説明

化合物半導体ウエハの評価方法,半導体レーザ素子

【課題】製造歩留まりを低下させることなく,化合物半導体ウエハの評価を行うことができる,化合物半導体ウエハの評価方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば,半導体基板上方に化合物半導体積層体を有する化合物半導体ウエハの特定部位の周縁部分をエッチングして前記特定部位を柱状に加工し,この柱状の特定部位に一次イオンビームを照射して二次イオンを放出させ,放出された二次イオンの質量分析を行い,前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う工程を含む化合物半導体ウエハの評価方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,二次イオン質量分析による化合物半導体ウエハの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に,半導体レーザ等の化合物半導体素子は,エピタキシャル成長による薄膜形成,フォトリソグラフィー,エッチング等の工程を反復的に行うことにより製造される。これらの製造工程を順次遂行する過程で,化合物半導体ウエハ中の不純物元素等の原子濃度及びその分布を分析することによって,製造工程の状態の監視が行われている。
【0003】
不純物元素等の原子濃度及びその分布の分析は,通常,二次イオン質量分析装置(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometer)用いた二次イオン質量分析によって行なわれる。
【0004】
1.SIMSを用いた二次イオン質量分析について
ここで,図14を用いて,SIMSを用いた二次イオン質量分析について説明する。図14は,SIMSの構成図である。
【0005】
図14に示すように,イオン源1は,一次イオンを発生させ,イオン源1で発生した一次イオンは,引出し電極(図示せず)で加速されて一次イオンビーム1aとなり,数段のレンズ系(一次イオン収束用レンズ2)で収束された後に,真空チャンバー3内の試料ステージ3a上に配置された試料ホルダー16に保持された試料表面に照射される。試料上では,一次イオンビーム1aのビーム径は数μmφから数十μm程度の大きさとなる。一次イオンビーム1aは,通常,そのビーム径よりも広い範囲の領域をラスタ走査される。 一次イオンビーム1aの試料及び試料ホルダー16の詳細については後述する。
【0006】
試料ホルダー16に保持された試料表面には,数kVの電圧が印加されており,試料表面から数mmの距離に存在するグランド電位の引出し電極4との間で強い電界が生じている。例えば,正の二次イオン4aを検出する場合は,試料に正の電位を加えておく。
試料表面への一次イオンビーム1aの照射によって二次イオン4aが放出され,放出された二次イオン4aは,試料表面と引出し電極4の間の空間で上記電界によって加速されて,イマージョンレンズ5に向かう。二次イオン4aは,イマージョンレンズ5によって収束された後,トランスファーレンズ6によりコントラストアパーチャ7の位置で収束されて,次に,フィールドアパーチャ8を通過し,静電型エネルギー分析器9に入射する。 フィールドアパーチャ8は,通常,ラスタ走査される領域の中心部分から放出された二次イオン4aのみが通過するように設定される。
【0007】
静電型エネルギー分析器9に入射した二次イオン4aは,静電型エネルギー分析器9中の静電場によって生じる静電力によって進行方向が曲げられると共にエネルギースリット10の位置で収束され,特定の速度の二次イオン4aのみがエネルギースリット10を通過する。エネルギースリット10を通過した二次イオン4aは,磁場型質量分析器11に入射し,磁場型質量分析器11中の静磁場によって生じるローレンツ力を受け,静磁場の大きさ,イオンの速度及びm/z(イオンの質量/イオンの電荷)値に応じた軌道半径で運動するように進行方向が曲げられる。
磁場型質量分析器11には特定の速度の二次イオン4aのみが入射しているので,軌道半径は,静磁場の大きさとm/z値に依存して変化する。また,特定の軌道半径を有する二次イオン4aのみが磁場型質量分析器11を離脱することができる。従って,前記特定の軌道半径になるように静磁場の大きさを変化させることによって,所望のm/z値を有する二次イオン4aのみを選択的に磁場型質量分析器11から離脱させることができる。
磁場型質量分析器11を離脱した二次イオン4aは,プロジェクターレンズ12によって収束された後,図示しない静電場によって生じる静電力によって進行方向が曲げられてイオン計数管14に入射する。イオン計数管14では,イオン計数管14に入射した二次イオン4aの数が計数される。
なお,ファラデーカップ13は,イオン計数管14と同様に二次イオン4aの数を計数する機能を有し、特に非常に多く二次イオン4aの数を計数する場合に用いられ,イオン像観察用スクリーンは,二次イオン分布を観察する機能を有する。
【0008】
2.分析される試料及び試料ホルダーついて
次に,分析される試料22及び試料ホルダー16ついて,図15(a)〜(c)を用いて説明する。図15(a)〜(c)は,分析される試料22を化合物半導体ウエハ21から分離し,イオンビーム調整用標準格子23と共に,試料ホルダーに取り付ける工程を示す平面図である。
従来のSIMSを利用した不純物原子濃度の分析方法では,図15(a),(b)に示すように,製造途中の化合物半導体ウエハ21を製造ラインから抜き取り,抜き取った化合物半導体ウエハ21の約1cm×1cmの大きさの特定部位21aをへき開又は切断によって分離し,この分離したものを化合物半導体ウエハ21の評価用の試料22とする。 特定部位21aは,通常,複数箇所(例えば,5箇所)設けられており,従って,複数個の試料22がウエハ21から分離される。また,一次イオンビーム1aを調整するためのイオンビーム調整用標準格子23は,別途準備される。
次に,図15(c)に示すように,分析するための複数個の試料22と,標準格子23を,複数の窓を持った試料ホルダー16に固定する。
【0009】
3.二次イオン質量分析の方法について
次に,上記試料22の二次イオン質量分析方法について説明する。
【0010】
まず,試料22と標準格子23が固定された試料ホルダー16を試料導入室17内に載置し,試料導入室17を真空状態し,その後,試料ホルダー16を真空チャンバー3内に導入し,真空チャンバー3内の試料ステージ3aに固定する。
【0011】
次に,一次イオンビーム1aが標準格子23に照射されるように試料ステージ3aを移動させ,標準格子23を用いて一次イオンビーム1aの調整を行う。
【0012】
その後,一次イオンビーム1aが,複数個の試料22の何れか一つに照射されるように試料ステージ3aを移動させ,一次イオンビーム1aを試料22表面に照射して二次イオン4aを発生させる。
発生した二次イオン4aは,静電型エネルギー分析器9及び磁場型質量分析器11によって質量分離された後,イオン計数管14に入射される。イオン計数管14では,二次イオン4aの個数が計数され,これによって,分析対象元素(例えば,不純物元素)の,試料22中での原子濃度が得られる。また,分析を進めるにつれ,試料22の表面が一次イオンビーム1aによるスパッタエッチによって掘り進められるため,二次イオン質量分析を連続的に行うことによって,前記原子濃度の深さ方向分布を得ることができる。
【0013】
一つの試料22に対する分析が終わると,試料ホルダー16にセットされた別の試料22に一次イオンビーム1aが照射されるように試料ステージ3aを移動させ,前述の分析過程を反復的に遂行して,試料22の分析を行う。
試料ホルダー16にセットされた全ての試料22の分析が終わると,複数個の試料22の二次イオン質量分析の結果から化合物半導体ウエハ21の評価を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の化合物半導体ウエハの評価方法では,製造途中の化合物半導体ウエハ21を製造ラインから抜き取り,抜き取った化合物半導体ウエハ21の特定部位21aをへき開又は切断によって分離する。このため,抜き取った化合物半導体ウエハ21を再度製造ラインに戻して,化合物半導体素子を作製する事は難しい。そのため,前記化合物半導体ウエハ21を抜き取ったことにより,製造歩留りが低下してしまう。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり,製造歩留まりを低下させることなく,化合物半導体ウエハの評価を行うことができる,化合物半導体ウエハの評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0016】
すなわち,本発明によれば,半導体基板上方に化合物半導体積層体を有する化合物半導体ウエハの特定部位の周縁部分をエッチングして前記特定部位を柱状に加工し,この柱状の特定部位に一次イオンビームを照射して二次イオンを放出させ,放出された二次イオンの質量分析を行い,前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う工程を含む化合物半導体ウエハの評価方法が提供される。
【0017】
本発明の方法では,化合物半導体ウエハ(以下,「ウエハ」とも呼ぶ。)から試料を分離することなく,ウエハに形成された柱状の特定部位から放出される二次イオンの質量分析を行うことによって,ウエハの評価を行うことができる。評価に用いたウエハは,分割等されていないので製造ラインに容易に戻すことができる。従って,本発明によればウエハを無駄にすることなくウエハの評価ができるので,ウエハの評価による製造歩留まりの低下を防ぐことができる。また,ウエハを無駄にしないので,本発明の評価方法を製造ラインに組み込んで,正常なウエハのみを次の工程に送るように製造ラインを構成することができる。
また,本発明では,予め特定部位の周縁部分をエッチングすることによって特定部位を柱状に加工しているので,特定部位の周囲から二次イオンの発生を抑制することができ,高精度な評価が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態の化合物半導体ウエハの評価方法は,半導体基板上方に化合物半導体積層体を有する化合物半導体ウエハの特定部位の周縁部分をエッチングして前記特定部位を柱状に加工し,この柱状の特定部位に一次イオンビームを照射して二次イオンを放出させ,放出された二次イオンの質量分析を行い,前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う工程を含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは,前記化合物半導体ウエハは,母体構成元素としてAlを含む化合物半導体からなるAl含有層を最上層に有し,このAl含有層に一次イオンビームを照射して,前記Al含有層に含まれるAl原子を飛散させる工程をさらに備える。
Al含有層に一次イオンビームが照射されると,この層がスパッタリングされてAl原子が飛散し,SIMS内に浮遊・付着する。このAl原子によってSIMS内に存在する酸素原子がゲッタリングされ,SIMS内の酸素原子濃度のバックグランドが下がる。従って,この実施形態によれば,酸素に対する二次イオン質量分析の測定精度が向上する。
【0020】
好ましくは,二次イオンの質量分析の後,前記Al含有層をウェットエッチングにより除去する工程をさらに備える。
前記Al含有層は,二次イオンの質量分析後には不要であり,この層をウェットエッチングにより除去することによって,この層に付着した不純物等も一緒に除去することによって,ウエハ表面を清浄にすることができる。
【0021】
好ましくは,前記特定部位を柱状に加工した後であって一次イオンビームの照射前に,前記特定部位の周辺領域に誘電体層及びその上に導電体層を形成する工程をさらに備える。
前記柱状の特定部位の周辺領域に誘電体層を形成することがあるが,この場合,一次イオンビームの照射によってウエハ表面に電荷が蓄積することがある。そこで,この実施形態のように,誘電体層上に導電体層(例:Au層)を形成することによって,電荷の蓄積を抑制することができ,ウエハの正確な評価が可能になる。
【0022】
前記化合物半導体積層体は,一例では,半導体基板側から順に,第1導電型の第1クラッド層,活性層,第2導電型の第2クラッド層を有する構成である。但し,本実施形態が対象とする化合物半導体積層体は,このような構成のものに限定されず,本実施形態の方法は,例えば,活性層を有しない化合物半導体素子(例:太陽電池)などにも適用可能である。
【0023】
好ましくは,前記二次イオンの質量分析によって得られる特定元素についての二次イオン検出数と,この特定元素の相対感度係数とから,前記特定部位に含まれる前記特定元素の原子濃度を算出する工程をさらに備える。
二次イオン検出数からウエハの評価を行うこともできるが,予め標準試料を用いて特定元素の相対感度係数を求めておき,この相対感度係数を用いて二次イオン検出数を原子濃度に変換することによって,より直感的に前記特定元素の含有量を把握することができる。
【0024】
前記特定元素は,一例では,H,C又はOである。
H,C又はO原子は,化合物半導体ウエハに混入されると,化合物半導体ウエハの特性を悪化させることがあるため,その混入を防止すべき原子であり,H,C又はOの原子濃度を参照することによって効果的な化合物半導体ウエハの評価が可能になる。
【0025】
前記特定元素は,一例では,Siである。
Si原子は,化合物半導体層にn型導電性を付与する原子であり,Siの原子濃度を参照することによって効果的な化合物半導体ウエハの評価が可能になる。
【0026】
前記特定元素は,一例では,Mg又はZnである。
Mg又はZn原子は,化合物半導体層にp型導電性を付与する原子であり,Mg又はZnの原子濃度を参照することによって効果的な化合物半導体ウエハの評価が可能になる。
【0027】
前記特定元素は,一例では,前記化合物半導体積層体の構成元素である。
この場合,化合物半導体積層体が意図した組成で形成されているかどうかを確認することができ,効果的な化合物半導体ウエハの評価が可能になる。
【0028】
前記化合物半導体積層体の構成元素は,一例では,Al,P,Ga,As又はInである。前記化合物半導体積層体は,例えば,AlGaAsやAlGaInPで形成されており,この場合,その構成原子は,Al,P,Ga,As又はIn原子となる。
【0029】
好ましくは,前記一次イオンビームは,セシウムイオンからなる。
セシウムイオンは,試料内部への侵入深さが浅いという特性を有するので,セシウムイオンからなる一次イオンビームを用いることによって,化合物半導体ウエハへのダメージを比較的小さくすることができる。
【0030】
好ましくは,前記一次イオンビームの照射前に,前記化合物半導体ウエハをエッチングして格子状の溝からなるイオンビーム調整用標準格子を形成し,前記標準格子を利用して前記一次イオンビームの調整を行う工程をさらに備える。
この場合,イオンビーム調整用標準格子を別途準備する必要がなく,簡便に一次イオンビームの調整を行うことができる。
【0031】
好ましくは,前記化合物半導体ウエハは,前記特定部位を複数個有する。また,好ましくは,前記複数個の特定部位のそれぞれについて二次イオンの質量分析を行い,前記複数個の特定部位についての前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う。
この場合,化合物半導体ウエハの複数箇所で二次イオンの質量分析を行い,複数箇所での結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行うので,化合物半導体ウエハの評価の精度が向上する。また,複数個の特定部位は,後工程であるフォトリソグラフィー等の工程におけるアライメントマーカーとして用いることができる。
【0032】
好ましくは,前記化合物半導体ウエハは,複数の半導体レーザ素子形成単位を有し,前記特定部位は,各半導体レーザ素子形成単位に形成され,各特定部位について二次イオンの質量分析が行われる。
この場合,半導体レーザ素子毎に二次イオン質量分析が行われるので,二次イオン質量分析の結果と,半導体レーザ素子の電気/光学的特性測定結果とを一対一で対応させることができる。
好ましくは,前記特定部位は,各半導体レーザ素子形成単位に2箇所形成される。この場合,一方の特定部位で正のイオンについての二次イオン質量分析を行い,他方の特定部位で負のイオンについての二次イオン質量分析を行うことができる。
【0033】
好ましくは,複数の半導体レーザ素子形成単位は,電流導波路となるリッジストライプと,前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部とを備え,前記特定部位は,前記リッジストライプの横に,前記テラス部を分断するように形成される。
この実施形態では,従来がテラス部が存在している位置に柱状の特定部位を形成するものであり,この実施形態によれば,特定部位のための領域を化合物半導体ウエハ上に別途設ける必要がない。従って,この実施形態によれば,化合物半導体ウエハの利用効率が向上する。
【0034】
本発明は,別の観点では,第1導電型の基板上に,第1導電型の第1クラッド層と,バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層と,第2導電型の第2クラッド層及び電流導波路となるリッジストライプを有する第2導電型の第3クラッド層と,前記リッジストライプの側面及びその横の平坦部に誘電体層からなる電流阻止層と,前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部と,前記リッジストライプの横に,一次イオンビームの照射によって放出される二次イオンの質量分析に用いられる柱状の特定部位が形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子を提供する。また,好ましくは,前記特定部位が,前記テラス部を分断するように,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面から離れた内部領域に形成される。
この素子は,一次イオンビームの照射によって放出される二次イオンの質量分析に用いられる柱状の特定部位を有しており,この特定部位において二次イオン質量分析を行うことが可能である。また,前記電流阻止層が,前記特定部位を覆わず,その周辺領域に形成されている場合,リッジストライプ等に加わる応力歪みが小さくなり,水平放射角分布のガウス関数分布からのズレ量が減少し,半導体レーザ素子の特性が向上する。
【0035】
本発明は,さらに別の観点では,第1導電型の基板上に,第1導電型の第1クラッド層と,バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層と,第2導電型の第2クラッド層及び電流導波路となるリッジストライプを有する第2導電型の第3クラッド層と,前記リッジストライプの側面及びその横の平坦部に誘電体層からなる電流阻止層と,前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部とを備え,前記リッジストライプの横に,前記テラス部より低い高さとなるクレータ部が形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子を提供する。また,好ましくは,前記クレータ部は,前記テラス部を分断するように,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面から離れた内部領域に形成される。
このクレータ部は,特定部位が一次イオンビームによりスパッタエッチされることによって形成される。このクレータ部の存在により,リッジストライプ等に加わる応力歪みが小さくなり,水平放射角分布のガウス関数分布からのズレ量が減少し,半導体レーザ素子の特性が向上するという利点がある。
【0036】
好ましくは,前記活性層は,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面近傍領域でのフォトルミネッセンスのピーク波長が,前記端面から離れた内部領域でのフォトルミネッセンスのピーク波長より短い。
この場合,活性層で発生したレーザ光が前記端面近傍領域で吸収されることが抑制され,前記端面近傍領域での発熱が抑制されるからである。
【0037】
また,上記半導体レーザ素子は,前記基板はGaAsからなり,前記第1クラッド層,前記活性層,前記第2クラッド層,前記第3クラッド層及び前記電流阻止層は,AlGaInP系材料からなる。
【0038】
ここまでに示した種々の特徴は,互いに組み合わせて本発明に採用することができる。
【0039】
以下,本発明の種々の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は,例示であって,本発明の範囲は,図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0040】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態の化合物半導体ウエハの評価方法は,半導体基板上方に化合物半導体積層体を有する化合物半導体ウエハの特定部位の周縁部分をエッチングして前記特定部位を柱状に加工し,この柱状の特定部位に一次イオンビームを照射して二次イオンを放出させ,放出された二次イオンの質量分析を行い,前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う工程を含む。
以下,本実施形態に関係する種々の工程について詳細に説明する。
【0041】
1−1.化合物半導体ウエハ作製工程
まず,評価対象の化合物半導体ウエハを作製する。この工程について,図1(a),(b)を用いて説明する。図1(a)は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハ25の製造工程を示す平面図であり,図1(b)は,図1(a)のI−I断面図を示す。
【0042】
図1(a),(b)に示すように,本実施形態の化合物半導体ウエハ25は,半導体基板26上方に,化合物半導体積層体27を形成することによって作製することができる。
【0043】
半導体基板26は,直径が,例えば,2インチであり,オリエンテーションフラット26aが形成されている。
【0044】
化合物半導体積層体27は,半導体基板26側から順に,好ましくはバッファ層28を介して,第1導電型の第1クラッド層29,活性層30,第2導電型の第2クラッド層31を有している。さらに,化合物半導体積層体27は,第2クラッド層31上に,エッチングストップ層32,第2導電型の第3クラッド層33,第2導電型の中間層34,第2導電型のコンタクト層35を有している。
【0045】
化合物半導体積層体27に含まれる各層は,例えば,有機金属気相成長(MOCVD)法によりエピタキシャル成長させることによって形成することができる。各層の作製時に例えばSi原子を混入させることによってn型導電性を有する層を作製することができ,II族原子であるMg原子及びZn原子を混入させることによってp型導電性を有する層を作製することができる。
【0046】
各層の具体例は,例えば,表1に示す通りである。表1中のx,y,zは,それぞれ,0以上1以下の値である。
【表1】

【0047】
図1(a)に示すように,化合物半導体ウエハ25は,二次イオン質量分析される5箇所(ウエハ25の中央と,中央から上下左右にずれた位置)の特定部位25aを有している。特定部位25aの形状やサイズは,特に限定されないが,一例では,化合物半導体ウエハ25表面から見たときの形状が100μm角の正方形である。
【0048】
1−2.エッチング工程
次に,化合物半導体ウエハ25の特定部位25aの周縁部分25bをエッチングして特定部位25aを柱状に加工する。図2(a),(b)を用いて,この工程について説明する。図2(a)は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハ25の製造工程の,特定部位25aが柱状に加工された後の状態を示す平面図であり,図2(b)は,図2(a)のI−I断面図を示す。
【0049】
図2(a),(b)に示すように,この加工は,特定部位25aの周縁部分25bに開口を有するマスク37をコンタクト層35上に形成し,このマスク37を用いて,コンタクト層35,中間層34,第3クラッド層33,エッチングストップ層32,第2クラッド層31,活性層30,第1クラッド層29及びバッファ層28を順次エッチングすることによって行うことができる。これによって,特定部位25aの周辺部分25bに溝が形成され,特定部位25aが柱状になる。
【0050】
マスク37は,公知のフォトリソグラフィー技術を用いて形成することができ,例えば,約20μm幅の正方形の開口を持ったSiO2マスクである。このようなマスクを用いた場合,本工程によって,例えば,約100μm角の正方形である特定部位25aの周縁部分25bに約20μm幅の溝が形成される。
エッチングは,例えば,ドライエッチングとウェットエッチングを併用して行うことができる。マスク37は,エッチング後に除去してもよい。
【0051】
1−3.試料セッティング工程
次に,図3を用いて,試料セッティング工程について説明する。図3は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハ25が試料ホルダー39に固定された状態を示す平面図である。
この工程では,図3に示すように,上記工程でエッチングを行った後の化合物半導体ウエハ25を,試料ホルダー39に固定する。試料ホルダー39は,化合物半導体ウエハ25全体を入れることができ,かつ,化合物半導体ウエハ25を固定することができるように構成されている。試料ホルダー39は,円形の窓39aを有している。窓39aの大きさは,好ましくは、化合物半導体ウエハ25よりも若干小さい程度である。
化合物半導体ウエハ25は,試料ホルダー39の裏側から固定用プレートをバネを介し押さえつけて固定用プレートを固定することによって,試料ホルダー39に固定される。化合物半導体ウエハ25は,窓39aから外に露出している。
【0052】
1−4.一次イオンビーム照射,二次イオン質量分析工程
次に,柱状の特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射し,一次イオンビーム1aが照射された部分から放出される二次イオン4aの質量分析を行う。図4を参照して,この工程について説明する。図4は,本実施形態で使用可能な二次イオン質量分析装置(SIMS)であるが,基本構成は,従来技術の項で図9を用いて説明した通りである。主な相違点は,試料ステージ3a上に固定されるのが,上述の化合物半導体ウエハ25全体が固定された試料ホルダー39である点である。
【0053】
以下,本工程について詳細に説明する。
(1)一次イオンビームの調整
まず,試料ホルダー39をSIMSに導入する前に,従来のイオンビーム調整用標準格子をSIMS内に導入し,これを用いて,一次イオンビーム1aの調整を行う。
【0054】
(2)試料ホルダーのSIMSへの導入
次に,イオンビーム調整用標準格子をSIMSから取り出し,代わりに,化合物半導体ウエハ25全体が固定された試料ホルダー39をSIMS内に導入する。試料ホルダー39をSIMS内に導入する際には,まず,試料ホルダー39を試料導入室17内に載置し,試料導入室17を真空状態し,その後,試料ホルダー16を真空チャンバー3内に導入し,真空チャンバー3内の試料ステージ3aに固定する。
【0055】
(3)一次イオンビーム照射
次に,一次イオンビーム(例えば,ビーム径約30μmφのCs(セシウム)+)1aが,化合物半導体ウエハ25の特定部位25aの何れか1つに照射されるように試料ステージ117を移動させ,対象の特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射し,二次イオン4aを放出させる。例えば,ウエハ25の中央にある特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射する。一次イオンビーム1aは,例えば100μm角の範囲でラスタ走査される。
【0056】
(4)二次イオンの質量分析
放出された二次イオン4aには,例えば+4.5kVの電圧を印加してエネルギーを付与し,前記付与したエネルギー有する二次イオン4aのみを静電型エネルギー分析器9を通過させ,例えばMg,Zn,Al,P,Zn,Ga,As,Inなどからなる分析対象元素の二次イオン4aのみを磁場型質量分析器11を通過させ,通過した二次イオン4aをイオン計数管14にて検出することにより,分析対象元素の二次イオン検出数が得られる。また,分析を継続すると,特定部位25aがスパッタエッチされながら,二次イオン質量分析が行われるので,分析対象元素の二次イオン検出数の深さ方向分布が得られる。さらに,標準試料を用いて求めた分析対象元素のそれぞれについての相対感度係数を用いて上記二次イオン検出数を原子濃度に換算する。これによって,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布が得られる。
【0057】
1−5.複数の特定部位からの二次イオンの質量分析,ウエハ評価工程
次に,5つの特定部位25aのうち,既に質量分析が終わった中央の特定部位25a以外の特定部位25aを1つ選択し,この特定部位25aについて同様に分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。
この工程を繰り返して,5つの特定部位25aの全てについて,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。
全ての特定部位25aの質量分析が終了すると,得られたデータを総合的に判断して,化合物半導体ウエハ25の評価を行う。
【0058】
1−6.評価後の処理
化合物半導体ウエハ25の評価が終了し,評価されたウエハ25が不良品であると判断されると,このウエハ25は,製造ラインには戻されず,廃棄されるか,修復又は再生等の処理が施される。一方,評価されたウエハ25が良品であると判断されると,このウエハ25は,製造ラインに戻される。本実施形態では,ウエハ25は,分割等されていないので,製造ラインに戻すことが容易である。製造ラインに戻す前に,好ましくは,表面のクリーニングが施される。
【0059】
また,本実施形態の評価方法では,全てのウエハ25の評価を行っても,ウエハ25を無駄にすることはないので,本実施形態の評価方法を製造ラインに組み込み,良品のみを次の工程に送るように構成してもよい。
さらに,一次イオンビーム1aの照射によってウエハ25の5つの特定部位25aがスパッタエッチされるので,この領域に凹部が形成される。この凹部は,後のリソグラフィー工程において,アライメントマーカーとして用いることが可能である。
【0060】
2.第2実施形態
次に,本発明の第2実施形態の化合物半導体ウエハの評価方法について説明する。第2実施形態は,第1実施形態に類似しているが,化合物半導体ウエハ25に格子状の溝からなるイオンビーム調整用標準格子41(図5を参照)が形成され,この標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整が行われる点が異なっている。
以下,各工程について説明する。
【0061】
2−1.化合物半導体ウエハ作製工程
まず,第1実施形態と同様の方法で,評価対象の化合物半導体ウエハを作製する。
【0062】
2−2.エッチング工程
次に,ウエハ25のエッチングにより特定部位25aを柱状に加工し,かつイオンビーム調整用標準格子41をウエハ25に形成する。図5(a),(b)を用いて,この工程について説明する。図5(a)は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程の,エッチングにより特定部位25aが柱状に加工され,かつイオンビーム調整用標準格子41がウエハ25に形成された後の状態を示す平面図であり,図5(b)は,図5(a)中のI−I断面図である。
【0063】
図5(a),(b)に示すように,この工程は,特定部位25aの周縁部分25bに開口を有し,かつ標準格子41を形成するための格子状の開口を有するマスク37をコンタクト層35上に形成し,このマスク37を用いて,コンタクト層35,中間層34,第3クラッド層33,エッチングストップ層32,第2クラッド層31,活性層30,第1クラッド層29及びバッファ層28を順次エッチングすることによって行うことができる。これによって,特定部位25aの周辺部分25bに溝が形成されて特定部位25aが柱状になり,それと同時に標準格子41が形成される。
【0064】
マスク37は,公知のフォトリソグラフィー技術を用いて形成することができ,例えば,約20μm幅の正方形の開口と,約5μm幅の格子状の開口を有するSiO2マスクである。このようなマスクを用いた場合,本工程によって,例えば,約100μm角の正方形である特定部位25aの周縁部分25bに約20μm幅の溝が形成され,かつ,約100μm角の正方形の領域に,約5μm幅の溝を約10μmピッチで有する標準格子41がウエハ25に形成される。
エッチングは,例えば,ドライエッチングとウェットエッチングを併用して行うことができる。マスク37は,エッチング後に除去してもよい。
【0065】
ここでは,1回のエッチングで,特定部位25aの加工と,標準格子41の形成を同時に行ったが,例えば,特定部位25aの加工と,標準格子41の形成は,別々のエッチング工程で行ってもよい。例えば,1回目のエッチングで特定部位25aの加工のみを行い,2回目のエッチングで標準格子41の形成のみを行ってもよい。
【0066】
2−3.試料セッティング工程
次に,第1実施形態と同様の方法により,上記工程でエッチングを行った後の化合物半導体ウエハ25を,試料ホルダー39に固定する。
【0067】
2−4.一次イオンビーム照射,二次イオンの質量分析工程
次に,標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整を行い,その後,柱状の特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射し,一次イオンビーム1aが照射された部分から放出される二次イオン4aの質量分析を行う。第1実施形態でも用いた図4を用いて,この工程について説明する。
(1)試料ホルダーのSIMSへの導入
まず,第1実施形態と同様の方法により,化合物半導体ウエハ25全体が固定された試料ホルダー39をSIMS内に導入する。
【0068】
(2)一次イオンビームの調整
次に,一次イオンビーム(例えば,ビーム径約20μmφのCs(セシウム)+)1aが,化合物半導体ウエハ25に形成された標準格子41に照射されるように試料ステージ3aを移動させ,標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整を行う。
本実施形態では,ウエハ25に形成された標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整を行うので,イオンビーム調整用標準格子を別途準備する必要がない。従って,簡便に一次イオンビーム1aの調整を行うことができる。
【0069】
(3)一次イオンビームの照射
次に,第1実施形態と同様の方法により,一次イオンビーム1aを化合物半導体ウエハ25の特定部位25aの何れか1つに照射し,二次イオン4aを放出させる。
【0070】
(4)二次イオンの質量分析
次に,第1実施形態と同様の方法により,放出された二次イオン4aの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。
【0071】
2−5.複数の特定部位からの二次イオンの質量分析,ウエハ評価工程
次に,第1実施形態と同様の方法により,別の特定部位25aについても二次イオン質量分析を行い,5つの特定部位25aの全てについて,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得て,これに基づいて,ウエハ25の評価を行う。
【0072】
2−6.評価後の処理
次に,第1実施形態と同様の方法により,良品であると判断されたウエハ25を製造ラインに戻す等の処理を行う。
【0073】
2−7.実施例
ここで,本実施形態で示した方法(実験条件は,上記説明中で例示したものを採用した。)により実際に二次イオン質量分析を行って得られたMg,Znの原子濃度の深さ方向分布を図6(a)に示す。また,従来技術の項で示した方法により,別途準備したイオンビーム調整用標準格子を用いて一次イオンビーム1aの調整を行い,その後に二次イオン質量分析を行って得られたMg,Znの原子濃度の深さ方向分布を図6(b)に示す。図6(a),(b)では,Mgについての結果を実線で示し,Znについての結果を点線で示した。
【0074】
図6(a),(b)を比較すると,本実施形態の方法では,従来技術の方法に比べて,Mg,Znの原子濃度の検出下限が下がっていることが分かる。これは,従来技術の方法では別途準備したイオンビーム調整用標準格子は、接着剤を用いて形成されているのに対し,本実施形態では,イオンビーム調整用標準格子は,ウエハ25に形成されているので,接着剤を用いていなかったことが原因であると考えられる。接着剤を用いた場合,接着剤から分析の妨げとなるH,C,O原子等の軽元素がSIMS内に拡散することによって分析を妨げることがあるが,接着剤を用いてないと,H,C,O原子等の軽元素の影響を排除することができるからである。
【0075】
3.第3実施形態
次に,本発明の第3実施形態の化合物半導体ウエハの評価方法について説明する。第3実施形態は,第2実施形態に類似しているが,化合物半導体ウエハ25の最上層に母体構成元素としてAlを含む化合物半導体からなるAl含有層43(図7b)参照)が形成されている点等が異なっている。
以下,各工程について説明する。
【0076】
3−1.化合物半導体ウエハ作製工程
まず,評価対象の化合物半導体ウエハを作製する。この工程は,第1及び第2実施形態と同様の方法で実施することができる。但し,本実施形態では,図7(a),(b)に示すように,最上層(すなわち,第1及び第2実施形態での最上層であるコンタクト層35の上)に,母体構成元素としてAlを含む化合物半導体からなるAl含有層43を形成する。図7(a)は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,図7(b)は,図7(a)のI−I断面図である。
【0077】
Al含有層43は,例えば,有機金属気相成長(MOCVD)法によりエピタキシャル成長させることによって形成することができる。Al含有層43は,一例では,AlxGayAs層(x,yは,それぞれ,0以上1以下)である。
【0078】
3−2.エッチング工程
次に,ウエハ25のエッチングにより特定部位25aを柱状に加工し,かつイオンビーム調整用標準格子41をウエハ25に形成する。この工程は,第2実施形態と同様の方法で実施することができる。但し,本実施形態では,ドライエッチング又はウェットエッチングにより,Al含有層43のエッチングも行う。エッチング後の状態を図8(a),(b)に示す。図8(a)は,本実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程の,エッチングにより特定部位25aが柱状に加工され,かつイオンビーム調整用標準格子41が形成された後の状態を示す平面図であり,図8(b)は,図8(a)のI−I断面図である。
【0079】
3−3.試料セッティング工程
次に,第2実施形態と同様の方法により,上記工程でエッチングを行った後の化合物半導体ウエハ25を,試料ホルダー39に固定する。
【0080】
3−4.一次イオンビーム照射,二次イオンの質量分析工程
次に,標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整を行い,その後,柱状の特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射して二次イオン4aを放出させ,放出される二次イオン4aの質量分析を行う。第1実施形態でも用いた図4を用いて,この工程について説明する。
【0081】
(1)試料ホルダーのSIMSへの導入
まず,第2実施形態と同様の方法により,化合物半導体ウエハ25全体が固定された試料ホルダー39をSIMS内に導入する。
【0082】
(2)一次イオンビームの調整
次に,第2実施形態と同様の方法により,一次イオンビーム1aの調整を行う。但し,本実施形態では,最上層にAl含有層43が形成されているので,この調整の際に,Al含有層43がスパッタリングされて,Al含有層43に含まれるAl原子がSIMS内に飛散し,SIMS内の酸素原子をゲッタリングし,SIMS内の酸素原子濃度を低下させる。
【0083】
(3)一次イオンビームの照射
次に,第2実施形態と同様の方法により,一次イオンビーム1aを化合物半導体ウエハ25の特定部位25aの何れか1つに照射し,二次イオン4aを放出させる。但し,本実施形態では,特定部位25aの最上層のAl含有層43に最初に一次イオンビーム1aが照射され,Al含有層43がスパッタリングにより除去された後,その下層の化合物半導体層から二次イオン4aが放出される。なお,Al含有層43がスパッタリングされると,Al含有層43に含まれるAl原子がSIMS内に飛散し,SIMS内の酸素原子をゲッタリングし,SIMS内の酸素原子濃度を低下させる。
【0084】
(4)二次イオンの質量分析
次に,第2実施形態と同様の方法により,放出された二次イオン4aの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。本実施形態では,例えば,放出された二次イオン4aに,−4.5kVの電圧を印加してエネルギーを付与し,H,C,O,Siなどからなる分析対象元素の二次イオンの質量分析を行う。
【0085】
3−5.複数の特定部位からの二次イオンの質量分析,ウエハ評価工程,
次に,第1及び第2実施形態と同様の方法により,別の特定部位25aについても二次イオン質量分析を行い,5つの特定部位25aの全てについて,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得て,これらの結果に基づいて,ウエハ25の評価を行う。
【0086】
3−6.評価後の処理
評価後の処理は,第1及び第2実施形態と基本的に同様の方法により行うことができるが,本実施形態では,ウエハ25の評価後にもはや不要となったAl含有層43をウェットエッチングにより除去してもよい。これによって,ウエハ25の表面の汚れも一緒の除去することができる。
【0087】
3−7.実施例
ここで,第3実施形態で示した方法(実験条件は,上記説明中で例示したものを採用した。)により,Al含有層43を有するウエハ25について実際に二次イオン質量分析を行って得られた酸素(O)の原子濃度の深さ方向分布を図9(a)に示すまた,従来技術の項で示した方法により,Al含有層43を有しないウエハ25について二次イオン質量分析を行って得られた酸素(O)の原子濃度の深さ方向分布を図9(b)に示す。図9(a),(b)中の破線は,GaAs層及びAlGaInP層での酸素原子の検出下限を表している。
【0088】
図9(a),(b)を比較すると,本実施形態の方法の結果である図9(a)では,試料表面近傍以外では酸素の原子濃度は検出下限以下であるのに対し,従来技術の方法の結果である図9(b)では,第3クラッド層33,中間層34,コンタクト層35において,酸素が検出限界以上の原子濃度で検出されている。従来技術の方法では,試料22は,一次イオンビーム1aのラスタ走査領域よりも大きいので,一次イオンビーム1aがラスタ走査領域外表面にも照射されて,照射された部位に存在する表面酸化膜から酸素の二次イオンが放出されたのに対し,本実施形態の方法では,特定部位25aの大きさが一次イオンビーム1aのラスタ走査領域と同程度であり,かつ特定部位25aの周縁部分25bに溝を形成しているため,ラスタ走査領域外表面に存在する表面酸化膜から酸素の二次イオンが放出されなかったためであると考えられる。
【0089】
また,図9(a),(b)を比較すると,図9(a)では,図9(b)よりも,第1クラッド層29,第2クラッド層31及び第3クラッド層33の各層での酸素原子濃度の検出下限が大きく低下している。これは,本実施形態では,一次イオンビーム1aの調整時や,特定部位25aでの二次イオン質量分析の最初の段階で,ウエハ25の最上層のAl含有層43がスパッタリングされて,Al含有層43に含まれるAl原子がSIMS内に飛散し,SIMS内の酸素原子をゲッタリングし,SIMS内の酸素原子濃度を低下させたことに起因すると考えられる。
【0090】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態の化合物半導体ウエハの評価方法は,基本的に第2実施形態に類似しているが,本実施形態が対象する化合物半導体ウエハは,複数の半導体レーザ素子形成単位を有しており,二次イオン質量分析を行う特定部位は,各半導体レーザ素子形成単位に形成されている点が主に異なっている。
以下,本実施形態の各工程について説明する。
【0091】
4−1.化合物半導体ウエハ作製工程
まず,評価対象の化合物半導体ウエハを作製する。この工程は,第1及び第2実施形態と同様の方法で行うことができる。但し,半導体基板26には,直径が,例えば,3インチのものを用いる。また,各層の具体的な組成や膜厚は,例えば,表2及び表3の通りにする。
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
4−2.不純物拡散工程
次に,図10(a),(b)を用いて,本実施形態の不純物拡散工程について説明する。図10(a)は,本実施形態での評価対象である半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,図10(b)は,図10(a)のI−I断面図である。
この工程では,図10(a),(b)に示すように,公知のフォトリソグラフィー技術を用いて,完成後の半導体レーザ素子のレーザ共振器端面近傍領域となるコンタクト層35上に,後工程で形成されるリッジストライプ50(図11(a),(c)を参照)に対して直交する方向にストライプ状の不純物拡散源層46を形成し,さらに,ウエハ全面を覆うように誘電体層47を形成する。
【0094】
不純物拡散源層46は,例えば,幅60μmのZnxy(x,yは1以上)層であり,例えば,1300μmピッチで形成する。誘電体層47は,例えば,Sixy(x,yは1以上)膜である。
【0095】
次に,上記工程後のウエハ25に対してアニール処理を行う。アニール処理は,例えば,窒素雰囲気下で温度510℃,保持時間2時間の条件で行うことができる。この処理によって,不純物拡散源層46からの不純物原子(例:Zn原子)が活性層30にまで拡散し,その結果,レーザ共振器端面(すなわち,リッジストライプ50方向に垂直な端面)近傍領域での活性層30のフォトルミネッセンスのピーク波長が,前記端面から離れた内部領域での活性層30のフォトルミネッセンスのピーク波長より短くなる。
この後,不純物拡散源層46及び誘電体層47を除去する。
【0096】
4−3.エッチング工程
次に,図11(a)〜(c)を用いて,本実施形態の不純物拡散工程について説明する。図11(a)は,本実施形態での評価対象である半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,図11(b)は,図11(a)のI−I断面図であり,図11(c)は,図11(a)のII−II断面図である。
【0097】
この工程では,図11(a)〜(c)に示すように,コンタクト層35上にマスク37を形成し,マスク37を用いてエッチングストップ層32に到達するように,コンタクト層35,中間層34,第3クラッド層33を順次エッチングする。エッチングは,ドライエッチングとウェットエッチングを併用して行うことができる。マスク37は,エッチング後に除去する。
【0098】
マスク37は,図11(a)〜(c)に示すように,リッジストライプ(ストライプ状のリッジ)50,柱状の特定部位25a,格子状の溝からなるイオンビーム調整用標準格子41,テラス部(リッジストライプ横平坦部)49に対応したパターンを有しており,このマスクを用いたエッチングにより,リッジストライプ50,特定部位25a,標準格子41及びテラス部49が形成される。
【0099】
マスク37は,例えば,公知のフォトリソグラフィー技術を用いて,SiO2で形成することができる。
リッジストライプ50は,例えば,約1μm幅のリッジで約200μmピッチで形成され,リッジの横には20μm幅の溝が形成されている。
また,特定部位25aは,例えば,ウエハ25表面から見た時の形状が約80μm角の正方形の領域で,リッジストライプ50の長手方向に約1300μmピッチで形成されている。
特定部位25a及びテラス部49は,一例では,リッジストライプ50の両側に存在している。特定部位25a及びテラス部49が位置する側を区別するときは,一方の側の特定部位25a及びテラス部49をそれぞれ,特定部位R25a,テラス部R49として参照し,他方の側の特定部位25a及びテラス部49をそれぞれ,特定部位L25a,テラス部L49として参照する(図12を参照)。
また,特定部位25a及びテラス部49の周縁部分には,例えば約20μm幅の溝が形成されている。
また,標準格子41は,例えば,前記化合物半導体ウエハ25の中心位置に形成されており,約200μm角の正方形の領域に,約5μm幅の溝が約10μmピッチで形成されている。
【0100】
図11(a),(b)には,上記の「4−2.不純物拡散工程」において,不純物拡散源層46からの不純物が拡散されて形成された不純物拡散領域46aも示している。ウエハ25は,後工程において,図11(b)の点線A−Aの位置でへき開され,へき開面が,レーザ共振器端面になる。このため,不純物拡散領域46aは,完成後の半導体レーザ素子のレーザ共振器端面近傍に位置する。また,特定部位25aは,リッジストライプ50の横に,テラス部49を分断するように,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面(すなわち,レーザ共振器端面)から離れた内部領域に形成される。
【0101】
4−4.誘電体層及び導電体層形成工程
次に,図12,図13(a)〜(c)を用いて,誘電体層及び導電体層形成工程について説明する。図12は,本実施形態での評価対象である半導体ウエハの製造工程を示す,図11(a)の点線のハッチングが施された四角の半導体レーザ素子形成単位51に対応する部位の斜視図である。最終的に,1つの半導体レーザ素子形成単位が1つの半導体レーザ素子になる。1つの半導体レーザ素子形成単位につき,2つの特定部位L25a,R25aが存在していることが分かる。
【0102】
図13(a),(b)は,それぞれ,図12の直線I−I,直線II−IIを含むXY平面の断面図である。図13(c)は,図12の直線III−IIIを含むYZ平面の断面図である。
【0103】
まず,公知のフォトリソグラフィー技術を用いて,レーザ共振器内部領域のリッジストライプ50の側面,レーザ共振器端面近傍領域のリッジストライプ50の上面及び側面,テラス部R49,L49の上面及び側面に,誘電体層53を形成する。従って,誘電体層53は,特定部位R25a,L25aを覆わず,その周辺領域に形成される。この誘電体層53は,電流阻止層として機能する。誘電体層53は,例えば,Sixy(x,yは1以上)で形成することができる。
【0104】
次に,前記化合物半導体ウエハ25表面にAu原子を含む多層膜構造のp型電極54〜56を形成する。p型電極54〜56は,具体的には,特定部位R25a,L25a,標準格子41の領域を除いた前記化合物半導体ウエハ25の表面に,Au原子を含むp型電極54を形成した後,特定部位R25a,L25a,標準格子41及びレーザ共振器端面近傍領域の表面を除いたウエハ表面に,Auメッキ電極55を形成し,さらに,特定部位R25a,L25a,標準格子41を除いたウエハ表面に,Au原子を含むp型電極56を形成することによって形成することができる。
これによって,p型電極54〜56からなる導電体層が,特定部位R25a,L25aを覆わず,その周辺領域に形成される。
【0105】
次に,前記化合物半導体ウエハ25の裏面にn型電極58を形成し,本実施形態の評価対象の半導体ウエハの作製が完了する。
【0106】
4−5.試料セッティング工程
次に,第2実施形態と同様の方法により,上記工程後の化合物半導体ウエハ25を,試料ホルダー39に固定する。
【0107】
4−6.一次イオンビーム照射,二次イオンの質量分析工程
次に,標準格子41を用いて一次イオンビーム1aの調整を行い,その後,特定部位25aに一次イオンビーム1aを照射して二次イオン4aを放出させ,放出される二次イオン4aの質量分析を行う。第1実施形態でも用いた図4を用いて,この工程について説明する。
【0108】
(1)試料ホルダーのSIMSへの導入
まず,第2実施形態と同様の方法により,化合物半導体ウエハ25全体が固定された試料ホルダー39をSIMS内に導入する。
【0109】
(2)一次イオンビームの調整
次に,第2実施形態と同様の方法により,一次イオンビーム1aの調整を行う。
【0110】
(3)一次イオンビームの照射,二次イオンの質量分析(1回目)
次に,第2実施形態と同様の方法により,一次イオンビーム1aを化合物半導体ウエハ25の特定部位R25a,L25aの一方(例えば,特定部位R25a)に照射し,二次イオン4aを放出させる。但し,本実施形態では,特定部位R25a,L25aのサイズに併せて,一次イオンビーム1aを80μm角でラスタ走査する。
【0111】
次に,第2実施形態と同様の方法により,放出された二次イオン4aの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。例えば,放出された二次イオン4aに,−4.5kVの電圧を印加してエネルギーを付与し,Siなどからなる分析対象元素の二次イオンの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。
【0112】
(4)一次イオンビームの照射,二次イオンの質量分析(2回目)
次に,同様の方法で,一次イオンビーム1aを化合物半導体ウエハ25の特定部位R25a,L25aの他方(例えば,特定部位L25a)に照射し,二次イオン4aを放出させる。
次に,同様の方法で,放出された二次イオン4aの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。例えば,放出された二次イオン4aに,+4.5kVの電圧を印加してエネルギーを付与し,Mg,Al,P,Zn,Ga,As,Inなどからなる分析対象元素の二次イオンの質量分析を行い,分析対象元素の原子濃度の深さ方向分布を得る。
【0113】
(5)評価工程
上記(3),(4)により,1つの半導体レーザ素子形成単位に対する評価が完了し,次は,別の半導体レーザ素子形成単位に対する評価を行う。この工程を繰り返すことによって,ウエハ25に存在する複数の半導体レーザ素子形成単位のそれぞれの評価を行うことができる。また,この評価によって得られたデータは,形成される半導体レーザ素子と1対1で対応させることができるので,二次イオン質量分析の結果と,半導体レーザ素子の電気/光学的特性とを直接対比することができる。また,本実施形態では,通常はテラス部49が形成されている領域に特定部位R25a,L25aを形成しており,二次イオン質量分析のためにウエハ上に特別な領域を設ける必要がない。従って,本実施形態によれば,ウエハ25を全く無駄にすることなく,ウエハ25の評価が可能になる。
【0114】
なお,全ての半導体レーザ素子形成単位の評価を行ってもよく,一部の半導体レーザ素子形成単位のみの評価を行ってもよい。二次イオン質量分析が行われると,特定部位R25a,L25aがスパッタエッチングされて除去され,テラス部R49,L49よりも高さが低いクレータ部が形成されるので,一部の半導体レーザ素子形成単位のみの評価を行った場合には,評価後には,特定部位R25a,L25aを有する半導体レーザ素子形成単位と,クレータ部を有する半導体レーザ素子形成単位がウエハ25上に存在することになる。
【0115】
4−7.チップ分割
前記二次イオン質量分析による評価を行った後は,ウエハ25の表面をクリーニングし,例えば60μm幅の不純物拡散領域46aのほぼ中央にスクライブラインを入れてウエハ25を共振器の長さと同じ幅を有する複数のバーに分割し,バーの両側の光出射に反射膜をコーティングし,その後,バーをチップに分割することによって,例えば長さ1300μmの共振器のレーザ共振器端面部に約30μmの窓領域及び電流非注入領域を有する半導体レーザ素子を作製することができる。
一部の半導体レーザ素子形成単位のみの評価を行った場合,本工程により,特定部位R25a,L25aを有する半導体レーザ素子と,クレータ部を有する半導体レーザ素子が形成される。
【0116】
4−8.実施例
本実施形態の方法(実験条件は,上記説明中で例示したものを採用した。)で作製された特定部位R25a,L25aを有する半導体レーザ素子(本実施形態の半導体レーザ素子)について,70℃,CW100mWで信頼性試験を行った。
また,比較のために,図12のテラス部R49,L49を2つに分断する特定部位R25a,L25aを有せず,テラス部R49,L49がリッジストライプ50方向の全体に渡って形成されている点を除いては,図12と同じ構造を有する半導体レーザ素子(従来技術の半導体レーザ素子)についても,同じ条件で信頼性試験を行った。
その結果,本実施形態の半導体レーザ素子と従来技術の半導体レーザ素子は,共に,平均寿命が約5000時間であった。従って,寿命に関して,本実施形態の半導体レーザ素子は,少なくとも,従来の従来技術の半導体レーザ素子と同程度の性能を有することが分かった。
【0117】
次に,本実施形態の半導体レーザ素子と従来技術の半導体レーザ素子について,CW100mWでの発振波長(λ),及びCW100mWでの水平放射角(θ//)を測定した。その結果は,両者ともに660nm,10度で同じであった。
また,水平放射角分布のガウス関数分布からのズレ量(水平放射角分布データとガウス関数の差の最大値と水平放射角分布ピーク値の比)は,従来技術の半導体レーザ素子に比べて,本実施形態の半導体レーザ素子の方が小さくなっていた。これは,本実施形態の半導体レーザ素子では,リッジストライプ50の横にテラス部R49,L49を2つに分断する特定部位R25a,L25aが形成されており,かつこれらの特定部位R25a,L25aには誘電体層53及びp型電極54〜56が形成されていないため,化合物半導体積層体27とリッジストライプ50への応力歪が低減したためであると考えられる。
【0118】
以上の実施形態で示した種々の特徴は,互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合,そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して,単独で又は組み合わせて,本発明に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】(a)は,本発明の第1実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図2】(a)は,本発明の第1実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハが試料ホルダーに固定された状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態で使用可能な二次イオン質量分析装置の構成図である。
【図5】(a)は,本発明の第2実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図6】(a)は,本発明の第2実施形態で示した方法で二次イオン質量分析を行って得られたMg及びZnの原子濃度の深さ方向分布を示し,(b)は,従来技術の項で示した方法で二次イオン質量分析を行って得られたMg及びZnの原子濃度の深さ方向分布を示す。(a),(b)中,実線,点線は,それぞれ,Mg,Znについての結果を示す。
【図7】(a)は,本発明の第3実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図8】(a)は,本発明の第3実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図9】(a)は,本発明の第3実施形態で示した方法で二次イオン質量分析を行って得られた酸素の原子濃度の深さ方向分布を示し,(b)は,従来技術の項で示した方法で二次イオン質量分析を行って得られた酸素の原子濃度の深さ方向分布を示す。
【図10】(a)は,本発明の第4実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b)は,(a)中のI−I断面図である。
【図11】(a)は,本発明の第4実施形態が評価対象とする化合物半導体ウエハの製造工程を示す平面図であり,(b),(c)は,それぞれ,(a)中のI−I断面図,II−II断面図である。
【図12】本実施形態での評価対象である半導体ウエハの製造工程を示す,図11(a)の点線のハッチングが施された四角の領域51に対応する部位の斜視図である。
【図13】(a),(b)は,それぞれ,図12の直線I−I,直線II−IIを含むXY平面の断面図である。(c)は,図12の直線III−IIIを含むYZ平面の断面図である。
【図14】二次イオン質量分析装置の構成図である。
【図15】質量分析される試料をウエハから分離し,イオンビーム調整用標準格子と共に,試料ホルダーに取り付ける工程を示す平面図である。
【符号の説明】
【0120】
1:イオン源 1a:一次イオンビーム 2:一次イオン収束用レンズ 3:真空チャンバー 3a:試料ステージ 4:引出し電極 4a:二次イオン 5:イマージョンレンズ 6:トランスファーレンズ 7:コントラストアパーチャ 8:フィールドアパーチャ 9:静電型エネルギー分析器 10:エネルギースリット 11:磁場型質量分析器 12:プロジェクターレンズ 13:ファラデーカップ 14:イオン計数管 15:イオン像観察用スクリーン 16:試料ホルダー 17:試料導入室 21:化合物半導体ウエハ 21a:特定部位 22:試料 23:イオンビーム調整用標準格子 25:化合物半導体ウエハ 26:半導体基板 26a:オリエンテーションフラット 27:化合物半導体積層体 28:バッファ層 29:第1クラッド層 30:活性層 31:第2クラッド層 32:エッチングストップ層 33:第3クラッド層 34:中間層 35:コンタクト層 37:マスク 39:試料ホルダー 39a:窓 41:イオンビーム調整用標準格子 43:Al含有層 46:不純物拡散源層 47:誘電体層 49:テラス部 50:リッジストライプ 51:半導体レーザ素子形成単位 53:誘電体層 54〜56:p型電極 58:n型電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上方に化合物半導体積層体を有する化合物半導体ウエハの特定部位の周縁部分をエッチングして前記特定部位を柱状に加工し,
この柱状の特定部位に一次イオンビームを照射して二次イオンを放出させ,
放出された二次イオンの質量分析を行い,
前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う工程を含むことを特徴とする化合物半導体ウエハの評価方法。
【請求項2】
前記化合物半導体ウエハは,母体構成元素としてAlを含む化合物半導体からなるAl含有層を最上層に有し,
このAl含有層に一次イオンビームを照射して,前記Al含有層に含まれるAl原子を飛散させる工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次イオンの質量分析の後,前記Al含有層をウェットエッチングにより除去する工程をさらに備える請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定部位を柱状に加工した後であって一次イオンビームの照射前に,前記特定部位の周辺領域に誘電体層及びその上に導電体層を形成する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記導電体層がAu層である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物半導体積層体は,半導体基板側から順に,第1導電型の第1クラッド層,活性層,第2導電型の第2クラッド層を有する請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記二次イオンの質量分析によって得られる特定元素についての二次イオン検出数と,この特定元素の相対感度係数とから,前記特定部位に含まれる前記特定元素の原子濃度を算出する工程をさらに備える請求項1〜6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記特定元素は,H,C又はOである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特定元素は,Siである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記特定元素は,Mg又はZnである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記特定元素は,前記化合物半導体積層体の構成元素である請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物半導体積層体の構成元素は,Al,P,Ga,As又はInである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一次イオンビームは,セシウムイオンからなる請求項1〜12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記一次イオンビームの照射前に,
前記化合物半導体ウエハをエッチングして格子状の溝からなるイオンビーム調整用標準格子を形成し,前記標準格子を利用して前記一次イオンビームの調整を行う工程をさらに備える請求項1〜13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物半導体ウエハは,前記特定部位を複数個有する請求項1〜14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記複数個の特定部位のそれぞれについて二次イオンの質量分析を行い,
前記複数個の特定部位についての前記質量分析の結果に基づいて化合物半導体ウエハの評価を行う請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物半導体ウエハは,複数の半導体レーザ素子形成単位を有し,
前記特定部位は,各半導体レーザ素子形成単位に形成され,
各特定部位について二次イオンの質量分析が行われる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
複数の半導体レーザ素子形成単位は,電流導波路となるリッジストライプと,
前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部とを備え,
前記特定部位は,前記リッジストライプの横に,前記テラス部を分断するように形成される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1導電型の基板上に,第1導電型の第1クラッド層と,
バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層と,
第2導電型の第2クラッド層及び電流導波路となるリッジストライプを有する第2導電型の第3クラッド層と,
前記リッジストライプの側面及びその横の平坦部に誘電体層からなる電流阻止層と,
前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部と,
前記リッジストライプの横に,一次イオンビームの照射によって放出される二次イオンの質量分析に用いられる柱状の特定部位が形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項20】
前記特定部位は,前記テラス部を分断するように,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面から離れた内部領域に形成されている請求項19に記載の素子。
【請求項21】
前記電流阻止層は,前記特定部位を覆わず,その周辺領域に形成される請求項19又は20に記載の素子。
【請求項22】
第1導電型の基板上に,第1導電型の第1クラッド層と,
バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層と,
第2導電型の第2クラッド層及び電流導波路となるリッジストライプを有する第2導電型の第3クラッド層と,
前記リッジストライプの側面及びその横の平坦部に誘電体層からなる電流阻止層と,
前記リッジストライプの横に,前記リッジストライプと同じ高さとなるテラス部とを備え,
前記リッジストライプの横に,前記テラス部より低い高さとなるクレータ部が形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項23】
前記クレータ部は,前記テラス部を分断するように,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面から離れた内部領域に形成されている請求項22に記載の素子。
【請求項24】
前記活性層は,前記リッジストライプの長手方向に垂直な端面近傍領域でのフォトルミネッセンスのピーク波長が,前記端面から離れた内部領域でのフォトルミネッセンスのピーク波長より短い請求項19〜23の何れか1つに記載の素子。
【請求項25】
前記基板はGaAsからなり,
前記第1クラッド層,前記活性層,前記第2クラッド層,前記第3クラッド層及び前記電流阻止層は,AlGaInP系材料からなる請求項19〜24の何れか1つに記載の素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−16728(P2008−16728A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188287(P2006−188287)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】