説明

剥離シートの製造方法および粘着シートの製造方法

【課題】被着体に貼着した際に溝が視認されにくく、溝への水滴の浸入を防止でき、しかも空気除去性が高い粘着シートを得るための剥離シートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の剥離シート20の製造方法は、少なくとも片面が剥離面20aとされた剥離性基材20dを加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材20dの剥離面20aに、エンボス形成体(エンボスロール120)のエンボス面121を押し付けるエンボス加工工程とを有し、剥離性基材20dとして、剥離シート用支持体と、該剥離シート用支持体の少なくとも片面に設けられた熱可塑性樹脂層とを有し、該熱可塑性樹脂層の露出面が剥離面20aにされたものを用い、エンボス加工工程におけるエンボス形成体(エンボスロール120)として、エッチングによりエンボス面121を形成したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光学用途や表示用途に使用される粘着シートを製造する方法、その粘着シートを得るための剥離シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材または樹脂フィルム等の基材上に粘着剤層が設けられた粘着シートは様々な用途で使用されており、近年では、ディスプレイ等の光学用途、広告や案内等の表示用途などにも使用されている。
ところで、粘着シートを被着体に貼付した際には、空気を巻き込み、被着体と粘着剤層との間に空気溜まり、いわゆる「膨れ」が形成されやすく、外観を損ねるという問題がある。そのため、粘着シート、特に光学用途および表示用途においては、見栄えの点から、「膨れ」の形成防止が要求されている。その要求に対し、粘着剤層に外部に連通する細かな溝を形成することがある。粘着剤層に溝が形成されていれば、粘着シートを被着体に貼着する際に巻き込む空気を、溝を介して外部に逃がして除去することができる。
粘着剤層に溝を形成する方法としては、例えば、特許文献1に、線状の凸部が設けられたエンボス面を備えた剥離シートに、粘着剤を塗工して粘着剤層を形成し、該粘着剤層の剥離シートと反対側の面に粘着シート用支持体を貼着する方法が開示されている。また、特許文献1には、前記エンボス面を備えた剥離シートを、彫刻によってエンボス面が形成された金属製エンボスロールと、周面が平滑なゴムロールとの間に剥離性基材を通過させることによって製造することが開示されている。
特許文献2には、剥離シートの製造方法として、あらかじめ加熱したプラスチックフィルムに、切削によりエンボス面を形成したエンボスロールを接触させることによりエンボス加工する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−507732号公報
【特許文献2】特表2001−518404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1,2における剥離シートにより得た粘着シートを被着体(特にガラス等の透明材料)に貼着した際には、粘着剤層の空気除去用の溝が視認されることがあった。また、粘着剤層の溝に雨水や結露水等が浸入して、粘着シートの粘着性を低下させることがあった。そこで、粘着剤層の溝を見えにくくし、溝への水滴の浸入を防止するために、溝を少なくすると、空気の除去性が低くなる傾向にあった。
本発明は、被着体に貼着した際に溝が視認されにくく、溝への水滴の浸入を防止でき、しかも空気除去性が高い粘着シートを製造できる粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。また、上記のような粘着シートを容易に製造できる剥離シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、粘着剤層の溝を細くすればよいことを見出した。そして、そのためには、剥離シートの凸部を細くすることが必要であることを見出し、凸部を細くする具体的手段を検討した。その結果、以下の剥離シートの製造方法および粘着シートの製造方法を発明した。
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 少なくとも片面が剥離面とされた剥離性基材を加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材の剥離面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けるエンボス加工工程とを有し、
剥離性基材として、剥離シート用支持体と、該剥離シート用支持体の少なくとも片面に設けられた熱可塑性樹脂層とを有し、該熱可塑性樹脂層の露出面が剥離面にされたものを用い、
エンボス加工工程におけるエンボス形成体として、エッチングによりエンボス面を形成したものを用いることを特徴とする剥離シートの製造方法。
[2] 熱可塑性樹脂層からなる剥離性基材を加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材の少なくとも片面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けるエンボス加工工程とを有し、
エンボス加工工程におけるエンボス形成体として、エッチングによりエンボス面を形成したものを用いることを特徴とする剥離シートの製造方法。
[3] 粘着剤層および粘着シート用支持体を有する粘着シート本体と、該粘着シート本体の粘着剤層側に設けられた剥離シートとを備える粘着シートの製造方法において、
剥離シートとして、[1]または[2]に記載の剥離シートの製造方法により製造した剥離シートを用いることを特徴とする粘着シートの製造方法。
[4] 剥離シートの剥離面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、該粘着剤層の剥離シートと反対側の面に粘着シート用支持体を貼着する[3]に記載の粘着シートの製造方法。
【0007】
本発明で得られる粘着シートは、粘着シート用支持体と、該粘着シート用支持体の少なくとも片面に設けられ、溝および溝以外のランド部を有する粘着剤層とを備え、各ランド部の面積が1×10〜2×10μmのものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着シートの製造方法によれば、被着体に貼着した際に溝が視認されにくく、溝への水滴の浸入を防止でき、しかも空気除去性が高い粘着シートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の粘着シートの製造方法の第1の実施形態で製造される粘着シートを示す部分断面図である。
【図2】本発明の粘着シートの製造方法の第1の実施形態および第2の実施形態で製造される粘着シートの凹凸面を示す部分平面図である。
【図3】粘着剤層の溝の深さおよび幅の測定方法について説明する図である。
【図4】本発明の剥離シートの製造方法の第1の実施形態例および第2の実施形態で使用される製造装置を示す模式図である。
【図5】本発明の粘着シートの製造方法の第1の実施形態における一工程を説明する部分断面図である。
【図6】本発明の粘着シートの製造方法の第2の実施形態で製造される粘着シートを示す部分断面図である。
【図7】本発明の粘着シートの製造方法の他の実施形態で製造される粘着シートの凹凸面を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
本発明の粘着シートの製造方法および剥離シートの製造方法の第1の実施形態について説明する。
図1に、第1の実施形態の製造方法で製造される粘着シートを示す。本実施形態の製造方法で製造される粘着シート1は、粘着シート本体10と剥離シート20とを備える。
【0011】
(粘着シート本体)
粘着シート本体10は、粘着シート用支持体11と、剥離シート20の剥離面20aに接する粘着剤層12とからなる。粘着剤層12の剥離シート20側の面12aは、図2に示すように、溝12bと、溝12b以外のランド部12cを有している。以下、粘着剤層12の溝12bが形成された面12aのことを「凹凸面12a」という。
【0012】
[凹凸面]
凹凸面12aの溝12bおよびランド部12cは、剥離シート20の剥離面20aに形成された凹凸が転写されて形成されている。なお、剥離シート20の剥離面20aの凹凸については後述する。
本実施形態では、図2に示すように、粘着剤層12の溝12bは、平行に配列した溝12bと、溝12bに対して斜めに交差して斜め格子状のパターンとされた溝12b,12bとを有している。溝12bは、溝12bと溝12bとの交点Cを通過して、粘着剤層12の、溝12bと溝12bとで囲まれた部分を横切るように配置されている。したがって、凹凸面12aにおいて、粘着剤層12のランド部12cは三角形になっている。
上記の溝12bでは、斜め格子状のパターンの溝12bおよび溝12bにより、粘着シート1を被着体に貼着した際の空気除去性をより高くでき、平行に配列した溝12bにより、ランド部12cに凹みが形成されることを防止できる。
溝12bは、空気除去性がより高くなることから、鮮明であり、途中で途切れていないことが好ましい。
【0013】
溝12bの深さは1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。溝12bの深さが1μm以上であれば、空気除去性をより高くでき、50μm以下であれば、被着体に貼着した際に溝12bがより視認されにくくなり、溝12bへの水滴の浸入をより防止できる。
【0014】
溝12bの深さは、以下の方法により測定される。
まず、凹凸面12aに対して垂直な面で切断して粘着剤層12の断面を得る。この断面において、5つのランド部12cを観察できるような正方形の領域を無作為に抽出し、レーザー顕微鏡で測定した断面イメージを得る。なお、断面イメージは、粘着剤層12の断面を垂直に見る方向から得る。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、レンズ倍率が200〜2000倍であることが好ましく、測定ピッチが150〜2000μmであることが好ましい。
そして、この断面イメージから、図3に示すhのデータを5つ読み取る。ここで、hは、任意のランド部12cの最上部Pと、該ランド部12cに隣接する溝12bの最下部Qの距離である。同様にして、合計5枚のレーザー顕微鏡のイメージから、各々5つ、全部で25個のhのデータを得る。その際に選択されるイメージの各領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることがより好ましい。
そして、2次元フーリエ変換像の赤道方向プロファイルを作成し、その一次ピークの逆数から、溝12bの深さを求める。
【0015】
溝12bの幅は5〜100μmであることが好ましく、8〜90μmであることがより好ましい。溝12bの幅が5μm以上であれば、空気除去性をより高くでき、100μm以下であれば、被着体に貼着した際に溝12bがより視認されにくくなり、溝12bへの水滴の浸入をより防止できる。
【0016】
溝12bの幅は、以下の方法により測定される。
まず、凹凸面12aにおいて、ランド部12c同士の間隔を5つ観察できるような一辺が5mm程度の正方形の領域を無作為に抽出し、その領域について、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)で測定したイメージを得る。なお、イメージは、粘着剤層12を垂直に見る方向から得る。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、溝12bの深さを測定する場合と同様である。
そして、このイメージから、図3に示す幅dのデータを5つ読み取る。ここで、幅dは、最も表面側での溝12bの幅である。
同様にして、合計5枚のレーザー顕微鏡のイメージから、各々5つ、全部で25個のdのデータを得る。そして、平均値を求めて、溝12bの幅を得る。
【0017】
溝12bのアスペクト比は0.2〜0.5であることが好ましい。ここで、溝12bのアスペクト比とは、溝12bの深さ/溝12bの幅のことである。溝12bのアスペクト比が0.2以上であれば、空気除去性がより向上する上に粘着性も向上し、0.5以下であれば、溝12bを容易に形成できる。
【0018】
溝12bの線数は40〜120lpiであることが好ましく、64〜100lpiであることが好ましい。ここで、線数の単位「lpi」とは、1インチ(1インチは約2.54cm)あたりの線の数のことである。溝12bの線数が40lpi以上であれば、空気除去性をより高くでき、120lpi以下であれば、充分な粘着性を確保できる。
【0019】
溝12bの面積比率は20〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。ここで、「溝12bの面積比率」とは、粘着剤層12の凹凸面12aにおいて、凹凸面12aの全面積を100%とした際の、溝12bの面積の比率のことである。溝12bの面積比率が20%以上であれば、空気除去性をより高くでき、70%以下であれば、被着体に貼着した際に溝12bがより視認されにくくなり、溝12bへの水滴の浸入をより防止できる。
【0020】
溝12bの面積比率は、以下の方法により測定される。
まず、粘着剤層12の凹凸面12aにおいて、一辺が5mm程度の正方形の領域を無作為に抽出し、その領域について、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)を用いてイメージを得る。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、溝12bの深さを測定する場合と同様である。
得られたイメージを、前記レーザー顕微鏡に付属のソフトウェアを利用して画像解析することにより、各イメージ全体の面積に対する溝12bの面積の比率を得る。
【0021】
ランド部12cの面積は1×10〜2×10μmであることが好ましく、1×10〜5×10μmであることがより好ましい。ランド部12cの面積が1×10μm以上である場合には、充分な粘着性を確保でき、2×10μm以下であれば、挟み込んだエアを容易に抜くことができるため、ランド部12cに凹みが形成されることを防止できる。
ランド部12cの体積は5×10〜8×10μmであることが好ましく、1×10〜1×10μmであることがより好ましい。
【0022】
[粘着シート用支持体]
粘着シート本体10を構成する粘着シート用支持体11としては、紙基材、樹脂フィルム等が挙げられる。得られる粘着シート1に透明性が求められる場合には、透明樹脂のフィルムを用いる。
透明樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、酢酸セルロース等が挙げられる。
紙基材としては、例えば、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、クラフト紙等が挙げられる。
また、粘着シート用支持体11として、蒸着紙、合成紙、布不織布、金属ホイル等も使用できる。
粘着シート用支持体11には、文字や図柄を印刷しても構わない。
【0023】
[粘着剤層]
粘着剤層12を形成する粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系、ウレタン系等の任意の粘着剤が使用できる。これらの中でも、耐候性、透明性等に優れ、広範な用途に使用できることから、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤としては、紫外線硬化型、電子線硬化型、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型等が挙げられるが、溝12bが鮮明に形成される上に、粘着剤層12の透明性、物性に優れる点では、溶剤型が好ましい。
溶剤型アクリル系粘着剤に含まれるアクリル重合体を形成するアクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシ基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0024】
アクリル系粘着剤は、アクリル重合体の他に、溝12bがより鮮明に形成されることから、架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられる。これら架橋剤の中でも、アクリル重合体を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
架橋剤の含有量は、架橋剤の種類に応じて適宜選択される。架橋剤の添加量を多くする程、溝12bの鮮明性が高くなる。ただし、架橋剤の添加量が多くなりすぎると、粘着剤層12の粘着性が低下する傾向にある。
【0025】
また、粘着剤層12には、粘着性微球体、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤等が含まれてもよい。
さらに、粘着剤層12には、粘着力の引張り速度依存性を変えたり、オレフィン系樹脂に対する接着性を向上させたりするために、タッキファイヤーを含有させることもできる。タッキファイヤーとしては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。被着体がポリオレフィンである場合には接着性が良好になるため、ロジン系樹脂が好ましい。ロジン系樹脂としては、ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等が挙げられる。
さらに、粘着剤層12には、界面活性剤を添加してもよい。
【0026】
粘着剤層12の乾燥塗布量は10〜200g/mであることが好ましく、15〜100g/mであることがより好ましく、20〜60g/mであることが特に好ましい。粘着剤層12の乾燥塗布量が10g/m以上であれば、粘着剤層12の粘着性を充分に確保でき、200g/m以下であれば、必要以上に粘着剤層12が厚くならないため、コストを軽減できる。
【0027】
(剥離シート)
粘着シート1を構成する剥離シート20は、剥離シート用支持体21と、剥離シート用支持体21の片面に設けられた熱可塑性樹脂層22とを有し、熱可塑性樹脂層22の粘着剤層12側の面が剥離面20aとされている。
【0028】
[剥離面]
剥離シート20の剥離面20aは、線状の凸部20bと、凸部20b以外の凹部20cとを有している。このような剥離面20aが接することによって、粘着剤層12に凸部20bの形状が転写されて溝12bが形成される。
剥離面20aにおける凸部20bのパターンは、粘着剤層12の溝12bと同様のパターンである。
【0029】
剥離シート20の凸部20bは、必ずしも粘着剤層12に完全に転写されない。
そのため、凸部20bの高さと粘着剤層12の溝12bの深さとは略同等ではあるが、凸部20bの高さは粘着剤層12の溝12bの深さよりも僅かに小さい。
また、凸部20bの幅と粘着剤層12の溝12bの幅とは略同等であるが、凸部20bの幅は粘着剤層12の溝12bの幅よりも僅かに小さい。
また、凸部20bのアスペクト比と粘着剤層12の溝12bのアスペクト比とは略同等であるが、凸部20bのアスペクト比と粘着剤層12の溝12bのアスペクト比とは必ずしも同じではない。
また、凸部20bの面積比率と粘着剤層12の溝12bの面積比率とは略同等であるが、凸部20bの面積比率は粘着剤層12の溝12bの面積比率よりも僅かに小さい。
【0030】
[剥離シート用支持体]
剥離シート用支持体21としては、例えば、樹脂フィルム、紙基材等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、酢酸セルロース等の樹脂のフィルムを用いることができる。ただし、剥離シート用支持体21が樹脂フィルムである場合には、支持体としての機能の点から、熱可塑性樹脂層22を構成する樹脂よりも融点が高いことが好ましい。
紙基材としては、例えば、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、グラシン紙等が挙げられる。
また、剥離シート用支持体21として、蒸着紙、合成紙、布不織布、金属ホイル等も使用できる。
【0031】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層22は熱可塑性樹脂を含む層である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂がポリエチレンやポリプロピレンである場合には剥離性を有するため、熱可塑性樹脂層22の露出面を剥離処理しなくても剥離面20aになるが、剥離性を有さない熱可塑性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂層22の露出面を剥離処理する。
剥離処理としては、熱可塑性樹脂層22の露出面を剥離性樹脂によって処理する方法が挙げられる。ここで、剥離性樹脂としては、例えば、シリコーン、ワックス、アルキッド樹脂、アルキッド変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フッ素樹脂などが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることもできる。
【0032】
[剥離シートの製造方法]
上記剥離シート20の製造方法について説明する。
本実施形態の剥離シート20の製造方法では、図4に示す製造装置100を用いる。
製造装置100は、剥離性基材20dを加熱する加熱機110と、加熱機110により加熱した剥離性基材20dを挟持するエンボスロール120およびゴムロール130とを具備する。ここで、剥離性基材20dは、剥離シート用支持体21と熱可塑性樹脂層22との積層体であって、表面に凹凸が形成されていないものである。
加熱機110としては、例えば、熱風加熱機、赤外線加熱機、火炎加熱機、マイクロ波加熱機等が挙げられる。
エンボスロール120は、周面にエンボス面121が設けられたロールである。エンボス面の詳細については後述する。
【0033】
上記製造装置100を用いた剥離シート20の製造方法は、剥離性基材20dを加熱機110により加熱する加熱工程と、加熱された剥離性基材20dにエンボスロール120を押圧するエンボス加工工程とを有する。
【0034】
本実施形態での加熱工程では、剥離性基材20dを、熱可塑性樹脂層22の露出面(剥離面20a)に対向するように配置された加熱機110によって加熱する。
加熱温度は、使用する剥離性基材20dにもよるが、例えば、80〜200℃とすることができる。
【0035】
本実施形態でのエンボス加工工程では、加熱した剥離性基材20dの熱可塑性樹脂層22の露出面に、エンボスロール120のエンボス面121を押し付け、転写させる。
エンボスロール120を剥離性基材20dに押し付ける圧力は5〜50N/cmであることが好ましい。圧力が5N/cm以上であれば、エンボスロール120のエンボス面121を剥離性基材20dに確実に転写できる。しかし、剥離性基材20dは熱可塑性樹脂層22に含まれる樹脂の粘弾性によって形状復元性を有するため、圧力50N/cmを超えて押圧しても、転写性の向上が頭打ちになる。したがって、無駄にエネルギーを消費するだけである。
【0036】
[エンボス面]
エンボスロール120のエンボス面121は、エッチングにより形成され、溝を有している。エンボス面121の溝のパターンは粘着シート1の溝12bおよび剥離シート20の凸部20bと同様である。
【0037】
エンボスロール120の溝は、必ずしも剥離シート20に完全に転写されない。
そのため、エンボスロール120の溝の深さと剥離シート20の凸部20bの高さとは略同等であるが、エンボスロール120の溝の深さは凸部20bの高さよりも僅かに大きい。
また、エンボスロール120の溝の幅と剥離シート20の凸部20bの幅とは略同等であるが、エンボスロール120の溝の幅は凸部20bの幅よりも僅かに小さい。
また、エンボスロール120の溝のアスペクト比と剥離シートの凸部20bのアスペクト比とは略同等であるが、エンボスロール120の溝のアスペクト比と剥離シート20の凸部20bのアスペクト比とは必ずしも同じではない。
また、エンボスロール120の溝の面積比率と剥離シート20の凸部20bの面積比率とは略同等であるが、エンボスロール120の溝の面積比率は剥離シート20の凸部20bの面積比率よりも僅かに小さい。
【0038】
エンボスロール120のエンボス面121を形成するためのエッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチングが挙げられ、中でも、ウェットエッチングが好ましい。また、ウェットエッチングの中でも、簡便に溝を細かく形成できることから、フォトリソグラフィを適用したエッチングが好ましい。
【0039】
フォトリソグラフィを適用したエッチングによるエンボスロール120の作製方法の一例について説明する。
この例では、まず、表面が平滑なエンボスロール形成用金属板の片面にポジ型レジスト層を形成し、そのポジ型レジスト層の上に、所定のパターンの開口部を有するマスクを配置する。その際に使用するマスクは、開口部のパターンがエンボスロール120の溝と同様のパターンになっており、上記エンボスロール120の溝の幅および面積比率になるように開口したものである。また、マスクの材質としては、例えば、クロム膜が設けられたガラス板、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属からなる金属板などが挙げられる。
次いで、紫外線を露光して、ポジ型レジスト層の、露光した部分をレジスト剥離液に可溶な状態にする。次いで、マスクを取り除いた後、レジスト剥離液によってポジ型レジスト層の露光した部分を溶解、除去する。次いで、金属腐食液を用いて、エンボスロール形成用金属板をエッチングし、エンボス面121を形成して、エッチング金属板を得る。そして、エッチング金属板を、エンボス面121が外側になるように支持ロールに巻き付けて、エンボスロール120にする。
【0040】
(粘着シートの製造方法)
本実施形態の粘着シート1の製造方法では、まず、図5に示すように、剥離シート20の凹凸のある剥離面20aに、粘着剤を塗布し、乾燥して、粘着剤層12を形成する。
粘着剤の塗布方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、カーテンコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
乾燥方法としては、熱風、赤外線等を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
【0041】
次いで、粘着剤層12の剥離シート20と反対側の面に粘着シート用支持体11を貼着して粘着シート本体10を得て、粘着シート1を得る。
なお、上記のように、剥離シート20上に形成した粘着剤層12を粘着シート用支持体11に積層する方法のことは一般に「転写法」と称されている。
本製造方法では、剥離シート20の凹凸のある剥離面20aに粘着剤を塗布するため、得られる粘着剤層12の剥離シート20側の面を凹凸面12aにできる。しかも、流動性を有する粘着剤を剥離シート20に塗布するため、剥離シート20の剥離面20aの凹凸パターンを粘着剤層12に高い転写精度で転写できる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の製造方法で製造される粘着シートについて説明する。本実施形態の製造方法で製造される粘着シート2は、図6に示すように、片面が剥離面30aにされた剥離シート30と、剥離シート30の剥離面30aに設けられた粘着シート本体10とを備える。
本実施形態で使用する粘着シート本体10は、第1の実施形態で使用する粘着シート本体10と同様のものである。
【0043】
(剥離シート)
第2の実施形態で使用する剥離シート30は、熱可塑性樹脂層からなる。また、剥離シート30の剥離面30aは、線状の凸部30bと、凸部30b以外の凹部30cを有している。凸部30bは、粘着剤層12の溝12bと同様のパターンで設けられている。
剥離シート30を構成する熱可塑性樹脂としては、具体的には、第1の実施形態で使用する熱可塑性樹脂層22を構成する熱可塑性樹脂と同様のものが使用される。また、剥離シート30の剥離面30aは、第1の実施形態での熱可塑性樹脂層22と同様に、必要に応じて、剥離処理が施されてもよい。
【0044】
上記剥離シート30を製造する際には、第1の実施形態と同様に、図4に示す製造装置100を用いる。
具体的には、加熱工程にて、剥離性基材30dを、剥離性基材30dの剥離面30aに対向するように配置された加熱機110によって加熱する。次いで、エンボス加工工程にて、加熱された剥離性基材30dの剥離面30aに、エンボスロール120のエンボス面121を押し付け、転写させて、剥離シート30を得る。
上記製造方法における剥離性基材30dは、第1の実施形態で使用される剥離シート20の熱可塑性樹脂層22と同様の熱可塑性樹脂層からなるシートであって、表面に凹凸が形成されていないものである。
また、加熱工程で使用する加熱機110およびエンボス加工工程で使用するエンボスロール120は第1の実施形態と同様のものを使用できる。また、エンボス加工条件も第1の実施形態と同様である。
【0045】
(粘着シートの製造方法)
上記粘着シート2を製造する方法は、剥離シート20の代わりに剥離シート30を用いたこと以外は第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0046】
<粘着シートの使用方法>
上記の粘着シート本体10および剥離シート20,30を備える粘着シート1,2は、剥離シート20,30を剥離して粘着シート本体10の粘着剤層12の凹凸面12aを露出させ、その凹凸面12aを被着体に貼着して使用される。その貼着の際には、粘着剤層12の溝12bを利用して、巻き込んだ空気を外部に逃がして、「膨れ」が形成されないようにする。
被着体としては、例えば光学部材(例えば反射防止体、位相差板、拡散板等)、鏡面を有する部材(例えばガラス基板、樹脂基板等)、自動車内装材、ボード、壁、ガラス窓などが挙げられる。
【0047】
<作用効果>
上記第1および第2の実施形態では、剥離シート20,30を製造するためのエンボスロール120のエンボス面121の形成においてエッチングを適用するため、エンボス面121における溝の幅を狭くできる。また、剥離シート20,30の製造の際に、剥離性基材20d,30dを加熱して樹脂成分の粘度を低くして、エンボスロール120のエンボス面121に追従しやすくしている。そのため、エンボスロール120のエンボス面121の溝の幅を狭くしても、剥離性基材20d,30dへの転写性を充分に確保できる。したがって、上記剥離シート20,30の製造方法では、剥離面20a,30aの凸部20b,30bの幅が狭い剥離シート20,30を容易に製造できる。
また、上記実施形態では、粘着シート1,2を製造する際に、凸部20b,30bの幅が狭い剥離シート20,30を用いて粘着剤層12の溝12bを形成するため、溝12bの幅を狭くできる。
粘着剤層12の溝12bの幅が狭い粘着シート1,2によれば、被着体に貼着した際に溝12bが視認されにくく、また、溝12bへの水滴の浸入を防止できる。しかも、溝12bの幅を狭くすれば、溝12bの数を増やすことができ、空気を逃がす流路を増やせるため、空気除去性を向上させることができる。さらに、溝12bの幅を狭くして溝12bの数を増した場合でも、被着体に接触する粘着剤層12のランド部12c同士の間隔が短いため、充分な粘着性が得られる。
【0048】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
粘着剤層12の溝12bは、図7に示すように、斜め格子状のパターンの溝12bおよび溝12bのみで、凹凸面12aにおいてランド部12dが菱形になるパターンとされてもよい。さらに、図7に示すランド部12dは菱形ではなく、正方形や長方形などであってもよい。粘着剤層12の溝12bのパターンは、エンボスロール120のエンボス面121を形成する際のエッチングマスクの開口パターンにより適宜調整できる。
さらに、図7に示すパターンにおいて、隣接するランド部12d同士が連続するように、ランド部12dの90°未満の鋭角な角部同士、および/または、90°を超える鈍角な角部同士がつながっていてもよい。
隣接するランド部12d同士が連続する粘着剤層12を形成するためには、粘着剤を塗工する剥離シートとして、隣接する凹部同士が連通する剥離面を有するものを用いる。粘着剤層12を形成するための粘着剤の塗工の際に、隣接する凹部同士が連通する剥離面を有する剥離シートを用いれば、粘着剤が剥離シート上を容易に移動するため、凹部に入り込んだ空気を抜くことができる。そのため、粘着剤層12のランド部12dの凹みの発生を防止できる。また、このような粘着剤層12を被着体に貼り合せた際には、ランド部12dと被着体との間の空気の挟み込みを防止できる。
【0049】
また、上記実施形態では、剥離シートの製造方法のエンボス加工工程においてエンボスロール120を用いたが、他のエンボス形成体、例えば、片面がエンボス面になっているエンボス形成板を用いてもよい。
本発明の粘着シートの製造方法では、剥離シート20,30の剥離面20a,30aに粘着剤を塗布せずに、あらかじめ粘着シート用支持体11の片面に粘着剤を塗布して粘着剤層12を形成した粘着性基材を剥離シート20,30に、粘着剤層12が剥離シート20の剥離面20a,30aに接するように積層し、圧着してもよい。なお、このように、粘着シート用支持体11に粘着剤を塗布する方法のことは一般に「直接塗工法」と称されている。
【0050】
また、上記実施形態では、片面が剥離面とされた剥離性基材を加熱し、剥離性基材の剥離面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けて剥離シートを得たが、本発明では、両面が剥離面とされた剥離性基材を加熱し、剥離性基材の両方の剥離面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けて剥離シートを得てもよい。
両面を剥離面とする場合、具体的には、剥離性基材の一方の剥離面をエンボス加工した後、他方の剥離面をエンボス加工する方法を採ることにより、剥離シートを得ることができる。
【実施例】
【0051】
(エンボスロール)
[エンボスロールA]エンボス面の溝の形成法:フォトリソグラフィを適用したエッチング、溝のパターン:溝同士が交差する斜め格子状のパターン、溝の面積比率:74%、溝の線数:64lpi
[エンボスロールB]エンボス面の溝の形成法:フォトリソグラフィを適用したエッチング、溝のパターン:溝同士が交差する斜め格子状のパターン、溝の面積比率:69%、溝の線数:64lpi
[エンボスロールC]エンボス面の溝の形成法:フォトリソグラフィを適用したエッチング、溝のパターン:溝同士が交差する斜め格子状のパターン、溝の面積比率:42%、溝の線数:64lpi
[エンボスロールD]エンボス面の溝の形成法:フォトリソグラフィを適用したエッチング、溝のパターン:エンボスロールCと同様の斜め格子状のパターンと、複数の溝が互いに平行に配列されたパターンとを、斜め格子状のパターンの溝同士の交点にて、複数の溝が互いに平行に配列されたパターンが重なるように有するパターン、溝の面積比率:36%、溝の線数:90lpi
【0052】
なお、エンボス面における溝の面積比率は、以下のように測定された値である。
まず、エンボス面において、一辺が5mm程度の正方形の領域を無作為に抽出し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)を用いてイメージを得た。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、レンズ倍率を200倍とした。
得られたイメージを、レーザー顕微鏡に付属のソフトウェアにより画像解析して、各イメージ全体の面積に対する溝12bの面積の比率を得た。
【0053】
(粘着性基材の製造)
[製造例1]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)の片面に、架橋剤としてイソシアネートを1質量部添加した溶剤型アクリル系粘着剤(東洋インキ製造社製、「BPS−8170」)を塗布し、熱風により乾燥して、粘着剤層(乾燥塗布量:32g/m)を形成して、粘着性基材Aを得た。
【0054】
[製造例2]
架橋剤の添加量を2質量部にしたこと以外は製造例1と同様にして、粘着性基材Bを得た。
[製造例3]
架橋剤の添加量を4質量部にしたこと以外は製造例1と同様にして、粘着性基材Cを得た。
[製造例4]
架橋剤の添加量を8質量部にしたこと以外は製造例1と同様にして、粘着性基材Dを得た。
【0055】
(剥離シートおよび粘着シートの製造)
[実験例1]
紙基材(王子特殊紙社製の「SPE110」、厚さ:118μm)の片面に、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC607K」)をTダイ押出し機によりラミネートして、熱可塑性樹脂層を形成した。
次いで、熱可塑性樹脂層の露出面に、シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「LTC−403A」)のトルエン5質量%溶液を塗布し(乾燥塗布量:0.1g/m)、熱風乾燥して、剥離処理を施した。これにより、紙基材と熱可塑性樹脂層とを有し、熱可塑性樹脂層の露出面が剥離面とされた剥離性基材を得た。
次いで、130℃の熱風を熱可塑性樹脂層に向けて吹き付けて、剥離性基材を加熱した後、剥離性基材の熱可塑性樹脂層の剥離面にエンボスロールAのエンボス面を圧力10N/cmで押圧し、熱可塑性樹脂層の剥離面に凸部を形成して剥離シートを得た。
次いで、剥離シートの剥離面に、架橋剤としてイソシアネートを1質量部添加した溶剤型アクリル系粘着剤(東洋インキ製造社製、「BPS−8170」)を塗布した。その後、塗布したアクリル系粘着剤を熱風により乾燥し、粘着剤層(乾燥塗布量:32g/m)を形成した。次いで、得られた粘着剤層の剥離シートと反対側の面にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を貼着することにより、粘着シートを得た。この実験例での粘着シートの製造方法は「転写法」である。
【0056】
[実験例2]
架橋剤の添加量を2質量部にしたこと以外は実験例1と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例3]
架橋剤の添加量を4質量部にしたこと以外は実験例1と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例4]
架橋剤の添加量を8質量部にしたこと以外は実験例1と同様にして、粘着シートを得た。
【0057】
[実験例5]
エンボスロールAの代わりにエンボスロールBを用いたこと以外は実験例1と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例6]
架橋剤の添加量を2質量部にしたこと以外は実験例5と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例7]
架橋剤の添加量を4質量部にしたこと以外は実験例5と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例8]
架橋剤の添加量を8質量部にしたこと以外は実験例5と同様にして、粘着シートを得た。
【0058】
[実験例9]
エンボスロールAの代わりにエンボスロールCを用いたこと以外は実験例1と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例10]
架橋剤の添加量を2質量部にしたこと以外は実験例9と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例11]
架橋剤の添加量を4質量部にしたこと以外は実験例9と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例12]
架橋剤の添加量を8質量部にしたこと以外は実験例9と同様にして、粘着シートを得た。
【0059】
[実験例13]
実験例1と同様にして得た剥離シートと製造例1で得た粘着性基材Aとを、剥離シートの剥離面に粘着剤層が接するように重ね、2本のロールの間に通して圧力を付与して密着させた。これにより、粘着シートを得た。この実験例での粘着シートの製造方法は「直接塗工法」である。
【0060】
[実験例14]
粘着性基材Aの代わりに製造例2で得た粘着性基材Bを用いたこと以外は実験例13と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例15]
粘着性基材Aの代わりに製造例3で得た粘着性基材Cを用いたこと以外は実験例13と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例16]
粘着性基材Aの代わりに製造例4で得た粘着性基材Dを用いたこと以外は実験例13と同様にして、粘着シートを得た。
【0061】
[実験例17]
エンボスロールAの代わりにエンボスロールBを用いたこと以外は実験例13と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例18]
粘着性基材Aの代わりに製造例2で得た粘着性基材Bを用いたこと以外は実験例17と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例19]
粘着性基材Aの代わりに製造例3で得た粘着性基材Cを用いたこと以外は実験例17と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例20]
粘着性基材Aの代わりに製造例4で得た粘着性基材Dを用いたこと以外は実験例17と同様にして、粘着シートを得た。
【0062】
[実験例21]
エンボスロールAの代わりにエンボスロールCを用いたこと以外は実験例13と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例22]
粘着性基材Aの代わりに製造例2で得た粘着性基材Bを用いたこと以外は実験例21と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例23]
粘着性基材Aの代わりに製造例3で得た粘着性基材Cを用いたこと以外は実験例21と同様にして、粘着シートを得た。
[実験例24]
粘着性基材Aの代わりに製造例4で得た粘着性基材Dを用いたこと以外は実験例21と同様にして、粘着シートを得た。
【0063】
[実験例25]
エンボスロールAの代わりにエンボスロールDを用いたこと以外は実験例7と同様にして、粘着シートを得た。
【0064】
(評価)
得られた粘着シートについて、剥離シートの凹凸を有する剥離面の、粘着剤層への転写性(以下、「転写性」と略す。)と、被着体に貼着した際の空気除去性(以下、「空気除去性」と略す。)とを評価した。評価結果を表1に示す。
なお、表1には、エンボスロールの種類、粘着シートの製造法、架橋剤添加量も記載した。
【0065】
[転写性]
得られた粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層により粘着シート本体をガラス板に貼着した。そして、ガラス板の粘着シート本体貼着側と反対側から、ガラス板を通して、粘着剤層のエンボスパターンの鮮明度を、拡大鏡を用いて目視により観察し、転写性を以下の基準で評価した。
○:エンボスロールのエンボス面が再現されている。
△:エンボスロールのエンボス面が部分的に再現されていない。
×:エンボスロールのエンボス面が再現されていない。
【0066】
[空気除去性]
得られた粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層により粘着シート本体をガラス板に仮貼着した後、粘着シート本体の周縁部をガラス板に押し付けて貼着した。次いで、スキージを粘着シート本体の上から擦り付けて、粘着シート本体の全部をガラス板に貼着した。そして、貼着後の、粘着シート本体の「膨れ」の程度を目視により観察して、空気除去性を以下の基準で評価した。
○:「膨れ」が見られず、空気除去性に優れていた。
×:「膨れ」が見られ、空気除去性は不充分であった。
【0067】
【表1】

【0068】
また、実験例1,5,9については、粘着剤層の溝の幅、深さ、面積比率を、以下の方法により測定した。測定結果を表2に示す。なお、表2には、エンボスロールのエンボス面の溝の面積比率も記載した。
[粘着剤層の溝の幅の測定]
まず、ランド部同士の間隔を5つ観察できるような一辺が5mm程度の正方形の領域を無作為に抽出し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)で測定したイメージを得た。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、レンズ倍率を200倍とした。また、イメージは、粘着剤層を垂直に見る方向から得た。
そして、このイメージから、図3に示す、溝12bの最も表面側の距離dのデータを5つ読み取った。同様にして、合計5枚のレーザー顕微鏡のイメージから、各々5つ、全部で25個のdのデータを得た。そして、平均値を求めて、溝12bの幅を得た。
【0069】
[粘着剤層の溝の深さの測定]
まず、凹凸面に対して垂直な面で切断して粘着剤層の断面を得た。この断面において、5つのランド部12cを観察できるような正方形の領域を無作為に抽出し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)で測定した断面イメージを得た。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、レンズ倍率を200倍とした。また、イメージは、粘着剤層の断面を垂直に見る方向から得た。
そして、この断面イメージから、図3に示す、ランド部12cの最上部Pと溝12bの最下部Qとの距離hのデータを5つ読み取った。同様にして、合計5枚のレーザー顕微鏡のイメージから、各々5つ、全部で25個のhのデータを得た。
そして、2次元フーリエ変換像の赤道方向プロファイルを作成し、その一次ピークの逆数から、溝の幅を求めた。
【0070】
[粘着剤層の溝の面積比率の測定]
まず、粘着剤層の凹凸面において、一辺が5mm程度の正方形の領域を無作為に抽出し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)を用いてイメージを得た。レーザー顕微鏡で測定する際の条件は、レンズ倍率を200倍とした。
得られたイメージを、前記レーザー顕微鏡に付属のソフトウェアを利用して画像解析することにより、各イメージ全体の面積に対する溝12bの面積の比率を得た。
【0071】
【表2】

【0072】
実験例1〜24より、粘着シートの製造において、使用するエンボスロールの選択、粘着剤に添加する架橋剤量の調整により、粘着剤層における凹凸面の転写性および空気除去性を高めることができることが判明した。また、架橋剤の添加量を増やす程、転写性および空気除去性が向上することが判明した。
また、エンボスロールAのエンボス面の溝の面積比率と実験例1の粘着剤層の溝の面積比率との対比、エンボスロールBのエンボス面の溝の面積比率と実験例5の粘着剤層の溝の面積比率との対比、エンボスロールCのエンボス面の溝の面積比率と実験例9の粘着剤層の溝の面積比率との対比より、粘着剤層の溝はエンボスロールの溝を高い再現性で再現していることが確認された。
【0073】
また、実験例1における粘着シートの粘着剤層の凹凸面と、実験例25における粘着シートの粘着剤層の凹凸面とを、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK−8500型」)を用いて観察して対比した。その結果、実験例1における粘着シートの粘着剤層のランド部には凹みが見られたが、実験例25における粘着シートの粘着剤層のランド部には凹みが見られなかった。
【符号の説明】
【0074】
1,2 粘着シート
10 粘着シート本体
11 粘着シート用支持体
12 粘着剤層
12a 凹凸面
12b 溝
12c,12d ランド部
20 剥離シート
20a 剥離面
20b 凸部
20c 凹部
20d 剥離性基材
21 剥離シート用支持体
22 熱可塑性樹脂層
30 剥離シート
30a 剥離面
30b 凸部
30c 凹部
30d 剥離性基材
100 製造装置
110 加熱機
120 エンボスロール
121 エンボス面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面が剥離面とされた剥離性基材を加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材の剥離面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けるエンボス加工工程とを有し、
剥離性基材として、剥離シート用支持体と、該剥離シート用支持体の少なくとも片面に設けられた熱可塑性樹脂層とを有し、該熱可塑性樹脂層の露出面が剥離面にされたものを用い、
エンボス加工工程におけるエンボス形成体として、エッチングによりエンボス面を形成したものを用いることを特徴とする剥離シートの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂層からなる剥離性基材を加熱する加熱工程と、加熱した剥離性基材の少なくとも片面に、エンボス形成体のエンボス面を押し付けるエンボス加工工程とを有し、
エンボス加工工程におけるエンボス形成体として、エッチングによりエンボス面を形成したものを用いることを特徴とする剥離シートの製造方法。
【請求項3】
粘着剤層および粘着シート用支持体を有する粘着シート本体と、該粘着シート本体の粘着剤層側に設けられた剥離シートとを備える粘着シートの製造方法において、
剥離シートとして、請求項1または2に記載の剥離シートの製造方法により製造した剥離シートを用いることを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項4】
剥離シートの剥離面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、該粘着剤層の剥離シートと反対側の面に粘着シート用支持体を貼着する請求項3に記載の粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−769(P2011−769A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144631(P2009−144631)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(595178748)王子タック株式会社 (76)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】