説明

剥離改質剤組成物及び剥離コーティング組成物

【課題】基板に対する固着性に優れた剥離コーティングを形成することが可能な剥離改質剤組成物を提供する。
【解決手段】i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及びiii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)を含む剥離改質剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の分岐シロキサンを含有する剥離改質剤組成物及び剥離コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンをベースとする剥離コーティングは、比較的接着性でない表面が必要とされる用途において有用である。片側のライナー(例えば、感圧接着性ラベル用の背面紙)は、ラベルの接着特性に影響を与えることなく、ラベルを一時的に保持するのに通常適合する。両側ライナー(例えば、両側の転写テープ用に差し込まれる紙)は、保護及び両側の自己接着テープ又は接着性フィルムの望まれる巻き戻し特性を確実にするために利用される。
【0003】
基板(例えば、片側ライナー)は、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物を、基板上に塗工し、続いてその組成物を、例えば、熱によって開始させられるヒドロシリル化によって架橋させることでコーティングされる。
【0004】
ヒドロシリル化によって架橋される、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物の基本的な成分は、以下の1)〜3)である。
1)アルケニル化されたポリジオルガノシロキサン、典型的には、末端にアルケニル基を有する直鎖状の重合体、
2)アルケニル化されたポリジオルガノシロキサンを架橋させるように設計されたポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤、及び
3)前述の架橋反応に触媒作用を与えるための触媒。
【0005】
しばしば、第4の成分、即ち前もって必要な架橋温度以下で架橋を始めるのを防止するように設計された抑制剤もまた組成物中に含有される。3種類の必須成分及び任意の抑制剤からなる、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物は、プレミアム(premium)剥離コーティング組成物と一般的に呼ばれる。
【0006】
剥離コーティングからの剥離力のレベルを制御するために、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物では、剥離改質剤として一般的に知られている添加剤を含有することが一般的な慣習である。剥離改質剤は、一般的には、プレミアム剥離コーティング組成物中のアルケニル化されたポリジオルガノシロキサンの割合を置き換えるのが通常である。
【0007】
特許文献1には、上記に議論されている3種類の必須構成成分を有する、シリコーン系剥離コーティング組成物が記載されており、その組成物では、ポリジオルガノシロキサンは、下記一般式からなる少なくとも2つの基を単一の分子中に有する必要がある:
c(Rf2SiO1/2((Rg2SiO2/2hjSiO3/2
(式中、Rcは、アルケニル基であり、各Rf、Rg及びRjは、独立に、水素、ヒドロキシ又は一価の有機基であり、hは0又は1〜300(300を含む)の整数である。)
得られる剥離コーティング組成物は、3種類の構成成分を共に単に混合することによって製造される。
【0008】
特許文献2には、ケイ素原子当り平均で1〜3個のケイ素が結合した一価の炭化水素基又はハロ炭化水素基を有する有機ケイ素化合物からなる、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物が記載されている。これらの基のうち平均で少なくとも2つは、オレフィン性基であり、残りのケイ素の空位は、ケイ素原子に共に結合する、脂肪族不飽和を含まない、二価の基によって充足させられる。
【0009】
特許文献3には、3種類の必須構成成分、及び4〜12個の炭素原子を有する多数のエチレン性不飽和基を含有するシリコーンからなる追加の構成成分を含有する、シリコーンをベースとする剥離組成物が記載されている。なお、この組成物において、シロキサン基の合計数の25〜90モル%はT単位である。
【0010】
明確にするために、M、D、T及びQ単位は、それぞれ実験式R3SiO1/2、R2SiO2/2、RSiO3/2及びSiO4/2からなる単位を表わす。なお、それぞれR基は、一価の置換基である。
【0011】
特許文献4には、M、D及びT基からなり、1分子当り平均で少なくとも2つの分岐点を有する、実質的に分岐した架橋性のアルケニルシリコーンの使用が記載されている。これらの化合物は、剥離コーティング組成物において有用であると言われている。
【0012】
特許文献5には、片方の末端でアクリル系末端基に結合し、かつ、その他の末端で架橋したMTQ部分に結合した繰り返し単位を25〜1000有する、直鎖状ポリジオルガノシロキサン鎖からなるポリシロキサンが記載されている。なお、T及びQ単位に対するM単位の比<M/(T+Q)>は、0.55〜0.75である。M及び/又はT単位はまた(メタ)アクリルレート基を含有し得る。ポリシロキサンは、ポッティング(potting)コーティング及びコンフォーマル(conformal)コーティングにおいて有用性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4772515号公報
【特許文献2】米国特許第4774111号公報
【特許文献3】欧州公開特許第559575号公報
【特許文献4】米国特許第5616672号公報
【特許文献5】米国特許第5063254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
剥離コーティングの性能における向上は、例えば、架橋のし易さ、即ち比較的低温で架橋時間を減らすこと、基板へのコーティングの固着性、及び剥離性能に関して、絶えず探されるべきである。剥離コーティングの開発の続行を特に必要にする1つの因子は、剥離コーティング組成物が塗工され、架橋される基板(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステル等)の数が増加しているからである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の剥離改質剤組成物は、
i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、
ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及び
iii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位
からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)を含む。
【0016】
また、本発明の剥離改質剤組成物は、末端が一般式Rab2SiO1/2からなるM単位であり、少なくとも3個の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、且つi)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、及びii)一般式(Rb2SiO2/2nからなる、少なくとも2個のポリジオルガノシロキサン鎖から構成されると共に、重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各nは、独立して2〜100であり、分岐シロキサン中の合計のRb2SiO2/2単位が15〜995個であり、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)を含む。
【0017】
本発明の剥離コーティング組成物は、
i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、
ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及び
iii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位
からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)と、
組成物中のSiH基の合計数と、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基の合計数との比が0.9:1〜3:1となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤と、
前記分岐シロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤との間の反応に触媒作用を与えるヒドロシリル化触媒と
を含む。
【0018】
また、本発明の剥離コーティング組成物は、
末端が一般式Rab2SiO1/2からなるM単位であり、少なくとも3個の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、且つi)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、及びii)一般式(Rb2SiO2/2nからなる、少なくとも2個のポリジオルガノシロキサン鎖から構成されると共に、重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各nは、独立して2〜100であり、分岐シロキサン中の合計のRb2SiO2/2単位が15〜995個であり、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)と、
組成物中のSiH基の合計数と、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基の合計数との比が0.9:1〜3:1となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤と、
前記分岐シロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤との間の反応に触媒作用を与えるヒドロシリル化触媒と
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の剥離改質剤組成物及び剥離コーティング組成物は、所定の分岐シロキサンを含む。
本発明に用いられる分岐シロキサンは、i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及びiii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)である。
【0020】
あるいは、本発明に用いられる分岐シロキサンは、末端が一般式Rab2SiO1/2からなるM単位であり、少なくとも3個の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、且つi)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、及びii)一般式(Rb2SiO2/2nからなる、少なくとも2個のポリジオルガノシロキサン鎖から構成されると共に、重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各nは、独立して2〜100であり、分岐シロキサン中の合計のRb2SiO2/2単位が15〜995個であり、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)である。
【0021】
好ましくは、脂肪族不飽和炭化水素基は、アルケニル基又はアルキニル基の何れか一方である。
好ましくは、Ra置換基の少なくとも50%がアルケニル基である。最も好ましくは各Ra置換基がアルケニル基である。各アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニル基から選択され得るが、ビニル(vi)及びヘキセニル(hex)基から選択されるのが好ましい。
分岐シロキサンは最も好ましくは、4つの(Rb2SiO2/2n鎖に結合した少なくとも1つのQ単位からなり、例えば、下記一般式を有し得る。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、各nは、独立に1〜100であり、Ra置換基及びRb置換基は上記した通りの基である。
好ましくは、各Rb置換基は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル基)であり、好ましくはメチル基及びエチル基であるが、最も好ましくはメチル基である。従って、本発明に用いられる分岐シロキサン中に、一般式SiO4/2鎖からなる単一の単位のみが存在する場合、分岐シロキサンは、実質的に下記一般式を有し得る(式中、各nは、各Ra置換基がビニル基であり、かつ各Rb置換基がメチル基である場合、独立に1〜100である)。
【0024】
【化2】

【0025】
分岐シロキサンの大きさを考慮して、分岐シロキサン中に存在する非常に少数のシロキサン単位(好ましくは1%未満)は、一般式RbSiO3/2からなる単位であることができ(式中、Rbは、これまでに定義される通りである。)、生じ得ることが可能であることを理解すべきである。好ましくは、本発明に用いられる分岐シロキサンは、25℃で、50mm2/s〜10000mm2/sの粘度を有しており、より好ましくは、粘度は50〜1000mm2/sである。
【0026】
今後、分岐シロキサン中のシロキサン単位の数は、重合度(DP)として呼ばれるであろう。分岐シロキサンのDPは、20〜1000である。分岐シロキサンのDPの好ましい範囲は20〜500であるが、最も好ましい範囲は20〜250である。
【0027】
本発明に用いられる分岐シロキサンの調製方法は、下記a)〜c)の工程からなる:
a)一般式(SiO4/2)(Rab2SiO1/24を有する化合物を、環状ポリジオルガノシロキサン及び/又は実質的に直鎖状のヒドロキシ末端のポリジオルガノシロキサンと混合する工程(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される);
b)180℃までの温度にて、酸又はホスファゼン塩基触媒の存在下で該混合物を反応させる工程;及び
c)該反応混合物を中和させる工程。
【0028】
好ましくは、各環状ポリジオルガノシロキサンは、3〜10個のRb2SiO2/2単位を含有するが、環状ポリジオルガノシロキサンは、3〜6個のRb2SiO2/2繰り返し単位を含有するポリジアルキルシロキサン環であるのが好ましい(式中、各Rb置換基はメチル基である)。生じる反応のタイプは、選択される触媒に依存して、酸又は塩基で触媒作用を及ぼされる平衡反応の何れか一方である。
【0029】
酸で触媒作用を及ぼされる平衡反応の場合、使用される酸触媒は、酸をベースとする平衡反応の触媒作用に適するいかなる触媒であってもよく、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、酸クレー、例えばambelyst及び塩化ホスホニトリル触媒である。好ましい触媒はトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0030】
塩基で触媒作用を及ぼされる平衡調製の場合、触媒は、いかなる適するホスファゼン塩基触媒であってもよく、例えば下記一般式からなるホスファゼン塩基である:
【0031】
【化3】

【0032】
式中、R1は、各位置で同じであっても異なっていてもよいが、水素又は任意に置換された炭化水素基、好ましくはC1〜C4のアルキル基であるか、又は同じN原子に結合している2つのR1基は、ヘテロ環、好ましくは5−又は6−員環を完全にするために結合し得る。R2は、水素又は任意に置換された炭化水素基、好ましくはC1〜C20のアルキル基、より好ましくはC1〜C10のアルキル基である。kは、1、2又は3、好ましくは2又は3である。lは、1、2、3又は4、好ましくは2、3又は4である。Aは、アニオン、好ましくはフルオライド、ヒドロキサイド、シラノレート、アルコキシド、カーボネート又はバイカーボネートである。特に好ましくは、水酸化アミノホスファゼニウムである。
【0033】
酸で触媒作用を及ぼされる反応の場合、反応混合物は、75℃〜120℃の温度で維持されるのが好ましく、最も好ましくは反応混合物は、水共触媒の存在下、80〜90℃の温度で維持される。塩基で触媒作用を及ぼされる平衡反応の場合、反応混合物は、120℃〜160℃の温度で維持されるのが好ましく、最も好ましくは反応混合物は、130℃〜150℃の温度で維持される。
【0034】
適当な中和剤を利用することができ、その選択は、明らかに触媒の酸性又は塩基性の性質に依存し、例としては、塩基によって触媒作用を及ぼされる平衡反応では、ビスジメチルシリルホスホネートの使用が、酸によって触媒作用を及ぼされる平衡反応では、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0035】
この方法で使用される各構成成分の量は、2つの因子、即ち分岐シロキサンの必要とされる重合度、及び、分岐シロキサン中に必要とされるアルケニル基の数に依存する。好ましくは、工程(a)の混合物中には、(SiO4/2)(Rab2SiO1/24が1.1〜22.1重量%、より好ましくは(SiO4/2)(Rab2SiO1/24が2.21〜11.04重量%、最も好ましくは3.45〜6.9重量%存在する。残りは、環状ポリジオルガノシロキサン及び/又は実質的に直鎖状のヒドロキシ末端のポリジオルガノシロキサンで、100重量%に構成される。
【0036】
本発明による剥離コーティング組成物は、上記に記載される通りの分岐シロキサンと、組成物中のSi−H基の合計数と、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基の合計数との比が、0.9:1〜3:1となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤と、分岐シロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤との間の反応に触媒作用を与えるヒドロシリル化触媒とを含む。
【0037】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤は、少なくとも3つのSi−H基を含有していなければならず、下記一般式を有していてもよい:
t3SiO1/2((CH32SiO2/2d(Rt2SiO2/2e)SiO1/2t3
上記式中、各Rtは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又は水素であることができ、dは0又は整数であり、eはd+eが8〜100になる整数である。代わりに、架橋剤は、一般式SiO4/2及びRq3SiO1/2の単位からなるMQ樹脂であってもよい(式中、少なくとも1つのRq置換基は水素原子であり、残りはアルキル基である)。
【0038】
好ましくは、剥離コーティング組成物中のSi−H基:アルケン基の合計量の比は、1.1:1〜2.5:1の範囲であり、最も好ましくはその範囲は1.2:1〜2:1である。
【0039】
本発明に適したヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びインジウム等の第VIII族の金属からなる錯体、又は化合物等が挙げられる。好ましい触媒は、塩化白金酸、白金アセチルアセトナート等の白金化合物又は錯体、例えば、エチレン、プロピレン、オルガノビニルシロキサン及びスチレン等の不飽和化合物と白金ハライドの錯体、ヘキサメチルジ白金、PtCl2・PtCl3及びPt(CN)3である。代わりに、この触媒は、ロジウム錯体、例えば、RhCl3(Bu2S)3であってもよい。
【0040】
この組成物は、予め決められた温度以下でコーティング組成物が架橋するのを防止するのに適合する、1つ以上の抑制剤を任意に含有し得る。抑制剤は、コーティング組成物自身の機能に対して本質的ではないが、抑制剤がないと、一旦3種類の必須構成成分が共に混合されると、触媒は、周囲温度でシリコーンをベースとする剥離コーティング組成物の架橋を開始させ得る/触媒作用を及ぼし得るということを理解すべきである。
【0041】
本発明に適した抑制剤の例としては、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、アセチレン系化合物、エチレン系不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素ジエステル、共役エン−イン、ハイドロパーオキサイド、ニトリル及びジアジリジン等が挙げられ、特定の例としては、メチルブチノール、ジメチルヘキシノール、又は、エチニルシクロヘキサノール、トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、マレイン酸エステル、例えばビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)マレイン酸エステル、フマル酸エステル、例えばジエチルフマル酸エステル、又は、フマル酸エステル/アルコール混合物(なお、アルコールは、例えば、ベンジルアルコール、又は、1−オクタノールである)、及び、エテニルシクロヘキシル−1−オール等が挙げられる。
【0042】
好ましくは、本発明による剥離コーティング組成物の粘度は、25℃で、50mm2/s〜10000mm2/sであり、より好ましくは粘度は、分岐シロキサンが基板をコーティングするのに適する粘度であるように50〜1000mm2/sである。粘度が50mm2/sより低い場合は、分岐シロキサンを含有する剥離コーティング組成物によって基板表面を湿らせてしまうという問題が生じ得る。次いで、粘度が10000mm2/sより高い場合は、分岐シロキサンを含有する剥離コーティング組成物は、本発明の用途で使用するには粘度が高すぎる。
【0043】
剥離コーティング組成物は、25℃で少なくとも50mm2/sの粘度を有する、ジアルキルアルケニルシリル末端のポリジオルガノシロキサンを更に含んでいてもよい。中でも、ジメチルビニルシリル末端の、又はジメチルヘキセニルシリル末端のポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0044】
本発明の剥離コーティング組成物に添加され得る他の構成成分としては、例えば、シリコーン系剥離改質剤、反応性希釈剤、接着促進剤、溶媒、香料、保存剤、及び、フィラー、例えばシリカ、石英及び白亜等が挙げられる。
【0045】
適当なシリコーン系剥離改質剤であれば、いかなるものも利用することができ、例えば、1つ以上のアルケニル化されたシリコーン樹脂、アルケニル化されたポリジオルガノシロキサン、12〜30個の炭素原子を有する1つ以上の第一級アルケン、及び少なくとも10個の炭素原子を有する1つ以上の分岐アルケン等が挙げられる。
【0046】
浴寿命延長剤が、室温で架橋反応を抑制するのに充分な量存在していてもよい。例としては、1つ以上の第1級又は第2級アルコール基、例えば、炭素原子が10個未満の脂肪族及び芳香族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、フェノール及びシクロヘキサノール、カルボン酸及び環状エーテル等が挙げられる。更には、この組成物はまた、直鎖状のアルケニルジアルキルシリル末端のポリジオルガノシロキサンを含有していてもよい。
【0047】
剥離コーティング組成物は、無溶媒、溶媒中、又は水中油型エマルジョンの部分として塗工され得る。本発明のコーティング組成物は、紙及びフィルム等の様々な基板上に剥離目的のために使用され得る。フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、延伸ポリプロピレン又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムであり得る。
【0048】
低温で架橋し得る剥離コーティング組成物は、長期間の固着に劣る傾向があることは、よく知られている。本発明による剥離コーティング組成物は、比較的低温で架橋し、また、長期間の固着特性にも優れていることが見出された。低温での架橋が優れているので、ラベル上の接着剤などの接着剤へのシリコーンの移行も最小限であり、それによって次いで接着剤の強度を維持するという利点が提供される。高い架橋温度が剥離コーティングに必要とされる場合、基板自身の品質に問題が生じ、それによってフィルムが収縮するか又は脆くなり、次いでそれは剥離コーティングの架橋後に、基板の再加湿が顕著に低いことが要求されることを意味する。
【0049】
本発明の剥離コーティング組成物は、3種類の必須構成成分を共に、存在する任意の成分と単に予備混合することによって調製され得るが、別々の部分、又はパッケージ即ちキットの形態で、この様な組成物を調製するのがより好ましいであろう。この様な場合、各部分は、組成物がコーティングとして塗工されるべき時に混合される。必須成分に関して、このキットは下記の何れか一方を含有し得る:
分岐シロキサン及び抑制剤からなる第1の部分、剥離改質剤及び抑制剤からなる第2の部分、触媒からなる第3の部分、並びに架橋剤からなる第4の部分、又は分岐シロキサン及び触媒からなる第1の部分、剥離改質剤及び触媒からなる第2の部分、並びに架橋剤及び抑制剤からなる第3の部分。
【0050】
本発明の剥離改質剤組成物は、上記に記載される通りの分岐シロキサンを含み、下記成分から選択される少なくとも1つの追加成分をさらに含み得る。
i)アルケニル化されたシリコーン樹脂
ii)アルケニル化されたポリジオルガノシロキサン、
iii)14〜30個の炭素原子を有する1つ以上の第一級アルケン、及び
iv)少なくとも10個の炭素原子を有する1つ以上の分岐アルケン
この様な剥離改質剤組成物は、シリコーン系剥離コーティング組成物に添加される。
【0051】
アルケニル化されたシリコーン樹脂(i)は、最も好ましくは少なくとも1つのアルケニル化されたMQ樹脂であり(式中、M基は、一般式R23SiO1/2を有する)、典型的にはトリアルキルシロキシ及び/又はジアルキルアルケニルシロキシ基である。アルケニル基は、シクロヘキセニル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルからなる群から選択され得る。最も好ましくは、アルケニル基は、ビニル又はヘキセニル基である。アルキル基は、いかなる適するアルキル基であってもよいが、最も好ましくはメチル基である。Q基は、一般式SiO4/2からなる基であり、これらのM及びQ基は、適当な比率で存在し得る。
【0052】
アルケニル化されたポリジオルガノシロキサンは、一般式R3SiO2/2の単位からなるアルケニルジアルキルシリル末端のポリジオルガノシロキサンであるのが好ましい(式中、それぞれのR基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であるか、又は1つのR基は定義される通りのアルキル基であり、1つは1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル又はヘキセニル基である)。
【0053】
第一級アルケン(iii)は、例えば、テトラデセン及びオクタデセン等の、10〜30個の炭素原子を含有するいかなる第一級アルケンであってもよい。
分岐アルケン(iv)は、例えば、下記一般式からなる1つ以上の分岐アルケン等の、いかなる1つ以上の適する分岐アルケンであってもよい。
【0054】
【化4】

【0055】
式中、メチレン基のnの数及び分岐したアルキル基のmの数は、その鎖の中でランダムに配置させられており、n及びmは独立に、0又は1〜20の整数であり、x、z及びそれぞれのyは独立に、1〜12の整数である。好ましくは、各アルケン中の炭素原子の合計数は、少なくとも20である。例えば、上記の成分(iii)等の実質的に直鎖状のアルケンを含有する剥離改質剤は、コーティングの架橋過程でスモーキング(smoking)を起こす傾向があることに注目すべきである。成分(iii)を、成分(iv)によって例示される通りの分岐アルケンで置き換えることによって、大幅にこの問題が減ることを見出した。
【0056】
この様な剥離改質剤は、好ましくは、本発明による分岐シロキサン25〜85重量%を含み、残りは成分(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の1つ以上から構成される。
【0057】
本発明による剥離改質剤を使用する1つの利点は、実質的に直鎖状のアルケンの少なくとも1部を分岐シロキサンで置き換えることによって、架橋過程でしばしば見られるスモーキングの影響が顕著に低下することである。従来技術の剥離改質剤では通常、得られる抽出可能な物質の量は、増加、時には顕著に増加するのに対して、抽出可能な物質の量、即ち未架橋のシロキサンの量は、改質されていない剥離コーティングから得られる抽出可能な物質の量と比較して、同じ量に維持されるか、又は更に低下することもまた見出した。
【0058】
上記に記載される通り、剥離改質剤組成物は、本発明による剥離コーティング組成物に混合されてもよいし、又はその代わりにアルケニル化されたポリオルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤、及び効果的な量のヒドロシリル化触媒からなる剥離コーティング組成物に混合されてもよい。
【実施例】
【0059】
本発明をより明らかにするために、ここで以下に幾つかの詳細な例を示す。実施例1、2及び3には、本発明に用いられる分岐シロキサンの調製方法が記載されている。下記実施例で測定された全ての粘度は、25℃で測定されたことに注目すべきである。
【0060】
(実施例1)
(Vi(CH32SiO1/24(SiO4/2):(21.6g)(式中、Viはビニル基を表わす)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(592g)及びトリフルオロメタンスルホン酸(1.2g)を反応容器に装填した。反応混合物を80〜90℃の温度で6時間撹拌した。次いで、得られた混合物を室温まで冷却した。炭酸カルシウム(1.0g)を添加し、混合物を更に3時間撹拌し、それに続いて濾過のために置いた。最後に、反応混合物を約150℃の温度、40ミリバールの圧力で、2時間ストリッピングした。生成物の最終粘度は、270mm2/sであり、重合度は160で、ビニル基の重量%は0.83%であると測定された。
【0061】
(実施例2)
(Vi(CH32SiO1/24(SiO4/2):(21.6g)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(370g)及びトリフルオロメタンスルホン酸(1.0g)を反応容器に装填した。反応混合物を80〜90℃の温度で6時間撹拌した。次いで、得られた混合物を室温まで冷却し、炭酸カルシウム(1.0g)を添加し、混合物を更に3時間撹拌し、それに続いて濾過のために置いた。最後に、反応混合物を約150℃の温度、40ミリバールの圧力で、2時間ストリッピングした。生成物の最終粘度は、160mm2/sであり、重合度は100であると測定された。ビニル基の重量%は1.32%であった。
【0062】
(実施例3)
(Vi(CH32SiO1/24(SiO4/2):(43.2g)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン(592g)を、電動撹拌機、温度計プローブ、及び還流コンデンサーが取付けられている反応フラスコに装填した。反応混合物を140℃まで加熱し、触媒のポリアミノホスファゼニウムヒドロキシド(0.2g)を添加した。30秒後に、試料を取り除き、試料の粘度を測定したところ、顕著な増加が見られた。次いで、反応混合物をビスジメチルシリルホスホナート(0.5g)を用いて中和し、80℃まで冷却した。低分子量成分を混合物からストリッピングし、最後に混合物を冷却させて濾過した。得られた生成物の重合度値は80であり、粘度は114mm2/sであった。
【0063】
(実施例4)
下記実施例は、組成物中に混合されたシロキサンにのみ違いがある、シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物でコーティングされた、コロナ処理された延伸ポリプロピレン(OPP)、1軸延伸ポリプロピレン(MOPP)及びクラフト紙基板の選択に関する、剥離性能の比較研究を詳述するものである。各シリコーンをベースとする剥離コーティング組成物は、テーブル1に示される通りのシロキサンを含有しており、白金触媒120ppm、Si−H基の合計数:脂肪族不飽和炭化水素基の合計数の比が、1.5:1となるのに充分な量の架橋剤、メチルブチノール抑制剤が全体の組成物の重量の0.12重量%混合されていた。
【0064】
各組成物を、室温(20℃)で、ブレードコーターを使用して、関連した基板に塗工し、次いで得られたコーティングを、100℃で20秒間架橋させた。得られたコーティングの架橋特性を、マイグレーション、しみ及びこすり落ちに関して評価した。マイグレーションは、架橋した剥離コーティング上に粘着性の小片(セロテープ(登録商標))を置き、除去後にコーティングが粘着テープに移ったかどうかを確認することによって測定される。しみは、架橋したコーティング上に指を押し付けて、しみの形態に目で見える模様があるかどうかを確認することによって測定される。こすり落ちは、紙の前後に、10サイクル、指を激しくこすり付け、コーティングが損傷を受けるか、又は除去されるかどうかを確認することによって測定される。N/N/Nは、マイグレーションなし/しみなし及びこすり落ちなしを意味する。テーブル1に関して、vi、hex、s、M及びTrはそれぞれ、ビニル、ヘキセニル、僅かに(slight)、マイグレーション、及びトレース(trace)を意味する。
【0065】
得られたコーティングの架橋特性は、架橋後のコーティング中の抽出可能な物質の割合を測定することによって更に評価された。これは、Oxford Instruments社製のLabx3000X線蛍光スペクトロメーターを使用して、X線蛍光によって、架橋したコーティングを有する、標準的な大きさの基板の試料のコーティング重量をまず初めに測定することによって行なわれた。次いで、コーティングされた試料を、メチルイソブチルケトン溶媒からなる溶液中に置いて、コーティングマトリックスに架橋していないか、又は基板に固着されていない、未反応のシロキサンを抽出した。予め決められた時間の後、試料を溶媒から取り出して乾燥させ、再度重量を測定した。テーブル1に示される抽出可能な物質の割合は、未反応のシリコーンをコーティングから除去した後の、重量の損失割合である。それぞれの基板で、本発明による分岐シロキサンを含有する各試料では、使用された他の重テーブル1から注目されるであろう。アルケニルで末端をブロックされた「重合体」は、直鎖状のビニル/ヘキセニルジメチルシリル末端のポリジメチルシロキサンであった。アルケニルで末端をブロックされたペンダントの「重合体」は、鎖に対してあちこちにぶら下がったビニル基を有する、ビニルジメチルシリル末端のポリジメチルシロキサンである。T−分岐した「重合体」は、シロキサン側鎖を有するビニルジメチルシリル末端のポリジメチルシロキサンである。
【0066】
2つの代わりの架橋剤を使用した。それらは架橋剤1、即ち粘度が11mm2/sのトリメチル末端のメチルハイドロジェンシロキサン、及び架橋剤2、即ち粘度が11mm2/sのジメチルハイドロジェン末端のメチルハイドロジェンシロキサンとして示されている。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
(実施例5)
下記試験は、コロナ処理された50ミクロンの1軸延伸ポリプロピレン基板上での、長時間にわたる、様々な架橋された剥離組成物コーティングの固着法における変形を示すために使用された。コーティングは比較的低温の100℃で架橋されたこと、及び比較組成物では、架橋も固着も充分ではなかったのに対して、本発明によるコーティングは、全2ヶ月の試験期間に渡って高い固着インデックス(Anchorage Index)を維持したことに注目すべきである。
【0070】
抽出可能な物質の測定手順は、実施例4に記載されるのと同じであった。固着インデックスの結果は、基板への架橋されたシリコーンコーティング系の固着又は接着強度を測定する。テーブル3におけるそれぞれの結果では、関連するプレミアム剥離コーティングを用いてコーティングされた基板からなる同じ大きさの試料を切り出し、初期のコーティング重量(g/m2)、即ち基板の表面上にコーティングされたプレミアム剥離コーティングの量を、X線蛍光によって測定した。
【0071】
前述の試料は、平らなプラスチック円盤に固着され、3.2Kg重量の基準に対して合わされた。次いで、試料を、重量を下向きに圧力を掛けながら、試料のプレミアム剥離コーティングされた面を、フェルトの表面に接触させて、フェルトの下地の上に置いた。引き続いて、重量を測定された試料を、3m/分の予め設定された速度で、2度、フェルトの下地の30cmの長さを動かした。なお、それぞれの場合において、フェルトの下地の異なる部位を使用し、また試料のコーティングの重量を再度測定し、その後のコーティング重量(SUBSEQUENT COATWEIGHT)として示した。
【0072】
テーブル3に与えられた結果は、下記式によってそれぞれ測定される:
固着インデックス(%)={その後のコーティング重量(SUBSEQUENT COAT WEIGHT)(g/m2)/初期コーティング重量(g/m2)}×100
【0073】
従って、固着インデックス(%)は、基板の表面に残っているプレミアム剥離コーティングの割合である。固着インデックス100%は、こすり落ちがないのと同等である。
【0074】
下記テーブルの組成物は、平均で80のシロキサン単位(80DP Q)を含有する、本発明による分岐シロキサンからなり、比較例は、重合度(DP)が50の直鎖状ビニルジメチルシリル末端のポリジオルガノシロキサン、及び重合度が150の直鎖状ビニルジメチルシリル末端の直鎖状ポリジオルガノシロキサンである。2つの代わりの架橋剤は、Si−H基:脂肪族不飽和炭化水素基の比が2.0:1となる様な量の、これまでに使用されたX-linker 1、及び、X-linker3、即ち粘度が20〜40mm2/sのトリメチルで末端がブロックされているハイドロジェンシロキサンであった。白金触媒120ppmが、全体の組成物の重量の0.12重量%のメチルブチノール抑制剤と共に、それぞれの試料中に含有されていた。それぞれのケースにおける基板は、コロナ処理されたグラシン紙であった。分析されたそれぞれの試料の重合体及び架橋剤組成物を下記テーブルに示す。
【0075】
【表3】

【0076】
本発明の分岐した重合体を含有する、組成物A及びBを用いた、テーブル3の固着インデックス試験の結果は、抽出可能な物質の値が低く、比較的高い固着インデックス%を維持している。DPが50の直鎖状ビニルジメチルシリル末端のポリジオルガノシロキサンからなる組成物C及びDは、抽出可能な物質の量は許容可能であるが、固着インデックスでは全体的に許容できない結果を示すのに対して、逆に比較的長鎖の150DPの直鎖状ビニルジメチルシリル末端のポリジオルガノシロキサンでは、抽出可能な物質の結果は悪く、固着インデックスの結果はよい。
【0077】
【表4】

【0078】
(実施例6)
本実施例では、本発明による分岐シロキサンは、剥離改質剤の部分として利用される。
【0079】
テーブル4に示される重合体は、粘度が200mm2/sのジメチルビニルシリル末端のジメチルシロキサンである。重合体及び剥離改質剤に関して与えられた値は、重合体及び改質剤の合計の重量に対する重量%である。
組成物G及びHでは、剥離改質剤は、ジメチルビニルシロキシ及びトリメチルシロキシ末端のMQ樹脂70重量%、並びにオクタデセン及びテトラデセンの混合物30重量%からなる。実施例I及びJでは、存在するアルケンの50%は、DPが20の本発明による分岐シロキサンによって置き換えられる。適当量の白金をベースとする触媒もまた、組成物に混合された。
【0080】
それぞれの組成物の試料を、一片のグラシン紙上にコーティングし、30秒間150℃の温度で架橋させた。
高速の剥離性能層間剥離試験(HSRPD)(g/50mm)もまた、接着性対照原料テープ源として、市販の積層体を使用して測定された。HSRPDでは、コーティングされた紙は、23℃、相対湿度50%で7日間熟成させられた。架橋させられたコーティング上に、ホットメルト接着剤がコーティングされている高光沢白色原料(テーブル4中のロールラベル)を当てることによって積層体を調製した。積層体を、25kgの重量下、60℃の温度で20時間熟成させて、シリコーンをベースとするコーティング上に接着剤を完全に湿潤させるのを確実にした。層間剥離は、これらのケースでは、様々な速度で、Instrumentors社製のZPE−1000高速剥離試験機を使用して行なわれた。
【0081】
【表5】

【0082】
抽出可能な物質に関しては、分岐シロキサンを含有するコーティングに関する架橋は、プレミアム剥離コーティングと同レベルで残っているのに対して、比較コーティングでは抽出可能な物質の値は、剥離改質剤の含有量が増加すると共に直線的に増加するということに注目すべきである。更には、剥離改質剤組成物中のアルケンの含有量が減少すると、剥離力は維持されるが、架橋過程でスモーキングする影響が顕著に低下する。
【0083】
(実施例7)
下記実施例において、重合体、架橋剤、及び触媒は、実施例6におけるのと全く同じである。しかしながら、剥離改質剤は、組成物Kでは重合度が20の、ビニルジメチルシリル末端のポリジメチルシロキサン55重量%からなり、組成物Lでは、重合度が20の本発明による分岐シロキサンである。なお、両ケースにおいて、残りは、ジメチルビニルシロキシ及びトリメチルシロキシ末端のMQ樹脂45%である。
低速の剥離性能層間剥離試験(LSRPD)を、アクリル系接着剤を使用するTESA(登録商標)7475テープを使用して行なった。これらの試験のそれぞれにおいて、層間剥離は、0.3m/分の剥離速度で、Lloyd社製のInstruments L500伸び計を使用して行なわれた。
【0084】
これらのケースにおいて、異なる基準が、異なる設定時間後の性能を試験するために使用された。Imm.(即座)/1日は、関連するコーティングが、架橋後即座に、TESA(登録商標)7475テープの小片と積層させられ、23℃、相対湿度50%で更に1日間積層体を調節するのに引き続いて層間剥離が行なわれたことを意味する。同様に、Imm/7日は、積層は再度即座であったが、23℃、相対湿度50%で7日間積層体を調節するのに引き続いて層間剥離が行なわれたことを意味する。7日/1日は、架橋7日後に積層が行なわれ、23℃、相対湿度50%で更に1日間積層体を調節した後に、層間剥離が行なわれたことを意味する。最後に、7日/7日は、架橋7日後に積層が行なわれ、23℃、相対湿度50%で更に7日間積層体を調節した後に、層間剥離が行なわれたことを意味する。
HSRPDの結果は、実施例6と全く同様の方法で得られた。
【0085】
【表6】

【0086】
剥離改質剤重合体の全部を、本発明による分岐シロキサンで置き換える場合、抽出可能な物質の値は、プレミアム剥離コーティングと比較して減少することに注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、
ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及び
iii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位
からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)を含む剥離改質剤組成物。
【請求項2】
各Ra置換基が、ビニル及びヘキセニル基からなる群から選択されるアルケニル基である、請求項1に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項3】
前記分岐シロキサンが、下記一般式:
【化1】

(式中、各nは、独立して1〜100であり、Ra置換基及びRb置換基は前記同様の基である)を有する請求項1又は2に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項4】
末端が一般式Rab2SiO1/2からなるM単位であり、少なくとも3個の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、且つi)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、及びii)一般式(Rb2SiO2/2nからなる、少なくとも2個のポリジオルガノシロキサン鎖から構成されると共に、重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各nは、独立して2〜100であり、分岐シロキサン中の合計のRb2SiO2/2単位が15〜995個であり、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)を含む剥離改質剤組成物。
【請求項5】
前記分岐シロキサンの重合度が20〜250である請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項6】
前記分岐シロキサンの25℃における粘度が50mm2/s〜10000mm2/sである請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項7】
前記分岐シロキサンの含有量が25〜85重量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項8】
i)アルケニル化されたシリコーン樹脂、ii)アルケニル化されたポリジオルガノシロキサン、iii)14〜30個の炭素原子を有する1つ以上の第一級アルケン、及びiv)少なくとも14個の炭素原子を有する1つ以上の分岐アルケンからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の剥離改質剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の剥離改質剤組成物を含む剥離コーティング組成物。
【請求項10】
i)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、
ii)一般式Rb2SiO2/2からなる、15〜995個のD単位(ここで、単位i)及びii)は、いかなる適当な組み合わせで内部結合していてもよい)、及び
iii)一般式Rab2SiO1/2からなるM単位
からなり、且つ重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、分岐シロキサン中の少なくとも3つのRa置換基が、アルケニル又はアルキニル単位であり、各Rb置換基が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)と、
組成物中のSiH基の合計数と、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基の合計数との比が0.9:1〜3:1となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤と、
前記分岐シロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤との間の反応に触媒作用を与えるヒドロシリル化触媒と
を含む剥離コーティング組成物。
【請求項11】
各Ra置換基が、ビニル及びヘキセニル基からなる群から選択されるアルケニル基である、請求項10に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項12】
前記分岐シロキサンが、下記一般式:
【化2】

(式中、各nは、独立して1〜100であり、Ra置換基及びRb置換基は前記同様の基である)を有する請求項10又は11に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項13】
末端が一般式Rab2SiO1/2からなるM単位であり、少なくとも3個の脂肪族不飽和炭化水素基を含有し、且つi)一般式SiO4/2からなる、1個以上のQ単位、及びii)一般式(Rb2SiO2/2nからなる、少なくとも2個のポリジオルガノシロキサン鎖から構成されると共に、重合度が20〜1000である分岐シロキサン(式中、各nは、独立して2〜100であり、分岐シロキサン中の合計のRb2SiO2/2単位が15〜995個であり、各Ra置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び1〜6個の炭素原子を有するアルキニル基からなる群から選択され、各Rb置換基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される)と、
組成物中のSiH基の合計数と、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基の合計数との比が0.9:1〜3:1となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤と、
前記分岐シロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン架橋剤との間の反応に触媒作用を与えるヒドロシリル化触媒と
を含む剥離コーティング組成物。
【請求項14】
前記分岐シロキサンの重合度が20〜250である請求項10〜13のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項15】
前記分岐シロキサンの25℃における粘度が50mm2/s〜10000mm2/sである請求項10〜14のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項16】
ヒドロシリル化抑制剤、直鎖状のアルケニル末端のポリジオルガノシロキサン、浴寿命延長剤、シリコーン系剥離改質剤、接着促進剤、1つ以上のフィラー、1つ以上の反応性希釈剤、及び固着添加剤からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含む請求項10〜15のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。

【公開番号】特開2012−117072(P2012−117072A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4990(P2012−4990)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2000−217590(P2000−217590)の分割
【原出願日】平成12年7月18日(2000.7.18)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】