説明

加熱装置

【課題】高周波プラズマを発生可能な加熱装置において、プラズマの分布を被加熱物の中央部と周縁部とで均一にして、良好な特性の製品を安定して生産することができる加熱装置を提供する。
【解決手段】被加熱物を加熱する加熱面を有する絶縁性セラミックス基体10と、この絶縁性セラミックス基体10に配設された発熱体13と、この加熱面より絶縁性セラミックス基体10の内部にて、この加熱面と平行に近接して設けられた低抵抗セラミックス部材16と、この低抵抗セラミックス部材に接続する導電性部材18とを備える加熱装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体製造装置を用いてウエハ上へ酸化膜等を形成するために加熱処理が施される。この半導体製造装置における、ウエハを加熱するための加熱装置には、被加熱物としてのウエハがセットされる加熱面を有する円盤状のセラミックス基体中に線状の抵抗発熱体が埋設されたセラミックスヒータがある。この抵抗発熱体は、一本又は複数本が、セラミックス基体の加熱面と平行な配線パターンで埋設され、線の両端に電圧を印加することによって、加熱面を発熱させる。
【0003】
また、このセラミックスヒータには、加熱面の近傍に、高周波を印加できる円盤状の高周波電極が埋設され、対向電極との間で、加熱面にセットされた被加熱物近傍の空間に高周波プラズマを発生させたり、バイアス電極を印加したりできるものがある。この高周波プラズマは、プラズマCVD法による被膜の形成等のために使用されるものである。
【0004】
セラミックスヒータに用いられる材料には、被処理物を加熱する動作温度において、抵抗加熱素子に対し、十分に電気抵抗率が高い、又は絶縁性を有する材料が用いられている。なぜならば、セラミックス基体の材料が導電性を有する場合には、抵抗発熱体を加熱するために供給された電流の一部がこのセラミックス中を流れ、抵抗発熱体以外の領域で発熱したり、又は抵抗発熱体に所期した電流が流れなくなったりして、均熱性が著しく損なわれるからである。
【0005】
そのため、セラミックスヒータの基体の材料には、窒化アルミニウムが多用されている。窒化アルミニウムは、耐熱性、耐腐食性が良好で、かつ、高い熱伝導率を有し、更に高抵抗である。
【0006】
このようなセラミックスヒータに用いられる窒化アルミニウムを用いた焼結体に関して、静電チャックとして適した体積抵抗率を得るために、炭素繊維を混入させた窒化アルミニウム焼結体がある(特許文献1)。
【0007】
また、体積抵抗率が低いサセプタに関して、セラミックス製のサセプタを、非処理物が載置される載置面を有する表面層と支持層との積層構造とし、この表面層を全面にわたって支持層よりも体積抵抗率が低いものがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−14765号公報
【特許文献2】特開2002−134590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セラミックスヒータの加熱面にセットされた被加熱物の表面上でプラズマを発生させるときには、被加熱物の表面上で、プラズマが均一に分布するに発生させることが重要である。なぜなら、被加熱物の表面上のプラズマの分布が不均一である場合には、例えばプラズマCVD法によりウエハの表面上に被膜を形成させるとき、この被膜の膜厚の面内ばらつきが生じ、ひいては製品の特性にばらつきが生じるおそれがあるからである。
【0009】
しかしながら、従来のセラミックスヒータにおいては、ウエハの中央部と外周部とで、プラズマ状態に差異が生じ、半径方向にプラズマの分布が不均一になる場合があった。そのため、プラズマCVD法によりウエハの表面上に形成された被膜の膜厚が、ウエハ中央部と外周部とでばらつきが生じることがあった。
【0010】
このようなプラズマの分布の不均一さは、セラミックスヒータのなかでも、加熱面の中央部に、ウエハの径よりも若干小さな径になる上面を有する凸部が形成され、この凸部の上面でウエハを加熱するセラミックスヒータの場合に生じるおそれがあった。
【0011】
そこで本発明は、プラズマの分布を被加熱物の中央部と周縁部とで均一にして、良好な特性の製品を安定して生産することができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の加熱装置は、被加熱物を加熱する加熱面を有する絶縁性セラミックス基体と、この絶縁性セラミックス基体に配設された発熱体と、この絶縁性セラミックス基体の内部にて、前記加熱面と平行に近接して設けられた低抵抗セラミックス部材と、この低抵抗セラミックス部材に接続する導電性部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加熱装置によれば、被加熱物上に発生させるプラズマの分布を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の加熱装置の実施例について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る加熱装置の一実施例を示す断面図である。なお、以下に述べる図面では、加熱装置の各構成要素の理解を容易にするために、各構成要素については、現実の加熱装置とは寸法比率を異ならせている。したがって、本発明に係る加熱装置は、図面に図示された加熱装置の寸法比率に限定されるものではない。
【0016】
図1に示された本実施例の加熱装置は、円盤形状の絶縁性セラミックス基体10を有している。この絶縁性セラミックス基体10は、上側セラミックス部材11と下側セラミックス部材12とを有し、この上側セラミックス部材11及び下側セラミックス部材12は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)系セラミックスからなる。また、高抵抗又は絶縁性を有しており、通常のセラミックスの抵抗率と同様の、例えば10Ω・cm以上の体積抵抗率を有している。
【0017】
図1に示された絶縁性セラミックス基体10の上側セラミックス部材11は、被加熱物であるウエハWが載置される側の中央部に、このウエハWの径よりも若干小さな径で形成されている。すなわち、図1は、加熱面に段差が形成されている絶縁性セラミックス基体10の例を示している。この上側セラミックス部材11は、ウエハWを絶縁性セラミックス基体10に載置する際、また、ウエハWを絶縁性セラミックス基体10から取り外す際に、この上側セラミックス部材11の周縁部に係合してウエハWを運搬する治具(図示せず)を使用可能とするためのものである。ウエハWは、図1に示された絶縁性セラミックス基体10の上側セラミックス部材11の平坦な上面に載置されて、加熱されることになる。
【0018】
この下側セラミックス部材12の内部には、抵抗発熱体13が埋設されている。この抵抗発熱体13に接続する電極棒14が、抵抗発熱体13の端部に接続されている。この電極棒14は、図示しない外部電源に接続される。
【0019】
また、上側セラミックス部材11の下側でかつ、上側セラミックス部材11の上面と平行に、高周波電極15が埋設されている。この高周波電極15には、例えばMoやWなどの金属のバルク体からなる孔開きパターンを持つ面状の電極、より好ましくは、メッシュ状(金網状)の電極を用いることができる。この高周波電極15と、ウエハWを挟んでこの高周波電極15とは反対側に配設される対向電極20との間にプラズマPを発生させ、ウエハWの表面処理、例えば成膜を行う。プラズマPを良好に発生させるために、高周波電極15は、ウエハWが載置されている上側セラミックス部材11の表面から数ミリ程度以内の深さに埋設されることが望ましい。また、高周波電極を腐食性雰囲気から保護するためにも、埋設される。そのため、高周波電極15は上側セラミックス部材11の内部に埋設され、高周波電極15の径は、上側セラミックス部材11の径よりも小さい。
【0020】
この高周波電極15の裏面に接して、板状の低抵抗セラミックス部材16が加熱面と平行に設けられている。この低抵抗セラミックス部材16は、下側セラミックス部材12と同じ径を有していて、ウエハWの径よりも大きい。この低抵抗セラミックス部材16を貫通して、高周波電極15に電極棒17が接続され、図示しない電源から高周波電極15及びこの高周波電極15に接している低抵抗セラミックス部材16に高周波プラズマ用電力を供給可能になっている。
【0021】
本実施例の加熱装置は、上述のように板状の低抵抗セラミックス部材16が設けられ、この低抵抗セラミックス部材16が、高周波電極15に接していることから、低抵抗セラミックス部材16及び高周波電極15が一体となって高周波電極として作用する。低抵抗セラミックス部材16は、下側セラミックス部材12と同じ径を有し、ウエハWの径よりも大きいから、対向電極20との間に生じるプラズマPは、ウエハWの中心から半径方向に、このウエハWの外周よりも外側まで一様なプラズマ状態とすることができる。したがって、ウエハW上の半径方向のプラズマの分布を、中心部と周縁部とで、均一にすることができる。
【0022】
この低抵抗セラミックス部材16の材料は、上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12よりも電気抵抗が低い、導電性を有する材料であって、例えば、低抵抗窒化アルミニウム(AlN)系セラミックスを用いることができる。低抵抗窒化アルミニウム系セラミックスの成分組成は、特に限定するものではないが、例えば特許文献1に開示されているような炭素繊維を含有する窒化アルミニウムを用いることができる。また従来から知られている低抵抗窒化アルミニウム系セラミックスとして、酸化イットリウム、酸化セリウム又は酸化サマリウムなどの希土類元素の酸化物を含有する窒化アルミニウムを用いることもできる。
【0023】
この低抵抗セラミックス部材16の体積抵抗率は、高周波電極としての作用を果すために、できるだけ低い体積抵抗率であることが好ましい。例えば1Ωcm以上、100Ωcm以下のものを用いることができる。このような数値範囲の体積抵抗率を有する材料には、例えば、特許文献1に開示された低抵抗窒化アルミニウム系セラミックス材料があり、本発明において好適に適用することができる。
【0024】
高周波電極としての作用を果すという観点からは、低抵抗セラミックス部材16の代わりに、導電性を有する金属材料を用いることも考えられる。しかし、金属材料を低抵抗セラミックス部材16の代わりに用いた場合には、図1に示したような構成では、ウエハWの外周部より外側の領域にて露出しているため、その金属材料が、使用環境の腐食性雰囲気により腐食し、ウエハWのコンタミネーションを招く。
【0025】
低抵抗セラミックス部材16のセラミックスとしては、上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12とは異なる主成分よりなる低抵抗又は導電性のセラミックスを用いることも考えられる。もっとも、上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12とは異なる主成分よりなる低抵抗又は導電性のセラミックスを、低抵抗セラミックス部材16に用いた場合には、低抵抗セラミックス部材16と上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12との熱膨張係数の相違から、上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12の内部に内部応力が残留し、破損するおそれがある。これに対して、低抵抗セラミックス部材16が、絶縁性セラミックス基体10の上側セラミックス部材11や下側セラミックス部材12と主成分を共通するセラミックスであるときには、熱膨張係数の相違は軽微であり、内部応力がほとんど生じず、その結果、優れた耐久性を具備する。また、熱伝導率の相違についてもほとんどなく、絶縁性セラミックス基体10の均熱性を損なうことなく効率的に高周波プラズマを生じさせることができる。したがって、低抵抗セラミックス部材16が、絶縁性セラミックス基体10と主成分を共通するセラミックスであることは、より好適である。
【0026】
図2は、本発明に係る加熱装置の他の実施例を説明する断面図である。なお、図2において、図1と同一部材については同一符号を付しており、以下では重複する説明を省略する。
【0027】
図2に示された本実施例の加熱装置は、絶縁性セラミックス基体30を有している。この絶縁性セラミックス基体30は、上側セラミックス部材31と下側セラミックス部材32とを有し、この上側セラミックス部材31及び下側セラミックス部材32は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)系セラミックスからなる。上側セラミックス部材11の上面が加熱面となり、この加熱面の中央部にウエハWが載置されている。また、加熱面に近接して、板状の低抵抗セラミックス部材16が加熱面と平行に埋設されている。この低抵抗セラミックス部材16は、上側セラミックス部材31及び下側セラミックス部材32と同じ径を有していて、ウエハWの径よりも大きい。この低抵抗セラミックス部材16に電極棒17が接続され、図示しない電源から低抵抗セラミックス部材16に高周波プラズマ用電力を供給可能になっている。
【0028】
本実施例の加熱装置は、低抵抗セラミックス部材16が導電性を有しているため、それ自体で高周波電極となり、図1に示した金属製の高周波電極15を不要としている。また、低抵抗セラミックス部材16が、上側セラミックス部材31及び下側セラミックス部材32と同じ径を有し、ウエハWの径よりも大きいから、対向電極20との間に生じるプラズマPは、ウエハWの中心から半径方向に、このウエハWの外周よりも外側まで一様なプラズマ状態になることができる。したがって、ウエハW上の半径方向のプラズマの分布を、中心部と周縁部とで、均一にすることができる。
【0029】
また、本実施例の加熱装置は、金属製の高周波電極15を不要としていることから、金属製の高周波電極と絶縁性セラミックス基体10との熱膨張係数の相違により絶縁性セラミックス基体30の内部に内部応力が残留するおそれがない。したがって、加熱されて高温になっている絶縁性セラミックス基体30に常温のウエハWを載置したときであっても、内部応力はほとんど生じず、よって、耐久性に優れた加熱装置となる。
【0030】
図3は、本発明に係る加熱装置の他の実施例を説明する断面図である。なお、図3において、図1及び図2と同一部材については同一符号を付しており、以下では重複する説明を省略する。
【0031】
図3に示された本実施例の加熱装置は、図2に示された本実施例の加熱装置とほぼ同一の構成を有していて、かつ低抵抗セラミックス部材16に接続するとともに、加熱面に露出するピン状の低抵抗セラミックス部材18が、加熱面の中央部及び周縁部に、それぞれ配設されている例である。このピン状の低抵抗セラミックス部材18は、低抵抗セラミックス部材16と主成分を共通する窒化アルミニウム系セラミックスを用いることができる。低抵抗セラミックス部材18の体積抵抗率は、10Ωcm以上10000Ωcm未満とすることが好ましい。このような体積抵抗率を有する窒化アルミニウム系セラミックスとしては特許文献1に記載されている焼結体があり、これを用いることができる。
【0032】
本実施例の加熱装置は、図2に示した加熱装置で得られる効果を有するのみならず、ピン状の低抵抗セラミックス部材18を備えていることから、加熱面の中央部に配設された低抵抗セラミックス部材18は、この加熱面に残留したプラズマの電荷を、この低抵抗セラミックス部材18から低抵抗セラミックス部材16、電極棒17を経由して外部に逃がすことができる。したがって、加熱面に残留した電荷によりウエハWが吸着するのを効果的に防止することができる。
【0033】
また、加熱面の周縁部に配設された低抵抗セラミックス部材18は、この領域に必要に応じて載置されることがあるリング部材に残留したプラズマの電荷を、この低抵抗セラミックス部材18から低抵抗セラミックス部材16、電極棒17を経由して外部に逃がすことができる。したがって、リング部材に残留したプラズマの電荷によるアーキングを効果的に防止することができる。
【0034】
なお、図3では、ピン状の低抵抗セラミックス部材18が、加熱面の中央部及び周縁部に、それぞれ配設されている例を示したが、本発明に係る加熱装置は、ピン状の低抵抗セラミックス部材18が、加熱面の中央部及び周縁部のいずれか一方に配設される場合も包含される。
【0035】
図4は、比較のために示した従来の加熱装置の一例の断面図である。なお、図4において、図1ないし図3と同一部材については同一符号を付しており、以下では重複する説明を省略する。
【0036】
図4に示した加熱装置は、セラミックス基体101が、被加熱物であるウエハWが載置される側の中央部に、このウエハWの径よりも若干小さな径になる凸部101aが形成されている。ウエハWは、セラミックス基体101の凸部101aの平坦な上面に載置されて、加熱されることになる。
【0037】
また、セラミックス基体101の凸部101aの内部でかつ、凸部101aの上面と平行に、高周波電極15が埋設されている。この高周波電極15は凸部101aの内部に埋設され、高周波電極15の径は、凸部101aの径により制限されてウエハWの径よりも小さい。したがって、高周波電極15と対向電極20との間に生じるプラズマPは、ウエハWの中央部と外周部とで、プラズマ状態に差異が生じ、半径方向にプラズマの分布が不均一になる場合があった。
【0038】
次に本発明の加熱装置の製造方法の一例について説明する。
【0039】
まず、絶縁性セラミックス基体10、30の上側セラミックス部材11、31、下側セラミックス部材12、32用原料セラミックス粉と、低抵抗セラミックス部材16や低抵抗セラミックス部材18用のセラミックス粉を、それぞれ調製する。
【0040】
絶縁性セラミックス基体10、30の上側セラミックス部材11、31、下側セラミックス部材12、32の原料セラミックス粉は、還元窒化法、気相合成法、直接窒化法等の従来公知の製造方法により得られた窒化アルミニウム原料粉と、所望の体積抵抗率に応じて添加される酸化イットリウム等の希土類酸化物又は希土類酸化物の原料化合物である硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、塩化物、アルコキシド等を、所定の配合比で調合し、イソプロピルアルコール等の溶媒を加え、ポットミル、トロンメル又はアトリッションミル等の混合粉砕機を用いて混合する。混合は湿式、乾式いずれでもよく、湿式を用いた場合は、混合後、スプレードライ法等を用い乾燥を行い、原料混合粉を得る。また、真空乾燥法を実施した後に乾燥粉末をふるいをかけ、造粒粉の粒度の調整を行うことが望ましい。
【0041】
低抵抗セラミックス部材16、低抵抗セラミックス部材18用のセラミックス粉は、窒化アルミニウム原料粉と炭素繊維と、さらに好ましくは酸化イットリウム等の希土類酸化物とを所定の配合比で調合し、イソプロピルアルコール等の溶媒を加え、ポットミル、トロンメル又はアトリッションミル等の混合粉砕機を用いて混合する。窒化アルミニウム原料粉に対して、低抵抗セラミックス部材は、希土類酸化物の添加によっても実現可能であるが、炭素繊維の添加による低抵抗セラミックス部材は、焼結体中で導電パスを形成し易く窒化アルミニウムの具備する特性を維持したまま、低い体積抵抗率が得られるために有利である。
【0042】
炭素繊維としては、例えば、繊維径1μm以下、アスペクト比5以上、より好ましくはアスペクト比10以上の炭素繊維を使用することができる。カーボンナノチューブを使用することもできる。
【0043】
窒化アルミニウム原料粉に対する炭素繊維の添加量は、最終的に得られる焼結体の用途に必要な電気的特性と物性に合わせて定めればよい。例えば、絶縁性セラミックス基体10の上側セラミックス部材11、下側セラミックス部材12と同等の物性を維持しつつ1012Ωcm程度以下の体積抵抗率を得たい場合は、窒化アルミニウム原料粉を100重量部に対し、炭素繊維の添加量は、好ましくは5重量部以下とし、さらに好ましくは1重量部以下とする。また、良好な強度と耐熱性、耐腐食性を有しつつ10Ωcm程度以下の、より低い体積抵抗率を得たい場合は、窒化アルミニウム原料粉を100重量部に対し、炭素繊維の添加量は、好ましくは20重量部以下とし、さらに好ましくは10重量部以下とする。
【0044】
また、希土類酸化物を加える場合には、好ましくはその配合比は0.2重量部以上20重量部以下、好ましくは10重量部以下とする。
【0045】
これらの原料粉末の混合は湿式、乾式いずれでもよく、湿式を用いた場合は、混合後、スプレードライ法等を用い乾燥を行い、原料混合粉を得る。また、真空乾燥法を実施した後に乾燥粉末をふるいにかけ、粒度の調整を行うことが望ましい。なお、原料混合粉中にポリビニルアルコール等のバインダ成分を添加することができる。バインダを添加した場合は、脱脂工程を窒素等の不活性雰囲気中で行う方法等により、炭素繊維が酸化消失しないよう注意する必要がある。
【0046】
次に、絶縁性セラミックス基体10を製造するに当たり、必要に応じて、あらかじめピン状の低抵抗セラミックス部材18を作成する。低抵抗セラミックス部材18の作成は、原料セラミックス粉をピン状に加圧成形することによって行う。更に好ましくは、この加圧成形により得られた成形体を焼結して、ピン状の焼結体とする。要は、低抵抗セラミックス部材18は、絶縁性セラミックス基体10の製造過程で、低抵抗セラミックス部材18の形状を確実に維持できるものであれば、未焼結の成形体であってもよいし、また、焼結体であっても良い。もっとも、焼結体のほうが成形体よりも強度が高く、ピン形状をより確実に維持できるので、焼結体のほうが好ましい。
【0047】
低抵抗セラミックス部材18の加圧成形には、金型成形法を用いてもよいし、またCIPを用いてもよく、セラミックス粉をピン状に成形するための公知の方法を用いることができる。また、この低抵抗セラミックス部材18の成形体の焼結は、ホットプレス法、常圧焼結法又はHIP等の、公知の焼結方法を用いることができる。このとき成形体の加熱及び焼成時の雰囲気は、真空、不活性、または還元雰囲気として、低抵抗セラミックス部材18中に含有される炭素繊維が酸化、焼失されないようにすることが望ましい。また、焼成温度は、焼結助剤の添加量等によっても異なるが、好ましくは1650℃〜2200℃とする。
【0048】
焼成後に得られた窒化アルミニウム焼結体には、炭素繊維がほぼ原料時の繊維状構造を維持したまま粒界、粒内に分散した状態で残留し、窒化アルミニウム焼結体中で、互いに隣接する炭素繊維と接し、連続する三次元の導電パスを形成する。
【0049】
次に、絶縁性セラミックス基体10を作製する。この絶縁性セラミックス基体10は、その内部に抵抗発熱体13及び必要に応じて高周波電極15を埋設する製法の一例を以下に示す。金型に上述の高抵抗セラミックス粉末からなる造粒粉を所定量入れ、一軸加圧プレスによって、円盤状に成形する。その成形体上に抵抗発熱体13、原料セラミックス粉末、を入れて、加圧成形して、絶縁性セラミックス基体10となる成形体を得ることができる。
【0050】
この絶縁性セラミックス基体10となる成形体の上に、前述した低抵抗セラミックスとなる造粒粉を入れ、再び一軸加圧成形し、その上に高周波電極15および絶縁性セラミックス粉を入れ、順次積層加圧成形する。このようにして得られた積層成形体の所定の位置に、必要に応じて、前述した低抵抗セラミックス部材18の成形体又は焼結体を埋め込む。この埋め込みは、例えば、ピン状の低抵抗セラミックス部材18の焼結体を、この部分的な成形体の表面に孔を開け、厚み方向に押し込むことによって行うことができる。
【0051】
なお、以上の積層の順番を逆にして成形しても何ら変わりなく、積層成形体を得ることができる。
【0052】
抵抗発熱体13は、コイル状、スパイラル状等の所定形状に加工した金属バルク体からなるMoやW等の高融点金属を用いることができる。
【0053】
得られた成形体を、ホットプレス法又は常圧焼結法等を用いて、加熱及び焼成し、焼結体を作製する。この焼成では、ホットプレス法を用いることにより、焼成時に一軸方向の加圧を行うため、電極と窒化アルミニウム焼結体との密着性をより良好なものにできるので有利である。
【0054】
焼成温度は、焼結助剤の添加量等によっても異なるが、好ましくは1650℃〜2200℃とする。このとき焼成時の雰囲気は、真空、不活性、または還元雰囲気とすることが望ましい。
【0055】
セラミックス体の焼結体を作製後は、加熱面の周縁部を研削加工して、図1に示したような、加熱面の中央部に凸部を有する形状に加工することができるし、また、加熱面の表面粗さ調整をすることもできる。
【0056】
次に、下側セラミックス部材12に座繰り孔を設け、低抵抗セラミックス部材16もしくは高周波電極15、および抵抗発熱体13を露出し、これらにNi棒等の給電部材を金ロウつけ等によって接合し、本発明による加熱装置を得る。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
直径Φ355mmの金型に、焼結後の厚みが2mmとなるように5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を入れ、一軸加圧成形により円盤状に成形した。次に、高周波電極となる直径Φ290mmのMoメッシュを置き、次に、(1wt%の炭素繊維と、3wt%のY23を含有する)低抵抗AlN原料粉を焼結後の厚みが1mmとなるように入れ、一軸加圧成形した。次に、5wt%Y2O3含有窒化アルミニウム粉を焼結後の厚みが5mmとなるように入れ、再び一軸加圧成形した。更に、Moコイルよりなる抵抗発熱体を設置し、その上から焼結後の厚みが15mmとなるように5wt%Y2O3含有窒化アルミニウム粉を金型に入れて一軸成形し、成形体を得た。
【0058】
この成形体を、ホットプレス炉内で窒素不活性雰囲気で1900℃で焼成した。得られた焼結体の高周波電極側から、外周部をウエハー載置面がΦ295mmとなるように2.5mm深さまで削り、外周部に低抵抗AlN面を露出させた、図1に示す絶縁性セラミックス基体10の形状とした。その後、得られたヒータープレートの抵抗発熱体側から、抵抗発熱体の二つの端部および高周波電極が露出するように、焼結体に座繰り穴をあけた。また、抵抗発熱体、高周波電極にNi製の導電性棒を、コバールと金ロウを介して接合した。
【0059】
[比較例1]
一方、板状の低抵抗AlN部材を加熱面近傍に配設することなく、他は実施例1と同様にして、全体を5wt%Y2O3含有窒化アルミニウムからなる、図4に示す段付ヒータープレートを作成した。
【0060】
これらのヒータープレート上にSiウエハーを載置し、400℃に昇温したところに、SiH4/O2混合ガスを流し、高周波電圧を高周波電極15に印加してプラズマを発生させSiO2膜を生成した。その結果、低抵抗AlN層(体積抵抗率15Ωcm)を含むヒータープレートを用いた実施例1の場合は、加熱面の外周部までプラズマが均一に発生した為、300mmSiウエハ上の膜厚のバラツキが2%未満であった。これに対して、低抵抗AlN層を含まず、Moメッシュよりなる高周波電極がΦ290mmの範囲しかないヒータープレートを用いた比較例1の場合は、形成されたSiO2膜の外周部の膜厚が薄く、膜厚バラツキが5%以上となった。
【0061】
[実施例2]
実施例2では、図2に示した構成を有する加熱装置について、耐久性を調べた。
【0062】
Φ100mmの金型に、焼結後の厚みが2mmとなるように5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を入れ、一軸加圧成形により円盤状に成形した。次に、高周波電極として(1wt%の炭素繊維と、3wt%のY23を含有する)低抵抗AlN原料粉を焼結後の厚みが1mmとなるように入れ、一軸加圧成形した。次に5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を焼結後の厚みが5mmとなるように入れ、再び一軸加圧成形し成形体を得た。これをホットプレス炉内で窒素不活性雰囲気で1900℃で焼成した。
【0063】
[比較例2]
比較例2は、実施例2との比較のための、低抵抗窒化アルミニウム層を有しない例である。
【0064】
Φ100mmの金型に、焼結後の厚みが2mmとなるように5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を入れ、一軸加圧成形により円盤状に成形した。次に、高周波電極となるΦ90mm厚み0.2mmのMoメッシュを置いた後、5wt%Y2O3含有窒化アルミニウム粉を焼結後の厚みが5.8mmとなるように入れ、再び一軸加圧成形し成形体を得た。これをホットプレス炉内で窒素不活性雰囲気で1900℃で焼成した。
【0065】
[比較例3]
比較例3は、参考のためにMoメッシュを配設せず、それ以外は、比較例2と同様の例である。
【0066】
Φ100mmの金型に焼結後の厚みが8mmとなるように5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を入れ、一軸加圧成形により円盤状に成形した。これをホットプレス炉内で窒素不活性雰囲気で1900℃で焼成した。
【0067】
上記実施例2、比較例2、比較例3の3種類のプレートを空気中電気炉で所定温度に加熱し、室温の水中に落下させる熱衝撃試験を実施し、クラックの発生有無を確認した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0068】
表1から分かるように、高周波電極に、従来のMoを用いる比較例より、低抵抗AlNを用いた実施例のほうが、熱衝撃に対する耐性が高く、内部に電極を入れないAlN本来の耐熱衝撃性と変わらず、作製時の残留応力が十分小さい事が確認できた。
【0069】
[実施例3]
直径Φ355mmの金型に、焼結後の厚みが2mmとなるように5wt%Y2O3を含有する窒化アルミニウム粉を入れ、一軸加圧成形により円盤状に成形した。次に、高周波電極となる低抵抗AlN原料粉を焼結後の厚みが1mmとなるように入れ、一軸加圧成形した。次に、5wt%Y2O3含有窒化アルミニウム粉を焼結後の厚みが5mmとなるように入れ、再び一軸加圧成形した。更に、Moコイルよりなる抵抗発熱体を設置し、その上から焼結後の厚みが15mmとなるように5wt%Y2O3含有窒化アルミニウム粉を金型に入れて一軸成形し、成形体を得た。
【0070】
この成形体を、ホットプレス炉内で窒素不活性雰囲気で1900℃で焼成した。得られた焼結体を所定の寸法に研削加工することで、図2に示す加熱装置の形状とした。その後、得られたヒータープレートの抵抗発熱体側から、抵抗発熱体の二つの端部および高周波電極が露出するように、焼結体に座繰り穴をあけた。また、抵抗発熱体、高周波電極にNi製の導電性棒を、コバールと金ロウを介して接合した。
【0071】
このようにして得た加熱装置を実施例1と同様にして、ウエハー上のSiO2膜の形成に用いたところ、実施例と同様にSiO2膜の厚みのばらつきは2%未満であった。また、この加熱装置をチャンバー内に設置し600℃に昇温したところで、室温のウエハーを表面に置く試験を10000回繰り返したところ、破損しなかった。一方、従来のMoを高周波電極としたときには、給電部材を接続した部分の上の加熱面に剥離状のクラックが入り破損することがあった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の加熱装置に係る一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の加熱装置に係る他の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の加熱装置に係る他の実施例を示す断面図である。
【図4】従来の加熱装置の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
11 セラミックス基体
11a 凸部
12 抵抗発熱体
14 高周波電極
15 低抵抗セラミックス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱面を有する絶縁性セラミックス基体と、
この絶縁性セラミックス基体に配設された発熱体と、
絶縁性セラミックス基体の内部にて、前記加熱面と平行に近接して設けられた低抵抗セラミックス部材と、
この低抵抗セラミックス部材に接続する導電性部材と
を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記低抵抗セラミックス部材は、前記加熱面と平行な方向の幅が、この加熱面に載置される被加熱物の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記低抵抗セラミックス部材は、前記加熱面に近接して設けられた金属製高周波電極に接していること特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記低抵抗セラミックス部材が、高周波電極であることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記低抵抗セラミックス部材は、前記絶縁性セラミックス基体と主成分が共通することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記低抵抗セラミックス部材及び前記絶縁性セラミックス基体が、共に窒化アルミニウム系セラミックスであることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記低抵抗セラミックスが、部分的に前記絶縁性セラミックス基体の表面に露出していることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−258116(P2007−258116A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84102(P2006−84102)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】