説明

動力伝達装置

【課題】騒音が発生することを適正に抑制することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内燃機関が発生させた動力が伝達される第1歯車62と、第1歯車62と噛み合い電動機が発生させた動力を当該第1歯車62に伝達可能であると共に、互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢される第2歯車27及び第3歯車28と、第1歯車62と第2歯車27、第3歯車28との間で伝達される動力の増加に応じて前記付勢されることによる第2歯車27と第3歯車28との回転方向の位相差を減少させる位相差調節部90とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載される従来の動力伝達装置として、例えば、特許文献1に開示されたようなギア装置を備えたものが知られている。このギア装置は、一方のメインギアと他方のメインギアとが噛合し、当該一方のメインギアの端面に並列にサブギアが設けられる。そして、このギア装置は、一方のメインギアとサブギアとの間にサブギアを回転方向に付勢する第1の付勢部材が設けられると共に、サブギアが該サブギアの歯と他方のメインギアの歯との間に所定の隙間を形成するよう一方のメインギアと前記サブギアとの間で回転方向に所定量の遊びを有して設けられ該遊びが詰められるとサブギアを一方のメインギアに対し第1の付勢部材と同一の回転方向に付勢する第2の付勢部材が設けられる。これにより、このギア装置は、ギア間に生じる駆動反力の大きさに拘わらずバックラッシュを適切に抑制し噛合い音や歯打ち音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−103279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載されているギア装置は、サブギアが常に一方のメインギアと他方のメインギアとの回転方向の隙間(いわゆるガタ)を詰める方向に付勢されており基本的にはメインギアのみで動力伝達をしている。このため、このギア装置は、例えば、動力伝達に寄与していないサブギアの厚み分が全体でのギアの厚みを厚くし装置を大型化してしまうおそれや、メインギアとサブギアとで位相差が生じておりサブギアが常にガタ詰め方向に作用することで生じる歯面における摩擦、サブギアとメインギアとのあわせ面における摩擦などによってエネルギー損失(摩擦損失)が発生するおそれがあることなどから、より適正に騒音を抑制することが望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、騒音が発生することを適正に抑制することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る動力伝達装置は、内燃機関が発生させた動力が伝達される第1歯車と、前記第1歯車と噛み合い電動機が発生させた動力を当該第1歯車に伝達可能であると共に、互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢される第2歯車及び第3歯車と、前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力の増加に応じて前記付勢されることによる前記第2歯車と前記第3歯車との前記回転方向の位相差を減少させる位相差調節部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記動力伝達装置では、前記位相差調節部は、前記電動機が発生させた動力が伝達される前記第2歯車に対して、前記電動機が発生させた動力を前記第1歯車に伝達する際に当該第2歯車が回転する側に、前記第3歯車を付勢する第1弾性部材を有するものとすることができる。
【0008】
また、上記動力伝達装置では、前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力が相対的に小さい場合に、前記電動機が発生させた動力を前記第2歯車、前記第1弾性部材、前記第3歯車を順に介して当該第3歯車から前記第1歯車に伝達するものとすることができる。
【0009】
また、上記動力伝達装置では、前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力が相対的に大きい場合に、前記電動機が発生させた動力を前記第2歯車及び前記第3歯車から前記第1歯車に伝達するものとすることができる。
【0010】
また、上記動力伝達装置では、前記第1歯車と噛み合い前記第2歯車と同軸で相対回転可能である第4歯車を備え、前記位相差調節部は、前記第2歯車に対して、前記回転方向に沿って前記第1弾性部材による付勢の方向とは反対側に、前記第4歯車を付勢する第2弾性部材を有するものとすることができる。
【0011】
また、上記動力伝達装置では、前記第2歯車は、回転軸線に沿った方向に対して、前記第3歯車及び前記第4歯車より前記電動機側に配置されるものとすることができる。
【0012】
また、上記動力伝達装置では、前記第3歯車及び前記第4歯車は、回転軸線の沿った方向の厚みが前記第2歯車の厚みより薄いものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る動力伝達装置によれば、位相差調節部が第1歯車と第2歯車、第3歯車との間で伝達される動力の増加に応じて第2歯車と第3歯車との回転方向の位相差を減少させることから、騒音が発生することを適正に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態1に係る動力伝達装置の位相差調節部周辺の概略構成を示す部分断面図である。
【図2】図2は、図1に示す動力伝達装置のA1−A1の断面図である。
【図3】図3は、図1に示す動力伝達装置のA2−A2の断面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る内燃機関が発生させる動力を説明する線図である。
【図6】図6は、実施形態1に係るモータが発生させる動力を説明する線図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る動力伝達装置の位相差調節部周辺の概略構成を示す部分断面図である。
【図8】図8は、図7に示す動力伝達装置のB1−B1の断面図である。
【図9】図9は、図7に示す動力伝達装置のB2−B2の断面図である。
【図10】図10は、変形例に係る動力伝達装置の径方向に沿った断面図である。
【図11】図11は、変形例に係る第2弾性部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る動力伝達装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る動力伝達装置の位相差調節部周辺の概略構成を示す部分断面図、図2は、図1に示す動力伝達装置のA1−A1の断面図、図3は、図1に示す動力伝達装置のA2−A2の断面図、図4は、実施形態1に係る車両の概略構成を示す模式図、図5は、実施形態1に係る内燃機関が発生させる動力を説明する線図、図6は、実施形態1に係るモータが発生させる動力を説明する線図である。
【0017】
図1、図2、図3に示す本実施形態の動力伝達装置20は、走行用動力源が発生させる動力を伝達するものであり図4に示す車両1に搭載される。ここではまず、図4を参照して車両1の概略構成について説明する。車両1は、駆動輪30を回転駆動して推進するために、走行用動力源(原動機)として内燃機関10と、発電可能な電動機としてのモータジェネレータ(以下、特に断りのない限り「モータ」と略記する)MG1、MG2とを搭載したいわゆる「ハイブリッド車両」である。この車両1は、内燃機関10と、内燃機関10と結合される動力伝達装置20と、動力伝達装置20を介して伝達される動力により回転駆動する駆動輪30と、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であるECU40とを備える。車両1は、このECU40によって制御されることで内燃機関10とモータMG1、MG2を原動機として併用又は選択使用することが可能に構成される。
【0018】
内燃機関10は、燃料の燃焼に伴ってクランク軸11に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランク軸11から駆動輪30に向けて出力可能である。動力伝達装置20は、交流同期電動機等により構成される上記モータMG1、MG2、内燃機関10が出力した動力をモータMG1側と駆動輪30側とに分割可能な遊星歯車機構50、遊星歯車機構50から伝達される動力とモータMG2の回転軸22から伝達される動力とを統合し減速してトルクを増大させる減速機構60、減速機構60から伝達された動力を左右の駆動軸71に分配して出力する差動機構70などを有する。駆動輪30は、この左右の駆動軸71にそれぞれ結合されており、駆動軸71と共に一体に回転する。
【0019】
モータMG1、MG2は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。モータMG1は、主に内燃機関10の出力を受けて発電する発電機として用いられ、モータMG2は、主に交流電力の供給を受けてロータに走行用の機械的な動力(モータトルク)を発生させる電動機として用いられる。モータMG1は、ロータに回転軸線C1を中心に回転可能な回転軸21が結合され、モータMG2は、ロータに回転軸線C1と平行な回転軸線C2を中心に回転可能な回転軸22が結合される。
【0020】
遊星歯車機構50は、同一の回転軸線C1を中心に回転可能な回転要素として、回転軸21が結合されるサンギア50sと、クランク軸11が結合されるキャリア50cと、第1ドライブギア23が結合されるリングギア50rとを有する。減速機構60は、回転軸線C1、C2と平行な回転軸線C3を中心に回転可能な回転軸であるカウンタシャフト61と、カウンタシャフト61に結合され第1ドライブギア23と噛み合っているドリブンギア62と、カウンタシャフト61に結合される最終ドライブギア63とを有する。差動機構70は、最終ドライブギア63と噛み合っているリングギア72などを有する。
【0021】
上述したモータMG2は、回転軸22に第2ドライブギア24が結合されている。ドリブンギア62は、第1ドライブギア23と共にこの第2ドライブギア24にも噛み合っている。モータMG2が出力する機械的動力は、回転軸22、第2ドライブギア24を介してドリブンギア62に伝達される。
【0022】
ところで、このような車両1に適用される内燃機関10からの動力とモータMG2からの動力とは、一般に図5、図6に例示するような傾向がある。図5、図6に示す模式図では、横軸を時間軸とし、縦軸をトルクT、速度差(速度変動)ΔN、速度差によって生じる回転方向の変位θとしている。図5中「Ti」は内燃機関10からカウンタシャフト61に入力されるトルク、「To」はカウンタシャフト61の平均トルク(一定と仮定)、「I」は慣性質量、「Ni」は内燃機関10からカウンタシャフト61に入力される動力の回転速度、「No」はカウンタシャフト61の平均回転速度(一定と仮定)を表す。
【0023】
すなわち、内燃機関10からの動力は、図5に示すように燃料の燃焼(爆発)に起因する相対的に大きな変動成分を含む傾向にあるのに対して、モータMG2からの動力は、図6に示すように同一回転数状態において変動成分が相対的に小さい傾向にある。このため、上記のような動力伝達装置20では、例えば、内燃機関10からの動力にモータMG2からの動力を加える部分、すなわち、ドリブンギア62と第2ドライブギア24とが噛み合う部分にて、この内燃機関10の動力の変動成分に起因して、モータMG2側の第2ドライブギア24の歯面に対する内燃機関10側のドリブンギア62の歯面の回転方向への相対的な振れ幅(例えば、図5の変位θの振幅に相当)が所定より大きくなるとドリブンギア62の歯面と第2ドライブギア24の歯面との衝突が発生するおそれがある。そして、この動力伝達装置20では、内燃機関10の動力の変動に伴って、ドリブンギア62の歯面と第2ドライブギア24の歯面とが噛み合い部のバックラッシの範囲内で回転方向に相対変位して歯打ちが生じると、いわゆる歯打ち音などのガラ音が発生するおそれがあり、これにより、騒音が大きくなり車両1の乗員に不快感を与えるおそれがある。
【0024】
動力伝達装置20では、モータMG2が駆動している場合においてはモータMG2の出力トルクによってドリブンギア62の歯面と第2ドライブギア24の歯面とを押さえる力が発生していることから、上記のような歯打ち音が発生しにくい。一方、モータMG2からの動力が0の場合、すなわち、モータMG2の無負荷時(停止時)においては、第2ドライブギア24がドリブンギア62の回転に対してつれまわっているだけの状態となり、第2ドライブギア24の歯面を抑える力が不足することから、内燃機関10からの動力の変動成分によって、上記のような歯打ち音が発生しやすい傾向にある。
【0025】
そこで、この動力伝達装置20は、図1、図2、図3に示すように、内燃機関10が発生させた動力が伝達される出力軸としてのカウンタシャフト61に電動機としてのモータMG2が発生させた動力を伝達可能な伝達機構80に位相差調節部90を備えることで、上記歯打ち音を抑制し、騒音を適正に抑制している。
【0026】
この伝達機構80は、上述した回転軸22と、第2ドライブギア24と、第1歯車としてのドリブンギア62とを含んで構成される。回転軸22は、モータMG2のロータに結合され、軸受81によりハウジング(不図示)に対して回転軸線C2を中心に回転可能に支持されている。ドリブンギア62は、上述したように、第1ドライブギア23を介して内燃機関10が発生させた動力が伝達される。
【0027】
ここで、この回転軸22は、回転軸線C2に沿った方向(以下、特に断りのない限り「回転軸線C2の軸方向」という)に対して、モータ側回転軸25と中間回転軸26とに分割されている。モータ側回転軸25と中間回転軸26とは、カウンタシャフト61に動力伝達可能に係合する回転部材である。モータ側回転軸25は、中間回転軸26のモータMG2側に配置される。
【0028】
そして、モータ側回転軸25と中間回転軸26とは、嵌合凹部82aと嵌合凸部82bとを含んで構成される嵌合部82を介して接続される。ここでは、嵌合部82は、嵌合凹部82aがモータ側回転軸25側、嵌合凸部82bが中間回転軸26側に設けられるが逆であってもよい。モータ側回転軸25と中間回転軸26とは、嵌合部82にて嵌合凸部82bが嵌合凹部82aに嵌合することで回転軸線C2を回転中心として相対回転可能に接続される。
【0029】
また、回転軸22に結合される第2ドライブギア24は、回転軸線C2の軸方向に対して、第2歯車としてのメインギア27と、第3歯車としての第1サブギア28とに分割されている。メインギア27は、モータ側回転軸25に一体的に結合され一体回転可能であり、第1サブギア28は、中間回転軸26に一体的に結合され一体回転可能である。モータMG2が発生させた動力は、まずモータ側回転軸25及びメインギア27に伝達される。メインギア27と第1サブギア28とは、外径および歯数が等しく形成され、モータ側回転軸25と中間回転軸26とが嵌合部82にて嵌合した状態で回転軸線C2の軸方向に接するようにして隣り合う位置に設けられる。
【0030】
モータ側回転軸25と中間回転軸26とは、このメインギア27、第1サブギア28の歯27a、28aとドリブンギア62の歯62aとが噛み合うことで噛合部83を構成し、これにより、カウンタシャフト61に動力伝達可能に回転方向(回転軸線C2の軸周り周方向に相当)に係合する。つまり、メインギア27と第1サブギア28とは、噛合部83においてドリブンギア62と噛み合い、モータMG2が発生させた動力をこのドリブンギア62に伝達可能である。
【0031】
そして、このメインギア27と第1サブギア28とは、互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢される。ここでは、メインギア27と第1サブギア28とは、位相差調節部90を介して相互に動力伝達可能かつ回転方向の位相差を調節可能に接続される。この位相差調節部90は、ドリブンギア62とメインギア27、第1サブギア28との間で伝達される動力の増加に応じて、回転方向に沿って互いに反対側に付勢されることによるメインギア27と第1サブギア28との位相差を減少させるものである。
【0032】
具体的には、位相差調節部90は、動力伝達部91と、第1弾性部材92とを含んで構成される。
【0033】
動力伝達部91は、メインギア27と第1サブギア28との間で相互に動力を伝達可能とするものであり、挿入突起部93と挿入穴部94とを含んで構成される。ここでは、動力伝達部91は、挿入突起部93がメインギア27(モータ側回転軸25)側、挿入穴部94が第1サブギア28(中間回転軸26)側に設けられるが逆であってもよい。挿入突起部93は、回転軸線C2の軸方向に沿って突起する部分であり、挿入穴部94は、挿入突起部93に対応して回転軸線C2の軸方向に沿って陥没する部分である。挿入突起部93及び挿入穴部94は、メインギア27、第1サブギア28の周方向に沿って等間隔で複数個(ここでは2つ)設けられる。メインギア27と第1サブギア28とは、モータ側回転軸25と中間回転軸26とが嵌合部82にて嵌合した状態で、挿入突起部93が挿入穴部94に挿入されると共に、回転方向に対して挿入突起部93と挿入穴部94との間に所定の隙間が形成される。
【0034】
第1弾性部材92は、メインギア27と第1サブギア28とを回転方向に沿って互いに反対側に付勢するものである。ここでは、第1弾性部材92は、メインギア27に対して、モータMG2が発生させた動力をドリブンギア62に伝達する際にメインギア27が回転する側に第1サブギア28を付勢する。ここで、モータMG2が発生させた動力をドリブンギア62に伝達する際にメインギア27が回転する側は、車両1をモータMG2の動力によって駆動させる際にメインギア27が回転する側であり、典型的には、モータMG2の正転回転側である。
【0035】
第1弾性部材92は、第1サブギア28のメインギア27側の端面に回転方向に沿って円弧状に形成される設置凹部95内に配置される。第1弾性部材92は、例えば、バネなどにより構成され、回転方向の一端がメインギア27の挿入突起部93に固定され、他端が第1サブギア28の設置凹部95の壁面に固定される。これにより、第1弾性部材92は、例えば、モータMG2が発生させた動力をドリブンギア62に伝達する際にメインギア27が図2において反時計回りの矢印L1側に回転するものと仮定した場合に、メインギア27に対して第1サブギア28を矢印L1側に付勢する。言い換えれば、第1弾性部材92は、第1サブギア28に対してメインギア27を矢印L1とは反対側に付勢する。そして、第1弾性部材92は、回転方向に対してメインギア27と第1サブギア28との間に当接して介在し、メインギア27と第1サブギア28との相対回転に伴って、すなわち、メインギア27と第1サブギア28との回転方向に沿った相対変位に応じて伸縮する。設置凹部95及び第1弾性部材92は、第1サブギア28(中間回転軸26)の周方向に沿って等間隔で複数個(ここでは2つ)設けられる。
【0036】
上記のように構成される動力伝達装置20は、車両1をモータMG2の動力によらずに駆動させる際、すなわち、モータMG2の無負荷時にメインギア27と第1サブギア28とがいわゆるシザーズギアとして機能する。すなわち、動力伝達装置20は、図2に示すように、第1弾性部材92の付勢力によりドリブンギア62の歯62aをメインギア27の歯27aと第1サブギア28の歯28aとで回転方向に挟むことができる。これにより、動力伝達装置20は、例えば、噛合部83で歯打ち音などのガラ音が発生しやすいモータMG2の無負荷時に、この噛合部83のバックラッシに応じて生じ得る回転方向の隙間(いわゆるガタ)を詰めることができる。よって、動力伝達装置20は、内燃機関10の動力の変動成分がドリブンギア62に作用した場合に、ドリブンギア62の歯面と第2ドライブギア24をなすメインギア27、第1サブギア28の歯面との衝突やガタ打ちが発生することを抑制することができる。この結果、動力伝達装置20は、内燃機関10からの動力にモータMG2からの動力を加える噛合部83などにて、内燃機関10からの動力の変動成分によって騒音が発生することを抑制することができる。
【0037】
そして、動力伝達装置20は、例えば、モータMG2の駆動の状態が非駆動状態(無負荷状態)から駆動状態になり、モータMG2が(正転)駆動する際(モータMG2が駆動しメインギア27が矢印L1側に回転する場合)には以下のように動作する。
【0038】
動力伝達装置20は、モータMG2から出力されドリブンギア62とメインギア27、第1サブギア28との間で伝達される動力が相対的に小さい場合は、このモータMG2が発生させた動力をメインギア27、第1弾性部材92、第1サブギア28を順に介してこの第1サブギア28からドリブンギア62に伝達する。すなわち、動力伝達装置20は、メインギア27に伝達されるモータMG2からの動力に応じてメインギア27と第1サブギア28とが相対回転することで、メインギア27の挿入突起部93が第1弾性部材92を回転方向の矢印L1側に徐々に押し縮めつつ挿入突起部93の側面93aと挿入穴部94の側面94aとの間の回転方向の隙間が徐々に狭くなり、これに伴ってドリブンギア62の歯62aとメインギア27の歯27aとの間に徐々に回転方向の隙間が生じ始める。つまり、動力伝達装置20は、位相差調節部90がモータMG2からの伝達動力の増大に応じてメインギア27と第1サブギア28との位相差を徐々に減少させる。このとき、メインギア27に伝達されるモータMG2からの動力は、第1弾性部材92を介して第1サブギア28に伝達され、この第1サブギア28からドリブンギア62に伝達される。
【0039】
そして、動力伝達装置20は、ドリブンギア62とメインギア27、第1サブギア28との間で伝達される動力が相対的に大きい場合に、モータMG2が発生させた動力をメインギア27及び第1サブギア28の両方からドリブンギア62に伝達する。すなわち、動力伝達装置20は、メインギア27に伝達されるモータMG2からの動力が所定より大きくなり第1弾性部材92が所定量変形すると、図3に示すように、挿入突起部93の側面93aと挿入穴部94の側面94aとが当接することでメインギア27と第1サブギア28との相対回転が規制され、この位置でメインギア27と第1サブギア28との位相差がなくなりほぼ同位相となる(つまり、メインギア27と第1サブギア28とが同じ位相で重なり合う)。これにより、動力伝達装置20は、メインギア27と第1サブギア28とが一体の1つのギアのように機能する。このとき、メインギア27に伝達されるモータMG2からの動力は、一部がメインギア27からドリブンギア62に伝達され、残りが動力伝達部91をなす挿入突起部93の側面93aと挿入穴部94の側面94aとの当接部分を介して第1サブギア28に伝達され、この第1サブギア28からドリブンギア62に伝達される。
【0040】
この結果、動力伝達装置20は、モータMG2が発生させる動力がある程度大きくなると、メインギア27と第1サブギア28とが同じ位相で重なり合いメインギア27と第1サブギア28との相対回転が不可能となるので、メインギア27がガタ詰め方向に作用することで生じ得る歯面における摩擦やメインギア27と第1サブギア28とのあわせ面における摩擦が発生することを抑制することができる。これにより、動力伝達装置20は、摩擦によるエネルギー損失(摩擦損失)を抑制し動力の伝達効率、燃費を向上することができ、また、メインギア27及び第1サブギア28の摩耗を抑制することができる。また、動力伝達装置20は、モータMG2が発生させる動力がある程度大きくなると、メインギア27と第1サブギア28との両方が動力の伝達に寄与することから、従来のシザーズギアのように動力の伝達に寄与しないギアが存在しない分、メインギア27と第1サブギア28とからなる第2ドライブギア24全体での厚みが厚くなることを抑制することができ、動力伝達装置20が大型化することを抑制することができ、また製造コストを抑制すことができる。
【0041】
また、動力伝達装置20は、モータMG2が発生させる動力がある程度大きくなる際に、第1弾性部材92が徐々に押し縮められることで、メインギア27の歯27aがドリブンギア62の歯62aに当接する際のショック(衝撃力)を抑制することができる。この結果、動力伝達装置20は、例えば、モータMG2の非駆動状態から駆動状態への過渡を滑らかにつなぐことができ、モータ駆動による加速時などにおいても快適な走行フィーリングを確保することができる。
【0042】
以上で説明した本発明の実施形態に係る動力伝達装置20によれば、内燃機関10が発生させた動力が伝達されるドリブンギア62と、ドリブンギア62と噛み合いモータMG2が発生させた動力をドリブンギア62に伝達可能であると共に互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢されるメインギア27及び第1サブギア28と、ドリブンギア62とメインギア27、第1サブギア28との間で伝達される動力の増加に応じて前記付勢されることによるメインギア27と第1サブギア28との回転方向の位相差を減少させる位相差調節部90とを備える。
【0043】
したがって、動力伝達装置20は、モータMG2の無負荷時にメインギア27と第1サブギア28とがいわゆるシザーズギアとして機能し、モータMG2が発生させる動力が大きくなるとメインギア27と第1サブギア28とが一体の1つのギアのように機能することから、内燃機関10からの動力の変動成分によって騒音が発生することを適正に抑制することができる。これにより、動力伝達装置20は、車両1の乗員に不快感を与えることを抑制することができ、快適な走行フィーリングを確保することができると共に、この車両1では騒音防止のために内燃機関10の効率の悪い運転領域でこの内燃機関10を運転することを回避することができ、比較的に効率のよい運転領域で内燃機関10を運転することができるので、燃費を向上することができる。
【0044】
[実施形態2]
図7は、実施形態2に係る動力伝達装置の位相差調節部周辺の概略構成を示す部分断面図、図8は、図7に示す動力伝達装置のB1−B1の断面図、図9は、図7に示す動力伝達装置のB2−B2の断面図である。実施形態2に係る動力伝達装置は、第4歯車及び第2弾性部材を備える点で実施形態1に係る動力伝達装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0045】
本実施形態の動力伝達装置220は、上記で説明した動力伝達装置20(図1参照)が備える構成に加え、さらに、第4歯車としての第2サブギア229と、第2弾性部材296とを備える。動力伝達装置220は、第2ドライブギア24が回転軸線C2の軸方向に対して、メインギア27と、第1サブギア28と、第2サブギア229とに分割されている。メインギア27、第1サブギア28及び第2サブギア229の位置関係は、メインギア27が回転軸線C2の軸方向に対して第1サブギア28及び第2サブギア229よりモータMG2側に配置される。ここでは、第2サブギア229は、回転軸線C2の軸方向に対して、モータ側回転軸25に結合されるメインギア27と、中間回転軸26に結合される第1サブギア28との間に設けられる。つまり、この動力伝達装置220の伝達機構80は、回転軸線C2の軸方向に沿って、モータMG2側からメインギア27、第2サブギア229、第1サブギア28の順で配列されている。
【0046】
第2サブギア229は、ドリブンギア62と噛み合いメインギア27と同軸で相対回転可能なものである。第2サブギア229は、回転軸線C2と同軸の円環板状に形成され、内周面側にモータ側回転軸25と中間回転軸26との嵌合部82が挿入されるような位置関係で配置される。第2サブギア229は、モータ側回転軸25の外周面に相対回転可能に支持される。本実施形態の噛合部83は、メインギア27、第1サブギア28及び第2サブギア229の歯27a、28a、229aとドリブンギア62の歯62aとが噛み合うことで構成される。
【0047】
ここで、第1サブギア28及び第2サブギア229は、図7に示すように、回転軸線C2の軸方向の厚み(軸方向の幅)がメインギア27の厚み(軸方向の幅)より薄くなっている。また、本実施形態のメインギア27、第1サブギア28は、図8に示すように、モータMG2の無負荷時にメインギア27の歯27aとドリブンギア62の歯62aとの間に回転方向の隙間が生じるような形状、大きさに形成されている。第2サブギア229は、これらメインギア27、第1サブギア28と外径および歯数が等しく形成される。
【0048】
そして、メインギア27と第2サブギア229とは、互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢される。メインギア27と第2サブギア229とは、位相差調節部90を介して相互に動力伝達可能かつ回転方向の位相差を調節可能に接続される。
【0049】
具体的には、本実施形態の位相差調節部90は、さらに、上記第2弾性部材296を含んで構成される。
【0050】
第2弾性部材296は、メインギア27に対して回転方向に沿って第2サブギア229を付勢するものである。第2弾性部材296は、例えばエラストマなどのゴム状の弾力性を有する部材により形成される。第2弾性部材296は、図9に示すように、回転方向に対して、メインギア27が一体的に設けられるモータ側回転軸25と第2サブギア229との間に介在して設けられる。
【0051】
第2弾性部材296は、膨出部297と窪み部298との間に介在する。ここでは、膨出部297と窪み部298とは、膨出部297がモータ側回転軸25(メインギア27)側、窪み部298が第2サブギア229側に設けられるが逆であってもよい。膨出部297は、モータ側回転軸25において第2サブギア229の径方向(回転軸線C2の軸方向に直交する方向)の内側に位置する部分の外周面から径方向外側に向かって突出するようにして形成される。窪み部298は、第2サブギア229の内周面に凹部状に形成される。モータ側回転軸25と第2サブギア229とは、第2サブギア229がモータ側回転軸25の外周面に相対回転可能に支持された状態で、膨出部297が窪み部298内に収容され、回転方向に対して所定の隙間が形成される。膨出部297と窪み部298とは、周方向に沿って等間隔で複数個(ここでは2つ)設けられる。
【0052】
第2弾性部材296は、回転方向に対して膨出部297の側面297aと窪み部298の側面298aと間に介在して設けられる。第2弾性部材296は、回転方向の一端が膨出部297の側面297aに当接可能であり、他端が窪み部298の側面298aに当接可能である。そして、第2弾性部材296は、メインギア27、ここではメインギア27と一体のモータ側回転軸25に対して、第1弾性部材92による第1サブギア28の付勢の方向とは反対側に第2サブギア229を付勢する。すなわち、第2弾性部材296は、メインギア27に対して、モータMG2が正転駆動する際にメインギア27が回転する側とは反対側に第2サブギア229を付勢する。例えば、第2弾性部材296は、モータMG2が発生させた(正転)動力をドリブンギア62に伝達する際にメインギア27が図9において反時計回りの矢印L1側に回転するものと仮定した場合に、メインギア27に対して第2サブギア229を矢印L1側とは反対側に付勢する。言い換えれば、第2弾性部材296は、第2サブギア229に対してメインギア27を矢印L1側に付勢する。そして、第2弾性部材296は、メインギア27と第2サブギア229との相対回転に伴って、すなわち、メインギア27と第2サブギア229との回転方向に沿った相対変位に応じて側面297aと側面298aとの間で押し縮められる。
【0053】
上記のように構成される動力伝達装置220は、モータMG2の無負荷時に第1サブギア28と第2サブギア229とがいわゆるシザーズギアとして機能し、図8、図9に示すように、第1弾性部材92及び第2弾性部材296の付勢力によりドリブンギア62の歯62aを第1サブギア28の歯28aと第2サブギア229の歯229aとで回転方向に挟むことができる。これにより、動力伝達装置220は、例えば、モータMG2の無負荷時に、この噛合部83のバックラッシに応じて生じ得る回転方向の隙間(いわゆるガタ)を詰めることができ、内燃機関10からの動力の変動成分によって騒音が発生することを抑制することができる。なお、このとき、第1サブギア28と第2サブギア229とは、伝達動力の大きさとは無関係に相対的な位相差を有している。また、このとき、メインギア27の歯27aは、ドリブンギア62の歯62aには接触していない。
【0054】
ここで、動力伝達装置220は、第1サブギア28及び第2サブギア229の回転軸線C2の軸方向の厚みがメインギア27の厚みより薄くなっていることから、モータMG2の無負荷時にドリブンギア62の歯62aに当接する第1サブギア28及び第2サブギア229の慣性質量をメインギア27の慣性質量より小さくすることができる。これにより、動力伝達装置220は、内燃機関10の動力の変動に応じてドリブンギア62と回転方向に衝突しうる第1サブギア28及び第2サブギア229の慣性質量を相対的に小さくすることができ、内燃機関10の動力の変動成分を大きな慣性質量の部材で直接的に受けないようにすることができる。この結果、動力伝達装置220は、仮にドリブンギア62の歯面と第1サブギア28、第2サブギア229の歯面とが衝突した場合であっても、第1サブギア28、第2サブギア229の歯面が逃げてドリブンギア62の歯面が空振りしたような状態になるので、衝撃力を小さくすることができ、確実に大きな音が発生することを抑制することができる。
【0055】
そして、動力伝達装置220は、例えば、モータMG2の駆動の状態が被駆動状態になり、第2サブギア229がドリブンギア62の回転に対して矢印L1方向につれまわされる場合には以下のように動作する。
【0056】
動力伝達装置220は、モータMG2の被駆動時に、内燃機関10側から伝達されドリブンギア62とメインギア27、第2サブギア229との間で伝達される動力が相対的に小さい場合は、動力をドリブンギア62から第2サブギア229、第2弾性部材296、メインギア27と一体のモータ側回転軸25を順に介して伝達する。すなわち、動力伝達装置20は、ドリブンギア62から第2サブギア229に伝達される内燃機関10側からの動力に応じて第2サブギア229とメインギア27とが相対回転することで、窪み部298の側面298aが第2弾性部材296を回転方向の矢印L1側に徐々に押し縮める。これに伴って、動力伝達装置220は、位相差調節部90が内燃機関10側からの伝達動力の増大に応じて第2サブギア229とメインギア27との位相差を徐々に減少させる。このとき、ドリブンギア62に伝達される内燃機関10からの動力は、第2サブギア229から窪み部298の側面298a、第2弾性部材296、膨出部297の側面297aを介してモータ側回転軸25、メインギア27に伝達され、ドリブンギア62の回転に対して第2サブギア229、メインギア27及びモータ側回転軸25が矢印L1方向につれまわされる。
【0057】
そして、動力伝達装置220は、内燃機関10側から伝達されドリブンギア62とメインギア27、第2サブギア229との間で伝達される動力が相対的に大きい場合は、動力をドリブンギア62から第2サブギア229及びメインギア27の両方に伝達する。すなわち、動力伝達装置220は、ドリブンギア62から第2サブギア229に伝達される内燃機関10からの動力が所定より大きくなり第2弾性部材296が所定量変形すると、第2サブギア229とメインギア27との相対回転が規制され、この位置で第2サブギア229とメインギア27との位相差がなくなりほぼ同位相となる(つまり、第2サブギア229とメインギア27とが同じ位相で重なり合う)。これにより、動力伝達装置220は、第2サブギア229とメインギア27とが一体の1つのギアのように機能する。すなわち、ドリブンギア62に伝達される内燃機関10からの動力は、一部が第2サブギア229に伝達され、残りがメインギア27に伝達される。なお、このとき、動力伝達装置220では、第1サブギア28の歯28aは、ドリブンギア62の歯62aには接触していない。
【0058】
この結果、動力伝達装置220は、内燃機関10からの動力がある程度大きくなると、第2サブギア229とメインギア27とが同じ位相で重なり合い第2サブギア229とメインギア27との相対回転が不可能となるので、歯面における摩擦や第2サブギア229とメインギア27とのあわせ面における摩擦が発生することを抑制することができる。また、動力伝達装置220は、内燃機関10からの動力がある程度大きくなる際に、第2弾性部材296が徐々に押し縮められることで、メインギア27の歯27aがドリブンギア62の歯62aに当接する際のショック(衝撃力)を抑制することができ、例えば、モータMG2の被駆動状態への過渡を滑らかにつなぐことができ、快適な走行フィーリングを確保することができる。
【0059】
なお、動力伝達装置220は、モータMG2の逆転駆動時にメインギア27が矢印L1側とは反対側に回転する場合も上記とほぼ同様の動作をなす。すなわちこの場合、動力伝達装置220は、伝達動力が相対的に小さい場合には動力をモータ側回転軸25と一体のメインギア27、第2弾性部材296、第2サブギア229を順に介してドリブンギア62に伝達し、伝達動力が相対的に大きい場合には第2サブギア229とメインギア27とが同じ位相で重なり合い第2サブギア229とメインギア27とが一体の1つのギアのように機能し、動力を第2サブギア229及びメインギア27の両方からドリブンギア62に伝達する。また、モータMG2が正転駆動する際の動力伝達装置220の動作は、上記の動力伝達装置20(図1参照)とほぼ同様であるのでその説明を省略する。ただし、本実施形態の動力伝達装置220では、メインギア27と第1サブギア28とが一体の1つのギアのように機能する際には、第2サブギア229の歯229aは、ドリブンギア62の歯62aには接触していない。
【0060】
以上で説明した本発明の実施形態に係る動力伝達装置220によれば、ドリブンギア62と噛み合いメインギア27と同軸で相対回転可能である第2サブギア229を備え、位相差調節部90は、メインギア27に対して、回転方向に沿って第1弾性部材92による第1サブギア28の付勢の方向とは反対側に、第2サブギア229を付勢する第2弾性部材296を有する。したがって、動力伝達装置220は、モータMG2の無負荷時、正転駆動時、逆転駆動時、被駆動時のいずれの運転状態であっても騒音やショックが発生することを適正に抑制することができる。これにより、動力伝達装置220は、例えば、内燃機関10の動力による後退走行時などにおいても異音、ショックを低減することができる。
【0061】
なお、上述した本発明の実施形態に係る動力伝達装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る動力伝達装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0062】
例えば、実施形態1の動力伝達装置20において、第1サブギア28の回転軸線C2の軸方向の厚みをメインギア27の厚みより薄くし、第1サブギア28の慣性質量を相対的に小さくするようにしてもよい。
【0063】
また、図10は、変形例に係る動力伝達装置の径方向に沿った断面図、図11は、変形例に係る第2弾性部材の正面図である。変形例に係る動力伝達装置220Aが備える第2弾性部材296Aは、動力を伝達する胴部296Aaと、回転方向に延在する一対の位置決め部296Abとを含んで構成される。胴部296Aaは、膨出部297の側面297aと窪み部298の側面298aと間に介在して動力を伝達する部分である。位置決め部296Abは、胴部296Aaから回転方向の両側に設けられ、一方がモータ側回転軸25に固定され、他方が第2サブギア229に固定されることで、第2弾性部材296A全体を所定の位置に位置決めする部分である。位置決め部296Abは、例えば、円柱状に形成され、モータ側回転軸25、第2サブギア229に形成される円筒状のはめ込み凹部に嵌め込まれることでモータ側回転軸25、第2サブギア229に固定される。これにより、第2弾性部材296Aは、側面297aと側面298aとが離間する側にモータ側回転軸25と第2サブギア229とが相対回転した場合であっても、胴部296Aaを位置決め部296Abにより適正な位置に位置決めすることができる。
【0064】
なお、以上で説明した第1弾性部材、第2弾性部材は、バネやエラストマなどには限られない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように本発明に係る動力伝達装置は、内燃機関と電動機との双方を走行用動力源として備えたハイブリッド車両などに適用される種々の動力伝達装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
10 内燃機関
20、220、220A 動力伝達装置
27 メインギア(第2歯車)
28 第1サブギア(第3歯車)
62 ドリブンギア(第1歯車)
80 伝達機構
90 位相差調節部
92 第1弾性部材
229 第2サブギア(第4歯車)
296、296A 第2弾性部材
MG1 モータ
MG2 モータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関が発生させた動力が伝達される第1歯車と、
前記第1歯車と噛み合い電動機が発生させた動力を当該第1歯車に伝達可能であると共に、互いに同軸で相対回転可能であり回転方向に沿って互いに反対側に付勢される第2歯車及び第3歯車と、
前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力の増加に応じて前記付勢されることによる前記第2歯車と前記第3歯車との前記回転方向の位相差を減少させる位相差調節部とを備えることを特徴とする、
動力伝達装置。
【請求項2】
前記位相差調節部は、前記電動機が発生させた動力が伝達される前記第2歯車に対して、前記電動機が発生させた動力を前記第1歯車に伝達する際に当該第2歯車が回転する側に、前記第3歯車を付勢する第1弾性部材を有する、
請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力が相対的に小さい場合に、前記電動機が発生させた動力を前記第2歯車、前記第1弾性部材、前記第3歯車を順に介して当該第3歯車から前記第1歯車に伝達する、
請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1歯車と前記第2歯車、前記第3歯車との間で伝達される動力が相対的に大きい場合に、前記電動機が発生させた動力を前記第2歯車及び前記第3歯車から前記第1歯車に伝達する、
請求項2又は請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1歯車と噛み合い前記第2歯車と同軸で相対回転可能である第4歯車を備え、
前記位相差調節部は、前記第2歯車に対して、前記回転方向に沿って前記第1弾性部材による付勢の方向とは反対側に、前記第4歯車を付勢する第2弾性部材を有する、
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2歯車は、回転軸線に沿った方向に対して、前記第3歯車及び前記第4歯車より前記電動機側に配置される、
請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第3歯車及び前記第4歯車は、回転軸線の沿った方向の厚みが前記第2歯車の厚みより薄い、
請求項5又は請求項6に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−122690(P2011−122690A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281874(P2009−281874)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】