制振自立塀
【課題】大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することが可能な制振自立塀を提供すること。
【解決手段】間隔を置いて立設された複数の支柱2を介してパネル3を固定してなる自立塀1である。支柱2は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端である。支柱2の内部、あるいは支柱2とパネル3とが対面する部分の少なくとも一部に、施工基準面の振動に伴ってパネル3が振動することを抑制するための粘弾性体4を配設した。支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面同士の間の少なくとも一部に粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有してなり、パネル3は、その両側端面である小口面301に内方に凹んだスリット302を有し、スリット302にそれぞれ支柱2の側片202を差し込むことにより固定してあることが好ましい。
【解決手段】間隔を置いて立設された複数の支柱2を介してパネル3を固定してなる自立塀1である。支柱2は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端である。支柱2の内部、あるいは支柱2とパネル3とが対面する部分の少なくとも一部に、施工基準面の振動に伴ってパネル3が振動することを抑制するための粘弾性体4を配設した。支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面同士の間の少なくとも一部に粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有してなり、パネル3は、その両側端面である小口面301に内方に凹んだスリット302を有し、スリット302にそれぞれ支柱2の側片202を差し込むことにより固定してあることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートパネルや軽量気泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)を塀にする方法として、鋼製支柱を利用した塀構造が良く知られている(特許文献1)。
特に、H型鋼を支柱とし、その間にパネルを差し込んで組み立てる構造が良く知られている。この構造によれば、特にパネル自体を加工することもなく、H型鋼により十分な強度が確保できるため、経済的であり、施工も容易である。
【0003】
しかしながら、上述の鋼製支柱を利用した塀構造は、地盤面からの微振動(例えば、交通状況に応じて生じる固有の振動等)や地震による揺れに対して共振を起こすことが知られている。そのため、条件によっては、振動が増幅し、クラックが発生するおそれや、基礎を支点として転倒を生じる危険性がある。
【0004】
振動によって揺れが生じる場合、重量物であればあるほど、慣性力が発生して曲げ変形が生じる。そのため、地盤面からの微振動や地震が発生した場合には、塀を構成するパネルの重量によって転倒モーメントが発生する。そのため、上記パネルの重量によって、転倒に対する危険度が概ね決まってくる。
【0005】
従って、一般的には、ネットフェンスや発泡パネルを用いた塀については、比較的軽量であるため、転倒の危険度が小さいが、重厚感や高級感に欠けるものが多い。そのため、重厚感や高級感の観点から、塀のパネル自体が、転倒に対する危険度が大きい重量物になることが多い。そして、パネル自体が重量物(例えば、ALCパネル、コンクリートパネル、サイディングパネル等)である場合には、転倒を防止するために、どうしても大掛かりな基礎を設ける必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−22254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することが可能な制振自立塀を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であって、
上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端であり、
上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設したことを特徴とする制振自立塀にある(請求項1)。
【0009】
本発明の制振自立塀は、上述したように、地盤面からの微振動や地震による揺れに対して共振を起こし易い構造を有する塀において、特定箇所に上記粘弾性体を配設している。そのため、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することが可能な制振自立塀を得ることができる。
【0010】
すなわち、上記制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であり、上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端である。そのため、地盤面からの微振動や地震による揺れに対して共振が発生しやすい構造となっている。
【0011】
そこで、剪断応力がかかり易い上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設してある。これにより、地盤面からの微振動や地震による揺れが発生した場合に、この振動エネルギーを上記粘弾性体が吸収し、粘弾性体内で熱エネルギーに変換し、振動の増幅を抑制することができる。
このように、振動の増幅が抑制されることにより、転倒モーメントが抑制され、転倒力に抵抗する基礎にかかる負担が小さくなるため、基礎を簡素化することができ、コスト低減にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀である。
上記支柱としては、鋼などの金属材料を用いることが好ましい。
また、上記支柱の高さは、上記制振自立塀の全体の高さに合致していることが好ましい。なお、多少低くてもよい。
また、上記パネルとしては、例えば、ALCパネル、コンクリートパネル、サイディングパネル等を用いることができる。
【0013】
また、上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設している。
ここで、上記支柱の内部とは、後述する角型鋼と連絡金具との間、支柱の外接板と止め金具との間等の、支柱とパネルとを固定するための部材と支柱との間の部分も含む。
【0014】
上記粘弾性体は、支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の全面に配設してもよいし、一部に配設してもよい。
上記粘弾性体は、粘着性を有する弾性体であれば何れも用いることができる。具体的には、例えば、ブチルゴムシート(板材)、アスファルトシート(板材)、シリコンシート(板材)等を利用することができる。
【0015】
上記制振自立塀は、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有してなり、上記パネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0016】
すなわち、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間(後述する図3参照)の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有している。
これにより、振動によって揺れが生じ、上記2つのT字鋼が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0017】
また、上記粘着弾性体は、上記スリットに差し込まれる側片内に介在されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、転倒の危険度が大きい上記制振自立塀の面に垂直な方向の揺れに対する制振効果を発揮することができるため、特に効果的である。
【0018】
また、上記構成の全体の断面形状が略十字型の支柱と、上記スリットを備えたパネルとを組み合わせることにより、支柱の露出部分を極力抑えることができ、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
また、上記パネルのスリットに上記側片を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。また、上記パネルは、左右両端を固定してあり、上記小口面全面で荷重を受けるため、曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【0019】
また、上記スリットに挿入されていない上記側片と、該側片に対面する上記小口面との間隙は弾性接着部材により埋めて固定してあることが好ましい。
この場合には、上記粘着弾性体による効果を阻害することなく、上記支柱と上記パネルとを良好に固定することができる。
上記弾性接着部材としては、シリコンシーラント、市販の発泡系目地材等を利用することが好ましい。
【0020】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における直線関係にある2枚の上記側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで2枚の上記パネルをつないだ直線つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい。
この場合には、直線状に上記パネルをつないだ幅広の制振自立塀を容易に立設することができる。また、上記支柱の露出を上記パネルの間の側片の厚みのみに抑えることができる。
【0021】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における直角関係にある2枚の上記側片を上記スリットにそれぞれ差し込んで2枚の上記パネルをつないだ直角つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい。
この場合には、上記直角つなぎ部において、スリットに挿入されていない2枚の側片の上記小口面と対面しない側には、別部材を接着剤等を用いて接着することが好ましい。これにより、更に意匠性を向上させることができる。
【0022】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における3枚の側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで3枚の上記パネルをつないだ三方つなぎ部を少なくとも一箇所有することも好ましい。
この場合には、1本の支柱から3方向に上記パネルをつないだ特殊な構造の自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、三方つなぎ部において、上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0023】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における全ての側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで4枚の上記パネルをつないだ四方つなぎ部を少なくとも一箇所に有することも好ましい。
この場合には、一本の支柱から4方向にパネルをつないだ特殊な構造の自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、上記四方つなぎ部において、上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0024】
また、直角に配された2枚の上記パネルの上記小口面には、互いに対面する傾斜面を設けてあることが好ましい。
この場合には、直角に配された2枚上記パネルの当接分剛性を高めることができ、また、優れた意匠性を有することができる。
【0025】
また、上記制振自立塀において、上記支柱は、フランジ部とウェブとからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部と上記ウェブとが形成する凹溝に上記パネルをはめ込むことにより該パネルと上記支柱とを係合させるよう構成されており、上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、施工性に優れ、十分な強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0026】
すなわち、せん断力がかかり易い上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記フランジ部と上記パネルとが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0027】
H型鋼を支柱として、その間にパネルを差し込んで組み立てる構造によれば、H型鋼を用いることにより十分な強度を得ることができ、経済的であり、施工も容易であり、また、特にパネル自体を加工することもなく施工することができるため、施工性に優れ、十分な強度を有することができる。
【0028】
また、上記制振自立塀は、上記支柱は、四角形の断面形状を有する角型鋼と、該角型鋼と上記パネルとを連結する連絡金具とよりなり、上記角型鋼の一面に上記パネルを当接し、他面と上記パネルとを上記連絡金具により連結することにより固定するよう構成されており、上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させることが好ましい(請求項5)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができる。
【0029】
すなわち、せん断力がかかり易い上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記角型鋼又は上記連絡金具と上記パネルとが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0030】
また、上記制振自立塀は、上記支柱は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板を有してなり、該外接板は、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されており、上記パネルには、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルトを、上記支柱の上記外接板と離隔した位置に複数配設してあり、上記各ボルトには、それぞれ止め金具が固定され、該止め金具が上記外接板の外側面に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束されており、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させることが好ましい(請求項6)。
【0031】
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0032】
すなわち、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
上記粘着弾性体は、上記止め金具と、上記外接板との間に介在させることがより好ましい。
【0033】
また、上記パネルの上記外側面に、支柱、ボルト、止め金具が存在するように固定され、上記パネルの内側面においては、支柱及び止め金具の露出がなく、上記パネル以外の露出を最低限に抑えることができる。そのため、少なくとも内面側において、デザインの統一感を演出することができる。
また、上記パネルの内側から外側に貫通させ突出させたボルトに固定した止め金具を、上記外接板に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束することができるため、容易に施工することができ、施工性に優れている。
【0034】
また、上記外接板が、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されるため、十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
また、施工性、強度の観点から、特に、縦張りに適している。そのため、長尺のものでも優れた作業性で施工することができる。
【0035】
また、上記パネルの直線つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、平板状の上記外接板と、その中央部から内側に伸びて2枚の上記パネルの間に挟まれる仕切り板とよりなる断面T形状を有していることが好ましい。
【0036】
また、この場合には、隣り合う2枚のパネルの境界部分に仕切り板が存在するため、上記支柱と上記パネルとを手際よく適合させることができる。それ故、上記直線つなぎの境界部分を安定、且つ容易に固定することができる。また、支柱自体の剛性を高めることができ、塀自体の安定性を更に高めることができる。ここで、直線つなぎとは、隣り合う2枚の上記パネルを直線状につなぐことである。
【0037】
また、上記パネルの入隅つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、上記外接板が入隅の外側形状に対応した断面L字形状を有していることが好ましい。
【0038】
また、上記入隅つなぎ部分において、上記パネル以外の露出を殆どなくすことができるため、優れた意匠性を得ることができる。ここで、入隅つなぎとは、隣り合う2枚のパネルの境界部分において、内側面側の角度が直角となるようにL字状につなぐことである。
【0039】
また、上記パネルの出隅つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、上記外接板が出隅の外側形状に対応した断面L字形状を有していることが好ましい。
【0040】
また、上記出隅つなぎ部分において、内側面における、パネル以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。ここで、出隅つなぎとは、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分において、外側面側の角度が直角となるようにL字状につなぐことである。
【0041】
また、上記各止め金具は、1枚の上記パネルの両端に位置する2つの上記外接板に係合可能な形状を有していることが好ましい。
この場合には、止め金具は、パネルの両端に位置する上記外接板と2点で係合し、パネルの幅方向全長に存在するため、止め金具の回りを防いでより安定に支えることができると共に、さらに十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。また、上記留め金具を用いることによって、施工時にパネル1枚毎に固定を完了させることができ、施工性を向上することができる。
【0042】
また、上記各止め金具は、上記外接板の外側面をまたがり、その両側の隣り合う2枚の上記パネルから突出した各ボルトに係合可能な形状を有していることが好ましい。
この場合には、止め金具は、隣り合う2枚のパネルのボルトと2点で係合し、止め金具の回りを防いでより安定に支えることができると共に、さらに十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
【0043】
また、上記粘弾性体は、ブチルゴム、アスファルト、またはシリコンであることが好ましい(請求項7)。
この場合には、特に優れた制振性を得ることができる。
上記ブチルゴム、アスファルト、及びシリコンは、シート状(板状)のものを用いることが好ましい。
【0044】
また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から少なくとも300mmの範囲に配設していることが好ましい(請求項8)。
共振が発生する場合には、上記制振自立塀の上方の揺れが大きくなるため、上端から300mmの範囲に配設することが特に効果的である。
なお、上記粘弾性体は、上端から300mmの範囲を超えて配設してもよいし、上記制振自立塀の全長にわたって配設してもよい。
【0045】
また、上記パネルは、軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)であることが好ましい(請求項9)。
上記ALCパネルは、加工性に優れ、乾式施工が可能であるため、意匠性や作業性の点で特に優れている。
【0046】
上記ALCパネルは、それ自体を容易に加工することが可能であるため、ユーザーニーズに対応した意匠を表現することができる。例えば、住宅用の門袖塀とする場合には、住宅外壁の割り肌調の意匠に合うように、表面加工を施して質感を合わせることができる。また、適度な視認性を確保するための開口部を設けることも容易であり、意匠性に優れている。
【0047】
また、上記パネルは、コンクリートパネルからなることが好ましい(請求項10)。
施工基準面の振動に伴うパネルの振動は、重量物であるほど、慣性力が発生して曲げ変形が生じる。そのため、上記パネルがコンクリートパネルからなる場合には、振動の増幅の抑制効果が大きい。
【0048】
また、上記パネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記制振自立塀を組み立てる際に、上記小ブロック単位で行うことができるため、施工性を向上することができる。
【0049】
また、上記制振自立塀は、高さが1.0m以上であることが好ましい(請求項12)。
共振が発生する場合には、上記制振自立塀の高さが高いほど揺れが大きくなる。そのため、高さが1.0m以上である場合には効果的である。特に、上記制振自立塀の高さは、1.5m以上である場合には非常に効果的である。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
本例は、本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図1〜図8を用いて説明する。
同図に示すごとく、本例の制振自立塀1は、間隔を置いて立設された3本の支柱2の間にパネル3を固定してなる制振自立塀1である。
【0051】
上記支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有している。上記パネル3は、軽量発泡コンクリートパネル(ALCパネル)からなり、その両側端面である小口面301に内方に凹んだスリット302を有している。上記制振自立塀1は、上記スリット302にそれぞれ上記支柱2の上記側片202を差し込むことにより固定してある。
以下、これを詳説する。
【0052】
図1及び図2に示すごとく、本例の制振自立塀1は直線形状であり、2枚のパネル3を直線つなぎ部11において直線状につないである。3本の支柱2a〜2cを直線状に等間隔に配置した。
また、図3に示すごとく、上記粘着弾性体4は、上記スリット302に差し込まれる側片202内に介在されている。
【0053】
支柱2としては、T字鋼201となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理し、図4〜図6に示すように、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘弾性体4を介在させて組み合わせたものを用いた。上記粘着弾性体4としては、ブチルゴム板材を用いた。
【0054】
また、各側片202のサイズは、厚みDは4.5mm、幅Wは60mmであり、支柱高さHは後述するごとく位置によって変化させ、1500mm、1350mmの2種類とした。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から10mm〜210mmの範囲に配設している。上記粘着弾性体の厚みLは2mm、幅Mは50mm、高さNは200mmである。
支柱2の下端には、ベースプレート203を溶接により接合し、このベースプレート203によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0055】
また、上記パネル3としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているブロック303を用いた。各ブロック303は、図1及び図2に示すごとく、およそ厚みdは100mm、幅wは880mm、高さhは300mmであり、小口面301に設けたスリット302の幅aは12mm、深さbは80mmとした。
【0056】
また、制振自立塀1がウェーブ形状12を有するように、一端のパネル3の上端のブロック30には、所定位置に加工を施した。そして、その形状に合わせて、各支柱2の高さを変化させてある。また、制振自立塀1が開口部13を有するように、該当するブロック303の所定位置に加工を施した。また、各パネル3は、割り肌調の質感を有するように表面に加工を施した。
【0057】
次に、施工について説明する。
まず、図7に示すごとく、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱2のベースプレート203を所定の位置に合わせてアンカーボルト204に固定した。支柱2の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱2に大きな倒れがないことを確認した。
【0058】
全ての支柱2を固定した後、仮固定した桟をはずし、支柱2の側片202にシリコンシーラントを塗布した。その後、図7に示すように、小ブロック形状のパネル3を上部より差し込むように順次積み上げていった。上記シリコンシーラントは、パネル3と支柱2を確実につなぐよう十分量を塗布した。
【0059】
また、制振自立塀1において、端の支柱2には、一端にスリット302を有するALCからなる別部材14をシリコンシーラントを用いて接着した。
また、パネル3同士のツナギにもシリコンシーラントを使用し、パネル3の一体化を図った。さらに、支柱2とパネル3との板間の隙間にはコーキング処理を施した。十分に養生した後、ALCを下地として樹脂系塗り材によるクシメ調の塗り仕上げを行った。
【0060】
次に、作用効果ついて説明する。
本例の制振自立塀1は、上記のごとく、上記支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有している。
これにより、図8に示すように、S方向の振動によって揺れが生じ、上記2つのT字鋼201が互いにT方向にせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0061】
また、全体の断面が略十字型の支柱2と、スリット302を備えたパネル3とを組み合わせた構造を有している。そのため、支柱2の露出を極力抑えることができ、塗り仕上げへの影響が小さくなると共に、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
【0062】
また、上記パネル3のスリット302に上記支柱2の上記側片202を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。特に、本例のパネル3は、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されている。そのため、上記パネル3のスリット302を上記支柱間に差し込む際に、上記小ブロック単位で上部より容易に落とし込むことができるため、施工性が向上した。
また、パネル3は両端を支柱2で固定してあり、その支柱2の高さはパネル3の全体の高さにほぼ合致しているため、上記小口面301全面で荷重を受けることになり、制振自立塀1は曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【0063】
また、パネル3は、上記ウェーブ形状12や、上記開口部13を有しているため、適度な視認性を確保することができる。また、表面は、住宅外壁と質感を合わせて割り肌調に加工してあるため、意匠性に優れている。
【0064】
また、上記スリット302に挿入されていない上記側片202と、側片202に対面する上記小口面301との間隙は弾性接着部材としてシリコンシーラントを埋めて固定してある。これにより、上記粘着弾性体4による効果を阻害することなく、上記支柱2と上記パネル3とを良好に固定することができる。
【0065】
(実施例2)
本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図9〜図16を用いて説明する。
本例の制振自立塀102は、同図に示すごとく、間隔を置いて立設された複数の支柱5の間にパネル6を固定してなる制振自立塀102である。
上記支柱5は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板51を有してなり、該外接板51は、隣り合う2枚の上記パネル6の境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されている。
【0066】
上記パネル6は、ALCパネルからなり、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルト61を、上記支柱5の上記外接板51と離隔した位置に複数配設してある。
上記各ボルト61には、それぞれ止め金具52が固定され、該止め金具52が上記外接板51の外側面に当接することによって、上記パネル6が上記外接板51に当接した状態で拘束されている。
そして、図12〜図14に示すごとく、上記止め金具52と上記外接板51との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。
以下、さらに詳説する。
【0067】
図9〜図11に示すごとく、本例の制振自立塀1はL字形状であり、3枚のパネル6を、直線つなぎ部62において直線状につなぎ、その一端のパネルと他のパネルを入隅つなぎ部63において直角につないである。
【0068】
本例の制振自立塀102に用いる支柱5としては、上記直線つなぎ部62には、図15に示す、平板状の上記外接板51と、その中央部から内側に伸びて2枚の上記パネルの間に挟まれる仕切り板54とよりなる断面T形状を有している支柱501(501a〜501d)を用いた。また、上記入隅つなぎ部には、図16に示す、上記外接板51が入隅つなぎの外側形状に対応した断面L字形状を有している支柱502を用いた。
上記支柱5は、外接板及び仕切り板となる鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
支柱の下端には、基部53を溶接により接合し、この基部によって、後述するごとく基礎を固定する。
【0069】
上述の3本の支柱501a〜501cをそれぞれの外接板51が直線状に並ぶように等間隔で配置し、その直線上に上述の支柱502を外接板51の一辺が位置するように配置した。1本の支柱501dは、支柱502の外接板の角部を中心にして、支柱501dの外接板と他の支柱501a〜501cの外接板とが直角の関係になる位置に配置した。
【0070】
また、図15に示すごとく、支柱501の高さH2は750mm、支柱501の外接板51のサイズは、厚みD3は8mm、幅W3は100mm、仕切り板54のサイズは、厚みD2は5.5mm、幅W2は92mmとした。また、図16に示すごとく、支柱502の高さH3は750mm、外接板51のサイズは、厚みD4は4.5mm、幅W4は155mmとした。
【0071】
上記パネル6としては、縦貼り用のもの、つまり、高さ方向に分割されていない1枚のものを用いた。各パネル6は、図11に示すごとく、およそ厚みd2は100mm、幅w2は600mm、高さh2は1500mmとした。また、上記入隅つなぎ部63において、直角に配された2枚の上記パネル6には、互いに対面する傾斜小口面64を設けてある。また、内側面の複数箇所にボルト61の座繰り穴65を設け、ボルト61を内側面から外側面に貫通させ突出させたものを用いた。
【0072】
また、制振自立塀102がウェーブ形状66を有するように、両端のパネルの上端には、所定位置に加工を施した。また、制振自立塀が開口部67を有するように、該当するパネル6の所定位置に加工を施した。また、パネル6は、割り肌調の質感を有するように表面に加工を施した。
【0073】
次に、施工方法について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱5の基部53を施工基準面に所定の位置に合わせてアンカーボルト55を用いて固定した。支柱5の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱5に大きな倒れがないことを確認した。
【0074】
全ての支柱5を固定した後、仮固定した桟をはずし、固定した支柱5の外接板51の内側面及び仕切り板にシリコンシーラントを塗布した後、パネル6を支柱5に密接するように縦貼りで立設した。そして、パネル6側に既に固定されているボルト61に、止め金具52としてZ型金物を取り付け、該止め金具52と上記支柱5の外接板51との間に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘弾性体4を介在させて、上記止め金具52を上記外接板51の外側面に当接し、ボルト61を締め付けて支柱5とパネル6とを固定した。
上記粘着弾性体としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記止め金具52と上記外接板51の外側面との間全面に配設している。図12に示すごとく、上記粘着弾性体の厚みL2は2mm、幅M2は30mm、高さN2は30mmである。
【0075】
また、制振自立塀102の両端には、幅方向中央の複数箇所にボルト61の座繰り穴65を設け、ボルト61を内側面から外側面に貫通させ突出させた、ALCからなる別部材68を取り付けた。上記パネル6の固定方法と同様に、ボルト61に止め金具52を取り付け、上記支柱5の外接板51との間に粘着弾性体4を配設して、制振自立塀102の両端に位置する支柱501a、501dの外接板51の外側面に、当接し、ボルト61を締め付けて支柱501a、501dに別部材を固定した。
【0076】
また、パネル6同士の間隙を埋めるため、パネル6間の間隙にコーキング処理を施した。
十分に養生した後、ALCを下地として樹脂系塗り材によるクシメ調の塗り仕上げを行った。その際、上記ボルト61の座繰り穴65も同様の塗り剤を用いて埋め込み、平滑な面状とした。
【0077】
次に、作用効果について説明する。
本発明の制振自立塀102は、上述のごとく、上記止め金具52と上記外接板51との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記止め金具52又は上記パネル6と上記外接板51が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
本例においては、上記粘着弾性体4は、止め金具52と外接板51との間に介在させたが、パネル6と外接板51との間に介在させても、同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、パネル6の上記外側面に、支柱5、ボルト61、止め金具52が存在するように固定され、上記パネル6の内側面においてはパネル6以外の露出を最低限に抑えられている。そのため、少なくとも内側面においてデザインの統一感を演出することができた。さらに、内側面にはボルト61の座繰り穴65を設け、塗り剤等を塗りこむことで意匠性が向上した。
【0079】
また、パネル6は、上記ウェーブ形状66や、上記開口部67を有しているため、適度な視認性を確保することができる。また、表面は、住宅外壁と質感を合わせて割り肌調に加工してあるため、意匠性に優れている。
【0080】
また、上述したように、上記パネル6の内側面から外側面に貫通させ突出させたボルト61に固定した止め金具52を、上記外接板51の外側面に当接することによって、上記パネル6が上記外接板51に当接した状態で拘束することができるため、容易に施工することができた。
【0081】
また、制振自立塀102は、上記支柱501及び上記支柱502を有している。そのため、直線つなぎ部分62と入隅つなぎ部分63を安定、且つ容易に固定することができ、L字形状の制振自立塀102を容易に立設することができる。
また、入隅つなぎ部分63において、内側面における、パネル6以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。
また、入隅つなぎ部分63において、直角に配された2枚の上記パネル6には、互いに対面する傾斜小口面64を設けてあるため、入隅つなぎ部分63におけるパネル6の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。
【0082】
また、支柱5の外接板51が隣り合う2枚の上記パネル6の境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されるため、十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
【0083】
(実施例3)
本例の制振自立塀105は、図17に示すごとく、実施例2の入隅つなぎ部分63を出隅つなぎ部分69に変えた構造とした例である。他の構造は実施例2と同様である。
この出隅つなぎ部分69には、図18に示す、上記外接板が出隅つなぎの外側形状に対応した断面L字形状を有する支柱503を用いて行った。また、上記出隅つなぎ部分69において、直角に配された2枚の上記パネル6は、互いに対面する傾斜小口面64を設けてある。
そして、上記止め金具と上記外接板との間の全面に上記粘弾性体(厚み2mm)を介在させている。
【0084】
本例の制振自立塀105の場合には、上記出隅つなぎ部分69において、内側面における、パネル6以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。
また、出隅つなぎ部分69において、直角に配された2枚の上記パネルには、互いに対面する傾斜小口面64を設けてあるため、出隅つなぎ部分69におけるパネル6の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。その他は、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(実施例4)
本例の制振自立塀は、図19〜図21に示すごとく、間隔を置いて立設された3本の支柱71の間にパネル72を固定してなる制振自立塀106である。
同図より知られるごとく、上記支柱71は、フランジ711部とウェブ712とからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部711と上記ウェブ712とが形成する凹溝713に上記パネル72をはめ込むことにより該パネル72と上記支柱71とを係合させるよう構成されている。図20に示すように、上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に粘着弾性体4を介在させている。
【0086】
図19に示すごとく、本例の制振自立塀1は直線形状であり、2枚のパネルを直線つなぎ部73において直線状につないである。3本の支柱71a〜71cを直線状に等間隔に配置した。
【0087】
支柱71としては、H型鋼となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
また、図21に示すごとく、支柱71の高さH4は2400mm、支柱71のフランジ711部のサイズは、厚みD5は6mm、幅W5は100mm、ウェブ712のサイズは、厚みD6は8mm、幅W6は100mmとした。
支柱71の下端には、ベースプレート74を溶接により接合し、このベースプレート74によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0088】
また、上記パネル72としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているコンクリートパネルを用いた。各ブロックは、図19に示すごとく、およそ厚みd3は100mm、幅w3は1800mm、高さh3は600mmである。
【0089】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱のベースプレート74を所定の位置に合わせてアンカーボルト75に固定した。支柱71の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱71に大きな倒れがないことを確認した。
【0090】
全ての支柱71を固定した後、仮固定した桟をはずし、小ブロック形状のパネルを上部より差し込むように順次積み上げていった。このとき、粘着弾性体4自身の接着力を利用して、上記支柱71の上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させた。上記粘着弾性体は、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から400mmの範囲に配設している。上記粘着弾性体の厚みL4は3mm、幅M3は50mm、高さN3は400mmである。
【0091】
また、制振自立塀106において、端の支柱には、ALCからなる別部材76をシリコンシーラントを用いて接着した。
また、パネル72同士のツナギにもシリコンシーラントを使用し、パネルの一体化を図った。
【0092】
次に、作用効果について説明する。
本例の制振自立塀106の場合には、上述したように、せん断力がかかり易い上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記フランジ部711と上記パネル72とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0093】
また、H型鋼を支柱として、その間にパネル72を差し込んで組み立てる構造を採用している。H型鋼を用いることにより十分な強度を得ることができ、経済的であり、施工も容易であり、また、特にパネル自体を加工することもなく施工することができるため、施工性に優れ、十分な強度を有することができる。
【0094】
(実施例5)
本例の制振自立塀は、図22〜図25に示すごとく、間隔を置いて立設された3本の支柱81を介してパネル82を固定してなる制振自立塀107である。
同図より知られるごとく、上記支柱81は、四角形の断面形状を有する角型鋼811と、該角型鋼811と上記パネル82とを連結する断面L字状の連絡金具812とよりなり、上記角型鋼811の一面に上記パネル82を当接し、他面と上記パネル82とを上記L字状の連絡金具812により連結することにより固定するよう構成されている。図23に示すごとく、上記角型鋼811又は上記パネル82と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。
【0095】
図22に示すごとく、本例の制振自立塀107は直線形状であり、2枚のパネルを直線つなぎ部83において直線状につないである。3本の支柱を直線状に等間隔に配置した。
支柱81としては、四角形の断面形状を有する角型鋼811となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。また、図25に示すごとく、支柱81の高さH5は1800mm、厚みD7は2.3mm、幅W7は60mmとした。
支柱81の下端には、ベースプレート84を溶接により接合し、このベースプレート84によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0096】
また、上記パネル82としては、縦貼り用のもの、つまり、高さ方向に分割されていない1枚のもののコンクリートパネルを用いた。各パネル82は、図22に示すごとく、およそ厚みd4は100mm、幅w4は600mm、高さh4は1800mmとした。
【0097】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱のベースプレート84を所定の位置に合わせてアンカーボルト85に固定した。支柱81の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱に大きな倒れがないことを確認した。
【0098】
全ての支柱81を固定した後、仮固定した桟をはずし、上記角型鋼811の一面と上記パネル82との間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して粘着弾性体4を介在させて、上記パネル82を上記支柱81に密接するように縦貼りで立設した。そして、上記角型鋼の一面と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘着弾性体4を介在させ、図24に示すように、上記連絡金具812に設けられたルーズホール87とボルト88を用いて支柱81とパネル82とを固定した。同図に示すように、上記ルーズホール87は、縦方向に大きめにあけた穴であるため、振動によって揺れが生じる時には、ボルト88が縦方向に変位を発生するように構成されている。
【0099】
上記粘着弾性体としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から200mmの範囲に配設している。上記角型鋼811の一面と上記パネル82との間の粘着弾性体の厚みL4は2mm、幅M4は50mm、高さは200mmである。上記角型鋼の一面と上記連絡金具812との間の粘着弾性体の厚みL5は2mm、幅M5は50mm、高さは200mmである。
また、制振自立塀107において、端の支柱81には、ALCからなる別部材86を上記パネル82と同様の方法で固定した。
【0100】
次に、作用効果について説明する。
本例の制振自立塀107の場合には、上述したように、せん断力がかかり易い上記角型鋼811上記連絡金具812との間、及び上記パネル82と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記角型鋼811又は上記連絡金具812と上記パネル82とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0101】
(実施例6)
本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図26を用いて説明する。
本例の制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱94の間にパネル97を固定してなる制振自立塀である。
【0102】
上記支柱94は、四角形の断面形状を有する角型鋼95と該角型鋼95に固着されたカバープレート96よりなり、上記パネル97は、軽量発泡コンクリートパネル(ALCパネル)からなる。上記角型鋼95の一面に上記パネル97の小口面98を当接し、上記角型鋼95に固着されたカバープレート96と上記パネル97とを係合することにより固定するよう構成されている。
図26に示すように、上記カバープレート96と上記パネル97との間の少なくとも一部には、粘着弾性体4が介在させてある。
【0103】
本例の制振自立塀は直線形状であり、2枚のパネル97を直線状につないである。
支柱94の角型鋼95としては、四角形の断面形状を有する角型鋼となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
角型鋼95の下端には、ベースプレートを溶接により接合し、このベースプレートによって、後述するごとく基礎と固定する。
また、上記パネル97としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているブロックを用いた。
【0104】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、上記ベースプレートを所定の位置に合わせてアンカーボルトに固定した。角型鋼5の固定にあたっては、角型鋼間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、角型鋼に大きな倒れがないことを確認した。
【0105】
全ての角型鋼95を固定した後、仮固定した桟をはずし、上記角型鋼95の一面に上記パネル97の小口面98を当接し、上記角型鋼95に板状のカバープレート96を溶接により固着した。このとき、上記カバープレート96と上記パネル97との間の一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して粘着弾性体4を介在させた。
上記粘着弾性体4としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体4は、厚みL6は3mm、幅M6は上記カバープレート96と上記パネル97との間の長さに合わせ、上記制振自立塀の上端から300mmの範囲に配設している。
【0106】
次に、作用効果ついて説明する。
本例の制振自立塀は、上記のごとく、上記カバープレート96と上記パネル97との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。
これにより、振動によって揺れが生じ、上記カバープレート96と上記パネル97とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0107】
(実験例)
次に、本発明の振動の増幅を抑制する効果について、図27及び図28を用いて一例を示す。
本例は、上述の実施例1と同様の方法で制振自立塀を作製し、1軸加震実験を行うことにより、振動の増幅を抑制する効果を評価した。
【0108】
図27に示すごとく、上述した実施例1と同様の方法で、加震台99上に間隔を置いて立設された2本の支柱2の間にパネル3を固定してなる制振自立塀109を作製した。
なお、本例の制振自立塀109は、幅w5は900mm、高さh5は1500mm、厚みd7は100mmである。粘着弾性体4は、幅70mm、高さ200mm、厚み3mmとし、制振自立塀109の上端から20mm〜220mmの範囲に配設した。
【0109】
1軸加震実験は、図27に示すように、加震台99上に制振自立塀109を立設し、該制振自立塀109に対して符号Xの方向に600galの負荷(震度7に相当する烈震)を与えた時の、上記制振自立塀109の支柱2(上端から1470mmの位置)の加速度を測定することにより行った。
【0110】
また、比較のために、上記粘着弾性体を配設していない非制振自立塀を作製し、同様に1軸加震実験を行った。
そして、図28に1軸加震実験の結果を示す。図28は、横軸を時間、縦軸を振幅とした。同図における符号Eは制振自立塀の揺れを示し、符号C1は非制振自立塀の揺れを示し、符号C2は加震台の揺れを示す。
【0111】
図28より知られるごとく、本発明の制振自立塀の揺れは、加震台の揺れに対して約2倍に増幅されており、比較例としての非制振自立塀の揺れは、加震台の揺れに対して約4倍に増幅されている。これより、本発明によれば、振動の増幅を抑制することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例1における、制振自立塀を示す説明図。
【図2】実施例1における、制振自立塀を示す上面図。
【図3】実施例1における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図4】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図5】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図6】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図7】実施例1における、制振自立塀の施工方法を示す側面図。
【図8】実施例1における、粘着弾性体の作用効果を示す説明図。
【図9】実施例2における、制振自立塀を示す説明図。
【図10】実施例2における、制振自立塀を示す上面図。
【図11】実施例2における、制振自立塀を示す説明図。
【図12】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図13】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図14】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図15】実施例2における、支柱を示す説明図。
【図16】実施例2における、支柱を示す説明図。
【図17】実施例3における、制振自立塀を示す説明図。
【図18】実施例3における、支柱を示す説明図。
【図19】実施例4における、制振自立塀を示す説明図。
【図20】実施例4における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図21】実施例4における、支柱を示す説明図。
【図22】実施例5における、制振自立塀を示す説明図。
【図23】実施例5における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図24】実施例5における、支柱とパネルとの固定部分を示す説明図。
【図25】実施例5における、支柱を示す説明図。
【図26】実施例6における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図27】実験例における、1軸加震実験を示す説明図。
【図28】実験例における、1軸加震実験の結果を示す図。
【符号の説明】
【0113】
1 制振自立塀
2 支柱
201 T型鋼
202 側片
3 パネル
301 小口面
302 スリット
4 粘着弾性体
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートパネルや軽量気泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)を塀にする方法として、鋼製支柱を利用した塀構造が良く知られている(特許文献1)。
特に、H型鋼を支柱とし、その間にパネルを差し込んで組み立てる構造が良く知られている。この構造によれば、特にパネル自体を加工することもなく、H型鋼により十分な強度が確保できるため、経済的であり、施工も容易である。
【0003】
しかしながら、上述の鋼製支柱を利用した塀構造は、地盤面からの微振動(例えば、交通状況に応じて生じる固有の振動等)や地震による揺れに対して共振を起こすことが知られている。そのため、条件によっては、振動が増幅し、クラックが発生するおそれや、基礎を支点として転倒を生じる危険性がある。
【0004】
振動によって揺れが生じる場合、重量物であればあるほど、慣性力が発生して曲げ変形が生じる。そのため、地盤面からの微振動や地震が発生した場合には、塀を構成するパネルの重量によって転倒モーメントが発生する。そのため、上記パネルの重量によって、転倒に対する危険度が概ね決まってくる。
【0005】
従って、一般的には、ネットフェンスや発泡パネルを用いた塀については、比較的軽量であるため、転倒の危険度が小さいが、重厚感や高級感に欠けるものが多い。そのため、重厚感や高級感の観点から、塀のパネル自体が、転倒に対する危険度が大きい重量物になることが多い。そして、パネル自体が重量物(例えば、ALCパネル、コンクリートパネル、サイディングパネル等)である場合には、転倒を防止するために、どうしても大掛かりな基礎を設ける必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−22254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することが可能な制振自立塀を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であって、
上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端であり、
上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設したことを特徴とする制振自立塀にある(請求項1)。
【0009】
本発明の制振自立塀は、上述したように、地盤面からの微振動や地震による揺れに対して共振を起こし易い構造を有する塀において、特定箇所に上記粘弾性体を配設している。そのため、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することが可能な制振自立塀を得ることができる。
【0010】
すなわち、上記制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であり、上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端である。そのため、地盤面からの微振動や地震による揺れに対して共振が発生しやすい構造となっている。
【0011】
そこで、剪断応力がかかり易い上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設してある。これにより、地盤面からの微振動や地震による揺れが発生した場合に、この振動エネルギーを上記粘弾性体が吸収し、粘弾性体内で熱エネルギーに変換し、振動の増幅を抑制することができる。
このように、振動の増幅が抑制されることにより、転倒モーメントが抑制され、転倒力に抵抗する基礎にかかる負担が小さくなるため、基礎を簡素化することができ、コスト低減にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀である。
上記支柱としては、鋼などの金属材料を用いることが好ましい。
また、上記支柱の高さは、上記制振自立塀の全体の高さに合致していることが好ましい。なお、多少低くてもよい。
また、上記パネルとしては、例えば、ALCパネル、コンクリートパネル、サイディングパネル等を用いることができる。
【0013】
また、上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設している。
ここで、上記支柱の内部とは、後述する角型鋼と連絡金具との間、支柱の外接板と止め金具との間等の、支柱とパネルとを固定するための部材と支柱との間の部分も含む。
【0014】
上記粘弾性体は、支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の全面に配設してもよいし、一部に配設してもよい。
上記粘弾性体は、粘着性を有する弾性体であれば何れも用いることができる。具体的には、例えば、ブチルゴムシート(板材)、アスファルトシート(板材)、シリコンシート(板材)等を利用することができる。
【0015】
上記制振自立塀は、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有してなり、上記パネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0016】
すなわち、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間(後述する図3参照)の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有している。
これにより、振動によって揺れが生じ、上記2つのT字鋼が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0017】
また、上記粘着弾性体は、上記スリットに差し込まれる側片内に介在されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、転倒の危険度が大きい上記制振自立塀の面に垂直な方向の揺れに対する制振効果を発揮することができるため、特に効果的である。
【0018】
また、上記構成の全体の断面形状が略十字型の支柱と、上記スリットを備えたパネルとを組み合わせることにより、支柱の露出部分を極力抑えることができ、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
また、上記パネルのスリットに上記側片を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。また、上記パネルは、左右両端を固定してあり、上記小口面全面で荷重を受けるため、曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【0019】
また、上記スリットに挿入されていない上記側片と、該側片に対面する上記小口面との間隙は弾性接着部材により埋めて固定してあることが好ましい。
この場合には、上記粘着弾性体による効果を阻害することなく、上記支柱と上記パネルとを良好に固定することができる。
上記弾性接着部材としては、シリコンシーラント、市販の発泡系目地材等を利用することが好ましい。
【0020】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における直線関係にある2枚の上記側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで2枚の上記パネルをつないだ直線つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい。
この場合には、直線状に上記パネルをつないだ幅広の制振自立塀を容易に立設することができる。また、上記支柱の露出を上記パネルの間の側片の厚みのみに抑えることができる。
【0021】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における直角関係にある2枚の上記側片を上記スリットにそれぞれ差し込んで2枚の上記パネルをつないだ直角つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい。
この場合には、上記直角つなぎ部において、スリットに挿入されていない2枚の側片の上記小口面と対面しない側には、別部材を接着剤等を用いて接着することが好ましい。これにより、更に意匠性を向上させることができる。
【0022】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における3枚の側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで3枚の上記パネルをつないだ三方つなぎ部を少なくとも一箇所有することも好ましい。
この場合には、1本の支柱から3方向に上記パネルをつないだ特殊な構造の自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、三方つなぎ部において、上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0023】
また、上記制振自立塀は、上記支柱における全ての側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで4枚の上記パネルをつないだ四方つなぎ部を少なくとも一箇所に有することも好ましい。
この場合には、一本の支柱から4方向にパネルをつないだ特殊な構造の自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、上記四方つなぎ部において、上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0024】
また、直角に配された2枚の上記パネルの上記小口面には、互いに対面する傾斜面を設けてあることが好ましい。
この場合には、直角に配された2枚上記パネルの当接分剛性を高めることができ、また、優れた意匠性を有することができる。
【0025】
また、上記制振自立塀において、上記支柱は、フランジ部とウェブとからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部と上記ウェブとが形成する凹溝に上記パネルをはめ込むことにより該パネルと上記支柱とを係合させるよう構成されており、上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、施工性に優れ、十分な強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0026】
すなわち、せん断力がかかり易い上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記フランジ部と上記パネルとが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0027】
H型鋼を支柱として、その間にパネルを差し込んで組み立てる構造によれば、H型鋼を用いることにより十分な強度を得ることができ、経済的であり、施工も容易であり、また、特にパネル自体を加工することもなく施工することができるため、施工性に優れ、十分な強度を有することができる。
【0028】
また、上記制振自立塀は、上記支柱は、四角形の断面形状を有する角型鋼と、該角型鋼と上記パネルとを連結する連絡金具とよりなり、上記角型鋼の一面に上記パネルを当接し、他面と上記パネルとを上記連絡金具により連結することにより固定するよう構成されており、上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させることが好ましい(請求項5)。
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができる。
【0029】
すなわち、せん断力がかかり易い上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記角型鋼又は上記連絡金具と上記パネルとが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0030】
また、上記制振自立塀は、上記支柱は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板を有してなり、該外接板は、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されており、上記パネルには、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルトを、上記支柱の上記外接板と離隔した位置に複数配設してあり、上記各ボルトには、それぞれ止め金具が固定され、該止め金具が上記外接板の外側面に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束されており、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させることが好ましい(請求項6)。
【0031】
この場合には、大掛かりな基礎を設けることなく振動の増幅を抑制することができると共に、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有する制振自立塀を得ることができる。
【0032】
すなわち、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
上記粘着弾性体は、上記止め金具と、上記外接板との間に介在させることがより好ましい。
【0033】
また、上記パネルの上記外側面に、支柱、ボルト、止め金具が存在するように固定され、上記パネルの内側面においては、支柱及び止め金具の露出がなく、上記パネル以外の露出を最低限に抑えることができる。そのため、少なくとも内面側において、デザインの統一感を演出することができる。
また、上記パネルの内側から外側に貫通させ突出させたボルトに固定した止め金具を、上記外接板に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束することができるため、容易に施工することができ、施工性に優れている。
【0034】
また、上記外接板が、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されるため、十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
また、施工性、強度の観点から、特に、縦張りに適している。そのため、長尺のものでも優れた作業性で施工することができる。
【0035】
また、上記パネルの直線つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、平板状の上記外接板と、その中央部から内側に伸びて2枚の上記パネルの間に挟まれる仕切り板とよりなる断面T形状を有していることが好ましい。
【0036】
また、この場合には、隣り合う2枚のパネルの境界部分に仕切り板が存在するため、上記支柱と上記パネルとを手際よく適合させることができる。それ故、上記直線つなぎの境界部分を安定、且つ容易に固定することができる。また、支柱自体の剛性を高めることができ、塀自体の安定性を更に高めることができる。ここで、直線つなぎとは、隣り合う2枚の上記パネルを直線状につなぐことである。
【0037】
また、上記パネルの入隅つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、上記外接板が入隅の外側形状に対応した断面L字形状を有していることが好ましい。
【0038】
また、上記入隅つなぎ部分において、上記パネル以外の露出を殆どなくすことができるため、優れた意匠性を得ることができる。ここで、入隅つなぎとは、隣り合う2枚のパネルの境界部分において、内側面側の角度が直角となるようにL字状につなぐことである。
【0039】
また、上記パネルの出隅つなぎの境界部分に配設される上記支柱は、上記外接板が出隅の外側形状に対応した断面L字形状を有していることが好ましい。
【0040】
また、上記出隅つなぎ部分において、内側面における、パネル以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。ここで、出隅つなぎとは、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分において、外側面側の角度が直角となるようにL字状につなぐことである。
【0041】
また、上記各止め金具は、1枚の上記パネルの両端に位置する2つの上記外接板に係合可能な形状を有していることが好ましい。
この場合には、止め金具は、パネルの両端に位置する上記外接板と2点で係合し、パネルの幅方向全長に存在するため、止め金具の回りを防いでより安定に支えることができると共に、さらに十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。また、上記留め金具を用いることによって、施工時にパネル1枚毎に固定を完了させることができ、施工性を向上することができる。
【0042】
また、上記各止め金具は、上記外接板の外側面をまたがり、その両側の隣り合う2枚の上記パネルから突出した各ボルトに係合可能な形状を有していることが好ましい。
この場合には、止め金具は、隣り合う2枚のパネルのボルトと2点で係合し、止め金具の回りを防いでより安定に支えることができると共に、さらに十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
【0043】
また、上記粘弾性体は、ブチルゴム、アスファルト、またはシリコンであることが好ましい(請求項7)。
この場合には、特に優れた制振性を得ることができる。
上記ブチルゴム、アスファルト、及びシリコンは、シート状(板状)のものを用いることが好ましい。
【0044】
また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から少なくとも300mmの範囲に配設していることが好ましい(請求項8)。
共振が発生する場合には、上記制振自立塀の上方の揺れが大きくなるため、上端から300mmの範囲に配設することが特に効果的である。
なお、上記粘弾性体は、上端から300mmの範囲を超えて配設してもよいし、上記制振自立塀の全長にわたって配設してもよい。
【0045】
また、上記パネルは、軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)であることが好ましい(請求項9)。
上記ALCパネルは、加工性に優れ、乾式施工が可能であるため、意匠性や作業性の点で特に優れている。
【0046】
上記ALCパネルは、それ自体を容易に加工することが可能であるため、ユーザーニーズに対応した意匠を表現することができる。例えば、住宅用の門袖塀とする場合には、住宅外壁の割り肌調の意匠に合うように、表面加工を施して質感を合わせることができる。また、適度な視認性を確保するための開口部を設けることも容易であり、意匠性に優れている。
【0047】
また、上記パネルは、コンクリートパネルからなることが好ましい(請求項10)。
施工基準面の振動に伴うパネルの振動は、重量物であるほど、慣性力が発生して曲げ変形が生じる。そのため、上記パネルがコンクリートパネルからなる場合には、振動の増幅の抑制効果が大きい。
【0048】
また、上記パネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記制振自立塀を組み立てる際に、上記小ブロック単位で行うことができるため、施工性を向上することができる。
【0049】
また、上記制振自立塀は、高さが1.0m以上であることが好ましい(請求項12)。
共振が発生する場合には、上記制振自立塀の高さが高いほど揺れが大きくなる。そのため、高さが1.0m以上である場合には効果的である。特に、上記制振自立塀の高さは、1.5m以上である場合には非常に効果的である。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
本例は、本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図1〜図8を用いて説明する。
同図に示すごとく、本例の制振自立塀1は、間隔を置いて立設された3本の支柱2の間にパネル3を固定してなる制振自立塀1である。
【0051】
上記支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有している。上記パネル3は、軽量発泡コンクリートパネル(ALCパネル)からなり、その両側端面である小口面301に内方に凹んだスリット302を有している。上記制振自立塀1は、上記スリット302にそれぞれ上記支柱2の上記側片202を差し込むことにより固定してある。
以下、これを詳説する。
【0052】
図1及び図2に示すごとく、本例の制振自立塀1は直線形状であり、2枚のパネル3を直線つなぎ部11において直線状につないである。3本の支柱2a〜2cを直線状に等間隔に配置した。
また、図3に示すごとく、上記粘着弾性体4は、上記スリット302に差し込まれる側片202内に介在されている。
【0053】
支柱2としては、T字鋼201となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理し、図4〜図6に示すように、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘弾性体4を介在させて組み合わせたものを用いた。上記粘着弾性体4としては、ブチルゴム板材を用いた。
【0054】
また、各側片202のサイズは、厚みDは4.5mm、幅Wは60mmであり、支柱高さHは後述するごとく位置によって変化させ、1500mm、1350mmの2種類とした。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から10mm〜210mmの範囲に配設している。上記粘着弾性体の厚みLは2mm、幅Mは50mm、高さNは200mmである。
支柱2の下端には、ベースプレート203を溶接により接合し、このベースプレート203によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0055】
また、上記パネル3としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているブロック303を用いた。各ブロック303は、図1及び図2に示すごとく、およそ厚みdは100mm、幅wは880mm、高さhは300mmであり、小口面301に設けたスリット302の幅aは12mm、深さbは80mmとした。
【0056】
また、制振自立塀1がウェーブ形状12を有するように、一端のパネル3の上端のブロック30には、所定位置に加工を施した。そして、その形状に合わせて、各支柱2の高さを変化させてある。また、制振自立塀1が開口部13を有するように、該当するブロック303の所定位置に加工を施した。また、各パネル3は、割り肌調の質感を有するように表面に加工を施した。
【0057】
次に、施工について説明する。
まず、図7に示すごとく、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱2のベースプレート203を所定の位置に合わせてアンカーボルト204に固定した。支柱2の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱2に大きな倒れがないことを確認した。
【0058】
全ての支柱2を固定した後、仮固定した桟をはずし、支柱2の側片202にシリコンシーラントを塗布した。その後、図7に示すように、小ブロック形状のパネル3を上部より差し込むように順次積み上げていった。上記シリコンシーラントは、パネル3と支柱2を確実につなぐよう十分量を塗布した。
【0059】
また、制振自立塀1において、端の支柱2には、一端にスリット302を有するALCからなる別部材14をシリコンシーラントを用いて接着した。
また、パネル3同士のツナギにもシリコンシーラントを使用し、パネル3の一体化を図った。さらに、支柱2とパネル3との板間の隙間にはコーキング処理を施した。十分に養生した後、ALCを下地として樹脂系塗り材によるクシメ調の塗り仕上げを行った。
【0060】
次に、作用効果ついて説明する。
本例の制振自立塀1は、上記のごとく、上記支柱2は、2つのT型鋼201の互いの背面205同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片202を備えた形状を有している。
これにより、図8に示すように、S方向の振動によって揺れが生じ、上記2つのT字鋼201が互いにT方向にせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0061】
また、全体の断面が略十字型の支柱2と、スリット302を備えたパネル3とを組み合わせた構造を有している。そのため、支柱2の露出を極力抑えることができ、塗り仕上げへの影響が小さくなると共に、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
【0062】
また、上記パネル3のスリット302に上記支柱2の上記側片202を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。特に、本例のパネル3は、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されている。そのため、上記パネル3のスリット302を上記支柱間に差し込む際に、上記小ブロック単位で上部より容易に落とし込むことができるため、施工性が向上した。
また、パネル3は両端を支柱2で固定してあり、その支柱2の高さはパネル3の全体の高さにほぼ合致しているため、上記小口面301全面で荷重を受けることになり、制振自立塀1は曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【0063】
また、パネル3は、上記ウェーブ形状12や、上記開口部13を有しているため、適度な視認性を確保することができる。また、表面は、住宅外壁と質感を合わせて割り肌調に加工してあるため、意匠性に優れている。
【0064】
また、上記スリット302に挿入されていない上記側片202と、側片202に対面する上記小口面301との間隙は弾性接着部材としてシリコンシーラントを埋めて固定してある。これにより、上記粘着弾性体4による効果を阻害することなく、上記支柱2と上記パネル3とを良好に固定することができる。
【0065】
(実施例2)
本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図9〜図16を用いて説明する。
本例の制振自立塀102は、同図に示すごとく、間隔を置いて立設された複数の支柱5の間にパネル6を固定してなる制振自立塀102である。
上記支柱5は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板51を有してなり、該外接板51は、隣り合う2枚の上記パネル6の境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されている。
【0066】
上記パネル6は、ALCパネルからなり、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルト61を、上記支柱5の上記外接板51と離隔した位置に複数配設してある。
上記各ボルト61には、それぞれ止め金具52が固定され、該止め金具52が上記外接板51の外側面に当接することによって、上記パネル6が上記外接板51に当接した状態で拘束されている。
そして、図12〜図14に示すごとく、上記止め金具52と上記外接板51との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。
以下、さらに詳説する。
【0067】
図9〜図11に示すごとく、本例の制振自立塀1はL字形状であり、3枚のパネル6を、直線つなぎ部62において直線状につなぎ、その一端のパネルと他のパネルを入隅つなぎ部63において直角につないである。
【0068】
本例の制振自立塀102に用いる支柱5としては、上記直線つなぎ部62には、図15に示す、平板状の上記外接板51と、その中央部から内側に伸びて2枚の上記パネルの間に挟まれる仕切り板54とよりなる断面T形状を有している支柱501(501a〜501d)を用いた。また、上記入隅つなぎ部には、図16に示す、上記外接板51が入隅つなぎの外側形状に対応した断面L字形状を有している支柱502を用いた。
上記支柱5は、外接板及び仕切り板となる鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
支柱の下端には、基部53を溶接により接合し、この基部によって、後述するごとく基礎を固定する。
【0069】
上述の3本の支柱501a〜501cをそれぞれの外接板51が直線状に並ぶように等間隔で配置し、その直線上に上述の支柱502を外接板51の一辺が位置するように配置した。1本の支柱501dは、支柱502の外接板の角部を中心にして、支柱501dの外接板と他の支柱501a〜501cの外接板とが直角の関係になる位置に配置した。
【0070】
また、図15に示すごとく、支柱501の高さH2は750mm、支柱501の外接板51のサイズは、厚みD3は8mm、幅W3は100mm、仕切り板54のサイズは、厚みD2は5.5mm、幅W2は92mmとした。また、図16に示すごとく、支柱502の高さH3は750mm、外接板51のサイズは、厚みD4は4.5mm、幅W4は155mmとした。
【0071】
上記パネル6としては、縦貼り用のもの、つまり、高さ方向に分割されていない1枚のものを用いた。各パネル6は、図11に示すごとく、およそ厚みd2は100mm、幅w2は600mm、高さh2は1500mmとした。また、上記入隅つなぎ部63において、直角に配された2枚の上記パネル6には、互いに対面する傾斜小口面64を設けてある。また、内側面の複数箇所にボルト61の座繰り穴65を設け、ボルト61を内側面から外側面に貫通させ突出させたものを用いた。
【0072】
また、制振自立塀102がウェーブ形状66を有するように、両端のパネルの上端には、所定位置に加工を施した。また、制振自立塀が開口部67を有するように、該当するパネル6の所定位置に加工を施した。また、パネル6は、割り肌調の質感を有するように表面に加工を施した。
【0073】
次に、施工方法について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱5の基部53を施工基準面に所定の位置に合わせてアンカーボルト55を用いて固定した。支柱5の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱5に大きな倒れがないことを確認した。
【0074】
全ての支柱5を固定した後、仮固定した桟をはずし、固定した支柱5の外接板51の内側面及び仕切り板にシリコンシーラントを塗布した後、パネル6を支柱5に密接するように縦貼りで立設した。そして、パネル6側に既に固定されているボルト61に、止め金具52としてZ型金物を取り付け、該止め金具52と上記支柱5の外接板51との間に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘弾性体4を介在させて、上記止め金具52を上記外接板51の外側面に当接し、ボルト61を締め付けて支柱5とパネル6とを固定した。
上記粘着弾性体としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記止め金具52と上記外接板51の外側面との間全面に配設している。図12に示すごとく、上記粘着弾性体の厚みL2は2mm、幅M2は30mm、高さN2は30mmである。
【0075】
また、制振自立塀102の両端には、幅方向中央の複数箇所にボルト61の座繰り穴65を設け、ボルト61を内側面から外側面に貫通させ突出させた、ALCからなる別部材68を取り付けた。上記パネル6の固定方法と同様に、ボルト61に止め金具52を取り付け、上記支柱5の外接板51との間に粘着弾性体4を配設して、制振自立塀102の両端に位置する支柱501a、501dの外接板51の外側面に、当接し、ボルト61を締め付けて支柱501a、501dに別部材を固定した。
【0076】
また、パネル6同士の間隙を埋めるため、パネル6間の間隙にコーキング処理を施した。
十分に養生した後、ALCを下地として樹脂系塗り材によるクシメ調の塗り仕上げを行った。その際、上記ボルト61の座繰り穴65も同様の塗り剤を用いて埋め込み、平滑な面状とした。
【0077】
次に、作用効果について説明する。
本発明の制振自立塀102は、上述のごとく、上記止め金具52と上記外接板51との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記止め金具52又は上記パネル6と上記外接板51が互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
本例においては、上記粘着弾性体4は、止め金具52と外接板51との間に介在させたが、パネル6と外接板51との間に介在させても、同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、パネル6の上記外側面に、支柱5、ボルト61、止め金具52が存在するように固定され、上記パネル6の内側面においてはパネル6以外の露出を最低限に抑えられている。そのため、少なくとも内側面においてデザインの統一感を演出することができた。さらに、内側面にはボルト61の座繰り穴65を設け、塗り剤等を塗りこむことで意匠性が向上した。
【0079】
また、パネル6は、上記ウェーブ形状66や、上記開口部67を有しているため、適度な視認性を確保することができる。また、表面は、住宅外壁と質感を合わせて割り肌調に加工してあるため、意匠性に優れている。
【0080】
また、上述したように、上記パネル6の内側面から外側面に貫通させ突出させたボルト61に固定した止め金具52を、上記外接板51の外側面に当接することによって、上記パネル6が上記外接板51に当接した状態で拘束することができるため、容易に施工することができた。
【0081】
また、制振自立塀102は、上記支柱501及び上記支柱502を有している。そのため、直線つなぎ部分62と入隅つなぎ部分63を安定、且つ容易に固定することができ、L字形状の制振自立塀102を容易に立設することができる。
また、入隅つなぎ部分63において、内側面における、パネル6以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。
また、入隅つなぎ部分63において、直角に配された2枚の上記パネル6には、互いに対面する傾斜小口面64を設けてあるため、入隅つなぎ部分63におけるパネル6の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。
【0082】
また、支柱5の外接板51が隣り合う2枚の上記パネル6の境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されるため、十分な曲げ強度や圧縮強度を得ることができる。
【0083】
(実施例3)
本例の制振自立塀105は、図17に示すごとく、実施例2の入隅つなぎ部分63を出隅つなぎ部分69に変えた構造とした例である。他の構造は実施例2と同様である。
この出隅つなぎ部分69には、図18に示す、上記外接板が出隅つなぎの外側形状に対応した断面L字形状を有する支柱503を用いて行った。また、上記出隅つなぎ部分69において、直角に配された2枚の上記パネル6は、互いに対面する傾斜小口面64を設けてある。
そして、上記止め金具と上記外接板との間の全面に上記粘弾性体(厚み2mm)を介在させている。
【0084】
本例の制振自立塀105の場合には、上記出隅つなぎ部分69において、内側面における、パネル6以外の露出を殆ど抑えることができるため、優れた意匠性を得ることができる。
また、出隅つなぎ部分69において、直角に配された2枚の上記パネルには、互いに対面する傾斜小口面64を設けてあるため、出隅つなぎ部分69におけるパネル6の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。その他は、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(実施例4)
本例の制振自立塀は、図19〜図21に示すごとく、間隔を置いて立設された3本の支柱71の間にパネル72を固定してなる制振自立塀106である。
同図より知られるごとく、上記支柱71は、フランジ711部とウェブ712とからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部711と上記ウェブ712とが形成する凹溝713に上記パネル72をはめ込むことにより該パネル72と上記支柱71とを係合させるよう構成されている。図20に示すように、上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に粘着弾性体4を介在させている。
【0086】
図19に示すごとく、本例の制振自立塀1は直線形状であり、2枚のパネルを直線つなぎ部73において直線状につないである。3本の支柱71a〜71cを直線状に等間隔に配置した。
【0087】
支柱71としては、H型鋼となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
また、図21に示すごとく、支柱71の高さH4は2400mm、支柱71のフランジ711部のサイズは、厚みD5は6mm、幅W5は100mm、ウェブ712のサイズは、厚みD6は8mm、幅W6は100mmとした。
支柱71の下端には、ベースプレート74を溶接により接合し、このベースプレート74によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0088】
また、上記パネル72としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているコンクリートパネルを用いた。各ブロックは、図19に示すごとく、およそ厚みd3は100mm、幅w3は1800mm、高さh3は600mmである。
【0089】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱のベースプレート74を所定の位置に合わせてアンカーボルト75に固定した。支柱71の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱71に大きな倒れがないことを確認した。
【0090】
全ての支柱71を固定した後、仮固定した桟をはずし、小ブロック形状のパネルを上部より差し込むように順次積み上げていった。このとき、粘着弾性体4自身の接着力を利用して、上記支柱71の上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させた。上記粘着弾性体は、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から400mmの範囲に配設している。上記粘着弾性体の厚みL4は3mm、幅M3は50mm、高さN3は400mmである。
【0091】
また、制振自立塀106において、端の支柱には、ALCからなる別部材76をシリコンシーラントを用いて接着した。
また、パネル72同士のツナギにもシリコンシーラントを使用し、パネルの一体化を図った。
【0092】
次に、作用効果について説明する。
本例の制振自立塀106の場合には、上述したように、せん断力がかかり易い上記フランジ部711と上記パネル72との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記フランジ部711と上記パネル72とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0093】
また、H型鋼を支柱として、その間にパネル72を差し込んで組み立てる構造を採用している。H型鋼を用いることにより十分な強度を得ることができ、経済的であり、施工も容易であり、また、特にパネル自体を加工することもなく施工することができるため、施工性に優れ、十分な強度を有することができる。
【0094】
(実施例5)
本例の制振自立塀は、図22〜図25に示すごとく、間隔を置いて立設された3本の支柱81を介してパネル82を固定してなる制振自立塀107である。
同図より知られるごとく、上記支柱81は、四角形の断面形状を有する角型鋼811と、該角型鋼811と上記パネル82とを連結する断面L字状の連絡金具812とよりなり、上記角型鋼811の一面に上記パネル82を当接し、他面と上記パネル82とを上記L字状の連絡金具812により連結することにより固定するよう構成されている。図23に示すごとく、上記角型鋼811又は上記パネル82と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。
【0095】
図22に示すごとく、本例の制振自立塀107は直線形状であり、2枚のパネルを直線つなぎ部83において直線状につないである。3本の支柱を直線状に等間隔に配置した。
支柱81としては、四角形の断面形状を有する角型鋼811となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。また、図25に示すごとく、支柱81の高さH5は1800mm、厚みD7は2.3mm、幅W7は60mmとした。
支柱81の下端には、ベースプレート84を溶接により接合し、このベースプレート84によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0096】
また、上記パネル82としては、縦貼り用のもの、つまり、高さ方向に分割されていない1枚のもののコンクリートパネルを用いた。各パネル82は、図22に示すごとく、およそ厚みd4は100mm、幅w4は600mm、高さh4は1800mmとした。
【0097】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱のベースプレート84を所定の位置に合わせてアンカーボルト85に固定した。支柱81の固定にあたっては、支柱間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱に大きな倒れがないことを確認した。
【0098】
全ての支柱81を固定した後、仮固定した桟をはずし、上記角型鋼811の一面と上記パネル82との間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して粘着弾性体4を介在させて、上記パネル82を上記支柱81に密接するように縦貼りで立設した。そして、上記角型鋼の一面と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して上記粘着弾性体4を介在させ、図24に示すように、上記連絡金具812に設けられたルーズホール87とボルト88を用いて支柱81とパネル82とを固定した。同図に示すように、上記ルーズホール87は、縦方向に大きめにあけた穴であるため、振動によって揺れが生じる時には、ボルト88が縦方向に変位を発生するように構成されている。
【0099】
上記粘着弾性体としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から200mmの範囲に配設している。上記角型鋼811の一面と上記パネル82との間の粘着弾性体の厚みL4は2mm、幅M4は50mm、高さは200mmである。上記角型鋼の一面と上記連絡金具812との間の粘着弾性体の厚みL5は2mm、幅M5は50mm、高さは200mmである。
また、制振自立塀107において、端の支柱81には、ALCからなる別部材86を上記パネル82と同様の方法で固定した。
【0100】
次に、作用効果について説明する。
本例の制振自立塀107の場合には、上述したように、せん断力がかかり易い上記角型鋼811上記連絡金具812との間、及び上記パネル82と上記連絡金具812との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体4を介在させている。これにより、振動によって揺れが生じ、上記角型鋼811又は上記連絡金具812と上記パネル82とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0101】
(実施例6)
本発明の制振自立塀にかかる実施例について、図26を用いて説明する。
本例の制振自立塀は、間隔を置いて立設された複数の支柱94の間にパネル97を固定してなる制振自立塀である。
【0102】
上記支柱94は、四角形の断面形状を有する角型鋼95と該角型鋼95に固着されたカバープレート96よりなり、上記パネル97は、軽量発泡コンクリートパネル(ALCパネル)からなる。上記角型鋼95の一面に上記パネル97の小口面98を当接し、上記角型鋼95に固着されたカバープレート96と上記パネル97とを係合することにより固定するよう構成されている。
図26に示すように、上記カバープレート96と上記パネル97との間の少なくとも一部には、粘着弾性体4が介在させてある。
【0103】
本例の制振自立塀は直線形状であり、2枚のパネル97を直線状につないである。
支柱94の角型鋼95としては、四角形の断面形状を有する角型鋼となるよう鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。
角型鋼95の下端には、ベースプレートを溶接により接合し、このベースプレートによって、後述するごとく基礎と固定する。
また、上記パネル97としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているブロックを用いた。
【0104】
次に、施工について説明する。
まず、コンクリートにて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、上記ベースプレートを所定の位置に合わせてアンカーボルトに固定した。角型鋼5の固定にあたっては、角型鋼間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、角型鋼に大きな倒れがないことを確認した。
【0105】
全ての角型鋼95を固定した後、仮固定した桟をはずし、上記角型鋼95の一面に上記パネル97の小口面98を当接し、上記角型鋼95に板状のカバープレート96を溶接により固着した。このとき、上記カバープレート96と上記パネル97との間の一部に、粘着弾性体4自身の接着力を利用して粘着弾性体4を介在させた。
上記粘着弾性体4としては、ブチルゴム板材を用いた。また、上記粘弾性体4は、厚みL6は3mm、幅M6は上記カバープレート96と上記パネル97との間の長さに合わせ、上記制振自立塀の上端から300mmの範囲に配設している。
【0106】
次に、作用効果ついて説明する。
本例の制振自立塀は、上記のごとく、上記カバープレート96と上記パネル97との間の少なくとも一部に上記粘弾性体4を介在させている。
これにより、振動によって揺れが生じ、上記カバープレート96と上記パネル97とが互いにせん断力を発生し変位する場合に、上記粘弾性体4が、振動エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換することにより、振動の増幅を抑制することができる。
【0107】
(実験例)
次に、本発明の振動の増幅を抑制する効果について、図27及び図28を用いて一例を示す。
本例は、上述の実施例1と同様の方法で制振自立塀を作製し、1軸加震実験を行うことにより、振動の増幅を抑制する効果を評価した。
【0108】
図27に示すごとく、上述した実施例1と同様の方法で、加震台99上に間隔を置いて立設された2本の支柱2の間にパネル3を固定してなる制振自立塀109を作製した。
なお、本例の制振自立塀109は、幅w5は900mm、高さh5は1500mm、厚みd7は100mmである。粘着弾性体4は、幅70mm、高さ200mm、厚み3mmとし、制振自立塀109の上端から20mm〜220mmの範囲に配設した。
【0109】
1軸加震実験は、図27に示すように、加震台99上に制振自立塀109を立設し、該制振自立塀109に対して符号Xの方向に600galの負荷(震度7に相当する烈震)を与えた時の、上記制振自立塀109の支柱2(上端から1470mmの位置)の加速度を測定することにより行った。
【0110】
また、比較のために、上記粘着弾性体を配設していない非制振自立塀を作製し、同様に1軸加震実験を行った。
そして、図28に1軸加震実験の結果を示す。図28は、横軸を時間、縦軸を振幅とした。同図における符号Eは制振自立塀の揺れを示し、符号C1は非制振自立塀の揺れを示し、符号C2は加震台の揺れを示す。
【0111】
図28より知られるごとく、本発明の制振自立塀の揺れは、加震台の揺れに対して約2倍に増幅されており、比較例としての非制振自立塀の揺れは、加震台の揺れに対して約4倍に増幅されている。これより、本発明によれば、振動の増幅を抑制することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例1における、制振自立塀を示す説明図。
【図2】実施例1における、制振自立塀を示す上面図。
【図3】実施例1における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図4】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図5】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図6】実施例1における、支柱を示す説明図。
【図7】実施例1における、制振自立塀の施工方法を示す側面図。
【図8】実施例1における、粘着弾性体の作用効果を示す説明図。
【図9】実施例2における、制振自立塀を示す説明図。
【図10】実施例2における、制振自立塀を示す上面図。
【図11】実施例2における、制振自立塀を示す説明図。
【図12】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図13】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図14】実施例2における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図15】実施例2における、支柱を示す説明図。
【図16】実施例2における、支柱を示す説明図。
【図17】実施例3における、制振自立塀を示す説明図。
【図18】実施例3における、支柱を示す説明図。
【図19】実施例4における、制振自立塀を示す説明図。
【図20】実施例4における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図21】実施例4における、支柱を示す説明図。
【図22】実施例5における、制振自立塀を示す説明図。
【図23】実施例5における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図24】実施例5における、支柱とパネルとの固定部分を示す説明図。
【図25】実施例5における、支柱を示す説明図。
【図26】実施例6における、粘着弾性体の配設部分を示す拡大図。
【図27】実験例における、1軸加震実験を示す説明図。
【図28】実験例における、1軸加震実験の結果を示す図。
【符号の説明】
【0113】
1 制振自立塀
2 支柱
201 T型鋼
202 側片
3 パネル
301 小口面
302 スリット
4 粘着弾性体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であって、
上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端であり、
上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設したことを特徴とする制振自立塀。
【請求項2】
請求項1において、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有してなり、上記パネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることを特徴とする制振自立塀。
【請求項3】
請求項2において、上記粘着弾性体は、上記スリットに差し込まれる側片内に介在されていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項4】
請求項1において、上記支柱は、フランジ部とウェブとからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部と上記ウェブとが形成する凹溝に上記パネルをはめ込むことにより該パネルと上記支柱とを係合させるよう構成されており、上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項5】
請求項1において、上記支柱は、四角形の断面形状を有する角型鋼と、該角型鋼と上記パネルとを連結する連絡金具とよりなり、上記角型鋼の一面に上記パネルを当接し、他面と上記パネルとを上記連絡金具により連結することにより固定するよう構成されており、上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させることを特徴とする制振自立塀。
【請求項6】
請求項1において、上記支柱は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板を有してなり、該外接板は、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されており、上記パネルには、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルトを、上記支柱の上記外接板と離隔した位置に複数配設してあり、上記各ボルトには、それぞれ止め金具が固定され、該止め金具が上記外接板の外側面に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束されており、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させることを特徴とする制振自立塀。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記粘弾性体は、ブチルゴム、アスファルト、またはシリコンであることを特徴とする制振自立塀。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から少なくとも300mmの範囲に配設していることを特徴とする制振自立塀。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記パネルは、軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)であることを特徴とする制振自立塀。
【請求項10】
請求項1〜8において、上記パネルは、コンクリートパネルからなることを特徴とする制振自立塀。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、上記パネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、上記制振自立塀は、高さが1.0m以上であることを特徴とする制振自立塀。
【請求項1】
間隔を置いて立設された複数の支柱を介してパネルを固定してなる自立塀であって、
上記支柱は、下端が施工基準面に固定された固定端であると共に、上端が自由端であり、
上記支柱の内部、あるいは上記支柱と上記パネルとが対面する部分の少なくとも一部に、上記施工基準面の振動に伴って上記パネルが振動することを抑制するための粘弾性体を配設したことを特徴とする制振自立塀。
【請求項2】
請求項1において、上記支柱は、2つのT型鋼の互いの背面同士の間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させて組み合わせて、全体の断面形状が略十字型となるよう互いに略直角をなす4枚の側片を備えた形状を有してなり、上記パネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることを特徴とする制振自立塀。
【請求項3】
請求項2において、上記粘着弾性体は、上記スリットに差し込まれる側片内に介在されていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項4】
請求項1において、上記支柱は、フランジ部とウェブとからなるH型鋼よりなり、上記フランジ部と上記ウェブとが形成する凹溝に上記パネルをはめ込むことにより該パネルと上記支柱とを係合させるよう構成されており、上記フランジ部と上記パネルとの間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項5】
請求項1において、上記支柱は、四角形の断面形状を有する角型鋼と、該角型鋼と上記パネルとを連結する連絡金具とよりなり、上記角型鋼の一面に上記パネルを当接し、他面と上記パネルとを上記連絡金具により連結することにより固定するよう構成されており、上記角型鋼又は上記パネルと上記連絡金具との間の少なくとも一部に上記粘着弾性体を介在させることを特徴とする制振自立塀。
【請求項6】
請求項1において、上記支柱は、上記施工基準面に固定された固定端から上方に立設した外接板を有してなり、該外接板は、隣り合う2枚の上記パネルの境界部分の少なくとも一部をその外側面から覆うように構成されており、上記パネルには、その内側面から外側面に貫通させ突出させたボルトを、上記支柱の上記外接板と離隔した位置に複数配設してあり、上記各ボルトには、それぞれ止め金具が固定され、該止め金具が上記外接板の外側面に当接することによって、上記パネルが上記外接板に当接した状態で拘束されており、上記止め金具又は上記パネルと上記外接板との間の少なくとも一部に上記粘弾性体を介在させることを特徴とする制振自立塀。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記粘弾性体は、ブチルゴム、アスファルト、またはシリコンであることを特徴とする制振自立塀。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記粘弾性体は、上記制振自立塀の上端から少なくとも300mmの範囲に配設していることを特徴とする制振自立塀。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記パネルは、軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)であることを特徴とする制振自立塀。
【請求項10】
請求項1〜8において、上記パネルは、コンクリートパネルからなることを特徴とする制振自立塀。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、上記パネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることを特徴とする制振自立塀。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、上記制振自立塀は、高さが1.0m以上であることを特徴とする制振自立塀。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2008−266950(P2008−266950A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109812(P2007−109812)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(591196751)旭中部資材株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(591196751)旭中部資材株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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