説明

加熱調理器

【課題】加熱調理器の高さを大型化することなく、誘導加熱コイルと電源基板の冷却効率を向上させることのできる加熱調理器を得る。
【解決手段】炊飯器本体1と、内釜2と、誘導加熱コイル8と、商用電源を整流するダイオードブリッジ21、及び少なくとも一つのスイッチング素子22のオン・オフによりダイオードブリッジ21の出力を交流電力に変換して誘導加熱コイル8に供給するインバーター回路26が実装された電源基板20と、炊飯器本体1内に設けられた冷却ファン14と、炊飯器本体1に設けられた吸気口12及び排気口13とを備え、ダイオードブリッジ21及びスイッチング素子22のいずれか一方あるいは両方は、ワイドバンドギャップ半導体で構成され、電源基板20は誘導加熱コイル8の下方に配置され、冷却ファン14の駆動により生じる冷却風で電源基板20と誘導加熱コイル8とを冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱手段を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「加熱コイルを制御するインバーター回路と放熱フィンを搭載した制御基板と、炊飯操作するための操作基板とを有し、前記制御基板と操作基板を基板ベースにより一体化するとともに前記制御基板を略垂直にして炊飯器本体前面に取り付け」た炊飯器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−10148号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
誘導加熱調理器に設けられている誘導加熱コイルと電源基板(制御基板)は、加熱中の発熱量が大きい。したがって、電源基板には大型の放熱フィンを設けるとともに、誘導加熱コイルと電源基板とを効果的に冷却するための冷却風を供給する冷却ファンを設けるのが通常である。
【0005】
従来の誘導加熱調理器は、誘導加熱コイルを加熱調理器本体の下方に備える一方で、電源基板を加熱調理器本体の前面に備えているため、電源基板と誘導加熱コイルのそれぞれを冷却するための冷却風路を2つ設ける必要がある。
したがって、例えば電源基板と誘導加熱コイルのそれぞれに冷却ファンを設けた場合には、部品点数が増加して製造コストが高くなるとともに、冷却ファンの駆動に要するエネルギー量が増加してしまう。
また、例えば一つの冷却ファンにより誘導加熱コイルと電源基板を冷却する場合には、冷却ファンからの冷却風を両者に供給するための2系統の冷却風路を設ける必要がある。ここで、一般的にSi(ケイ素)半導体を備える電源基板は、誘導加熱コイルよりも発熱量が大きいため、電源基板の方により多量の冷却風が必要となり、誘導加熱コイルに供給する冷却風量は相対的に小さくなる。このため、例えば誘導加熱コイルとして耐熱温度の高いものにすれば、コストが高くなってしまう。また、誘導加熱コイルの高温化を抑えるために供給電力を制限すれば、調理容器の加熱温度が低くなってしまう。
【0006】
また、電源基板を加熱調理器本体の前面ではなく、誘導加熱コイルの下方に配置することもできる。このようにすれば、加熱調理器本体を載置する際の専有面積は小さくすることができる。しかし、電源基板に取り付けられる放熱フィンの高さの分だけ加熱調理器の高さが高くなってしまう。特に、誘導加熱コイルの近傍は雰囲気温度が高い上に、電源基板に用いられるSi半導体の温度限度は150℃度程度であるので、大型の放熱フィンを設ける必要があり、加熱調理器の高さの大型化につながっていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、加熱調理器の高さを大型化することなく、誘導加熱コイルと電源基板の冷却効率を向上させることのできる加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る加熱調理器は、加熱調理器本体と、上面が開口し、前記加熱調理器本体内に収容される調理容器と、前記加熱調理器本体に配設され、前記調理容器を加熱する誘導加熱コイルと、商用電源を整流する整流回路、及び少なくとも一つのスイッチング素子のオン・オフにより前記整流回路の出力を交流電力に変換して前記誘導加熱コイルに供給するインバーター回路が実装された電源基板と、前記加熱調理器本体内に設けられた冷却ファンと、前記加熱調理器本体に設けられた吸気口及び排気口とを備え、前記整流回路の整流素子及び前記インバーター回路のスイッチング素子のいずれか一方あるいは両方は、ワイドバンドギャップ半導体で構成され、前記電源基板は前記誘導加熱コイルの下方に配置され、前記冷却ファンの駆動により生じる冷却風で前記電源基板と前記誘導加熱コイルとを冷却するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る誘導加熱調理器は、電源基板の半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体を用い、この電源基板を誘導加熱コイルの下方に配置した。電源基板に耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体を用いたので放熱フィンを小型化でき、電源基板を誘導加熱コイルの下方に配置しても加熱調理器本体の高さの大型化を抑制できる。また、誘導加熱コイルの下方に電源基板を配置したので、両者を冷却する冷却風路を集約でき、冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の外観図である。
【図2】実施の形態1に係る炊飯器の断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る炊飯器の主要部のブロック図である。
【図4】実施の形態2に係る炊飯器の断面模式図である。
【図5】実施の形態3に係る炊飯器の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1では、炊飯器に本発明を適用した場合を例に説明する。
図1は実施の形態1に係る炊飯器100の外観図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。図2は実施の形態1に係る炊飯器100の断面模式図、図3は実施の形態1に係る炊飯器100の主要部のブロック図である。なお、以降の説明において、図1の紙面左側を炊飯器の前面側、紙面右側を炊飯器の背面側として説明する場合がある。
【0012】
炊飯器100は、上部に開口部を有する炊飯器本体1と、有底筒状で上面が開口した調理容器であり炊飯器本体1に着脱可能に収容される内釜2と、炊飯器本体1の背面側上部にヒンジ部3により開閉自在に取り付けられた外蓋4と、外蓋4の内側に着脱可能に取り付けられた内蓋5とを備える。炊飯器本体1の上部には、炊飯器100を持ち運ぶためのハンドル10が起倒自在に取り付けられている。炊飯器本体1の底面には底板11が設けられている。
【0013】
炊飯器本体1の内側には、外面に胴ヒーターが貼り付けられた略円筒形状の金属製の側枠6と、側枠6の下方に設置された略深皿状の底枠7とを備える。底枠7の底部及びコーナー部の下面には、誘導加熱手段である誘導加熱コイル8が設けられている。また、底枠7のほぼ中央には、内釜2の底面に接触して内釜2の温度を検出する温度センサー9を備えている。
【0014】
誘導加熱コイル8は、複数の線材を撚り合わせたものを渦巻状に巻き回して構成されている。誘導加熱コイル8は、後述する電源基板20により高周波電力を供給され、これにより発生する磁界で内釜2を加熱し、内釜2内に入れられた米や水などの被調理物を加熱する。誘導加熱コイル8は、平面視で炊飯器本体1の前後左右ほぼ中央に配置されている。
【0015】
炊飯器本体1の背面側の空間には、電源接続用のコードリール16が収納されている。コードリール16には、先端にプラグ18を備えた電源コード17が巻き取られている。コードリール16に巻き取られた電源コード17のプラグ18は、炊飯器本体1の背面に形成されたコード引き出し口(図示せず)から露出しており、プラグ18をコンセントに接続する際にはプラグ18をコード引き出し口から引き出すことができる。コードリール16は、本実施の形態1では、縦置き状態で設置されており、電源コード17はコードリール16に垂直方向に巻き取られている。
【0016】
外蓋4の上面手前側には、炊飯ボタン等の各種操作ボタンを備えた操作パネル30が設けられている。外蓋4の内部には基板室34が区画形成されており、この基板室34内に操作パネル30の各種スイッチや液晶パネル31が実装された操作基板32が配設されている。操作基板32は、操作パネル30からの入力に基づいて後述する電源基板20に制御信号を出力するとともに、液晶パネル31に炊飯器100の動作状態等を表示させる。なお、操作基板32を構成する回路は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUやマイコン等の演算装置とその動作を規定するソフトウェアで構成することもできる。
【0017】
電源基板20は、商用電源を高周波電力に変換して誘導加熱コイル8に供給するための回路が実装されたものである。図3に示すように、電源基板20は、整流回路を構成するダイオードブリッジ21と、平滑回路を構成するチョークコイル23及び平滑コンデンサ24と、誘導加熱コイル8に並列に接続された共振コンデンサ25と、インバーター回路26を構成するスイッチング素子22及びスイッチング素子22に逆方向に並列に接続されたダイオード29と、電源回路27と、インバーター駆動回路28が実装されている。なお、図3では一つのスイッチング素子22を示しているが、スイッチング素子の数を限定するものではない。また、半導体スイッチング素子22と、ダイオード29をそれぞれ実装するものとして説明をしているが、半導体スイッチング素子22とダイオード29とをワンパッケージにしたものを用いてもよい。インバーター駆動回路28は、操作基板32からの制御信号に基づいてスイッチング素子22をオン・オフ動作させ、これにより商用電源の出力を所定周波数の交流電力に変換する。また、電源基板20には、後述する冷却ファン14を駆動する冷却ファン駆動回路15が実装されている。
【0018】
本実施の形態1では、ダイオードブリッジ21及びスイッチング素子22は、SiC(炭化ケイ素)、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドからなるワイドバンドギャップ半導体で構成されている。
【0019】
また、ダイオードブリッジ21とスイッチング素子22には、放熱フィン50が取り付けられている。上述のようにダイオードブリッジ21とスイッチング素子22はワイドバンドギャップ半導体によって形成されている。そして、例えばSiC半導体を用いた場合には、その耐熱温度は約230℃であって、Si(ケイ素)半導体を用いた素子の耐熱温度(約150℃)と比べて非常に高い。このため、本実施の形態1の放熱フィン50は、Si半導体に取り付けられるものと比べて大幅に小型化している。
【0020】
電源基板20は、耐熱性を有する合成樹脂製の基板ホルダー51に保持されて、誘導加熱コイル8の下側近傍かつ底板11の上方に設けられている。誘導加熱コイル8と電源基板20は共に横置き状態で設置している。すなわち、ほぼ平板状の誘導加熱コイル8と電源基板20を、両者を積層するようにして設置している。また、誘導加熱コイル8と電源基板20との間には通風空間40を設けており、誘導加熱コイル8と電源基板20とは接触していない。
【0021】
また、電源基板20は、電源リード線19によって電源コード17と接続されている。電源基板20の背面側、すなわちコードリール16に近い側に、電源リード線19を接続することで、電源リード線19の長さがなるべく短くなるよう構成されている。
【0022】
炊飯器本体1の前方であって底板11の上には、冷却ファン14が設置されている。本実施の形態1に示す冷却ファン14は、短軸の軸流ファンであり、その回転軸14aがほぼ垂直に向くようにして(すなわち、回転軸14aが底板11とほぼ直交する向きで)横置きされている。したがって、図2において、冷却ファン14の図面下側(炊飯器本体1の底面側)が空気の流入側、冷却ファン14の図面上側が空気の流出側である。冷却ファン14は、電源基板20に設けられた冷却ファン駆動回路15により駆動される。
【0023】
炊飯器本体1の底板11の一部であって、冷却ファン14の下方には、吸気穴12が設けられている。また、炊飯器本体1の背面であって吸気穴12よりも上側には、排気穴13が設けられている。吸気穴12と排気穴13は、スリット状、格子状、あるいは複数の小穴により構成されていて、空気の流通は可能であるがユーザーの指等が入らないようになっている。
【0024】
上記のように構成された炊飯器100において、操作パネル30に炊飯指示の入力が行われると、操作基板32は入力内容に応じて炊飯動作に関する情報を液晶パネル31に表示するとともに、電源基板20のインバーター駆動回路28に制御信号を出力してスイッチング素子22をオン・オフさせる。これにより、所定周波数の高周波電力を誘導加熱コイル8に供給し、内釜2を加熱する。また、操作基板32は、冷却ファン駆動回路15に制御信号を出力して冷却ファン14を動作させる。
【0025】
冷却ファン14が動作すると、図2の矢印X1に示すように、炊飯器本体1の底板11に設けられた吸気穴12から外気が流入する。そして、炊飯器本体1に流入した外気は、図2の矢印X2に示すように、冷却ファン14により冷却風として送られる。矢印X2に示す冷却風は、誘導加熱コイル8に吹き付けられて誘導加熱コイル8を冷却する。また、誘導加熱コイル8に衝突した冷却風は、炊飯器本体1の背面方向に向かって流れ、その進行方向に配置された電源基板20の放熱フィン50の表面に吹き付けられ、放熱フィン50を介してダイオードブリッジ21やスイッチング素子22を冷却する。誘導加熱コイル8の下方に電源基板20が配置されているので、誘導加熱コイル8への冷却風路と電源基板20への冷却風路とを個別に設ける必要がなく、一つの冷却風路に集約することができる。
【0026】
また、誘導加熱コイル8と電源基板20との間には通風空間40を設けているので、冷却風はこの通風空間40を通って誘導加熱コイル8と電源基板20の双方を効率よく冷却できる。また、通風空間40を設けたことにより、誘導加熱コイル8、電源基板20で発生した熱が、相手側に伝わりにくくなる。
【0027】
誘導加熱コイル8と電源基板20を冷却した空気は、上方に向かって送られ、図2の矢印X3に示すように、排気穴13から排出される。上述のように誘導加熱コイル8と電源基板20との間に通風空間40を設けているので、誘導加熱コイル8と電源基板20を冷却した高温の空気が誘導加熱コイル8や電源基板20の近傍にこもらず上方に流れ、円滑に排気穴13から排出される。
【0028】
以上のように本実施の形態1によれば、電源基板20の半導体素子としてワイドバンドギャップ半導体を用い、この電源基板20は誘導加熱コイル8の下方に配置されている。電源基板20に耐熱温度の高いワイドバンドギャップ半導体を用いたので放熱フィン50を小型化でき、電源基板20を誘導加熱コイル8の下方に配置された場合でも、炊飯器本体1の高さの大型化を抑制できる。また、誘導加熱コイル8の下方に電源基板20が配置されたので、誘導加熱コイル8と電源基板20にそれぞれ冷却ファンを設ける必要がなく、一つの冷却ファン14で双方に冷却風を送ることができる。このように、両者を冷却する冷却風路を集約でき、冷却効率を向上させることができる。また、冷却ファンを複数設ける場合と比べてエネルギー消費量を低減できる。
【0029】
このように、本実施の形態1の炊飯器100は、炊飯器本体1の高さが大型化するのを抑えつつ、誘導加熱コイル8と電源基板20とが一箇所に配置され、両者を効率よく冷却することができる構成になっている。
【0030】
また、ワイドバンドギャップ半導体で構成されたダイオードブリッジ21やスイッチング素子22は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、ダイオードブリッジ21やスイッチング素子22の小型化が可能である。これら小型化されたダイオードブリッジ21やスイッチング素子22を用いることにより、電源基板20を小型化することができる。
【0031】
また、ワイドバンドギャップ半導体はシリコン半導体と比べて耐熱性が高い。このため、高温化する誘導加熱コイル8の近傍の環境においても、電源基板20は動作することができる。また、ダイオードブリッジ21やスイッチング素子22に取り付ける放熱フィン50を小型化でき、電源基板20の一層の小型化が可能になる。なお、本実施の形態1では放熱フィン50を設ける例を示したが、冷却ファン14の冷却風量が十分であれば、放熱フィン50を設けない構成としてもよい。このようにすることで、電源基板20の高さを小型化でき、炊飯器本体1の高さをさらに小型化することができる。
【0032】
また、電源基板20に設けられたダイオードブリッジ21やスイッチング素子22を、耐熱温度が高いワイドバンドギャップ半導体で構成したので、シリコン半導体を用いる従来と比べて電源基板20を冷却する冷却風の風量を低減できる。従来よりも冷却ファン14の風量を低減できるので、省エネルギー効果を奏することができるとともに、冷却ファン14の駆動による騒音を低減できる。
【0033】
また、従来よりも冷却ファン14の風量を低減できるので、その低減した風量分を誘導加熱コイル8に供給することにより誘導加熱コイル8への冷却風を増加させることができる。このため、誘導加熱コイル8の耐熱グレードを下げることもでき、このようにすることで誘導加熱コイル8のコストダウンを図ることができる。また、誘導加熱コイル8に従来よりも多くの冷却風を供給できるので、誘導加熱コイル8の発熱を懸念することなく大電力を誘導加熱コイル8に供給でき、高火力での加熱を実現できる。このように高火力で加熱することにより、炊きあがったご飯の食味を向上させることができる。
【0034】
また、炊飯器本体1の底板11に吸気穴12を設け、炊飯器本体1の吸気穴12よりも上方に排気穴13を設けた。このため、炊飯器本体1の内部で誘導加熱コイル8や電源基板20により温められた空気が、吸気穴12よりも上方に配置された排気穴13を通って円滑に炊飯器本体1の外部に排出される。このような自然対流の発生により、従来よりも冷却ファン14の風量をさらに低減でき、上述した冷却ファン14の風量低減による効果をより顕著なものにすることができる。
【0035】
また、誘導加熱コイル8と電源基板20との間に通風空間40を設けたので、この通風空間40を空気が通過することにより誘導加熱コイル8と電源基板20の双方を冷却することができる。また、通風空間40を設けたことにより、誘導加熱コイル8、電源基板20で発生した熱が、相手側に伝わりにくくなり、誘導加熱コイル8、電源基板20の高温化を抑制できる。
【0036】
また、電源基板20が炊飯器本体1の前後左右ほぼ中央の底部に配置されたので、炊飯器本体1の背面側に配置されたコードリール16と電源基板20とを接続する電源リード線19を、電源基板20が炊飯器本体1の前面側に配置された場合と比べて短くすることができる。上記特許文献1に記載のように電源基板20が炊飯器本体1の前面側に配置された場合、炊飯器本体1の背面側に配置されたコードリール16と接続するための長いリード線が必要であり、また、この長いリード線は、誘導加熱コイル8の近傍に配置されるため誘導加熱コイル8に生じる磁界の影響によるノイズを拾いやすい構造であった。しかし、本実施の形態1によれば、電源リード線19を短縮化できるので、上述したノイズを低減できる。
【0037】
また、放熱フィン50等を備え重量部品である電源基板20は、炊飯器本体1の前後左右ほぼ中央の下部に配置されている。すなわち、米や水などの被加熱物が入れられる内釜2と、重量部品である電源基板20が、共に炊飯器本体1のほぼ中央に配置されている。このため、内釜2内に米や水などの内容物が入っているか否かにより炊飯器100の前後の重量バランスにほとんど変動がなく、ユーザーがハンドル10を持って炊飯器100を持ち運ぶ際にも前後のバランスが崩れにくく使い勝手がよい。
また、炊飯器100を持ち運ぶ際の本体バランスを良好に維持できるような位置に、ハンドル10の取り付け設計を行うことが容易となる。
また、例えば特許文献1に記載のように重量部品である電源基板を炊飯器本体の前面に配置した場合、前後の重量バランスをとるためにハンドルの取り付け位置は炊飯器本体の前寄りの位置に設ける必要があった。このため、ハンドルを炊飯器本体の後側に倒せるようにするためにはハンドルを長くしなければならなかった。しかし、本実施の形態1によれば、電源基板20が炊飯器本体1の前側に配置される場合と比べて重心位置が後寄りになるので、ハンドル10の取り付け位置をより後方にでき、ハンドル10の長さも短くすることができる。
【0038】
なお、実施の形態1では、ダイオードブリッジ21及びスイッチング素子22をワイドバンドギャップ半導体で構成したことを述べたが、いずれか一方をワイドバンドギャップ半導体で構成してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0039】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、冷却ファン14を設け、冷却ファン14からの冷却風により誘導加熱コイル8と電源基板20を冷却するようにしたが、本実施の形態2は、冷却ファンを設けず冷却風の自然風により誘導加熱コイル8と電源基板20とを冷却するようにしたものである。
図4は、実施の形態2に係る炊飯器100Aの断面模式図である。なお、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付し、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0040】
図4に示すように、炊飯器本体1の底板11のうち、下面から見たときに電源基板20と少なくとも一部が重複する位置に、吸気穴12Aを設けている。また、実施の形態1と同様に、炊飯器本体1の背面であって吸気穴12Aよりも上方に、排気穴13を設けている。なお、実施の形態1とは異なり、実施の形態2に係る炊飯器100Aは冷却ファン及び冷却ファン駆動回路を備えていない。
【0041】
また、実施の形態1と同様に、電源基板20が誘導加熱コイル8の下方に配置され、電源基板20に搭載されたダイオードブリッジ21及びスイッチング素子22はワイドバンドギャップ半導体で構成されている。
【0042】
上記のように構成された炊飯器100Aにおいて、操作パネル30に炊飯指示の入力が行われると、操作基板32は入力内容に応じて炊飯動作に関する情報を液晶パネル31に表示するとともに、電源基板20のインバーター駆動回路に制御信号を出力してスイッチング素子22をオン・オフさせる。これにより、所定周波数の高周波電力を誘導加熱コイル8に供給し、内釜2を加熱する。
【0043】
内釜2を加熱することにより炊飯器本体1内の温度が高くなると、外気温との差によって炊飯器本体1内の空気は上昇し、この空気は、図4に矢印Y1で示すように排気穴13から外部に排出される。このとき、矢印Y1で示す空気の流れによって、吸気穴12Aから外気が冷却風として炊飯器本体1内に誘引される。この誘引された冷却風は、図4の矢印Y2に示すように、電源基板20及び誘導加熱コイル8を冷却しながら上昇し、排気穴13から外部に排出される。この矢印Y2、Y1で示す空気(冷却風)の流れは、炊飯器本体1の温度と外気温との差がなくなるまで継続される。
【0044】
以上のように本実施の形態2によれば、電源基板20が誘導加熱コイル8の下方に配置されるとともに、電源基板20に搭載したダイオードブリッジ21やスイッチング素子22はワイドバンドギャップ半導体で構成されている。さらに、炊飯器本体1の底板11の一部に吸気穴12Aを設けるとともに吸気穴12Aよりも上部に排気穴13を設け、自然対流を生じさせて誘導加熱コイル8と電源基板20とを冷却するようにした。このため、実施の形態1で示した効果に加え、次のような効果を得ることができる。すなわち、電源基板20に搭載されたダイオードブリッジ21やスイッチング素子22を耐熱温度が高いワイドバンドギャップ半導体で構成したので、冷却ファンを設けずとも、吸気穴12Aから排気穴13により生じる自然対流で誘導加熱コイル8と電源基板20とを冷却することができる。したがって、冷却ファンを設けないことにより炊飯器100Aを小型化・軽量化できるとともに、材料コストを低減でき、さらに、冷却ファンの駆動に要する電力も削減できる。また、自然対流の冷却風により冷却するので、冷却ファンを駆動したときのような騒音が発生することもない。
【0045】
実施の形態3.
前述の実施の形態1では、冷却ファン14を炊飯器本体1の前方側の底部に設け、底板11に形成した吸気穴12から外気を吸い込むようにしたが、本実施の形態3は、冷却ファンと吸気穴の構造が実施の形態1と異なる。
図5は、実施の形態3に係る炊飯器100Bの断面模式図である。本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
図5に示すように、炊飯器本体1内部の背面側下部には、冷却ファン14Bを設けている。冷却ファン14Bは、短軸の軸流ファンであり、その回転軸14aがほぼ水平に向くようにして(すなわち、回転軸14aが底板11とほぼ平行になるようにして)縦置きされている。したがって、図5において、冷却ファン14Bの図面右側(炊飯器本体1の背面側)が空気の流入側、冷却ファン14Bの図面左側が空気の流出側である。
【0047】
また、炊飯器本体1の背面であって冷却ファン14Bに対向する位置には、吸気穴12Bを設けている。また、実施の形態1と同様に、炊飯器本体1の背面であって吸気穴12Bよりも上方に、排気穴13を設けている。
【0048】
このように構成された炊飯器100Bにおいて、冷却ファン駆動回路15に駆動されて冷却ファン14Bが動作すると、図5の矢印Z1に示すように、炊飯器本体1の背面下部に設けられた吸気穴12Bから外気が流入する。そして、炊飯器本体1に流入した外気は、図5の矢印Z2に示すように、冷却ファン14Bにより冷却風として送られる。矢印Z2に示す冷却風は、その進行方向に配置された電源基板20の放熱フィン50の表面に吹き付けられ、放熱フィン50を介してダイオードブリッジ21やスイッチング素子22を冷却する。冷却ファン14Bにより送風された冷却風の一部は、誘導加熱コイル8に吹き付けられて誘導加熱コイル8を冷却する。誘導加熱コイル8の下方に電源基板20が配置されたので、誘導加熱コイル8への冷却風路と電源基板20への冷却風路とを個別に設ける必要がなく、一つの冷却風路に集約することができる。
【0049】
また、冷却ファン14Bにより送風された冷却風の一部は、図5の矢印Z3に示すように、炊飯器本体1の内部を上方に向かって進み、外蓋4を冷却する。ユーザーが触れる可能性の高い外蓋4を冷却することができるので、安全性を高めることができる。
【0050】
以上のように本実施の形態3によれば、冷却ファン14Bは炊飯器本体1の背面側下部に縦置き状態で配置されるとともに、冷却ファン14Bと対応する炊飯器本体1の背面に吸気穴12Bを設けた。このため、実施の形態1で示した効果に加え、炊飯器本体1の設置面に布巾等の異物が置かれている場合でも、冷却ファン14Bが異物を巻き込んだり、冷却ファン14Bの吸引力により吸気穴12Bが塞がれて冷却能力が低下したりといった事態を回避できる。
【符号の説明】
【0051】
1 炊飯器本体、2 内釜、3 ヒンジ部、4 外蓋、5 内蓋、6 側枠、7 底枠、8 誘導加熱コイル、9 温度センサー、10 ハンドル、11 底板、12 吸気穴、12A 吸気穴、12B 吸気穴、13 排気穴、14 冷却ファン、14a 回転軸、14B 冷却ファン、15 冷却ファン駆動回路、16 コードリール、17 電源コード、18 プラグ、19 電源リード線、20 電源基板、21 ダイオードブリッジ、22 スイッチング素子、23 チョークコイル、24 平滑コンデンサ、25 共振コンデンサ、26 インバーター回路、27 電源回路、28 インバーター駆動回路、29 ダイオード、30 操作パネル、31 液晶パネル、32 操作基板、34 基板室、40 通風空間、50 放熱フィン、51 基板ホルダー、100 炊飯器、100A 炊飯器、100B 炊飯器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器本体と、
上面が開口し、前記加熱調理器本体内に収容される調理容器と、
前記加熱調理器本体に配設され、前記調理容器を加熱する誘導加熱コイルと、
商用電源を整流する整流回路、及び少なくとも一つのスイッチング素子のオン・オフにより前記整流回路の出力を交流電力に変換して前記誘導加熱コイルに供給するインバーター回路が実装された電源基板と、
前記加熱調理器本体内に設けられた冷却ファンと、
前記加熱調理器本体に設けられた吸気口及び排気口とを備え、
前記整流回路の整流素子及び前記インバーター回路のスイッチング素子のいずれか一方あるいは両方は、ワイドバンドギャップ半導体で構成され、
前記電源基板は前記誘導加熱コイルの下方に配置され、
前記冷却ファンの駆動により生じる冷却風で前記電源基板と前記誘導加熱コイルとを冷却する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
加熱調理器本体と、
上面が開口し、前記加熱調理器本体内に収容される調理容器と、
前記加熱調理器本体に配設され、前記調理容器を加熱する誘導加熱コイルと、
商用電源を整流する整流回路、及び少なくとも一つのスイッチング素子のオン・オフにより前記整流回路の出力を交流電力に変換して前記誘導加熱コイルに供給するインバーター回路が実装された電源基板と、
前記加熱調理器本体に設けられた吸気口と、
前記吸気口よりも上部に設けられた排気口とを備え、
前記整流回路の整流素子及び前記インバーター回路のスイッチング素子のいずれか一方あるいは両方は、ワイドバンドギャップ半導体で構成され、
前記電源基板は前記誘導加熱コイルの下方に配置され、
前記吸気口と前記排気口との間に形成される冷却風路上に前記電源基板と前記誘導加熱コイルとが配置されており、前記調理容器の前記吸気口と前記排気口との間を自然対流する冷却風で、前記電源基板と前記誘導加熱コイルとを冷却する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
前記吸気口は前記加熱調理器本体の底面に設けられ、前記排気口は前記加熱調理器本体の外周面に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記電源基板は横置きにして前記誘導加熱コイルとほぼ平行に配置され、
前記電源基板と前記誘導加熱コイルとの間に前記冷却風が通過する通風空間を設けた
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記電源基板は、加熱調理器本体の下部の平面視ほぼ中央位置に配置された
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記冷却ファンは、その回転軸が前記加熱調理器本体の底面とほぼ平行となるよう縦置きにして前記加熱調理器本体の背面側に配置された
ことを特徴とする請求項1又は請求項1に従属する請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65983(P2012−65983A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215239(P2010−215239)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】