説明

動力作業車の運転装置

【課題】動力作業車の運転装置において、座席前のステップの乗降空間が一方のみの場合、路地の狭い場所等での作業時にその一方が壁側に密着した場合、乗降が出来なくなる。
【解決手段】前後方向の変更可能な座席Sの解除・固定を行う座席解除レバー9と駐車ブレーキレバー1とを付設して、座席Sの前後方向の変更に伴って、同時に座席解除レバー9と駐車ブレーキレバー1も前後方向を変更すべく構成し、前部ブレーキぺダル4と後部ブレーキペダル5を、前記座席Sの前後に別々に配置した動力作業車の運転装置において、座席Sの前部位置にフロントグリルGを立設し、該座席SとフロントグリルGとの間を、オペレータが左右に通過可能なステップスルー空間Aを構成し、該ステップスルー空間Aの左右の位置で、機体フレームFの前端部の側面に、左右の乗降ステップ3L・3Rを突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場や、ガス水道工事現場等において、掘削した土砂や、建設資材等を運搬する為等に使用する動力作業車の運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駐車ブレーキレバーと前後に向きを変更可能とした座席との関係に関する技術は公知とされているのである。例えば、実開平5−54053号公報や、実開平5−54063号公報に記載の技術の如くである。また、動力作業車の運転装置において、乗降ステップを設けた技術は公知とされているのである。例えば、実開昭59−27923号公報に記載の技術の如くである。
【特許文献1】実開平5−54053号公報
【特許文献2】実開平5−54063号公報
【特許文献3】実開昭59−27923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の動力作業車の運転装置においては、座席前のステップの空間が一方方向のみに乗降可能とされており、左右に座席の前の空間を移動可能としたステップスルー空間に構成されていなかったのである。故に、路地の狭い場所で乗降する場合において、一方の壁に機体が密着している場合には、座席の側が塞がれて、乗降が出来なくなる場合があったのである。
【0004】
本発明においては、座席の前で、フロントグリルの後ろの空間をステップスルーに構成することにより、オペレータが座席の前で左右のどの方向にも移動を可能として、路地等の狭い場所で、水道管の敷設やガスパイプの敷設等の工事をする場合において、どちらからも乗降を可能とし、この為の乗降ステップを機体フレームの前端で、フロントグリルの部分の側方に配置したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、枢支軸筒体(6)の上に、座席回動支持部材(2)を前後に回動自在に支持し、該座席回動支持部材(2)に支持した座席(S)を、進行方向の前向きから後向きに変更可能とし、前記座席回動支持部材(2)には、枢支軸筒体(6)との間の解除・固定を行う座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)とを付設して、座席(S)の前後方向の変更に伴って、同時に座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)も前後方向を変更すべく構成し、前部ブレーキぺダル(4)と後部ブレーキペダル(5)は、前記座席(S)の前後に別々に配置した動力作業車において、座席(S)の前部位置にフロントグリル(G)を立設し、該座席(S)とフロントグリル(G)との間を、オペレータが左右に通過可能なステップスルー空間(A)を構成し、該ステップスルー空間(A)の左右の位置で、機体フレーム(F)の前端部の側面に、左右の乗降ステップ(3L・3R)を突設したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
請求項1の如く、枢支軸筒体(6)の上に、座席回動支持部材(2)を前後に回動自在に支持し、該座席回動支持部材(2)に支持した座席(S)を、進行方向の前向きから後向きに変更可能とし、前記座席回動支持部材(2)には、枢支軸筒体(6)との間の解除・固定を行う座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)とを付設して、座席(S)の前後方向の変更に伴って、同時に座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)も前後方向を変更すべく構成し、前部ブレーキぺダル(4)と後部ブレーキペダル(5)は、前記座席(S)の前後に別々に配置した動力作業車において、座席(S)の前部位置にフロントグリル(G)を立設し、該座席(S)とフロントグリル(G)との間を、オペレータが左右に通過可能なステップスルー空間(A)を構成し、該ステップスルー空間(A)の左右の位置で、機体フレーム(F)の前端部の側面に、左右の乗降ステップ(3L・3R)を突設したので、従来の動力作業車の運転装置においては、座席前のステップの空間が一方方向のみに乗降可能とされており、左右に座席の前の空間を移動可能としたステップスルー空間に構成されていなかった為に、路地の狭い場所で乗降する場合において、一方の壁に機体が密着している場合には、座席Sの側が塞がれて、乗降が出来なくなるという不具合があったがこれを解消することが出来たものである。
また、座席Sの前で、フロントグリルGの後ろの空間をステップスルーAに構成することにより、オペレータが座席Sの前で左右のどの方向にも移動を可能として、路地等の狭い場所で、水道管の敷設やガスパイプの敷設等の工事をする場合において、どちらからも乗降を可能とし、この為の乗降ステップ3L・3Rを機体フレームFの前端で、フロントグリルGの部分の側方に配置したものである。
また、機体フレーム(F)に左右の乗降ステップ(3L・3R)を突出したことにより、特別に乗降ステップ(3L・3R)を用意する必要が無くなったのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の動力作業車の全体側面図、図2は同じく動力作業車の全体平面図、図3は駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す平面図、図4は駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す側面図、図5は駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す前面図、図6は座席Sの支持構成を示す側面図、図7は座席Sの支持構成を示す前面図、図8は同じく平面図、図9は機体フレームFに付設した乗降ステップ3L・3Rの構成を示す正面図、図10は同じく乗降ステップ3L・3Rの部分の平面図、図11は乗降ステップ3L・3Rの構成を示す機体フレームFの側面図である。
【0008】
図1と図2において、本発明の動力作業車の全体的な構成について説明する。動力作業車はクローラ式走行装置Cにより走行する。該クローラ式走行装置Cの上に機体フレームFを配置し、該機体フレームFの上にダンプ可能な荷台Dを配置している。該ダンプ可能な荷台Dの前にエンジン室Eと座席Sを配置し、該エンジン室Eと座席Sの前の空間を、ステップスルー空間Aに構成している。該ステップスルー空間Aの前にフロントグリルGを立設し、該フロントグリルGの上部にガイド手摺り10を立設している。該フロントグリルGは機体フレームFの前端に固定している。該機体フレームFの前端より、更にパンパーBが突出されている。本構成においては、図9と図10と図11に示す如く、該機体フレームFの前端で、ステップスルー空間Aの左右の位置に、左右の乗降ステップ3L・3Rを突設構成している。
【0009】
また、ダンプ可能な荷台Dの前で、機体フレームFより突出してガイドフレーム11を突出し、該ガイドフレーム11より、やや前方に向かって、後部ガイド手摺り12を突出している。該後部ガイド手摺り12は、座席Sを後方に向けた場合において、オペレータの前に位置して、これを保持することが出来るように構成している。
【0010】
次に、図3〜図8において、本構成の要部である駐車ブレーキレバー1と、座席回動支持部材2と、枢支軸筒体6と、前部ブレーキぺダル4と後部ブレーキペダル5の構成について説明する。ステップTの上に、枢支軸筒体6が立設されている。該枢支軸筒体6の上に、ベアリングRを介して、座席回動支持部材2が枢支軸筒体6の軸心を中心に前後に回動自在に枢支されている。該座席回動支持部材2と枢支軸筒体6の解除・固定を行うのが、座席解除レバー9である。該座席回動支持部材2よりアームレスト7・7が左右に立設されており、該アームレスト7・7の間に座席Sが配置されている。
【0011】
前記枢支軸筒体6の上端に支持プレート40が固定され、図6、図7、図8に示すように、該支持プレート40の左右両側に座席Sを180度回動した時に位置固定する凹部40a・40aが設けられている。一方、前記座席回動支持部材2に座席解除レバー9が枢支され、一端は前方に突出され、他端に係合突起39を固設しており、該座席解除レバー9の操作により、前記凹部40aから係合突起39が抜けて、座席Sが回動可能となり、ベアリングRの周囲で座席Sを180度回動した後に、他方の凹部40aに、係合突起39を嵌入させてロックすることができる。
【0012】
本構成は、駐車ブレーキレバー1を該座席回動支持部材2に支持しており、座席回動支持部材2を前後向きに回動すると、駐車ブレーキレバー1も同時に回動するが、この回動を、枢支軸筒体6内に上下方向に配置した上下リンク19のボールジョイント50により吸収すべく構成しているのである。図3、図4、図5において図示される如く、座席Sの右側に駐車ブレーキレバー1が斜め外側に向いて傾斜配置されている。該駐車ブレーキレバー1は、座席回動支持部材2の内部に固定された枢支筒52の内部に枢支された枢支軸23に、リンク53とアーム54を介して連結されており、該アーム54は枢支軸23の一端部に固設されている。該枢支軸23の他側端部にアーム25が突設されている。該アーム25の内端部が上下リンク19にボールジョイント50を介して連結されている。座席Sと座席回動支持部材2と駐車ブレーキレバー1との、前後への180度回転を可能としている。
【0013】
前記上下リンク19の下端は回動軸34の上に突設したアーム31と連結されており、該アーム31の回動が回動軸34に伝達される。該回動軸34上には更にアーム32が突設されて、リンク16を介して前部ブレーキぺダル4と連結されている。そして、該回動軸34は枢支筒軸35に枢支されており、該枢支筒軸35は機体フレームFに固定したプレート8に固設されている。内部の回動軸34が、枢支筒軸35内を貫通して、枢支軸筒体6の右側に突出されている。該回動軸34の右端に、アーム22が固設されて下方へ突設されており、該アーム22の、回動軸34の軸芯より低い位置に、後部ブレーキペダル5のリンク17の端部が連結されている。
【0014】
更に、該アーム22の中途部に連結リンク21が連結され、該連結リンク21の他端が、枢支筒軸27の内部に遊嵌された伝達軸26の上の、短筒軸48に連結されたアーム20に連結されている。該短筒軸48は、伝達軸26には遊嵌状態であり、回動が自由とされている。、該アーム22の回動を連結リンク21から、短筒軸48の上のアーム20に伝達し、該アーム20から短筒軸48の反対側の連動アーム33に伝達される。該連動アーム33の回動を短筒軸47上のアーム30と、短筒軸49の上のアーム29の両方に、貫通ボルト28を介して連結している。該貫通ボルト28からアーム30に伝達し、短筒軸47に伝達された回動が、短筒軸47の上のアーム46aから、リンク15aを介して、ブレーキ操作軸45のアーム14aに伝達される。同様に短筒軸49のアーム29の回動は、枢支筒軸27に枢支された伝達軸26を介して、伝達軸26の他端のリンク15bに伝達されて、同じく、ミッションケースMに設けられた、左右のブレーキ操作リンクの他方に連結されている。
【0015】
このように構成したことにより、前部ブレーキぺダル4又は後部ブレーキペダル5の踏み込む量が、リンク15a・15bから、ブレーキ操作軸45a・45bのアーム14a・14bに伝達されて、ミッションケース内のブレーキが制動されるという操作が行われる。また前記アーム22から連動ワイヤー13が延設されており、該連動ワイヤー13は、操向クラッチ操作バルブに設けられた左右の操向クラッチバルブを同時に切り操作するリンク機構55に連動している。これにより、前部ブレーキぺダル4又は後部ブレーキペダル5の踏み込みに際して、わずかに早く、左右の操向クラッチが同時に切り操作され、次に左右のブレーキの制動が係るように構成している。
【0016】
本発明では、座席Sの前部であって、機体フレームFの前部位置に、フロントグリルGを立設した動力作業車の運転装置において、該座席SとフロントグリルGとの間を、オペレータが左右に通過可能なステップスルー空間Aを構成し、該ステップスルー空間Aの左右の位置で、機体フレームFの前端部の側面に、乗降ステップ3L・3Rを突設したので、エンジン室Eの前で、座席Sの前の位置をステップスルー空間Aとしたことと合わせて、オペレーターは、狭い路地でも、左右のどらちからでも乗降できることとなり、運搬車と壁との間の狭い空間から乗降する必要が無くなったのである。また機体フレームFに乗降ステップ3L・3Rを突出したことにより、特別に乗降ステップ3L・3Rを用意する必要がないのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の動力作業車の全体側面図。
【図2】同じく動力作業車の全体平面図。
【図3】駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す平面図。
【図4】駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す側面図。
【図5】駐車ブレーキレバー1と座席Sの構成を示す前面図。
【図6】座席Sの支持構成を示す側面図。
【図7】座席Sの支持構成を示す前面図。
【図8】同じく平面図。
【図9】機体フレームFに付設した乗降ステップ3L・3Rの構成を示す正面図。
【図10】同じく乗降ステップ3L・3Rの部分の平面図。
【図11】乗降ステップ3L・3Rの構成を示す機体フレームFの側面図。
【符号の説明】
【0018】
A ステップスルー空間
F 機体フレーム
T ステップ
1 駐車ブレーキレバー
2 座席回動支持部材
3L,3R 乗降ステップ
4 前部ブレーキペダル
5 後部ブレーキペダル
6 枢支軸筒体
9 座席解除レバー
13 連動ワイヤー
19 上下リンク
50 ボールジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢支軸筒体(6)の上に、座席回動支持部材(2)を前後に回動自在に支持し、該座席回動支持部材(2)に支持した座席(S)を、進行方向の前向きから後向きに変更可能とし、前記座席回動支持部材(2)には、枢支軸筒体(6)との間の解除・固定を行う座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)とを付設して、座席(S)の前後方向の変更に伴って、同時に座席解除レバー(9)と駐車ブレーキレバー(1)も前後方向を変更すべく構成し、前部ブレーキぺダル(4)と後部ブレーキペダル(5)は、前記座席(S)の前後に別々に配置した動力作業車において、座席(S)の前部位置にフロントグリル(G)を立設し、該座席(S)とフロントグリル(G)との間を、オペレータが左右に通過可能なステップスルー空間(A)を構成し、該ステップスルー空間(A)の左右の位置で、機体フレーム(F)の前端部の側面に、左右の乗降ステップ(3L・3R)を突設したことを特徴とする動力作業車の運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−112437(P2007−112437A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312285(P2006−312285)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【分割の表示】特願平9−161138の分割
【原出願日】平成9年6月18日(1997.6.18)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】