説明

加工用データ作成装置、作成方法、及び作成プログラム

【課題】歯車形状のばらつきの発生を防止する。
【解決手段】原点O1(α1=0,β1=0)を通るxy座標において、歯車の外形軌跡L上に位置する複数の座標点P1(X1,Y1),P2(X2,Y2),P3(X3,Y3),…の座標を演算し、第1座標点P1と第2座標点P2とを通り原点O1を中心とした中心角10°の円弧s1(半径r1)を算出する。そして第2座標点P2及び第3座標点P3を結ぶ線分gを算出し、垂直二等分線mと円弧s1の半径線h1との交点O2を算出し、交点O2を中心とし、上記交点から第2座標点P2までの距離を半径r2とする円弧s2を算出し、円弧s2を第2座標点P2から第3座標点P3までの歯車外形軌跡の近似データとすると、円弧s1,s2の端部がその半径線h1,h2に対して直角をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に対し所定の加工を施す加工機の加工用データ作成装置、作成方法、及び作成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車を製造する手法は既に種々のものが存在しているが、例えば、従来、放電加工により被加工物(歯車母材又は歯車製作用の金型等)に対し歯車形状を形成する手法がある。この加工機(ワイヤ放電加工機)は、細いワイヤ電極に張力を付与しつつ被加工物に対向させた状態でワイヤ電極と被加工物との間に高電圧を印加することにより、それらワイヤ電極と被加工物との間に放電を発生させる。そして、ワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極を被加工物に対して上記歯車形状に沿って移動させることで、歯車を形成することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−25500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術のようにワイヤ放電加工により歯車を形成する際には、ワイヤ放電加工機に所定の加工用データを入力すると、ワイヤ放電加工機がその加工用データに基づきワイヤを歯車形状に沿って駆動する。このとき、ワイヤ放電加工機は、ワイヤを、歯車外形形状に対しワイヤ径+放電ギャップ分だけオフセットさせた位置関係で(相対的に)駆動する必要がある。
【0004】
この場合、ワイヤ放電加工機は、加工用データとして取得した歯車外形形状のうち、直線部分に対しては、ワイヤを上記オフセット分だけ単純に平行にスライドさせて駆動すればよい。しかしながら、歯車外形形状のうち曲線部分については、ワイヤ放電加工機が上記のように平行にスライドしてワイヤを駆動すると、一部形状が不確定となる。すなわち、例えば曲線を複数の部分円弧により近似した場合、ワイヤ放電加工機は、円弧と円弧とのつなぎ目ではいずれの円弧の中心を曲率中心としつつ上記オフセット分を加味して駆動すべきかが、不定となる。上記従来技術は、この不定性について配慮されていないため、製作された歯車の形状がばらつく可能性があった。
【0005】
なお、同様の問題は、電極を用いた型彫り放電加工機やミーリング加工機でも生じる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、歯車形状のばらつきの発生を防止できる加工機の加工用データ作成装置、作成方法、及び作成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、歯車母材又は歯車製作用の金型に対し歯車形状を加工するためのデータを表示する表示手段と、前記歯車形状を規定するための条件データを入力する入力手段と、前記入力手段で入力した前記条件データに基づき、同一接線を共有しつつその接線への接点において互いに連結する2つの部分円弧を順次連続的に用いて、前記歯車形状の外形軌跡の近似データを作成するデータ作成手段と、前記データ作成手段で作成した前記近似データによる歯車形状を前記表示手段に出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の加工用データ作成装置においては、操作者が入力手段により条件データを入力すると、データ作成手段が部分円弧を用いて歯車形状の外形軌跡の近似データを作成する。そして、出力手段がその歯車形状を表示手段に出力し、これによって操作者は加工するデータ内容を確認することができる。この加工用データを受信した加工機(ワイヤ放電加工機、型彫り放電加工機、エンドミル等のミーリング加工機等)は、その加工用データに基づき、歯車母材(又は金型)に対し歯車形状を形成する。
【0009】
ここで、例えばワイヤ放電加工の場合、ワイヤを、歯車外形形状に対し、ワイヤ径+放電ギャップ分だけオフセットさせた位置関係で(相対的に)駆動する必要がある。上記した電極を用いた型彫り放電加工機やミーリング加工機でも、同様のオフセット駆動が必要である。
【0010】
本願第1発明のデータ作成手段は、これに対応し、近似データ作成の際、部分円弧どうしが同一接線を共有する(言い換えれば接線が同一となる)ようにして歯車外形軌跡の近似を行う。この結果、データ作成手段は、それら2つの部分円弧の端部(突き合わせ端部)がそれぞれの半径線に対して必ず直角をなすように、歯車外形軌跡を形成することとなる。これにより、加工機は、2つの部分円弧を単に上記オフセット分だけ半径方向にずらした位置関係でワイヤ等を(相対的に)駆動することで、上記歯車外形を確実に形成することができる。したがって、加工機は、歯車形状のばらつきの発生を防止することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記データ作成手段は、前記歯車形状の外形軌跡内に位置し、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手段を備え、前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧と、前記第2座標点及び前記第3座標点を通る第2部分円弧とを、前記第2座標点において接線同一となるように接続させることで、前記第1座標点から前記第3座標点までの前記近似データを作成することを特徴とする。
【0012】
第1第2座標点を通る第1部分円弧の端部と、第2第3座標点を通る第2部分円弧の端部とが、第2座標点において、それぞれ各半径線(第1部分円弧の半径、第2部分円弧の半径)に対して直角をなす。これにより、加工機は、第1部分円弧を加工するときは、第1部分円弧の中心点から第1部分円弧半径+オフセット分の位置においてワイヤを(相対的に)駆動すればよい。また第2部分円弧を加工するときは、第2部分円弧の中心点から第2部分円弧半径+同じオフセット分の位置において及び、第2部分円弧の中心点から第2部分円弧半径+同じオフセット分の位置においてワイヤを(相対的に)駆動すればよい。このようにして、加工機は、歯車外形を確実に形成することができる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記データ作成手段は、前記第1部分円弧の中心点及び前記第2座標点を結ぶ直線と、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の垂直二等分線との交点を、前記第2部分円弧の中心点に決定する第1中心決定手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第1中心決定手段が、第2座標点を通る直線と、第2座標点第3座標点の垂直二等分線との交点をとり、これを第2部分円弧の中心点とする。これにより、第2座標第3座標を通り、かつ第2座標で半径線と直角となる第2部分円弧を実現することができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明において、前記第1中心決定手段は、前記第1部分円弧の前記中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手段と、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手段と、前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第2部分円弧の中心点を算出する際には、半径算出手段が第1部分円弧と第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する。一方、垂直二等分線算出手段が、第2第3座標点を結ぶ線分の垂直二等分線を算出する。そして、交点算出手段が、それら半径直線と垂直二等分線との交点を算出する。このようにして、本願第4発明の加工用データ作成装置の第1中心決定手段は、第2部分円弧の中心点を算出することができる。
【0017】
第5発明は、上記第4発明において、前記垂直二等分線算出手段は、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分を算出する線分算出手段と、前記線分の中点を算出する中点算出手段とを備え、前記中点を通り前記線分と直交する直線を前記垂直二等分線として算出することを特徴とする。
【0018】
第6発明は、上記第3乃至第5発明のいずれかにおいて、前記データ作成手段は、前記第1中心決定手段が決定した前記中心点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする前記第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの前記近似データとする円弧データ作成手段を備えることを特徴とする。
【0019】
円弧データ作成手段が第2部分円弧を作成することにより、第2座標点から第3座標点までの近似データを作成することができる。
【0020】
第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、前記データ作成手段は、前記入力手段で入力した前記条件データに基づき、前記順次連続的に用いる部分円弧のデータ作成における計算基準となる基準部分円弧を設定する基準円弧設定手段を備えることを特徴とする。
【0021】
データ作成手段は、基準円弧設定手段で設定した基準部分円弧を計算基準とし、これを第1部分円弧として第2部分円弧を作成することができる。その後、その第2部分円弧を新たな第1部分円弧として、データ作成手段は、同様の計算によって新たな第2部分円弧を作成することができる。データ作成手段は、このような計算を順次繰り返すことで、歯車形状の外形軌跡の近似データを作成することができる。
【0022】
第8発明は、上記第7発明において、前記基準円弧設定手段は、前記複数の座標点のうちデータ作成開始時に用いる開始座標点とこの開始座標点に対応した前記第1座標点とを通る前記基準部分円弧の中心点を決定する第2中心決定手段と、前記基準部分円弧の半径を決定する半径決定手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
基準円弧を設定する際には、第2中心決定手段が基準部分円弧の中心点を決定し、半径決定手段が基準部分円弧の半径を決定する。これにより、基準円弧設定手段は、開始座標点から第1座標点までの基準部分円弧を設定することができる。
【0024】
第9発明は、上記第8発明において、前記半径決定手段は、前記基準部分円弧の中心角が5°以上15°以下となるように、前記基準部分円弧の前記半径を設定することを特徴とする。
【0025】
これにより、本願第9発明の加工用データ作成装置は、近似データにおける歯車形状曲線の曲率が過小となったり過大となったりするのを防止し、適正な歯車形状を実現することができる。
【0026】
上記目的を達成するために、第10発明は、歯車母材又は歯車製作用の金型に対し歯車形状を加工するための加工用データ作成方法であって、前記歯車形状を規定するための条件データに基づき、前記歯車形状の外形軌跡内に位置する、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手順と、前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧の中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手順と、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手順と、前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手順と、前記交点算出手段が算出した前記交点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする円弧データ作成手順とを有することを特徴とする。
【0027】
本願第10発明の加工用データ作成方法では、操作者が条件データを入力すると、座標算出手順が第1第2第3座標点を含む複数の座標点を算出する。その後、半径算出手順が第1部分円弧と第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する一方、垂直二等分線算出手順が第2第3座標点を結ぶ線分の垂直二等分線を算出する。そして、交点算出手順が、上記半径直線と垂直二等分線との交点を算出し、円弧データ作成手順がその交点を中心とした第2部分円弧を作成して第2座標点から第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする。これにより、第1座標点から第2座標点までの第1部分円弧と第2座標点から第3座標点までの第2部分円弧とが、たがいに同一接線を共有する(言い換えれば接線が同一となる)ような位置関係となる。この結果、それら2つの部分円弧の端部(突き合わせ端部)は、それぞれの半径線に対して必ず直角をなす。
【0028】
加工機(ワイヤ放電加工機、型彫り放電加工機、エンドミル等のミーリング加工機等)は、上記のように部分円弧を用いて作成した歯車形状の外形軌跡の近似データに基づき、歯車母材(又は金型)に対し歯車形状を形成する。
【0029】
ここで、例えばワイヤ放電加工の場合、ワイヤを、歯車外形形状に対し、ワイヤ径+放電ギャップ分だけオフセットさせた位置関係で(相対的に)駆動する必要がある。上記した電極を用いた型彫り放電加工機やミーリング加工機でも、同様のオフセット駆動が必要である。
【0030】
本願第10発明のデータ作成方法では、上記のように、近似データ作成の際、2つの部分円弧の端部がそれぞれの半径線に対して必ず直角をなすように、歯車形状の外形軌跡を形成する。これにより、加工機は、2つの部分円弧を単に上記オフセット分だけ半径方向にずらした位置関係でワイヤ等を(相対的に)駆動することで、上記歯車外形を確実に形成することができる。したがって、加工機は、歯車形状のばらつきの発生を防止することができる。
【0031】
上記目的を達成するために、第11発明の加工用データ作成プログラムは、コンピュータに、歯車母材又は歯車製作用の金型に対し加工される歯車形状を規定するための条件データに基づき、前記歯車形状の外形軌跡内に位置する、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手順と、前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧の中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手順と、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手順と、前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手順と、前記交点算出手段が算出した前記交点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする円弧データ作成手順とを実行させる。
【0032】
本願第11発明の加工用データ作成プログラムを備えたコンピュータに対し、操作者が条件データを入力すると、コンピュータが座標算出手順を実行し、第1第2第3座標点を含む複数の座標点を算出する。その後、コンピュータが半径算出手順を実行して第1部分円弧と第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する一方、垂直二等分線算出手順を実行して第2第3座標点を結ぶ線分の垂直二等分線を算出する。そして、コンピュータは、交点算出手順を実行して上記半径直線と垂直二等分線との交点を算出し、円弧データ作成手順を実行してその交点を中心とした第2部分円弧を作成して第2座標点から第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする。これにより、第1座標点から第2座標点までの第1部分円弧と第2座標点から第3座標点までの第2部分円弧とが、たがいに同一接線を共有する(言い換えれば接線が同一となる)ような位置関係となる。この結果、それら2つの部分円弧の端部(突き合わせ端部)は、それぞれの半径線に対して必ず直角をなす。
【0033】
加工機(ワイヤ放電加工機、型彫り放電加工機、エンドミル等のミーリング加工機等)は、上記のように部分円弧を用いて作成した歯車形状の外形軌跡の近似データに基づき、歯車母材(又は金型)に対し歯車形状を形成する。
【0034】
ここで、例えばワイヤ放電加工の場合、ワイヤを、歯車外形形状に対し、ワイヤ径+放電ギャップ分だけオフセットさせた位置関係で(相対的に)駆動する必要がある。上記した電極を用いた型彫り放電加工機やミーリング加工機でも、同様のオフセット駆動が必要である。
【0035】
本願第11発明のプログラムを実行するコンピュータは、上記のように、近似データ作成の際、2つの部分円弧の端部がそれぞれの半径線に対して必ず直角をなすように、歯車形状の外形軌跡を形成する。これにより、加工機は、2つの部分円弧を単に上記オフセット分だけ半径方向にずらした位置関係でワイヤ等を(相対的に)駆動することで、上記歯車外形を確実に形成することができる。したがって、加工機は、歯車形状のばらつきの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、歯車形状のばらつきの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図1は、本発明の加工用データ作成装置の一実施形態の全体構成を示す概念図である。
【0039】
図1において、本実施形態の加工用データ作成装置100は、歯車製作用の金型に歯車のキャビティを加工するための加工装置(加工機)に与える加工用データを作成するためのものである。本実施形態の加工用データ作成装置100では、加工装置としてワイヤ放電加工機(図示せず)を使用する場合を例にとって説明する。
【0040】
加工用データ作成装置100は、歯車の形状を規定する条件データを入力するための入力手段としてのキーボード5と、歯車の外形軌跡の近似データを作成するためのデータ作成手段としての演算装置1と、上記演算装置1で作成された近似データを図形表示するための表示手段としての図形表示装置3と、上記図形表示装置3に表示された近似データの特定等を行うためのマウス7とを有している。なお、この例では、加工用データ作成装置100は、演算装置1により作成された近似データを含む加工用NCプログラムをNCテープに穿孔するNCパンチャ9を併せて備えている。
【0041】
図2は、上記演算装置1の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0042】
図2において、演算装置1は、CPU11と、後述するような原理手法の本発明の加工用データ作成プログラムを収納したROM13と、RAM15と、入出力回路17と、バスライン19等から構成されている。入出力回路17には、上記図形表示装置3、キーボード5、マウス7、及びNCテープパンチャ9が接続されると共に、上記演算装置1に内蔵されたハードディスク装置21と、フロッピディスク装置23とが接続されている。これらのハードディスク装置21及びフロッピディスク装置23は、作成された上記加工用NCプログラムを記憶する。
【0043】
なお、上記加工用データ作成装置100とワイヤ放電加工機とを接続して、ワイヤ放電加工機に加工用NCプログラムを伝送することもできる。この場合には、通信回路25が用いられ、データ作成装置100とワイヤ放電加工機とは、上記通信回路25を介して接続される。
【0044】
次に、本実施形態の要部である、上記近似データの原理を図3〜図5により説明する。
【0045】
(a)円弧形成の手法
図3は、歯車形状の近似手法を説明するための説明図である。図3において、 キーボード5から歯車の形状を規定する条件データが入力されると、CPU11は、歯車の外形軌跡L内、つまり外形軌跡L上に位置し、外形軌跡Lを規定する複数の座標点P1,P2,P3,…の座標を条件データから算出する。その後、CPU11は、隣り合う2つの座標点P1とP2、P2とP3、…をそれぞれ通る半径r1,r2,r3…の円弧s1,s2,s3,…を順次連続的に用いて、歯車の外形軌跡Lの近似データを作成する。
【0046】
このとき、CPU11は、隣接する2つの円弧s同士が、同一の接線を共有しつつその接線への接点において互いに連結するようにしつつ、円弧s2,s3,…を順次決定していく(なお、円弧s1については別の考え方で設定される。後述)。第1座標点P1〜第3座標点P3を例にとって説明すると、まず、第1座標点P1及び第2座標点P2を通る部分円弧(第1部分円弧)s1が別途の手法で決定される。その後、この円弧s1に対し、第2座標点P2及び第3座標点P3を通る円弧(第2部分円弧)s2が、第2座標点P2において円弧s1と同一の接線kを共有しつつ接続されるように決定される。この円弧s2の決定により、第2座標点P2から第3座標点P3までの近似データが算出される。
【0047】
図4は、上記の共通接線を用いた手法をさらに詳細に説明するための説明図である。図4において、歯車の外形軌跡Lの内側の位置の任意座標上の点O1(α1,β1)を原点(α1=0、β1=0)にとり、原点O1を通るxy座標系を考える。この座標系において、座標点P1,P2,P3,…の座標をP1(X1,Y1),P2(X2,Y2),P3(X3,Y3),…とする。このxy座標系上の座標点P(P1,P2,P3,…)の座標は、任意座標上の点O1の座標位置が決まれば、歯車の形状を規定する上記条件データからCPU11により算出することができる(座標算出手段)。
【0048】
CPU11では、まず、上記xy座標系上の原点O1(α1=0,β1=0)を中心とし、座標点P1とP2とを通る円弧s1の半径r1を設定する(基準円弧設定手段)。この円弧s1は、円弧s2,s3,…のデータ作成における計算基準となる基準部分円弧である。円弧s1の中心及びその半径r1は、座標点P1,P2の座標が既知であるから、円弧s1の中心角θを与えることでその中心角を使用して計算で求め、設定することができる(第2中心決定手段、半径決定手段)。
【0049】
基準円弧s1の中心角θは、θ=5°〜15°の範囲内の一定値に選択することが好ましい。本実施形態ではθ=10°とした。このように、基準円弧s1の中心角θ=5°〜15°の範囲とすることにより、近似データにおける歯車形状曲線の曲率が過小となったり過大となったりするのを防止することができ、適正な歯車形状を実現することができる。
【0050】
次に、上記座標点P2を、次の円弧s2のデータ作成に用いる開始座標点とし、この座標点P2(X2,Y2)と原点O1(0,0)とを結ぶ直線をh1とすると、この直線h1は円弧s1の半径直線であり、式(1)で求めることができる(半径算出手段)。
【0051】
y=x×Y2/X2 …(1)
次に、座標点P2(X2,Y2)と座標点P3(X3,Y3)とを結ぶ線分gの垂直二等分線mを求める。線分gは、式(2)で求めることができる(線分算出手段)。
【0052】
y=x×(Y2−Y3)/(X2−X3)+(X2Y3−X3Y2)/(X2−X3) …(2)
線分gの中点Mの座標はM((X2+X3)/2,(Y2+Y3)/2)で求めることができる(中点算出手段)から、線分gの垂直二等分線mは、下記の式(3)を用いて求めることができる(垂直二等分線算出手段、第1中心決定手段)。
【0053】
y=−x×(X2−X3)/(Y2−Y3)+{(X2+X3)(X2−X3)+(Y2+Y3)(Y2−Y3)}/2(Y2−Y3) …(3)
次いで、直線h1の延長と直線mとの交点をO2(α2,β2)とし(交点算出手段、第1中心決定手段)、座標点P2,P3を通る円弧s2を交点O2を中心として描く。この円弧s2は、以下のように、式(4)〜(6)により求めることができる。
【0054】
すなわち、円弧s2の半径r2の大きさは、(x−α2)+(y−β2)=r2から、
r2=√{x−α2)+(y−β2)} …(4)
で求めることができる(半径算出手段、第1中心決定手段)。
【0055】
ただし、
垂直二等分線mの式(3)をy=ax+b
a=−(X2−X3)/(Y2−Y3)
b={(X2+X3)(X2−X3)+(Y2+Y3)(Y2−Y3)}/2(Y2−Y3)
として、
α2=bX2/(Y2−aX2)
={(X2+X3)(X2−X3)+(Y2+Y3)(Y2−Y3)}
/2(Y2−Y3)/{2Y2(Y2−Y3)+(X2−X3)}
…(5)
β2=α2・Y2/X2
=Y2{(X2+X3)(X2−X3)+(Y2+Y3)(Y2−Y3)}
/2(Y2−Y3)/[X2{2Y2(Y2−Y3)+(X2−X3)}]
…(6)
である。
【0056】
ここで、円弧s1の半径線h1と円弧s2の半径線h2とが重なって同一直線上にあることから、これら2つの円弧s1とs2とは座標点P2で同一接線を共有することになる。そして、2つの円弧s1とs2の端部がそれぞれの半径線h1,h2に直角をなす。
【0057】
以上のようにして、円弧s1を基準部分円弧とし、座標点P2を、円弧s2のデータ作成の開始座標点として、座標点P2とP3との間を通る円弧s2のデータを作成する(円弧データ作成手段)。このような円弧の作成法を以降も繰り返す。すなわち、今度は円弧s2を新たな基準部分円弧とし、座標点P3を円弧s3のデータ作成の新たな開始座標点として、上記同様、座標点P2とP3との間を通る円弧s2のデータを作成する。このようにして、外形軌跡L上の複数の座標点P1,P2,P3,P4,…について同様の円弧の作成を順次繰り返すことで、図5に示すように、隣り合う2つの円弧の端部がそれぞれの半径線に直角をなすように形成した円弧s1,s2,s3,…を用いて歯車の外形軌跡Lを近似した、データを得ることができる。
【0058】
(b)従来手法との対比
例えばワイヤ放電加工の場合、放電加工機のワイヤを、歯車外形形状に対し、△D=ワイヤ径+放電ギャップ分だけオフセットされた位置関係で相対的に駆動する必要がある。
【0059】
この際の従来手法の一例を図6及び図7を用いて説明する。
【0060】
図6において、例えば従来手法では、歯車の外形軌跡L上の座標点P1,P2を通る円弧s1′、座標点P2,P3を通る円弧s2′、座標点P3,P4を通る円弧s3′、…を、それぞれの座標点間ごとの歯車の外形軌跡Lに沿う適宜の形で描き、歯車の外形軌跡Lの近似データとしている。この際、上記本実施形態のように、特に隣接円弧どうしが共通接線をもつような配慮はなされていない。
【0061】
このため、通常、図7に示すように、隣り合う2つの円弧、例えば円弧s1′,s2′(図解上、円弧s1′とs2′を例に説明するが、円弧s2′とs3′でも同じである)において、座標点P2を通る円弧s1′の半径線h1′と円弧s2′の半径線h2′とが、同一直線上に位置せずに座標点P2で交差することとなる。この結果、前述したワイヤ放電加工機のワイヤ駆動データ、すなわち歯車の外形形状に対しワイヤをオフセット△D分(ワイヤ径+放電ギャップ)だけずらした位置関係で相対的に駆動するための駆動データを作成する際、座標点P2の近傍では駆動データが円弧s1′に対するものと円弧s2′に対するものの2つになり、座標点P2の近傍で駆動データが定まらなくなる。このような問題は、他の座標点P3,P4,…でも同様である。このため、従来手法では、例えば放電加工機の作業者が自身の判断で座標点P2の近傍の駆動データを適宜に作成して加工を行っており、結果として作業者ごとに、歯車の形状に各座標点P1,P2,P3,…でばらつきが生じるおそれがあった。
【0062】
これに対し、本実施形態では、上記(a)で述べたように、歯車の外形軌跡L上の複数の座標点P1,P2,P3,…を通る円弧s1,s2,s3,…を、隣り合う2つの円弧の端部がそれぞれの半径線h1,h2,h3に直角をなすようにしつつ、歯車の外形軌跡Lの近似データを作成する。したがって、隣り合う2つの円弧、例えば円弧s1とs2において、両者に共通な座標点P2を通る円弧s1の半径線h1と円弧s2の半径線h2とが同一直線上に位置し、座標点P2で交差することがない。この結果、上記と異なり、オフセット△D分だけずらした位置関係で相対的に駆動する駆動データを作成しても、円弧s1に対する駆動データと円弧s2に対する駆動データとが座標点P2の位置で2つになることはない(図5参照)。つまり、2つの円弧s1,s2を単にオフセット△D分だけ半径方向にずらした位置関係で駆動すればよい(円弧s3以下についても同様)。したがって、ワイヤ放電加工によって、歯車の形状に各座標点P1,P2,P3,…でばらつきが発生するのを防止して、歯車外形を確実に形成することができる。
【0063】
次に、上記原理に基づく、本実施形態のデータ作成装置100の制御内容を説明する。図8は、本実施形態のデータ作成装置100において、ROM13に収納された上記加工用データ作成プログラムに基づき、演算装置1で実行される制御手順を示すフローチャートである。
【0064】
この図8において、まず、ステップS10において、歯車の形状を規定する条件データの入力処理を行なう。この際、図形表示装置3の画面には、条件データの入力要求が順次表示され、ワイヤ放電加工機の操作者は、表示される入力要求に従って、キーボード5から各条件データを入力する。入力された条件データはRAM15に記憶される。
【0065】
次に、ステップS100において、上記ステップS10で入力された条件データから、上述した原理に沿って歯車外形軌跡の近似データを演算する(詳細は後述の図9参照)。
【0066】
その後、ステップS30において、上記ステップS100で演算された近似データにより歯車の図形を再現して、再現した歯車の図形を含む表示制御信号を図形表示装置3に出力し(出力手段)、その表示画面に表示させる。ワイヤ放電加工機の操作者が、表示画面での表示に対応してキーボード5及びマウス7により適宜の操作を行うことで、ステップS40においてワイヤ放電加工機用の歯車加工プログラムを作成し、そのプログラムを例えば通信回線25を介してワイヤ放電加工機に送信し、このフローを終了する。
【0067】
図9は、上記ステップS100の詳細手順を示すフローチャートである。
【0068】
図9において、まず、ステップS110において、図8のステップS10で入力された歯車の形状を規定する条件データから、歯車の外形軌跡L上に位置する座標点P1〜Pzの座標を算出する(前述の座標算出手段)。ここで、座標点P1は、歯車の外形軌跡L上の近似データ作成における始点、Pzは終点である。演算された座標点P1〜Pzの座標は、RAM15に記憶される。
【0069】
次にステップS120において、CPU11が、上記ステップS110でRAM15に記憶した各座標のうち、座標点P1(X1,Y1)とP2(X2,Y2)の座標を読み込む。
【0070】
その後、ステップS130において、前述した原理に沿って、座標点P1とP2とを通る中心角θ(この例では例えばθ=10°)の基準円弧s1を算出する。前述したように、このステップS130での演算が、各請求項記載の第2中心決定手段及び半径決定手段を構成するとともに、基準円弧設定手段をも構成する。
【0071】
次にステップS140において、各座標点Pnの順序を表す演算子n=2とする。その後、ステップS150において、上記ステップS10でRAM15に記憶した座標点Pn+1(Xn+1,Yn+1)の座標をCPU11に読み込む。
【0072】
次いでステップS160において、上記した式(1)〜(6)により、座標点Pn(Xn,Yn)とPn+1(Xn+1,Yn+1)を通る円弧sn(例えばn=2であれば座標点P2とP3とを通る円弧s2)を算出する(円弧データ作成手段)。なお、前述したように、このときステップ160において実行される、式(1)の計算が各請求項記載の半径算出手段を構成し、式(2)の計算が各請求項記載の線分算出手段を構成する。また、式(3)に係る計算が、各請求項記載の中点算出手段を構成するとともに、垂直二等分線算出手段(言い換えれば第1中心決定手段の一部)をも構成する。また、式(4)〜(6)に係る計算が、各請求項記載の交点算出手段及び半径算出手段(言い換えれば第1中心決定手段の一部)を構成する。
【0073】
次いでステップS170において、座標点Pの順序を表す演算子nに1を加えたn+1が、座標点の終点を表す演算子zより大きくなったか(言い換えればnがz−1より大きくなったか)どうかを判定する。n+1≦zの場合はステップS170の判定が満たされず、ステップS180で演算子nに1を加えて、ステップS150に戻り同様の手順を繰り返す。すなわち、nがzに達しないうちは、ステップS150の座標点Pn+1(Xn+1,Yn+1)の座標の読み込み、ステップS160の座標点PnとPn+1とを通る円弧の算出を繰り返す。
【0074】
nに1を加えながら上記を繰り返し、終点の一つ手前の座標点Pz-1と終点の座標点Pzとを通る円弧の算出が終了すると、n+1がzより大きくなる。この結果、ステップS170の判定が満たされ、本フローが終了する。
【0075】
図10は、上記のようにして演算装置1で作成されたプログラムに基づき、ワイヤ放電加工機が動作するときに、当該ワイヤ放電加工機の制御装置(図示せず)で実施する制御手順を表すフローチャートである。
【0076】
図10において、まず、ステップS50において、データ作成装置100から送信された歯車加工プログラムを前述のように例えば通信回路25を介して受信する。
【0077】
その後、ステップS60に移り、歯車加工プログラムに含まれる、前述の歯車外形軌跡の近似データに対し、前述のオフセット分(ワイヤ径+放電ギャップ)を加えた駆動用プログラムを生成する。
【0078】
そして、ステップS70において、上記ステップS60で生成した駆動用プログラムに従って動作し、歯車の金型を放電加工し、金型に歯車の外形形状に従ったキャビティを形成する(詳細な内容は省略)。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の加工用データ作成装置100によれば、歯車の外形軌跡L上の複数の座標点P(P1,P2,P3,…)の隣り合う2つの円弧s(s1,s2,s3,…)の端部がそれぞれの半径線に対して必ず直角をなすように、歯車外形軌跡の近似データを作成する。この結果、ワイヤ放電加工機は、2つの部分円弧を単にオフセット分だけ半径方向にずらした位置関係でワイヤを相対的に駆動するだけで、歯車外形を確実に形成することができる(図5参照)。したがって、ワイヤ放電加工機における歯車形状のばらつきの発生を防止することができる。
【0080】
なお、以上においては、ワイヤ放電加工によって歯車製作用の金型を作成する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ワイヤ放電加工によって歯車母材から歯車自体を加工する場合に適用してもよい。また、加工法はワイヤ放電加工に限られず、型彫りの放電加工やエンドミルを用いたミーリング加工等にも、適用することができる。これらの場合も同様の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の加工用データ作成装置の一実施形態の全体構成を示す概念図である。
【図2】図1のデータ作成装置の演算装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のデータ作成装置による歯車の外形軌跡の近似データ作成法を示す説明図である。
【図4】歯車の外形軌跡の近似データ作成法の詳細説明図である。
【図5】図1のデータ作成装置で作成された歯車の外形軌跡の近似データを基に作成した放電加工機のワイヤ駆動データを説明するための説明図である。
【図6】従来手法による歯車の外形軌跡の近似データ作成法を示す説明図である。
【図7】従来手法で作成された歯車の外形軌跡の近似データを基に作成した放電加工機のワイヤ駆動データを説明するための説明図である。
【図8】図1のデータ作成装置の演算装置で実行される制御手順を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS100の詳細を示すフローチャートである。
【図10】ワイヤ放電加工機の制御装置で実行される制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1 演算装置
3 図形表示装置
5 キーボード
11 CPU
100 加工用データ作成装置
△D オフセット分
L 歯車の外形軌跡
h1〜h3 半径線
O1 座標原点
P1〜P4 座標点
r1〜r3 半径
s1〜s3 円弧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車母材又は歯車製作用の金型に対し歯車形状を加工するためのデータを表示する表示手段と、
前記歯車形状を規定するための条件データを入力する入力手段と、
前記入力手段で入力した前記条件データに基づき、同一接線を共有しつつその接線への接点において互いに連結する2つの部分円弧を順次連続的に用いて、前記歯車形状の外形軌跡の近似データを作成するデータ作成手段と、
前記データ作成手段で作成した前記近似データによる歯車形状を前記表示手段に出力する出力手段と
を有することを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工用データ作成装置において、
前記データ作成手段は、
前記歯車形状の外形軌跡内に位置し、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手段を備え、
前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧と、前記第2座標点及び前記第3座標点を通る第2部分円弧とを、前記第2座標点において接線同一となるように接続させることで、前記第1座標点から前記第3座標点までの前記近似データを作成する
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項3】
請求項2記載の加工用データ作成装置において、
前記データ作成手段は、
前記第1部分円弧の中心点及び前記第2座標点を結ぶ直線と、前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の垂直二等分線との交点を、前記第2部分円弧の中心点に決定する第1中心決定手段を備える
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項4】
請求項3記載の加工用データ作成装置において、
前記第1中心決定手段は、
前記第1部分円弧の前記中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手段と、
前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手段と、
前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手段と
を備えることを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項5】
請求項4記載の加工用データ作成装置において、
前記垂直二等分線算出手段は、
前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分を算出する線分算出手段と、
前記線分の中点を算出する中点算出手段とを備え
前記中点を通り前記線分と直交する直線を前記垂直二等分線として算出する
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の加工用データ作成装置において、
前記データ作成手段は、
前記第1中心決定手段が決定した前記中心点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする前記第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの前記近似データとする円弧データ作成手段を備える
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の加工用データ作成装置において、
前記データ作成手段は、
前記入力手段で入力した前記条件データに基づき、前記順次連続的に用いる部分円弧のデータ作成における計算基準となる基準部分円弧を設定する基準円弧設定手段を備える
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項8】
請求項7記載の加工用データ作成装置において、
前記基準円弧設定手段は、
前記複数の座標点のうちデータ作成開始時に用いる開始座標点とこの開始座標点に対応した前記第1座標点とを通る前記基準部分円弧の中心点を決定する第2中心決定手段と、
前記基準部分円弧の半径を決定する半径決定手段と
を備えることを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項9】
請求項8記載の加工用データ作成装置において、
前記半径決定手段は、
前記基準部分円弧の中心角が5°以上15°以下となるように、前記基準部分円弧の前記半径を設定する
ことを特徴とする加工用データ作成装置。
【請求項10】
歯車母材又は歯車製作用の金型に対し歯車形状を加工するための加工用データ作成方法であって、
前記歯車形状を規定するための条件データに基づき、前記歯車形状の外形軌跡内に位置する、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手順と、
前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧の中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手順と、
前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手順と、
前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手順と、
前記交点算出手段が算出した前記交点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする円弧データ作成手順と
を有することを特徴とする加工用データ作成方法。
【請求項11】
コンピュータに、
歯車母材又は歯車製作用の金型に対し加工される歯車形状を規定するための条件データに基づき、前記歯車形状の外形軌跡内に位置する、第1座標点、第2座標点、第3座標点を順次含む複数の座標点を算出する座標算出手順と、
前記第1座標点及び前記第2座標点を通る第1部分円弧の中心点と前記第2座標点とを結ぶ半径直線を算出する半径算出手順と、
前記第2座標点及び前記第3座標点を結ぶ線分の前記垂直二等分線を算出する垂直二等分線算出手順と、
前記半径直線と前記垂直二等分線との交点を算出する交点算出手順と、
前記交点算出手段が算出した前記交点を中心とし、その中心点から前記第2座標点までの距離を半径とする第2部分円弧を、前記第2座標点から前記第3座標点までの歯車形状の外形軌跡の近似データとする円弧データ作成手順と
を実行させるための加工用データ作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−146000(P2009−146000A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320101(P2007−320101)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】