説明

動作プログラムの自動生成プログラムおよび装置

【課題】カメラ等の画像データ入力装置を作業ヘッド近傍に備えることなく、簡易に且つ正確に動作プログラムを作成することができる自動生成プログラムおよび装置の提供。
【解決手段】作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせるための動作プログラムを自動生成するプログラムであって、作業対象物または領域の形状データを入力可能とする基準データ入力画面を表示する第1のステップと、作業対象物または領域の画像データを読み込む第2のステップと、前記読み込んだ画像データの歪みを補正する第3のステップと、前記補正された画像データを背景として移動経路を指定可能とする移動経路入力画面を表示する第4のステップと、前記入力画面で指定された移動経路に基づき動作プログラムを自動生成する第5のステップと、を有することを特徴とする自動生成プログラムおよびそれに関する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせるための動作プログラムの自動生成プログラムおよび装置に関し、特に、液体材料を吐出する吐出装置を塗布対象物に対して相対移動させて塗布作業を行わせるための動作プログラムの自動生成プログラムおよび装置に関する。
本発明に係る動作プログラムおよび自動生成プログラムは、コンピュータ上で実行可能なソフトウェアであり、CD−ROM、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納可能である。
【背景技術】
【0002】
作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせる装置には多くの種類がある。例えば、切削、溶接などを行う機械加工装置、接着、ネジ締めなどを行う組立装置、カメラ、レーザーなどを用いて対象の観察や計測を行う検査装置、液体材料を対象物に適用する塗布装置などがある。塗布装置は、空気圧や機械的圧力の作用により容器に貯えられた液体材料を間欠的或いは連続的に吐出する吐出装置と、吐出装置と作業対象物とを相対移動させる駆動機構とで主に構成される。
【0003】
この種の装置は、動作プログラムに基づいて作業が行われることが殆どである。この動作プログラムを作成するには、基本的に作業対象物に関する設計情報が必要である。ここで設計情報とは、作業対象物の寸法や施す加工の種類などの情報をまとめたCAD/CAMデータ、ガーバーデータなどのことである。それに対し、設計情報を用いずにカメラで撮像した実際の作業対象物の映像に基づいて動作プログラムを作成するものがある(例えば、特許文献1および2)。
【0004】
特許文献1には、内部に液体が貯えられたシリンジと撮像カメラとを連動するように設け、撮像カメラからの画像に基づいて駆動手段を作動させて撮像カメラを液体塗布経路に沿って移動させ、撮像カメラが移動するときの作動量を記憶し、撮像カメラとシリンジの相対関係から、シリンジを液体塗布経路に沿って移動させるために必要な作動量を演算し、この作動量にしたがって駆動手段を作動させると共にシリンジから液体を吐出させることで被塗布部材の液体塗布経路に沿って液体を塗布することを特徴とする液体塗布装置、が開示される。
【0005】
特許文献2には、塗布剤を塗布するためのディスペンサと、塗布対象を撮像して画面に表示する手段とを備え、その画面上で入力装置を用いて塗布位置を指定すると、指定された位置にディスペンサの吐出口を移動させること、また、塗布剤の種類、塗布速度または塗布幅等のデータを入力すると、移動手段の移動速度およびディスペンサの吐出圧の最適値を計算して制御することを特徴とする自動塗布装置、が開示される。
【0006】
ところで、出願人は、作業装置の移動情報を図形情報により入力し、それに対応する経路等の情報を画面上にキャラクターベースでリアルタイム出力しながら移動プログラムを自動生成する技術を提案した。すなわち、特許文献3には、作業装置の移動情報をキャラクターベースで入力可能とするテキスト入力画面を表示するステップと、作業装置の移動情報を、高さ情報と関連付けた2次元平面上の経路として入力可能とする図形入力画面を表示するステップと、前記テキスト入力画面から入力された作業装置の移動情報を、前記図形入力画面に2次元平面上の経路およびその高さ情報としてリアルタイム出力するステップと、前記図面入力画面から入力された作業装置の移動情報を、前記テキスト入力画面にキャラクターベースでリアルタイム出力するステップと、作業装置の経路の3D表示画面を表示するステップと、作業装置の移動プログラムを自動生成するステップとを備えることを特徴とするプログラムおよび装置、が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−349966号公報
【特許文献2】特開平10−52664号公報
【特許文献3】国際公開第2009/031305号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2の塗布装置は、吐出口から一定の距離に固定されたカメラを備えているので、次に挙げるような問題があった。
・座標演算中は塗布装置で塗布作業ができないという問題。
・塗布装置が大きくなる、制御が複雑になる、部品点数が増える、などの問題。
・カメラの配置に起因する映像の傾き、撮像範囲の問題。
・レンズに起因する画像の歪曲の問題。
【0009】
動作プログラムの作成結果を確認することに関し、特許文献1は、塗布経路の作成結果を表示することはなく、実際に動作させるまでは確認することができなかった。一方、特許文献2は、塗布経路の作成結果として、単一の動作線につき開始点と終了点とを結ぶという表示はできたものの、複数の動作線の重なりなどには対応できず、塗布経路の作成結果を確認するための機能は不十分であった。
【0010】
そこで本発明は、カメラ等の画像データ入力装置を作業ヘッド近傍に備えることなく、簡易に且つ正確に動作プログラムを作成することができる自動生成プログラムおよび装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせるための動作プログラムを自動生成するプログラムであって、作業対象物または領域の形状データを入力可能とする基準データ入力画面を表示する第1のステップと、作業対象物または領域の画像データを読み込む第2のステップと、前記読み込んだ画像データの歪みを補正する第3のステップと、前記補正された画像データを背景として移動経路を指定可能とする移動経路入力画面を表示する第4のステップと、前記入力画面で指定された移動経路に基づき動作プログラムを自動生成する第5のステップと、を有することを特徴とする自動生成プログラムに関する。ここで、作業対象領域には、例えば基板上の配線パターン領域が含まれる。また、形状データの例としては、作業対象物または領域の外縁の形状(三角形、四角形、五角形、円など)、外縁の寸法が挙げられる。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1のステップにおいて、前記基準データ入力画面で作業ヘッドの基準座標を入力可能とすることを特徴とする。ここで、基準座標は、作業ヘッドと作業対象物または領域との相対位置関係を表す座標であることが好ましい。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記第3のステップにおいて、作業対象物または領域の形状と同一または類似の形状の形状基準線を作成し、形状基準線と作業対象物または領域を重ね合わせることにより画像データの歪みを検出し、入力された形状データに基づき歪みを補正することを特徴とする。
第4の発明は、第3の発明において、前記作業対象物または領域が方形状であり、前記形状基準線が方形状であることを特徴とする。
第5の発明は、第4の発明において、前記第3のステップにおいて、作業対象物または領域の角部を自動検出し、形状基準線と作業対象物または領域の角部を自動で重ね合わせることを特徴とする。
第6の発明は、第1または2の発明において、前記第4のステップにおいて、予め設定された幅値に基づいて、指定された移動経路を画面上にリアルタイム表示することを特徴とする。
第7の発明は、第1または2の発明において、前記第4のステップにおいて、指定された移動経路に異常箇所がある場合に、異常箇所を異なる色に着色して画面上にリアルタイム表示することを特徴とする。
第8の発明は、第1または2の発明において、さらに、較正用基板の画像データを読み、入力された較正値に基づきレンズの収差を補正するステップを有することを特徴とする。
【0012】
第9の発明は、第1または2に係る発明の自動生成プログラムが記憶された記憶装置と、入力装置と、表示装置と、処理装置とを備えることを特徴とする動作プログラム作成装置に関する。
【0013】
第10の発明は、作業ヘッドと、作業対象物を保持する保持部と、作業ヘッドと保持部とを相対移動させる駆動機構と、読取装置と、表示装置と、入力装置と、制御部とを備え、読取装置から読み込んだ作業対象物または領域の画像データに基づき作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させながら所望の作業を行う作業装置であって、制御部が、入力装置により入力された作業対象物または領域の形状データに基づき読取装置から読み込んだ作業対象物または領域の画像データの歪みを補正する工程、補正された画像データを背景として移動経路を指定可能とする移動経路入力画面を表示装置に表示する工程、入力画面で指定された移動経路に基づき動作プログラムを自動生成する工程を実行することを特徴とする作業装置に関する。
第11の発明は、第10の発明において、前記制御部が、入力装置により入力された作業ヘッドの基準座標に基づき動作プログラムを自動生成することを特徴とする。
第12の発明は、第10または11の発明において、前記制御部が、作業対象物または領域の形状と同一または類似の形状の形状基準線を作成し、形状基準線と作業対象物または領域を重ね合わせることにより画像データの歪みを検出し、入力された形状データに基づき歪みを補正する機能を有することを特徴とする。
第13の発明は、第10または11の発明において、前記作業対象物または領域が方形状であり、前記形状基準線が方形状であることを特徴とする。
第14の発明は、第13の発明において、前記制御部が、作業対象物または領域の角部を自動検出し、形状基準線と作業対象物または領域の角部を自動で重ね合わせる機能を有することを特徴とする。
第15の発明は、第10または11の発明において、前記作業ヘッドが、液体材料を吐出する吐出装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カメラ等の画像データ入力装置を作業ヘッド近傍に備えることなく、外部から取り込んだ画像に基づき、簡易に且つ正確に動作プログラムを自動生成することができる。また、作業ヘッドの動作線どうしの重なりや、動作線と作業対象物上の載置物との重なりなどの異常箇所を画面上に表示し確認しながら動作プログラムを自動生成できるので、動作プログラムの作成を短時間でも精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】準備段階のフローチャートである。
【図2】動作プログラム作成段階のフローチャートである。
【図3】実作業段階のフローチャートである。
【図4】画像データ作成の様子を説明する説明図である。
【図5】歪み補正の手順を説明する説明図である。(a)は補正前、(b)は枠線を合わせた時、(c)は補正後を示す。
【図6】動作プログラム作成の様子を説明する説明図である。
【図7】実施例に係る塗布装置の概略斜視図である。
【図8】線幅表示を説明する説明図である。(a)は重なりの無い場合、(b)は重なりの有る場合である。
【図9】収差の種類を説明する説明図である。(a)は元画像、(b)は樽型、(c)は糸巻き型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための一形態を、作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させながら印刷回路基板上の電子部品へ液状の保護材を塗布する塗布装置(図7参照)の例で説明する。以下では、作業ヘッドを吐出装置と呼び、作業対象物をワークまたは基板と呼び、吐出装置と基板とを相対移動させる駆動機構を備える装置を塗布装置と呼ぶ場合がある。
【0017】
[1]準備段階
動作プログラムを作成する前に、動作プログラム作成に必要なデータを準備する。その手順のフローチャートを図1に示す。動作プログラムとは、吐出装置を作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせるためのプログラムであって、主として吐出装置の移動経路、移動速度、吐出ON/OFF等の動作命令等を制御するプログラムである。
【0018】
(i)画像データの作成
始めに、ワーク画像(基板画像)のデジタルデータを作成する(STEP101)。本実施の形態では、基板1の作業面をデジタルカメラ2で撮像する。なお、基板画像のデジタルデータは、印刷されている基板1の写真や図などをスキャナで読み取ることで作成してもよい。後述するように、動作プログラム作成段階前に、ワーク画像の補正を行うので、カメラ2での撮像は基板作業面に対して垂直でなくともよい。例えば、図4に示すように基板1を斜め上から俯瞰するような構図で撮像してもよい。
カメラでの撮像は基板作業面に対して垂直でなくともよいので、ぶれたり、焦点が合わなかったりしないように注意する必要はあるものの、デジタルカメラ2等を手に持って撮像した画像でも十分利用可能である。すなわち、本発明では、カメラを設置するための特別な仕組みや構造は必要ない。
【0019】
(ii)基準座標値の設定
次いで、ワーク(基板)と塗布装置の駆動機構との位置関係を調べ、基準座標値を設定する。
まず、ワーク(基板)1をX駆動機構17に略平行になるようテーブル23上に載置する(STEP102)。基板1を手で載置する場合は、いつ誰が置いても同じ位置になるように、テーブル23に位置決めピンなどを設けて平行に載置できるようにするとよい。続いて、駆動機構10を手動操作して、ノズル13の先端(中心軸)を塗布開始位置や基板上の特徴的な位置(基板1の角、電子部品の端子など)に合わせ(STEP103)、そのときの座標値を記録する(STEP104)。これが基準座標値となる。
【0020】
[2]動作プログラム作成段階
必要なデータの準備を終えたら、自動生成プログラムにより、動作プログラムの作成を行う。その手順のフローチャートを図2に示す。なお、本実施の形態の自動生成プログラムは、入力装置25、処理装置28、記憶装置26、表示装置27を備えた、塗布装置8とは別体の動作プログラム作成装置11上で実行する。動作プログラム作成装置11には、市販のパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0021】
(i)画像データと実物との対応
主に大きさに関して、画像データと実物のワークとを対応させると共に、画像の歪みを次のような手順で補正する。
まず、本発明に係る自動生成プログラムを起動する(STEP201)。次いで、ワーク(基板)1の形状データとして外形寸法を入力する(STEP202)。次いで、上記[1](i)で作成した基板1の画像データを読み込む(STEP203)。次いで、STEP203で取り込んだ画像データの歪み補正を実行する(STEP204)。詳細には、図5のように行う。図5(a)のように画面上に矩形の形状基準線(枠線)3を表示し、(b)のように基板画像4の外形に合わせて変形させる。ここで、形状基準線は点線、実線、二重線など任意の線で表示することができ、任意の色で着色表示してもよい。また、形状基準線の大きさは任意であり、作業対象物または領域と縦横比が異なっていてもよい。さらには、連続線からなる形状でなくてもよく、例えば、角部を示す4組のL字型の線により形状基準線を構成してもよい。
【0022】
本実施の形態では、枠線3の変形は、枠線3の四隅をポインティングデバイスでドラッグアンドドロップして手動で合わせている。ここで、枠線3の変形を自動で行ってもよい。すなわち、基板画像4を画像処理して4つの角部を検出し、枠線3の四隅を基板画像4の四隅に自動で合わせるようにしてもよい。続いて、補正を実行すると、図5(c)のように、枠線3がSTEP202で入力した外形寸法に基づいた矩形になるように、枠線3で指定された基板画像4の各画素を、平行移動、回転、拡大縮小(伸縮)などの一般的な幾何学的変換手法により座標変換して並び替えることで、基板画像4が歪みのない矩形へと補正される。最後に、塗布開始位置(または特徴的位置)を設定する(STEP205)。詳細には、上述の[1](ii)でノズル13を合わせた位置(塗布開始位置または特徴的位置)を画面上に表示された補正後の画像4上で指定し、同じく上述の[1](ii)で記録した座標値を入力する。
上記のように、取り込んだ画像データの歪みを補正し、実物の大きさと対応させるので、数値の入力なしに、ポインティングデバイスで点を指定するだけで、簡単に移動経路のデータを作成することができる。
【0023】
(ii)動作プログラムの作成
図6に示すように、画面5に出力されたウィンドウ枠(移動経路入力画面)には上記[2](i)で歪みを補正した画像4が表示されている。この画像4を背景として、そのウィンドウ枠上でマウスなどのポインティングデバイス(画面上ではカーソル7で示される)を用いてノズル移動経路6を指定する(STEP206)。本発明に係る自動生成プログラムでは、移動経路6を指定すると、自動的に塗布装置に対する命令群に変換される。移動経路6を指定するとそれに連動して、リアルタイムで命令群のテキスト情報が表示されるようにしてもよい。ここで、座標値の分かっている移動経路については、テキスト入力(キャラクターベース入力)を併用することもできる。この場合は、テキスト入力に対応する移動経路6の情報が画面5上にリアルタイムに表示されるようにすることが好ましい。
ユーザーが入力する情報としては、移動経路6の開始点、終了点、通過点以外に、経路の中での吐出ON/OFF等の動作命令、吐出装置の移動速度などがある。
上記の手順で入力された移動経路座標、動作命令や移動速度などに基づき、動作プログラムが自動生成される。
【0024】
上記のように、背景として実際の基板画像4が画面に表示されているので、動作プログラムを修正しながら作成する作業が容易になる。また、背景として実際の基板画像4が画面に表示されているので、作業禁止領域や移動経路6と部品との干渉などが一見して判別することができ、これにより事故を未然に防ぐことができる。
【0025】
[3]実作業段階
動作プログラムが完成したら、実際に塗布装置を動作させる。以下では二つの手順を説明する。図3にその手順のフローチャートを示す。
【0026】
(i)手順A
まず、自動生成プログラムを起動し、画面5上でシミュレーションを行い、動作確認する(STEP301)。ここで間違いがあれば、前述の[2](ii)に戻って移動経路等の入力情報を修正する。動作プログラムの動作確認テストが完了したら、自動生成した動作プログラムのデータを塗布装置8へ転送する(STEP302)。そして、実作業を開始する(STEP305)。
手順Aでは、自動生成プログラムの実行画面と同じ画面上で、塗布動作を確認できるので、動作プログラムの修正を簡易に且つ正確に行うことができる。
【0027】
(ii)手順B
まず、動作プログラムのデータを塗布装置8へ転送する(STEP303)。次いで、液体材料を吐出させずに塗布装置8を空運転し、動作を確認する(STEP304)。ここで間違いがあれば、前述の[2](ii)に戻って動作プログラムを修正する。動作プログラムのデータを塗布装置8へ再転送し、実作業を開始する(STEP305)。
手順Bでは、塗布装置8が実際に動作した状態を見ることができるので、実際の塗布作業をイメージしやすいという利点がある。なお、手順AとBを組み合わせて動作確認テストを行ってもよいことは当然である。
【0028】
以上に説明したように、本発明では、設計情報が無くともよいのはもちろんであるが、別に作成した画像データを元に動作プログラムを作成するので、作業装置の作業ヘッドにカメラを設ける必要はなく、別途取得した画像データを用いることができる。そのため、例えば市販のデジタルカメラ等による撮像データを用いることも十分可能である。また、デジタルデータであればよいので、印刷されている写真や図などをスキャナ等で読み取ってもよい。
作業装置にカメラ等を設けないので、動作プログラム作成時に作業装置を用いる必要がない。そのため、動作プログラム作成時にも作業装置は別の作業が可能である。
【0029】
また、本発明では動作プログラムの作成前に、読み込んだ画像の補正を行うので、傾いた画像でも用いることができる。そのため、例えば、カメラを手に持って撮像した画像でも十分対応可能である。換言すると、カメラを設置するための特別な仕組みは必要なく、設計や取り付け作業に手間をとられることもない。
【0030】
本発明は、方形状のワークに限らず、シリコンウェハのような円形状の基板や多角形状の基板にも適用可能である。ここで、ワークの形状が複雑である場合や外縁に凹凸がある場合には、[2](i)で説明したように、枠線3の変形を手動で(または自動と併用して)行えるようにするのが好ましい。また、画像データの歪みの補正は、ワークの外縁のみならず、ワークに形成された作業対象領域(例えば、配線パターン領域)の形状に基づいて行うようにしてもよい。
【0031】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[塗布装置]
本実施例で示す作業装置は、液体材料を吐出する吐出装置を塗布対象物に対して相対移動させて塗布作業を行わせる塗布装置である。
塗布装置8は、図7に示すように、吐出装置9、駆動機構10から主に構成される。塗布装置8は、動作プログラム作成装置11と接続され、動作プログラム作成装置11は、画像データ入力装置2から画像データを読み込む。また、動作プログラム作成装置11では、動作プログラム自動生成プログラムが実行される。
【0033】
吐出装置9は、液体材料を貯留する貯留容器12と、貯留容器12の一端に取り付けられ、貯留容器12内の液体材料を排出する吐出口を有するノズル13と、チューブ14を介して所望の圧力、所望の時間で圧縮気体を貯留容器12へ供給するディスペンスコントローラ15とから構成される。ディスペンスコントローラ15は、動作プログラムに基づく駆動機構10からの信号を受けるための通信ケーブル16で接続されている。本実施例では、エア式吐出装置を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、弁座に弁体を衝突させて液体材料をノズル先端より飛翔吐出させるジェット式、プランジャタイプのプランジャを移動させ、次いで急激に停止して、同じくノズル先端より飛翔吐出させるプランジャジェット式、連続噴射方式あるいはオンデマンド方式のインクジェット式などを用いることもできる。
【0034】
駆動機構10は、符号20方向へ移動可能とするX駆動機構17、符号21方向へ移動可能とするY駆動機構18、符号22方向へ移動可能とするZ駆動機構19とから構成され、これらの動作を制御するロボットコントローラ24を筐体内部に備える。吐出装置9の貯留容器12およびノズル13はZ駆動機構19に設ける保持部に支持されており、Z駆動機構19はX駆動機構17上に設けられる。Y駆動機構18には、基板1を載置、固定するテーブル23を設ける。これにより、吐出装置9を基板1に対してXYZ方向(20、21、22)に相対移動させることができる。
【0035】
動作プログラム作成装置11は、数値の入力などを行うキーボードおよび画面上で移動経路などを指定するマウスからなる入力装置25と、動作プログラムや画像データなどを記憶する記憶装置26と、画面上に取り込んだ画像4や作成した移動経路6などを表示する表示装置27と、処理装置28とから構成される。この動作プログラム作成装置11は、塗布装置の大きさの観点からは、市販のパーソナルコンピュータ等を用いて別体とすることが好ましい。動作プログラム作成装置11を塗布装置8と一体に設けてもよく、その場合には塗布作業と並行して動作プログラム作成ができるように構成する。動作プログラム作成装置11は、動作プログラムを転送するための転送ケーブル29を介して塗布装置8に接続されている。
【0036】
画像データ入力装置2は、基板の画像4を撮像するデジタルカメラや、印刷されている基板1の写真や図などを読み込むスキャナなどを用いる。本実施例では、デジタルカメラを用いる。前述のように、動作プログラム作成前に画像の補正を行うので、画像の向きや傾きなどを気に掛ける必要がなく、カメラを手に持って撮像してもよい。
【0037】
以上に説明した各装置を用いて、基板画像4や基準座標値などから動作プログラムを自動生成し、そして塗布作業を実施する。動作プログラムの作成手順は、実施の形態[2]で説明した手順と同じであるので、ここでは説明を割愛する。
以上に説明した本実施例の塗布装置によれば、カメラ等の画像データ入力装置を吐出装置近傍に備えることなく、外部から取り込んだ画像に基づき、簡易に且つ正確に動作プログラムを自動生成することが可能である。
【0038】
[その他機能]
本実施例に係る自動生成プログラムは、動作プログラム作成を支援する以下の機能を備えている。
【0039】
(i)移動経路強調表示
本実施例の自動生成プログラムには、上述の実施の形態[2](ii)の動作プログラムの作成時、移動経路を強調表示させる機能がある(図8)。
まず、キーボード等のデバイスで線幅寸法を入力する。そうすると、移動経路6が、入力した線幅寸法で画面上に表示される(図8(a)の符号30)。
また、複数の移動経路が重なるとき、重なっている範囲が設定した異なる色で表示される(図8(b)の符号31)。ここで、重なっている領域31が複数あるときは、領域31の数の増減に応じて色が変わる仕様とした。本実施例では四重(すなわち4色)まで設定可能であるが、この数に限定されるものではない。単に領域31の一の異なる色に変えるだけで、領域31の数の増減に応じて色を変更しなくともよい。
上記のように、重なっている領域31の色を変えて表示するので、視覚的に分かり易い。これは、重ならせたくないとき、或いは意図的に重ならせるとき、どちらでも有用である。このように、移動経路どうしの重なりや、移動経路と作業対象物上の載置物との重なりなどの異常箇所を画面上に表示し確認できるので、動作プログラムの作成作業を短時間で行うことができる。
【0040】
(ii)レンズ収差較正
取り込んだワーク画像には、程度の違いはあれ、撮像を行うカメラのレンズに起因する収差が存在する。収差とは、一点から放射された光がレンズや鏡などを通過した後、正確に一点に集まらず像を結ばない現象をいう。収差にはいくつか種類があるが、その中でも、正確な寸法を再現しようとする画像では最も問題となる歪曲収差と呼ばれるものがある。歪曲収差とは、像がぼやけるのではなく、像が歪んで変形してしまう現象である。歪曲収差には、画面の周辺にいくほど像が縮む樽型(図9(b))、画面の周辺にいくほど像が広がる糸巻き型(図9(c))がある。この歪曲収差のあるレンズを介して撮像した画像に基づいて動作プログラムを作成すると、大きいときには数ミリメートルのずれが生じてしまうことがある。そこで、この歪曲収差に対する較正を行う。
【0041】
本実施例では、Brownの歪曲モデルに基づく公知の較正方法を用いる。このモデルは、円周方向歪みと接線方向歪みを含むようモデル化したもので、歪みをもった画像点と歪みのない画像点との対応関係を光学的中心との関係から定式化したものである。較正は、モデル式中の係数を調整して行う。
また、較正には、較正用基板の画像を用いる。較正用基板は、縦横に一定間隔でマトリックス状に複数の孔が空けられた薄い板である。縦横の孔の数は同数で、正方形であることが好ましい。
較正を実行するタイミングとしては、レンズが変われば歪曲収差の度合いも変わるので、レンズを変えたとき、或いはレンズごとカメラを変えたときに較正を実行する。
【0042】
以下、較正手順の一例を説明する。
まず、較正用基板の画像を作成し、それを自動生成プログラムの機能により読み込む。次いで、較正値(上記モデルに基づく係数)を入力し、較正を実行する。次いで、較正後の較正用基板画像を背景として画面上で直線を描き、較正後画像の孔の並びと比較する。そして、直線と孔の並びが一致しているならば終了する。一致していないならば、較正値を入力し直して較正と確認を繰り返す。
なお、上の例では数値の入力や確認を手動で行ったが、これを自動的に行うようにしてもよい。
この収差は、作業面に対して垂直に撮像したとしても発生してしまうものであるので、本実施例のような場合だけでなく、上記特許文献1および2のような場合にも効果を奏するものである。
【0043】
このように、レンズの収差に起因する画像の歪曲を較正するので、歪みのない画像に基づき、正確な動作プログラムが作成できる。また、収差が較正できることにより、カメラの種類、換言するとレンズの種類を問わず様々な機器で撮像した画像データを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、印刷回路基板への液体材料の塗布へ適用した上述の例だけでなく、切削、溶接などを行う機械加工、接着、ネジ締めなどを行う組立、カメラ、レーザーなどを用いて対象の観察や計測を行う検査等の作業にも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:基板(ワーク) 2:画像データ入力装置(カメラ) 3:枠線(形状基準線) 4:基板画像 5:操作画面 6:移動経路 7:カーソル 8:塗布装置 9:吐出装置 10:駆動機構 11:動作プログラム作成装置 12:貯留容器 13:ノズル 14:チューブ 15:ディスペンスコントローラ 16:通信ケーブル 17:X駆動機構 18:Y駆動機構 19:Z駆動機構 20:X移動方向 21:Y移動方向 22:Z移動方向 23:テーブル 24:ロボットコントローラ 25:入力装置(マウス、キーボード) 26:記憶装置 27:表示装置 28:処理装置 29:転送ケーブル 30:幅領域 31:重なった領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させて所望の作業を行わせるための動作プログラムを自動生成するプログラムであって、
作業対象物または領域の形状データを入力可能とする基準データ入力画面を表示する第1のステップと、
作業対象物または領域の画像データを読み込む第2のステップと、
前記読み込んだ画像データの歪みを補正する第3のステップと、
前記補正された画像データを背景として移動経路を指定可能とする移動経路入力画面を表示する第4のステップと、
前記入力画面で指定された移動経路に基づき動作プログラムを自動生成する第5のステップと、を有することを特徴とする自動生成プログラム。
【請求項2】
前記第1のステップにおいて、前記基準データ入力画面で作業ヘッドの基準座標を入力可能とすることを特徴とする請求項1記載の自動生成プログラム。
【請求項3】
前記第3のステップにおいて、作業対象物または領域の形状と同一または類似の形状の形状基準線を作成し、形状基準線と作業対象物または領域を重ね合わせることにより画像データの歪みを検出し、入力された形状データに基づき歪みを補正することを特徴とする請求項1または2記載の自動生成プログラム。
【請求項4】
前記作業対象物または領域が方形状であり、前記形状基準線が方形状であることを特徴とする請求項3記載の自動生成プログラム。
【請求項5】
前記第3のステップにおいて、作業対象物または領域の角部を自動検出し、形状基準線と作業対象物または領域の角部を自動で重ね合わせることを特徴とする請求項4記載の自動生成プログラム。
【請求項6】
前記第4のステップにおいて、予め設定された幅値に基づいて、指定された移動経路を画面上にリアルタイム表示することを特徴とする請求項1または2記載の自動生成プログラム。
【請求項7】
前記第4のステップにおいて、指定された移動経路に異常箇所がある場合に、異常箇所を異なる色に着色して画面上にリアルタイム表示することを特徴とする請求項1または2記載の自動生成プログラム。
【請求項8】
さらに、較正用基板の画像データを読み、入力された較正値に基づきレンズの収差を補正するステップを有することを特徴とする請求項1または2記載の自動生成プログラム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の自動生成プログラムが記憶された記憶装置と、入力装置と、表示装置と、処理装置とを備えることを特徴とする動作プログラム作成装置。
【請求項10】
作業ヘッドと、作業対象物を保持する保持部と、作業ヘッドと保持部とを相対移動させる駆動機構と、読取装置と、表示装置と、入力装置と、制御部とを備え、読取装置から読み込んだ作業対象物または領域の画像データに基づき作業ヘッドを作業対象物に対して相対移動させながら所望の作業を行う作業装置であって、
制御部が、入力装置により入力された作業対象物または領域の形状データに基づき読取装置から読み込んだ作業対象物または領域の画像データの歪みを補正する工程、補正された画像データを背景として移動経路を指定可能とする移動経路入力画面を表示装置に表示する工程、入力画面で指定された移動経路に基づき動作プログラムを自動生成する工程を実行することを特徴とする作業装置。
【請求項11】
前記制御部が、入力装置により入力された作業ヘッドの基準座標に基づき動作プログラムを自動生成することを特徴とする請求項10記載の作業装置。
【請求項12】
前記制御部が、作業対象物または領域の形状と同一または類似の形状の形状基準線を作成し、形状基準線と作業対象物または領域を重ね合わせることにより画像データの歪みを検出し、入力された形状データに基づき歪みを補正する機能を有することを特徴とする請求項10または11記載の作業装置。
【請求項13】
前記作業対象物または領域が方形状であり、前記形状基準線が方形状であることを特徴とする請求項10または11記載の作業装置。
【請求項14】
前記制御部が、作業対象物または領域の角部を自動検出し、形状基準線と作業対象物または領域の角部を自動で重ね合わせる機能を有することを特徴とする請求項13記載の作業装置。
【請求項15】
前記作業ヘッドが、液体材料を吐出する吐出装置であることを特徴とする請求項10または11記載の作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159911(P2012−159911A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17622(P2011−17622)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】