説明

医薬組成物の治療上の使用

本発明は、DPP-4阻害剤とメトホルミンの医薬組成物又は組み合わせの治療上の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のDPP-4阻害剤及びメトホルミンを含む組み合わせの特定の治療上の使用に関し、例えば代謝病、特に2型糖尿病及び/又はそれに関連する症状(例えば、糖尿病の合併症)の治療及び/又は予防に用いられる。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性及びインスリン分泌障害の2元的な内分泌効果に伴って生じる複合病理生理学に起因する、一般の慢性及び進行性の疾患である。2型糖尿病の治療は典型的に食事及び運動から始まり、続いて経口の糖尿病治療薬の単剤療法がなされる。従来の単剤療法は、最初はいくらかの患者の血糖を制御し得るが、2次的な高い失敗率に結びつく。血糖管理を維持するための単剤療法の制限は、少なくともいくらかの患者において、及び単剤の長期間にわたる治療では維持できない血糖の低下を達成するため複数の薬剤を組み合わせることによる限られた期間において克服されている。入手可能なデータは、2型糖尿病患者の多くにおいては、現行の単剤療法では失敗し多剤療法が求められるという結論を支持している。
しかしながら、2型糖尿病は進行性の疾患であり、従来の併用療法に対し良好な初期反応を示していた患者でさえも、血糖レベルは長期にわたって安定に維持することが非常に難しいことから、徐々に服用量の増加やインスリンを用いた更なる治療が必要となる。既存の併用療法が血糖管理を強化する可能性を有していたとしても、限界が無いわけではない(特に長期の有効性に関して)。さらには、従来の併用療法は低血糖症又は体重増加といった副作用の増加リスクを示してきた。
このように、多くの患者にとってこれらの既存の薬剤療法は、治療に反して血糖管理の進行性劣化に終わり、特に長期にわたる血糖の管理を十分に行わず、このように進行した又は後期の2型糖尿病(従来の経口又は非経口の糖尿病治療の薬物療法にもかかわらず血糖管理が適切にできていない糖尿病を含む)の代謝調節の達成及び維持の失敗に終わる。
従って、高血糖症の集中治療が慢性的な被害の発生率を低減することができたとしても、部分的には長期的な有効性の限界、従来の高血糖症に対する治療の許容度及び投薬の不便性、患者の不順守又は並存疾患のために、多くの2型糖尿病患者が不適切に治療されたままである。
この治療の失敗の高い発生は、2型糖尿病患者における長期の高血糖症に伴う合併症又は慢性的な被害(微小及び大血管の合併症、例えば糖尿病性の腎症、網膜症又は神経障害、あるいは心血管又は脳血管の合併症(心筋梗塞、脳卒中又は死亡)を含む)の高割合に主に寄与している。
【0003】
従来の治療(例えば、1次又は2次の及び/又は単剤又は(初期の又はアドオン(add-on)の)組み合わせ療法で)において用いられる、経口の糖尿病治療薬は、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及びα-グルコシダーゼ阻害剤を含むが、それに限定されるものではない。
従来の治療(例えば、1次又は2次の及び/又は単剤又は(初期の又はアドオンの)組み合わせ療法で)において用いられる、非経口の糖尿病治療薬は、GLP-1又はGLP-1類似体及びインスリン又はインスリン類似体を含むが、それに限定されるものではない。
しかしながら、これらの従来の糖尿病治療又は高血糖治療の薬の使用は様々な逆の効果と結びつき得る。例えば、メトホルミンは乳酸アシドーシス又は胃腸の副作用と;スルホニル尿素、グリニド及びインスリン又はインスリン類似体は低血糖症及び体重増加と;チアゾリジンジオンは浮腫病、骨折、体重増加及び心不全/心臓効果(cardiac effect)と;及びα-グルコシダーゼ遮断薬及びGLP-1又はGLP-1類似体は胃腸の副作用(例えば、消化不良、鼓腸又は下痢、あるいは吐き気又は嘔吐)と、結びつき得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、これまで糖尿病治療薬を用いた治療を行ってこなかった患者(薬剤未投与患者)、及び進行した又は後期の2型糖尿病患者(従来の経口及び/又は非経口の糖尿病治療薬(例えばメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド及び/又はα-グルコシダーゼ阻害剤、及び/又はGLP-1又はGLP-1類似体、及び/又はインスリン又はインスリン類似体)で不十分な血糖管理の患者を含む)両方に対して、効果のある安全かつ許容可能な糖尿病に対する治療を提供する技術の必要性が依然として存在している。
さらに、2型糖尿病の治療においては、疾患を効果的に治療し、その疾患特有の合併症を回避し、及び疾患の進行を遅らせる必要性がある。
さらに、糖尿病の進行期においてしばしば発見される長期的合併症を予防するだけでなく、発症した合併症(例えば腎臓機能障害)を有する糖尿病患者における治療法の選択肢となる、糖尿病に対する治療への要求が依然として存在する。
加えて、従来の糖尿病に対する治療に付随する副作用のリスクを予防又は低減する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで本発明の範囲内において、本明細書で定義される特定のDPP-4阻害剤及びメトホルミンとこれらのDPP-4阻害剤の本発明による組み合わせ又は医薬組成物が、意外な及び特別に有利な特性を有することが分かった。この特性がそれらをこの発明の目的及び/又は、1以上の上記要求、例えば、薬剤未投与の2型糖尿病患者及び/又は進行した又は後期の2型糖尿病患者(経口及び/又は非経口の糖尿病治療又は高血糖治療の薬及び/又はインスリン指示の治療にもかかわらず血糖管理が不十分な患者を含む)における、血糖管理の改善の為及び代謝病、とりわけ糖尿病(特に2型糖尿病)及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること又は発病を遅延させることが挙げられる)を満たす為に適切なものとしている。
【0006】
本発明は従って本明細書に記載の治療法における、特定のDPP-4阻害剤(特にBI 1356)及びメトホルミンを含む組み合わせ又は医薬組成物の、同時、別個又は逐次の使用に関する。
本発明はまた、固定の又は自由な組み合わせ又は医薬組成物に関し、
1次療法(すなわち、これまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった2型糖尿病患者(薬剤未投与患者)において)として、
あるいは2次又は3次療法(すなわち、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において)として、
本明細書に記載の治療上の使用、例えば血糖管理の改善及び/又は、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するための、本明細書にそれぞれ定義される特定のDPP-4阻害剤(特にBI 1356)及びメトホルミンを含むか又はこれらから作られる組み合わせ又は医薬組成物であって、1以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は助剤(賦形剤、安定化剤などを含む)を含んでいてもよく、1以上の他の有効成分、例えば本明細書に記載されたもののいずれかと組み合わせてもよく、例えばスルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1の従来の高血糖治療薬と組み合わせてもよい、医薬組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、DPP-4阻害剤及びパートナー薬メトホルミンの固定用量の組み合わせ製剤を含む本発明の医薬組成物の、本明細書に記載される治療上の使用に関する。
ある態様において、本発明は、本明細書に前述及び後述される固定の又は自由な組み合わせあるいは医薬組成物に関し、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するためのものであり、
1次療法(すなわち、これまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった患者(薬剤未投与患者)において)として、
あるいは2次又は3次療法(すなわちメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において)としても、
使用されるものであり、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1の従来の高血糖治療薬と組み合わせてもよい。
【0008】
特別な態様において、本発明は、メトホルミンの単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するための本明細書に記載の医薬組成物に関する。
【0009】
別の特別な態様において、本発明はまた、メトホルミン及びスルホニル尿素の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、スルホニル尿素との組み合わせにおいて、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するための本明細書に記載の医薬組成物にも関する。
【0010】
別の特別な態様において、本発明はまた、メトホルミン及びチアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)との組み合わせにおいて、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するための本明細書に記載の医薬組成物にも関する。
【0011】
別の特別な態様において、本発明はまた、薬剤未投与の2型糖尿病患者において(例えば1次療法として)、例えば初期の又は最初の組み合わせ療法として、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)に使用するための本明細書に記載の医薬組成物にも関する。
【0012】
本発明はさらに、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防(例えば、本明細書に記載されるような1次、2次又は3次療法として)用の薬剤製造のための、本明細書に記載される医薬組成物の利用法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、本明細書に定義される医薬組成物を含む医薬パッケージを提供し、薬剤未投与患者又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な患者における、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防における、その使用の指示を含んでいてもよく、1以上の他の有効成分との組み合わせてもよい。
【0014】
本発明はさらに、薬剤未投与患者又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な患者における、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防に使用する薬剤を提供する。前記薬剤は、本明細書で定義される医薬組成物を含み、及び1以上の他の有効成分、例えば本明細書に記載されるもののいずれかを含んでいてもよく、例えば有効成分の別個、逐次、同時(simultaneous)、並列(concurrent)又は時差的交互的(chronologically staggered)使用のためのものである。
【0015】
本発明はさらに、薬剤未投与患者(例えば1次療法として)又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な患者における(例えば2次又は3次療法として)、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本明細書に定義される医薬組成物の有効量を投与することを含み、単独又は1以上の他の有効成分(例えば本明細書に記載されるもののうち任意のもの)の有効量との組み合わせにおいて、例えば別個、逐次、同時、並列又は時差的交互的に投与されてもよい。
【0016】
本発明はさらに、特に薬剤未投与の2型糖尿病患者又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、1以上の下記目的のための薬剤の製造のための、BI 1356及びメトホルミンを含む本明細書に前述又は後述で定義されるような医薬の組み合わせ又は組成物の使用を提供し:
−代謝異常又は代謝病、例えば1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、体重超過、肥満、脂質異常症、高脂質血症、食後高脂質血症、高コレステロール血症、高血圧、アテローム症動脈硬化症、内皮機能不全、骨粗鬆症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症、多嚢胞性卵巣症候群及び/又は代謝症候群の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-血糖管理の改善及び/又は維持及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後血漿グルコース及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減;
-耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への発病の予防、減速、遅延又は進行の反転;
-糖尿病性合併症、例えば微小及び大血管の疾患(例えば、腎症、微量又は大量アルブミン尿、蛋白尿、網膜症、白内障、神経障害、学習又は記憶障害、神経変性又は認識障害、心臓又は脳血管の疾患、組織虚血、糖尿病性下肢又は潰瘍、アテローム性動脈硬化症、高血圧、内皮機能不全、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍リズム障害、血管再狭窄、及び/又は脳卒中)の予防、リスクの低減、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-体重及び/又は体脂肪を減らすこと、体重及び/又は体脂肪の増加を予防すること又は体重及び/又は体脂肪の低減を容易にすること;
-膵臓β細胞の退化及び/又は膵臓β細胞の機能低下の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療、及び/又は膵臓β細胞の機能の改善、保存及び/又は回復、及び/又は膵臓のインスリン分泌機能の刺激及び/又は回復又は保護、及び/又は膵臓β細胞量の増加;
-非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)(肝臓脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又は肝繊維症が挙げられる)の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療(例えば肝臓脂肪症、(肝臓の)炎症及び/又は肝臓脂肪の異常な蓄積、の予防、進行の減速、遅延、減衰、治療又は回復);
-従来の(経口又は非経口の)高血糖治療の単剤又は併用療法に対して1次又は2次的に失敗した2型糖尿病の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療、又はインスリン療法に対する要求の遅延;
-適切な治療効果のために要求される従来の高血糖治療の薬物療法の投与量低減の達成;
-従来の高血糖治療の薬物療法に付随する副作用のリスク低減;及び/又は
-インスリン感受性の維持及び/又は改善、及び/又は高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性の治療又は予防;
1以上の他の有効成分、例えば本明細書に記載されるもののいずれかと組み合わせてもよい。
【0017】
特別な態様において、本発明は、薬剤未投与の患者において(例えば1次療法として)、糖尿病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0018】
別の特別な態様において、本発明は、メトホルミンを用いた単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分な患者において(例えば、2次療法として)、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0019】
別の特別な態様において、本発明は、メトホルミン及びチアゾリジンジオンを用いた2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な患者において(例えば3次療法として)、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物並びにチアゾリジンジオンの有効量を投与することを含む。
【0020】
別の特別な態様において、本発明は、メトホルミン及びスルホニル尿素を用いた2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な患者において(例えば3次療法として)、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物並びにスルホニル尿素の有効量を投与することを含む。
【0021】
更なる態様において、本発明は、メトホルミン及びインスリン又はインスリン類似体の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な患者において、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物並びにインスリン又はインスリン類似体の有効量を投与することを含む。
【0022】
更なる態様において、本発明は、インスリン又はインスリン類似体で治療されている患者において、代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば糖尿病性合併症)の治療及び/又は予防の方法を提供する。前記方法は、それを必要としている被験者(特にヒト患者)に、本発明のBI 1356及びメトホルミンの医薬組成物の有効量を投与し、それにより前記インスリン又はインスリン類似体を置換すること(すなわち、インスリン療法から本発明のBI 1356及びメトホルミンの組み合わせへ転換すること)を含む。
【0023】
本発明の治療が可能な代謝病又は代謝異常の例は、限定されるものではないが、1型糖尿病、2型糖尿病、不十分な耐糖能、インスリン抵抗性、高血糖症、高脂質血症、高コレステロール血症、脂質異常症、代謝症候群X、肥満、高血圧、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症、アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全及び骨粗鬆症を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
糖尿病治療のモニタリングにおいて、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化の結果であるHbA1c値は、特に重要である。その構成は特に血糖値及び赤血球の寿命に依存するため、「血糖の記憶」("blood sugar memory")の意味におけるHbA1cは先行する4-12週の平均血糖値を反映する。より集中的な糖尿病治療(すなわち、サンプルにおいて総ヘモグロビンが<6.5%)により長期にわたりHbA1c値が良好に管理されている糖尿病患者は、糖尿病性細小血管障害から極めて良く保護されている。糖尿病の利用可能な治療は、糖尿病患者に1.0-1.5%程度のHbA1c値の平均的な改善をもたらし得る。このHbA1c値の低減は、全ての糖尿病患者において、<7.0%、好ましくは<6.5%及びより好ましくは<6%のHbA1cの所望の目標範囲へ至らせるのには十分ではない。
血糖管理中において、HbA1c値の改善に加え、2型糖尿病患者の他の推奨治療目標は空腹時血漿グルコース(FPG)及び食後血漿グルコース(PPG)の値を正常又はできるだけ正常に近い値に改善することである。食前(空腹時)血漿グルコースの推奨要求目標の範囲は、90-130mg/dL(又は70-130mg/dL)又は<110mg/dLであり、及び食後2時間の血漿グルコースの推奨要求目標の範囲は、<180mg/dL又は<140mg/dLである。
【0025】
本発明の意義において、不適切な又は不十分な血糖管理とは特に、患者が6.5%より高い、特に7.0%より高い、さらにより好ましくは7.5%より高い、とりわけ8%より高い、HbAc1値を示す状態を意味する。不適切又は不十分な血糖管理下にある患者の態様として、限定されるものではないが、7.5〜10%(又は、別の態様においては、7.5〜11%)のHbA1c値を有する患者が挙げられる。不適切又は不十分な血糖管理下にある患者の別の態様としては、限定されるものではないが、6.5〜8.4%(ステージ1)、又は、さらに別の態様においては8.5〜9.4%(ステージ2)又は、さらに別の態様においては≧9.5%(ステージ3)のHbA1c値を有する患者が挙げられる。不適切に管理されている患者の特別な補助的態様としては、質の悪い血糖管理下にある患者を意味し、限定されるものではないが、≧9%のHbA1c値を有する患者が挙げられる。
【0026】
ある態様において、本発明の意義における糖尿病患者として、これまで糖尿病治療薬を用いた治療がされてこなかった患者(薬剤未投与患者)を挙げることができる。このようにある態様においては、本明細書に記載の治療は未投与患者において使用されてもよい。別の態様においては、本発明の意義における糖尿病患者として、進行した又は後期の2型糖尿病患者(従来の糖尿病治療に失敗した患者が挙げられる)、例えば本明細書に定義される1又は2以上の従来の経口及び/又は非経口の糖尿病治療薬において血糖管理が不適切である患者、例えばメトホルミン、チアゾリジンジオン(特にピオグリタゾン)、スルホニル尿素、グリニド、GLP-1又はGLP-1類似体、インスリン又はインスリン類似体、又はα-グルコシダーゼ阻害剤を用いた(単剤)療法にもかかわらず、あるいはメトホルミン/スルホニル尿素、メトホルミン/チアゾリジンジオン(特にピオグリタゾン)、スルホニル尿素/α-グルコシダーゼ阻害剤、ピオグリタゾン/スルホニル尿素、メトホルミン/インスリン、ピオグリタゾン/インスリン又はスルホニル尿素/インスリンを用いた2剤併用療法にもかかわらず、血糖管理が不十分な患者を挙げることができる。このようにある態様においては、本明細書に記載の治療は、例えば本明細書に記載の従来の経口及び/又は非経口の糖尿病治療薬の単剤、2剤又は3剤の組み合わせの薬物療法を用いた治療を経験した患者において使用されてもよい。
【0027】
本発明の治療に適し得る患者の態様として、限定されるものではないが、通常のメトホルミン治療が適切でない糖尿病患者、例えばメトホルミンに対する低い耐性、不耐容性又は禁忌により、あるいは腎機能の(軽度の)障害/低下によりメトホルミン用量を減らした治療を必要とする糖尿病患者(年配の患者、例えば≧60-65歳が挙げられる)を挙げることができる。
【0028】
本発明のDPP-4阻害剤の特別な態様は、低用量レベル(例えば、1人1日あたり<100mg又は<70mg、好ましくは<50mg、より好ましくは<30mg又は<20mg、更により好ましくは1mg〜10mg(必要であれば、1〜4回の単回投与、特に1〜2回の単回投与に分けられ、同じ量からなってもよい)、特別には1人1日あたり1mg〜5mg(より特別には5mg)、優先的には、1日1回経口投与で、より優先的には1日のうち任意の時間に食事時又は食事時以外に投与される用量で)において治療上有効な経口投与のDPP-4阻害剤を表す。このように、例えば、毎日5mgのBI 1356の経口量は、1日1回の投薬計画(すなわち5mgのBI 1356を1日1回)又は1日2回の投薬計画(すなわち2.5mgのBI 1356を1日2回)において投与され得る。
【0029】
本発明の意義において強調されるべき特に好ましいDPP-4阻害剤は、1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)キサンチン(BI 1356又はリナグリプチンとしても知られる)である。BI 1356は高い有効性、24時間持続作用、及び広範囲の治療濃度域を示す。BI 1356を1、2.5、5又は10mgの複数の経口量を12日間に渡り1日1回摂取している2型糖尿病患者において、BI 1356は有利な薬力学的及び薬物動態学的特徴を示す。その特徴とは、安定状態の迅速な達成(例えば、全ての用量群において治療の2日目と5日目の間に安定状態の血漿レベルへ到達すること(13日目に投与前血漿濃度の>90%))、蓄積がほとんどないこと(例えば、1mgより高い用量で平均蓄積率RA,AUC≦1.4であること)及びDPP-4阻害の長時間持続効果を維持すること(例えば、5mg及び10mgの用量レベルにおいてほぼ完全な(>90%)DPP-4阻害、すなわち安定状態においてそれぞれ92.3及び97.3%の阻害、及び薬剤摂取後24時間を越える間隔において>80%の阻害であること)であり、及び≧2.5mg用量における食後2時間の血糖変動が≧80%(すでに1日目において)である顕著な減少であり、かつ尿中に排出される不変親化合物の蓄積量が1日目において投与量の1%未満及び12日目において3-6%より多くは増加しないこと(投与された経口量に対する腎クリアランスCLR,ssが約14〜約70mL/min、例えば5mg用量に対する腎クリアランスは約70mL/minである)である。2型糖尿病の人々においてBI 1356は、プラセボ類似の安全性及び耐容性(例えば、低血糖症、浮腫又は体重増加に対する低リスク)を示す。約≧5mgの低用量において、BI 1356はDPP-4阻害の完全な24時間持続を伴う本来の1日1回の経口薬として作用する。治療上の経口用量レベルにおいては、BI 1356は主に肝臓を通して排出され、及び腎臓を通してはわずかにのみ(投与された経口量の約<7%)排出される。BI 1356は、最初は不変の状態で胆液を通して排出される。腎臓を通して除去されるBI 1356の画分は、患者の腎機能に基づいてBI 1356の用量を修正する必要性がないよう、経時で及び用量増加と共に非常にわずかにのみ増加する。BI 1356の、その低蓄積能及び広範囲の安全域との組み合わせにおける腎外除去は、腎不全及び糖尿病性腎症の高い罹患率を有する患者の母集団において顕著な利点となり得る。BI 1356は、メトホルミンと同時投与された際に、用量漸増の必要性がない1日1回投与に適している。
【0030】
ある態様において、本発明の医薬組成物又は固定用量の組み合わせとして、限定されるものではないが、即時放出メトホルミン及びリナグリプチン(好ましくは即時放出成分としてのリナグリプチン)を含むような組成物が挙げられる。そのような組成物の例としては、限定されるものではないが、単層錠剤、2層錠剤、錠剤中錠剤/ブルズアイ錠剤又は薬剤(リナグリプチン)被覆錠剤(これらのそれぞれは必要に応じて非機能的な膜被覆によって表面被覆されてもよい)が挙げられ、例えば本明細書でより詳細に記載される錠剤の形態、特に実施例の欄で与えられるものである(好ましいのはこの結果本発明の単層錠剤である)。
【0031】
別の態様において、本発明の医薬組成物又は固定用量の組み合わせとして、限定されるものではないが、制御又は徐放性(例えば、遅効性又は持続)放出メトホルミン及びリナグリプチン(好ましくは即時放出成分としてのリナグリプチン)を含むような組成物が挙げられる。そのような組成物の例としては、限定されるものではないが、薬剤(リナグリプチン)被覆錠剤(必要に応じて非機能的な膜被覆によって表面被覆されてもよい)が挙げられ、例えば、i)メトホルミン及び1以上の適切な賦形剤を含む持続放出核、及びii)リナグリプチン(例えば本明細書に記載の膜被覆層として)を含む(好ましくは即時放出)膜被覆を含む組成物である。遅効性放出の例としては、限定されるものではないが、メトホルミンがメトホルミンのピーク血漿レベルが典型的に投与後約8-22時間で達成されるような割合で放出されるメトホルミン組成物(例えば錠剤の核として)が挙げられる。
【0032】
リナグリプチン/メトホルミンIR(即時放出)の2剤固定用量の組み合わせ(錠剤)の典型的な用量強度は、2.5/500mg、2.5/850mg及び2.5/1000mgであり、1日1-3回、特には1日2回投与されてもよい。
リナグリプチン/メトホルミンXR(持続放出)の2剤固定用量の組み合わせ(錠剤)の典型的な用量強度は、5/500mg、5/1000mg及び5/1500mgであり、1日1-2回、特には1日1回(好ましくは夕方、好ましくは食事時に、例えば就寝前に摂取される)投与されてもよく、又は2.5/500mg、2.5/750mg及び2.5/1000mgであり、1日1-2回、特には1又は2の錠剤を1日1回(好ましくは夕方、好ましくは食事時に摂取される)投与されてもよい。
メトホルミンは、通常1日あたり約500mg〜2000mg、最高2500mgまでの様々な用量で、約100mg〜500mg又は200mg〜850mg(1日1-3回)、又は約300mg〜1000mg1日1回又は2回、あるいは遅延放出メトホルミンを1日1回又は2回約100mg〜1000mg、又は好ましくは500mg〜1000mg又は1日1回約500mg〜2000mgの様々な用量の投薬計画を用いて投与される。具体的な用量強度はメトホルミン塩酸塩250、500、625、750、850、及び1000mgであってもよい。
【0033】
異なる代謝の機能障害がしばしば同時に起こるため、多数の異なる有効成分を互いに組み合わせることが頻繁に示される。従って、本発明のDPP-4阻害剤又は医薬組成物が、それぞれの障害に対する慣習的な有効成分、例えば、特に血糖値又は血中脂質レベルを低下させ、血中HDLレベルを上昇させ、血圧を低下させあるいはアテローム性動脈硬化症又は肥満の治療において示される、他の糖尿病治療薬の中から選択される1以上の有効成分と組み合わされた場合には、診断された機能障害に応じて改善された治療成果を得ることができ得る。
本明細書に記載のDPP-4阻害剤又は医薬組成物は、それらの単独での使用に加えて、他の有効成分と併せて用いることもでき、それによって改善された治療結果を得ることができる。そのような組み合わせた治療は、成分の自由な組み合わせとして、又は固定の組み合わせの形態で、例えば錠剤又はカプセルで、投与されてもよい。これに必要とされる組み合わせパートナーの医薬製剤は、医薬組成物として商業的に得ることができ又は従来の方法を用いて当業者が配合することもできる。医薬組成物として商業的に得ることができる有効成分は、先行技術の非常に多くの場所において、例えば毎年記載される薬剤のリスト、連邦薬業協会の「レッドリスト(Rote Liste)(商標)」に、又は「医師用卓上参考書」として知られる処方薬に関する製造業者の情報の毎年更新された編集物に記載されている。
【0034】
糖尿病治療薬の組み合わせパートナーの例(メトホルミン以外)は、スルホニル尿素、例えば、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド、グリクラジド;ナテグリニド;レパグリニド;チアゾリジンジオン、例えば、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン;PPARγモジュレーター、例えば、メタグリダーゼ;PPARγ作動薬、例えば、リボグリタゾン、ミトグリタゾン(mitoglitazone)、INT-131又はバラグリタゾン;PPARγ拮抗薬;PPARγ/αモジュレーター、例えばテサグリタザル、ムラグリタザル、アレグリタザル、インデグルタザル(indeglitazar)及びKRP297;PPARγ/α/δモジュレーター、例えばロベグリタゾン(lobeglitazone);AMPK活性化剤、例えばAICAR;アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC1及びACC2)阻害剤;ジアシルグリセロール-アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤;膵臓β細胞GCRP作動薬、例えば、SMT3-受容体-作動薬及びGPR119、例えばGPR119作動薬である、5-エチル-2-{4-[4-(4-テトラゾール-1-イル-フェノキシメチル)-チアゾール-2-イル]ピペリジン-1-イル}ピリミジン又は5-[1-(3-イソプロピル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-4-イルメトキシ]-2-(4-メタンスルホニル-フェニル)ピリジン;11β-HSD阻害剤;FGF19作動薬又は類似体;αグルコシダーゼ遮断薬、例えばアカルボース、ボグリボース及びミグリトール;α2-拮抗薬;インスリン及びインスリン類似体、例えばヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリングルシリン、r-DNA-インスリンアスパルト、NPHインスリン、インスリンデテミル、インスリンデグルデック(degludec)、インスリントレゴピル(tregopil)、インスリン亜鉛懸濁液及びインスリングラルギン;胃抑制ペプチド(GIP);アミリン及びアミリン類似体(例えば、プラムリンチド(pramlintide)、ダバリンチド(davalintide));又はGLP-1及びGLP-1類似体、例えばエキセンジン-4、例えばエクセナチド、エクセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド(lixisenatide)(AVE-0010)、LY-2428757、デュラグルチド(dulaglutide)(LY-2189265)、セマグルチド(semaglutide)又はアルビグルチド;SGLT2阻害剤、例えばダパグリフロジン(dapagliflozin)、セルグリフロジン(sergliflozin)(KGT-1251)、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジン(canagliflozin)、イプラグリフロジン(ipragliflozin)又はトフォグリフロジン(tofogliflozin);タンパク質チロシンフォスファターゼ阻害剤(例えば、トロダスクエミン);グルコース-6-ホスファターゼ阻害剤;フルクトース-1,6-ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリラーゼモジュレーター;グルカゴン受容体拮抗薬;ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤;ピルベートデヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤(50mg〜600mg)、例えば、PDGF受容体キナーゼ(EP-A-564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、及びWO2006/041976を参照のこと)又はセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤;グルコキナーゼ/グルコキナーゼ活性化剤を含む調節タンパク質モジュレーター;グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤;SH2-ドメイン含有イノシトール5-ホスファターゼタイプ2(SHIP2)阻害剤;IKK阻害剤、例えば高用量サリシレート:JNK1阻害剤;プロテインキナーゼC-θ阻害剤;β3作動薬、例えばリトベグロン、YM 178、ソラベグロン、タリベグロン、N-5984、GRC-1087、ラファベグロン、FMP825;アルドースレダクターゼ阻害剤、例えばAS 3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ-314、CP-744809、及びCT-112;SGLT-1又はSGLT-2阻害剤、例えば、ダパグリフロジン、セルグリフロジン、アチグリフロジン(atigliflozin)又はカナグリフロジン(又はWO2009/035969から式(I-S)又は(I-K)の化合物);KV 1.3チャネル阻害薬;GPR40モジュレーター、例えば[(3S)-6-({2',6'-ジメチル-4'-[3-(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル-3-イル}メトキシ)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-3-イル]酢酸;SCD-1阻害薬;CCR-2拮抗薬;ドーパミン受容体作動薬(メシル酸ブロモクリプチン[Cycloset]);4-(3-(2,6-ジメチルベンジルオキシ)フェニル)-4-オキソブタン酸;サーチュイン活性化剤;および他のDPP IV阻害剤である。
【0035】
ピオグリタゾンの用量は、通常は1日1回約1-10mg、15mg、30mg、又は45mgである。
ロシグリタゾンは、通常は1日1回(又は2回に分けられる)4〜8mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、2、4及び8mgである)。
グリベンクラミド(グリブリド)は、通常は1日1回(又は2回に分けられる)2.5-5〜20mgの用量で(典型的な用量強度は、1.25、2.5及び5mgである)、又は微粉化グリベンクラミドは、1日1回(又は2回に分けられる)0.75-3〜12mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、1.5、3、4.5及び6mgである)。
グリピジドは、通常は1日1回(40mgまで2回に分けられる)2.5〜10-20mgの用量で(典型的な用量強度は、5及び10mgである)、又は持続放出グリピジドは、1日1回5〜10mg(20mgまで)の用量で投与される(典型的な用量強度は、2.5、5及び10mgである)。
グリメピリドは、通常は1日1回1-2〜4mg(8mgまで)の用量で投与される(典型的な用量強度は、1、2及び4mgである)。
【0036】
グリベンクラミド/メトホルミンの2剤併用は、通常は1日1回1.25/250mg〜1日2回10/1000mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、1.25/250、2.5/500及び5/500mgである)。
グリピジド/メトホルミンの2剤併用は、通常は1日2回2.5/250〜10/1000mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、2.5/250、2.5/500及び5/500mgである)。
グリメピリド/メトホルミンの2剤併用は、通常は1日2回1/250〜4/1000mgの用量で投与される。
ロシグリタゾン/グリメピリドの2剤併用は、通常は1日1又は2回4/1mg〜1日2回4/2mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、4/1、4/2、4/4、8/2及び8/4mgである)。
ピオグリタゾン/グリメピリドの2剤併用は、通常は1日1回30/2〜30/4mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、30/4及び45/4mgである)。
ロシグリタゾン/メトホルミンの2剤併用は、通常は1日2回1/500〜4/1000mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、1/500、2/500、4/500、2/1000及び4/1000mgである)。
ピオグリタゾン/メトホルミンの2剤併用は、通常は1日1又は2回15/500mg〜1日3回15/850mgの用量で投与される(典型的な用量強度は、15/500及び15/850mgである)。
【0037】
非スルホニル尿素インスリン分泌促進物質であるナテグリニドは、通常60〜120mgの用量で食事時に投与され(360mg/日まで、典型的な用量強度は60及び120mgである);レパグリニドは、通常0.5〜4mgの用量で食事時に投与される(16mg/日まで、典型的な用量強度は0.5、1及び2mgである)。レパグリニド/メトホルミンの2剤併用は、1/500及び2/850mgの用量強度で利用可能である。
アカルボースは、通常25〜100mgの用量で食事時に投与される(300mg/日まで、典型的な用量強度は、25、50及び100mgである)。ミグリトールは、通常25〜100mgの用量で食事時に投与される(300mg/日まで、典型的な用量強度は25、50及び100mgである)。
単剤又は2剤あるいは3剤(追加又は最初の)併用療法で典型的に用いられる従来の糖尿病治療薬及び高血糖治療薬としては、限定されるものではないが、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、αグルコシダーゼ遮断薬、GLP-1及びGLP-1類似体並びにインスリン及びインスリン類似体を挙げることができ、例えば、一例として本明細書に示される薬剤、その組み合わせが挙げられる。
【0038】
血中の脂質レベルを低下させる組み合わせパートナーの例は、HMG-CoA還元酵素阻害剤、例えばシムバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチン;フィブレート、例えば、ベザフィブレート、フェノフィブレート、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、エトフィブレート及びエトフィリンクロフィブレート;ニコチン酸及びその誘導体、例えば、アシピモックス;PPARα作動薬;PPARδ作動薬;アシル補酵素A阻害剤;コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT;EC2.3.1.26)、例えば、アバシミベ;コレステロール吸収阻害剤、例えば、エゼチミブ;胆汁酸に結合する物質、例えば、コレスチラミン、コレスチポール及びコレセベラム;胆汁酸輸送阻害剤;HDLモジュレーティング活性物質、例えば、D4F、リバースD4F、LXRモジュレーティング活性物質及びFXRモジュレーティング活性物質;CETP阻害剤、例えば、トルセトラピブ、JTT-705(ダルセトラピブ)又はWO2007/005572からの化合物12(アナセトラピブ);LDL受容体モジュレーター;及びApoB100アンチセンスRNAである。
アトルバスタチンの用量は、通常1日1回1mg〜40mg又は10mg〜80mgである。
【0039】
血圧を低下させる組み合わせパートナーの例は、β遮断薬、例えば、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、メトプロロール及びカルベジロール;利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、キシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロリド及びトリアムテレン;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニピジン、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミル及びジルチアゼム;ACE阻害薬、例えば、ラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリル及びトランドラプリル;また、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARBs)、例えば、テルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、アジルサルタン及びエプロサルタンである。
テルミサルタンの用量は、通常20mg〜320mg又は40mg〜160mg/日である。
【0040】
血中のHDLレベルを増加させる組み合わせパートナーの例は、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤;内皮リパーゼ阻害剤;ABC1レギュレーター;LXRα拮抗薬;LXRβ作動薬;PPARδ作動薬;LXRα/βレギュレーター、及びアポリポタンパク質A-Iの発現及び/又は血漿濃度を増加させる物質である。
【0041】
肥満症治療のための組み合わせパートナーの例は、シブトラミン;テトラヒドロリプスタチン(オルリスタット);アリザイム;デキシフェンフルラミン;アキソキン;カンナビノイド受容体1拮抗薬、例えば、CB1拮抗薬リモノバント;MCH-1受容体拮抗薬;MC4受容体作動薬;NPY5及びNPY2拮抗薬;β3-AR作動薬、例えば、SB-418790及びAD-9677;5HT2c受容体作動薬、例えば、APD 356(ロルカセリン);ミオスタチン阻害剤;Acrp30及びアジポネクチン;ステロイルCoAデサチュラーゼ(SCD1)阻害剤;脂肪酸シンターゼ(FAS)阻害剤;CCK受容体作動薬;グレリン受容体モジュレーター;Pyy 3-36;オレキシン受容体拮抗薬;及びテソフェンシン;並びに2剤併用のブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラメート/フェンテルミン及びプラムリンチド/メトレレプチンである。
【0042】
アテローム性動脈硬化症の治療のための組み合わせパートナーの例は、ホスホリパーゼA2阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤(50mg〜600mg)、例えば、PDGF受容体キナーゼ(EP-A-564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、及びWO2006/041976を参照のこと);oxLDL抗体及びoxLDLワクチン;apoA-1ミラノ;ASA;及びVCAM-1阻害剤である。
【0043】
本発明の医薬組成物、製剤、そのような製剤を含む錠剤及びそれらの調製方法:
本発明は、DPP-4阻害剤及びパートナー薬であるメトホルミンの固定用量の組み合わせを含む医薬組成物及びその調製方法に関する。
より具体的な側面において、本発明は、選択されたジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤及びパートナー薬メトホルミンの固定用量の組み合わせ(FDC)のための経口固体製剤形態に関する。FDC製剤は化学的に安定であり及び、a)in vitroでの溶出プロファイルの類似性を表示し及び/又は自由な組み合わせと生物学的同等であるか、又はb)in vitro及びin vivoでの性能を所望のレベルに調整することを可能とする。好ましい態様において、本発明は、適当な錠剤の大きさを有し、それぞれの個々の全ての単独錠剤に対応する本来の溶解特性を維持している、化学的に安定なFDC製剤に関する。
【0044】
CD26としても知られる酵素DPP-4は、N末端にプロリン又はアラニン残基を有する多くのタンパク質のN末端からジペプチドの切断を導くことが知られるセリンプロテアーゼである。この特性のためDPP-4阻害剤は、ペプチドGLP-1を含む生物活性ペプチドの血漿レベルを妨害し、糖尿病の治療に有望な薬剤であるとみなされている。
例えば、DPP-4阻害剤及びその使用は、WO2002/068420、WO2004/018467、WO2004/018468、WO2004/018469、WO2004/041820、WO2004/046148、WO2005/051950、WO2005/082906、WO2005/063750、WO2005/085246、WO2006/027204、WO2006/029769又はWO2007/014886;又はWO2004/050658、WO2004/111051、WO2005/058901、WO2005/097798;WO2006/068163、WO2007/071738、WO2008/017670;WO2007/128721、WO2007/128724又はWO2007/128761、又はWO2009/121945に開示されている。
ビグアニド系高血糖治療薬メトホルミンは、米国特許番号3,174,901に開示されている。メトホルミン(ジメチルジグアニド)及びその塩酸塩の調製は最新技術であり、Emil A.Werner及びJames BellによりJ. Chem.Soc.121、1922、1790-1794において最初に開示された。その他のメトホルミンの薬学的に許容可能な塩は、米国出願番号09/262,526(1999年3月4日出願)又は米国特許番号3,174,901において見つけることができる。本明細書で採用されるメトホルミンはメトホルミン塩酸塩であることが好ましい。
具体的に述べる場合を除き、本明細書において用語「DPP-4阻害剤(s)」、「ビグアニド(s)」、又は「メトホルミン」のようなそれらの任意の種は、その薬学的に許容可能な任意の塩、その結晶形態、水和物、溶媒和物、ジアステレオマー又はエナンチオマーを含むことを意図する。
どんな疑念をも避けるため、上記で引用された上述の文献のそれぞれの開示内容は、参照によりそのまま本明細書に明確に組み込まれる。
【0045】
選択されるDPP-4阻害剤の医薬組成物を調製する試みにおいては、第1又は第2アミノ基を有するDPP-4阻害剤が、多くの慣例の賦形剤、例えば、微結晶性セルロース、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、酒石酸、クエン酸、グルコース、フルクトース、サッカロース、ラクトース、マルトデキストリン、との非適合性、劣化問題、又は抽出問題を示すことが報告されている。化合物それら自体は非常に安定であるが、それらは互換性がないパートナー薬又はその不純生成物、及び/又は固形製剤の形態において使用される多くの賦形剤及び賦形剤の不純物(とりわけ錠剤の中で提供される近接した接触において及び賦形剤/薬物の高い比率において)と反応してしまう。アミノ基は還元糖及び他の反応性カルボニル基、及び、例えば酸化による微結晶性セルロースの表面において形成される、カルボン酸官能基と反応すると思われる。これらの予期できない困難性は使用されるDPP-4阻害剤の低用量の範囲(それらの意外な効力により必要とされる)及び/又は使用されるパートナー薬の高用量の範囲において主に観察される。従って、医薬組成物はこれらの技術的な問題を解決するのに必要であり、選択されたDPP-4阻害剤化合物の予測できない効力に付随し得る。
本発明の他の目的は、前述及び後述の記載から当業者に明らかとなる。
【0046】
ここで本明細書でさらに詳細に記載される医薬組成物は、意外かつ特に有利な特性を有することが分かった。特に、求核及び/又は塩基性の薬剤(安定化のために適し得る、例えば、安定化剤として適切な緩衝剤)をこれらの医薬組成物中で使用することにより、これらの問題、例えば、非適合性及び不十分な安定性、特に、例えば、非適合性パートナー薬、又はその不純生成物及び/又は例えばN-アセチル又はN-カルバモイル誘導体などの遊離塩基型のDPP-4阻害剤との誘導体を形成するような官能基(例えば、糖の還元末端又はアシル基、例えばアセチル又はカルバモイル基)を有する医薬品賦形剤と結合する際の、遊離塩基型のDPP-4阻害剤の反応(例えば、アシル化、尿素形成又はメイラード反応など)に起因し得る分解及び/又は「検定減少("assay decrease")」を克服できることが分かった。従って、これらの医薬組成物中で適切な求核及び/又は塩基性の薬剤(例えば、緩衝剤及び/又はpH修正剤)を使用することにより、分解及び劣化に対する保護が達成され得る。
【0047】
このように、本発明は、DPP-4阻害剤、パートナー薬、及び求核及び/又は塩基性薬剤を含む、化学的に安定なFDC製剤に向けられる。
このように、本発明はまた、DPP-4阻害剤、パートナー薬、及び適切な緩衝剤を含む、化学的に安定なFDC製剤に向けられる。
このように、本発明はまた、DPP-4阻害剤、パートナー薬、及びpH修正剤を含む、化学的に安定なFDC製剤に向けられる。
【0048】
本発明の意義においてDPP-4阻害剤としては、限定されるものではないが、以上及び以下で示される任意のDPP-4阻害剤、好ましくは、経口の活性DPP-4阻害剤が挙げられる。
より密接な態様においては、本発明の意義におけるDPP-4阻害剤としては、アミノ基、特に遊離又は第1アミノ基を有するDPP-4阻害剤が挙げられる。
更により密接な態様において、本発明との関連においてDPP-4阻害剤は、第1アミノ基、特に遊離型第1アミノ基を有するDPP-4阻害剤である。
【0049】
使用されるパートナー薬は、メトホルミン、特にメトホルミン塩酸塩(1,1-ジメチルビグアニド塩酸塩、又はメトホルミンHCl)である。
使用される緩衝剤は、塩基性のアミノ酸であり、分子内アミノ基及びアルカリ性の特徴(等電点pl:7.59-10.76)を有する、例えば、L-アルギニン、L-リジン又はL-ヒスチジンである。本発明の意義において好ましい緩衝剤は、L-アルギニンである。L-アルギニンは、例えばパートナー薬の存在下でDPP-4阻害剤の劣化を抑制することにより、本発明の組成物において特に適切な安定効果を有する。
【0050】
本発明は、DPP-4阻害剤、パートナー薬、求核及び/又は塩基性薬剤、及び1以上の医薬品賦形剤を含む、医薬に向けられる。
本発明はまた、DPP-4阻害剤、パートナー薬、適切な緩衝剤、及び1以上の医薬品賦形剤を含む、医薬組成物に向けられる。
本発明はまた、DPP-4阻害剤、パートナー薬、pH修正剤、及び1以上の医薬品賦形剤を含む、医薬に向けられる。
ある態様において、本発明は、DPP-4阻害剤;パートナー薬(特にメトホルミン);及び組成物及び/又はDPP-4阻害剤を、特に化学的劣化に対して、安定化させるためのL-アルギニン;及び1以上の医薬品賦形剤を含む医薬組成物(例えば、経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
別の態様において、本発明は、DPP-4阻害剤;パートナー薬(特にメトホルミン);及び組成物及び/又はDPP-4阻害剤を、特に化学的劣化に対して、安定化させるためのL-アルギニン;及び1以上の医薬品賦形剤から得ることができる医薬組成物(例えば、経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
【0051】
一般に、使用され得る医薬品賦形剤は、1以上の充填剤、1以上のバインダー又は希釈剤、1以上の潤滑剤、1以上の錠剤分解物質、及び1以上の流動促進剤、1以上の膜被覆剤、1以上の可塑剤、1以上の顔料などからなる群より選択されてもよい。
本発明の医薬組成物(錠剤)は、通常バインダーを含む。
より詳細には、本発明の医薬組成物(錠剤)は、通常1以上の充填剤(例えば、D-マンニトール、コーンスターチ、及び/又はα化デンプン)、バインダー(例えば、コポビドン)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、及び流動促進剤(例えば、コロイド状無水シリカ)を含む。
適切には本発明で使用される医薬品賦形剤は、従来の材料、例えば充填剤としてのD-マンニトール、コーンスターチ、α化デンプン、バインダーとしてのコポビドン、潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウム、流動促進剤としてのコロイド状無水シリカ、膜被覆剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、顔料としての二酸化チタン、酸化鉄赤/黄、及びタルク等である。
本発明の典型的な組成物は、バインダーのコポビドン(コポリビドン又はコリドン(Kollidon)VA64としても知られる)を含む。
さらに、本発明の典型的な組成物は、充填剤のコーンスターチ、バインダーのコポビドン、潤滑剤のステアリン酸マグネシウム、及び流動促進剤のコロイド状無水シリカを含む。
【0052】
本発明の態様の医薬組成物は、糖尿病の治療及び/又は1型又は2型糖尿病患者において血糖管理を達成することを意図し及び適切な医薬品賦形剤と一緒に本明細書に記載されるような固定用量の組み合わせ製剤を含む。加えて、組成物は関節リウマチ、肥満及び骨粗鬆症の治療並びに同種移植を支援するのに使用され得る。
【0053】
このように、特に、本発明は、DPP-4阻害剤、メトホルミン塩酸塩、L-アルギニン及び1以上の医薬品賦形剤、具体的には1以上の充填剤、1以上のバインダー、1以上の流動促進剤、及び/又は1以上の潤滑剤を含む医薬組成物(特に経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
より具体的には、本発明は、DPP-4阻害剤、メトホルミン塩酸塩、L-アルギニン、バインダーとしてのコポビドン及び1以上の更なる医薬品賦形剤を含む医薬組成物(特に経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
【0054】
本発明の典型的な医薬組成物は、DPP-4阻害剤の部分に、総DPP-4阻害剤の部分の0.1-10質量%のL-アルギニン(例えば、約0.1質量%、0.25質量%、0.556質量%、2.12質量%、2.22質量%又は10質量%)、特に約2質量%(例えば、より具体的には、被覆されていない単層錠剤の総錠剤核の2.12質量%)を含んでもよい。
本発明の典型的な医薬組成物は、DPP-4阻害剤の部分に(総DPP-4阻害剤の部分の質量%で)、
0.2-10質量% DPP-4阻害剤、及び
0.1-10質量% L-アルギニン
を含んでもよい。
【0055】
本発明の典型的な医薬組成物は、DPP-4阻害剤及びL-アルギニンを、質量比で約1:20〜約10:1又は約1:15〜約10:1又は約1:10〜約10:1、特に1:10〜5:2、例えば質量比で1:10、1:8.5、1:5、1:1又は1:0.4、より具体的には質量比で2.5mg:25mg、2.5mg:21.2mg、2.5mg:12.5mg、2.5mg:2.5mg、又は2.5mg:1mg含んでもよい。
本発明の典型的な医薬組成物は、メトホルミン塩酸塩及びL-アルギニンを、質量比で約40:1〜約1000:1、例えば質量比で40:1、200:1、340:1、400:1、500:1、850:1、又は1000:1、より具体的には質量比で500mg:12.5mg、850mg:21.2mg、1000mg:25mg、500mg:2.5mg、850mg:2.5mg、1000mg:2.5mg、500mg:1mg、850mg:1mg、又は1000mg:1mg含んでもよい。
本発明の典型的な医薬組成物は、DPP-4阻害剤、メトホルミン塩酸塩及びL-アルギニンを、質量比で約1:200:0.4〜約1:200:5(例えば1:200:0.4、1:200:1、1:200:5)、又は約1:340:0.4〜約1:340:8.5(例えば1:340:0.4、1:340:1、1:340:8.5)、又は約1:400:0.4〜約1:400:10(例えば1:400:0.4、1:400:1、1:400:10)含んでもよい。
【0056】
本発明の典型的な医薬組成物は1以上の下記の量(総被覆錠剤質量の質量%で)を含んでもよい。
0.1-0.5質量% DPP-4阻害剤、
47-85質量% メトホルミン塩酸塩、
0.07-2.2質量% L-アルギニン、
3.9-8.1質量% バインダー(例えば、コポビドン)、
2.3-5.9質量% 充填剤1(例えば、コーンスターチ)、
0-4.4質量% 充填剤2(例えば、α化デンプン)、
0-33質量% 充填剤3(例えば、D-マンニトール)、
0.7-1.5質量% 潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、及び
0.1-0.5質量% 流動促進剤(例えば、コロイド状無水シリカ)。
【0057】
本発明のFDC製剤に関する更なる詳細、例えば、原料、原料の割合(例えばDPP-4阻害剤、メトホルミン塩酸塩、L-アルギニン及び/又は賦形剤の割合)、特に本発明内で使用される特別な製剤形態(錠剤)及びそれらの調製については、以上及び以下の開示(以下の実施例の例及び請求項を通して)から当業者に明らかとなる。
【0058】
第1の態様(態様A)において、本発明との関連でDPP-4阻害剤は、下記式の任意のDPP-4阻害剤である。
式(I)
【化1】

又は式(II)
【化2】

又は式(III)
【化3】

式中、R1は([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノベンジル、(3-シアノキノリン-2-イル)メチル、(3-シアノピリジン-2-イル)メチル、(4-メチルピリミジン-2-イル)メチル、又は(4,6-ジメチルピリミジン-2-イル)メチルを示し及びR2は、3-(R)-アミノピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチルプロピル)メチルアミノ又は(2-(S)-アミノプロピル)メチルアミノ、又はその薬学的に許容可能な塩を示す。
【0059】
第2の態様(態様B)において、本発明との関連でDPP-4阻害剤は、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン及びアログリプチン、又はその薬学的に許容可能な塩から成る群より選ばれるDPP-4阻害剤である。
【0060】
第1の態様(態様A)に関して、好ましいDPP-4阻害剤は、以下の化合物及びそれらの薬学的に許容可能な塩の一部又は全部である:
・1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2004/018468、実施例2(142)に匹敵する):
【化4】

・1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2004/018468、実施例2(252)に匹敵する):
【化5】

・1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2004/018468、実施例2(80)に匹敵する):
【化6】

・2-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)-3-(ブタ-2-イニル)-5-(4-メチルキナゾリン-2-イルメチル)-3,5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン(WO2004/050658、実施例136に匹敵する):
【化7】

・1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチルプロピル)メチルアミノ]キサンチン(WO2006/029769、実施例2(1)に匹敵する):
【化8】

・1-[(3-シアノキノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(30)に匹敵する):
【化9】

・1-(2-シアノベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(39)に匹敵する):
【化10】

・1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノプロピル)メチルアミノ]キサンチン(WO2006/029769、実施例2(4)に匹敵する):
【化11】

・1-[(3-シアノピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(52)に匹敵する):
【化12】

・1-[(4-メチルピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(81)に匹敵する):
【化13】

・1-[(4,6-ジメチルピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(82)に匹敵する):
【化14】

・1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(WO2005/085246、実施例1(83)に匹敵する):
【化15】

【0061】
これらのDPP-4阻害剤は、例外的な効力及び長期にわたる作用と有利な薬理学的特性、受容体選択性及び有利な副作用プロファイルを結びつけるか又は他の薬学的有効成分と組み合わされた場合に予想外の治療上の利点又は改善をもたらすことから、構造的に匹敵するDPP-4阻害剤から区別される。これらの調製は、言及した引例に開示されている。
本発明の態様Aの上述のDPP-4阻害剤の中でより好ましいDPP-4阻害剤は、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン、特にその遊離塩基である(BI 1356としても知られる)。
第2の態様(態様B)に関して、好ましいDPP-4阻害剤は、ビルダグリプチン、サクサグリプチン及びアログリプチン、及びそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される。
【0062】
特に明記しない限り、本発明により、上に記載されたDPP-4阻害剤の定義はそれらの薬学的に許容可能な塩の他に、その水和物、溶媒和物及び多形体も含むことは理解されるべきである。それらの塩、水和物及び多形体に関しては、以上及び以下で示されるものに詳細な言及がなされている。
【0063】
態様Aに関して、態様AのDPP-4阻害剤のための合成方法は当業者に既知である。有利には、本発明の態様AのDPP-4阻害剤は、文献に記載される合成方法を用いて調製され得る。従って、例えば、式(I)のプリン誘導体は、WO2002/068420、WO2004/018468、WO2005/085246、WO2006/029769又はWO2006/048427に記載されるように得ることができ、これらの開示内容は本明細書に組み込まれるものとする。式(II)のプリン誘導体は、例えば、WO2004/050658又はWO2005/110999に記載されるように得ることができ、これらの開示内容は本明細書に組み込まれるものとする。式(III)のプリン誘導体は、例えば、WO2006/068163、WO2007/071738又はWO2008/017670に記載されるように得ることができ、これらの開示内容は本明細書に組み込まれるものとする。それらのDPP-4阻害剤の調製は、上記に具体的に言及されており、それに関連して挙げられた引例に開示されている。具体的なDPP-4阻害剤の多形結晶変形及び製剤は、WO2007/128721及びWO2007/128724にそれぞれ開示され、これらの開示内容は本明細書にそのまま組み込まれるものとする。
【0064】
態様Bに関して、態様BのDPP-4阻害剤のための合成方法は科学文献及び/又は公開された特許文献、特に本明細書で引用したものに記載されている。
【0065】
第1の態様(態様A)に関して、態様Aにおいて本明細書に挙げられたDPP-4阻害剤に典型的に必要とされる用量は、経口投与される場合、0.5mg〜100mg、好ましくは2.5mg〜50mg又は0.5mg〜10mg、より好ましくは2.5mg〜10mg又は1mg〜5mgであり、いずれの場合においても1日1〜4回である。従って、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチンの必要とされる用量は、経口投与される場合、0.5mg〜10mg/患者/日、好ましくは2.5mg〜10mg又は1mg〜5mg/患者/日である。
【0066】
態様Aにおいて本明細書に挙げられるDPP-4阻害剤を含む医薬組成物で調製される製剤形態は、有効成分を0.1-100mg、特に0.5〜10mgの用量範囲で含む。従って、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチンの具体的な用量強度は、0.5mg、1mg、2.5mg、5mg及び10mgである。本発明の固定用量の組み合わせの医薬組成物に含まれる1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチンのより具体的な単位用量強度は2.5mgである。
【0067】
第2の態様(態様B)に関して、哺乳動物、例えばヒト(例えば約70kgの体重である)に投与される態様Bにおいて本明細書に挙げられるDPP-4阻害剤の用量は、一般的には約0.5mg〜約350mg、例えば約10mg〜約250mg、好ましくは20-200mg、より好ましくは20-100mgの活性部分/人/日、又は約0.5mg〜約20mg、好ましくは2.5-10mg/人/日であってもよく、好ましくは1〜4回の単回投与に分けられ、それは例えば同じサイズであってもよい。単回用量強度は、例えば、2.5、5、10、25、40、50、75、100、150及び200mgのDPP-4阻害剤の活性部分を含む。
【0068】
DPP-4阻害剤シタグリプチンの用量強度は、通常は、25〜200mgの活性部分である。シタグリプチンの推奨用量は、1日1回の活性部分(遊離塩基無水物)について算出された100mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物(活性部分)の単位用量強度は25、50、75、100、150及び200mgである。シタグリプチン(例えば、1錠あたり)の具体的な単位用量強度は、25、50及び100mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物に対するシタグリプチンリン酸塩一水和物の等価量、即ち、それぞれ、32.13、64.25、96.38、128.5、192.75及び257mgが医薬組成物中に用いられる。25及び50mgのシタグリプチンの調製された用量は腎不全を有する患者に用いられる。
【0069】
DPP-4阻害剤ビルダグリプチンの用量範囲は、通常は1日10〜150mg、特に1日25〜150mg、25〜100mg又は25〜50mg又は50〜100mgである。1日の経口用量の具体的な例は、25、30、35、45、50、55、60、80、100又は150mgである。より具体的な側面において、ビルダグリプチンの1日の投与は、25〜150mg又は50〜100mgである。別のより具体的な側面において、ビルダグリプチンの1日の投与は、50又は100mgである。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1又は2回生じてもよい。具体的な用量強度は、50mg又は100mgのビルダグリプチンである。
【0070】
メトホルミンは、通常は約250mg〜3000mgの様々な用量で、具体的には様々な用量の投薬計画を用いて500mg〜2000mg(2500mgまで)/日で投与される。
パートナー薬メトホルミンの用量範囲は、通常は100mg〜500mg又は200mg〜850mg(1日1-3回)、又は1日1又は2回300mg〜1000mgである。
本発明で用いるメトホルミン塩酸塩の単位用量強度は、100mg〜2000mg又は250mg〜2000mg、好ましくは250mg〜1000mgであってもよい。具体的な用量強度は、メトホルミン塩酸塩の250、500、625、750、850及び1000mgであってもよい。これらのメトホルミン塩酸塩の単位用量強度は、2型糖尿病の治療のための販売用に米国で承認された用量強度を表す。本発明の固定用量の組み合わせの医薬組成物に組み込まれるメトホルミン塩酸塩のより具体的な単位用量強度は、メトホルミン塩酸塩の500、850及び1000mgである。
【0071】
本発明の医薬組成物中のDPP-4阻害剤及びパートナー薬の量は、上述で規定されたそれぞれの用量範囲に対応する。例えば、医薬組成物は、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチンを0.5mg〜10mg(即ち0.5mg、1mg、2.5mg、5mg又は10mg)の量で、及びメトホルミン塩酸塩を250mg〜1000mg(即ち250、500、625、750、850又は1000mg)の量で含む。
【0072】
本発明の固定用量の組み合わせにおける1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン及びメトホルミン塩酸塩の用量強度の具体的な態様は下記のとおりである:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、及び500mgのメトホルミン塩酸塩;
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、及び850mgのメトホルミン塩酸塩;
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、及び1000mgのメトホルミン塩酸塩。
本発明のBI 1356及びメトホルミンの具体的な固定用量の組み合わせは、患者へ1日1回又は2回、具体的には1日2回投与されてもよい。
【0073】
本発明の好ましい側面において、本発明は、
1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、ビルダグリプチン、サクサグリプチン及びアログリプチンからなる群より選択されるDPP-4阻害剤、
メトホルミン塩酸塩、
L-アルギニン、
及び1以上の医薬品賦形剤、例えば本明細書に記載されるもの、
を含むか又はこれらから得ることができる医薬組成物(特に経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
【0074】
本発明の意義において強調されるべき特に好ましいDPP-4阻害剤は、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基(BI 1356としても知られる)である。
【0075】
特に、L-アルギニンは、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基とメトホルミン塩酸塩のFDCの組み合わせのための安定化剤として効果的であることが分かった。加速条件における6ヶ月保存後でさえも、L-アルギニンは1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基の劣化を効果的に抑制することができる。その効果は、濃度依存するようである。このように、L-アルギニンは製剤において安定化剤及び緩衝剤として作用し得る。
【0076】
本発明のより好ましい側面において、本発明は、
1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基(BI 1356)、
メトホルミン塩酸塩、
L-アルギニン、
及び1以上の医薬品賦形剤、例えば本明細書に記載されるもの、
を含むか又はこれらから作られる医薬組成物(特に経口の固体製剤形態、特に錠剤)に向けられる。
【0077】
本発明の典型的な医薬組成物は有効成分及びL-アルギニンの下記の量(1)、(2)又は(3)の任意の1つを含むか又は組み合わせることを含むことにより作られる:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、500mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mg〜12.5mgのL-アルギニン(具体的には1.0mg、2.5mg又は12.5mgのL-アルギニン);
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、850mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mg〜21.2mgのL-アルギニン(具体的には1.0mg、2.5mg又は21.2mgのL-アルギニン);
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、1000mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mg〜25.0mgのL-アルギニン(具体的には1.0mg、2.5mg又は25mgのL-アルギニン)。
【0078】
本発明の更なる側面において、本発明は、本発明の組成物、製剤、混合物又は製剤形態の製造方法を提供し、例えばそれは当業者に既知の方法を使用することにより及び/又は本明細書に記載の方法により、例えばそれらは上述及び後述で示される成分及び/又は原料あるいはこれらの予備混合物の使用を含む工程(例えば、混合、結合、混和及び/又は構成)により得ることができるものであり、並びに本発明はさらにこれらの方法又は工程により得ることができる及び/又は上述及び後述に記載の成分、原料、予備混合物及び/又は混合物から得ることができる組成物、製剤、混合物又は製剤形態を提供する。
本発明の更なる側面において、本発明は、実質的に不純物及び/又は分解生成物を含まない又はわずかにのみ含む、本発明の医薬組成物、製剤、混合物又は製剤形態を提供する;これは例えば不純物又は分解生成物、例えば遊離塩基型のDPP-4阻害剤のN-アセチル、N-ホルミル、N-メチル及び/又はN-カルバモイル誘導体の個々又は全体を全質量で、約<5%、又は約<4%、又は約<3%、又は約2%未満、好ましくは約1%未満、より好ましくは約0.5%未満、さらにより好ましくは約0.2%未満含む組成物、製剤、混合物又は製剤形態を意味する。成分及び/又は分解物は既知の分析方法、例えばHPLC法を使用することにより決定され得る。
【0079】
これに関連して、本発明の更なる側面において、本発明は本明細書に記載されるようにアミノ基、特に遊離第1アミノ基を有するDPP-4阻害剤の誘導体を提供し、当該誘導体は、アミノ基のアセチル化(例えば、-NHC(O)CH3基を生成すること)又はアミノ基のカルバモイル化(例えば、-NHC(O)NH2基を生成すること)又はアミノ基のホルミル化(例えば、-NHC(O)H基を生成すること)又はアミノ基のメチル化(例えば、-NHCH3基を生成すること)により得ることができる。
本明細書に記載されるような組成物、製剤及び製剤形態は1以上のそのような誘導体(例えば、微量及び本明細書に示されるそれぞれのDPP-4阻害剤との混合で)を含み、又は実質的にその遊離型も考慮される。
【0080】
本発明のFDC製剤の製剤形態:
本発明の別の目的は、合理的な錠剤の大きさ、良好な錠剤特性(例えば、安定性、硬度、破砕性、分解性、含量均一性など)を有し、及び好ましい態様においては、最小化された失敗リスクと生物学的に同等であることの証拠が要求される場合に備えて、それぞれの単独錠剤の本来の溶解特性を妨害することのない、本発明のFDC製剤を開発することである。
製剤形態の設計は、錠剤の大きさ及び分解特性を最適化するだけでなく安定化剤の量を最小化するための重要事項である。なぜなら緩衝剤の溶解によるpHの変化はDPP-4阻害剤又はパートナー薬の溶解特性に影響し得るからである。製剤形態の選択は使用される有効成分の用量強度、及びそれらの物理化学的及び固体状態の特徴に依存する。
【0081】
従来のアプローチ(即ち物理的な分離)は、本発明の特定のDPP-4阻害剤の安定化に有用ではない可能性がある。L-アルギニンのような緩衝剤は分解を抑制するために製剤中へ加えられることを必要とするが、しかしながらそのアルカリ性の特徴がDPP-4阻害剤又はパートナー薬の溶解特性又は安定性に負の影響を与えることからL-アルギニンの量を最小化することが必要である可能性がある。
【0082】
このように、本発明のFDC製剤に適切な製剤形態は膜被覆錠剤(薬物添加(drug loading)のための膜被覆、例えばパートナー薬を含む錠剤の核に膜被覆することによる特別なDPP-4阻害剤の薬物添加)、単層錠剤、2層錠剤、3層錠剤及び圧縮被覆錠剤(例えば、DPP-4阻害剤の核を有する錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤)であり、これらの製剤形態はDPP-4阻害剤及び使用されるパートナー薬の所望の医薬特性及び特徴の検討中の目的達成のための優れた指標であることが分かった。
当該製剤形態は、それぞれの単独錠剤の本来の溶解特性を維持するか又はその特性を所望のレベル(例えば拡張された放出特性が挙げられる)に調整するFDC製剤、及び合理的な錠剤の大きさに適用可能であることが分かった。
【0083】
本発明の典型的な単層錠剤は、DPP-4阻害剤、メトホルミン塩酸塩、L-アルギニン、1以上の充填剤(例えばコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えばコポビドン)、1以上の流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含む。
【0084】
本発明の好ましい態様において、本発明は、
1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン(BI 1356としても知られる、例えば2.5mgの量において)、
メトホルミン(特にメトホルミン塩酸塩、例えば500mg、850mg又は1000mgの量において)、
L-アルギニン、
及び1以上の医薬品賦形剤、特に1以上の充填剤(例えばコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えばコポビドン)、1以上の流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)及び/又は1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)
を含むか又はこれらから作られる経口の固体医薬組成物、好ましくは錠剤、特に単層錠剤に向けられ、それは同時に膜被覆、例えば1以上の膜被覆剤(例えばヒプロメロース)、1以上の可塑剤(例えばプロピレングリコール)、1以上の顔料(例えば二酸化チタン、酸化鉄赤及び/又は酸化鉄黄)及び/又は1以上の流動促進剤(例えばタルク)を含んでいてもよい。
【0085】
本発明の錠剤の製造方法は、顆粒形態の1以上の最終混合物の打錠(例えば圧縮)を含む。本発明の1つ又は複数の(最終)混合物の顆粒は、当業者に既知の方法(例えば高せん断湿式造粒又は流動層造粒)により調製されてもよい。本発明の顆粒及び本発明の顆粒の調製のための造粒工程(それらの別個の段階を含む)の詳細は、下記実施例の中の例を通して説明される。
【0086】
単層の組成物を含む顆粒の調製のための実例となる造粒工程は、以下を含む。
i.)溶媒又は溶媒(例えば造粒液体を生成するための室温における純水)の混合物中でL-アルギニン、バインダー(例えばコポピドン)及び必要に応じてDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)を混合(例えば溶解又は分散)すること;
ii.)メトホルミン塩酸塩、充填剤(例えばコーンスターチ)及び必要に応じてDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)を適切な混合器内で混合して予備混合物を調製すること;
ここでDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)はi.)で得られた造粒液体に含まれていてもよく、又はii.)で得られた予備混合物に含まれていてもよいが、BI 1356は造粒液体中に分散されて予備混合物中にはないことが好ましい;
iii.)予備混合物中に造粒液体を噴霧し混合物を、例えば流動層造粒装置内で、好ましくは乾燥条件下で造粒すること;
iv.)顆粒を、例えば注入口空気温度約70℃で、1-2%の範囲の所望の乾燥減量が得られるまで乾燥すること;
v.)乾燥顆粒の塊を、例えば網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを通して篩いにかけることにより除去すること;
vi.)篩いにかけた顆粒及び好ましくは篩いにかけた流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)を適切な混合器内で混合すること;
vii.)最終混合物を得るため、例えば自由落下混合器内において、好ましくは篩いにかけた潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を顆粒へ加えること。
【0087】
好ましくは、本発明の単層錠剤は、有効成分及びL-アルギニンの下記の量(1)、(2)又は(3)の任意の1つを含むか又はそれを含む混合物から得ることができる:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、500mgのメトホルミン塩酸塩、及び12.5mgのL-アルギニン;
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、850mgのメトホルミン塩酸塩、及び21.2mgのL-アルギニン;
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、1000mgのメトホルミン塩酸塩、及び25mgのL-アルギニン。
【0088】
本発明の典型的な2層錠剤は、
DPP-4阻害剤、L-アルギニン、1以上の充填剤(例えばD-マンニトール、α化デンプン及びコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えばコポビドン)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むDPP-4阻害剤の部分
及び
メトホルミン塩酸塩、1以上の充填剤(例えばコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えば、コポビドン)、1以上の流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むメトホルミン塩酸塩の部分
を含む。
【0089】
好ましくは、本発明の2層錠剤は、有効成分及びL-アルギニンの下記の量(1)、(2)又は(3)の任意の1つを含むか又はそれを含む混合物から得ることができる:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、500mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン;
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、850mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン;
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、1000mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン。
【0090】
本発明の典型的な圧縮被覆錠剤(錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤)は、
DPP-4阻害剤、L-アルギニン、1以上の充填剤(例えばD-マンニトール、α化デンプン及びコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えばコポビドン)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むDPP-4阻害剤の核の部分
及び
メトホルミン塩酸塩、1以上の充填剤(例えばコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えば、コポビドン)、1以上の流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むメトホルミン塩酸塩の部分
を含む。
【0091】
好ましくは、本発明の圧縮被覆錠剤(錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤)は、有効成分及びL-アルギニンの下記の量(1)、(2)又は(3)の任意の1つを含むか又はそれを含む混合物から得ることができる:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、500mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mgのL-アルギニン;
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、850mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mgのL-アルギニン;
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、1000mgのメトホルミン塩酸塩、及び1.0mgのL-アルギニン。
【0092】
本発明の典型的な膜被覆錠剤(メトホルミン塩酸塩の錠剤上のDPP-4阻害剤の被覆、即ち薬物添加のための膜被覆による薬物の層状化)は、
メトホルミン塩酸塩、1以上の充填剤(例えばコーンスターチ)、1以上のバインダー(例えば、コポビドン)、1以上の流動促進剤(例えばコロイド状無水シリカ)及び1以上の潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)を含むメトホルミン塩酸塩の核の部分、
ここで当該核の部分は、1以上の膜被覆剤(例えばヒプロメロース)、1以上の可塑剤(例えばプロピレングリコール)、1以上の顔料(例えば二酸化チタン、酸化鉄赤及び/又は酸化鉄黄)及び1以上の流動促進剤(例えばタルク)を含む膜被覆によりシールコートされている;
及び
DPP-4阻害剤、L-アルギニン、1以上の膜被覆剤(例えばヒプロメロース)及び1以上の可塑剤(例えばプロピレングリコール)を含むDPP-4阻害剤の層。
【0093】
好ましくは、本発明の膜被覆錠剤(DPP-4阻害剤の薬物添加)は、有効成分及びL-アルギニンの下記の量(1)、(2)又は(3)の任意の1つを含むか又はそれを含む混合物から得ることができる:
(1)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、500mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン;
(2)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、850mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン;
(3)2.5mgの1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基、1000mgのメトホルミン塩酸塩、及び2.5mgのL-アルギニン。
【0094】
好ましくは、これらの上述の錠剤(単層、2層、圧縮被覆及び薬物被覆の錠剤)はさらに、膜被覆剤(例えばヒプロメロース)、可塑剤(例えばプロピレングリコール)、顔料(例えば二酸化チタン、酸化鉄赤及び/又は酸化鉄黄)及び流動促進剤(例えばタルク)を含む最終膜被覆で外部被覆される。典型的にこの追加膜である外部被覆は組成物の全質量の1-4質量%で存在してもよく、好ましくは1-2質量%である。
【0095】
本発明の下記の製剤形態は、製剤原料及び所望の医薬特性の要求に基づいて、1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン遊離塩基(BI 1356)及びメトホルミン塩酸塩のFDC製剤に適用され得る。
【0096】
a)単層錠剤
L-アルギニンを有する単層錠剤は満足のいく安定性の結果、良好な溶解特性及び良好な含量均一性(CU)を示す。単層錠剤は従来の技術(DPP-4阻害剤及びメトホルミン塩酸塩の流動層造粒が挙げられ、例えば流動層造粒器の造粒液体にDPP-4阻害剤を粉体又は水性懸濁液として加えることを含む)を用いて製造され得る。
【0097】
b)2層錠剤
L-アルギニンを有する2層錠剤は期待できる安定性の結果、良好な溶解特性及び良好なCUを示す。2層錠剤は従来の2層打錠技術(例えば、回転式2層打錠機)を用いて製造され得る。
【0098】
c)圧縮被覆錠剤
圧縮被覆錠剤(錠剤中錠剤及び高度圧縮被覆ブルズアイ錠剤)は期待できる安定性、良好なCUおよび溶解性を示す。圧縮被覆錠剤は従来の圧縮被覆技術(例えば錠剤中錠剤を得るためのキリアン打錠圧縮(Kilian tablet press)で又はブルズアイ錠剤を得るための他の従来の圧縮被覆機で)を用いて製造され得る。このアプローチの利点として、製剤中のL-アルギニンの量を最小化し及びDPP-4阻害剤の部分(薬物添加の非常に少ない量;2.5mg/錠剤でメトホルミン塩酸塩の用量強度は500、850及び1000mg/錠剤)の評価及びCUの制御を容易にする。別の利点は、DPP-4阻害剤及びメトホルミン塩酸塩の部分は錠剤の大きさを最小化するため柔軟に設計され得ることである。「ブルズアイ錠剤」という名前の改良された圧縮被覆錠剤は潜在的に2層錠剤及び他のFDCのための普遍的な製剤であり得る。ブルズアイ錠剤は別個の核の形成(2層打錠におけるような)が必要とならない一段階の圧縮被覆において製造され得る。
本発明の意義において当業者は本明細書で使用される用語「ブルズアイ錠剤」で何が意味されているかについて知っていることに留意すべきである。当業者に知られているように、この錠剤(はめ込み錠剤(inlay tablet)またはドット(dot)とも呼ばれる)は外側の被覆及び内部の核より構成され、外側の被覆に完全に取り囲まれた内部の核の領域の代わりに、内部の核の領域に相当する領域の1つの表面が露出している。
【0099】
d)膜被覆錠剤(薬物添加のための膜被覆による薬物の層状化)
メトホルミン塩酸塩の錠剤へのDPP-4阻害剤の薬物被覆により、許容可能な溶解性の結果及び期待できる安定性のデータが示される。L-アルギニンは安定化のために膜被覆の中へ加えられる必要がある。このアプローチの利点として、製剤形態が改良された/制御された放出の製剤であってもDPP-4阻害剤の部分をパートナー薬の部分へそのまま入れ込むことが可能である。膜被覆の工程内において被覆のエンドポイントの決定は分析論を通じて必要とされる。
【0100】
本明細書に記載されるように膜被覆によりDPP-4阻害剤を層状化する方法(密閉被覆、薬物添加及び必要に応じて外部被覆が挙げられる)は有効成分(例えば本明細書に記載のパートナー薬)を含み得る任意の種類の核又は錠剤、例えばメトホルミンの核又は錠剤、例えば即時放出メトホルミン錠剤、徐放性メトホルミン錠剤、持続放出メトホルミン錠剤、改良放出メトホルミン錠剤、制御放出メトホルミン錠剤又は遅効性放出メトホルミン錠剤にも適用され得る。このように本発明はさらに、DPP-4阻害剤、膜形成剤(例えばヒプロメロース)、可塑剤(例えばプロピレングリコール)及びL-アルギニンを含む膜被覆層を含む錠剤、又は本明細書に記載の膜被覆によりDPP-4阻害剤を層状化する方法を使用することを含むことにより得られる錠剤に関する。本発明はまた即時又は持続放出のメトホルミン錠剤の核、密閉被覆、DPP-4阻害剤を含む膜被覆層、及び、必要に応じて外部被覆;例えば本明細書に記載されるものを含むFDC錠剤に関し、並びにメトホルミン錠剤の核に密閉被覆する次の段階、膜被覆によりDPP-4阻害剤を層状化し、及び必要に応じて外部被覆する、例えば本明細書に記載のそれぞれの段階を含む工程により作られるFDC錠剤に関する。
【0101】
本発明の医薬的即時放出製剤形態は好ましくは、例えば45分後にそれぞれの有効成分がそれぞれの有効成分の少なくとも75質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%が溶解する溶解特性を有する。特別な態様においては、30分後に特に本発明の単層錠剤(錠剤核及び膜被覆錠剤が挙げられる)のそれぞれの有効成分がそれぞれの有効成分の少なくとも70-75質量%(好ましくは少なくとも80質量%)溶解する。更なる態様においては、15分後に特に本発明の単層錠剤(錠剤核及び膜被覆錠剤が挙げられる)のそれぞれの有効成分がそれぞれの有効成分の少なくとも55-60質量%溶解する。溶解特性は標準的な溶解試験、例えば標準的な薬局方に従って(例えば温度37℃において撹拌速度50rpmのパドル式、溶出溶媒としての0.1M塩酸、並びに試料のHPLC(BI 1356)及びUV(メトホルミン)分析を用いて)決定され得る。
【0102】
本発明の医薬組成物及び医薬製剤形態において、BI 1356、例えばその結晶形態は、好ましくは例えばそれぞれの有効医薬成分の少なくとも90%が200μm未満の粒径を有する(すなわちX90<200μm、より好ましくはX90≦150μmである)粒度分布(好ましくは体積で)を有する。より好ましくは、粒度分布は例えばX90≦100μmであり、より好ましくはX90≦75μmである。加えて、粒度分布は好ましくは例えばX90>0.1μmであり、より好ましくはX90≧1μm、より好ましくはX90≧5μmである。従って好ましい粒度分布は例えば0.1μm<X90<200μm、特に0.1μm<X90≦150μm、より好ましくは1μm≦X90≦150μm、さらにより好ましくは5μm≦X90≦100μmである。BI 1356の粒度分布の好ましい例は、例えばX90≦50μm又は10μm≦X90≦50μmである。上述で示したような粒度分布を有するBI 1356を含む医薬組成物は所望の特性(例えば溶解性、含量均一性、製造などに関して)を示すことが見出され得る。示された粒径特性はレーザー回折法、特に低角レーザー光散乱、すなわちフラウンホーファー回折により決定される。代わりとして、粒径特性は顕微鏡検査法(例えば電子顕微鏡検査法又は走査型電子顕微鏡検査法)により決定され得る。異なる技術により決定された粒径分布の結果は相互に相関し得る。
【0103】
本発明は本明細書に記載される具体的な態様による範囲に限定されるものではない。本明細書に記載されるそれらに加えて本発明の様々な改良は、現在の開示から当業者に明白なものとなり得る。そのような改良は付加された請求項の範囲内に落とし込まれることが意図される。
本明細書で引用される全ての特許出願はそのまま参照により本明細書に組み込まれる。
更なる態様、本発明の特徴及び利点は下記実施例より明らかとなり得る。下記実施例は、一例として、それに限定することなく本発明の本質を説明するのに役立つ。
【実施例】
【0104】
[実施例1]単層錠剤
本発明のDPP-4阻害剤(BI 1356)+メトホルミン塩酸塩のFDC(膜被覆錠剤)のための単層錠剤の組成を表1に示す。
【表1】

【0105】
製造手順(単層錠剤):
本発明のDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)+メトホルミン塩酸塩のFDCの単層錠剤は流動層造粒工程及び回転式プレス機を有する従来の打錠工程によって製造される。必要に応じてメトホルミン塩酸塩及びコーンスターチは活性DPP-4阻害剤と混合する前に過剰な塩化水素及び/又は不純生成物を取り除く為、流動層造粒器の中で加熱されることにより予備処理されてもよい。メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチの任意の予備処理の後、DPP-4阻害剤は流動層造粒がコポリビドン(Kollidon VA64)、L-アルギニン及び精製水から構成される「造粒液体」の噴霧によって行われる前に、粉体として加えられて予備混合されるか、又は「造粒液体」の中に直接分散される。流動層造粒終了後、顆粒は適切なふるいを用いて篩いにかけられる。篩いにかけられた顆粒は、コロイド状無水シリカ(Aerosil 200)及び潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと混合される。最終混合物は従来の回転式打錠プレス機を用いて錠剤に圧縮される。
錠剤核は、膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、流動促進剤としてのタルク及び顔料の黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄及び二酸化チタンを含む水性膜被覆懸濁液によって膜被覆されてもよい。
【0106】
単層錠剤の好ましい製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを0.5〜1mmの網目サイズのふるいを用いて調剤前に篩いにかける。
b)L-アルギニン、BI 1356及び最終的にコポリドンを、プロペラー・ミキサーを用いて室温にて精製水中にそれぞれ溶解分散させ、「造粒液体」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを適切な流動層造粒器のチャンバーへ吸入させ生成物の温度目標である約36℃まで予備加熱する。
d)生成物の温度目標へ到達後すぐに、造粒中のブロッキングを避ける為に、「造粒液体」を乾燥条件下にて流動層造粒用の混合物中に噴霧する。
e)噴霧の最後に、得られた顆粒を注入口空気温度約70℃にて所望のLOD値(すなわち1-2%)に到達するまで乾燥させる。
f)顆粒を網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを用いて篩いにかける。
g)篩いにかけた顆粒及びコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)を、適切な配合器を用いて配合する。Aerosil 200は使用前に0.8mmのふるいを用いて篩いにかけた少量の顆粒と共に予め篩いにかけておくべきである。
h)ステアリン酸マグネシウムを0.8mmのふるいに通し、顆粒へ加える。続いて「最終配合物」を自由落下配合器内での最終配合により調製する。
i)「最終配合物」を、回転式プレス機を用いて錠剤に圧縮する。
j)二酸化チタン、プロピレングリコール及び酸化鉄(黄色、赤色又は黄色及び赤色)を、高せん断ホモミキサーを用い、精製水中へ分散させる。その後ヒプロメロース及びタルクを加え、ホモミキサー及びプロペラー・ミキサーを用いて室温で分散させ、「被覆懸濁液」を調製する。
k)錠剤核を「被覆懸濁液」にて目標の質量増加まで被覆し、「膜被覆錠剤」を調製する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
【0107】
単層錠剤の代替となる製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩を質量測定前に、網目サイズが0.5〜1mmのふるいを用いて篩う。
b)L-アルギニン及びコポリビドンを、プロペラー・ミキサーを用いて室温で精製水中へ溶解させ、「造粒液体」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを流動層造粒器のチャンバー内で生成物の温度が60℃に達するまで、70-80℃で15分より長く加熱する。
d)BI 1356を容器内へ入れ、その後メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチと流動層造粒器内で配合する。
e)造粒中のブロッキングを避ける為に、「造粒液体」を乾燥条件下にて流動層造粒用の混合物中に噴霧する。
f)噴霧の最後に、得られた顆粒を、LODが2%より高い場合には、70-80℃にて所望のLOD値(すなわち1-2%)まで乾燥させる。
g)顆粒を網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを用いて篩いにかける。
h)篩いにかけた顆粒及びコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)を、適切な配合器を用いて配合する。Aerosil 200は使用前に0.5mmのふるいを用いて篩いにかけるべきである。
i)ステアリン酸マグネシウムを0.5mmのふるいに通して顆粒へ加える。続いて「最終配合物」を配合器内での最終配合により調製する。
j)「最終配合物」を、回転式プレス機を用いて錠剤に圧縮する。
k)ヒプロメロース及びプロピレングリコールをプロペラー・ミキサーを用いて精製水中へ溶解させる。タルク、二酸化チタン、及び酸化鉄(黄色、又は黄色及び赤色)を、ホモミキサーを用いて精製水中へ分散させる。この懸濁液をヒプロメロース溶液の中へ加え、その後室温にてプロペラー・ミキサーを用いて混合し、「被覆懸濁液」を調製する。
l)錠剤核を「被覆懸濁液」にて目標の質量増加まで被覆し、「膜被覆錠剤」を調製する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
【0108】
[実施例2]2層錠剤
本発明のDPP-4阻害剤(BI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDC(膜被覆錠剤)のための2層錠剤の組成を表2に示す。
【表2】

【0109】
製造手順(2層錠剤):
本発明のDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDCの2層錠剤は高せん断湿式造粒工程(DPP-4阻害剤造粒)、流動層造粒工程(メトホルミン塩酸塩造粒)、及び多層回転式プレス機を有する2層打錠工程によって製造する。
【0110】
DPP-4阻害剤造粒:高せん断造粒器の使用により、活性DPP-4阻害剤を希釈剤D-マンニトール及びα化デンプンと予備混合する。混合物を、精製水及びバインダーとしてのコポビドンを含む造粒液体によって湿らす。更なる混合、乾燥及び篩い分けの後、乾燥した顆粒を潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと配合する。
【0111】
BI 1356造粒の製造工程のより具体的な説明記載:
a.コポビドン及びL-アルギニンを、室温にて精製水に溶解させ、造粒液体を調製する。
b.BI 1356、マンニトール及びα化デンプンを適切な混合器内で配合し、予備混合物を調製する。
c.予備混合物を造粒液体で湿らし、続いて顆粒状にする。
d.湿潤顆粒を適切なふるいを通して篩いにかける。
e.顆粒を適切な乾燥器内で所望の乾燥減量値が得られるまで、約50℃(最大60℃)にて乾燥する。
f.乾燥した顆粒を網目サイズ1.0mmのふるいを通して篩いにかける。
g.ステアリン酸マグネシウムを1.0mmのふるいを通して篩いにかけ、顆粒に加える。
その後、「最終配合物A」は、適切な配合器内での最終配合により調製される。
【0112】
メトホルミン塩酸塩造粒:メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを、過剰塩化水素及び/又は不純生成物を取り除く為、流動層造粒器のチャンバー内での加熱により予備処理する。メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチの予備処理の後、コポリビドン(Kollidon VA64)及び精製水から構成される「造粒液体」の噴霧によって流動層造粒を行う。流動層造粒が終了した後、顆粒を適切なふるいにて篩いにかける。篩いにかけた顆粒をコロイド状の無水シリカ(Aerosil 200)及び潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと配合する。
【0113】
メトホルミン塩酸塩造粒の製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩を質量測定前に、網目サイズ0.5〜1mmのふるいを用いて篩う。
b)コポリビドンを、プロペラー・ミキサーを用いて室温にて精製水中に溶解させ、「造粒液体」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを流動層造粒器のチャンバー内で生成物の温度が60℃に達するまで、70-80℃で15分より長く加熱する。
d)造粒中のブロッキングを避ける為に、「造粒液体」を乾燥条件下にて流動層造粒用の混合物中に噴霧する。
e)噴霧の最後に、得られた顆粒をLODが2%より大きい場合には、70-80℃にて所望のLOD値(すなわち1-2%)まで乾燥する。
f)顆粒を網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを用いて篩いにかける。
g)篩いにかけた顆粒及びコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)を、適切な配合器を用いて配合する。Aerosil 200は使用前に0.5mmのふるいを用いて篩いにかけておくべきである。
h)ステアリン酸マグネシウムを0.5mmのふるいに通して顆粒へ加える。続いて「最終配合物B」を配合器内での最終混合により調製する。
【0114】
「最終配合物A」及び「最終配合物B」を、多層回転式プレス機を用いて2層錠剤に圧縮する。錠剤核は、膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、流動促進剤としてのタルク及び顔料の黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄及び二酸化チタンを含む水性膜被覆懸濁液によって膜被覆されてもよい。
【0115】
膜被覆の製造工程のより具体的な説明記載:
a)ヒプロメロース及びプロピレングリコールをプロペラー・ミキサーを用いて精製水の中に溶解させる。タルク、二酸化チタン、及び酸化鉄(黄色、赤色又は黄色及び赤色)を、ホモミキサーを用いて精製水中へ分散させる。この懸濁液をヒプロメロース溶液に加え、その後室温でプロペラー・ミキサーを用いて混合し、「被覆懸濁液」を調製する。
b)錠剤核を「被覆懸濁液」にて目標の質量増加まで被覆し、「膜被覆錠剤」を調製する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
【0116】
[実施例3]錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤
本発明のDPP-4阻害剤(BI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDC(膜被覆錠剤)のための錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤の組成を表3に示す。
【表3】

【0117】
製造手順(錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤):
本発明のDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDCの錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤を、高せん断湿式造粒工程(DPP-4阻害剤造粒)、回転式プレス工程(DPP-4阻害剤核錠剤)、流動層造粒工程(メトホルミン塩酸塩造粒)、及び圧縮被覆機を有する圧縮被覆工程によって製造する。
【0118】
DPP-4阻害剤の核錠剤:高せん断造粒器の使用により、活性DPP-4阻害剤の原料を希釈剤D-マンニトール及びα化デンプンと予備混合する。混合物を、精製水及びバインダーとしてのコポビドンを含む造粒液体によって湿らす。更なる混合、乾燥及び篩い分けの後、乾燥顆粒を潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと配合する。
【0119】
BI 1356核錠剤の製造工程のより具体的な説明記載:
a.コポビドン及びL-アルギニンを、室温にて精製水に溶解させ、造粒液体を調製する。
b.BI 1356、マンニトール及びα化デンプンを適切な混合器内で配合し、予備混合物を調製する。
c.予備混合物を造粒液体で湿らし、続いて顆粒状にする。
d.湿潤顆粒を適切なふるいを通して篩いにかける。
e.顆粒を適切な乾燥器内で所望の乾燥減量値が得られるまで、約50℃(最大60℃)にて乾燥する。
f.乾燥した顆粒を網目サイズ1.0mmのふるいを通して篩いにかける。
g.ステアリン酸マグネシウムを1.0mmのふるいを通して顆粒に加える。続いて「最終配合物」を、適切な配合器内での最終配合により調製する。
h.「最終配合物」を回転式プレス機を用いて「BI 1356核錠剤」に圧縮する。
【0120】
メトホルミン塩酸塩造粒:メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを、過剰塩化水素及び/又は不純生成物を取り除く為、流動層造粒器のチャンバー内で加熱により予備処理する。メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチの予備処理の後、コポリビドン(Kollidon VA64)及び精製水から構成される「造粒液体」の噴霧により流動層造粒を行う。流動層造粒終了後、顆粒を適切なふるいにて篩いにかける。篩いにかけた顆粒をコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)及び潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと配合する。
【0121】
メトホルミン塩酸塩造粒の製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩を質量測定前に、網目サイズ0.5〜1mmのふるいを用いて篩いにかける。
b)コポリビドンを、プロペラー・ミキサーを用いて室温にて精製水中に溶解させ、「造粒液体」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを流動層造粒器のチャンバー内で生成物の温度が60℃に達するまで、70-80℃で15分より長く加熱する。
d)造粒中のブロッキングを避ける為に、「造粒液体」を乾燥条件下にて流動層造粒用の混合物中に噴霧する。
e)噴霧の最後に、得られた顆粒をLODが2%より大きい場合には、70-80℃にて所望のLOD値(すなわち1-2%)まで乾燥する。
f)顆粒を網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを用いて篩いにかける。
g)篩いにかけた顆粒及びコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)を、適切な配合器を用いて配合する。Aerosil 200は使用前に0.5mmのふるいを用いて篩いにかけるべきである。
h)ステアリン酸マグネシウムを0.5mmのふるいに通して顆粒へ加える。続いて「メトホルミン塩酸塩顆粒」(最終配合物)を配合器内での最終配合により調製する。
【0122】
「DPP-4阻害剤核錠剤」及び「メトホルミン塩酸塩顆粒」を、圧縮被覆機を用いて錠剤中錠剤又はブルズアイ錠剤に圧縮する。錠剤中錠剤及びブルズアイ錠剤の間の違いは、核錠剤の位置である。
【0123】
錠剤中錠剤の製造工程のより具体的な説明記載:
a)半量のメトホルミン塩酸塩の顆粒を押し抜き機に充填する。
b)BI 1356核錠剤をメトホルミン塩酸塩の顆粒表面に設置する。
c)核錠剤を残り半量のメトホルミン塩酸塩の顆粒で被覆し、その後錠剤に圧縮する(錠剤中錠剤)。
【0124】
ブルズアイ錠剤の製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩の顆粒を押し抜き機に充填する。
b)BI 1356核錠剤を押し抜き機の中のメトホルミン塩酸塩の顆粒上に設置し、その後錠剤に圧縮する(ブルズアイ錠剤)。
【0125】
錠剤を膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、流動促進剤としてのタルク、及び顔料の黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄及び二酸化チタンを含む水性膜被覆懸濁液により膜被覆する。
【0126】
膜被覆の製造工程のより具体的な説明記載:
a)ヒプロメロース及びプロピレングリコールを、プロペラー・ミキサーを用いて精製水中に溶解させる。タルク、二酸化チタン、及び酸化鉄(黄色、赤色又は黄色及び赤色)を、ホモミキサーを用いて精製水中に分散させる。この懸濁液をヒプロメロース溶液に加え、その後プロペラー・ミキサーを用いて室温にて混合し、「被覆懸濁液」を調製する。
b)錠剤核を「被覆懸濁液」にて目標の質量増加まで被覆し、「膜被覆錠剤」を調製する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
【0127】
[実施例4]DPP-4阻害剤-メトホルミン塩酸塩の錠剤上の薬剤層状化(薬物添加のための膜被覆)
メトホルミン塩酸塩の錠剤上の膜被覆による薬物添加により調製される、本発明のDPP-4阻害剤(BI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDC(膜被覆錠剤)の組成を表4に示す。
【表4】

【0128】
製造手順(メトホルミン塩酸塩の錠剤上の膜被覆によるDPP-4阻害剤の薬剤層状化):
薬剤被覆を有するDPP-4阻害剤(例えばBI 1356)+メトホルミン塩酸塩FDCは、流動層造粒工程、従来の打錠工程、並びに密閉被覆、薬物添加及び外部被覆の三段階を有する膜被覆工程により製造される。安定性が許容されるのであれば、外部被覆は薬物添加との結合により、省略されてもよい。
【0129】
メトホルミン塩酸塩の錠剤:メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを、過剰塩化水素及び/又は不純生成物を取り除く為、流動層造粒器のチャンバー内で加熱により予備処理する。メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチの予備処理の後、コポリビドン(Kollidon VA64)及び精製水から構成される「造粒液体」の噴霧によって流動層造粒を行う。流動層造粒終了後、顆粒を適切なふるいにて篩いにかける。篩いにかけた顆粒をコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)及び潤滑剤としてのステアリン酸マグネシウムと配合する。最終配合物を従来の回転式プレス機を用いて錠剤に圧縮する。
【0130】
メトホルミン塩酸塩造粒用の製造工程のより具体的な説明記載:
a)メトホルミン塩酸塩を質量測定前に、網目サイズ0.5〜1mmのふるいを用いて篩いにかける。
b)コポリビドンを、プロペラー・ミキサーを用いて室温にて精製水中に溶解させ、「造粒液体」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩及びコーンスターチを流動層造粒器のチャンバー内にて生成物の温度が60℃に達するまで、70-80℃で15分より長く加熱する。
d)造粒中のブロッキングを避ける為に、「造粒液体」を乾燥条件下にて流動層造粒用の混合物中に噴霧する。
e)噴霧の最後に、得られた顆粒をLODが2%より大きい場合には、70-80℃にて所望のLOD値(すなわち1-2%)まで乾燥する。
f)顆粒を網目サイズ0.5〜1.0mmのふるいを用いて篩いにかける。
g)篩いにかけた顆粒及びコロイド状無水シリカ(Aerosil 200)を、適切な配合器を用いて配合する。Aerosil 200は使用前に0.5mmのふるいを用いて篩いにかけておくべきである。
h)ステアリン酸マグネシウムを0.5mmのふるいに通して顆粒へ加える。続いて「最終配合物」を配合器内での最終配合により調製する。
i)「最終配合物」を従来の回転式プレス機を用いて錠剤に圧縮する。
【0131】
膜被覆:錠剤を、(1)膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、流動促進剤としてのタルク及び顔料の黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄及び二酸化チタンを含む水性膜被覆懸濁液による密閉被覆、(2)膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、原薬としてのBI 1356、及び安定化剤としてのL-アルギニンを含む水性膜被覆懸濁液による薬物添加、及び(3)膜形成剤としてのヒプロメロース、可塑剤としてのプロピレングリコール、流動促進剤としてのタルク及び顔料の黄色酸化鉄及び/又は赤色酸化鉄及び二酸化チタンを含む水性膜被覆懸濁液による外部被覆により、膜被覆する。
【0132】
被覆機を用いた膜被覆の製造工程のより具体的な説明記載:
a)ヒプロメロース及びプロピレングリコールを、プロペラー・ミキサーを用いて精製水中に溶解させる。タルク、二酸化チタン、及び酸化鉄(黄色、赤色又は黄色及び赤色)を、ホモミキサーを用いて精製水中に分散させる。この懸濁液をヒプロメロース溶液に加え、その後プロペラー・ミキサーを用いて室温にて混合し、「密閉被覆」及び「外部被覆」用の「被覆懸濁液」を調製する。
b)ヒプロメロース、プロピレングリコール及びL-アルギニンをプロペラー・ミキサーを用いて精製水中に溶解させる。BI 1356(有効成分)をヒプロメロース溶液に加えた後、プロペラー・ミキサーを用いて室温にて分散し、「薬物添加」用の「薬物懸濁液」を調製する。
c)メトホルミン塩酸塩の錠剤を「被覆懸濁液」にて目標の質量増加まで被覆し、「シールコート」を形成する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
d)密閉被覆に続いて、「薬物懸濁液」をメトホルミン塩酸塩の錠剤表面に塗布し、「薬物層」を形成する(薬物添加)。「薬物懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。被覆のエンドポイントは入手可能なPAT(工程分析技術)により決定され得る。
e)薬物添加の後、「被覆懸濁液」を、BI 1356を薬物添加した錠剤に塗布して「外部被覆」を形成し「膜被覆錠剤」を調製する。「被覆懸濁液」は使用前に再び撹拌し、被覆(噴霧)工程中もゆっくり撹拌し続けるべきである。
【0133】
生成物の記載:
BI 1356+メトホルミン塩酸塩FDCの単層錠剤(錠剤核及び膜被覆錠剤)の生成物の記載を表8及び表9にそれぞれ示す。
【表5】

【表6】

【0134】
安定性データ:
BI 1356+メトホルミン塩酸塩FDCの単層錠剤(錠剤核)のL-アルギニンが有る場合と無い場合についての安定性データを以下の表に示す(2週、1ヶ月及び3ヶ月経過後):
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0135】
効力がありかつ選択的なDPP-4阻害剤BI 1356は、メトホルミン療法でも制御不十分な2型糖尿病患者に、安全かつ有効である。
効力がありかつ選択的なジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤BI 1356(1日1回1、5、又は10mg)の有効性及び安全性を、制御不十分な、メトホルミン治療(MET、毎日≧1g)されている2型糖尿病患者(T2DM;HbA1c基準値7.5-10.0%)において調べた。効果を、12週の無作為、2重盲式の調査における、プラセボ(PBO)又は非盲検のグリメピリド(GLIM;1日1回1〜3mg)のアドオン試験と比較した。メトホルミン以外の糖尿病治療の薬物療法は6週間で洗い流された(34.7%の患者)。
【0136】
初期のエンドポイントは、従前の糖尿病治療の薬物療法に合わせて調節されたHbA1c基準値からの変化である。333人の患者(平均HbA1c基準値が8.3%;空腹時血漿グルコース[FPG]が185mg/dL)を、BI 1356、PBO又は非盲検のGLIMに無作為に割り振った。12週後、BI 1356治療は、プラセボ補正されたHbA1cの顕著な平均減少をもたらした(BI 1356 1mg、n=65、-0.39%;5mg、n=66、-0.75%;10mg、n=66、-0.73%)。GLIMを摂取している患者は、12週後にHbA1cのわずかに大きい平均PBO補正減少値を示した(n=64、-0.90%)。BI 1356を用いたFPGの基準値から12週までの減少は、統計的に有意であった(1mg、-19mg/dL;5mg、-35mg/dL;10mg、-30mg/dL)。このように、用量−反応関係がHbA1c及びFPGについて明らかになり、5mgのBI 1356にてプラトー効果に達した。この用量において、12週の80%より多い患者において底値の80%より多いDPP-4阻害が達成された。
【0137】
全ての治療を通して、合計で106人の患者(43.1%)が同様の発生率で不利な事象(AEs)を経験した。最も頻繁に報告されたのは、鼻咽頭炎(7.5%)、下痢(3.3%)、及び吐き気(3.0%)であった。薬剤関連の低血糖は、BI 1356又はPBOでは起こらなかったが、GLIMを摂取している3人の患者では起こった。10人の患者(3.7%)は深刻なAEsを経験したが、薬剤関連と判断された事象はなかった。
【0138】
MET単独では制御不十分なT2DM患者へのMETへのBI 1356の追加は、臨床上適切であり、統計的に有意なHbA1cの減少を達成した。BI 1356を1、5、及び10mg及びMETを用いた併用療法は、十分に許容されかつ低血糖の事例は報告されなかった。AEsの発生率はBI 1356及びPBOで同程度であった。
【0139】
メトホルミン単剤療法で制御不十分な2型糖尿病患者におけるリナグリプチンの有効性及び安全性について。
多施設、24週、無作為化、プラセボ対照、2重盲検、並行グループ間での調査で、血糖管理が不十分な(HbA1cが、7〜10.0%であるこれまでメトホルミンのみで治療された患者、又は6.5〜9.0%であるこれまで追加の経口の高血糖治療薬で治療された患者)2型糖尿病(T2DM)の高血糖症患者にメトホルミン(MET)のアドオン療法として投与されるリナグリプチン(LI)の効果及び安全性を調べる。スクリーニング期間に入る被験者はそれまでのMET(≧1500mg/日)以外の糖尿病治療の薬物療法を、LI(n=524)又はPBO(n=177)への無作為の割り振りに先立ち、6週間中断する(最後2週間のプラセボ(PBO)導入期間を含む)。平均基準値の特徴及び人口統計(HbA1c8.1%;空腹時血漿グルコース[FPG]168.8mg/dL;年齢56.5歳;BMI29.9kg/m2)は、グループ間で類似している。初期のエンドポイントは24週の治療後のHbA1c基準値からの変化であり、HbA1c基準値及び従前の糖尿病治療の薬物療法に合わせて調節された共分散分析(ANCOVA)を用いて評価される。24週の治療後の、LI+MET及びPBO+METの間で調節された平均治療差は-0.64%(p<0.0001)であり、LI+METのHbA1c(%)における変化を支持する。HbA1c基準値が≧7.0%である、LI+METで治療を受けている患者は、プラセボ+METで治療を受けている患者に対してHbA1c≦7.0%に到達する可能性が高い(それぞれ26.2%対9.2%;オッズ比4.4;p=0.0001)。24週目において、LI+METは空腹時血漿グルコース(FPG)の平均を基準値から減少させることにおいてPBO+METよりも優れている(-21.1mg/dL;p<0.0001)。調査の最後において食物耐性試験で分析された食後2時間のグルコース(PPG)については、LI+MET治療はPBO+METのグループに対して基準値からの顕著(p<0.0001)な平均低下を示す(-67.1mg/dL)。少なくとも1つの不利な事象(AE)を報告する患者の割合は、LI+MET及びPBO+METグループ間で同程度である(それぞれ52.8%及び55.4%)。低血糖症は稀で、5人のPBO+METの患者(2.8%)及び3人のLI+METの患者(0.6%)で発生し、全ての症状の発現は穏やかな強度である。体重の基準からの24週後の変化は、2つの治療グループ間で同程度である(PBO+METで-0.5kg、LI+METで-0.4kg)。結論として、メトホルミンで制御不十分なT2DM患者におけるアドオン療法としてのリナグリプチン1日1回5mgは、十分に許容でき、血糖管理において顕著かつ臨床的に意義のある改善をもたらす(体重増量なくHbA1c、FPG及び2時間PPGの減少)。血糖管理が不十分なT2DM患者において、メトホルミンへのアドオン療法としてのリナグリプチンは不利な事象の発現についてプラセボ同様十分に許容できる。
【0140】
リナグリプチンはメトホルミン単剤療法で制御不十分なアジア人の2型糖尿病患者において血糖管理を改善する。
多施設、24週、プラセボ(PBO)対照の調査で、血糖管理が不十分なT2DM患者(pts)におけるメトホルミン(MET)へのアドオン療法としてのDPP-4阻害剤リナグリプチン(LI)(1日1回5mg)の効果及び安全性を調べる。全ての患者(HbA1cが、以前METを用いた治療を受けていれば7.0%〜10.0%、又は他の経口高血糖治療薬(OAD)を用いた治療を受けていれば6.5%〜9.0%である)は、MET(≧1500mg/日)以外のOADを、LI+MET(n=524;このうちn=111がアジア人であった)又はPBO+MET(n=177;n=32がアジア人)への無作為の割り振りに先立ち、6週間中断する(最後2週間のプラセボ(PBO)導入期間を含む)。24週目、アジア人患者のHbA1cにおけるPBO補正した平均治療差は-0.86%(P<0.0001)でありLI+METを支持する。24週目における空腹時血漿グルコースの基準値(BL)からの補正平均変化の差は、LI+METにおける最大の解析対象集団(FAS)の患者において-21mg/dLである(p<0.0001)。食物耐性試験で分析された食後2時間のグルコース(PPG)は、24週目のLI+METのFAS患者においてBLからの-67mg/dLの減少を示す。少なくとも1つの不利な事象を報告する患者の数は、LI(52.8%)及びPBO(55.4%)のグループ(治療集団)で同程度である。低血糖症は稀である(0.6%のLI患者;2.8%のPBO患者)。メトホルミンで制御不十分なT2DM患者におけるアドオン療法としてのリナグリプチンは、体重増加なくHbA1c、FPG及び2時間PPGの顕著かつ臨床上意義のある減少をもたらす。アジア人患者サブグループ内でリナグリプチンは血糖管理を大きく改善する。
【0141】
リナグリプチンはメトホルミン及びスルホニル尿素の2剤併用治療において制御不十分なアジア人の2型糖尿病患者における血糖管理を改善する。
多施設、24週、プラセボ(PBO)対照の調査で、メトホルミン(MET)及びスルホニル尿素(SU)の組み合わせで血糖管理が不十分な(HbA1cが7.0〜10.0%)2型糖尿病(T2DM)患者(pts)における経口DPP-4阻害剤リナグリプチン(LI;1日1回5mg)の効果及び安全性を調べる。全ての患者はLI+MET+SU(n=793;このうちn=397がアジア人)又はPBO+MET+SU(n=265;n=141がアジア人)への無作為の割り振りに先立ち、2週のPBO導入期間を経る。中国(193人、18%)及び韓国(174人、16%)からの患者が登録されたアジア人種の患者の中で最も多い人数を占める。24週目、アジア人の患者のHbA1cにおけるPBO補正した平均治療差は-0.71%(P<0.0001)であり、LI+MET+SUを支持する。最大の解析対象集団(FAS)における、24週目における空腹時血漿グルコース(FPG)の基準値からの変化についてLI及びPBO間の補正平均差は、-13mg/dLである(P<0.0001)。βセル・ファンクション(β-cell function)(HOMA-%B)及びインスリン抵抗値(HOMA-IR)の測定によれば、FASにおいてPBOに対してLI患者を改善する(P<0.05)。報告された深刻な不利な事象(AEs)は、LI+MET+SU(2.4%)及びPBO+MET+SU(1.5%)で低い(治療集団)。体重の顕著な変化は目立たない(FAS)。MET及びSUの組み合わせ療法へのリナグリプチンのアドオンは、好ましい安全かつ許容可能な特徴を持ち体重の偏りがない。この組み合わせは、アジア人患者を含むT2DM患者における血糖管理を大きく改善する。リナグリプチンが既存のスルホニル尿素治療へのアドオンとして指示される場合には、低血糖に対する低いリスクが考慮されるべきである。リナグリプチンはメトホルミンとスルホニル尿素の薬剤を用いて血糖が不十分に制御されている患者において、インスリン療法に先立つ追加の選択肢を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DPP-4阻害剤である1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン、及びメトホルミンを含むか又はこれらから作られる組み合わせ医薬であって;
これまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった2型糖尿病患者において、
又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)、グリニド、アルファグルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、
代謝病、特に2型糖尿病及びそれに関連する疾患(例えば、糖尿病の合併症)の治療及び/又は予防(進行を減速させること及び/又は発病を遅延させることが挙げられる)で同時、別個又は逐次の使用のためのものであり;
1以上の他の有効成分と組み合わせてもよい、組み合わせ医薬。
【請求項2】
DPP-4阻害剤である1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン、及びメトホルミンを含むか又はこれらから作られる組み合わせ医薬であって;
例えば、これまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった2型糖尿病患者又はメトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、GLP-1又はGLP-1類似体、及びインスリン又はインスリン類似体から選択される1又は2の従来の高血糖治療薬を用いた治療にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において;
1以上の下記目的のための同時、別個又は逐次の使用のためのものであり:
-代謝異常又は代謝病、例えば1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、体重超過、肥満、脂質異常症、高脂質血症、高コレステロール血症、高血圧、アテローム症動脈硬化症、内皮機能不全、骨粗鬆症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症及び/又は代謝症候群の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-血糖管理の改善及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後血漿グルコース及び/又はグリコシル化ヘモグロビンHbA1cの低減;
-耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又は代謝症候群から2型糖尿病への発病の予防、減速、遅延又は進行の反転;
-糖尿病性合併症、例えば微小及び大血管の疾患(例えば、腎症、微量又は大量アルブミン尿、蛋白尿、網膜症、白内障、神経障害、学習又は記憶障害、神経変性又は認識障害、心臓又は脳血管の疾患、組織虚血、糖尿病性下肢又は潰瘍、アテローム性動脈硬化症、高血圧、内皮機能不全、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍リズム障害、血管再狭窄、及び/又は脳卒中)の予防、リスクの低減、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-体重を減らすこと、体重の増加を予防すること又は体重の低減を容易にすること;
-膵臓β細胞の退化及び/又は膵臓β細胞の機能低下の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療、及び/又は膵臓β細胞の機能の改善及び/又は回復、及び/又は膵臓のインスリン分泌機能の刺激及び/又は回復;
-非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)(肝臓脂肪症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又は肝繊維症が挙げられる)の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-従来の(経口又は非経口の)高血糖治療の単剤又は併用療法に対して1次又は2次的に失敗した2型糖尿病の予防、進行の減速、発病の遅延又は治療;
-適切な治療効果のために要求される従来の高血糖治療の薬物療法の投与量低減の達成;
-従来の高血糖治療の薬物療法に付随する副作用のリスク低減;及び/又は
-インスリン感受性の維持及び/又は改善、及び/又は高インスリン血症及び/又はインスリン抵抗性の治療又は予防;
1以上の他の有効成分と組み合わせてもよい、組み合わせ医薬。
【請求項3】
1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチン、
メトホルミン塩酸塩、
L-アルギニン(特に安定剤として)、
及び1以上の充填剤、1以上のバインダー、1以上の流動促進剤及び/又は1以上の潤滑剤を含むか又はこれらから作られる固体の医薬組成物(例えば経口錠剤)である、請求項1又は2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
2型糖尿病患者がこれまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった(例えば、薬剤未投与患者)、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
2型糖尿病患者が、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)又はスルホニル尿素の有無において、メトホルミンにおいて血糖管理が不十分である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
2型糖尿病患者がメトホルミンの単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
2型糖尿病患者がメトホルミン及びチアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分である、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)との組み合わせにおける請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
2型糖尿病患者がメトホルミン及びスルホニル尿素の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分である、スルホニル尿素との組み合わせにおける請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
代謝病が、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、体重超過、肥満、脂質異常症、高脂質血症、高コレステロール血症、高血圧、アテローム症動脈硬化症、内皮機能不全、骨粗鬆症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経障害、腎症、及び代謝症候群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
糖尿病の合併症が、微小及び大血管の疾患、例えば、腎症、微量又は大量アルブミン尿、蛋白尿、網膜症、白内障、神経障害、学習又は記憶障害、神経変性又は認識障害、心臓又は脳血管の疾患、組織虚血、糖尿病性下肢又は潰瘍、アテローム性動脈硬化症、高血圧、内皮機能不全、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍リズム障害、血管再狭窄、及び脳卒中から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
代謝病が2型糖尿病である、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
これまで高血糖治療薬を用いた治療をされてこなかった2型糖尿病患者における血糖管理の改善に使用するための(例えば、1次療法として)、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
メトホルミンの単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者における血糖管理の改善に使用するための(例えば、2次療法として)、請求項3に記載の組成物。
【請求項14】
メトホルミン及びチアゾリジンジオンの2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者における血糖管理の改善に使用するための(例えば、3次療法として)、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)との組み合わせにおける請求項3に記載の組成物。
【請求項15】
メトホルミン及びスルホニル尿素の2剤併用療法にもかかわらず血糖管理が不十分な2型糖尿病患者における血糖管理の改善に使用するための(例えば、3次療法として)、スルホニル尿素との組み合わせにおける請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
DPP-4阻害剤が、
2.5mg、好ましくは1日2回経口投与;又は
5mg、好ましくは1日1回経口投与
の用量強度で存在する、請求項3、12〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
メトホルミン塩酸塩が、
500mg、850mg又は1000mg、好ましくは即時放出のメトホルミンの形態において、好ましくは1日2回経口投与;又は
500mg、750mg、1000mg、又は1500mg、好ましくは持続放出のメトホルミンの形態において、好ましくは1日1回経口投与
の用量強度で存在する、請求項3、12〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
DPP-4阻害剤が2.5mgの用量強度で存在し及びメトホルミン塩酸塩が500mg、850mg又は1000mgの用量強度で存在する、請求項3、12〜17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
患者へ1日2回経口投与するための、請求項3、12〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
L-アルギニンが、約1mg〜約50mg、好ましくは約1mg〜約25mg存在する、請求項3、12〜19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
DPP-4阻害剤及びL-アルギニンが、約1:20〜約10:1、又は約1:15〜約10:1、好ましくは約1:10〜約10:1の質量比で存在する、請求項3、12〜20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
賦形剤が、D-マンニトール、コーンスターチ及びα化デンプンを含む1以上の充填剤;コポビドンを含むバインダー;ステアリン酸マグネシウムを含む潤滑剤;及びコロイド状無水シリカを含む流動促進剤からなる群より選択される、請求項3、12〜21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
コポビドンをバインダーとして含む、請求項3、12〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
下記:充填剤のコーンスターチ、潤滑剤のステアリン酸マグネシウム、及び流動促進剤のコロイド状無水シリカの1以上をさらに含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
錠剤の製剤形態における、請求項1〜24のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項26】
錠剤が、単層錠剤、2層錠剤、圧縮被覆錠剤(錠剤中錠剤及びブルズアイ錠剤が挙げられる)、及び薬物添加のために膜被覆された錠剤から選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
錠剤が膜被覆を含む、請求項25又は26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
膜被覆が膜被覆剤、例えばヒプロメロース;可塑剤、例えばプロピレングリコールを含み;流動促進剤、例えばタルク、及び1以上の顔料、例えば二酸化チタン、酸化鉄赤及び/又は酸化鉄黄を含んでいてもよい、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
溶解試験において45分後にそれぞれの有効成分の少なくとも75質量%が溶解することで特徴付けられる即時放出の製剤形態である、請求項1〜28のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノピペリジン-1-イル)キサンチンが、X90<200μmの粒径分布を有する、請求項1〜29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項31】
有効成分及びL-アルギニンを1以上の医薬賦形剤、例えばD-マンニトール、コーンスターチ、α化デンプン、コポビドン、ステアリン酸マグネシウム、及びコロイド状無水シリカから選択される1以上の医薬賦形剤に包含することを含む、請求項1〜30のいずれかに記載の医薬組成物の調製方法。

【公表番号】特表2013−506640(P2013−506640A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531449(P2012−531449)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064691
【国際公開番号】WO2011/039367
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】