説明

制御装置

【課題】キックダウン条件が満たされた場合に、エンジンの出力パワーの増大に要する時間を抑制する技術を提供すること。
【解決手段】車両の制御装置であって、アクセル開度の増大に応じて、エンジンの駆動パワーを増大させるパワー増大制御と、無段変速機の変速比を上げるダウンシフト制御と、の両方の制御を行うための条件を少なくとも含む実行条件が満たされた場合に、クラッチを、スリップ状態または完全解放状態に制御する係合制限処理を実行する。係合状態制御部によって係合制限処理が実行されている状態で、エンジンの回転速度を上昇させる上昇処理を実行する。回転速度制御部が上昇処理を実行することにより、エンジンの回転速度が、目標回転速度まで上昇した場合に、クラッチを、係合制限処理で制御された係合状態よりもトルク容量が大きい係合状態に制御する処理と、ダウンシフトを行う処理とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、エンジンと、モータと、無段変速機とを有する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、モータと、無段変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)と、を有するハイブリッド車両が知られている。
【0003】
無段変速機のダウンシフトの際に、プーリ等の部材の重量の起因するイナーシャトルクが発生する。従って、ダウンシフトの際には、エンジンのトルクの一部がイナーシャトルクに打ち消されて、無段変速機からの出力トルクが低下する可能性がある。このような問題点を考慮し、ハイブリッド車両で、アクセルペダルが踏み込まれてダウンシフトを行う条件(キックダウン(Kickdown)条件とも呼ばれる)が満たされ場合に、イナーシャトルクを打ち消すトルクをモータでアシストする技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術では、必要とされるアシストトルク(イナーシャトルクを打ち消すトルク)が、電気モータ(モータ)で出力可能な現行の最大トルクを越える場合には、必要とされるアシストトルクが、モータ最大トルクと一致するように無段変速機の目標変化率(変速速度)を制限するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−89687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、無段変速機の目標変化率(変速速度)を制限しているので、エンジンの回転速度の上昇が鈍く、エンジンの出力パワーの増大に要する時間(キックダウン条件が満たされた際のアクセル開度に応じたエンジンパワーを引き出すまでにかかる時間)が長くなる可能性がある。
【0007】
本発明は、エンジンと、モータと、無段変速機と、を有するハイブリッド車両において、キックダウン条件が満たされた場合に、エンジンの出力パワーの増大に要する時間を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
エンジンと、入力軸に接続されたモータと、前記エンジンから入力軸への動力伝達を遮断可能なクラッチと、前記エンジンおよび前記モータの少なくとも一方から前記入力軸へ伝達される駆動パワーを出力軸に伝達し、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の比を表す変速比を連続的に変化させる無段変速機と、を有する車両の制御装置であって、
アクセル開度の増大に応じて、前記エンジンの駆動パワーを増大させるパワー増大制御と、前記無段変速機の前記変速比を上げるダウンシフト制御と、の両方の制御を行うための条件を少なくとも含む実行条件が満たされた場合に、前記クラッチを、スリップ状態または完全解放状態に制御する係合制限処理を実行する係合状態制御部と、
前記係合状態制御部によって前記係合制限処理が実行されている状態で、前記エンジンの回転速度を上昇させる上昇処理を実行する回転速度制御部と、
前記回転速度制御部が前記上昇処理を実行することにより、前記エンジンの回転速度が、目標回転速度まで上昇した場合に、前記クラッチを、前記係合制限処理で制御された係合状態よりも前記トルク容量が大きい係合状態に制御する処理と、前記ダウンシフトを行う処理とを実行する実行制御部と、
を備える、制御装置。
【0010】
上記構成によれば、パワー増大制御と、ダウンシフト制御との両方の制御を行うための条件を少なくとも含む実行条件が満たされた場合に、クラッチを、スリップ状態または完全解放状態に制御する係合制限処理を実行し、エンジンの回転速度を上昇させる上昇処理を実行する。そして、エンジンの回転速度が、目標回転速度まで上昇した場合に、クラッチを、係合制限処理で制御された係合状態よりもトルク容量が大きい係合状態に制御する処理と、ダウンシフトを行う処理とを実行する。このようにすれば、実行条件が満たされた場合に、エンジンの回転速度の上昇を素早く実現でき、エンジンの出力パワーの増大に要する時間を抑制することができる。
【0011】
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記実行条件は、前記エンジンを、現行の回転速度における最大出力パワーで運転するための最大出力運転条件を含む、
制御装置。
【0012】
上記構成によれば、実行条件に、エンジンを、現行の回転速度における最大出力パワーで運転するための最大出力運転条件が含まれる。すなわち、運転者による迅速な加速要求がある場合に、エンジンの出力パワーの増大に要する時間を抑制することができる。
【0013】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の制御装置であって、
前記係合状態制御部は、
前記係合制限処理を行う場合に、前記クラッチの前記トルク容量が、前記実行条件が満たされた時の前記エンジンの出力トルクから、前記係合制限処理時の前記モータの出力トルクを引いた値以上となるように、前記クラッチを制御する、
制御装置。
【0014】
上記構成によれば、係合制限処理を行う場合に、クラッチのトルク容量が、実行条件が満たされた時のエンジンの出力トルクから、係合制限処理時のモータの出力トルクを引いた値以上となるように、クラッチを制御する。言い換えれば、係合制限処理を行う場合に、クラッチのトルク容量と、係合制限処理時のモータの出力トルクの和が、実行条件が満たされた時のエンジンの出力トルク以上となるように、クラッチを制御する。このようにすれば、係合制限処理時に無段変速機に伝達されるトルクが、実行条件が満たされた時点で無段変速機に伝達されるトルクより小さくならないので、実行条件が満たされた場合に、無段変速機からの出力トルクの低下を防止することができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記目標回転速度は、前記アクセル開度に応じて決まる前記エンジンの要求パワーを発生可能な回転速度である、
制御装置。
【0016】
上記構成によれば、エンジンの目標回転速度は、アクセル開度に応じて決まるエンジンの要求パワーを発生可能な回転速度であるので、実行制御部が、係合制限処理で制御された係合状態よりもトルク容量が大きい係合状態に制御する処理を行った場合に、エンジンの要求パワーを入力軸(無段変速機)に素早く伝達することができる。
【0017】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記係合状態制御部が前記係合制限処理を実行中に、前記ダウンシフトを進行するダウンシフト実行部を備える、
制御装置。
【0018】
上記構成によれば、係合状態制御部が係合制限処理を実行中に、ダウンシフトを進行することによって、ダウンシフトに要する時間を抑制することができる。
【0019】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記無段変速機は、
前記入力軸に接続されるインプットコーンと、
前記出力軸に接続され、前記インプットコーンの回転軸と平行な軸上に配設されるアウトプットコーンであって、大径側が、前記インプットコーンの小径側に対向し、小径側が前記インプットコーンの大径側に対向するように配設される、アウトプットコーンと、
前記インプットコーンおよび前記アウトプットコーンのどちらか一方を囲むように配設されるリングであって、前記インプットコーンと前記アウトプットコーンとの間に挟持され、前記インプットコーンの配設される軸に沿った軸方向に移動することにより、前記変速比を変更させることが可能なリングと、
を有するコーンリング式無段変速機である、
制御装置。
【0020】
いわゆるベルト式無段変速機は、2つの可変径プーリーとベルトとを有し、ダウンシフトの際に、ベルトが巻き付いた状態の可変径プーリーの径を変更するためには、ベルトを押し広げる大きな力が必要であり、変速に時間がかかる可能性がある。上記構成では、無段変速機が、インプットコーンと、アウトプットコーンと、リングとを有するコーンリング式無段変速機であるので、ダウンシフトの際に、ベルトを押し広げる大きな力を必要とせず、リングの移動により、変速比を変更可能である。従って、上記構成のように、無段変速機が、コーンリング式無段変速機である場合には、ベルト式無段変速機である場合と比べて、変速速度を速くすることができる。その結果、エンジンの回転速度の上昇を素早く実現でき、エンジンの出力パワーの増大に要する時間を抑制することができる。
【0021】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の制御装置であって、
前記実行条件が満たされた場合に、前記モータを駆動して、前記入力軸にモータトルクを付与するモータトルク付与部を備える、
制御装置。
【0022】
上記構成によれば、実行条件が満たされた場合に、モータを駆動して、入力軸にモータトルクを付与するので、実行条件が満たされた場合に、無段変速機からの出力トルクが低下することを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、車両を制御する制御プログラム、当該制御プログラムを記録した記録媒体、車両を制御する制御方法、制御装置を備えた車両、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例としての車両1000の構成を説明するための図である。
【図2】制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図3】制御処理のフローチャートを示す図である。
【図4】制御処理のフローチャートを示す図である。
【図5】制御処理のタイミングチャートを示す図である。
【図6】変形例における制御処理時のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、この発明の実施の形態を実施例に基づいて図1〜図5を参照しながら説明する。
【0026】
A.実施例:
A1.車両の構成:
図1は、本発明の一実施例としての車両1000の構成を説明するための図である。詳しくは、図1(A)は、車両1000の概略構成を示す図である。図1(B)は、後述のCVT40の概略構成を示す図である。図1(A)および(B)では、図の煩雑を避けるために、それぞれ車両1000およびCVT40に関連する構成の一部を図示している。図2は、図1に示す制御ユニット、詳しくは、第1制御ユニット、第2制御ユニット、および、第3制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【0027】
[車両構造の説明]
本実施例の車両1000は、エンジンとモータとを駆動力源として有するハイブリッド車両である。この車両1000は、図1または図2に示すように、エンジン10と、エンジン出力軸15と、クラッチ20と、入力軸25と、回転電機30と、蓄電装置35と、無段変速器(Continuously Variable Transmission:CVTとも呼ぶ)40と、出力軸47と、ディファレンシャル装置50と、出力軸55と、車輪60と、第1制御ユニット200と、第2制御ユニット300と、第3制御ユニット400と、アクセル開度センサ231と、入力軸回転速度センサ233と、エンジン回転速度センサ239と、を備えている。エンジン10、クラッチ20、回転電機30、および、CVT40の全体を、駆動装置100とも呼ぶ。本実施例において、第2制御ユニット300と第3制御ユニットとの全体は、特許請求の範囲における制御装置の例である。
【0028】
本実施例では、エンジン10は、内燃機関(例えば、多気筒ガソリンエンジンや多気筒ディーゼルエンジン)である。エンジン10は、車両1000を駆動するための駆動力を、エンジン出力軸15から出力する。CVT40の入力軸25は、クラッチ20を介して、エンジン出力軸15に接続される。また、入力軸25には、回転電機30が接続されている。回転電機30のロータ(図示せず)は、入力軸25と一体的に回転する。ただし、ロータが、ギヤ等の他の部材を介して入力軸25に連結されてもよい。ディファレンシャル装置50は、CVT40の出力軸47に接続されている。ディファレンシャル装置50の出力軸55には、車輪60が接続されている。なお、エンジン出力軸15には、種々の回転部材(図示省略。例えば、フライホイール)が接続されている。
【0029】
回転電機30は、モータ(電動機)およびジェネレータ(発電機)の双方として機能可能である。回転電機30は、蓄電装置35と電気的に接続されており、蓄電装置35から電力の供給を受けるとモータとして機能する。回転電機30がモータとして機能する場合には、回転電機30は、車両1000を駆動するための駆動力を入力軸25に出力する。蓄電装置35から電力の供給を受けていない状態では、回転電機30は、入力軸25から受ける駆動力を利用してジェネレータとして機能し得る。
【0030】
本実施例では、クラッチ20は、湿式クラッチであり、複数(例えば2つ)のクラッチ板(図示せず)を備えている。クラッチ20は、油圧制御装置(図示せず)から供給される作動油の油圧によって、係合状態または解放状態に制御される。
【0031】
具体的には、クラッチ20は、クラッチトルク容量がゼロの状態から、作動油の油圧(ストローク操作量と呼ぶ)を増やしていくと、複数のクラッチ板が接触する状態(タッチ状態とも呼ぶ)となり、クラッチトルク容量が0より大きくなる。ストローク操作量をタッチ状態よりもさらに増加させていくと、トルク容量が増加し、最終的に、複数のクラッチ板が最大のトルク容量を実現する最大係合状態となる。ストローク操作量がタッチ状態よりも小さい場合には、2つのクラッチ板が非接触の状態であり、すなわち、クラッチ20の状態は、完全な解放状態となる。クラッチ20のクラッチトルク容量が、0より大きく最大係合状態よりも小さい係合状態である場合には、最大係合状態と比べてクラッチトルク容量が小さい。エンジン出力軸15のトルクがクラッチトルク容量よりも大きい場合には、複数のクラッチ板がスリップした状態(スリップ状態とも呼ぶ)となる。クラッチ20は、このスリップ状態では、エンジン出力軸15の回転速度と入力軸25の回転速度との間に差がある状態で、トルクを伝達する。すなわち、スリップ状態では、エンジン出力軸15のトルクの全部ではなく一部が、入力軸25に伝達される。後述の係合状態制御部411は、クラッチトルク容量がエンジン出力軸15のトルクより小さくなるようにクラッチ20を制御することで、クラッチ20をスリップ状態に制御するスリップ制御を、実現する。
【0032】
なお、クラッチ20は、例えば、クラッチ板が3枚以上の湿式クラッチでもよい。また、クラッチ20は、乾式クラッチでもよい。クラッチ20は、一般に、摩擦式クラッチであればよい。
【0033】
CVT40は、コーンリング式の無段変速機であり、図1(B)に示すように、インプットコーン41と、アウトプットコーン42と、リング43と、電気モータ44と、移動部材45と、傾斜カム機構46と、を備える。インプットコーン41は、入力軸25に接続される。
【0034】
アウトプットコーン42は、出力軸47に接続され、インプットコーン41の回転軸と平行な軸上に配設される。アウトプットコーン42は、大径側が、インプットコーン41の小径側に対向し、小径側がインプットコーン41の大径側に対向するように配設される。インプットコーン41またはアウトプットコーン42の回転軸に沿った方向を軸方向とも呼ぶ。リング43は、金属製であり、インプットコーン41を囲むように配設される。
【0035】
傾斜カム機構46は、アウトプットコーン42と出力軸47との間に配設され、アウトプットコーン42に、伝達トルクに応じたスラスト力(軸方向に沿った力)を付与し、その結果、リング43を、インプットコーン41とアウトプットコーン42との間で挟持するための挟圧力を付与する。これにより、リング43は、インプットコーン41とアウトプットコーン42との間に挟持され得る。移動部材45は、リング43を保持しつつ、電気モータ44の駆動力によって、軸方向に移動する。これにより、リング43は、軸方向に移動し、インプットコーン41およびアウトプットコーン42に接触する位置における各コーンの半径(接触半径とも呼ばれる)を変更させることで変速比を変更させる。すなわち、リング43は、インプットコーン41とアウトプットコーン42との間に挟持され、軸方向に移動することにより、変速比を変更させる。ここで、変速比とは、出力軸47の回転速度に対する入力軸25の回転速度の比率のこと示す。
【0036】
なお、本実施例では、リング43は、インプットコーン41を囲むように配設されているが、これに限られず、アウトプットコーン42を囲う構成でもよい。また、傾斜カム機構46は、インプットコーン41と入力軸25との間に配設されてもよい。
【0037】
本実施例の車両1000は、発進時や低速走行時には、クラッチ20が解放状態に制御され、エンジン10が停止状態に制御され、回転電機30によって生じる駆動力によって走行する。この車両1000は、例えば、車両1000の走行速度(以下では車速とも呼ぶ)が一定以上になると、エンジン10が始動されると共にクラッチ20が係合状態に制御されることによって、エンジン10の駆動力によって走行する。この場合、回転電機30の状態は、蓄電装置35の充電状態に応じて、エンジン10の駆動力により発電する状態と、蓄電装置35から電力の供給を受けて駆動力を生じる状態と、発電もせず駆動力も生じない状態と、のいずれかに制御される。また、この車両1000は、減速時には、クラッチ20が解放状態に制御されると共に、必要に応じてエンジン10が停止状態に制御される。この場合、回転電機30は、車輪60から伝達される駆動力によって発電する。回転電機30で発電された電力は、蓄電装置35に蓄えられる。この車両1000は、停止時には、エンジン10および回転電機30が停止状態に制御されると共に、クラッチ20が解放状態に制御される。
【0038】
ディファレンシャル装置50は、CVT40の出力軸47から伝達される駆動力を2つの車輪60にそれぞれ伝達すると共に、2つの車輪60に生じる回転速度差を吸収する。
【0039】
アクセル開度センサ231は、アクセルペダル(図示せず)のアクセル開度を表すアクセル開度信号を第1制御ユニット200に送信する。なお、アクセル開度は、運転者によるトルク要求と言い換えることもできる。入力軸回転速度センサ233は、入力軸25の回転速度を第1制御ユニット200に送信する。エンジン回転速度センサ239は、エンジン出力軸15の回転速度を第1制御ユニット200に送信する。
【0040】
[制御ユニットの説明]
第1制御ユニット200は、各センサからの信号に基づき、車両1000全体(駆動装置100の全体、第1制御ユニット200、および、第2制御ユニット300)の制御を実現する。第2制御ユニット300は、第1制御ユニット200の指示に基づいて、エンジン10の制御を実行する。第3制御ユニット400は、第1制御ユニット200の指示に基づいて、クラッチ20、回転電機30、および、CVT40の制御を実行する。また、第2制御ユニット300と第3制御ユニット400とは、互いに制御可能であり、すなわち、一方の制御ユニットが、他方の制御ユニットの機能部に制御を指示することが可能である。図2は、第1制御ユニット200、第2制御ユニット300、および、第3制御ユニット400が行う制御のうち、後述する制御処理に関する部分を示している。
【0041】
第1制御ユニット200は、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)210と、RAM220と、ROM230と、を有するコンピュータである。ROM230には、CPU210の制御を行うための第1制御プログラム241と、駆動パワー情報243と、エンジン情報245と、回転電機情報247と、変速速度情報249と、エンジン制御情報251と、が格納されている。
【0042】
CPU210は、第1制御プログラム241を実行することにより、図2に図示する各種機能部を実現する。具体的には、CPU210は、キックダウン判定部211と、駆動制御部212としての機能を実現する。キックダウン判定部211および駆動制御部212は、後述の制御処理を実行する。
【0043】
CPU210は、アクセル開度センサ231、入力軸回転速度センサ233、および、エンジン回転速度センサ239の信号値を随時取得し、取得した情報を、アクセル開度情報221、入力軸回転速度情報223、および、エンジン回転速度情報228として、RAM220に記憶する。さらに、CPU210は、入力軸回転速度センサ233に基づいて、随時車速を算出し、算出した情報を、車速情報229としてRAM220に記憶する。
【0044】
第2制御ユニット300は、CPU310と、RAM320と、ROM330と、を有するコンピュータである。ROM330には、CPU310の制御を行うための第2制御プログラム331が格納されている。
【0045】
CPU310は、第2制御プログラム331を実行することにより、エンジン駆動部311としての機能を実現する。エンジン駆動部311は、回転速度制御部311aを有する。エンジン駆動部311は、後述の制御処理を実行する。CPU310は、随時、第1制御ユニット200のRAM220に記憶された各情報(例えば、アクセル開度情報221、入力軸回転速度情報223、エンジン回転速度情報228、および、車速情報229)を参照可能である。
【0046】
第3制御ユニット400は、CPU410と、RAM420と、ROM430と、を有するコンピュータである。ROM430には、CPU410の制御を行うための第3制御プログラム431が格納されている。
【0047】
CPU410は、第3制御プログラム431を実行することにより、係合状態制御部411と、実行制御部413と、変速制御部415と、回転電機駆動部417と、ダウンシフト実行部419としての機能を実現する。回転電機駆動部417は、モータトルク付与部417aを有する。CPU410の各機能部は、後述の制御処理を実行する。CPU410は、随時、第1制御ユニット200のRAM220に記憶された各情報(例えば、アクセル開度情報221、入力軸回転速度情報223、エンジン回転速度情報228、および、車速情報229)を参照可能である。
【0048】
A2.駆動装置の制御処理:
図3および図4は、駆動装置100の制御処理のフローチャートを示す図である。この制御処理は、第1制御ユニット200、第2制御ユニット300、および、第3制御ユニット400によって、クラッチ20がエンジン10とCVT40とを連結し、回転電機30を利用せずにエンジン10の駆動力によって車両1000が走行している状態で、実行される処理である。
【0049】
最初のステップS200(図3)では、駆動制御部212は、駆動パワー情報243を参照することによって、アクセル開度情報221に基づくアクセル開度と車速情報229に基づく車速とから、運転者の要求する駆動パワー(「要求駆動パワー」と呼ぶ。単位は、例えば、kW(キロワット))を算出する。駆動パワー情報243は、アクセル開度と車速と要求駆動パワーとの間の対応関係を定めている(例えば、駆動パワー情報243は、対応関係を定めるマップである)。本実施例では、要求駆動パワーが、アクセル開度が大きいほど大きく、かつ、車速が大きいほど大きくなるように、駆動パワー情報243が設定されている。なお、要求駆動パワーの算出方法は、他の方法であってもよい。例えば、アクセル開度と要求トルクとの対応関係を予め定める情報を参照することによって、アクセル開度から要求トルクを特定し、特定された要求トルクと車速とから、要求駆動パワーを算出してもよい。
【0050】
次のステップS205では、駆動制御部212は、要求駆動パワーから、エンジン10に要求されるパワー(「要求エンジンパワー」と呼ぶ。単位は例えばkW)を算出する。回転電機30を利用せずにエンジン10が要求駆動パワーを出力するための条件(「エンジン走行条件」と呼ぶ)が満たされる場合には、駆動制御部212は、要求エンジンパワーを、要求駆動パワーと同じ値に設定する。エンジン走行条件は、周知の種々の条件であってよい。エンジン走行条件は、例えば、車速が所定の閾値以上であり、かつ、アクセル開度ACCが所定の閾値以上であること、であってよい。エンジン走行条件が満たされない場合には、駆動制御部212は、要求駆動パワーの一部または全部を、回転電機30に割り当てる(「要求モータパワー」と呼ぶ)。
【0051】
なお、エンジン10や回転電機30等の回転駆動する動力源がパワーを出力する場合には、そのパワーはトルクと回転速度との積によって表される。従って、パワーについての説明は、そのパワーを回転速度で割ることによって得られるトルク(そのパワーに対応するトルク)を用いることによって、トルクについての説明に置換することができる。
【0052】
次のステップS210では、駆動制御部212は、エンジン情報245を参照することによって、要求エンジンパワーからエンジン10の目標回転速度(「目標エンジン回転速度」と呼ぶ)を算出する。エンジン情報245は、エンジン回転速度とエンジン10の出力可能なパワーとの対応関係を定めている。一般には、エンジンの出力パワーは、回転速度が速いほど大きい。駆動制御部212は、エンジン情報245を参照することによって、目標エンジン回転速度を、要求エンジンパワーを出力するために要するエンジン回転速度に、設定する。
【0053】
次のステップ215では、キックダウン判定部211は、キックダウン条件が満たされたか否かを判断する。このキックダウン条件は、アクセル開度ACCが増加した場合に、エンジン10の出力パワーを増大させる制御(例えば、燃料噴射量を増大させる制御)と、CVT40のダウンシフト制御と、の両方を行うための条件である。ここで、CVT40のダウンシフト制御とは、変速比を増大する制御である。CVT40のダウンシフトによって、車速が変化しなくても、エンジン回転速度は上昇する。この結果、エンジン10の出力パワーを迅速に増大することができる。このような制御を行うためのキックダウン条件としては、ユーザが出力パワーの速やかな増大を要求する操作(例えば、アクセルペダルの素速い踏み込み)を行った場合に満たされる種々の条件を採用可能である。例えば、単位時間当たりのアクセル開度ACCの増大量が所定の閾値以上であることを、キックダウン条件として採用してもよい。
【0054】
[キックダウン条件が満たされる場合の処理]
キックダウン条件が満たされる場合には(ステップS215:Yes)、駆動制御部212は、回転電機情報247に基づいて、現行のモータ最大パワーを算出する。そして、駆動制御部212は、現行のモータ最大パワーが要求駆動パワーより大きいか否かを判定する(ステップS220)。回転電機情報247は、回転電機30の回転速度とモータ出力パワーとの対応関係を定めている。以下に、モータ最大パワーが要求駆動パワーより大きい場合(第1の場合とも呼ぶ)と、モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合(第2の場合とも呼ぶ)とを説明する。
【0055】
[第1の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワーより大きい場合)の処理]
モータ最大パワーが要求駆動パワーより大きい場合には(ステップS220:Yes)、変速処理が開始される。具体的には、駆動制御部212は、打消トルクを算出する(ステップS300)。打消トルクは、CVT40のダウンシフト制御におけるイナーシャトルクを打ち消すためのトルクである。イナーシャトルクは、CVT40のダウンシフト制御に要するトルクである。例えば、走行中にダウンシフト制御を行う場合には、CVT40の回転部材の回転速度が変化する。この回転部材の重量に起因して、回転部材の回転速度の変化(すなわち、変速比の変化)は、トルクを要する。例えば、ダウンシフト制御によって、入力軸25に連結された回転部材(例えば、インプットコーン41)の回転速度が上昇する。この回転部材の回転速度を上昇させるために要するトルクが、イナーシャトルクの例である。イナーシャトルクは、変速比の変化の速度(すなわち、変速速度)が速いほど、大きい傾向にある。すなわち、ダウンシフトの開始から完了までの時間が短いほど、CVT40に入力されたトルクのうちの、イナーシャトルクによって打ち消されるトルクが大きくなる。
【0056】
次のステップS310では、駆動制御部212は、変速速度情報249を参照することによって、打消トルクから、エンジン10の回転速度の変化速度、すなわち、CVT40の変速比の変化速度を算出する。打消トルクが大きいほど、変速比の変化速度が速い。変速速度情報249は、打消トルクと変速比の変化速度との対応関係を、定めている。
【0057】
次のステップS320では、変速制御部415は、ステップS310で算出された変速速度に従って、CVT40のダウンシフト制御を行う。具体的には、変速制御部415は、目標エンジン回転速度と車速とから、目標変速比を算出する。そして、変速制御部415は、変速比が目標変速比となるまで、変速速度に従って、変速比を変更する。車速が変化した場合には、変速制御部415は、最新の車速に応じて目標変速比を修正してもよい。
【0058】
また、ステップS320では、エンジン駆動部311は、エンジン制御情報251を参照することによって、現行のエンジン回転速度での最大パワー(最大トルク)を出力するように、エンジン10を制御する。エンジン10の制御方法としては、周知の種々の方法を採用可能である。例えば、エンジン駆動部311は、燃料噴射量と、点火タイミングと、図示しない給気バルブと排気バルブとの開閉タイミングと、を制御することによって、エンジン10の出力パワーを制御する。エンジン制御情報251は、エンジン回転速度と、エンジン10の出力パワーと、制御量(例えば、燃料噴射量と種々のタイミング)との対応関係を、予め定めている。エンジン回転速度が変化した場合には、エンジン駆動部311は、最新のエンジン回転速度での最大トルクを出力するように、エンジン10を制御することが好ましい。エンジン駆動部311は、要求エンジンパワーが得られるまで、このような制御を継続する。なお、要求エンジンパワーが得られるタイミングは、ダウンシフト制御が完了するタイミングよりも、後であり得る。
【0059】
さらに、ステップS320では、回転電機駆動部417は、モータ最大パワーとなるように、すなわち、現行の回転速度における最大トルクを出力するように、回転電機30を制御する。回転速度が変化した場合には、回転電機駆動部417は、最新の回転速度での最大トルクを出力するように、回転電機30を制御することが好ましい。回転電機駆動部417は、ダウンシフト制御が完了するまで、このような制御を継続する。このような回転電機駆動部417の制御により、回転電機30から出力されるトルクの一部が、打ち消しトルクとして用いられる。回転電機30から出力されるトルクから打ち消しトルクを差し引いた残りのトルクは、CVT40から出力される出力トルクに加算され、車両1000の加速に用いられる。
【0060】
上述のステップS320の処理で、変速制御部415と、エンジン駆動部311と、回転電機駆動部417とが行う制御は、並列に進行する。これにより、エンジン10の出力パワーの増大とダウンシフト制御とが進行する。
【0061】
次のステップS330では、駆動制御部212は、エンジン10の回転速度が、ステップS210で算出した目標エンジン回転速度になったか否かを判定する。駆動制御部212は、エンジン10の回転速度が、ステップS210で算出した目標エンジン回転速度になっていない場合(ステップS330:No)には、再度、ステップS320の処理を各機能部(変速制御部415、エンジン駆動部311、および、回転電機駆動部417)に実行させる。駆動制御部212は、エンジン10の回転速度が、ステップS210で算出した目標エンジン回転速度になった場合(ステップS330:Yes)には、変速処理を終了する(ステップS340)。そして、この制御処理は、終了する。
【0062】
[第2の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合)の処理]
モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合には(ステップS220:No)、変速処理を開始せず、以下の処理を行う。すなわち、回転電機駆動部417のモータトルク付与部417aは、モータ最大パワーとなるように、すなわち、現行の回転速度における最大トルクを出力するように、回転電機30を制御する。回転速度が変化した場合には、モータトルク付与部417aは、最新の回転速度での最大トルクを出力するように、回転電機30を制御することが好ましい。モータトルク付与部417aは、後述のダウンシフト制御が完了するまで、このような制御を継続する。
【0063】
次のステップS230では、係合状態制御部411は、クラッチ20のクラッチトルク容量を小さくすることによってクラッチ20をスリップ状態に制御するスリップ制御を行う。この場合、係合状態制御部411は、クラッチトルク容量が、キックダウン条件が満たされた時のエンジン10の出力トルクから、スリップ制御時の回転電機30(モータ)の出力トルクを引いた値以上となるように、クラッチ20を制御する。言い換えれば、係合状態制御部411は、クラッチのトルク容量と、スリップ制御時の回転電機30(モータ)の出力トルクの和が、キックダウン条件が満たされた時のエンジン10の出力トルク以上となるように、クラッチ20を制御する。係合状態制御部411は、後述のステップS245の処理で、クラッチ20の係合を開始するまで、このスリップ制御を継続させる。
【0064】
次のステップS235では、エンジン駆動部311の回転速度制御部311aは、ステップS210の処理で算出した目標エンジン回転速度になるようにエンジン10からの出力トルクであるエンジントルクを制御する。具体的には、回転速度制御部311aは、目標エンジン回転速度に到達するまで、現行のエンジン回転速度に基づく最大パワーを出力するように、エンジントルクを制御する。これにより、回転速度制御部311aは、エンジン10の回転速度を上昇させることができる。
【0065】
ステップS240では、駆動制御部212は、エンジン回転速度が、目標エンジン回転速度となったか否かを判定する。駆動制御部212は、エンジン回転速度が、目標エンジン回転速度となっていないと判定した場合(ステップS240:No)には、エンジン駆動部311にステップS235の制御を継続させる。
【0066】
エンジン回転速度が、目標エンジン回転速度となった場合(ステップS240:Yes)には、実行制御部413は、クラッチ係合処理を開始する(図4:ステップS245)。具体的には、実行制御部413は、ステップS230の処理によるスリップ状態から、クラッチトルク容量を増加させる制御を行う。
【0067】
この制御処理では、ステップS245のクラッチ係合処理の開始と並列して、変速処理が開始される。具体的には、変速制御部415は、変速比を高くなるように制御する(すなわち、ダウンシフト制御する)(ステップS250)。この場合、上述したステップS225で回転電機30から出力されるトルク、および、ステップS235で、エンジン10から出力されて、クラッチ20を介して入力軸25に伝達されるトルクを合算した合算トルクの一部が、変速制御時に生じるイナーシャトルクの打ち消しトルクに用いられる。合算トルクから打ち消しトルクを差し引いた残りのトルクは、車両1000の加速に用いられる。
【0068】
次のステップS255では、変速制御部415は、エンジン回転速度と入力軸回転速度とが十分近づいたか否かを判定する。変速制御部415は、エンジン回転速度が、入力軸回転速度と所定の閾値との和以下となった場合に、エンジン回転速度と入力軸回転速度とが十分近づいたと判定し、エンジン回転速度が、入力軸回転速度と所定の閾値との和より大きい場合に、エンジン回転速度と入力軸回転速度とが十分近づいていないと判定する。
【0069】
変速制御部415は、エンジン回転速度と入力軸回転速度とが十分近づいていないと判定した場合(ステップS255:No)には、ステップS250に戻る。
【0070】
変速制御部415は、エンジン回転速度と入力軸回転速度とが十分近づいたと判定した場合(ステップS255:Yes)には、ダウンシフト制御を終了し、すなわち、変速処理を終了する(ステップS260)。また、係合状態制御部411は、クラッチ20が完全係合したことに応じて、クラッチ係合処理を終了する(ステップS265)。さらに、回転電機駆動部417は、回転電機30の駆動を停止し、回転電機30の出力トルクをゼロにする。そして、この制御処理は、終了する。
【0071】
[キックダウン条件が満たされない場合の処理]
キックダウン条件が満たされない場合の駆動装置100の制御としては、周知の制御を採用可能であり、例えば、以下のような制御を行う。キックダウン条件が満たされない場合には(ステップS215:No)、次のステップS400(図4)で、駆動制御部212は、時定数を利用して、エンジン回転速度の変化速度(すなわち、CVT40の変速比の変化速度)を算出する。時定数は、エンジン回転速度が、現行のエンジン回転速度から目標エンジン回転速度まで変化するのに要する時間である。換言すれば、この時定数は、CVT40の変速比が、現行の変速比から目標変速比まで変化するのに要する時間である。駆動制御部212は、時定数として、予め決められた値を利用する。この代わりに、駆動制御部212は、車両1000の動作状態(例えば、アクセル開度、エンジン回転速度、車速、要求駆動パワー、要求エンジンパワー等々)に応じて、時定数を決定してもよい。この場合、動作状態と時定数との対応関係は、予め決定される。
【0072】
次のステップS410では、変速制御部415は、ステップ400で決定された変速速度に従って、CVT40を制御する。変速制御部415は、目標エンジン回転速度と車速とから、目標変速比を算出する。そして、変速制御部415は、変速比が目標変速比となるまで、変速速度に従って、変速比を変更する(ダウンシフト、または、アップシフト)。
【0073】
ステップS420では、エンジン駆動部311は、エンジン制御情報251を参照することによって、要求エンジンパワーを出力するようにエンジン10を制御する。
【0074】
ステップS430では、回転電機駆動部417は、要求モータパワーを出力するように、回転電機30を制御する。ユーザが、図示しないブレーキペダルを踏んだ場合には、回転電機駆動部417は、回転電機30を発電機として動作させることによって、回生ブレーキを実現してもよい。そして、この制御処理は、終了する。なお、ステップS410〜S430は、並行に進行する。
【0075】
A3.制御処理のタイミングチャートの説明:
上述した制御処理の説明に続いて、制御処理のタイミングチャートについて説明する。図5は、制御処理のタイミングチャートを示す図である。詳しくは、図5は、制御処理の第2の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合)の処理における、アクセル開度、各トルク、変速比、各回転速度、各出力パワー、ホイールトルク、および、クラッチトルク容量の変化についてのタイミングチャートを示す図である。具体的には、図5(A)は、アクセル開度ACCのタイミングチャートを示す。図5(B)は、各トルク(要求トルクRT、エンジントルクET、および、回転電機トルクMT)のタイミングチャートを示す。図5(C)は、変速比GRのタイミングチャートを示す。図5(D)は、各回転速度(エンジン回転速度ES、および、入力軸回転速度IS)のタイミングチャートを示す。図5(E)は、出力パワー(エンジン出力パワーEP、CVT40から出力軸47に出力される出力軸パワーOP)のタイミングチャートを示す。図5(F)は、車輪60に伝達されるトルク(ホイールトルクとも呼ぶ)HTと、エンジン10からクラッチ20を介して入力軸25に伝達されるトルク(エンジン伝達トルクとも呼ぶ)DTとのタイミングチャートを示す。図5(G)は、クラッチ20のクラッチトルク容量CTのタイミングチャートを示す。
【0076】
図5のタイミングチャートでは、キックダウン条件(図3:ステップS215)が満たされたタイミング(キックダウン時間とも呼ぶ)がT1で示され、クラッチ係合処理の開始(図4:ステップS245)タイミング(係合開始時間とも呼ぶ)がT2で示され、クラッチ係合処理の終了(図4:ステップS260)タイミング(係合終了時間)がT3で示されている。なお、係合開始時間T2は、変速処理の開始時間とほぼ一致し、係合終了時間T3は、変速処理の終了時間とほぼ一致する。
【0077】
アクセルが踏み込まれることによって、キックダウン条件は、満たされる。従って、図5(A)では、アクセル開度ACCが上昇しているタイミングと、キックダウン時間T1とは、ほぼ同じとなっている。図5(A)では、アクセル開度ACCが、上昇した後、ほぼ一定となっている。これは、キックダウン条件が満たされた後、運転者によるアクセルの踏み込み量がほぼ一定であることを示している。
【0078】
図5(B)に示すように、回転電機トルクMTは、キックダウン時間T1になると、最大トルクで駆動するステップS225の処理(図3)によって、急上昇している。その後、回転電機トルクMTは、回転速度の上昇に伴い減少に転じ、係合終了時間T3となるまで、減少している。回転電機トルクMTは、係合終了時間T3となると、回転電機30の駆動停止に伴い、ゼロとなっている。また、エンジントルクETは、キックダウン時間T1になると、目標エンジン回転速度になるようにエンジントルクの制御を行うステップS235の処理(図3)によって、回転速度の上昇に応じて増加し、係合開始時間T2手前で、要求トルクRTとほぼ同じとなっている。その後、エンジントルクETは、要求トルクRTとほぼ同じ値で推移している。
【0079】
図5(C)に示すように、キックダウン時間T1となっても、ダウンシフト制御が行われないので、変速比GRは、係合開始時間T2までは、キックダウン時間T1での変速比と同じ変速比となっている。変速比GRは、係合開始時間T2になると、変速処理開始に伴い、変速比を高くなるように制御するステップS250の処理(図4)によって、係合終了時間T3まで徐々に増加する。変速比GRは、変速処理が終了する係合終了時間T3以降、一定となっている。
【0080】
図5(D)に示すように、エンジン回転速度ESは、キックダウン時間T1となると、目標エンジン回転速度になるようにエンジントルクの制御を行うステップS235の処理(図3)によって、増加を開始している。エンジン回転速度ESは、係合開始時間T2となると、クラッチトルク容量CTの増加を行うステップS245の処理によって、エンジン10から入力軸25へ伝達されるトルクが増加し、一時的に減少する。エンジン回転速度ESは、係合終了時間T3になると、後述のようにクラッチトルク容量CTが最大となることで、入力軸回転速度ISとほぼ同じとなり、その後、入力軸回転速度ISと同じ回転速度で推移している。入力軸回転速度ISは、係合開始時間T2まで変速比GRが変更されないので、係合開始時間T2まではおおよそ一定となっている。入力軸回転速度ISは、係合開始時間T2となると、変速比GRが高くなることにより、増加している。入力軸回転速度ISは、係合終了時間T3となると、エンジン回転速度ESと同じ回転速度で推移している。
【0081】
図5(E)に示すように、エンジン出力パワーEPは、キックダウン時間T1となると、目標エンジン回転速度になるようにエンジントルクの制御を行うステップS235の処理(図3)によって、増加を開始する。エンジン出力パワーEPは、係合終了時間T3となると、変速処理の終了に伴って、係合終了時間T3以降は、おおよそ一定となっている。出力軸パワーOPは、キックダウン時間T1から係合開始時間T2まで間、後述のように、クラッチトルク容量CTが変化しないので、回転電機30(モータ)の出力パワーと、クラッチ20を介して伝達されるエンジン10の出力パワーとの合算パワーとなり、大きく変化せずに推移している。係合開始時間T2から係合終了時間T3までの間、上述したように、CVT40で打ち消しトルクが消費されるが、一方で、クラッチトルク容量CTの増加に伴い、エンジン10から出力軸47に伝達されるパワーも増加する。従って、出力軸パワーOPは、係合開始時間T2から係合終了時間T3までの間、増加する。係合終了時間T3となると、回転電機30の駆動が停止し、クラッチ20が完全係合するので、出力軸パワーOPは、エンジン出力パワーEPとほぼ同じに推移している。
【0082】
図5(F)に示すように、ホイールトルクHTは、キックダウン時間T1になると、ステップS225、および、ステップS230の処理(図3)によって、急激に増加する。キックダウン時間T1から係合開始時間T2までの間、ホイールトルクHTは、大きく変化せずに推移する。係合開始時間T2から係合終了時間T3までの間、ホイールトルクHTは、クラッチトルク容量CTの増加に伴い、伝達されるエンジントルクETが、増加することによって、増加する。係合終了時間T3になると、要求トルクRTまで上昇したエンジントルクETが、ほぼすべてCVT40に伝達されて、ホイールトルクHTとなる。従って、ホイールトルクHTは、係合終了時間T3の時には、キックダウン時間T1の時と比較して、急増している。なお、図5(F)では、ホイールトルクHTと、時間軸で囲まれた領域(図では斜線ハッチングで示される)は、エンジン10によって出力されるトルクを示し、ホイールトルクHTと、エンジン伝達トルクDTとで囲まれた領域(図ではクロスハッチングで示される)は、回転電機30によって出力されるトルクを示している。
【0083】
図5(G)に示すように、クラッチトルク容量CTは、キックダウン時間T1となると、スリップ制御を行うステップS230の処理(図3)によって、減少する。クラッチトルク容量CTは、キックダウン時間T1から係合開始時間T2の間、スリップ制御が継続されるので、ほぼ一定である。クラッチトルク容量CTは、係合開始時間T2となると、クラッチ係合処理が開始され(ステップS245)、係合終了時間T3となると、クラッチ係合処理が終了する(ステップS265)ので、係合開始時間T2から係合終了時間T3の間、増加する。
【0084】
ところで、本実施例と比較するための比較例のタイミングチャートを図5に示している。この比較例は、キックダウン条件が満たされた場合であって、必要とされる打ち消すトルクが、回転電機(モータ)で出力可能な現行の最大トルクを越える場合には、必要とされる打ち消しトルクが、回転電機(モータ)で出力可能な最大トルクと一致するように無段変速機の目標変化率(変速速度)を制限する例である。図5(B)には、比較例のエンジントルクETXと比較例の回転電機トルクMTXとが示され、図5(C)には、比較例の変速比GRXが示され、図5(D)には、比較例の入力軸回転速度ISXが示され、図5(E)には、比較例の出力軸パワーOPXが示され、図5(F)には、比較例のホイールトルクHTX、および、エンジン伝達トルクDTXが示され、図5(G)には、比較例のクラッチトルク容量CTXが示されている。図5(F)では、エンジン伝達トルクDTX、および、ホイールトルクHTXの他、仮想ホイールトルクHTXaが示されている。この仮想ホイールトルクHTXaは、イナーシャトルクが生じなかったとした場合、すなわち、打ち消しトルクが必要なかった場合の仮想的なホイールトルクである。
【0085】
この比較例では、図5(C)に示すように、無段変速機の変速速度を制限し、キックダウン時間T1から、緩やかに変速を行うので、図5(F)に示すように、ホイールトルクHTが大きくなるまでに、長い時間がかかる可能性がある。
【0086】
一方、本実施例では、制御処理(図3、図4)において、キックダウン条件が満たされた場合に、クラッチ20をスリップ状態とするスリップ制御を実行し、目標エンジン回転速度となるように回転速度を上昇させる制御を実行する。そして、エンジン回転速度ESが、要求エンジンパワーに基づいて決定される目標エンジン回転速度まで上昇した場合に、クラッチ20を、スリップ状態からクラッチトルク容量CTを増加させる制御と、変速比を高くなるようにするダウンシフト制御とを実行する。このようにすれば、キックダウン条件が満たされた場合に、エンジン回転速度ESの上昇を素早く実現でき、エンジン10の出力トルク(出力パワー)の増大に要する時間を抑制することができる。その結果、キックダウン条件が満たされた場合に、車両1000の加速不足が生じることを抑制することができる。図5(F)では、キックダウン時間T1後、本実施例が、比較例よりも早くエンジン10の出力トルク(ホイールトルク)が上昇していることが分かる。
【0087】
本実施例では、制御処理において、クラッチ20をスリップ状態に制御するスリップ制御を行う場合に、クラッチトルク容量CTが、キックダウン条件が満たされた時のエンジントルクETから、スリップ制御時の回転電機トルクMTを引いた値以上となるように、クラッチ20を制御する。言い換えれば、クラッチ20をスリップ状態に制御するスリップ制御を行う場合に、クラッチトルク容量CTと、スリップ制御時の回転電機トルクMTの和が、キックダウン条件が満たされた時のエンジントルクET以上となるように、クラッチ20を制御する。このようにすれば、スリップ制御時にCVT40に伝達されるトルクが、キックダウン条件が満たされた時にCVT40に伝達されるトルクより小さくならないので、キックダウン条件が満たされた場合に、CVT40からの出力トルクの低下を防止することができる。
【0088】
本実施例では、エンジン10の目標回転速度は、アクセル開度に応じて決まる要求エンジンパワーを発生可能な回転速度であるので、クラッチ係合処理でクラッチ20を最大係合状態に制御した場合に、要求エンジンパワーを入力軸25(CVT40)に素早く伝達することができる。
【0089】
ベルト式無段変速機は、2つの可変径プーリーとベルトとを有し、ダウンシフトの際に、ベルトが巻き付いた状態の可変径プーリーの径を変更する場合には、ベルトを押し広げる大きな力が必要であり、変速に時間がかかる可能性がある。一方、本実施例では、CVT40が、インプットコーン41と、アウトプットコーン42と、リング43とを有するコーンリング式無段変速機であり、ダウンシフトの際に、ベルトを押し広げる大きな力を必要とせず、リング43の移動により、変速比を変更可能である。従って、本実施例のコーンリング式無段変速機であるCVT40は、CVT40がベルト式無段変速機である場合と比べて、変速速度を早くすることができる。その結果、エンジン回転速度ESの上昇を素早く実現でき、エンジン出力パワーEPの増大に要する時間を短縮することができる。
【0090】
本実施例では、制御処理において、キックダウン条件が満たされた場合に、回転電機30を駆動して、入力軸25に回転電機トルクMTを付与するので、キックダウン条件が満たされた場合に、CVT40からの出力トルクが低下することを抑制することができる。
【0091】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0092】
(1)上記実施例において、キックダウン条件に、エンジン10を、現行の回転速度における最大出力パワーで運転するための最大出力運転条件を含むようにしてもよい。このようにすれば、運転者による迅速な加速要求がある場合に、エンジン出力パワーEPの増大に要する時間を短縮することができる。その結果、運転者のドライバビリティ(driveability)を向上させることができる。
【0093】
(2)図6は、変形例における制御処理時のタイミングチャートを示す図である。上記実施例では、制御処理(図3)において、第2の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合)には、すぐに、ダウンシフト制御を実行せず、エンジン10の回転速度が、目標エンジン回転速度になった後に、ダウンシフト制御を実行するようにしているが、これに限られない。例えば、第3制御ユニット400のダウンシフト実行部419は、図6に示すように、係合状態制御部411がクラッチ20のスリップ制御を実行中(キックダウン時間T1から係合開始時間T2の間)に、ダウンシフト制御を進行するようにしてもよい。このようにすれば、ダウンシフトに要する時間を抑制することができる。
【0094】
(3)上記実施例では、制御処理(図3)のキックダウン条件が満たされた場合であって、第2の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合)において、エンジン駆動部311は、ステップS235の処理で、ステップS210で算出された目標エンジン回転速度になるように、エンジン10を制御しているが、これに限られない。例えば、エンジン駆動部311は、ステップS210で算出された目標エンジン回転速度より小さい回転速度を、ステップS235の処理での目標エンジン回転速度(変速目標エンジン回転速度とも呼ぶ)に設定し、設定した変速目標エンジン回転速度になるように、エンジン10を制御するようにしてもよい。このようにすれば、エンジン回転速度ESが変速目標エンジン回転速度に素早く到達し、係合開始時間T2を早くすることができる。その結果、クラッチ係合処理、および、変速処理を早く終わらせることができるので、キックダウン条件が満たされてからホイールトルクHTが所定値まで上昇する期間を短縮することができる。
【0095】
(4)上記実施例では、制御処理(図3)において、キックダウン条件が満たされた場合であって、第2の場合(モータ最大パワーが要求駆動パワー以下の場合)に、モータトルク付与部417aは、回転電機30を駆動して、現行の回転速度における最大トルクを入力軸25に出力しているが、これに限られない。例えば、モータトルク付与部417aは、回転電機30を駆動して、現行の回転速度における最大トルクよりも小さなトルクを、入力軸25に付与するようにしてもよいし、回転電機30を駆動せず、入力軸25に付与するトルクをゼロにしてもよい。
【0096】
(5)上記実施例では、制御処理(図3、図4)は、回転電機30を利用せずにエンジン10の駆動力によって車両1000が走行している状態で実行される処理としているが、これに限られない。例えば、回転電機30が所定トルク以下で駆動している場合に、第1制御ユニット200、第2制御ユニット300、および、第3制御ユニット400は、上記制御処理を実行するようにしてもよい。
【0097】
(6)上記実施例では、CVT40は、コーンリング式無段変速機であるが、これに限られない。例えば、CVT40は、ベルト式の無段変速機であってもよい。
【0098】
(7)上記実施例において、制御ユニットの構成としては、図2に示す構成に限らず、種々の構成を採用可能である。1つの制御ユニットの機能部が、他の制御ユニットに組み込まれていてもよい。例えば、変速制御部415が、第3制御ユニット400とは異なる他の制御ユニット(例えば、第2制御ユニット300)に組み込まれていてもよい。また、1つの制御ユニットが、図2のうちの2つの制御ユニットの機能を実現するようにしてもよい。例えば、1つの制御ユニットが、第2制御ユニット300および第3制御ユニット400の機能を実現するようにしてもよい。さらに、1つの制御ユニットが、図2のうちの3つの制御ユニットの全ての機能を実現するようにしてもよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の制御ユニットが、駆動装置100の制御に要する機能を一部ずつ分担して、全体として、駆動装置100の制御の機能を提供してもよい。
【0099】
(8)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図2の変速制御部415の機能を、専用の論理回路を有するハードウェア回路によって実現してもよい。
【0100】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含んでいる。
【0101】
(9)上記実施例では、回転電機30は、モータ・ジェネレータとして機能するが、これに限られない。例えば、回転電機30は、ジェネレータ機能は備えずに、モータ機能のみを備えていてもよい。
【0102】
(10)上記実施例では、制御処理(図3)のステップS230において、係合状態制御部411は、スリップ制御を行う場合、クラッチトルク容量が、キックダウン条件が満たされた時のエンジン10の出力トルクから、スリップ制御時の回転電機30(モータ)の出力トルクを引いた値以上となるように、クラッチ20を制御しているが、これに限られない。例えば、係合状態制御部411は、スリップ制御を行う場合、クラッチトルク容量が、キックダウン条件が満たされた時のエンジン10の出力トルクから、スリップ制御時の回転電機30(モータ)の出力トルクを引いた値よりも小さくなるように、クラッチ20を制御するようにしてもよい。また、係合状態制御部411は、スリップ制御を行わず、クラッチ20を完全な解放状態(完全解放状態)に制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、駆動装置の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10...エンジン、20...クラッチ、30...回転電機、40...CVT、50...ディファレンシャル装置、200...第1制御ユニット、300...第2制御ユニット、400...第3制御ユニット、1000...車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、入力軸に接続されたモータと、前記エンジンから入力軸への動力伝達を遮断可能なクラッチと、前記エンジンおよび前記モータの少なくとも一方から前記入力軸へ伝達される駆動パワーを出力軸に伝達し、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の比を表す変速比を連続的に変化させる無段変速機と、を有する車両の制御装置であって、
アクセル開度の増大に応じて、前記エンジンの駆動パワーを増大させるパワー増大制御と、前記無段変速機の前記変速比を上げるダウンシフト制御と、の両方の制御を行うための条件を少なくとも含む実行条件が満たされた場合に、前記クラッチを、スリップ状態または完全解放状態に制御する係合制限処理を実行する係合状態制御部と、
前記係合状態制御部によって前記係合制限処理が実行されている状態で、前記エンジンの回転速度を上昇させる上昇処理を実行する回転速度制御部と、
前記回転速度制御部が前記上昇処理を実行することにより、前記エンジンの回転速度が、目標回転速度まで上昇した場合に、前記クラッチを、前記係合制限処理で制御された係合状態よりも前記トルク容量が大きい係合状態に制御する処理と、前記ダウンシフトを行う処理とを実行する実行制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記実行条件は、前記エンジンを、現行の回転速度における最大出力パワーで運転するための最大出力運転条件を含む、
制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御装置であって、
前記係合状態制御部は、
前記係合制限処理を行う場合に、前記クラッチの前記トルク容量が、前記実行条件が満たされた時の前記エンジンの出力トルクから、前記係合制限処理時の前記モータの出力トルクを引いた値以上となるように、前記クラッチを制御する、
制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記目標回転速度は、前記アクセル開度に応じて決まる前記エンジンの要求パワーを発生可能な回転速度である、
制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記係合状態制御部が前記係合制限処理を実行中に、前記ダウンシフトを進行するダウンシフト実行部を備える、
制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記無段変速機は、
前記入力軸に接続されるインプットコーンと、
前記出力軸に接続され、前記インプットコーンの回転軸と平行な軸上に配設されるアウトプットコーンであって、大径側が、前記インプットコーンの小径側に対向し、小径側が前記インプットコーンの大径側に対向するように配設される、アウトプットコーンと、
前記インプットコーンおよび前記アウトプットコーンのどちらか一方を囲むように配設されるリングであって、前記インプットコーンと前記アウトプットコーンとの間に挟持され、前記インプットコーンの配設される軸に沿った軸方向に移動することにより、前記変速比を変更させることが可能なリングと、
を有するコーンリング式無段変速機である、
制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の制御装置であって、
前記実行条件が満たされた場合に、前記モータを駆動して、前記入力軸にモータトルクを付与するモータトルク付与部を備える、
制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91383(P2013−91383A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233964(P2011−233964)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】