
XC(CH3)(COOR3)−(CH2n−C(CH3)(COOR3)−X、
XCH2−COO−(CH2n−OCO−CH2−X、
XCH(CH3)−COO−(CH2n−OCO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−COO−(CH2n−OCO−C(CH32−X、
XCH2−COO−C64−OCO−CH2−X、
XCH(CH3)−COO−C64−OCO−CH(CH3)−X、
XC(CH32−COO−C64−OCO−C(CH32−X、
(式中、R3は、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基を表す。2つのR3を有する化合物の場合、各R3は同じでもよく、異なっていてもよい。nは0〜20の整数を表す。C64は2価のフェニル基(2つの結合手の位置は1位〜6位のいずれにある組み合わせでもよい)、Xは、前記と同様である。)
で示される化合物挙げられる。R3の、炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基は、R1として例示したものと同様である。
【0035】
2官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチルが挙げられる。これらの中では、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが好ましい。
【0036】
多官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、
63−(CH2−X)3
63−(CH(CH3)−X)3
63−(C(CH32−X)3
(式中、C63は3価のフェニル基(3つの結合手の位置は1位〜6位のいずれにある組み合わせでもよい)、Xは前記と同じである。)
で示される化合物が挙げられる。
【0037】
多官能性の有機ハロゲン化合物としては、例えば、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンが挙げられる。これらの中では、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが好ましい。
【0038】
これら重合開始剤の使用量は、重合体の製造に用いる単量体1モルに対して0.00001〜0.01モルであることが好ましく、更に好ましくは0.0001〜0.01モルである。
【0039】
本発明の制御ラジカル重合方法により得られる重合体の数平均分子量は1000〜50万であることが好ましい。数平均分子量が1000以上であれば、得られる重合体の物性及び取り扱い性が良好となる。また、数平均分子量が50万以下であれば、加工性が良好になる。
【0040】
本発明の制御ラジカル重合方法としては特に制限はなく、公知の重合方法を採用することができる。本発明における重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合、懸濁重合が挙げられる。
重合の雰囲気は、特に限定されないが、酸素不存在雰囲気が好ましい。酸素はラジカルと容易に反応し、重合を阻害するためである。重合温度については、−50〜200℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。
【0041】
本発明の制御ラジカル重合方法により得られた重合体は、各種用途に使用することができる。得られた重合体の用途としては、例えば、分子量分布が狭いことを利用した塗料用組成物、ブロック共重合体であることを利用した熱可塑性組成物、熱又は光による硬化性組成物、粘着剤用組成物、接着剤用組成物、更には、フィルムやシート等の成形材料が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、合成例、実施例及び比較例において、各種測定は以下の方法により行なった。
【0043】
(1)化合物の同定
1H、13C、二次元−NMR(Bruker製、商品名:DPX300)により求めた。化合物を重水素化クロロホルム(CDCl3)又は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解させ、各水素のピークの積分強度の比から純度を計算し、各炭素のピークの数、更には、水素と炭素の相関を二次元NMRにより確認し、同定した。測定温度:25℃。
【0044】
(2)重合体の組成
1H−NMR(Bruker製、商品名:DPX300)により求めた。重合体をCDCl3に溶解させ、カルボン酸エステル部位のピークの積分強度の比から計算した。測定温度:25℃、積算回数:16回。
【0045】
(3)重合転化率の測定
1H−NMR(Bruker製、商品名:DPX300)を使用し、重合中又は重合後に採取した重合混合溶液をCDCl3に溶解させ、内部基準としての重合混合液中に含まれるトルエンの芳香環由来のピークの積分強度と、単量体の炭素―炭素二重結合由来のピークの積分強度の比から、単量体の重合転化率を測定した。測定温度:25℃、積算回数:16回。
【0046】
(4)重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)
ポリメタクリル酸メチル又はポリスチレンをスタンダードとして、SEC(Polymer Laboratories製、PL−gel 5μm(50×7.5mm)ガードカラム+PL−gel 5μm(300×7.5mm) mixed Cカラム×2、移動相としてテトラヒドロフラン/トリエチルアミン=95/5質量%)を用いて決定した。
【0047】
(合成例1)
<メタクリル酸2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エチル(DMAEMAEMA)の合成>
100mLの無水クロロホルムに、100mL(0.62mol)の2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノールを加え、0℃で攪拌させながら、92.4mL(0.62mol)の無水メタクリル酸を約1時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を上げ、約3時間穏やかに還流させた。その後、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液を100mL加えることで、副生成物として得られるメタクリル酸を中和した。次いで、クロロホルム相を回収し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(50mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶媒を留去することで、薄い黄色の液体を得た。この液体を減圧下で蒸留することで精製して、DMAEMAEMAを得た(沸点:70〜72℃/0.1mmHg、収率:86%)。
1H−NMR(CDCl3):δ 6.11(m、1H)、5.56(m、1H)、4.26(t、2H)、2.73(t、2H)、2.59(m、2H)、2.41(m、2H)、2.32(s、3H)、2.26(s、6H)、1.92(s、2H)
13C−NMR(CDCl3):δ 167.4、136.2、125.6、62.7、57.3、56.1、55.8、45.7、42.9、18.5
1H−NMRのスペクトルを図1に示す。
【0048】
(合成例2)
<DMAEMAEMAの単独重合体>
アルゴン置換した100mlフラスコ内に、DMAEMAEMA21.4g(100mmol)、トルエン26.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル26mgを添加し、70℃で24時間攪拌することにより、DMAEMAEMAの単独重合を行なった。その後、反応液をメタノール500mlとの混合物中に投じ、沈殿物を濾過して白色固体を得た。この白色固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥し、精製した重合体(HP1)21.2gを得た。HP1のMnは48000、PDIは1.82であった。
【0049】
(合成例3)
<DMAEMAEMAとメタクリル酸メチル(MMA)の共重合体−1>
DMAEMAEMA21.4gの代わりにDMAEMAEMA6.42g(30mmol)とMMA7.01g(70mmol)を添加し、トルエン26.0gの代わりにトルエン12.0gを添加したこと以外は、合成例2と同様にしてDMAEMAEMAとMMAの共重合を行なった。得られた共重合体(CP1)は12.0gであり、CP1のMnは30000、PDIは1.91であった。CP1を1H−NMRで分析した結果、DMAEMAEMA/MMA=30/70(mol比)の共重合体であった。
【0050】
(合成例4)
<DMAEMAEMAとメタクリル酸メチル(MMA)の共重合体−2>
DMAEMAEMA21.4gの代わりにDMAEMAEMA2.14g(10mmol)とMMA9.01g(90mmol)を添加し、トルエン26.0gの代わりにトルエン10.0gを添加したこと以外は、合成例2と同様にしてDMAEMAEMAとMMAの共重合を行なった。得られた共重合体(CP2)は8.2gであり、CP2のMnは22000、PDIは1.85であった。CP2を1H−NMRで分析した結果、DMAEMAEMA/MMA=10/90(mol比)の共重合体であった。
【0051】
(合成例5)
<アミノ基含有共重合体(R−CP1)の合成>
アルゴン置換した100mlフラスコ内に、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)2.36g(15mmol)、MMA13.5g(135mmol)、トルエン15.0g、AIBN25mgを添加した。70℃で24時間攪拌することにより、DMAEMAとMMAの共重合を行なった。その後、反応液をヘキサン500ml中に投じ、沈殿物を濾過して白色固体を得た。この白色固体をヘキサンで洗浄し、減圧乾燥し、精製した共重合体12.8gを得た。共重合体(R−CP1)のMnは34000、PDIは2.0であった。得られた共重合体を1H−NMRで分析した結果、DMAEMA/MMA=10/90(mol比)の共重合体であった。
【0052】
(実施例1)
<単独重合体を用いた制御ラジカル重合−1>
100mLシュレンクに、合成例2で得られた単独重合体(HP1)0.8g(3.75mmolのDMAEMAEMA単位を含有)を投入し、トルエン60mL及び塩化第一銅0.247g(2.5mmol)を添加し、窒素バブリングにより窒素置換した。次いで、予め窒素バブリングにより窒素置換したMMA50g(0.50mol)を添加し、内温を60℃まで昇温させ、同温度で20分間攪拌し、塩化第一銅とDMAEMAEMA単位との錯体を形成させた。
【0053】
次いで、重合開始剤としてt−ブチル−2−ブロモイソブチレート0.56g(2.5mmol)を添加し、60℃でMMAの制御ラジカル重合を開始させた。1H−NMRにより求めた、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は84%であり、0℃に冷却したメタノールに沈殿させた重合体のMnは15200、PDIは1.34であった。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であったことから、銅錯体がメタノールに溶解していることを確認した。
【0054】
(実施例2)
<共重合体を用いた制御ラジカル重合−1>
合成例2で得られた単独重合体(HP1)0.8gの代わりに、合成例3で得られた共重合体(CP1)1.68g(3.75mmolのDMAEMAEMA単位を含有)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。1H−NMRにより求めた、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は78%であり、0℃に冷却したメタノールに沈殿させた重合体のMnは14100、PDIは1.34であった。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であった。
【0055】
(実施例3)
<共重合体を用いた制御ラジカル重合−2>
合成例2で得られた単独重合体(HP1)0.8gの代わりに、合成例4で得られた共重合体(CP2)4.18g(3.75mmolのDMAEMAEMA単位を含有)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。所望の時間にサンプリングし、MMAの重合転化率を1H−NMRより計算し、0℃に冷却したメタノールに沈殿させたサンプルのMn及びPDIを計算した。結果を図2及び図3に示す。なお、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は75%であり、0℃に冷却したメタノールに沈殿させた重合体のMnは13800、PDIは1.32であった。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であった。
【0056】
(実施例4)
<共重合体を用いた制御ラジカル重合−3>
重合温度を75℃にした以外は、実施例3と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。所望の時間にサンプリングし、MMAの重合転化率を1H−NMRより計算し、0℃に冷却したメタノールに沈殿させたサンプルのMn及びPDIを計算した。結果を図2及び図3に示す。なお、重合開始5時間になる前にMMAの重合転化率は95%を超えたので、その時点で重合を終了した。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であった。
【0057】
(実施例5)
<共重合体を用いた制御ラジカル重合−4>
重合温度を90℃にした以外は、実施例3と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。所望の時間にサンプリングし、MMAの重合転化率を1H−NMRより計算し、0℃に冷却したメタノールに沈殿させたサンプルのMn及びPDIを計算した。結果を図2及び図3に示す。なお、重合開始5時間になる前にMMAの重合転化率は95%を超えたので、その時点で重合を終了した。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であった。
【0058】
(比較例1)
<ポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた制御ラジカル重合>
合成例4で得られた共重合体(CP2)4.18gの代わりに、PMMA樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH)4.18gを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。しかし、1H−NMRより計算した、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は0%であった。
【0059】
(比較例2)
<R−CP1を用いた制御ラジカル重合>
合成例4で得られた共重合体(CP2)4.18gの代わりに、合成例5で合成したアミノ基含有共重合体(R−CP1)3.97g(3.75mmolのDMAEMA単位を含有)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。1H−NMRより求めた、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は41%であり、0℃に冷却したメタノールに沈殿させた重合体のMnは25000、PDIは1.87であった。また、得られた重合体は白色の粉末であり、メタノールはやや青色の溶液であった。
【0060】
(比較例3)
<低分子配位子を用いた制御ラジカル重合>
合成例4で得られた共重合体(CP2)4.18gの代わりに、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチレンジエチレントリアミン(PMDETA)0.61g(3.75mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、MMAの制御ラジカル重合を実施した。1H−NMRより求めた、重合開始5時間後のMMAの重合転化率は42%であり、0℃に冷却したメタノールに沈殿させた重合体のMnは9000、PDIは1.21であった。また、得られた重合体はやや青味を帯びているものであった。
【0061】
実施例1〜5に見られるように、合成例2〜4で得られた重合体(HP1、CP1〜CP2)は遷移金属化合物である第一塩化銅と錯体を形成し、図2及び図3に見られるように、重合転化率の増加と共にMnが増加しており、更には、理論直線に非常に合致している。また、重合転化率の増加に伴い、PDIは減少しており、典型的な遷移金属錯体を用いた制御ラジカル重合の結果を示している。また、錯体は0℃に冷却したメタノールにも溶解することから、制御ラジカル重合後、0℃に冷却したメタノールに投入することで、制御ラジカル重合により得られた重合体から容易に錯体を除去することが可能である。
【0062】
一方、比較例1に見られるように、配位能を有しないPMMAを用いた場合には、重合が開始されず、制御ラジカル重合を行なうことができないものであった。また、ジメチルアミノ基を有する重合性単量体である、DMAEMA単位を重合体中に有するR−CP1を用いた比較例2では、MMAの重合は開始できるものの、MMAと開始剤の比率以上のMnが得られ、PDIも広いものであり、重合を制御できていなかった。また、低分子の配位子であるPMDETAを用いた比較例3では、MMAの重合制御能は良いものの、メタノールで沈殿させた後の重合体はやや青味を帯びており、触媒が完全に除去できていない結果であった。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
少なくとも単量体(a)を重合して得られる重合体(A)は、遷移金属化合物との錯体形成能に優れ、遷移金属錯体を用いた制御ラジカル重合に使用した場合の重合制御能に優れ、また、重合後の除去が容易な制御ラジカル重合用触媒をとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】DMAEMAEMAの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例3〜5の結果であり、重合時間と単量体の消費量[=ln((重合開始時の単量体濃度)/(単量体濃度))]との関係を示す。なお、図中の●は実施例3(重合温度60℃)、□は実施例4(重合温度75℃)、更に、○は実施例5(重合温度90℃)の結果を表す。
【図3】実施例3〜5の結果であり、MMA重合転化率とMn又はPDIとの関係を示す。なお、図中の破線は、理論上のMMA重合転化率とMnの関係を表し、図中の●は実施例3(重合温度60℃)、□は実施例4(重合温度75℃)、更に、○は実施例5(重合温度90℃)の結果を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)で表される単量体(a)を重合して得られる重合体(A)と、遷移金属化合物とから形成される遷移金属錯体からなる制御ラジカル重合用触媒。
【化1】

(一般式(1)において、Rは水素又はメチル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の制御ラジカル重合用触媒を用いる制御ラジカル重合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−43193(P2010−43193A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208455(P2008−208455)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】