説明

化学機械平坦化用制動性ポリウレタンバッドを製造するための系及び方法

硬化剤の存在下、ウレタンプレポリマーを重合させることによって形成された固体生成物は、約38%未満であるベイショア反発力を有する。好ましくは、該ウレタンプレポリマーは脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーであり、該硬化剤は芳香族ジアミン及びトリオールを含有する。微孔質ポリウレタン材料を形成するために、該ウレタンプレポリマーは、界面活性剤の存在下、不活性ガスで泡立てられ、次いで、硬化される。該ポリウレタンを用いて、高制動性化学機械平坦化用パッドであって、低反発力を有し、不規則エネルギーを分散させることができ、且つ、研磨加工を安定させて、改善された均一性及びより小さいわん状変形を生じるパッドを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化学機械研磨又はCMPとしても知られている化学機械平坦化(chemical mechanical planarization)は、製造過程の半導体ウエハの上面、若しくは後続の工程に備えて他の基体の上面を平坦化するために用いられる技術、又は材料の位置に応じて該材料を選択的に除去するための技術である。その技術では、研磨パッドと併用して、腐食性及び研磨性を有し得るスラリーが用いられる。
一般に、CMP(化学機械平坦化)は、研磨パッドと加工中の製品との両方の周期運動を含む動的過程(dynamic process)である。研磨周期の間、エネルギーは、研磨パッドへ伝達される。このエネルギーの一部は、熱としてパッドの内部に分散され、その後、残余部分は、研磨周期の間、パッド内に貯えられ、次いで弾性エネルギーとして放出される。後者は、金属外観のわん状変形(dishing)現象、及び酸化物のエロージョン現象に寄与するものと思われる。
【背景技術】
【0002】
制動(damping)効果を定量的に記述するための1つの試みでは、エネルギー損失因子(KEL)と呼ばれるパラメータが用いられてきた。KELは、各々の変形周期において喪失される単位体積当りのエネルギーと定義される。一般に、パッドのためのKEL値が高ければ高いほど、弾性反発力は小さく、且つ、観察されるわん状変形は小さい。
KEL(エネルギー損失因子)値を増大させるために、研磨パッドを、より軟質にすることができる。しかし、このアプローチは、パッドの剛性を低下させる傾向もある。剛性が低下すれば、結果的に、平坦化効率が低下し、且つ、デバイスの角の周辺におけるパッドの形状(conformation)に起因してわん状変形が増大する。
【0003】
研磨パッドのKEL(エネルギー損失因子)値を増大させるもう1つのアプローチは、剛性を低下させることなく、KELが増大するような方法で、パッドの物理組成を変えることである。これは、研磨パッドの硬質部分(hard segments)(若しくは、硬質相)及び柔軟性部分(soft segments)(若しくは、柔軟性相)の組成、並びに/又は、パッドの[硬質部分(若しくは、硬質相)]対[柔軟性部分(若しくは、柔軟性相)]の比を変えることによって達成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,514,301B号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】米国試験材料協会(ASTM)基準D−2632
【非特許文献2】ASTMD2240
【非特許文献3】ASTMD1331−89
【非特許文献4】ASTMC1173−53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品の向上に取り組むため、増大する複合的要求が、半導体タイプ、光学タイプ、磁気タイプ又は他のタイプの基板(substrates)を平坦化するために利用されるCPM(化学機械平坦化)加工及びCPM装置に提起されている。優れた除去速度と、優れたウエハ内(WIW)及びダイ内(WID)の均一性と、小さいわん状変形(dishing)及び/又はエロージョンと、減少した引っかき傷(scratching)と、より少ない調整要件と、長期に渡るパッド寿命とを提供するCPM(化学機械平坦化用)パッドを得るための必要性が存在し続けている。
低反発力(low rebound)を有するCPMパッドは、周期的変形が起こる間、比較的大きな量のエネルギーを吸収する傾向があり、研磨工程の間、より小さいわん状変形を引き起こし、且つ、より優れたWID均一性を生じるということが見出だされた。剛性は、WID均一性及び長期に渡るパッド寿命を得るために考慮すべき重要なことである。
【0007】
本発明は、特異的性質(とりわけ、高い制動性能(damping performance))を有するCMP(化学機械平坦化用)パッド材料を製造することに関する。これらの性質は、パッドを製造するための配合と方法とを変えることによって得られる。ガスによる泡立てのようなプロセスと共に、出発材料及び材料の特定の組合せを選択すれば、ポリマー材料の形態に影響を及ぼし、結果的に、特異的性質を有し、且つ、CMPパッドに好都合である最終生成物を生じることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1つの態様において、微孔質ポリウレタン材料を製造するための系(system)と方法とに向けられている。
該系は、ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含有する。該ウレタンプレポリマー及び該硬化剤は、重合条件下で組み合わされたとき、38%未満であるベイショア反発力(Bayshore rebound)を有する固体生成物を形成する。
前記方法は、ウレタンプレポリマーを泡立たせて、泡を形成する工程と、硬化剤の存在下、前記泡を硬化させ、そうさせることによって、前記微孔質ポリウレタンを生成する工程とを含み、該硬化剤の存在下、該ウレタンプレポリマーを重合させることによって形成された固体生成物が38%未満であるベイショア反発力を有する。
【0009】
H12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)又はHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のような脂肪族イソシアネートを含有するポリエーテルウレタンプレポリマーと、芳香族ジアミンを含有する硬化剤との組合せである系は、高度に制動性のポリウレタン材料を形成する傾向があることが見出だされた。トリオールを、例えば芳香族ジアミンに添加する工程は、前記のプレポリマー及び硬化剤を重合させることによって形成される固体材料のベイショア反発力を減少させる傾向があることが更に見出だされた。
本発明の好ましい具体化において、CMP(化学機械平坦化用)パッドを製造するための系は、不活性ガス、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマー、及びポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤を含有する泡(froth)と、芳香族ジアミンを含有する硬化剤とを含有する。該系は、トリオールを更に含有する。具体例において、該トリオールは硬化剤中に存在する。好ましくは、トリオール濃度は、より高い制動性能を得るために最適化される。
【0010】
本発明のもう1つの具体化において、CMP(化学機械平坦化用)パッドを製造する方法は、ポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤の存在下、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーを不活性ガスで泡立たせて、泡を形成する工程と、芳香族ジアミン及びトリオールの存在下、前記泡を硬化させる工程と、を含む。
本発明は、従来の、及び高度の電子部品、光学部品又は磁気部品を製造する場合に用いられるCMPパッドに関して提起される要望に取り組み、多くの利点を有する。本発明の高度に制動性のポリマー材料は、高いエネルギー散逸性を有し、且つ、研磨界面において、不規則な制動エネルギー及び振動エネルギーを吸収して、より良い均一性を生じる。この材料から作られたCMPパッドは、優れたWIW及びWIDの均一性と、円滑な研磨性能と、小さいわん状変形及び/又は浸食(エロージョン)とを提供する。それらパッドは、一般に、高度に安定した硬度又は剛性を有し、優れた平坦化性能と長期のパッド寿命とを提供する。
【0011】
材料特性を試験し比較する工程は、追加の工程段階(例えば、泡立たせる工程)及び/又は成分(例えば界面活性剤)を必要とする微孔質試料を用いることよりむしろ、重合条件下、ウレタンプレポリマーを硬化剤と組み合わせることによって形成された固体生成物を用いることによって単純化される。
好都合なことに、該材料は、市販の前駆体を用いて調製することができ、従って、全製作工程を単純化し且つ容易化することができる。ガスによる泡立て工程及び鋳込み成形工程の態様は、標準的な技術及び/又は装置を用いて実施され得る。ある系では、発泡特性及び品質を犠牲にすることなく、泡立て時間を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、各部品の構造及び組合せの様々な詳細を含む、本発明の上記特徴並びに他の特徴、及び他の利点は、添付図面を参照しながら、より詳細に記述され、且つ、特許請求の範囲に示される。本発明を具体化する特定の方法及び装置は、実例として、且つ本発明を限定しないものとして示される。本発明の原理及び特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な多数の具体例に用いられ得る。
【0013】
1つの態様において、本発明は、CMP(化学機械平坦化用)パッドの製造にとりわけうまく適合する制動性ポリマー材料に関する。本明細書で用いられる用語「制動性(damping)」とは、機械的エネルギーを吸収する材料の能力をいう。好ましくは、制動性は、材料の反発力を試験するための簡易技術であるベイショア反発法によって測定される。ベイショア反発試験は、当該技術分野では知られており、例えば、米国試験材料協会(ASTM)基準D−2632に記述されている。当該技術分野で知られている、反発力を測定するための他の方法も、用いることができる。
ポリマー材料は、ポリウレタン、即ち、繰り返しウレタン単位を含有するポリマーである。該ポリウレタンは、少なくとも1種類のウレタンプレポリマーと硬化剤とを含む系から製造される。該系は、他の材料、例えば、界面活性剤、充填材、触媒、加工助剤、添加剤、酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、等、を含有することができる。
【0014】
ウレタンプレポリマーは、ポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール)と、二官能性イソシアネート又は多官能性イソシアネートとを反応させることによって形成される生成物である。
本明細書で用いられる用語「ポリオール」には、ジオール、ポリオール、ポリオール・ジオール、それらの共重合体、及び混合物が包含される。
ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシド重合によって作ることができ、且つ、高分子量ポリマーになる傾向があり、広範囲にわたる粘度と他の特性とを提供する。エーテルベースのポリオールの一般例には、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、等が包含される。
【0015】
ポリエステルポリオールの例には、ポリアジピン酸ジオール、ポリカプロラクトン、等が包含される。ポリアジピン酸ジオールは、アジピン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、及びそれらの混合物のような脂肪族ジオールとの縮合反応によって作られ得る。
ポリオール混合物も利用することができる。例えば、上述のポリオールのようなポリオールは、低分子量のポリオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びそれらの混合物)と混合され得る。
【0016】
ウレタンプレポリマーを調製するのに利用される最も一般的なイソシアネートは、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)であり、いずれも芳香族である。他の芳香族イソシアネートには、パラ−フェニレンジイソシアネート(PPDI)だけでなく、芳香族イソシアネートの混合物も包含される。
本発明の特定の態様において、用いられるウレタンプレポリマーには、脂肪族イソシアネート、例えば、水素化されたMDI(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、他の脂肪族イソシアネート、及びそれらの組合せ等、が包含される。
【0017】
ウレタンプレポリマーには、脂肪族イソシアネートと芳香族イソシアネートとの混合物も更に包含されることがある。
ウレタンプレポリマーは、しばしば、該プレポリマー中に存在する未反応イソシアネート基(NCO)の重量%によって特徴付けられる。NCO重量%は、ポリウレタン材料を製造するための諸成分の混合比を決定するために用いられ得る。
【0018】
ウレタンプレポリマーは、当該技術分野において知られている合成技術を用いて形成され得る。多くの場合、適切なウレタンプレポリマーはまた、市販されている。市販されているウレタンプレポリマーの例には、コネティカット州ミドルタウン(Middletown)のケムチュラ社(Chemtura Corporation)からの幾種類かのアディプレン(Adiprene)(登録商標)ポリエーテルプレポリマー、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown)、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)からの幾種類かのエアセイン(Airthane)(登録商標)プレポリマー、等が包含される。多くの場合、これらのプレポリマーは、低濃度の遊離モノマー、例えばTDI(トリレンジイソシアネート)モノマー、を含有し、「ローフリー(low free)」又は「エルエフ(LF)」と称される。
【0019】
ポリエーテルウレタンプレポリマーの具体例には、例えば、アディプレン(Adiprene)(登録商標)LF750D(NCOを8.79重量%有する、TDI−PTMEGプレポリマー、LF)、L325(NCOを9.11重量%有する、TDI/H12MDI−PTMEGプレポリマー)、LFG740D(NCOを8.75重量%有する、TDI−PPGプレポリマー、LF)、LW(NCOを7.74重量%有する、H12MDI−ポリエーテルプレポリマー)、LFH120(12.11重量%のNCOを有する、HDI−ポリエーテルプレポリマー、LF)、及びエアセイン(Airthane)(登録商標)PHP−80D(NCOを11.1重量%有する、TDI−PTMEGプレポリマー、LF)と称されるものが包含される。市販されているウレタンプレポリマーの他の具体例には、アンドゥル(Andur)(登録商標)[アンダーソン・ディベラップメント社(Anderson Development Company)]、バイテック(Baytec)[バイエル マテリアルサイエンス社(Bayer Material Science)]、等が包含される。
ポリエステルウレタンプレポリマーの例には、例えば、ビブラタン(Vibrathane)(登録商標)8570と称されるTDIポリエステルウレタンプレポリマーであって、コネチカット州ミドルタウンのケムチュラ社からの、NCOを6.97重量%有するものが包含される。他の適切なポリエステルウレタンプレポリマーは、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社からのバーサセイン(Versathane)(登録商標)D−6又はD−7を包含するが、それらに限定されない。
【0020】
前記硬化剤は、前記ウレタンプレポリマーを硬化させるか若しくは固めるために用いられる化合物、又は複数種類の化合物の混合物である。硬化剤は、イソシアネート基と反応し、プレポリマーの鎖に連結して、ポリウレタンを形成する。ポリウレタンを製造するときに典型的に用いられる一般的な硬化剤には、MBCAと略され、しばしばMOCA(登録商標)なる商品名で呼ばれる4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)メチレン;MCDEAと略される4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート;ポリプロレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート;ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート;1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン;4,4’−メチレン−ビス−アニリン;ジエチルトルエンジアミン;5−tert−ブチル−2,4−及び3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン;5−tert−アミル−2,4−及び3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミン及びクロロトルエンジアミン、等が包含される。
【0021】
本発明の特定の態様において、用いられる硬化剤には、芳香族アミン、とりわけ芳香族ジアミン、例えばビス−(アルキルチオ)芳香族ジアミン、が包含される。適切な芳香族ジアミンの市販品の例には、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとを含有する混合物である、[バージニア州リッチモンドのアルベマール社(Albermarle Corporation)からの]エタキュア(Ethacure)(登録商標)300;及び、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンと3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンとを含有する混合物である、[これもアルベマール社からの]エタキュア(登録商標)100が包含される。
好ましい硬化剤は、前記芳香族ジミン成分に加えて、1種類以上の他の材料を含有する。例えば、前記ウレタンのドメインネットワーク(domain network)又はポリマー構造を修飾するために、制動性能を得るための三官能性物質を導入することによって、ポリマーの架橋結合密度を増大させる。三官能性物質の好ましい例には、トリオール、例えば、脂肪族トリオール[例えば、トリメタノールプロパン(TMP)、アルコキシル化脂肪族トリオール、例えば、エトキシル化トリオール(例えば、パーストープ社(Perstorp Corp.)から入手できるTP30)]、ポリプロピレンエーテルトリオール(例えば、100〜900の分子量を有するもの)、及び脂肪族アミノトリオール[例えば、ケムチュラ社から入手できるバイブラキュア(Vibracure)(登録商標)A931]、トリエタノールアミン(TEA)、等が包含される。複数種類のトリオールの混合物もまた用いることができる。
【0022】
制動性能を得るために、トリオールの濃度を最適化することができる。トリオール又は変性トリオール(例えば、アルコキシル化トリオール)は、硬化剤の全重量に対して、典型的には、0.2〜15重量%の範囲内の量で用いられる。他の比率を用いても良い。
具体例において、脂肪族(HDI又はH12MDI)ポリエーテルウレタンプレポリマーと一緒に用いられる好ましい硬化剤は、トリオール5〜10重量%と組み合わされたエタキュア(登録商標)300の混合物、とりわけ、TMP5%とエタキュア300との組合せである。
【0023】
ウレタンプレポリマーと硬化剤との相対量は、例えば、所与のウレタンプレポリマーのNCO%を考慮することによって決定され得る。硬化剤を添加して、当量ベースで前記プレポリマー中の利用可能なイソシアネート基の、例えば約95%で、アミン基とヒドロキシル基との組合せを提供することができる。大抵の場合、硬化剤は、理論量の90〜105%で添加される。
他の具体例において、トリオールは、個々に、又は硬化剤以外の材料と一緒に添加され得る。
【0024】
ベイショア反発力は好ましくは、重合条件(例えば、該組合せを硬化するか又は固化して固体生成物にするための適切な温度及び時間)の下、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを組み合わせることによって得られる固体生成物を用いて測定される。一般に、固体生成物は、該材料の中に顕微鏡的大きさの空隙を導入するように意図されたプロセスに前記プレポリマーをかけることなく(例えば、以下に更に解説される泡立て工程を欠くプロセスで、)形成される。
好ましいプレポリマー−硬化剤の組合せを重合させて、ベイショア反発試験によって測定されるときに38%未満の反発力を有する固体生成物を形成する。高度に制動性の固体生成物、例えば、35%未満の反発力を有する固体生成物は、H12MDI又はHDIポリエーテルプレポリマー、及びエタキュア(登録商標)300とTMP5重量%との混合物である硬化剤を含有する系から得られた。
【0025】
前記固体生成物を用いて、硬度のような他の特性に関して候補の系を選別することができる。好ましい例において、固体生成物は、約30D〜約85D、例えば、55D〜80Dの範囲の硬度を有する。デュロメーター(Durometer)試験を利用するショア(shore)Dスケールは、ポリマー材料の硬度を定めるための周知のアプローチであり、一般に、ショアAスケールで測定されるプラスチックよりも硬質のプラスチックに適用される。ショアD硬度は、ASTMD2240に従って測定された。
重合条件下、ウレタンプレポリマートと硬化剤とを組み合わせることによって形成された固体生成物を用いて研究され比較され得る他の特性には、加工処理可能性、即ち、泡を形成し混合する能力;CMP(化学機械平坦化)加工処理において用いられるスラリーに対する、固体生成物の化学安定性;系の粘度;加工処理が行われる間のモノマーの遊離、例えば、TDI(トルエンジイソシアネート)の放出;可使時間;色;等が包含される。
【0026】
CMP(化学機械平坦化)用途のための制動性材料は、好ましくは微孔質であり、制動性材料の構造の中に顕微鏡的大きさの空隙を組み込むことを目標とするプロセスによって典型的に形成される該空隙を含有する。CMPによる平坦化が行なわれる間、それら空隙又は微小孔は、加工中の製品の表面を研磨するためのスラリーを保持する。
ポリウレタン材料に微細構造を与えるために、幾種類かのアプローチを用いることができる。多孔性は、例えば、流体(ガス又は液体)等で充填された中空のポリマー微小球のような充填材粒子を用いることによって形成され得る。空隙は、また、粘性系の中にガスを泡立てること、ポリウレタン溶解生成物の中にガスを注入すること、気体を生じる化学反応によってその場で(in situ)ガスを導入すること、溶解ガスを生じて減圧して泡を形成することによるか、又は他の方法によって形成され得る。
【0027】
本発明の特定の例において、空隙の容積の少なくとも一部分は、窒素、乾燥空気、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノン)のようなガスだけでなく、他のガス又はガス混合物をも用いて泡立てることによって形成される。フォーム(foam)中で酸化反応のような化学反応を生じないガスが好ましく、本明細書では、「非反応性」ガス、又は「不活性」ガスと称される。とりわけ好ましいのは、窒素である。泡立てる工程は、例えば、2003年2月4日にブライアン・ロンバルド(Brian Lombardo)に交付された米国特許第6,514,301B号に記述されている。その米国特許明細書の教示内容は、言及されることによって、そっくりそのまま本明細書に組み入れられる。泡立て工程は、好ましくは、調整可能な孔径及び細孔分布を有する微細構造を生じる。一例を挙げれば、微孔質ポリウレタン材料は、約30μmより大きい細孔を有する。
【0028】
プレポリマーを泡立てる工程は、1種類以上の界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤)の存在下で行われ得る。界面活性剤を含有することは、低粘性を有する系において、とりわけ効果的である。安定な泡(フォーム)は、ポリウレタン材料中に微細構造を創り出す上で好ましく、しかも、少なくとも一部分は、空気/ポリマーの界面での界面活性剤の疎水性炭化水素鎖の吸着及び分離と、該界面活性剤の官能基と該ポリマーとの反応とをもたらすものと思われる。
【0029】
特定のウレタンプレポリマーと一緒に用いられる場合に好ましくは単純な加工処理と装置とを用いて、容易に泡を生成する界面活性剤を選定することが望ましい。様々な加工処理条件(例えば、剪断、温度又は圧力の変化、典型的には、加工処理の間に用いられるそれらの変化)にさらされるとき、安定であり、且つ、泡の保全性を保持する泡もまた、好ましい。界面活性剤の選定は、泡立ての保全性又は泡の安定性だけでなく、CMP(化学機械平坦化用)パッドを製造するために用いられるポリマー材料のための重要なパラメータである孔径にも影響を与えることがあるということも見出された。
【0030】
適切な界面活性剤の例には、シリコーン界面活性剤(例えば、ポリジメチルシロキサンを含有する少なくとも1つのブロックと、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、又はポリカーボネートのセグメントを含有する少なくとも1つの他のブロックとを含む共重合体)が包含される。
特定の具体例において、シリコーン界面活性剤は、ポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド(又は、ポリシロキサン−ポリアルキレン オキシド)界面活性剤である。ポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤は、当該技術分野において、シリコーンコポリオールとしても知られており、且つ、ポリマーの、オリゴマーの、共重合体の、及び他の複数種のモノマーのシロキサン材料を含有することができる。
【0031】
ポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤は、シロキサン単位で構成されるポリシロキサン骨格とポリアルキレンオキシド側鎖とを有する共重合体である場合がある。ポリシロキサン骨格は、構造が直鎖、枝分かれ鎖又は環式であってもよい。共重合体のポリアルキレンオキシド側鎖は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドのマクロモノマー、等、又はそれらの混合物を包含してもよい。それら側鎖は、任意的に、ポリエチレンモノマー、ポリプロピレンモノマー、ポリブチレンモノマーを更に含有しても良い。ポリアルキレンオキシドモノマーは、該共重合体の約10重量%より大きい量で、好ましくは約20重量%より大きい量で、より好ましくは約30重量%より大きい量で存在することができる。
【0032】
ポリエチレンオキシド側鎖のマクロモノマーが好ましい。また、好ましいのは、ポリプロピレンオキシド側鎖、並びに、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを約1:2〜約2:1のモル比で含有する側鎖である。
とりわけ有用であるのは、約2,000〜約100,000g/g−モル、好ましくは約10,000〜約80,000g/g−モル、より好ましくは約15,000〜約75,000g/g−モル、更により好ましくは約20,000〜約50,000g/g−モル、最も好ましくは約25,000〜約40,000g/g−モルの範囲の分子量を有する共重合体である。
【0033】
本発明に係るポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド共重合体は、約40mN/m未満の、好ましくは約30mN/m未満の、より好ましくは約25mN/m未満の表面張力を有することができる。表面張力は、ASTMD1331−89に従うウィルヘルミー・プレート試験法(Wilhelmy plate test method)によって、25℃の0.1重量%溶液を用いて測定される。
それら共重合体は、約60mm未満、好ましくは約40mm未満、より好ましくは約20mm未満、最も好ましくは約10mm未満のロス・マイルズ泡高さ(Ross Miles foam height)を有することができる。ロス・マイルス泡高さ試験は、ASTMC1173−53に従って、1重量%溶液を用い、5分間の読み取りを行って実施される。加えて、それら共重合体は、約4より大きいか又は約4と同等である、好ましくは約6より大きいか又は約6と同等である、より好ましくは約8より大きいか又は約8と同等である親水性・親油性バランス(HLB)を有することができる。
【0034】
用いることのできる、市販の界面活性剤の例は、ニアックス(Ninax)(登録商標)の名称でジ・イー・シリコーンズ社(GE Silicones)から入手可能なもののいくつか、例えば、L−7500、L−5614、L−1580;エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals)から入手可能なもののいくつか、例えば、DC−193、DC−5604及びDC−5164の名称のもの;ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウ・コーニング社(Dow Corning Corporation)から入手可能なもののいくつか、例えば、DC−309、5098EU及びQ2−5211[メチル(プロピルヒドロキシド,エトキシル化)ビス(トリメチルシロキシ)シラン]の名称のもの;である。
該界面活性剤は、好ましくは、泡立て工程の間に得られる発泡強度、安定性又は気泡の大きさのようなパラメータに基づいて選定される。芳香族イソシアネートを含有する多数種類のウレタンプレポリマーのために適した界面活性剤は、ジ・イー・シリコーンズ社から入手可能なニアックス(Niax)(登録商標)L−1800(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレンブロック共重合体の界面活性剤)である。脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマー(例えば、H12MDI−ポリエーテル、又はHDI−ポリエーテル)を泡立てるための好ましい界面活性剤には、DC−193及びQ2−5211が包含される。
【0035】
界面活性剤の量は、実験的に、例えば、泡立ち特性及び/又は最終生成物の性質を評価することによって、決定され得る。界面活性剤の濃度は、典型的には、プレポリマー及び界面活性剤の全重量に対して約0.3〜約5重量%の範囲内である。界面活性剤の量は、樹脂100部当りの部(PHR)としても表現され得る。多くの場合、界面活性剤の適切な量は、約1.5PHRであった。他の量を選択しても良い。
前記ポリマー材料を形成するために用いられる系は、任意的に、触媒、充填材、加工処理助剤(例えば、離型剤、添加剤、着色剤、染料、酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、等)のような他の材料を含有することができる。
【0036】
触媒は、例えば、プロセス中消費されることなく化学反応を促進するために、(典型的には少量で)添加される化合物である。プレポリマーからポリウレタンを生成するために用いることのできる適切な触媒には、アミン類(とりわけ第三級アミン)、有機酸、有機金属化合物(例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、2−エチルヘキサン酸第一スズ)、等が包含される。
当該技術分野において知られているように、CMP(化学機械平坦化用)パッドの研磨特性(例えば、材料除去速度)に影響を与えるために、多孔性を促進させるために、又は他の理由のために、充填材を添加することができる。利用することのできる充填材の具体例は、粒子材料(例えば、繊維、中空のポリマー微小球、機能性充填材、ナノ粒子等)、を包含するが、それらに限定されない。
【0037】
本発明は、もう1つの態様において、制動性微孔質ポリウレタン材料を調製することに関する。好ましいプロセスにおいて、ウレタンプレポリマーは、好ましくは、界面活性剤と組み合わされ、次いで、泡を生成するために泡立ちされる。該泡は、次いで、硬化剤と組み合わされる。1種類以上の任意的材料(例えば、触媒、充填材、加工処理助剤、添加剤、染料、酸化防止剤、安定剤、潤滑剤、等)は、前記のプレポリマー、硬化剤若しくは界面活性剤に添加され得るか、又はそれらプレポリマー、硬化剤若しくは界面活性剤の中に存在し得る。そのような材料の1種類以上はまた、泡立て工程の間に添加され得るか、又は結果として得られるフォームに添加され得る。
泡立て工程は、加圧タンク又は非加圧タンク、及び配給機構又は他の混合機構を備えた工業用鋳込み機のような装置を用いながら、窒素又は他の適切なガスで行われ得る。
【0038】
多くの場合、典型的な泡立て温度は、約50F〜約230F、例えば、約130F〜約185Fの範囲内である場合があり;泡立て時間は、約12〜約240分の範囲内である場合があり;ガス(例えば、窒素)の流量は、約1〜約20標準立方フィート/時間の範囲内である場合があり;混合速度は、約500〜約5000回転/分(RPM)の範囲内である場合がある。
ポットは、外気条件又は加圧下(例えば、約10気圧以下)に維持され得る。
泡は、前記硬化剤の存在下、鋳込まれて硬化され、ポリウレタン材料を生成する。
【0039】
鋳込み工程は、型[例えば、所望のCMP(化学機械平坦化用)パッドを作るのに適した型]の中にフォームを注ぐことによって行われ得る。CMPパッドを作るのに有用な型の寸法及び形状は、当該技術分野では知られている。
泡を硬化するか又は固化して、微孔質ポリウレタン材料を生成する工程は、オーブン(例えば、ボックスオーブン、伝達オーブン、又は他の適切なオーブン)中、適切な硬化温度で、適切な時間の間実施され得る。上述のような系は、約50F〜約250Fの範囲の温度(例えば、235F)で、約30分間の時間の間で硬化され得る。硬化プロセス及びそれの終点は、該系の粘度及び硬度を評価することによって決定され得る。硬化工程は、空気中、又は特定の雰囲気(例えば、窒素、又は他の適切なガス、又はガス混合物)の下で行われ得る。
【0040】
例えばモールド中の前記系がもはや流動しないという時点で、硬化工程が完了したということが決定された後、硬化された微孔質生成物は、該モールドから取り出され、次いで、オーブン中で適切な温度で適切な時間の間、後硬化され得る。例えば、硬化された微孔質生成物は、約200〜約250Fの範囲内の温度(例えば、235F)で、数時間(例えば、8〜16時間)の間、後硬化され得る。
後硬化工程に続いて、微孔質生成物は、室温で、数時間〜1日間以上の間、調整され得る。
【0041】
本明細書に記述される微孔質材料は、好ましくは、約25%〜約50%の範囲内のベイショア反発力を有する。
該材料は、約0.6〜約1.0g/cmの範囲内の、好ましくは約0.80〜約0.95g/cmの範囲内の密度を有することができる。
【0042】
ある具体例において、微孔質ポリマー材料の硬度は、約30〜約80Dの範囲である。
「孔(pore)」径とも称される気泡の大きさは、好ましくは、該材料の全体にわたって均一である。平均孔径は、約2μm〜約200μmの範囲である場合がある。ある具体例において、平均孔径は、約30μmより大きく、例えば、約50〜約100μmの範囲内及びそれ以上、例えば、約120μm以下及びそれ以上、である。
【0043】
細孔領域%は、約5%〜約60%に及んでもよい。
特定の機構又は解釈に拘束されることを望むものではないが、界面活性剤の存在下での、非反応性ガス(例えば、窒素、又は他の不活性ガス)を用いた泡立て工程は、発泡工程の間、細孔分布及び孔径に影響を与えるものと思われる。泡立て工程の間、界面活性剤は、空気/液体の界面における表面張力を制御することによって、孔径及び細孔分布を制御するようである。
上述のような系及び方法を用いて製造されるCMP(化学機械平坦化用)パッドは、半導体基板(substrates)、光学基板、磁気基板若しくは他の基板を平坦化するか、又は研磨するのに用いられ得る。
【実施例】
【0044】
プレポリマーを鋳込む一般的手順
各々のプレポリマー150〜200gを、前秤量された1パイント・ブリキ缶(約500ml)に秤り取った。該ブリキ缶はホットプレートの上に置かれ、次いで、内容物は、撹拌しながら、温度計でモニタリングして70℃まで加熱された。次いで、該ブリキ缶は、あらゆる溶解ガスを除去するために、約3〜5分間の間、真空室中に置かれた。該プレポリマーの温度は、前記温度計で再び測定されて、60℃に維持された。該プレポリマーは、必要に応じて、前記熱板上で再び加熱された。該ブリキ缶中のプレポリマーの実重量は、天秤上で全重量から該ブリキ缶の重量を差し引くことによって、正確に測定された。
硬化剤は、天秤の上に置いたプレポリマーの容器に30秒以内で注ぎ込み、タイマーを直ちに押した。特段の規定がない限り、該硬化剤は、アミン基とヒドロキシル基との組合せが当量ベースで該プレポリマー中の利用可能なイソシアネート基の約95%となるレベルで添加された。
【0045】
望ましい量の硬化剤が添加された後、前記系は、気泡が取り込まれるのを最小限に抑えるために、ヘラ(1.5インチ×6インチ)を用いて、約1分間の間、穏やかに手混合された。その混合物は、次いで、離型剤が予備噴霧されたボタンアルミニウム型又は平板アルミニウム型であって、ボックスオーブン中で235Fまで余熱された型に注ぎ込まれた。1インチの直径と0.5インチの高さとを有する7個のボタンを作製した。作製されたエラストマーシートは、約1/16インチ又は1/4インチの厚さであった。
硬化工程は、ボックスオーブン中、235Fで行った。該混合物の可使時間は、ブリキ缶中の該混合物を注ぎ込めなくなるまで、モニタリングされた。10分後、オーブンから該ボタン型を取り出し、次いで、それらボタン試料の頂部部分を万能ナイフで切断して、この半硬化段階(green curing stage)での該材料の切断の容易さと脆性又は強度とを試験した。ボタン型と平板型との両方を、約20〜30分間で離型して、離型性を調べた。
それらボタン及びシートは、次いで、235Fで約16時間の間、後硬化された。それらは、硬化試験及び反発試験の前少なくとも1日の間、また、他の物理試験を行う前少なくとも7日の間、室温で調整(condition)された。
【0046】
界面活性剤の選定を伴う、プレポリマーの泡立て工程
(一晩中溶融され、必要に応じて、150Fのオーブンで溶融された)選定されたプレポリマー500gを、(縁取りされていない)1/4ガロンサイズの乾燥ブリキ缶に注ぎ込んだ。界面活性剤を選定し、選定された界面活性剤7.5gを該ブリキ缶の中に添加した。該ブリキ缶は、加熱用ホットプレートの上に置かれ、次いで、安定した支持台に取り付けられた保持鎖と、窒素によって泡立てるために前記ブリキ缶の底部の中に挿入された銅管と、3インチのプロペラを有するメカニカルミキサーとが装備された。前記銅管は、ガス流量計を経由して乾燥窒素タンクからのポリエチレン(PE)配管に接続された。前記ミキサーは、ホットプレート上で前記ブリキ缶が加熱される間、均一な混合を得るために、約800回転/分(rpm)に設定された。
(赤外線温度ガンによって測定された)前記ブリキ缶内の温度が150Fに達した時、(タコメータで測定された)混合速度は、1500rpmに増大され、窒素によるバブリングは、5標準立方フィート/時間(SCFH)で開始された。窒素による泡立て工程の時間的記録を開始し、泡立ち容積のモニタリングを行うため、該ブリキ缶の液面を、定規によって、頂部周縁から直ちに測定した。60〜120分の泡立て工程の後、既知のブリキ缶の直径を用いて泡立ち容積の計算を行うために、液面を再び測定した(典型的には、30%増大した)。泡立ちされたプレポリマーは、選定された硬化剤を用いて、30分以内に手動で鋳込まれ、オーブン中で150Fの温度に保持された。
【0047】
硬化剤の選択を伴う、泡立てられたプレポリマーの鋳込み
泡立てられたプレポリマー約150gを、(縁取りされていない)乾燥した1パイント・ブリキ缶の中に注いだ。ストップウォッチによる計時を開始し、次いで、用いるための150Fのオーブンの中に保持された、褐色の500ml入りガラス瓶に入れられた、硬化剤の選定品[例えば、ET5(95%E300+5%TMP)]の計算量を、使い捨てプラスチック製ピペットを用いて、約40秒で前記パイント缶の中に添加した。
前記パイント缶に入れた混合物を1.5インチ幅の金属ヘラで混合する工程を直ちに開始し、あらゆる気泡が取り込まれるのを回避しながら、1分間続けた。該反応混合物は、2つの型:1インチのボタン型、及び1/16インチの平板型であって、いずれも、鋳込み工程の前、ストーナー(Stoner)M800離型剤で予備塗布され、且つ、オーブン中で235Fに予熱された型に注ぎ込まれた。
【0048】
充填された両方の型は、235Fのボックスオーブンの中に置かれた。計時は厳密にモニタリングされ、また、該混合物を注いで、可使時間(典型的には6〜7分であった)を測定することがもはや可能でなくなるまで、前記缶中の混合物の粘度を、前記ヘラで頻繁に調べた。10分後、それらボタン試料の平坦部分を、万能ナイフで切断して、切断加工処理可能性を調べた。ボタン試料と平板試料の両方は、混合時点から約30分で離型された。離型されたそれら試料は、16時間の後硬化時間の間、235Fのオーブンに置かれた。それらボタン試料を用いて、硬度(ショアD)、反発力(ベイショア)、密度及び多孔率を測定した。硬度及び反発力を測定するため、ボタン試料は、1日以上の間、室温で調整された。
【0049】
材料
下記の諸実験に用いたウレタンプレポリマーは、市販のものであり、アディプレン(Adiprene)(登録商標)LF750D(NCOを8.79重量%有する、TDI−PTMEGプレポリマー、LF);エアセイン(Airthane)(登録商標)PHP−80D(NCOを11.1重量%有する、TDI−PTMEGプレポリマー、LF);L325(NCOを9.11重量%有する、TDI/H12MDI−PTMEGプレポリマー);LFG740D(NCOを8.75重量%有する、TDI−PPGプレポリマー、LF);LW570(NCOを7.74重量%有する、H12MDI−ポリエーテルプレポリマー);及びLFH120(NCOを12.11重量%有する、HDI−ポリエーテルプレポリマー、LF)を包含する。それらプレポリマーは、表Aに記載され、それらの商品名、化学組成、供給業者、及びNCOの百分率によって識別される。
【0050】
【表1】

【実施例1】
【0051】
表AのA〜Gで識別されるポリウレタンプレポリマーの各々について幾種類かの硬化剤が評価された。試験された硬化剤には、本明細書ではMOCAと識別される市販の芳香族ジアミン;本明細書ではE300と識別される[アルベマール社(Albermarle Corporation)からの]エタキュア(Ethacure)(登録商標)300;本明細書ではE100と識別される[アルベマール社からの]エタキュア(Ethacure)(登録商標)100;本明細書ではBDOと略記されるブタンジオール;EP10、EA10、ET5、ET10、E1T5及びE1T10と略記され、且つ、
EP10=E300+10%TP30
EA10=E300+10%A931
ET5=E300+5%TMP
ET10=E300+10%TMP
E1T5=E100+5%TMP
E1T10=E100+10%TMP
と定義される、芳香族ジアミンとトリオールとの幾種類かの混合物;が包含された。ここで、TMPはトリメタノールプロパンであり、TP30は変性TMPであり、そしてA931は脂肪族アミノトリオールである。百分率は、重量%である。表1には、検討された系であって、各々の系が特定のウレタンプレポリマーと特定の硬化剤との組合せに対応する系が記載される。表1において、各々の系は、(表Aからの)ウレタンプレポリマーに対応するアルファベット文字によって識別され、続いて、用いられる特定の硬化剤に関連する数字によって識別される。例えば、系E5は、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーLW570と硬化剤ET5とを含有し;系F3は、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーLFH120と硬化剤ET5とを含有し;また、G2は、芳香族イソシアネートポリエステルプレポリマー8570と硬化剤E300とを含有した。
【0052】
重合条件の下、各々の系の特定のプレポリマーを特定の硬化剤と組み合わせることによって得られた固体生成物は、硬度及びベイショア反発力について評価された。場合によっては、例えば、加工処理可能性、及びCMP(化学機械平坦化用)スラリーの浸入状態のような他のパラメータをも調べた。
プレポリマーがL325であり、硬化剤がMOCAである系C1を用いて得られた固体生成物は、L325−MOCAを用いて形成された比較材料である。該材料が研磨パッドに作製されるとき、微小球充填材が添加される。
試料A2(LF750D及びMOCA)は、42%のベイショア反発力を有し、また、評価基準として用いられた。
【0053】
【表2】

【0054】
試料B2、B3及びB4は、室温では10分で砕け易いことが分かった。試料E2は高い粘度を有し、試料E3は、通常の可使時間より長い可使時間を有した。表2に示される残余の試料は、試料E6を除き、十分な加工処理可能性を示した。
幾種類かの試料は、例えば、キャボット マイクロエレクトロニクス社(Cabot Microelectronics)からの酸スラリーSS12、及びプラクセルサフェイステクノロジー社(Praxair Surface Tecnology)からのベーススラリーCuC2−039のようなCMP(化学機械平坦化用)スラリーの下、耐化学性又は化学安定性の試験が行われた。
【0055】
中でも、試料A2、A3、B5、C2、E5、G2及びG3は、安定であることが分かった。
系B1は、高い硬度を有した。系E1は、高粘度を有し、結果的に制動性試料となった。試料E5及びG4にも、高粘度が存在した。試料E3及びG3は、制動性であった。非常に低い粘度によって特徴付けられる系には、F2及びF3が包含される。
【0056】
脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーは、芳香族イソシアネートポリエーテルプレポリマーを用いて得られた固体材料のベイショア反発力より小さいベイショア反発力を有する固体材料を生成する傾向があることを、データは示した。芳香族ジアミンにトリオールを(とりわけ、最適濃度で)添加すれば、純粋な芳香族ジアミンと比べて、ベイショア反発力が低下する傾向があった。
好ましい系は、結果的に34%のベイショア反発力を有する材料を生じた、粘度の非常に低い系F3であった。系E5及びG2もまた、好ましかった。
【実施例2】
【0057】
系E5、F3及びG2を用いて、界面活性剤の予備選別(screening)を行った。予備選別された界面活性剤は、ジーイー・シリコーンズ社から得られた[ニアックス(Niax)(登録商標)]L−7500、L−5614、L−1580;エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社からのDC−193、DC−5604及びDC−5164;並びに、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corporation)からのDC−309、5098EU及びQ2−5211;であった。
起泡性に関する結果を、表2に示す。
【0058】
【表3】


表中、0は気泡性なしを示し、Fは多少の気泡性ありを示し、FFは部分的に気泡性ありを示す。FFF及びFFFFは、それぞれ、強い気泡性あり、及び非常に強い気泡性ありを示す。
【0059】
表2に示されるように、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーの場合、DC−193(D)及びQ2−5211(Q)は、強い気泡性又は非常に強い気泡性を生じた。
【実施例3】
【0060】
表1において、A2、A3、B5、C2、C4、D2、D3、E5、E4、F2、F3、G2及びG4として識別される系は、更なる泡立て試験及び硬化試験を行うために用いられた。
先ず、A2、A3、B5、C2、C4、D2、D3、E5、E4、F2、F3、G2及びG4の系の各々におけるプレポリマーは、表3に示される界面活性剤、界面活性剤濃度及び諸条件を用いて、窒素で泡立てられた。一般に、窒素流量は、5標準立方フィート/時間(SCFH)であった。表3において、Lは、ニアックス(Niax)(登録商標)界面活性剤L−1800を表し;Dは、DC−193を表し;Qは、Q2−5211を表し、右欄には、各々の場合に観察された凡その体積増加量の割合(%)が記載される。
【0061】
前記泡は、次いで、硬化剤の存在下で鋳込まれて硬化され、微孔質ポリウレタン試料を生成する。微孔質ポリウレタン材料の特性を、表4に示す。
表3及び表4の左欄に見られるように、表2に識別されるプレポリマーと硬化剤との組合せの多くは、界面活性剤の種類、濃度及び/又は泡立て条件によって更に説明される。例えば、F3−bと識別される試料は、DC−193界面活性剤の存在下、1.5PHRの界面活性剤濃度で、1500RPMの混合工程を120分間行い、プレポリマーLFH120を窒素で泡立て、次いで、結果として得られた泡を、硬化剤ET5の存在下で硬化させることによって形成された。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
本発明は、それの好ましい具体例を参照しながら詳細に示され且つ説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、それら具体例の中で形態及び細部の様々な改変を行うことができることが、当業者には理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械平坦化(CMP)用パッドを製造する系において、
a.不活性ガス、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマー、及びポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤を含有する泡、
b.芳香族ジアミンを含有する硬化剤、並びに
c.トリオール
を含む上記系。
【請求項2】
前記トリオールは、アルコキシル化トリオールである、請求項1に記載の系。
【請求項3】
i.理論量に関して、前記硬化剤は、90〜105%の範囲内であり、
ii.前記トリオールは、前記芳香族ジアミン及び前記トリオールを含む硬化剤の全重量に基づき、0.2〜15重量%の範囲内の量で該硬化剤中に存在し、又は、
iii.前記界面活性剤は、前記プレポリマー及び前記界面活性剤の全重量に基づき、0.3〜5重量%の範囲内の量で前記系中に存在する、
請求項1に記載の系。
【請求項4】
前記脂肪族イソシアネートは、水素化されたメチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びそれらのあらゆる組合せから成る群から選ばれる、請求項1に記載の系。
【請求項5】
前記硬化剤の存在下、前記脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーを硬化させることによって形成された固体生成物が、38%未満のベイショア反発力を有する、請求項1に記載の系。
【請求項6】
化学機械平坦化用パッドを製造する方法において、
a.ポリシロキサン−ポリアルキレンオキシド界面活性剤の存在下、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーを不活性ガスで泡立たせて、泡を形成する工程、及び
b.芳香族ジアミン及びトリオールの存在下、該泡を重合させる工程、
を含む、上記方法。
【請求項7】
前記トリオールは、アルコキシル化トリオールである、請求項6に記載の系。
【請求項8】
i.理論量に対して、前記芳香族ジアミン及び前記トリオールを含む硬化剤は、90〜105%の範囲内にあり、
ii.前記トリオールは、前記芳香族ジアミン及び前記トリオールを含む硬化剤の全重量に基づき、0.2〜15重量%の範囲内の量で前記硬化剤中に存在し、又は
iii.前記界面活性剤は、前記プレポリマー及び前記界面活性剤の全重量に基づき、0.3〜5重量%の範囲内の量で存在する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記脂肪族イソシアネートは、水素化されたメチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びそれらのあらゆる組合せから成る群から選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記芳香族ジアミン及び前記トリオールを含む硬化剤の存在下、前記脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマーを硬化させることによって形成された固体生成物が、38%未満であるベイショア反発力を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
微孔質ポリウレタン材料を製造する方法において、
a.ウレタンプレポリマーを泡立たせて、泡を形成する工程、及び
b.硬化剤の存在下、該泡を硬化させ、そうさせることによって、該微孔質ポリウレタンを生成する工程を有する方法であって、該硬化剤の存在下、該ウレタンプレポリマーを重合させることによって形成された固体生成物が、38%未満のベイショア反発力を有する
、上記方法。
【請求項12】
前記硬化剤は、芳香族ジアミン及びトリオールを含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウレタンプレポリマーは、脂肪族イソシアネートポリエーテルプレポリマー又はポリエステルウレタンプレポリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ウレタンプレポリマーは、界面活性剤の存在下で泡立たされる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記泡は、約50〜約250Fの範囲内の温度で硬化される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)の前記生成物を後硬化させる工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記固体生成物は30〜85Dの範囲内の硬度を有し、且つ、前記微孔質ポリウレタン材料は、30D〜80Dの範囲の硬度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記微孔質ポリウレタン材料は、0.6〜1.0の範囲の密度、2〜200μmの範囲の平均孔径、又は10〜50%の範囲の細孔領域を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
請求項6に記載の方法によって製造された前記微孔質ポリウレタン材料を有する化学機械平坦化用パッド。
【請求項20】
微孔質ポリウレタンを製造するための系において、
ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含有し、しかも、該ウレタンプレポリマー及び該硬化剤は、重合条件下で組み合わされるとき、38%未満であるベイショア反発力と30〜85Dの範囲内の硬度とを有する固体生成物を形成する、上記系。

【公表番号】特表2010−538461(P2010−538461A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522983(P2010−522983)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/066565
【国際公開番号】WO2009/029322
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】