説明

加熱加圧成形用プリプレグおよび積層板

【課題】プリント配線板を多層化する場合の層間接着層に使用すると、回路埋め性が良好で、かつ、熱伝導性の良い絶縁層が得られる加熱加圧成形用プリプレグを提供する。
【解決手段】無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物を、シート状にし半硬化状態としてなる加熱加圧成形用プリプレグである。前記無機充填材が、次の(1)と(2)を含む二成分以上からなる。(1)一次粒子の凝集体であって、前記凝集体の平均粒径d1が、10μm≦d1≦70μmの範囲にある充填材。(2)形状が粒子状であって、粒子単体の平均粒径d2が、0.1μm≦d2≦30μmの範囲にある充填材。そして、前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に、成分(1)が5〜40体積%、成分(2)が10〜50体積%の範囲で添加され、無機充填材の総含有量としては20〜80体積%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性の良い絶縁層を提供するための加熱加圧成形用プリプレグに関する。また、当該プリプレグを用いた積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載する配線板は、電子機器の軽薄短小化に伴う微細配線・高密度実装の技術が求められる一方で、発熱に対応する高放熱の技術も求められている。特に、各種制御・操作に大電流を使用する自動車などにおける電子回路では、導電回路の抵抗に起因する発熱やパワー素子からの発熱が非常に多く、配線板の放熱特性は高レベルであることが必須となってきている。
【0003】
そのような現状において、絶縁層の熱伝導性を向上させるために、熱硬化性樹脂に無機充填材を添加することは広く行われている。例えば、熱硬化性樹脂中に平均粒径が異なる2種類の球状アルミナを含有する耐熱性接着剤が特許文献1に記載されている。この耐熱性接着剤は、平均粒径が大きな粗粒と、平均粒径が小さな微粒とを、特定割合で配合することにより、多量のアルミナを接着剤に充填することができ、接着剤の熱伝導性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−217861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の接着剤は、無機充填材を高充填すると樹脂の流れ性が悪化することから、これをプリプレグ化して、プリント配線板を多層化する場合の層間接着層に使用すると、プリント配線回路等の段差を埋めることができない(回路埋め性が悪い)という問題がある。このため、接着界面にクラックやボイドが発生し、絶縁特性が低下する原因となっていた。
本発明が解決しようとする課題は、回路埋め性が良好で、かつ、熱伝導性の良い絶縁層が得られる加熱加圧成形用プリプレグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物を、シート状にし半硬化状態としてなる加熱加圧成形用プリプレグを次のようにした点に特徴がある。すなわち、前記無機充填材が、次の(1)と(2)を含む二成分以上からなる。
(1)一次粒子の凝集体であって、前記凝集体の平均粒径d1が、10μm≦d1≦70μmの範囲にある充填材。
(2)形状が粒子状であって、粒子単体の平均粒径d2が、0.1μm≦d2≦30μmの範囲にある充填材。
そして、前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に、成分(1)が5〜40体積%、成分(2)が10〜50体積%の範囲で添加され、無機充填材の総含有量としては20〜80体積%であることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
好ましくは、熱硬化性樹脂組成物が、(式1)で示す分子構造を有するエポキシ樹脂モノマを配合したエポキシ樹脂組成物である(請求項2)。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明に係る積層板は、上述のプリプレグを加熱加圧成形してなるものである(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るプリプレグは、無機充填材として、一次粒子の凝集体(成分(1))を含有する。この凝集体は、加熱加圧成形時の圧力によって容易に変形するため、プリプレグの圧縮率(加熱加圧成形前後の厚み変化)を大きくすることができ、回路埋め性を向上することができる。そして、形状が粒子状の充填材(成分(2))を含有させ、成分(1)の充填材粒子の隙間を充填することにより、熱の流路を確保することができ、放熱特性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に使用する無機充填材は、少なくとも次の(1)と(2)を含む二成分以上を混合する。
(1)一次粒子の凝集体であって、前記凝集体の平均粒径d1が、10μm≦d1≦70μmの範囲にある充填材。
(2)形状が粒子状であって、粒子単体の平均粒径d2が、0.1μm≦d2≦30μmの範囲にある充填材。
【0012】
なお、前記d1およびd2は、公知のレーザー回折・散乱法による粒度測定装置(例えば、日機装株式会社製「マイクロトラックSPA−7997型」)を用いて測定したものである。ここで、レーザー回折・散乱法とは、充填材粒子にレーザー光を照射したとき、粒子径により散乱光の強度パターンが変化することを利用した測定法である。
【0013】
成分(1)の一次粒子の凝集体は、加熱加圧成形時の圧力によって容易に変形するため、この凝集体を含有させることにより、プリプレグの圧縮率(加熱加圧成形前後の厚み変化)を大きくすることができ、回路埋め性を向上することができる。このため、例えば、35μmの回路の段差があるプリント配線板に100μmのプリプレグを重ねて一体化する場合においても、接着界面にクラックやボイドが発生することなく均一に回路の段差を埋めることができる。
【0014】
成分(1)の平均粒径d1が10μm未満では、プリプレグの圧縮率(加熱加圧成形前後の厚み変化)が小さくなり、接着界面にクラックが発生しやすくなる。また、70μmを超えると、樹脂と充填材の界面から吸湿しやすくなるため絶縁特性が低下する。
【0015】
ここで、成分(1)の充填材は、粒径が大きいため、充填材粒子同士の接触面積が小さくなる。また、加熱加圧成形の圧力によって変形するため、充填材粒子の粗密ができやすい。そこで、成分(2)の形状が粒子状の充填材を含有させ、成分(1)の充填材粒子の隙間を充填する。これにより、無機充填材粒子同士が連なって形成される熱の流路を確保することができ、放熱特性を向上することができる。
【0016】
なお、成分(2)の充填材だけで高い放熱特性を達成しようとすると、充填量を多くする必要があり、プリプレグの圧縮率が小さくなり、回路埋め性が低下する。すなわち、どちらか一方の充填材だけでは厚み方向の放熱特性が確保できない。また、成分(2)の平均粒径d2が、前述の範囲外の場合も、成分(1)の充填材粒子の隙間を十分に埋めることができず、放熱特性が確保できない。
【0017】
無機充填材は、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に、成分(1)が5〜40体積%、成分(2)が10〜50体積%、無機充填材の総含有量として20〜80体積%占めるように含有させる。
【0018】
成分(1)の添加量が5体積%より小さいと、プリプレグの圧縮率が小さくなり、回路埋め性が低下する。また、40体積%より大きいと、プリプレグを製造するための熱硬化性樹脂組成物の粘度が上がりすぎるため、プリプレグの製造が困難となる。
【0019】
成分(2)の添加量が10体積%より小さいと、成分(1)の充填材粒子の隙間を充分に埋めることができず、放熱特性が確保できない。また、50体積%より大きいと、前記熱硬化性樹脂組成物の粘度が上がりすぎるため、プリプレグの製造が困難となる。
【0020】
同様に、無機充填材の総含有量が20体積%より小さいと、十分な放熱特性が確保できず、80体積%より大きいと、前記熱硬化性樹脂組成物の粘度が上がりすぎるため、外観の均一なプリプレグの製造が困難となる。
【0021】
無機充填材の成分(1)は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、雲母、タルク、マイカ等の一次粒子の凝集体を使用することができる。前記凝集体は、加熱加圧成形時の圧力(2〜24MPa)によって、凝集状態を保ったまま凝集体の平均粒径d1が1/4〜1/2に小さくなり変形(圧縮)されるものが好ましい。これにより、十分な回路埋め性を確保することができる。また、前記の圧力によって、凝集が破砕されると、充填材粒子が分散し、熱伝導率が低下するため好ましくない。なお、充填材の凝集状態や変形の程度は、加熱加圧成形後の絶縁層断面を顕微鏡にて観察(倍率:500倍以上)することにより、確認することができる。また、無機充填材の熱伝導率を30W/m/K以上にすることにより、絶縁層の熱伝導率がさらに向上するので好ましい。
【0022】
また、無機充填材の成分(2)は、形状が粒子状であるアルミナ、シリカ、酸化チタン等を使用することができる。無機充填材の熱伝導率を30W/m/K以上にすることにより、絶縁層の熱伝導率がさらに向上するので好ましい。
【0023】
本発明に使用する熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂モノマと硬化剤とから生成されたものを用いることができる。エポキシ樹脂モノマは、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ターフェニル型エポキシやその誘導体など一般的なエポキシ樹脂モノマはいずれも使用できる。(式1)で示される分子構造式のビフェニル骨格あるいはビフェニル誘導体の骨格をもち、1分子中に2個以上のエポキシ基をもつエポキシ樹脂モノマを含むと放熱性が向上するため好ましい。(式1)で示されるエポキシ樹脂モノマを使用する場合、配合するエポキシ樹脂モノマの全てが(式1)で示されるものであってもよいし、(式1)で示されるものと他のエポキシ樹脂モノマを併用してもよい。
【0024】
【化2】

【0025】
エポキシ樹脂モノマに配合する硬化剤は、エポキシ樹脂モノマの硬化反応を進行させるために従来用いられている硬化剤を使用することができる。例えば、フェノール類又はその化合物、アミン化合物やその誘導体、酸無水物、イミダゾールやその誘導体などが挙げられる。また、硬化促進剤は、エポキシ樹脂モノマとフェノール類又はその化合物、アミン類またはその化合物との重縮合反応を進行させるために従来用いられている硬化促進剤を使用することができる。例えば、トリフェニルホスフィン、イミダゾールやその誘導体、三級アミン化合物やその誘導体などが挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂モノマと硬化剤、無機充填材、硬化促進剤を配合したエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて難燃剤や希釈剤、可塑剤、カップリング剤等を含むことができる。また、このエポキシ樹脂組成物をシート状繊維基材に含浸し乾燥してプリプレグを製造する際、必要に応じて溶剤を使用することができる。これらの使用が、硬化物の熱伝導性に影響を与えることはない。
【0027】
上記の無機充填材と熱硬化性樹脂を混練・混合してワニスを調製する際、熱硬化性樹脂に無機充填材を添加していくと無機充填材のチキソ性および凝集性のため、ワニスの粘度が増大する。そのため、攪拌羽根を使用するタイプの攪拌機により混練・混合を行なう場合は、無機充填材を10体積%以上添加すると攪拌しにくくなり、無機充填材をワニスに均一分散できなくなる。そこで、強力なせん断力を発生する分散機を選択することで、無機充填材の分散性がよくなりワニスの粘度も低下するため、85体積%までの無機充填材の添加が可能となる。強力なせん断力を発生する分散機は、例えば、ボールミル、ビーズミル、三本ロールミルやその原理を応用した分散機などが挙げられる。
【0028】
本発明を実施するに当り、プリプレグの製造は、一般的に行なわれている製造法を適用することができる。例えば、無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物のワニスをシート状繊維基材に含浸し加熱乾燥して、半硬化状態とする。また、前記ワニスを離型性のフィルム等に塗布し加熱乾燥して、半硬化状態としたものでもよい。
【0029】
本発明に使用できるシート状繊維基材は、ガラス繊維や有機繊維の織布や不織布であり、特に限定するものではない。不織布基材を使用した場合は、プリプレグの圧縮率(加熱加圧成形前後の厚み変化)が大きく、回路埋め性が良好となるため、好ましい。シート状繊維基材は、ガラス繊維織布を使用することもできる。ガラス繊維を構成するガラスの種類は強度や電気特性が良好なEガラスが好ましい。また、ガラス繊維織布を使用する場合は、ワニスの含浸には目空き量の大きいものが好ましいため、開繊処理されていないものがよい。
【0030】
また、前記ワニスを離型性のフィルム等に塗布して半硬化状態とする場合の実施形態としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の離型性のフィルムに塗布して半硬化状態とした後に離型性のフィルムをはがして使用する形態や、銅箔やアルミニウム箔等の金属箔に塗布して半硬化とした後、そのまま金属板や金属箔に貼り付ける形態等があるが、特に限定するものではない。
【0031】
本発明に係る積層板は、上述のプリプレグを、プリプレグ層の全層ないしは一部の層として加熱加圧成形してなるものであり、必要に応じて前記加熱加圧成形により片面あるいは両面に銅箔等の金属箔を一体に貼り合せることができる。また、上述のプリプレグは、予め準備したプリント配線板同士を重ねて一体化し多層プリント配線板とするときの接着層として使用することもできる。
上記のプリント配線板は、絶縁層の熱伝導性が良好で優れた放熱性を有するので、自動車機器用のプリント配線板や、パソコン等の高密度実装プリント配線板、インバータ等の絶縁材料に好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明に係る実施例を示し、本発明について詳細に説明する。尚、以下の実施例および比較例において、「部」とは「質量部」を意味する。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
エポキシ樹脂モノマ成分としてビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂モノマ(ジャパンエポキシレジン製「YL6121H」,エポキシ当量175)100部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。尚、「YL6121H」は、既述の分子構造式(式1)において、R=−CH,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬製「1,5−DAN」,アミン当量40)25部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。
【0034】
上記のエポキシ樹脂モノマ溶液と硬化剤溶液を混合・撹拌して均一なワニスを作製し、この混合物(熱硬化性樹脂ワニス)に、無機充填材として窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製「PTX25」,平均粒径:25μm,熱伝導率60W/m・K,粒子形状:一次粒子の凝集体)9部(熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中の5体積%に相当、以下体積%のみ表記する)、アルミナ(住化アルケム製「AA−3」,平均粒径:3μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:粒子状)120部(15体積%に相当)およびメチルイソブチルケトン(和光純薬製)を67部加えて混練し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
【0035】
上記のエポキシ樹脂ワニスを、厚さ60μm(目空き量0.02mm)のガラス繊維織布に含浸し加熱乾燥して半硬化状態のプリプレグを得た。
作製したプリプレグ4枚とその両側に厚さ35μm銅箔(CF−T9C、福田金属製)を配置し、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、厚さ0.8mmの積層板を得た。
【0036】
実施例1で得たプリプレグについて、回路埋め性を、また積層板について、厚さ方向の熱伝導率、耐湿絶縁性を評価した結果を、エポキシ樹脂組成物の配合組成と共に表1にまとめて示す。測定方法は、以下に示すとおりである。
なお、無機充填材の平均粒径は、日機装株式会社製「マイクロトラックSPA−7997型」を用いて測定した。
回路埋め性:積層板の銅箔をエッチングにて回路加工した内層用回路板の両側に、プリプレグ1枚および銅箔をそれぞれ配置し、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化した。そのとき、回路と樹脂の界面にクラックやボイドが入らず、かつ厚さ方向の熱伝導率が7W/m・K以上であれば「◎」、回路と樹脂の界面にクラックやボイドが入らず、かつ厚さ方向の熱伝導率が7W/m・K未満であれば「○」、回路と樹脂の界面にクラックやボイドが見られるものを「×」とした。なお、エポキシ樹脂ワニスの増粘などで、プリプレグや積層板が作製できなかったものは「−」とした。
厚さ方向の熱伝導率:10mm×10mmの板状試料を切り出し、キセノンフラッシュ法(ASTM E1461)に準拠して室温で測定した。なお、エポキシ樹脂ワニスの増粘などで、プリプレグや積層板が作製できなかったものは「−」とした。
耐湿絶縁性:積層板(50mm×50mm)の端部の銅箔を各辺5mmずつエッチングして除去した板状試料を準備した。この板状試料の両面銅箔間に50Vの電圧をかけ、85℃−85%の恒温恒湿槽中で1000時間処理した後、絶縁層の絶縁抵抗を測定した。そのとき1.0×1010Ω以上であれば「○」、1.0×1010Ω未満であれば「×」とした。なお、エポキシ樹脂ワニスの増粘などで、プリプレグや積層板が作製できなかったものは「−」とした。
【0037】
実施例1においては、積層板の厚さ方向の熱伝導率が3.5W/m・Kであり、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0038】
実施例2〜6
実施例1において、窒化ホウ素とアルミナの平均粒径および熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に占める窒化ホウ素とアルミナの割合を、それぞれ表1に示すように変えたエポキシ樹脂ワニスを使用する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。なお、使用した無機充填材は、下記のとおりである。
窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製「PTX60」,平均粒径:55〜60μm,熱伝導率60W/m・K,粒子形状:一次粒子の凝集体)
アルミナ(住化アルケム製「AA−18」,平均粒径:18μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:粒子状)
これら積層板の厚さ方向の熱伝導率を測定した結果、無機充填材の総含有量が増加すると厚さ方向の熱伝導率も向上した。また、無機充填材の平均粒径が大きくなると厚さ方向の熱伝導率も向上した。さらに、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0039】
実施例7
実施例2において、「YL6121H」の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製「EP828」,エポキシ当量185)を用いる以外は実施例2と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。この積層板の厚さ方向の熱伝導率は、5.9W/m・Kであり、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0040】
実施例8
実施例6において、アルミナの代わりに、粒子状の無機充填材である水酸化アルミニウム(住友化学製「C−302A」,平均粒径2.0μm,熱伝導率3.0W/m・K,粒子形状:粒子状)77部(40体積%に相当)を使用する以外は、実施例6と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。
【0041】
この積層板の厚さ方向の熱伝導率は5.2W/m・Kであり、実施例6より若干低いものの、厚さ方向の熱伝導率の良好な積層板が得られた。また、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0042】
実施例9
実施例6において、アルミナの代わりに、粒子状の無機充填材であるシリカ(龍森製「B−21」,平均粒径5μm,熱伝導率1.2W/m・K,粒子形状:粒子状)70部(40体積%に相当)を使用する以外は、実施例6と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。
【0043】
この積層板の厚さ方向の熱伝導率は5.8W/m・Kであり、実施例6より若干低いものの、厚さ方向の熱伝導率の良好な積層板が得られた。また、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0044】
実施例10
実施例6において、「YL6121H」の代わりに、「YL6121H」と「EP828」をエポキシ当量比で1/1で混合したものを用いる以外は実施例6と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。
【0045】
この積層板の厚さ方向の熱伝導率は6.8W/m・Kであり、実施例6より若干低いものの、厚さ方向の熱伝導率の良好な積層板が得られた。また、回路埋め性、耐湿絶縁性共に良好であった。
【0046】
比較例1
実施例1において、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に占める窒化ホウ素とアルミナの割合を、それぞれ4体積%に変えたエポキシ樹脂ワニスを使用する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。
【0047】
比較例1では、無機充填材の総含有量が少ないため、回路埋め性や耐湿絶縁性は良好なものの、厚さ方向の熱伝導率は0.7W/m・Kであり、実施例1より大きく悪化した。
【0048】
比較例2、3
実施例5において、無機充填材として、平均粒径100μmの窒化ホウ素(比較例2)、または平均粒径45μmのアルミナ(比較例3)を使用する以外は、実施例5と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。なお、使用した無機充填材は、下記のとおりである。
窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製「PT−350」,平均粒径:100μm,熱伝導率60W/m・K,粒子形状:一次粒子の凝集体)
アルミナ(電気化学工業製「DAM−45」,平均粒径:45μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:粒子状)
比較例2では、窒化ホウ素(凝集体)の平均粒径が大きいため、回路埋め性や厚さ方向の熱伝導率は良好なものの、耐湿絶縁性が悪化した。比較例3では、アルミナ(粒子状)の平均粒径が大きいため、厚さ方向の熱伝導率及び耐湿絶縁性が悪化した。
【0049】
比較例4、5
実施例5において、無機充填材として、平均粒径4μmの窒化ホウ素(比較例4)、または平均粒径0.05μmのアルミナ(比較例5)を使用する以外は、実施例5と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。なお、使用した無機充填材は、下記のとおりである。
窒化ホウ素(電気化学工業製「SP−2」,平均粒径:4μm,熱伝導率60W/m・K,粒子形状:一次粒子の凝集体)
アルミナ(バイコウスキージャパン製「バイカロックス」,平均粒径:0.05μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:粒子状)
比較例4では、窒化ホウ素(凝集体)の平均粒径が小さいため、耐湿絶縁性は良好なものの、圧縮率が小さいため回路埋め性が悪化した。比較例5では、アルミナ(粒子状)の平均粒径が小さいため、回路埋め性や耐湿絶縁性は良好なものの、厚さ方向の熱伝導率が悪化した。
【0050】
比較例6〜10
実施例1において、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に占める窒化ホウ素あるいはアルミナの割合を、それぞれ表2に示すように変えたエポキシ樹脂ワニスを使用する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグおよび積層板を得た。
【0051】
窒化ホウ素の量を45体積%(比較例6)にすると、ワニスの粘性が高くなりすぎて基材に均一に含浸できなかったため、積層板は得られなかった。また、3体積%(比較例7)にすると、耐湿絶縁性は良好なものの、回路埋め性及び厚さ方向の熱伝導率が悪化した。
【0052】
また、アルミナの量を60体積%(比較例8)にしても、ワニスの粘性が高くなりすぎて基材に均一に含浸できなかったため、積層板は得られなかった。また、5体積%(比較例9)にすると、耐湿絶縁性や回路埋め性は良好なものの、厚さ方向の熱伝導率が悪化した。
【0053】
さらに、無機充填材の総含有量を90体積%(比較例10)にしても、ワニスの粘性が高くなりすぎて基材に均一に含浸できなかったため、積層板は得られなかった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物を、シート状にし半硬化状態としてなる加熱加圧成形用プリプレグであって、前記無機充填材が、次の(1)と(2)、すなわち、
(1)一次粒子の凝集体であって、前記凝集体の平均粒径d1が、10μm≦d1≦70μmの範囲にある充填材。
(2)形状が粒子状であって、粒子単体の平均粒径d2が、0.1μm≦d2≦30μmの範囲にある充填材。
を含む二成分以上からなり、
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂固形分と無機充填材を合わせた体積中に、成分(1)が5〜40体積%、成分(2)が10〜50体積%の範囲で添加され、無機充填材の総含有量としては20〜80体積%であることを特徴とする加熱加圧成形用プリプレグ。
【請求項2】
熱硬化性樹脂組成物が、(式1)で示す分子構造を有するエポキシ樹脂モノマを配合したエポキシ樹脂組成物である請求項1記載の加熱加圧成形用プリプレグ。
【化1】

【請求項3】
請求項1又は2記載のプリプレグを加熱加圧成形してなる積層板。

【公開番号】特開2012−219251(P2012−219251A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89733(P2011−89733)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】