説明

化学増幅型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】 微細解像性に優れ、レジストパターンのLERおよびSWの少なくとも一方を改善できる化学増幅型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むレジスト組成物であって、沸点が220℃以上の高沸点溶剤成分(X)を含有することを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザ(248nm)が導入され、さらに、ArFエキシマレーザ(193nm)が導入され始めている。そのため、このような微細化に対応できるレジスト材料の開発が急がれている。
磁気ヘッドを構成する磁性膜パターンの形成にもレジストパターンが用いられているが、磁気記録媒体の記録密度向上のために磁気ヘッドの微細化を達成することが要求される。
【0003】
微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性を満たすレジスト材料の1つとして、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤(以下、PAGと略記する)とを有機溶剤に溶解した化学増幅型レジスト組成物が知られている。
ベース樹脂としては、例えばKrFエキシマレーザーリソグラフィーにおいては、KrFエキシマレーザーに対する透明性が高いポリヒドロキシスチレンの水酸基の一部を酸解離性溶解抑制基で保護したポリヒドロキシスチレン樹脂(以下、PHS保護基系樹脂という)等が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。酸解離性溶解抑制基としては、1−エトキシエチル基に代表される鎖状エーテル基又はテトラヒドロピラニル基に代表される環状エーテル基等のいわゆるアセタール基、tert−ブチル基に代表される第3級アルキル基、tert−ブトキシカルボニル基に代表される第3級アルコキシカルボニル基等が主に用いられている。
【0004】
しかし、上述のようなPHS保護基系樹脂は、酸解離性溶解抑制基の解離前後の現像液に対する溶解性の変化が小さく、近年のレジストパターンの微細化の要求を満たすのに不十分である。
これに対し、最近、ベース樹脂として、ヒドロキシスチレンと、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を酸解離性溶解抑制基で保護した(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(以下、アクリル保護基系樹脂という)を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この共重合体は、酸により酸解離性溶解抑制基が解離するとカルボン酸が生じるため、アルカリ現像液に対する溶解性が高く、酸解離性溶解抑制基の解離前後の現像液に対する溶解性の変化が大きく、いっそうの微細化が達成可能である。
【特許文献1】特開平5−249682号公報
【特許文献2】特開平5−113667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、レジストパターンの微細化はますます進み、高解像性の要望がさらに高まるにつれ、レジストパターンの側壁形状(ライン幅)が不均一になるラインエッジラフネス(LER)や、レジストパターンの側壁表面の形状が波形になるスタンディングウェーブ(SW)等のレジストパターン形状の改善が重要な問題となっている。しかしながら、従来の技術では不十分であり改善が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微細解像性に優れ、レジストパターンの形状を改善できる化学増幅型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の化学増幅型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むレジスト組成物であって、沸点が220℃以上の高沸点溶剤成分(X)を含有することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、基板上に、本発明の化学増幅型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的に露光処理を行った後、現像処理を施してレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法を提供する。
【0008】
本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方または両方を示す。また、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を示す。(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とは、(メタ)アクリル酸エステルのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下(メタ)アクリレート構成単位という。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細解像性に優れ、レジストパターンの形状を改善できる化学増幅型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化学増幅型レジスト組成物(以下、単にレジスト組成物ということもある)は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)(以下、(A)成分ということもある)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分ということもある)とを含む化学増幅型レジスト組成物であり、必須成分として沸点が220℃以上の高沸点溶剤(X)(以下、(X)成分ということもある)を含有する。
本発明において、(A)成分として、通常、化学増幅型レジスト用のベース樹脂として用いられている、一種又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂又はアルカリ可溶性となり得る樹脂を使用することができる。前者の場合はいわゆるネガ型、後者の場合はいわゆるポジ型のレジスト組成物である。本発明のレジスト組成物は、好ましくはポジ型である。
【0011】
ネガ型の場合、レジスト組成物には、(B)成分と共に架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が作用し、(A)成分と架橋剤間で架橋が起こり、アルカリ不溶性又は難溶性となる。前記架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基又はアルコキシメチル基を有するメラミン、尿素又はグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤が用いられる。
ポジ型の場合は、(A)成分はいわゆる酸解離性溶解抑制基を有するアルカリ不溶性又は難溶性のものであり、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が前記酸解離性溶解抑制基を解離させることにより、(A)成分のアルカリ可溶性が増大する。
【0012】
・高沸点溶剤成分(X)
(X)成分としては、(A)成分及び(B)成分を溶解させる溶剤であって、沸点が220℃以上である液体が用いられる。(X)成分の沸点は、好ましくは230℃以上であり、より好ましくは250℃以上である。(X)成分の沸点が220℃以上であれば、(X)成分を添加したことによる本発明にかかる効果が十分に得られる。また(X)成分は常温常圧で液体であればよく、沸点の上限は特に制限されないが、好ましくは350℃以下である。
高沸点溶剤成分の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、オクタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、サリチル酸イソアミル、サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ベンジルエーテル等が挙げられる。
(X)成分は、レジスト組成物を構成する成分に与える影響が小さいものが好ましい。例えば、酸性の官能基を有さないもの、塩基性の官能基を有さないもの、不飽和結合を有さないもの等がより好ましい。特に好ましくはサリチル酸ベンジルが用いられる。
本発明のレジスト組成物における(X)成分の含有量は、樹脂成分(A)の100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、より好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは3〜15質量部である。上記範囲の下限値以上とすることにより(X)成分を添加したことによる効果が十分に得られる。また上限値以下とすることによりトレンチパターンの底部においての抜け性が向上する。
【0013】
・樹脂成分(A)
(A)成分は、ポジ型、ネガ型のいずれの場合にも特に限定されず、公知の樹脂成分を適宜用いることができる。
ポジ型のレジスト組成物の場合、以下の単位の組み合わせを有する樹脂が、レジストパターンの解像性、磁気ヘッド用途に有用なテーパー形状の形成しやすさ、焦点深度幅に優れることから、好ましい。
(a1)ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位(以下、(a1)単位という)。
(a2)スチレンから誘導される構成単位(以下、(a2)単位という)。
(a3)酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、(a3)単位という)。
(A)成分が上記(a1)単位と(a2)単位と(a3)単位、または上記(a1)単位と(a3)単位を有していると、イオンミリング耐性、及び耐熱性に優れる点でも好ましい。
【0014】
(a1)単位としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のα−アルキルヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレンのエチレン性二重結合が開裂して誘導される構成単位である。これらのうち、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレンから誘導される単位が特に好ましい。
(a2)単位は任意に含有させることができる。(a2)単位としては、例えば、スチレンや、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等ハロゲン原子やアルキル基等の置換基を有するスチレンのエチレン性二重結合が開裂して誘導される構成単位である。これらのうち、スチレンから誘導される単位が特に好ましい。
【0015】
(a3)単位は、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
(a3)単位における酸解離性溶解抑制基は、露光前は(A)成分全体をアルカリ不溶またはアルカリ難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、露光後は(B)成分から発生した酸の作用により解離し、この(A)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば特に限定せずに用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基と、環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、第3級アルコキシカルボニルアルキル基、又は鎖状若しくは環状アルコキシアルキル基などが広く知られている。酸解離性溶解抑制基としては、これらのうち、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基などの分岐状、単環、多環式状の第三級アルキル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基などの鎖状アルコキシアルキル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などの環状アルコキシアルキル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−ブトキシカルボニルエチル基などの第3級アルコキシカルボニルアルキル基が挙げられ、これらの中でも第3級アルキル基が好ましく、特に、tert−ブチル基が好ましい。
【0016】
(A)成分が(a1)単位と(a3)単位とからなる場合、(A)成分を構成する構成単位の合計に対して、(a1)単位が50〜95モル%、好ましくは50〜80モル%、より好ましくは60〜70モル%であると、アルカリ現像性に優れ、好ましい。
(A)成分を構成する構成単位の合計に対して、(a3)単位が5〜50モル%、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは30〜40モル%であると、解像性に優れ、好ましい。
【0017】
(A)成分が、(a1)単位、(a2)単位、および(a3)単位からなる場合、(A)成分を構成する構成単位の合計に対して、(a1)単位が50〜80モル%、好ましくは60〜70モル%であると、アルカリ現像性に優れ、好ましい。
(A)成分を構成する構成単位の合計に対して、(a2)単位が35モル%以下、好ましくは5〜35モル%、好ましくは8〜30モル%であると、膜減りが抑えられパターン形状が優れ、好ましい。
(A)成分を構成する構成単位の合計に対して、(a3)単位が5〜40モル%、好ましくは8〜25モル%であると、解像性に優れ、好ましい。
【0018】
かかる(a1)単位、(a2)単位、(a3)単位を有する(A)成分は、例えば、構単位(a1)に相当するモノマー、構成単位(a2)に相当するモノマー、構成単位(a3)の酸解離性溶解抑制基を導入する前の状態の構成単位に相当するモノマーを、ラジカル重合法等の常法により共重合させて前駆体としての共重合体を得た後、構成単位(a3)の水酸基を周知の手法により酸解離性溶解抑制基で保護する方法により製造することができる。
または、予め、酸解離性溶解抑制基が導入された構成単位(a3)に相当するモノマーを調製し、このモノマーと構成単位(a1)に相当するモノマー、構成単位(a2)に相当するモノマーとを常法により共重合させる方法によっても製造することができる。
また、(a1)単位と(a2)単位からなる共重合体と、(a1)単位と(a3)単位からなる共重合体を混合して、(a1)単位と(a2)単位と(a3)単位を有する樹脂成分(A)を調製してもよい。
また(a1)単位と(a3)単位とからなる(A)成分は、例えば、構成単位(a1)に相当するモノマー、および構成単位(a3)に相当するモノマーを常法により共重合させて調製することができる。構成単位(a3)への酸解離性溶解抑制基の導入は、共重合の前でもよく、後でもよい。
【0019】
(A)成分の質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算、以下同様)は特に限定するものではないが、3000〜50000、さらに好ましくは4000〜30000とされる。この範囲よりも大きいとレジスト溶剤への溶解性が悪くなり、小さいとレジストパターンが膜減るおそれがある。
【0020】
・酸発生剤(B)
(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0021】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0022】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0023】
【化1】

【0024】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、中でも(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
【0025】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0026】
・有機溶剤
本発明のレジスト組成物は、(A)成分、(B)成分、(X)成分および後述する任意の各成分を、有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0027】
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましいが、その配合比は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは9:1〜1:9、より好ましくは8:2〜2:8の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは8:2〜2:8であり、より好ましくは7:3〜3:7である。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内とされる。
【0028】
・含窒素有機化合物(C)(以下、(C)成分ということもある。)
本発明のレジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(C)(以下、(C)成分という)を配合させることができる。
この(C)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような第3級アルカノールアミンやトリペンチルアミンのような第3級アミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0029】
・酸成分(D)(以下、(D)成分ということもある。)
前記(C)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体からなる酸成分(D)(以下、(D)成分という)を含有させることができる。なお、(C)成分と(D)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
【0030】
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(D)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0031】
・その他の任意成分
本発明のレジスト組成物に、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0032】
また、所望により、光吸収能を有する染料等の化合物を含有させてもよい。特に、レジストパターンの側壁を底面に対して垂直ではなく、斜めのテーパー形状に形成する場合には、露光に用いる光の波長帯域において光吸収能を有する化合物(E)(以下、(E)成分ということもある)を含有させることが好ましい。
例えばKrFエキシマレーザの波長である248nmに吸収能を有する化合物(E)として、染料のような低分子量化合物や、樹脂のような高分子量化合物等が挙げられる。より具体的には、以下のような物質を例示できる。
(e1)アントラセン環を部分構造として有する物質。(以下、(e1)という。)。
(e2)ベンゼン環を部分構造として有する物質(以下、(e2)という。)。
(e3)ナフタレン環を部分構造として有する物質。(以下、(e3)という。)。
(e4)ビスフェニルを部分構造として有する物質。(以下、(e4)という。)。
【0033】
(e1)は、アントラセン環を部分構造として有する物質であればよい。かかる物質としては、例えば、アントラセンメタノール、アントラセンエタノール、アントラセンカルボン酸、アントラセン、メチルアントラセン、ジメチルアントラセン、ヒドロキシアントラセン等のような染料が挙げられる。
これらのうち、アントラセンメタノールが特に好ましい。これは、レジストパターンの側壁の傾斜角度(テーパー角)を容易にコントロールできるからである。
【0034】
(e2)は、ベンゼン環を部分構造として有する物質であればよい。かかる物質としては、例えば、ベンゼン、メチルベンゼンやエチルベンゼン等のアルキルベンゼン、ベンジルアルコール、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸、サリチル酸、アニソールのような染料等、ノボラック樹脂のような樹脂等が挙げられる。
【0035】
前記ノボラック樹脂は、例えばフェノール性水酸基を持つ芳香族物質(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。
この際、使用されるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
またアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸等が使用される。
ノボラック樹脂を用いる場合、その質量平均分子量は、1000〜30000であることが好ましい。
【0036】
(e3)は、ナフタレン環を部分構造として有する物質であればよい。かかる物質としては、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール、ナフタレンジオール、ナフタレントリオール等のような染料等が挙げられる。
(e4)は、ビスフェニルを部分構造として有する物質であればよい。かかる物質としては、例えば、ビフェニル、ジメチルビフェニル、ビフェニルオール、ビフェニルジオール、ビフェニルテトラオール等のような染料等が挙げられる。
【0037】
(E)成分として、1種の物質を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、(e1)は、アントラセン環を部分構造として有する物質が光の透過率を適度に制御する上で好ましく、中でもアントラセンメタノールが感度マージン、焦点深度幅に優れるため特に好ましい。
(E)成分の使用量は、特に制限されないが、これによってレジストパターンのテーパー角を制御することができる。したがって、(E)成分の光吸収能に応じて、所望のテーパー形状を形成するのに好適な光透過率が得られるように、(E)成分の使用量を適宜設定するのが好ましい。
例えば(E)成分の使用量は(A)成分100質量部に対し0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜8.0質量部の範囲であることが好ましい。(E)成分の使用量が(A)成分100質量部に対して20質量部を超えると、良好なレジストパターンが形成できないおそれがある。
【0038】
・レジストパターン形成方法
本発明のレジスト組成物は、例えば従来のポジ型レジスト組成物またはネガ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に適用することができる。
具体的には、まず基板上に、溶液状に調製された本発明のレジスト組成物を、スピンナーなどで塗布し、プレベークを行ってレジスト膜を形成する。基板は特に制限はなく、各種基板、例えばシリコンウェーハ、有機系又は無機系の反射防止膜が設けられたシリコンウェーハ、磁性膜が形成されたシリコンウェーハ、ガラス基板などのいずれでもよい。
【0039】
次いで、レジスト膜に対して選択的に露光処理を行う。露光処理には、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、Fエキシマレーザ光、EUV(Extreme ultraviolet 極端紫外光)、電子線(EB)、軟X線、X線などを用いることができ、所望のマスクパターンを介しての照射、または直接描画を行う。好ましくはKrFエキシマレーザーが用いられるが、電子線レジストやEUV(極端紫外光)も好ましい。
続いて、露光後加熱処理(ポストエクスポ−ジャーベーク、以下、PEBということもある。)を行う。
PEB処理後、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて現像処理し、水洗、乾燥等の必要に応じた処理を施すことにより、レジストパターンが得られる。
現像液は、特に限定されず、一般に用いられるアルカリ性水溶液等を用いることができる。例えば、濃度2.38質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の水溶液が好適に用いられる。
【0040】
プレベークにおける加熱温度および露光後加熱(PEB)における加熱温度は、例えば70〜160℃、好ましくは100〜150℃の温度条件下、40〜180秒間、好ましくは60〜90秒間の範囲でそれぞれ好ましく設定される。
なお、場合によっては、上記アルカリ現像後ポストベーク工程を含んでもよい。
【0041】
・磁気ヘッドの製造
本発明のレジスト組成物は、微細なレジストパターンの形成に好適であるので、磁気ヘッド製造用として好ましく用いることができる。具体的には、被エッチング膜が磁性膜であるイオン性エッチング用のレジストパターン形成、例えば磁気ヘッドのリード部を製造するためのレジストパターン形成に好適に用いることができる。イオン性エッチングとしては、イオンミリング等の異方性エッチングが挙げられる。
あるいは、メッキにより磁性膜を形成する際のフレームとして用いられるレジストパターン形成、例えば磁気ヘッドのライト部を製造するためのレジストパターン形成に好適に用いることができる。メッキ法としては、公知のメッキ法である電解メッキ法を用いて行うことができる。
【0042】
以下、本発明のレジスト組成物を磁気ヘッドのリード部の製造に用いる実施形態の例について説明する。
まず、図1(a)に示すように、シリコンウェーハ等の基板1上にスパッタ装置によって、磁性膜2’を形成する。該磁性膜2’に用いられる磁性体としては、Ni,Co,Cr,Pt等の元素を含むものが用いられる。磁性膜2’上の下地膜3’を形成する材料は特に限定されない。その中で、アルカリ可溶性の材料として例えばシプレー社製のポリメチルグルタルイミド(polymethylglutarimide 以下PMGIと略す)からなる塗布液等が挙げられる。アルカリ不溶性の材料としては、従来、下層反射防止膜(BARC)として用いられている材料からなる塗布液や、露光後の現像の際に用いられるアルカリ現像液に対して不溶性であり、且つ従来のドライエッチング法でエッチング可能な有機膜の材料(ノボラック樹脂等)等を用いることができる。該材料からなる塗布液をスピンコーターによって塗布し、乾燥して下地膜3’を形成する。
次いで、本発明にかかるポジ型のレジスト組成物の溶液を、下層膜3’上にスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)することによってレジスト膜4’を形成する。プレベーク条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は70〜150℃で、好ましくは80〜140℃で、0.5〜60分間程度である。形成されるレジスト膜4’の膜厚は、テーパー形状の制御の観点から0.05〜5.0μmであることが好ましく、0.1〜3.0μmとされることが最も好ましい。
次いで、レジスト膜4’に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行う。
【0043】
露光工程を終えた後、PEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理すると、レジスト膜4’の所定の範囲(露光部)が現像されて、図1(b)に示したように、テーパー形状のレジストパターン(孤立パターン)4が得られる。このとき、レジスト膜4’のアルカリ現像された部分の下に位置する下地膜3’はアルカリ現像液によって一緒に除去されるが、該下地膜3’は、レジスト膜4’よりアルカリ可溶性が高いため、アルカリ現像後、レジストパターン4が形成された部分の下に位置する下地膜3’は、当該パターン4の中心部付近のみ残存する。その結果、図1(b)に示したような幅の狭い下地膜3’のパターン3と、これより幅広でありテーパー形状のレジスト膜4’のレジストパターン4からなる断面羽子板状のリフトオフ用のパターン5が得られる。
また、アルカリ不溶性の下地膜を用いた場合は、レジストパターン4をマスクとして、下地膜3’をオーバーエッチングすることで、図1(b)に示した様な幅の狭い下地膜3’のパターン(下地膜パターン)3と、これより幅広のレジスト膜4’のレジストパターン4からなる断面羽子板状のリフトオフ用のパターン5が得られる。
【0044】
次に、上記のようにして得られたテーパー形状のレジストパターンを用いて、磁気ヘッドのリード部を製造する。
すなわち、図1(b)に示したテーパー形状のレジストパターン4と下層膜パターン3とからなるパターン5をマスクとして、イオンミリングを行うと、図1(c)に示したように、パターン5の周辺の磁性膜2’がエッチングされ、パターン5の下部に磁性膜2が残り、磁性膜パターン2が矩形に近い形状にプリントされる。この際のイオンミリングは従来公知の方法を適用できる。例えば、日立製作所社製のイオンビームミリング装置IMLシリーズなどにより行うことができる。
【0045】
さらにスパッタリングを行うと、図1(d)に示したように、パターン5の上と、磁性膜パターン2の周囲の基板1の上とに電極膜6が形成される。この際のスパッタリングは従来公知の方法を適用できる。例えば、日立製作所社製のスパッタリング装置ISM−2200やISP−1801などにより行うことができる。この後に、アルカリ可溶性の下地膜を用いた場合は、再度アルカリ現像液を用いて下層膜パターン3を溶解してパターン5を除去する。アルカリ不溶性の下地膜を用いた場合は、磁性膜に悪影響を与えない方法であれば特に限定されないが、剥離液や酸素プラズマアッシングなどの公知の方法を用いることができる。これにより、図1(e)に示すように、基板1と、その上に形成された矩形に近い形状の磁性膜パターン2と、その周囲に形成された電極膜6とからなる磁気ヘッドのリード部20が製造される。
【0046】
以下、本発明のレジスト組成物を磁気ヘッドのライト部の製造に用いる実施形態の例について説明する。
まず、図2(a)に示したように、最上層としてメッキシード層11が設けられた基材の、該メッキシード層11上に、レジスト膜12’を形成する。
基材は、例えばシリコンウェーハ等の基板1上に、リード部をなす磁性膜パターン、平坦化膜、シールド層などの層が必要に応じて積層され、最上層としてメッキシード層11が形成されたものを用いることができる。メッキシード層11は、電解メッキ法において電極の役割を果たす層であり、導電性を有する材料で構成される。メッキシード層11の材料としては、例えばFe、Co、Ni等から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。メッキシード層11には、通常、メッキにより形成される膜成分と同じ成分を含有する材料が用いられる。
【0047】
レジスト膜12’は、本発明にかかるポジ型のレジスト組成物の溶液を、メッキシード層11上にスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)することによって形成することができる。プレベーク条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は70〜150℃で、好ましくは80〜140℃で、0.5〜60分間程度である。形成されるレジスト膜12’の膜厚は、得ようとする磁性膜パターン13の厚さ(高さ)に応じて決められるが、好ましくは0.1〜3.0μmであり、0.2〜2.0μmであることが最も好ましい。
次いで、レジスト膜12’に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行う。
露光工程を終えた後、PEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理すると、レジスト膜12’の所定の範囲(露光部)が現像されて、図2(b)に示したように、テーパー形状の側壁を有するレジストパターン12がトレンチパターンとして得られる。
該断面におけるレジストパターン12間の距離は特に限定されないが、例えば、レジストパターン12の底面位置での距離D1が例えば250nm以下、好ましくは30〜200nm程度とされる。
【0048】
次に、上記のようにして得られたテーパー形状の側壁を有するレジストパターン12を用いて、磁気ヘッドのライト部を製造する。
すなわち図2(c)に示したように、テーパー形状の側壁を有するレジストパターン12で囲まれた凹部内に対して、電解メッキを施して、磁性膜13’を形成する。
該磁性膜13’に用いられる磁性体としては、Ni,Co,Cr,Pt等の元素を含むものが用いられる。
電解メッキは、常法により行うことができる。例えば、メッキシード層11に通電した状態で、磁性体イオンを含む電解液に浸漬させる方法を用いることができる。
磁性膜13’を形成した後、レジストパターン12を除去することにより、図2(d)に示すように、逆テーパ形状の磁性膜パターン13が形成された磁気ヘッドのライト部21が製造される。レジストパターン12を除去する方法としては、例えば、磁性膜に悪影響を与えない方法であれば特に限定されないが、剥離液や酸素プラズマアッシングなどの公知の方法を用いることができる。
このように、本発明にかかるポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンをフレームとして磁性膜を形成すると、良好な逆テーパー形状の磁性膜パターンを形成することができる。
【0049】
なお上記、磁気ヘッドのリード部/ライト部の説明において、テーパー形状/逆テーパー形状のレジストパターンを一例として説明しているが、これら以外の通常のレジストパターンを用いても同様に行うことができる。
【0050】
また、本発明のレジスト組成物は、磁気ヘッドの製造以外にも、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の製造に好適に用いることができる。
【0051】
本発明のレジスト組成物は、微細解像性に優れるとともに、レジストパターンのラインエッジラフネス(LER)やスタンディングウェーブ(SW)等のレジストパターン形状を改善することができる。これは、レジスト組成物に添加されている高沸点溶剤成分(X)が、PAB工程およびPEB工程といった加熱工程を経てもレジスト膜中に残存し易く、このようにレジスト膜中に(X)成分が残存することによって酸発生剤成分(B)から発生する酸の拡散状態が影響を受け、露光部と未露光部の界面におけるコントラストが適度に抑えられるためと考えられる。
したがって、本発明のレジスト組成物を用いることにより、微細なレジストパターンであっても、解像性が良好であるとともに、LER特性やSW特性等の形状特性に優れたレジストパターンを形成することができる。
したがって、本発明のレジスト組成物は、特に高度の微細加工が要求される磁気ヘッドの製造工程におけるレジストパターン形成に好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記表1に示す組成で化学増幅型ポジ型レジスト組成物を調製した。尚、( )内の数値の単位は、特に断りがない限り「質量部」を意味する。
【0053】
【表1】

【0054】
(A)成分としては、下記[化2]に示す3種の構成単位からなる樹脂100質量部を用いた。[化2]において各構成単位p、q、rの比は、p=63モル%、q=26モル%、r=11モル%とした。(A)成分の質量平均分子量は10000であった。
【0055】
【化2】

【0056】
(B)成分、活性剤、および染料は下記の材料を用いた。
TPS−TF:トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
TPS−NF:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
R−08:界面活性剤R−08(製品名:大日本インキ化学工業(株)製)
染料1:9−ヒドロキシメチルアントラセン
【0057】
上記で得られたポジ型レジスト組成物を用いて、下記表2に示す実装条件でレジストパターンを形成した。実施例1及び比較例1では、図2(b)に示すようなテーパー形状の側壁を有するトレンチパターンを形成した。実施例2及び比較例2では通常のトレンチパターンを形成した。その結果を表3に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
表2における光源(露光装置)および現像液は下記の通りである。
KrF:KrF露光装置FPA−3000EX3(Canon社製、NA(開口数)=0.55、σ=0.71)
EB:電子線描画装置(製品名:HL−800D、70kV加速電圧、日立社製)
NMD−3:2.38%TMAH(東京応化工業株式会社製)
【0060】
【表3】

【0061】
表3における評価項目は下記の通りである。
<解像性>
限界解像度を意味する。
<LER>
100nmのトレンチパターンのLERを示す尺度である3σを求めた。なお、3σは、側長SEM(日立製作所社製,商品名「S−9220」)により、試料のレジストパターンの幅を32箇所測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)である。この3σは、その値が小さいほどラフネスが小さく、均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。
<SW>
断面SEM(日立製作所社製,商品名「S−4500」)により、断面形状を観察した。
○:スタンディングウェーブが抑制されていた。
×:スタンディングウェーブが発生しており、断面の凹凸が激しかった。
【0062】
実施例1ではスタンディングウェーブが抑制されているのに対して、比較例1ではスタンディングウェーブが発生しており、断面の凹凸が激しかった。このことから、LERについては測定は行っていないが、断面の凹凸が激しい比較例1のLERの値が悪いことは明らかである。
実施例2は、比較例2よりも3σの値が小さく、LERが改善されていた。また、50nmという超微細なトレンチパターンにおいて、実施例2のトレンチパターン底部の抜け性が比較例2よりも向上していた。尚、実施例2及び比較例2ではSWの評価を行っていない。これは、露光光源が電子線であるため(光リソグラフィーではないため)、SWが発生しないからである。しかしながら、上記の結果の通り、高沸点溶剤を添加することでLERを低減できることが確認された。
以上のことより、光リソグラフィー及び電子線リソグラフィーにおいて発生するレジストパターン形状の問題を解決できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明にかかるレジスト組成物を用いて、イオン性エッチング法により磁性膜パターンを形成する工程を説明するための模式図である。
【図2】本発明にかかるレジスト組成物を用いて、メッキ法により磁性膜パターンを形成する工程を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・基板、2’、13’・・磁性膜、2、13・・磁性膜パターン、3・・下層膜、
4’、12’・・レジスト膜、4、12・・レジストパターン、6・・電極膜、
20・・磁気ヘッド(リード部)、21・・磁気ヘッド(ライト部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むレジスト組成物であって、沸点が220℃以上の高沸点溶剤成分(X)を含有することを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分(A)が、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位(a1)、及び酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することを特徴とする請求項1記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の全構成単位に対して前記構成単位(a1)の含有量が50〜95モル%、前記構成単位(a3)の含有量が5〜50モル%である請求項2に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(A)が、さらにスチレンから誘導される構成単位(a2)を有することを特徴とする請求項2または3記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の全構成単位に対して前記構成単位(a1)の含有量が50〜80モル%、前記構成単位(a2)の含有量が35モル%以下、前記構成単位(a3)の含有量が5〜40モル%である請求項4に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項6】
前記高沸点溶剤成分(X)がサリチル酸ベンジルを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項7】
さらに含窒素有機化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項8】
磁気ヘッド製造用である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項9】
基板上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的に露光処理を行った後、現像処理を施してレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターン形成方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−18017(P2006−18017A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195673(P2004−195673)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】