説明

半導体ウェハの製造方法

【課題】半導体ウェハの裏面の定義されたかつ有利な特性を有する半導体ウェハを提供すること
【解決手段】a) シリコン棒をウェハに切断することにより半導体ウェハを準備する工程、b) 前記半導体ウェハのエッジを丸めることで、前記半導体ウェハは前面及び裏面が平坦な面とエッジ領域で丸められかつ傾斜する面とを有する工程、c) 前記半導体ウェハの前面及び裏面を研磨し、前記前面の研磨は、研磨パッド中に固定された砥粒を有していない研磨パッドを使用する化学機械的研磨を有し、前記半導体ウェハの裏面の研磨は、それぞれ研磨パッド中に結合された研磨材料を有する研磨パッドを使用してかつ前記半導体ウェハの裏面に研磨圧力を加える3つの工程で行い、第1の工程では、固体を有していない研磨剤を前記研磨パッドと前記半導体ウェハの裏面との間に導入し、第2及び第3の工程では研磨材料を有する研磨剤を導入し、第1の及び第2の工程の8〜15psiの研磨圧力を、第3の工程では0.5〜5psiに低下させる工程を有する半導体ウェハの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、第一に、300mm以上の直径を有する、特に450mmの直径を有するウェハの次世代技術の半導体ウェハの研磨に特に関する。現在、300mmの直径を有する研磨されたか又はエピタキシャル被覆された半導体ウェハは、電子工業における最も要求の高い適用のために使用される。450mmの基板直径を有するシリコンウェハは開発途上である。
【0003】
電子工業において、マイクロプロセッサ又はメモリチップのような素子の製造のためにより大きな基板がなぜ求められるのかという本質的理由は、約束された莫大な経済的利点にある。以前から、半導体工業においては提供可能な基板面積を中心に据えるか又は換言すると、一つの基板に収納することができる素子、つまりロジックチップ又はメモリチップの数がどれくらい多いかが問題となることが通常である。このことは、素子製造元の多数の加工工程は全体の基板に向けられているが、基板の構造化のための個々の工程、つまり後に個々のチップになる素子構造体の作成、及び従って2つのグループの加工工程のための製造コストが特に基板サイズにより決定されるという事実に関連している。この基板サイズは、素子1個あたりの製造コストに著しく大きく影響を及ぼし、従って、常に経済的に重要である。
【0004】
しかしながら、この基板直径の拡大は、今までに知られていない、一部では完全に新しい大きな技術的問題を伴う。
【0005】
結局は、全ての加工工程が、純粋に機械的なもの(鋸断、研削、ラッピング)でも、化学的なもの(エッチング、洗浄)でも、又は化学機械的なもの(ポリシング)でも、熱的プロセス(エピタキシー、アニーリング)でも、部分的に、このために使用される機器及び装置(設備)に関しても全面的な修正が必要である。
【0006】
本願発明は、ウェハがメモリチップの製造を予定している場合には最後の本質的な加工工程として、又は原則として、ウェハが近年のマイクロプロセッサの製造のためのいわゆるエピウェハとして使用されることを予定している場合には前記ウェハのエピタキシーに先行する最後から2番目の本質的な加工工程として半導体ウェハの研磨に焦点を当てる。
【0007】
発明者は、450mmウェハの研磨プロセスも本質的に変更を必要とすることを知見した。次に、新規研磨プロセスの定義のために考察の対象に入れられた先行技術における公知の研磨法を記述する。これは、主に、両面研磨(DSP)及び化学機械研磨(CMP)の通常使用された方法の改良を伴い、前記方法は一方では一次研磨として研磨剤を供給しながら研磨パッドを用いた半導体ウェハの両面の研磨(DPS工程)を有し、他方では軟質の研磨パッドを用いた前面(デバイス側)だけの仕上研磨、いわゆる最終研磨(CMP工程)を有するが、しかしながら比較的新しいいわゆる「固定砥粒研磨」(FAP)技術でもあり、この技術の場合には前記半導体ウェハを研磨パッド中に結合された研磨剤を含有する研磨パッド(固定砥粒研磨パッド)で研磨する。このようなFAP研磨パッドを使用する研磨工程は以後省略してFAP工程と称する。
【0008】
DSPの他に、先行技術では、欠陥を除去しかつ表面粗さを低減するために常にいわゆるCMP研磨が必要である。CMPの場合にはDSPの場合よりも軟質の研磨パッドが使用される。さらに、前記半導体ウェハの片面、つまり後に素子を作成すべき面だけをCMPで研磨される。この先行技術は仕上研磨も述べている。CMP法は、例えばUS 2002-0077039並びにUS 2008-0305722に開示されている。
【0009】
WO 99/55491 A1は、第1のFAP研磨工程と、引き続く第2のCMP研磨工程を有する二段階の研磨法が記載されている。CMPの場合に、前記研磨パッドは固定された研磨剤を含有しない。ここでは研磨剤はDSP工程の場合と同様に懸濁液の形でシリコンウェハと研磨パッドとの間に導入される。このような二段階研磨法は、特に、FAP工程が基板の研磨された表面に残したスクラッチを除去するために使用される。
【0010】
EP 1 717 001 A1は、表面にまだ素子構造物が作成されていない半導体ウェハの研磨のためにFAP工程が使用されることの例である。このような半導体ウェハの研磨は、第1に、特に平坦でかつできる限り低いマイクロラフネス及びナノトポロジーを有する少なくとも片面を作成することである。
【0011】
US2002/00609967 A1は、電子素子の製造の間のトポグラフィー表面の平坦化するためのCMP法に関する。FAP研磨パッドの使用の場合の低い除去速度の欠点を緩和する努力が何よりも重要である。まず研磨を研磨剤懸濁液と共にFAP研磨パッドを用いて行い及び引き続き研磨剤溶液と共にFAP研磨パッドを用いて行う研磨工程の順序が提案される。この場合、この一連の工程は、前記材料除去速度を高めるために適切に選択される。均質な組成を有する材料のウェハ、例えば半導体ウェハの前記研磨は、ここには開示されていない。
【0012】
同様にWO 03/074228 A1も、電子素子の製造の間のトポグラフィー表面を平坦化する方法を開示している。この場合に前記発明のキーポイントはCMP法における終点認識である。周知のように、前記終点認識は、材料が研磨を全く意図していない領域から除去される前に、前記研磨とそれと共に材料除去とが即座に完了することを必要とする。このために、銅層の研磨のための二段階法が提案される。第1の段階ではFAP研磨パッドを用いて研磨し、その際、場合により研磨剤は遊離砥粒を含有するか又は含有しない。同様にFAP研磨パッドを用いて研磨される第2の研磨工程では、それに対して遊離砥粒を有する研磨剤を使用することが重要である。
【0013】
ドイツ国特許出願のDE 102 007 035 266 A1は、一つの研磨工程で固体として固定されていない研磨材料を含有する研磨剤懸濁液が基板と研磨パッドとの間に導入され、第2の研磨工程では前記研磨剤懸濁液は固体を含有しない研磨剤溶液に代えられることが異なるFAP型の2つの研磨工程を有するシリコン材料からなる基板を研磨する方法を記載する。
【0014】
研磨剤の表現は、以後、研磨剤懸濁液及び研磨剤溶液について包括する用語として用いられる。
【0015】
半導体ウェハ、特に300mm以上の直径を有する半導体ウェハ(この場合、特に450mmの直径を有する半導体ウェハが挙げられる)の製造との関連で、ハンドリング特性、前記システム間の半導体ウェハの装置間の輸送性、前記プロセス順序での貯蔵特性、支持特性及び最終的にプロセス特性がますます重要となっている。このことは、半導体ウェハの更なる加工にも、ウェハ製造元のユーザのサイドで半導体素子を作成するためのプロセスにおいても通用する。
【0016】
特に、前記半導体ウェハの裏面はこの場合に重大な基準であり、特に多様なハンドリングシステム、特に前記半導体ウェハと接触する装置は前記半導体ウェハの裏面の特別な特性を必要とする。このような装置は、例えばチャック、つまりウェハホルダであり、前記ウェハホルダは前記半導体ウェハを例えば真空吸引器を用いてその裏面で固定し、前面側が加工、例えば研削される。前記半導体ウェハをそのエッジ領域で固定するシステムの場合も、前記半導体ウェハを裏面のエッジ領域で保持して、前記半導体ウェハの変形を排除できることが重要である。特に、450mmの直径を有する次世代の半導体ウェハの場合には、前記ウェハ裏面の特性及び前記ウェハのエッジの特性がこのために重要である。
【0017】
他方で、前記半導体ウェハの裏面は、例えばボックス(FOUP、FOSB)中での輸送の際の又は所定の作成プロセス(例えば被覆室、炉プロセス等)における貯蔵又は組立の間の支持面である。輸送、搭載又は被覆プロセス中での前記半導体ウェハの制御できないスリップは回避することができる。
【0018】
最後に、次のことが、ウェハ製造元による前記プロセス実施の他に顧客サイドでも挙げられる:
ここでは加工されるべきウェハの裏面の特性がプロセス工程の成果自体に大きな影響を与える素子製造の場合に特に重要である。このことは、例えば全ての種類の炉プロセスに通用する。設けられる層、例えば酸化物層の付着は、表面特性に特に本質的に依存し、特に、被覆すべき表面の反射率の程度のために、前記表面の放熱及び吸収挙動、ひいては吸収された熱放射の程度及び例えば長いか又は短い被覆時間の形のプロセス実施自体が関与する。前記ウェハ裏面の特性はこれに関して過去においておろそかにされたため、発明者はここでは商業的な必要性があると見た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US 2002-0077039
【特許文献2】US 2008-0305722
【特許文献3】WO 99/55491 A1
【特許文献4】EP 1 717 001 A1
【特許文献5】US2002/00609967 A1
【特許文献6】WO 03/074228 A1
【特許文献7】DE 102 007 035 266 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この記載された問題から、本発明の課題設定、つまり半導体ウェハの裏面の定義されたかつ有利な特性を有する半導体ウェハを提供するという課題設定が生じる。
【0021】
この場合、ウェハ裏面が研磨機で完全にポリ心されかつウェハ前面がそれに応じて他の研磨機で研磨されるかどうか、又は前記研磨が1つの同じ研磨機で行われるかどうかは重要ではない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の課題は、
a) シリコン棒をウェハに切断することにより半導体ウェハを準備する工程、
b) 前記半導体ウェハのエッジを丸めることで、前記半導体ウェハは前面及び裏面が平坦な面とかつエッジ領域で丸められた傾斜する面とを有する工程、
c) 前記半導体ウェハの前面及び裏面を研磨し、前記前面の研磨は、研磨パッド中に固定された砥粒を有していない研磨パッドを使用する化学機械的研磨を有し、前記半導体ウェハの裏面の研磨は、それぞれ研磨パッド中に結合された研磨材料を有する研磨パッドを使用してかつ前記半導体ウェハの裏面に研磨圧力を加える3つの工程で行い、第1の工程では、固体を有していない研磨剤を前記研磨パッドと前記半導体ウェハの裏面との間に導入し、第2及び第3の工程では研磨材料を有する研磨剤を導入し、第1の及び第2の工程の8〜15psiの研磨圧力を、第3の工程では0.5〜5psiに低下させる工程を有する半導体ウェハの製造方法によって解決される。
【0023】
前記解決策により、裏面の定義された表面粗さを有する半導体ウェハが提供される。
【0024】
当業者には、一次研磨(両面研磨、DSP)及び仕上研磨(化学機械的研磨、CMP)のような両方の慣用の研磨法により、前面及び裏面が比較的狭く制限された範囲内の表面粗さを有する半導体ウェハが生じることは公知である。
【0025】
表面粗さを測定するために、250μmフィルタを用いて(250μmより大きな空間波長=波むら−データ、Chapman Technical Note-TG-1, Rev-01-09参照)Chapman Surface Profiler MP 2000を使用する場合には、DSP研磨された半導体ウェハの前面についても裏面についても、3〜6オングストロームの平均表面粗さRaが見られる。
【0026】
発明者は、ウェハ裏面についてこのような低い粗さが常に有利であるとは限らず、前記半導体ウェハの裏面の粗さについて、慣用の研磨技術を用いて可能な範囲よりも広い範囲を使用することが望ましいことを知見した。
【0027】
このことをFAP研磨が可能であることが判明した。FAPを用いて、3〜45オングストロームのChapmanによる(250μmフィルタを用いて)平均表面粗さRaを作成できる。これは、DSP/CMPにより可能な範囲よりも10倍大きな範囲をカバーする。80μmフィルタ、30μmフィルタ及び10μmフィルタを用いた相応する粗さデータは、図1及び2に見ることができる。
【0028】
従って、本発明にとって、半導体ウェハの裏面の所望な定義された粗さを提供するために、半導体ウェハの裏面の研磨をFAPによって行うことが本質的である。
【0029】
このためには、多様なタイプの研磨機、例えばApplied Materials Inc.社の「Reflection」タイプの3プレート片面研磨機又はPeter Wolters社の「Apollo」タイプの2プレート研磨機又はStrasbaugh社の「nHance (6EG)」タイプの1プレート研磨機が適している。
【0030】
工程c)における前面の研磨により、有利に前記半導体ウェハの前面の平坦な面では0.05〜0.2nmの平均表面粗さRaが生じる。
【0031】
その裏面の平坦な面では、250μm以下の空間波長に関して表して、前記半導体ウェハは有利に0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを有する。
【0032】
有利に、前記半導体ウェハは、工程c)に引き続き、更なる工程d)においてその前面がエピタキシャル被覆される。
【0033】
エピタキシャル被覆されたシリコンウェハの場合に、このために、エピタキシャル反応器中で、1つ以上のシリコンウェハを加熱源を用いて、有利に上側及び下側の加熱源を用いて例えばランプ又はランプバンクを用いて加熱し、引き続き、ケイ素化合物を有するソースガス(シラン)、キャリアガス(例えば水素)及び場合によるドーピングガス(例えばジボラン)からなるガス混合物にさらす。
【0034】
エピタキシャル層は、通常ではCVD法(chemical vapor deposition)により堆積され、ソースガスとしてシラン、例えばトリクロロシラン(SiHCl3、TCS)を前記シリコンウェハの表面に供給し、そこで600〜1250℃の温度で元素のケイ素と揮発性副生成物とに分解し、エピタキシャル成長するシリコン層が前記シリコンウェハ上に形成される。
【0035】
前記方法の実施の後に、前記半導体ウェハは、250μm以下の空間波長に関して表してそれぞれ、前面の平坦な面で0.05〜0.2nmの平均表面粗さRaを有し、かつ裏面の平坦な面で0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを有する。
【0036】
前面も裏面も前記エッジ近傍で丸められた面を有し、この面は有利に0.5〜2nmの平均表面粗さRaを有する。
【0037】
前記半導体ウェハにエピタキシャル被覆が設けられる場合、250μm以下の空間波長に関して表してそれぞれ、前記前面の平坦な面は0.05〜0.2nmの平均表面粗さRaを有し、前記裏面の平坦な面は0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを有する。
【0038】
前記前面の傾斜する丸められた面は、有利に0.5〜6nmの平均表面粗さRaを有し、裏面の傾斜する丸められた面は0.5〜2nmの平均表面粗さRaを有する。
【0039】
特に、裏面の平坦な面の表面粗さRa(BS)と裏面の傾斜した丸められた面Ra(BS_エッジ)との間の差異は、研磨された半導体ウェハでも、エピタキシャル被覆された半導体ウェハでも有利に−1.7〜4nm、さらに特に有利に0.8〜1.8nmである。
【0040】
本発明は、ウェハ裏面のラフネスが幅広い範囲で適切に調節でき、それにより現在の及び将来の顧客の要求に関してより柔軟性を保証することができる。
【0041】
さらに、本発明は、研磨されたウェハの選択された生産物特性を用いる選択的プロセス管理が可能である。
【0042】
本発明は、特に300mm以上の直径を有する、さらに特に有利に450mmの直径を有する研磨された及びエピタキシャル被覆されたウェハの加工及び作成に関する。
【0043】
発明者は、所望の成果を達成するために、半導体ウェハの前面及び裏面の連続した研磨だけが適していることを知見した。キャリアプレートに保持された複数の半導体ウェハを同時にかつ両面研磨する今まで使用されていたバッチ式研磨法はこのためには不適当であり、枚葉型ウェハ加工に置き換る必要がある。
【0044】
本発明による方法のシリコンウェハの裏面を研磨する第1の工程の場合の前記研磨剤溶液は、最も簡単な場合には、シリコン工業において使用するために必要な純度を有する水、有利に脱イオン水(DIW)である。
【0045】
しかしながら、前記研磨剤溶液は、化合物、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)又はこれらの所望の混合物を含有することもできる。
【0046】
炭酸カリウムを使用するのが特に有利である。
【0047】
この場合、前記研磨剤溶液のpH値は、有利に10〜12の範囲内であり、前記研磨剤溶液中の前記化合物の割合は、有利に0.01〜10質量%、特に有利に0.01〜0.2質量%である。
【0048】
前記研磨剤溶液は、さらに、1種以上の他の添加剤、例えば表面活性添加物、例えば湿潤剤及び界面活性剤、保護コロイドとして作用する安定剤、保存剤、殺生物剤、アルコール及び金属イオン封鎖剤を含有することができる。
【0049】
前記半導体ウェハの裏面を研磨する第2の工程の場合に、砥粒を有する研磨剤が使用される。
【0050】
前記研磨剤懸濁液中の研磨材料の割合は、有利に0.25〜20質量%、特に有利に0.25〜1質量%である。
【0051】
研磨材料粒子のサイズ分布は有利に単峰性を特徴とする。
【0052】
この平均粒径は5〜300nm、特に有利に5〜50nmである。
【0053】
前記研磨材料は、基板材料を機械的に除去する材料からなり、有利にアルミニウム、セリウム又はケイ素の元素の酸化物の1種以上からなる。
【0054】
コロイド分散性シリカを含有する研磨剤懸濁液を使用するのが特に有利である。
【0055】
前記裏面の研磨の第2の工程の場合に、第1の工程とは反対に、有利に炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)のような添加剤は導入されない。
【0056】
前記研磨剤懸濁液は、しかしながら、1種以上の他の添加剤、例えば表面活性添加物、例えば湿潤剤及び界面活性剤、保護コロイドとして機能する安定剤、保存剤、殺生物剤、アルコール及び金属イオン封鎖剤を含有することができる。
【0057】
前記半導体ウェハを裏面研磨する第3の工程の場合に、同様に砥粒を有する研磨剤が使用される。
【0058】
この研磨圧力は、第1及び第2の工程と比較して8〜15psiから0.5〜5psiに低減される。
【0059】
前記研磨剤懸濁液中の研磨材料の割合は、有利に0.25〜20質量%、特に有利に0.25〜1質量%である。
【0060】
研磨材料粒子のサイズ分布は有利に単峰性を特徴とする。
【0061】
この平均粒径は5〜300nm、特に有利に5〜50nmである。
【0062】
前記研磨材料は、基板材料を機械的に除去する材料からなり、有利にアルミニウム、セリウム又はケイ素の元素の酸化物の1種以上からなる。
【0063】
コロイド分散性シリカを含有する研磨剤懸濁液を使用するのが特に有利である。
【0064】
前記裏面の研磨の第3の工程の場合に、第1の工程とは反対に、有利に炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)のような添加剤は導入されない。
【0065】
前記研磨剤懸濁液は、しかしながら、1種以上の他の添加剤、例えば表面活性添加物、例えば湿潤剤及び界面活性剤、保護コロイドとして機能する安定剤、保存剤、殺生物剤、アルコール及び金属イオン封鎖剤を含有することができる。
【0066】
基本的に、前記半導体ウェハは、研磨すべき端面を備えた「研磨ヘッド」を用いて研磨定盤上にある研磨パッドに押し付けられる。
【0067】
研磨ヘッドは、前記基板を横方向で取り囲みかつ研磨の間に研磨ヘッドから滑ることを抑制するための「リテーナリング」を有する。
【0068】
最近の研磨ヘッドの場合、前記研磨パッドとは反対側の前記半導体ウェハの面は弾性膜上に載せられ、前記弾性膜はかけられた研磨圧力を伝達する。前記膜はチャンバシステムの一部であり、前記システムはガスクッション又は液体クッションにより形成される。
【0069】
また、研磨ヘッドは、膜の代わりに弾性支持体(バッキングパッド)を使用する場合でも用いられる。
【0070】
前記基板の研磨は、前記基板と研磨パッドとの間に研磨剤を供給しながら及び研磨ヘッドと研磨定盤とを回転させながら実施される。
【0071】
付加的に、前記研磨ヘッドは、研磨パッドを介した移動により動かすことができ、それにより研磨パッド面の広範囲な利用が達成される。
【0072】
更に、本発明による方法は、単定盤式及び多定盤式の研磨装置でも同じように実施することができる。
【0073】
有利に2枚、更に特に有利に3枚の研磨定盤及び研磨ヘッドを備えた多定盤式研磨装置の使用が有利である。
【0074】
この場合、多様な研磨パッド及び多様な研磨剤を使用することもできる。
【0075】
本発明による方法の場合に、研磨パッド中に結合した研磨材料を含有する研磨パッド(FAPパッド又はFAパッド)が3つの全ての裏面研磨工程のために使用される。
【0076】
適当な研磨材料は、例えばセリウム、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムの元素の酸化物の粒子及び硬質材料、例えば炭化ケイ素、窒化ホウ素及びダイヤモンドの粒子が含まれる。
【0077】
特に適した研磨パッドは、反復する微細構造が付与された表面トポグラフィーを有する。この微細構造(posts)は、例えば円柱状又は多角形の断面を有する柱状体の形又はピラミッド又は切頭ピラミッドの形を有する。
【0078】
このような研磨パッドの詳細な記載は、例えばWO 92/13680 A1及びUS 2005/227590 A1に含まれている。
【0079】
酸化セリウム粒子を有する研磨パッド(例えばUS6602117B1も参照)及び前記文献に記載された研磨パッドの使用が特に有利である。
【0080】
使用されたFAP研磨パッドの粒度は有利に0.1μm以上及び1.0μm以下である。
【0081】
上記の請求項に記載された範囲内の高い裏面の粗さが望ましい場合には、0.5〜1.0μmの粒度を有するFAP布を使用するのが有利である。
【0082】
低い裏面の粗さが望ましい場合には、有利に0.01〜0.25μmの粒度を有するFAP布を使用するのが有利である。
【0083】
0.1μmよりも明らかに低いか又は1.0μmよりも明らかに高い粒度を有するFAPの使用は望ましい成果が得られない。
【0084】
さらに、半導体ウェハのエッジ研磨を中心で回転するチャック上で有利に実施し、前記半導体ウェハと、前記チャックに対して傾斜されかつ固定砥粒を有する研磨パッドを有する中心で回転する研磨ドラムとを一緒に運行し、固体を含有しない研磨剤溶液を連続的に供給しながら前記半導体ウェハと前記研磨ドラムとを相互に押し付ける。
【0085】
工程b)の実施の後に、前記半導体ウェハは丸められたエッジを有する(慣用のエッジ研削法を用いて作成される)。
【0086】
前記半導体ウェハは、工程c)の前又は後で、固定砥粒を有するあまり圧縮性でない硬質な研磨パッドが表面に貼り付けられた研磨ドラムを用いて、アルカリ性溶液を供給しながら研磨される。
【0087】
有利に、引き続き、第2の工程において、同じ研磨パッドで、シリカゾル、例えばSiO2約1質量%を有するGlanzox 3900を供給しながら平滑化工程を行う。
【0088】
前記エッジ研磨の場合に、前記方法の工程c)による前面研磨及び裏面研磨と同じ研磨剤溶液及び研磨剤懸濁液が有利である。
【0089】
同様のことが、この使用された研磨パッドにも通用する。
【0090】
特に、エッジ研磨の場合にも、0.1μm〜1.0μmのサイズの粒子の形の砥粒を含有する研磨パッドの使用が有利である。
【0091】
前記粒子は、有利にセリウム、アルミニウム、ケイ素及びジルコニウムの元素の酸化物からなるグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明により加工された直径300mmのシリコン半導体ウェハの裏面の粗さ値を示す。
【図2】本発明により加工された半導体ウェハの粗さ値を示す。
【実施例】
【0093】
この試験は、Strasbaugh Inc.社の「nHance 6EG」のタイプの研磨装置で実施した。
【0094】
Strasbaugh Inc.社のこの研磨装置は、研磨パッドを備えた研磨定盤と、半導体ウェハを完全に自動的に加工する研磨ヘッドとを有する。前記研磨ヘッドは、一般的に取り付けられかつ「バッキングパッド」で被覆されている固定されたベースプレートを有し、かつ可動のリテーナリングを有する。研磨の間に前記半導体ウェハを浮遊させるエアクッションは、前記ベースプレート中の穿孔を通して、2つの同心の圧力区域:内側の圧力区域及び外側の圧力区域中に設定することができる。前記の可動のリテーナリングは圧縮空気ベローズによって圧力をかけることができるため、前記研磨パッドを前記半導体ウェハとの接触の際にプリテンションがかけられ、前記半導体ウェハを平坦に維持することができる。
【0095】
全ての試験において前記研磨工程1は、K2CO3溶液(0.2質量%)を用いた一次研磨工程であった。
【0096】
第2の研磨工程を、Glanzox 3900*(1質量%)を用いてK2CO3なしでかつ一般に前記工程1と同じ研磨圧力で実施した。
【0097】
Glanzox 3900*は、フジミインコーポレーテッド社(日本)の、濃縮液として提供される研磨剤懸濁液の商品名である。この希釈されていない溶液はpH10.5を有し、30〜40nmの平均粒径を有する約9質量%のコロイド状SiO2を含有する。
【0098】
第3の研磨工程はGlanzox 3900(1質量%)を供給しながらK2CO3なしでかつ部分工程1及び2の場合よりも低い研磨圧力で行った。
【0099】
場合により、工程3の後に、界面活性剤又は界面活性剤+DIW(脱イオン水)を供給しながら低圧研磨工程を続ける。
【0100】
0.1〜1μmの多様な粒度を有するFAP研磨パッドを用いて試験を行った。
【0101】
図面で示した試験の場合、例えばUS 6602117 B1に記載されているような研磨パッド中に固定された酸化セリウム砥粒を有する研磨パッドを使用した。
【0102】
前記平均粒度は0.5μmであった。
【0103】
前面の化学機械的研磨のために典型的な一次研磨用研磨パッドを使用した。このために、例えばRohm & Haas社のSUBA(登録商標)系列の研磨パッド、例えばSUBA(登録商標) 1250(一次研磨用研磨パッド)又はRodel(登録商標)のSPM 3100のような典型的なCMP研磨パッド(仕上研磨用研磨パッド)が適している。
【0104】
図1は、本発明により加工された直径300mmのシリコン半導体ウェハの裏面の粗さ値を示す。15の試験を多様な研磨条件下で行った。1.3〜4.5nmの粗さ値が見られた(250μmフィルタ)。
【0105】
試験1〜9は、K2CO3溶液(0.2質量%)を用いた一次研磨工程、引き続きK2CO3の供給なしでの研磨剤溶液(Glanzox 3900)を使用した第2の研磨及び最初の2つの研磨の場合よりも低い研磨圧力でのK2CO3の供給なしでのGlanzox 3900を用いた第3の研磨を含む。
【0106】
最初の2つの工程の場合の研磨圧力はそれぞれ7〜13psiであり、第3の研磨工程の場合では0.5〜2psiである。
【0107】
試験10〜13は、さらにDIWを供給しながらの研磨工程を含む。
【0108】
図2は、同様に、本発明により加工された半導体ウェハの粗さ値を示す。
【0109】
この場合、0.3〜約1.7nmの粗さ値が見られた(250μmフィルタ)。
【0110】
ここでも、全ての試験は、10〜13psiの研磨圧力でK2CO3溶液を供給しながらの一次研磨、10〜13psiの研磨圧力でGlanzox 3900を供給しながらの第2の研磨工程及び0.5〜3.5psiの研磨圧力で第3の研磨工程を含む。試験14〜20の場合に、研磨剤流量は、最初の2つの工程の場合に3000〜5000ml/min、第3の工程の場合に350ml/minであった。試験1の場合では、しかしながら、前記研磨剤流量は第2の研磨工程で100ml/minであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) シリコン棒をウェハに切断することにより半導体ウェハを準備する工程、
b) 前記半導体ウェハのエッジを丸めることで、前記半導体ウェハは前面及び裏面が平坦な面とエッジ領域で丸められかつ傾斜する面とを有する工程、
c) 前記半導体ウェハの前面及び裏面を研磨し、前記前面の研磨は、研磨パッド中に固定された砥粒を有していない研磨パッドを使用する化学機械的研磨を有し、前記半導体ウェハの裏面の研磨は、それぞれ研磨パッド中に結合された研磨材料を有する研磨パッドを使用してかつ前記半導体ウェハの裏面に研磨圧力を加える3つの工程で行い、第1の工程では、固体を有していない研磨剤を前記研磨パッドと前記半導体ウェハのり面との間に導入し、第2及び第3の工程では研磨材料を有する研磨剤を導入し、第1の及び第2の工程の8〜15psiの研磨圧力を、第3の工程では0.5〜5psiに低下させる工程
を有する半導体ウェハの製造方法。
【請求項2】
さらに、d) 前記半導体の前面をエピタキシャル被覆する工程を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記研磨剤溶液は、前記半導体ウェハの裏面の研磨の最初の工程において脱イオン水(DIW)を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記研磨剤溶液は、化合物、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)又はこれらの任意の混合物を含有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記研磨剤溶液のpH値は10〜12であり、前記研磨剤溶液中の前記化合物の割合は0.01〜10質量%である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第2の研磨工程における研磨剤懸濁液は、アルミニウム、セリウム又はケイ素の元素の酸化物の1種以上の粒子を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
前記研磨剤懸濁液はコロイド分散性シリカである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記研磨パッドは、固定された研磨材料を、セリウム、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムの元素の酸化物の粒子の形で又は炭化ケイ素、窒化ホウ素及びダイヤモンドのような硬質材料から選択された粒子の形で含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
研磨パッド中に結合された前記研磨材料の粒度は0.1μm以上でかつ1.0μm以下である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
研磨された前面と、研磨された裏面と、丸められかつ研磨されたエッジとを有し、前面及び裏面では平坦な面を有しかつエッジ領域では傾斜する丸められた面を有し、双方とも250μm以下の空間波長に関して表して、前面の平坦な面では0.05〜0.2nmの平均表面粗さRaを有し並びに背面の平坦な面では0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを有する、請求項1記載の方法により製造された半導体ウェハ。
【請求項11】
前面及び裏面の丸められた面は、0.5〜2nmの平均表面粗さRaを有する、請求項10記載の半導体ウェハ。
【請求項12】
研磨されかつエピタキシャル被覆された前面と、研磨された裏面と、丸められかつ研磨されたエッジとを有し、前面及び裏面では平坦な面を有しかつエッジ領域では傾斜する丸められた面を有し、双方とも250μm以下の空間波長に関して表して、エピタキシャル被覆された前面の平坦な面では0.05〜0.2nmの平均表面粗さRaを有し並びに背面の平坦な面では0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを有する、請求項2記載の方法により製造された半導体ウェハ。
【請求項13】
前面の傾斜する丸められた面では0.5〜6nmの平均表面粗さRaを有し、裏面の傾斜する丸められた面では0.5〜2nmの平均表面粗さRaを有する、請求項12記載の半導体ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−9747(P2011−9747A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−142493(P2010−142493)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】