力学量センサー
【課題】信頼性のより高い力学量センサーを提供する。
【解決手段】基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【解決手段】基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力学量センサーに関する。特に、半導体により形成された力学量センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に形成されたアンカー(固定部)と、アンカーに接続され、曲線のみからなる渦巻き形状を有する可動ビーム(可動梁)と、可動ビームの先端に接続された可動電極と、可動電極の周囲に形成され基板に固定された固定電極とを有する加速度センサーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。図1(a)は、このような従来技術に係る加速度センサーの上面図を示し、図1(b)は、加速度センサーのI−I断面線における垂直断面図を示している。符号11はアンカーであり、符号12は可動ビームであり、符号13は可動電極である。また、符号21−28は、固定電極である。また、符号31は基板である。
【0003】
このような加速度センサーに加速度が加わると、可動電極13に力が加わることにより可動ビーム12が変形し、可動電極13と固定電極21−28のいずれかとが接触可能となる。可動電極13と固定電極21−28のいずれかとが接触すると、可動電極13は固定電極21−28のいずれかと導通し、アンカー11から、可動ビーム12および可動電極13を介して、固定電極21−28のいずれかまでの電流経路が形成される。したがって、アンカー11と固定電極21−28とに電圧を印加し、アンカー11と固定電極21−28との間の電流を検出することにより、加速度が加わったことを検出することができる。
【0004】
このような加速度センサーは、例えば、ガスの流量メータに内蔵され、地震の発生時にガスを止めたり、自動車に搭載され、衝突の際にエアクッションを動作させたりするために使用することができる。また、加速度センサーの可動電極13が水平な状態から傾いた状態に変化したことを検出することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に係る加速度センサーにおいては、大きな加速度が上下方向に加わると、可動12ビームと可動電極13とが上下方向に移動することとなる。これにより、図2(a)に示すように可動ビーム12と可動電極13とが基板31と接触する場合がある。このため、可動ビーム12と可動電極13とのいずれかまたは両方が損傷する場合がある。また逆に、図2(b)に示すように可動ビーム12と可動電極13とが上方に移動し、可動電極13が固定電極23に乗り上げてしまう場合がある。これにより、加速度センサーが正常に動作しなくなる場合がある。
【0007】
従来技術に係る加速度センサーの上部に、基板などの構造物を設けて、可動ビーム12および可動電極13の変位を抑制することも行なわれているが、上方に設けた構造物と可動ビーム12と可動電極13とのいずれかまたは両方が損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態として、基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【0009】
本発明の一実施形態として、基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の平行な直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動ビームが直線ビームを用いて構成されるので、可動ビームの上下方向の動きを抑制することが可能となる。したがって、信頼性のより高い力学量センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の加速度センサーの上面図と断面図
【図2】従来の加速度センサーの不具合を説明する図
【図3】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図4】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの断面図
【図5】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの断面図
【図6】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図7】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図8】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図9】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図10】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図11】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図12】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図13】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図14】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図15】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図16】本発明の一実施形態に係る力学量センサーのシミュレーションモデルの上面図
【図17】本発明の一実施形態に係る力学量センサーのシミュレーションモデルの上面図
【図18】従来の加速度センサーのシミュレーションモデルの上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、種々変形を行なって実施することが可能である。また図面においては、上下、左右の縮尺を誇張して図示することにより、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
【0013】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る力学量センサーのアンカー111、ビーム、可動電極113および固定電極121−128の上面図を示す。また、図4は、図3(a)のII−II断面線における断面図である。
【0014】
図3(a)および図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る力学量センサーは、アンカー111と、直線ビーム141、142と直線ビーム141、142との間に配置されるビーム接続部143とを有するビームと、可動電極113と、固定電極121−128と、絶縁基板131とを備える。また、直線ビームの断面は、縦長の矩形となっており、これにより、横方向には撓み易くなり、縦方向には横方向と比較して撓みにくくなる。また、アンカー111と、直線ビーム141と直線ビーム142との間に配置されるビーム接続部143と、可動電極113とは導電性の材料により形成され、絶縁基板131は絶縁性の材料により形成される。例えば、ビーム、アンカー111、可動電極113は、シリコン単結晶に不純物を拡散した材料により形成される。可動電極113は、固定電極121−128とのコンタクト性を高めるために金属材料などを成膜しておいてもよい。なお、アンカー111と、直線ビーム141、142と、ビーム接続部143と、可動電極113と、固定電極121−128の上面の一部または全てが絶縁材料で覆われていてもよい。ただし、可動電極113と固定電極121−128の側面は、導電性の材料が露出し、可動電極113と固定電極121−128とのいずれか1以上とが接触すると、可動電極13は、固定電極121−128とのいずれか1以上と導通するようになっている。
【0015】
アンカー111は、絶縁基板131に固定されている。図3(a)において、上面から見た場合、アンカー111の形状は略円形であるが、アンカー111の形状は略円形に限定されることはなく、任意の形状とすることができる。例えば、楕円、あるいは、三角形、四角形などの多角形状とすることが可能である。
【0016】
直線ビーム141、142は、長手方向に延び直線の形状をしたビームである。また、ビーム接続部143は、直線ビーム141と直線ビーム142との間に配置され、直線ビーム141と直線ビーム142とを接続する。また、図3(a)においては、直線ビーム141の長手方向と直線ビーム142長手方向とは異なる。すなわち、図3(a)においては、隣接する直線ビーム141と直線ビーム142とについて、直線ビーム141の長手方向と直線ビーム142長手方向とは略90度の角度を成している。ただし、本発明は、隣接する直線ビームは略90度を成してビーム接続部により接続されることに限定はされない。隣接する直線ビームは任意の角度を成してビーム接続部により接続されていてもよい。例えば、直線ビーム141と直線ビーム142とが45度、120度をなすように接続することができる。また、後述するように隣接する直線ビームは、平行となっていてもよく、ビーム接続部が隣接する隣接する直線ビームを離す構成となっていてもよい。
【0017】
なお、隣接する2つの直線ビームの側面が滑らかに接続されるようにビーム接続部の側面が曲面となっていてもよい。例えば、ビーム接続部の側面が、丸み面取りされた形状になっていてもよい。より具体的な例を用いて説明すると、ビーム接続部の側面が、円柱の側面の一部となっていてもよい。このようにすることにより、ビーム接続部に応力が集中するのを防止することができる。
【0018】
図3(b)は、隣接する2つの直線ビーム141’と直線ビーム142’の側面が滑らかに接続されるようにビーム接続部143’の側面が曲面となっている例を示す。図3(b)においては、ビーム接続部143’の両側面が曲面となっているが、いずれか一方の側面のみが曲面となっていてもよい。
【0019】
直線ビーム141、142およびビーム接続部143は、絶縁基板131から離れて形成されている。また、可動電極113も絶縁基板131から離れて形成されている。したがって、可動電極113に水平方向に力が加わると、直線ビーム141、142は撓むなどして変形し、可動電極113が水平方向に移動する。
【0020】
また、図3(a)において、ビーム接続部43は、直線ビーム141、142の幅の長さを有する4辺からなる略正方形となっているが、ビーム接続部143は任意の形状とすることができる。例えば、長方形または円盤状の形状としたり、直線状または曲線状の形状としたりすることができる。
【0021】
なお、図3(a)においては2本の直線ビーム141、142と一つのビーム接続部143とが示されているが、任意の本数の直線ビームを用いることができ、したがって、任意の数のビーム接続部を用いることができる。
【0022】
可動電極113は、直線ビーム142に接続された電極である。また、可動電極113は、絶縁基板131から離れて形成されている。図3(a)においては、可動電極113は、円板が開口部を有する円環形状を上面から見た略円形となっているが、任意の形状とすることができる。例えば、開口部を有する正方形、矩形、台形、菱形、楕円形、あるいは、弧状などとすることができる。また、可動電極113は一様な幅の形状である必要もなく、アンカー111、直線ビーム141、142およびビーム接続部143が配置するための部分が開口し、開口部が凹形状となっていてもよい。これにより、可動電極113の質量を増加させることができる。したがって、可動電極113に水平方向の加速度が加えられた場合に可動電極113の質量に応じたより大きな慣性力が起こり、ビームの変形量を大きくなり、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0023】
固定電極121−128は、絶縁基板131に形成され、可動電極113を取り囲むように配置されている電極である。通常は、固定電極121−128は、可動電極113と離れているが、可動電極113に、水平方向に所定の大きさ以上の加速度が加えられると、可動電極113が固定電極121−128のいずれか1以上と接触する。なお、図3(a)においては、固定電極121−128は、8個形成されているが、任意の個数とすることができ、所望の方向分解能によって適宜個数を決めればよい。
【0024】
また、可動電極113と固定電極121−128とのいずれか1以上とが接触すると、可動電極13は、固定電極121−128とのいずれか1以上と導通するようになっているため、少なくとも、可動電極13と固定電極121−128との側面は導電材料により形成されている。また、可動電極113とアンカー111とが、直線ビームとビーム接続部とで形成されるビームにより電気的に接続されている。
【0025】
以上のように力学量センサーを形成することにより、可動電極113に水平方向に加速度が加わると、可動電極113の質量により外力が可動電極13に加わる。これにより、直線ビーム141、142とビーム接続部143とが変形する。したがって、可動電極113に所定の大きさ以上の加速度が加わると、可動電極13が固定電極121−128の少なくとも一つと接触し、アンカー111から固定電極121−128のいずれか1以上へ至る電流経路が形成され、水平方向の加速度が発生したことを検出することができる。また、固定電極121−128のように複数の固定電極を設けることにより、発生した加速度の方向を検出することもできる。
【0026】
なお、上述したように直線ビームの本数およびビーム接続部の数は任意とすることができる。例えば、図3(c)は、本発明の別の実施形態に係る力学量センサーのアンカー、ビーム、可動電極および固定電極の上面図である。図3(c)において、4本の直線ビーム141、142、144、145を用いて2本のビームを構成する。直線ビーム141、144がアンカー111に接続される。直線ビーム142、145が可動電極113に接続される。ビーム接続部143は直線ビーム141と直線ビーム142とを接続し、ビーム接続部146が直線ビーム144と直線ビーム145とを接続している。また、直線ビーム141、ビーム接続部143および直線ビーム142と、直線ビーム144、ビーム接続部146および直線ビーム145とがアンカー111を中心に点対称となるように配置されている。これにより、可動電極113が直線ビーム142と接続されている箇所とは反対側において上下方向に移動することを防止することができる。
【0027】
本発明の一実施形態においては、ビームの構成要素として直線ビームを用いることにより、従来のように曲線形状のビームよりも、直線ビームが上下方向に移動するのを抑制することができる。この点は、後述のようにシミュレーションにより確認された。これによりに、図2を参照して説明した不具合の発生を抑止することができ、課題が解決されることとなる。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係る力学量センサーの別の断面図の一例を示す。図5においては、本発明の一実施形態に係る力学量センサーからの信号の取り出しについて説明をする。図4の固定電極141、144およびアンカー111の上に基板151が配置されている。可動電極113およびビームは、基板131と基板151との間の空隙に配置されている。また、基板151には、基板502を貫通する貫通電極152−154が設けられ、それぞれアンカー111、固定電極128および固定電極124に接触して導通し、基板151上に設けられる配線と接続される。このように基板151を配置することにより、図2(b)に示すように、可動電極13が固定電極の上に乗り上げてしまうことを防止することができる。また、アンカー111および固定電極121−128への配線を容易に形成できる。本発明の一実施形態に係る力学量センサーからの信号の取り出しは図5に限らず、アンカー111、固定電極121−128で絶縁基板131上にレイアウトされた配線を踏みつけるような構造としてもよい。
【0029】
本実施形態に係る力学量センサーの製造方法は次の通りである。少なくとも上面が絶縁性である基板上に、シリコンの膜を配置する。例えば、シリコンウェハをシリコンの膜として基板上に貼り合わせたり、シリコン単結晶を形成したりする。また、基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板であってもよく、SOI基板の活性層を、ここでいうシリコンの膜とすることができる。
【0030】
このシリコンの膜を上方からエッチングを行なうことにより、シリコンの膜を固定電極121−128、アンカー111、ビームおよび可動電極113の形状とする。その後、シリコンの膜の横方向からサイドエッチングを行ない、ビームおよび可動電極113を基板より切り離し、図3および図4に示す構造を得ることができる。
【0031】
基板上に配置されるシリコンの膜の上面の結晶面方位を制御し、シリコンの膜の上面においてヤング率が小さく、かつせん断弾性率が大きい結晶方位に沿うように直線ビームを形成する事が好ましい。これにより可動電極302の上下方向の変形量を小さくすることができる。
【0032】
以下、上述した本発明の一実施形態に係る加速度センサーの変形例を説明する。
【0033】
図6は、第1の変形例に係る力学量センサーの上面図である。本変形例に係る力学量センサーのアンカー601、可動電極602、アンカー601と可動電極602とを接続するビーム、および固定電極621−628を有する。アンカー601と可動電極602との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるビームが4本形成されている。4本のビームそれぞれは、同じ向きに巻いている渦巻き形状に形成されている。それぞれのビームの一端はアンカー601に接続され、他端は可動電極602に接続されている。アンカー601は略正方形であり、可動電極602は環状の形状となっている。図3および図4に示したように、固定電極621−628は、可動電極602を取り囲んで配置されている。アンカー601および固定電極621−628が基板に固定され、ビームおよび可動電極602が基板から離れている。また、可動電極602が固定電極621−628と向き合い、対向している。
【0034】
4本のビームは形状が略同一なので、そのうちの一本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部603と、直線ビーム604−607と、接続部608、ビーム接続部609―611とを有する。
【0035】
直線ビーム604−607は隣接する直線ビームが互いにビーム接続部609−611のいずれかを介して略垂直に配置されている。直線ビーム604、605、606、607の順にアンカー601との距離が大きくなり、可動電極602との距離が小さくなっている。別の見方をすれば、直線ビーム604、605、606、607のそれぞれは中心を同じとし、半径が異なる複数の同心円のいずれかに接している。同心円の中心と、直線ビーム604、605、606、607のそれぞれと同心円との接点と、を結ぶ線分は、直線ビームの同心円との接点を結ぶ隣接する線分が略垂直となっている。
【0036】
アンカー接続部603の一端は、ビームの一端となる(直線ビームの1つとみなすこともできる)。アンカー接続部603の他端は、接続部608を介して、直線ビーム604の一端に接続されている。直線ビーム604の他端は、ビーム接続部609を介して、直線ビーム605の一端に接続されている。直線ビーム605の他端は、ビーム接続部610を介して、直線ビーム606の一端に接続されている。直線ビーム606の他端は、ビーム接続部611を介して、直線ビーム607の一端に接続されている。直線ビーム607の他端は、ビームの他端となる。直線ビーム607の他端は、可動電極602に接続されている。
【0037】
接続部608において、アンカー接続部603の他端と直線ビーム604の一端とが略垂直に接続されている。ビーム接続部609−611のそれぞれにおいて、隣接する直線ビームの一方の他端と他方の一端とが略垂直に接続されている。接続部608、ビーム接続部609、610、611を順にたどる場合、アンカー接続部603の他端から直線ビーム604の一端への方向、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向は、右方のみである。このため、本変形例においては、ビームは渦巻き形状となっている。なお、接続部608、ビーム接続部609、610、611を順にたどる場合、アンカー接続部603の他端から直線ビーム604の一端への方向、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向が左方のみであってもよい。
【0038】
第1の変形例に係る加速度センサーにおいては、ビームが直線ビームを有するので、可動電極の上下方向への移動を抑制することができる。また、第1の変形例に係る加速度センサーにおいては、図3(c)に示すよりも、多くの直線ビームが可動電極に接続され、アンカーと固定電極とを含む平面に対して可動電極が傾くことが制限される。なお、アンカー601が略正方形であること、可動電極602が環状の形状となっていること、ビームが4本であること、可動電極が8個であること、ビーム接続部における直線ビームのなす角度が略垂直であること、アンカー接続部603がアンカー601の一辺に対して略垂直の角度であることは必要に応じて変更することが可能である。
【0039】
図7は、本発明の第2の変形例に係る力学量センサーの上面図である。図7には、力学量センサーのアンカー701、可動電極702、アンカー701と可動電極702とを接続する4本のビーム、および固定電極741−748が示されている。
【0040】
アンカー701と可動電極702との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるビームが4本形成されている。4本のビームそれぞれは、ジグザグ形状に形成され、互いに略90度の角をなして回転対称の形状に形成されている。それぞれのビーム形状は九十九折り形状ということもできる。それぞれのビームの一端はアンカー701に接続され、他端は可動電極702に接続されている。アンカー701は略正方形であり、可動電極702は環状の形状である。固定電極741−748は、可動電極702を取り囲んで配置されている。
【0041】
4本のビームはそれぞれの形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部703と、直線ビーム704−716と、可動電極接続部717と、第1接続部721と、ビーム接続部722−733と、第2接続部734とを有する。
【0042】
直線ビーム704、706、708、710、712、714、716は略平行に配置されている。直線ビーム704、706、708、710、712、714、716の順にアンカー701との距離が大きくなり、可動電極702との距離が小さくなっている。別の見方をすれば、直線ビーム704、706、708、710、712、714、716のそれぞれは、中心を同じとし、半径が異なる複数の同心円のいずれかに接している。直線ビーム704、706、708、710、712、714、716のそれぞれと同心円との接点は略同一の直線上にある。また、この直線上にアンカー接続部703と可動電極接続部717とが配置されている。
【0043】
さらに別の見方をすれば、アンカー701に含まれる位置の一点(例えば、アンカー701の重心点)と直線ビーム704、706、708、710、712、714それぞれの両端とを結ぶことにより、複数の鋭角三角形あるいは直角三角形を得ることができる。一方、アンカー701に含まれる位置の一点と直線ビーム705、707、709、711、713、715のぞれぞれの両端とを結ぶことにより、複数の鈍角三角形を得ることができる。以下、直線ビーム704、706、708、710、712、714のそれぞれを長直線ビームといい、直線ビーム705、707、709、711、713、715を短直線ビームという場合がある。
【0044】
アンカー接続部703の一端は、ビームの一端となる(直線ビームの1つとみなすこともできる)。アンカー接続部703の一端は、アンカー701に接続されている。アンカー接続部703の他端は、第1接続部721を介して、直線ビーム704の一端に接続されている。直線ビーム704の他端は、ビーム接続部722を介して、直線ビーム705の一端に接続されている。直線ビーム705の他端は、ビーム接続部723を介して直線ビーム706の一端に接続されている。直線ビーム706の他端は、ビーム接続部724を介して、直線ビーム707の一端に接続されている。直線ビーム707の他端は、ビーム接続部725を介して、直線ビーム708の一端に接続されている。直線ビーム708の他端は、ビーム接続部726を介して、直線ビーム709の一端に接続されている。直線ビーム709の他端は、ビーム接続部727を介して、直線ビーム710の一端に接続されている。直線ビーム710の他端は、ビーム接続部728を介して、直線ビーム711の一端に接続されている。直線ビーム711の他端は、ビーム接続部729を介して、直線ビーム712の一端に接続されている。直線ビーム712の他端は、ビーム接続部730を介して、直線ビーム713の一端に接続されている。直線ビーム713の他端は、ビーム接続部731を介して、直線ビーム714の一端に接続されている。直線ビーム714の他端は、ビーム接続部732を介して、直線ビーム715の一端に接続されている。直線ビーム715の他端は、ビーム接続部733を介して、直線ビーム716の一端に接続されている。直線ビーム716の他端は、第2接続部734を介して、可動電極接続部717の一端に接続されている。可動電極接続部717の他端は、可動電極702に接続されている。
【0045】
第1接続部721において、アンカー接続部703の他端と直線ビーム704の一端とが略垂直に接続されている。第2接続部734において、直線ビーム716の他端と可動電極接続部717の一端とが略垂直に接続されている。また、ビーム接続部722−733のそれぞれにおいて、隣接する直線ビームの一方の他端と他方の一端とが略垂直に接続されている。第1接続部721、ビーム接続部722−733および第2接続部734を順に見た場合、アンカー接続部703の他端から直線ビーム704の一端への方向、隣接する直線ビームの一方である長直線ビームの他端から他方である短直線ビームの一端への方向、および直線ビーム716の他端から可動電極接続部717の一端への方向は、右方および左方を交互に繰り返す。このため、本変形例においては、ビームはジグザグ形状となっている。あるいはビームは九十九折り形状となっている。
【0046】
なお、図7においては、アンカー701の形状は正方形であるが、アンカー701の形状は正方形に限定されることはなく、任意の形状とすることができる。例えば、楕円、あるいは、三角形、四角形などの多角形状とすることが可能である。また、図7においては1本のビームあたり13本の直線ビームが示されているが、任意の本数の直線ビームを用いることができ、したがって、任意の数のビーム接続部を用いることができる。また、図3において、アンカー接続部303および可動電極接続部317は直線形状のビームとなっているが、曲線形状のビームであってもよい。
【0047】
第2の変形例に係る加速度センサーにおいては、ビームはジグザグ形状あるいは九十九折り形状に形成されているので、図6に示す加速度センサーよりも直線ビームの長さの総和を大きくすることができ、小さな加速度でも可動電極の変位量を大きくすることができ、加速度センサーの感度を上げることができる。また、図6に示す加速度センサーにおいては、平行な直線ビームである直線ビーム604と直線ビーム606との長さの和と別の平行な直線ビームである直線ビーム605と直線ビーム607との長さの和とは略同じであるが、本変形例においては、平行な直線ビーム704、706、708、710、712、714、716の長さの和を、別の平行な直線ビーム705、707、709、711、713、715、717の長さの和よりも大きくすることができ、平行な直線ビーム704、706、708、710、712、714、716と垂直な方向に対する変形量と別の平行な直線ビーム705、707、709、711、713、715、717と垂直な方向に対する変形量とを制御することができる。
【0048】
図8は、第3の変形例に係る力学量センサーのアンカー801、ビーム、可動電極802および固定電極841−848の上面図である。図8に示すように、アンカー801と可動電極802との間に、第2の変形例と同様に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが形成されている。ただし、図8では、ビームが3本形成されている。
【0049】
図8には、3本のビームのうち、1本のビームの各部分について符号803−817、821−834を付したが、これらの部分の接続関係は、第2の変形例のアンカー接続部703と、直線ビーム704−716と、接続部721と、ビーム接続部722−734と同様なので説明を省略する。
【0050】
一般に3点が決まることにより、これらの3点を含む平面が決まるので、このように3本のビームが可動電極に接続されることにより、より少ない本数のビームにより、可動電極の位置をより安定にさせることができる。
【0051】
図9は、第4の変形例に係る力学量センサーのアンカー901、ビーム、可動電極902および固定電極941−948の上面図である。図9に示すように、アンカー901と可動電極902との間に、第2の変形例と同様に、アンカー接続部と直線ビームと接続部とビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが形成されている。ただし、本変形例においては6本形成され、互いに略60度の角度を成すように形成されている点が異なる。
【0052】
図9には、6本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号903、直線ビームとして符号905−915、接続部として符号921、ビーム接続部として符号922−932を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0053】
このようにビームの本数を増やすことにより、可動電極の位置を安定化させることができる。
【0054】
図10は、第5の変形例に係る力学量センサーのアンカー1001、ビーム、可動電極1002および固定電極1041−1048の上面図である。図10には、第2の変形例のように、アンカーと可動電極との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0055】
図10には、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1003を付し、接続部として符号1021を付し、直線ビームとして符号1004−1017を付し、ビーム接続部として1022−1034を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0056】
本変形例では、可動電極1002の形状が第2の変形例と異なり、ビームが配置される部分において可動電極1002が一部切り欠かれた凹形状とし、凸部分1035、1036の間にビームが配置されていることが特徴の一つとなっている。これにより、可動電極の質量を大きくすることができ、小さな加速度でも可動電極に大きな変位を生じさせることができ、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0057】
特に、本変形例では、直線ビーム1006、1008、1010、1012、1014の長さは略同一となり、直線ビーム1005、1009、1013が略同一直線の上に配置され、直線ビーム1007、1011、1015も別の略同一直線の上に配置されている。これにより、ビーム接続部1003から直線ビーム1016までのビームを挟む可動電極の内側の凸部分1036、1035の大きさを大きくすることができ、可動電極の質量を大きくすることができる。これにより小さな加速度でも可動電極に大きな変位を生じさせることができ、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0058】
図11は、第6の変形例に係る力学量センサーのアンカー1101、ビーム、可動電極1102および固定電極1141−1148の上面図である。図11には、第2の変形例に示したように、アンカー1101と可動電極1102との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。本変形例では、可動電極1102は、略正方形に略円形の開口が設けられ、開口の部分にビームが配置されている。開口は略円形である必要はなく、略正方形などの矩形であってもよいし、任意の形状とすることもできる。
【0059】
図11には、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1103を付し、接続部として符号1121を付し、直線ビームとして符号1104−1115を付し、ビーム接続部として1122−1132を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0060】
本変形例では、可動電極は円環形状ではなく、矩形状、特に正方形の形状となっている。これにより、可動電極が固定電極に接触した場合の接触面積を大きくすることができ、物理量の検出をより確実に行なうことができる。ビームは、ジグザグ形状あるいは九十九折り形状の代わりに、図6に示すように、渦巻き形状とすることもできる。
【0061】
また、本変形例では、可動電極は円環形状ではなく、矩形状となっているので、図10のように、可動電極の内部に凸形状の部分を設けなくても、可動電極の質量を大きくすることが可能となる。
【0062】
図12は、第7の変形例に係る力学量センサーのアンカー1201、ビーム、可動電極1202および固定電極1231−1238の上面図である。図12には、アンカー1201と可動電極1202との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0063】
4本のビームは形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、直線ビーム1203−1211とビーム接続部1221−1228とを有する。直線ビーム1203の一端はアンカー1201に接続され、他端はビーム接続部1203により、鋭角をなして直線ビーム1204の一端に接続されている。直線ビーム1204の他端はビーム接続部1222により、鋭角をなして直線ビーム1205の一端に接続されている。直線ビーム1205の他端はビーム接続部1223により鋭角をなして直線ビーム1206の一端に接続されている。直線ビーム1206の他端は、ビーム接続部1224により鋭角をなして直線ビーム1207の一端に接続されている。直線ビーム1207の他端は、ビーム接続部1225により鋭角をなして直線ビーム1208の一端に接続されている。直線ビーム1208の他端は、ビーム接続部1226により鋭角をなして直線ビーム1209の一端に接続されている。直線ビーム1209の他端は、ビーム接続部1227により鋭角をなして直線ビーム1210の一端に接続されている。直線ビーム1210の他端はビーム接続部1228により直線ビーム1211の一端に接続されている。直線ビーム1211の他端は可動電極1202に接続されている。
【0064】
ビーム接続部1221、1222、1223、1224、1225、1226、1227、1228を順に見た場合、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向は、右方および左方を交互に繰り返す。このため、本変形例においては、ビームはジグザグ形状あるいは九十九折り形状となっている。
【0065】
別の見方をすれば、アンカー1201との距離が大きくなるにしたがって、直線ビーム1203−1211の長さが大きくなっている。アンカー1201から離れるにしたがってより長い直線ビームを配置するスペースが得られるので、水平方向への変位が大きいビームが得られる。
【0066】
図13は、第8の変形例に係る力学量センサーのアンカー1301、ビーム、可動電極1302および固定電極1321−1328の上面図である。図13には、アンカー1301と可動電極1302との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り状の形状のビームが4本示されている。
【0067】
4本のビームは形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部1303と、第1接続部1311と、直線ビーム1304−1308と、第2接続部1316と、可動電極接続部1309と、ビーム接続部1312−1315とを有する。アンカー接続部1303の一端はアンカー1301に接続され、他端は、第1接続部1311を介して直線ビーム1304の一端に接続されている。直線ビーム1304の他端はビーム接続部1312を介して直線ビーム1305の一端に接続されている。直線ビーム1305の他端は、ビーム接続部1313を介して直線ビーム1306の一端に接続されている。直線ビーム1306の他端は、ビーム接続部1314を介して直線ビーム1307の一端に接続されている。直線ビーム1307の他端は、ビーム接続部1315を介して直線ビーム1308の一端に接続されている。直線ビーム1308の他端は、第2接続部1316を介して可動電極接続部1309の一端に接続されている。可動電極接続部1309の他端は可動電極1302に接続されている。
【0068】
本変形例では、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308の順にアンカー1301との距離が大きくなり、可動電極1302との距離が小さくなる。別の見方をすれば、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308は、中心が同じであり半径が異なる複数の同心円のいずれかに接する。また、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308と同心円のいずれかとの接点は同一の直線上にある。
【0069】
第2の変形例と本変形例との違いは、ビーム接続部1312−1315が、中心角が略180度の円弧の形状となっている点である。これにより、ビーム接続部が接続する直線ビームは略平行となっている。ただし、本変形例において、ビーム接続部の形状は、中心角が略180度の円弧の形状に限られることはなく、例えば中心角は180度より小さくてもよい。また、円弧である必要はなく、放物線などの任意の曲線とすることができる。
【0070】
また、第1接続部1311、第2接続部1316は円弧や曲線の形状となっていてもよい。
【0071】
本変形例では、曲線形状のビーム接続部が用いられていることにより、ビームが変形した際にビーム接続部に加わる応力を分散させることができ、ビームの破損を防止することができる。
【0072】
図14は、第9の変形例に係る力学量センサーのアンカー1401、ビーム、可動電極1402および固定電極1421−1428の上面図である。図14には、第2の変形例と同様に、アンカー1401と可動電極1402との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0073】
図14においては、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1403、直線ビームとして符号1405−1413、接続部として符号1421、ビーム接続部として符号1422−1430を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0074】
本変形例では、第2の変形例として説明した内容と異なり、直線ビーム1405−1413の幅が異なり、アンカー1401に近い直線ビームほど幅が大きくなっている。これにより、ビームが変形した際に、アンカーとビームとが接続されている部分に加わる応力による破損を防止することができる。同様に、可動電極に近い部分の幅をアンカーに近い部分よりも大きくすることにより、可動電極とビームとが接続されている部分に加わる応力による破損を防止することができる。また、アンカーと可動電極との中間の位置の幅を、アンカーまたは可動電極に近い位置の幅よりも小さくすることもできる。これにより、力学量センサーの感度を調整することができる。
【0075】
図15は、第10の変形例に係る物理量センサーのアンカー1501、ビーム、可動電極1511−1518の上面図である。図15においては、第1の変形例と同様に、アンカーと可動電極との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成される渦巻き形状のビームが4本示されている。
【0076】
本変形例では、隣接する平行な直線ビーム間の距離が一様ではない。すなわち、間隔1502、間隔1503、間隔1504の順序で大きさが小さくなっている。このようにビーム間の距離を変化させることにより、ビームの変形量を制御し、力学量センサーの感度を調整することができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態の変形例をいくつか説明したが、本発明は、以上の説明に限定されることはなく、さらに変形して実施することもできる。また、複数の変形例の特徴を組み合わせて実施することもできる。例えば、アンカーの形状は正三角形、正方形、正六角形である必要はない。また、可動電極が環状の形状となっていること、ビームが3〜6本であること、可動電極が8個である必要はなく、種々に変形することができる。
【0078】
(直線ビームが有る場合と直線ビームが無い場合との比較結果)
以下、本発明の一実施形態に係る、直線ビームが有る力学量センサーと従来技術に係る、直線ビームが無い加速度センサーとの別のシミュレーションによる比較について説明する。
【0079】
図16は、本発明の一実施形態に係る第1のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図であり、図17は、本発明の一実施形態に係る第2のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図であり、図18は、従来技術に係る第3のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図である。
【0080】
第1〜3のモデルに共通なパラメータは次の通りである。アンカー、ビームおよび可動電極は、厚さが50μmのシリコンであり、ビームの幅は15μmである。また、可動電極は、外周の形状が、半径Rが1685μmとなる円である。これをまとめると表1のようになる。なお、シリコンの結晶面方位が(100)面となるものとした。
【表1】
【0081】
第1のモデルにおいて、可動電極は、一辺の長さLが2200μmの正方形の開口を有し、アンカーは、一辺の長さSが400μmの正方形の形状をしている。また、ビームを4本形成し、それぞれのビームは直線形状のアンカー接続部と4本の直線ビームを有し、アンカー接続部および4本の直線ビームの隣接するものは略90度の角をなし、ビーム全体は渦巻き形状となっている。また、隣接する平行な直線ビーム間の距離Dは200μmである。また、直線ビームは、劈開面から45度傾いている。
【0082】
第2のモデルにおいて、可動電極は、半径L/2が1385μmの開口を有し、アンカーは、一辺の長さSが400μmの正方形の形状をしている。また、ビームを4本形成し、直線ビームのうち、長直線ビーム間の距離Dは100μmである。また、直線ビームは、劈開面から45度傾いている。
【0083】
第3のモデルにおいて、可動電極は、半径L/2が1385μmの開口を有し、アンカーは、半径が700μmの円形状を有している。また、ビームは1本の渦巻き形状であり、ビーム間の距離Dが140μmとなる渦巻き形状である。
【0084】
以上説明した第1のモデル、第2のモデル、第3のモデルのパラメータを示すと表2のようになる(表13に示したものを除く)。
【表2】
【0085】
以上のモデルに対して、一辺の長さの平均が10μmの三角錐を用いた有限要素法により、水平方向と垂直方向とのそれぞれに1Gの加速度を加えた場合の、可動電極の変位量を計算した。その結果は、以下に示す表3となった。
【表3】
ここに、「変位量の比」とは、水平方向変位量に対する垂直方向変位量の比である(以下においても同じ。)。変位量の比が小さいほど、水平方向変位量に対する垂直方向変位量が小さくなることとなる。したがって、ビームの水平方向の変位量に比較して垂直方向の変位量が小さいことを示す。したがって、変位量の比が小さいほど、本発明の課題の解決にとっては、好ましいこととなる。
【0086】
表3に示されるように、直線ビームを有する第1のモデルおよび第2のモデルのいずれにおいても、従来の曲線のビームのみを有する第3のモデルよりも、変動量の比は小さくなっている。すなわち、本発明の一実施形態に係る力学量センサーにおいては、水平方向に対する垂直方向の変位量は、従来技術に係る加速度センサーよりも相対的に小さくなり、課題が解決されることがわかる。
【0087】
本発明の力学量センサーは、傾き等を検知することができ、種々の力学量を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
111 アンカー
121−128 固定電極
113 可動電極
141、142、144、145 直線ビーム
143、146 ビーム接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、力学量センサーに関する。特に、半導体により形成された力学量センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に形成されたアンカー(固定部)と、アンカーに接続され、曲線のみからなる渦巻き形状を有する可動ビーム(可動梁)と、可動ビームの先端に接続された可動電極と、可動電極の周囲に形成され基板に固定された固定電極とを有する加速度センサーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。図1(a)は、このような従来技術に係る加速度センサーの上面図を示し、図1(b)は、加速度センサーのI−I断面線における垂直断面図を示している。符号11はアンカーであり、符号12は可動ビームであり、符号13は可動電極である。また、符号21−28は、固定電極である。また、符号31は基板である。
【0003】
このような加速度センサーに加速度が加わると、可動電極13に力が加わることにより可動ビーム12が変形し、可動電極13と固定電極21−28のいずれかとが接触可能となる。可動電極13と固定電極21−28のいずれかとが接触すると、可動電極13は固定電極21−28のいずれかと導通し、アンカー11から、可動ビーム12および可動電極13を介して、固定電極21−28のいずれかまでの電流経路が形成される。したがって、アンカー11と固定電極21−28とに電圧を印加し、アンカー11と固定電極21−28との間の電流を検出することにより、加速度が加わったことを検出することができる。
【0004】
このような加速度センサーは、例えば、ガスの流量メータに内蔵され、地震の発生時にガスを止めたり、自動車に搭載され、衝突の際にエアクッションを動作させたりするために使用することができる。また、加速度センサーの可動電極13が水平な状態から傾いた状態に変化したことを検出することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−242052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に係る加速度センサーにおいては、大きな加速度が上下方向に加わると、可動12ビームと可動電極13とが上下方向に移動することとなる。これにより、図2(a)に示すように可動ビーム12と可動電極13とが基板31と接触する場合がある。このため、可動ビーム12と可動電極13とのいずれかまたは両方が損傷する場合がある。また逆に、図2(b)に示すように可動ビーム12と可動電極13とが上方に移動し、可動電極13が固定電極23に乗り上げてしまう場合がある。これにより、加速度センサーが正常に動作しなくなる場合がある。
【0007】
従来技術に係る加速度センサーの上部に、基板などの構造物を設けて、可動ビーム12および可動電極13の変位を抑制することも行なわれているが、上方に設けた構造物と可動ビーム12と可動電極13とのいずれかまたは両方が損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態として、基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【0009】
本発明の一実施形態として、基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、前記ビームは、複数の平行な直線ビームと前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサーを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動ビームが直線ビームを用いて構成されるので、可動ビームの上下方向の動きを抑制することが可能となる。したがって、信頼性のより高い力学量センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の加速度センサーの上面図と断面図
【図2】従来の加速度センサーの不具合を説明する図
【図3】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図4】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの断面図
【図5】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの断面図
【図6】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図7】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図8】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図9】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図10】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図11】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図12】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図13】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図14】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図15】本発明の一実施形態に係る力学量センサーの上面図
【図16】本発明の一実施形態に係る力学量センサーのシミュレーションモデルの上面図
【図17】本発明の一実施形態に係る力学量センサーのシミュレーションモデルの上面図
【図18】従来の加速度センサーのシミュレーションモデルの上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、種々変形を行なって実施することが可能である。また図面においては、上下、左右の縮尺を誇張して図示することにより、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
【0013】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る力学量センサーのアンカー111、ビーム、可動電極113および固定電極121−128の上面図を示す。また、図4は、図3(a)のII−II断面線における断面図である。
【0014】
図3(a)および図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る力学量センサーは、アンカー111と、直線ビーム141、142と直線ビーム141、142との間に配置されるビーム接続部143とを有するビームと、可動電極113と、固定電極121−128と、絶縁基板131とを備える。また、直線ビームの断面は、縦長の矩形となっており、これにより、横方向には撓み易くなり、縦方向には横方向と比較して撓みにくくなる。また、アンカー111と、直線ビーム141と直線ビーム142との間に配置されるビーム接続部143と、可動電極113とは導電性の材料により形成され、絶縁基板131は絶縁性の材料により形成される。例えば、ビーム、アンカー111、可動電極113は、シリコン単結晶に不純物を拡散した材料により形成される。可動電極113は、固定電極121−128とのコンタクト性を高めるために金属材料などを成膜しておいてもよい。なお、アンカー111と、直線ビーム141、142と、ビーム接続部143と、可動電極113と、固定電極121−128の上面の一部または全てが絶縁材料で覆われていてもよい。ただし、可動電極113と固定電極121−128の側面は、導電性の材料が露出し、可動電極113と固定電極121−128とのいずれか1以上とが接触すると、可動電極13は、固定電極121−128とのいずれか1以上と導通するようになっている。
【0015】
アンカー111は、絶縁基板131に固定されている。図3(a)において、上面から見た場合、アンカー111の形状は略円形であるが、アンカー111の形状は略円形に限定されることはなく、任意の形状とすることができる。例えば、楕円、あるいは、三角形、四角形などの多角形状とすることが可能である。
【0016】
直線ビーム141、142は、長手方向に延び直線の形状をしたビームである。また、ビーム接続部143は、直線ビーム141と直線ビーム142との間に配置され、直線ビーム141と直線ビーム142とを接続する。また、図3(a)においては、直線ビーム141の長手方向と直線ビーム142長手方向とは異なる。すなわち、図3(a)においては、隣接する直線ビーム141と直線ビーム142とについて、直線ビーム141の長手方向と直線ビーム142長手方向とは略90度の角度を成している。ただし、本発明は、隣接する直線ビームは略90度を成してビーム接続部により接続されることに限定はされない。隣接する直線ビームは任意の角度を成してビーム接続部により接続されていてもよい。例えば、直線ビーム141と直線ビーム142とが45度、120度をなすように接続することができる。また、後述するように隣接する直線ビームは、平行となっていてもよく、ビーム接続部が隣接する隣接する直線ビームを離す構成となっていてもよい。
【0017】
なお、隣接する2つの直線ビームの側面が滑らかに接続されるようにビーム接続部の側面が曲面となっていてもよい。例えば、ビーム接続部の側面が、丸み面取りされた形状になっていてもよい。より具体的な例を用いて説明すると、ビーム接続部の側面が、円柱の側面の一部となっていてもよい。このようにすることにより、ビーム接続部に応力が集中するのを防止することができる。
【0018】
図3(b)は、隣接する2つの直線ビーム141’と直線ビーム142’の側面が滑らかに接続されるようにビーム接続部143’の側面が曲面となっている例を示す。図3(b)においては、ビーム接続部143’の両側面が曲面となっているが、いずれか一方の側面のみが曲面となっていてもよい。
【0019】
直線ビーム141、142およびビーム接続部143は、絶縁基板131から離れて形成されている。また、可動電極113も絶縁基板131から離れて形成されている。したがって、可動電極113に水平方向に力が加わると、直線ビーム141、142は撓むなどして変形し、可動電極113が水平方向に移動する。
【0020】
また、図3(a)において、ビーム接続部43は、直線ビーム141、142の幅の長さを有する4辺からなる略正方形となっているが、ビーム接続部143は任意の形状とすることができる。例えば、長方形または円盤状の形状としたり、直線状または曲線状の形状としたりすることができる。
【0021】
なお、図3(a)においては2本の直線ビーム141、142と一つのビーム接続部143とが示されているが、任意の本数の直線ビームを用いることができ、したがって、任意の数のビーム接続部を用いることができる。
【0022】
可動電極113は、直線ビーム142に接続された電極である。また、可動電極113は、絶縁基板131から離れて形成されている。図3(a)においては、可動電極113は、円板が開口部を有する円環形状を上面から見た略円形となっているが、任意の形状とすることができる。例えば、開口部を有する正方形、矩形、台形、菱形、楕円形、あるいは、弧状などとすることができる。また、可動電極113は一様な幅の形状である必要もなく、アンカー111、直線ビーム141、142およびビーム接続部143が配置するための部分が開口し、開口部が凹形状となっていてもよい。これにより、可動電極113の質量を増加させることができる。したがって、可動電極113に水平方向の加速度が加えられた場合に可動電極113の質量に応じたより大きな慣性力が起こり、ビームの変形量を大きくなり、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0023】
固定電極121−128は、絶縁基板131に形成され、可動電極113を取り囲むように配置されている電極である。通常は、固定電極121−128は、可動電極113と離れているが、可動電極113に、水平方向に所定の大きさ以上の加速度が加えられると、可動電極113が固定電極121−128のいずれか1以上と接触する。なお、図3(a)においては、固定電極121−128は、8個形成されているが、任意の個数とすることができ、所望の方向分解能によって適宜個数を決めればよい。
【0024】
また、可動電極113と固定電極121−128とのいずれか1以上とが接触すると、可動電極13は、固定電極121−128とのいずれか1以上と導通するようになっているため、少なくとも、可動電極13と固定電極121−128との側面は導電材料により形成されている。また、可動電極113とアンカー111とが、直線ビームとビーム接続部とで形成されるビームにより電気的に接続されている。
【0025】
以上のように力学量センサーを形成することにより、可動電極113に水平方向に加速度が加わると、可動電極113の質量により外力が可動電極13に加わる。これにより、直線ビーム141、142とビーム接続部143とが変形する。したがって、可動電極113に所定の大きさ以上の加速度が加わると、可動電極13が固定電極121−128の少なくとも一つと接触し、アンカー111から固定電極121−128のいずれか1以上へ至る電流経路が形成され、水平方向の加速度が発生したことを検出することができる。また、固定電極121−128のように複数の固定電極を設けることにより、発生した加速度の方向を検出することもできる。
【0026】
なお、上述したように直線ビームの本数およびビーム接続部の数は任意とすることができる。例えば、図3(c)は、本発明の別の実施形態に係る力学量センサーのアンカー、ビーム、可動電極および固定電極の上面図である。図3(c)において、4本の直線ビーム141、142、144、145を用いて2本のビームを構成する。直線ビーム141、144がアンカー111に接続される。直線ビーム142、145が可動電極113に接続される。ビーム接続部143は直線ビーム141と直線ビーム142とを接続し、ビーム接続部146が直線ビーム144と直線ビーム145とを接続している。また、直線ビーム141、ビーム接続部143および直線ビーム142と、直線ビーム144、ビーム接続部146および直線ビーム145とがアンカー111を中心に点対称となるように配置されている。これにより、可動電極113が直線ビーム142と接続されている箇所とは反対側において上下方向に移動することを防止することができる。
【0027】
本発明の一実施形態においては、ビームの構成要素として直線ビームを用いることにより、従来のように曲線形状のビームよりも、直線ビームが上下方向に移動するのを抑制することができる。この点は、後述のようにシミュレーションにより確認された。これによりに、図2を参照して説明した不具合の発生を抑止することができ、課題が解決されることとなる。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係る力学量センサーの別の断面図の一例を示す。図5においては、本発明の一実施形態に係る力学量センサーからの信号の取り出しについて説明をする。図4の固定電極141、144およびアンカー111の上に基板151が配置されている。可動電極113およびビームは、基板131と基板151との間の空隙に配置されている。また、基板151には、基板502を貫通する貫通電極152−154が設けられ、それぞれアンカー111、固定電極128および固定電極124に接触して導通し、基板151上に設けられる配線と接続される。このように基板151を配置することにより、図2(b)に示すように、可動電極13が固定電極の上に乗り上げてしまうことを防止することができる。また、アンカー111および固定電極121−128への配線を容易に形成できる。本発明の一実施形態に係る力学量センサーからの信号の取り出しは図5に限らず、アンカー111、固定電極121−128で絶縁基板131上にレイアウトされた配線を踏みつけるような構造としてもよい。
【0029】
本実施形態に係る力学量センサーの製造方法は次の通りである。少なくとも上面が絶縁性である基板上に、シリコンの膜を配置する。例えば、シリコンウェハをシリコンの膜として基板上に貼り合わせたり、シリコン単結晶を形成したりする。また、基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板であってもよく、SOI基板の活性層を、ここでいうシリコンの膜とすることができる。
【0030】
このシリコンの膜を上方からエッチングを行なうことにより、シリコンの膜を固定電極121−128、アンカー111、ビームおよび可動電極113の形状とする。その後、シリコンの膜の横方向からサイドエッチングを行ない、ビームおよび可動電極113を基板より切り離し、図3および図4に示す構造を得ることができる。
【0031】
基板上に配置されるシリコンの膜の上面の結晶面方位を制御し、シリコンの膜の上面においてヤング率が小さく、かつせん断弾性率が大きい結晶方位に沿うように直線ビームを形成する事が好ましい。これにより可動電極302の上下方向の変形量を小さくすることができる。
【0032】
以下、上述した本発明の一実施形態に係る加速度センサーの変形例を説明する。
【0033】
図6は、第1の変形例に係る力学量センサーの上面図である。本変形例に係る力学量センサーのアンカー601、可動電極602、アンカー601と可動電極602とを接続するビーム、および固定電極621−628を有する。アンカー601と可動電極602との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるビームが4本形成されている。4本のビームそれぞれは、同じ向きに巻いている渦巻き形状に形成されている。それぞれのビームの一端はアンカー601に接続され、他端は可動電極602に接続されている。アンカー601は略正方形であり、可動電極602は環状の形状となっている。図3および図4に示したように、固定電極621−628は、可動電極602を取り囲んで配置されている。アンカー601および固定電極621−628が基板に固定され、ビームおよび可動電極602が基板から離れている。また、可動電極602が固定電極621−628と向き合い、対向している。
【0034】
4本のビームは形状が略同一なので、そのうちの一本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部603と、直線ビーム604−607と、接続部608、ビーム接続部609―611とを有する。
【0035】
直線ビーム604−607は隣接する直線ビームが互いにビーム接続部609−611のいずれかを介して略垂直に配置されている。直線ビーム604、605、606、607の順にアンカー601との距離が大きくなり、可動電極602との距離が小さくなっている。別の見方をすれば、直線ビーム604、605、606、607のそれぞれは中心を同じとし、半径が異なる複数の同心円のいずれかに接している。同心円の中心と、直線ビーム604、605、606、607のそれぞれと同心円との接点と、を結ぶ線分は、直線ビームの同心円との接点を結ぶ隣接する線分が略垂直となっている。
【0036】
アンカー接続部603の一端は、ビームの一端となる(直線ビームの1つとみなすこともできる)。アンカー接続部603の他端は、接続部608を介して、直線ビーム604の一端に接続されている。直線ビーム604の他端は、ビーム接続部609を介して、直線ビーム605の一端に接続されている。直線ビーム605の他端は、ビーム接続部610を介して、直線ビーム606の一端に接続されている。直線ビーム606の他端は、ビーム接続部611を介して、直線ビーム607の一端に接続されている。直線ビーム607の他端は、ビームの他端となる。直線ビーム607の他端は、可動電極602に接続されている。
【0037】
接続部608において、アンカー接続部603の他端と直線ビーム604の一端とが略垂直に接続されている。ビーム接続部609−611のそれぞれにおいて、隣接する直線ビームの一方の他端と他方の一端とが略垂直に接続されている。接続部608、ビーム接続部609、610、611を順にたどる場合、アンカー接続部603の他端から直線ビーム604の一端への方向、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向は、右方のみである。このため、本変形例においては、ビームは渦巻き形状となっている。なお、接続部608、ビーム接続部609、610、611を順にたどる場合、アンカー接続部603の他端から直線ビーム604の一端への方向、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向が左方のみであってもよい。
【0038】
第1の変形例に係る加速度センサーにおいては、ビームが直線ビームを有するので、可動電極の上下方向への移動を抑制することができる。また、第1の変形例に係る加速度センサーにおいては、図3(c)に示すよりも、多くの直線ビームが可動電極に接続され、アンカーと固定電極とを含む平面に対して可動電極が傾くことが制限される。なお、アンカー601が略正方形であること、可動電極602が環状の形状となっていること、ビームが4本であること、可動電極が8個であること、ビーム接続部における直線ビームのなす角度が略垂直であること、アンカー接続部603がアンカー601の一辺に対して略垂直の角度であることは必要に応じて変更することが可能である。
【0039】
図7は、本発明の第2の変形例に係る力学量センサーの上面図である。図7には、力学量センサーのアンカー701、可動電極702、アンカー701と可動電極702とを接続する4本のビーム、および固定電極741−748が示されている。
【0040】
アンカー701と可動電極702との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるビームが4本形成されている。4本のビームそれぞれは、ジグザグ形状に形成され、互いに略90度の角をなして回転対称の形状に形成されている。それぞれのビーム形状は九十九折り形状ということもできる。それぞれのビームの一端はアンカー701に接続され、他端は可動電極702に接続されている。アンカー701は略正方形であり、可動電極702は環状の形状である。固定電極741−748は、可動電極702を取り囲んで配置されている。
【0041】
4本のビームはそれぞれの形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部703と、直線ビーム704−716と、可動電極接続部717と、第1接続部721と、ビーム接続部722−733と、第2接続部734とを有する。
【0042】
直線ビーム704、706、708、710、712、714、716は略平行に配置されている。直線ビーム704、706、708、710、712、714、716の順にアンカー701との距離が大きくなり、可動電極702との距離が小さくなっている。別の見方をすれば、直線ビーム704、706、708、710、712、714、716のそれぞれは、中心を同じとし、半径が異なる複数の同心円のいずれかに接している。直線ビーム704、706、708、710、712、714、716のそれぞれと同心円との接点は略同一の直線上にある。また、この直線上にアンカー接続部703と可動電極接続部717とが配置されている。
【0043】
さらに別の見方をすれば、アンカー701に含まれる位置の一点(例えば、アンカー701の重心点)と直線ビーム704、706、708、710、712、714それぞれの両端とを結ぶことにより、複数の鋭角三角形あるいは直角三角形を得ることができる。一方、アンカー701に含まれる位置の一点と直線ビーム705、707、709、711、713、715のぞれぞれの両端とを結ぶことにより、複数の鈍角三角形を得ることができる。以下、直線ビーム704、706、708、710、712、714のそれぞれを長直線ビームといい、直線ビーム705、707、709、711、713、715を短直線ビームという場合がある。
【0044】
アンカー接続部703の一端は、ビームの一端となる(直線ビームの1つとみなすこともできる)。アンカー接続部703の一端は、アンカー701に接続されている。アンカー接続部703の他端は、第1接続部721を介して、直線ビーム704の一端に接続されている。直線ビーム704の他端は、ビーム接続部722を介して、直線ビーム705の一端に接続されている。直線ビーム705の他端は、ビーム接続部723を介して直線ビーム706の一端に接続されている。直線ビーム706の他端は、ビーム接続部724を介して、直線ビーム707の一端に接続されている。直線ビーム707の他端は、ビーム接続部725を介して、直線ビーム708の一端に接続されている。直線ビーム708の他端は、ビーム接続部726を介して、直線ビーム709の一端に接続されている。直線ビーム709の他端は、ビーム接続部727を介して、直線ビーム710の一端に接続されている。直線ビーム710の他端は、ビーム接続部728を介して、直線ビーム711の一端に接続されている。直線ビーム711の他端は、ビーム接続部729を介して、直線ビーム712の一端に接続されている。直線ビーム712の他端は、ビーム接続部730を介して、直線ビーム713の一端に接続されている。直線ビーム713の他端は、ビーム接続部731を介して、直線ビーム714の一端に接続されている。直線ビーム714の他端は、ビーム接続部732を介して、直線ビーム715の一端に接続されている。直線ビーム715の他端は、ビーム接続部733を介して、直線ビーム716の一端に接続されている。直線ビーム716の他端は、第2接続部734を介して、可動電極接続部717の一端に接続されている。可動電極接続部717の他端は、可動電極702に接続されている。
【0045】
第1接続部721において、アンカー接続部703の他端と直線ビーム704の一端とが略垂直に接続されている。第2接続部734において、直線ビーム716の他端と可動電極接続部717の一端とが略垂直に接続されている。また、ビーム接続部722−733のそれぞれにおいて、隣接する直線ビームの一方の他端と他方の一端とが略垂直に接続されている。第1接続部721、ビーム接続部722−733および第2接続部734を順に見た場合、アンカー接続部703の他端から直線ビーム704の一端への方向、隣接する直線ビームの一方である長直線ビームの他端から他方である短直線ビームの一端への方向、および直線ビーム716の他端から可動電極接続部717の一端への方向は、右方および左方を交互に繰り返す。このため、本変形例においては、ビームはジグザグ形状となっている。あるいはビームは九十九折り形状となっている。
【0046】
なお、図7においては、アンカー701の形状は正方形であるが、アンカー701の形状は正方形に限定されることはなく、任意の形状とすることができる。例えば、楕円、あるいは、三角形、四角形などの多角形状とすることが可能である。また、図7においては1本のビームあたり13本の直線ビームが示されているが、任意の本数の直線ビームを用いることができ、したがって、任意の数のビーム接続部を用いることができる。また、図3において、アンカー接続部303および可動電極接続部317は直線形状のビームとなっているが、曲線形状のビームであってもよい。
【0047】
第2の変形例に係る加速度センサーにおいては、ビームはジグザグ形状あるいは九十九折り形状に形成されているので、図6に示す加速度センサーよりも直線ビームの長さの総和を大きくすることができ、小さな加速度でも可動電極の変位量を大きくすることができ、加速度センサーの感度を上げることができる。また、図6に示す加速度センサーにおいては、平行な直線ビームである直線ビーム604と直線ビーム606との長さの和と別の平行な直線ビームである直線ビーム605と直線ビーム607との長さの和とは略同じであるが、本変形例においては、平行な直線ビーム704、706、708、710、712、714、716の長さの和を、別の平行な直線ビーム705、707、709、711、713、715、717の長さの和よりも大きくすることができ、平行な直線ビーム704、706、708、710、712、714、716と垂直な方向に対する変形量と別の平行な直線ビーム705、707、709、711、713、715、717と垂直な方向に対する変形量とを制御することができる。
【0048】
図8は、第3の変形例に係る力学量センサーのアンカー801、ビーム、可動電極802および固定電極841−848の上面図である。図8に示すように、アンカー801と可動電極802との間に、第2の変形例と同様に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが形成されている。ただし、図8では、ビームが3本形成されている。
【0049】
図8には、3本のビームのうち、1本のビームの各部分について符号803−817、821−834を付したが、これらの部分の接続関係は、第2の変形例のアンカー接続部703と、直線ビーム704−716と、接続部721と、ビーム接続部722−734と同様なので説明を省略する。
【0050】
一般に3点が決まることにより、これらの3点を含む平面が決まるので、このように3本のビームが可動電極に接続されることにより、より少ない本数のビームにより、可動電極の位置をより安定にさせることができる。
【0051】
図9は、第4の変形例に係る力学量センサーのアンカー901、ビーム、可動電極902および固定電極941−948の上面図である。図9に示すように、アンカー901と可動電極902との間に、第2の変形例と同様に、アンカー接続部と直線ビームと接続部とビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが形成されている。ただし、本変形例においては6本形成され、互いに略60度の角度を成すように形成されている点が異なる。
【0052】
図9には、6本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号903、直線ビームとして符号905−915、接続部として符号921、ビーム接続部として符号922−932を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0053】
このようにビームの本数を増やすことにより、可動電極の位置を安定化させることができる。
【0054】
図10は、第5の変形例に係る力学量センサーのアンカー1001、ビーム、可動電極1002および固定電極1041−1048の上面図である。図10には、第2の変形例のように、アンカーと可動電極との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0055】
図10には、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1003を付し、接続部として符号1021を付し、直線ビームとして符号1004−1017を付し、ビーム接続部として1022−1034を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0056】
本変形例では、可動電極1002の形状が第2の変形例と異なり、ビームが配置される部分において可動電極1002が一部切り欠かれた凹形状とし、凸部分1035、1036の間にビームが配置されていることが特徴の一つとなっている。これにより、可動電極の質量を大きくすることができ、小さな加速度でも可動電極に大きな変位を生じさせることができ、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0057】
特に、本変形例では、直線ビーム1006、1008、1010、1012、1014の長さは略同一となり、直線ビーム1005、1009、1013が略同一直線の上に配置され、直線ビーム1007、1011、1015も別の略同一直線の上に配置されている。これにより、ビーム接続部1003から直線ビーム1016までのビームを挟む可動電極の内側の凸部分1036、1035の大きさを大きくすることができ、可動電極の質量を大きくすることができる。これにより小さな加速度でも可動電極に大きな変位を生じさせることができ、力学量センサーの感度を上げることができる。
【0058】
図11は、第6の変形例に係る力学量センサーのアンカー1101、ビーム、可動電極1102および固定電極1141−1148の上面図である。図11には、第2の変形例に示したように、アンカー1101と可動電極1102との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。本変形例では、可動電極1102は、略正方形に略円形の開口が設けられ、開口の部分にビームが配置されている。開口は略円形である必要はなく、略正方形などの矩形であってもよいし、任意の形状とすることもできる。
【0059】
図11には、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1103を付し、接続部として符号1121を付し、直線ビームとして符号1104−1115を付し、ビーム接続部として1122−1132を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0060】
本変形例では、可動電極は円環形状ではなく、矩形状、特に正方形の形状となっている。これにより、可動電極が固定電極に接触した場合の接触面積を大きくすることができ、物理量の検出をより確実に行なうことができる。ビームは、ジグザグ形状あるいは九十九折り形状の代わりに、図6に示すように、渦巻き形状とすることもできる。
【0061】
また、本変形例では、可動電極は円環形状ではなく、矩形状となっているので、図10のように、可動電極の内部に凸形状の部分を設けなくても、可動電極の質量を大きくすることが可能となる。
【0062】
図12は、第7の変形例に係る力学量センサーのアンカー1201、ビーム、可動電極1202および固定電極1231−1238の上面図である。図12には、アンカー1201と可動電極1202との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0063】
4本のビームは形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、直線ビーム1203−1211とビーム接続部1221−1228とを有する。直線ビーム1203の一端はアンカー1201に接続され、他端はビーム接続部1203により、鋭角をなして直線ビーム1204の一端に接続されている。直線ビーム1204の他端はビーム接続部1222により、鋭角をなして直線ビーム1205の一端に接続されている。直線ビーム1205の他端はビーム接続部1223により鋭角をなして直線ビーム1206の一端に接続されている。直線ビーム1206の他端は、ビーム接続部1224により鋭角をなして直線ビーム1207の一端に接続されている。直線ビーム1207の他端は、ビーム接続部1225により鋭角をなして直線ビーム1208の一端に接続されている。直線ビーム1208の他端は、ビーム接続部1226により鋭角をなして直線ビーム1209の一端に接続されている。直線ビーム1209の他端は、ビーム接続部1227により鋭角をなして直線ビーム1210の一端に接続されている。直線ビーム1210の他端はビーム接続部1228により直線ビーム1211の一端に接続されている。直線ビーム1211の他端は可動電極1202に接続されている。
【0064】
ビーム接続部1221、1222、1223、1224、1225、1226、1227、1228を順に見た場合、隣接する直線ビームの一方の他端から他方の一端への方向は、右方および左方を交互に繰り返す。このため、本変形例においては、ビームはジグザグ形状あるいは九十九折り形状となっている。
【0065】
別の見方をすれば、アンカー1201との距離が大きくなるにしたがって、直線ビーム1203−1211の長さが大きくなっている。アンカー1201から離れるにしたがってより長い直線ビームを配置するスペースが得られるので、水平方向への変位が大きいビームが得られる。
【0066】
図13は、第8の変形例に係る力学量センサーのアンカー1301、ビーム、可動電極1302および固定電極1321−1328の上面図である。図13には、アンカー1301と可動電極1302との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り状の形状のビームが4本示されている。
【0067】
4本のビームは形状が略同一であるので、そのうちの1本のビームについて説明する。ビームは、アンカー接続部1303と、第1接続部1311と、直線ビーム1304−1308と、第2接続部1316と、可動電極接続部1309と、ビーム接続部1312−1315とを有する。アンカー接続部1303の一端はアンカー1301に接続され、他端は、第1接続部1311を介して直線ビーム1304の一端に接続されている。直線ビーム1304の他端はビーム接続部1312を介して直線ビーム1305の一端に接続されている。直線ビーム1305の他端は、ビーム接続部1313を介して直線ビーム1306の一端に接続されている。直線ビーム1306の他端は、ビーム接続部1314を介して直線ビーム1307の一端に接続されている。直線ビーム1307の他端は、ビーム接続部1315を介して直線ビーム1308の一端に接続されている。直線ビーム1308の他端は、第2接続部1316を介して可動電極接続部1309の一端に接続されている。可動電極接続部1309の他端は可動電極1302に接続されている。
【0068】
本変形例では、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308の順にアンカー1301との距離が大きくなり、可動電極1302との距離が小さくなる。別の見方をすれば、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308は、中心が同じであり半径が異なる複数の同心円のいずれかに接する。また、直線ビーム1304、1305、1306、1307、1308と同心円のいずれかとの接点は同一の直線上にある。
【0069】
第2の変形例と本変形例との違いは、ビーム接続部1312−1315が、中心角が略180度の円弧の形状となっている点である。これにより、ビーム接続部が接続する直線ビームは略平行となっている。ただし、本変形例において、ビーム接続部の形状は、中心角が略180度の円弧の形状に限られることはなく、例えば中心角は180度より小さくてもよい。また、円弧である必要はなく、放物線などの任意の曲線とすることができる。
【0070】
また、第1接続部1311、第2接続部1316は円弧や曲線の形状となっていてもよい。
【0071】
本変形例では、曲線形状のビーム接続部が用いられていることにより、ビームが変形した際にビーム接続部に加わる応力を分散させることができ、ビームの破損を防止することができる。
【0072】
図14は、第9の変形例に係る力学量センサーのアンカー1401、ビーム、可動電極1402および固定電極1421−1428の上面図である。図14には、第2の変形例と同様に、アンカー1401と可動電極1402との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成されるジグザグ形状あるいは九十九折り形状のビームが4本示されている。
【0073】
図14においては、4本のビームのうち、1本のビームの各部分についてアンカー接続部として符号1403、直線ビームとして符号1405−1413、接続部として符号1421、ビーム接続部として符号1422−1430を付した。これらの接続関係は、第2の変形例と同様なので説明を省略する。
【0074】
本変形例では、第2の変形例として説明した内容と異なり、直線ビーム1405−1413の幅が異なり、アンカー1401に近い直線ビームほど幅が大きくなっている。これにより、ビームが変形した際に、アンカーとビームとが接続されている部分に加わる応力による破損を防止することができる。同様に、可動電極に近い部分の幅をアンカーに近い部分よりも大きくすることにより、可動電極とビームとが接続されている部分に加わる応力による破損を防止することができる。また、アンカーと可動電極との中間の位置の幅を、アンカーまたは可動電極に近い位置の幅よりも小さくすることもできる。これにより、力学量センサーの感度を調整することができる。
【0075】
図15は、第10の変形例に係る物理量センサーのアンカー1501、ビーム、可動電極1511−1518の上面図である。図15においては、第1の変形例と同様に、アンカーと可動電極との間に、直線ビームとビーム接続部とにより構成される渦巻き形状のビームが4本示されている。
【0076】
本変形例では、隣接する平行な直線ビーム間の距離が一様ではない。すなわち、間隔1502、間隔1503、間隔1504の順序で大きさが小さくなっている。このようにビーム間の距離を変化させることにより、ビームの変形量を制御し、力学量センサーの感度を調整することができる。
【0077】
以上、本発明の一実施形態の変形例をいくつか説明したが、本発明は、以上の説明に限定されることはなく、さらに変形して実施することもできる。また、複数の変形例の特徴を組み合わせて実施することもできる。例えば、アンカーの形状は正三角形、正方形、正六角形である必要はない。また、可動電極が環状の形状となっていること、ビームが3〜6本であること、可動電極が8個である必要はなく、種々に変形することができる。
【0078】
(直線ビームが有る場合と直線ビームが無い場合との比較結果)
以下、本発明の一実施形態に係る、直線ビームが有る力学量センサーと従来技術に係る、直線ビームが無い加速度センサーとの別のシミュレーションによる比較について説明する。
【0079】
図16は、本発明の一実施形態に係る第1のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図であり、図17は、本発明の一実施形態に係る第2のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図であり、図18は、従来技術に係る第3のモデルのアンカー、ビームおよび可動電極の上面図である。
【0080】
第1〜3のモデルに共通なパラメータは次の通りである。アンカー、ビームおよび可動電極は、厚さが50μmのシリコンであり、ビームの幅は15μmである。また、可動電極は、外周の形状が、半径Rが1685μmとなる円である。これをまとめると表1のようになる。なお、シリコンの結晶面方位が(100)面となるものとした。
【表1】
【0081】
第1のモデルにおいて、可動電極は、一辺の長さLが2200μmの正方形の開口を有し、アンカーは、一辺の長さSが400μmの正方形の形状をしている。また、ビームを4本形成し、それぞれのビームは直線形状のアンカー接続部と4本の直線ビームを有し、アンカー接続部および4本の直線ビームの隣接するものは略90度の角をなし、ビーム全体は渦巻き形状となっている。また、隣接する平行な直線ビーム間の距離Dは200μmである。また、直線ビームは、劈開面から45度傾いている。
【0082】
第2のモデルにおいて、可動電極は、半径L/2が1385μmの開口を有し、アンカーは、一辺の長さSが400μmの正方形の形状をしている。また、ビームを4本形成し、直線ビームのうち、長直線ビーム間の距離Dは100μmである。また、直線ビームは、劈開面から45度傾いている。
【0083】
第3のモデルにおいて、可動電極は、半径L/2が1385μmの開口を有し、アンカーは、半径が700μmの円形状を有している。また、ビームは1本の渦巻き形状であり、ビーム間の距離Dが140μmとなる渦巻き形状である。
【0084】
以上説明した第1のモデル、第2のモデル、第3のモデルのパラメータを示すと表2のようになる(表13に示したものを除く)。
【表2】
【0085】
以上のモデルに対して、一辺の長さの平均が10μmの三角錐を用いた有限要素法により、水平方向と垂直方向とのそれぞれに1Gの加速度を加えた場合の、可動電極の変位量を計算した。その結果は、以下に示す表3となった。
【表3】
ここに、「変位量の比」とは、水平方向変位量に対する垂直方向変位量の比である(以下においても同じ。)。変位量の比が小さいほど、水平方向変位量に対する垂直方向変位量が小さくなることとなる。したがって、ビームの水平方向の変位量に比較して垂直方向の変位量が小さいことを示す。したがって、変位量の比が小さいほど、本発明の課題の解決にとっては、好ましいこととなる。
【0086】
表3に示されるように、直線ビームを有する第1のモデルおよび第2のモデルのいずれにおいても、従来の曲線のビームのみを有する第3のモデルよりも、変動量の比は小さくなっている。すなわち、本発明の一実施形態に係る力学量センサーにおいては、水平方向に対する垂直方向の変位量は、従来技術に係る加速度センサーよりも相対的に小さくなり、課題が解決されることがわかる。
【0087】
本発明の力学量センサーは、傾き等を検知することができ、種々の力学量を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
111 アンカー
121−128 固定電極
113 可動電極
141、142、144、145 直線ビーム
143、146 ビーム接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、
前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、
前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、
前記ビームは、
複数の直線ビームと
前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサー。
【請求項2】
基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、
前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、
前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、
前記ビームは、
複数の平行な直線ビームと
前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサー。
【請求項3】
前記ビームを複数本有し、点対称に前記ビームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の力学量センサー。
【請求項4】
前記ビームは渦巻き形状である請求項1から3のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項5】
前記ビームはジグザグ形状である請求項1から3のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項6】
前記ビーム接続部は円弧状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項7】
前記可動電極は、凹形状の開口部を有し、前記開口部に前記固定電極と前記ビームとが配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項8】
前記アンカーに近い前記直線ビームほど、その幅が大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項1】
基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、
前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、
前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、
前記ビームは、
複数の直線ビームと
前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームの長手方向を異ならせて前記2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサー。
【請求項2】
基板に固定されたアンカーおよび固定電極と、
前記アンカーと前記固定電極の間において前記基板から離れて形成され、前記固定電極と接触すると前記固定電極と導通する可動電極と、
前記アンカーに一端が接続され、前記可動電極に他端が接続され、前記基板から離れて形成されたビームとを有し、
前記ビームは、
複数の平行な直線ビームと
前記複数の直線ビームのうち隣接する2つの直線ビームを接続するビーム接続部とを有する力学量センサー。
【請求項3】
前記ビームを複数本有し、点対称に前記ビームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の力学量センサー。
【請求項4】
前記ビームは渦巻き形状である請求項1から3のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項5】
前記ビームはジグザグ形状である請求項1から3のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項6】
前記ビーム接続部は円弧状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項7】
前記可動電極は、凹形状の開口部を有し、前記開口部に前記固定電極と前記ビームとが配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の力学量センサー。
【請求項8】
前記アンカーに近い前記直線ビームほど、その幅が大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の力学量センサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−215505(P2012−215505A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81866(P2011−81866)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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