説明

半導体チップのピックアップ装置及びピックアップ方法

【課題】この発明は不良チップをピックアップせず、良品チップだけを確実にピックアップできるピックアップ装置を提供することにある。
【解決手段】半導体ウエハを照明する光源44と、半導体ウエハの各チップを撮像する撮像カメラ43と、撮像カメラによってチップを撮像するとき、光源によって半導体ウエハを照明する照明光の光量を、ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させる設定部42及び演算処理部47と、光量が制御された照明光によって半導体ウエハを照射して撮像カメラで撮像し、撮像カメラの撮像信号を閾値と比較してチップが良品チップ或いは不良チップであるかを判定する制御装置41の判定部48具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は多数の半導体チップにダイシングされた半導体ウエハから、良品チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置及びピックアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハから作られたチップを基板に実装する場合、たとえばフリップチップ方式の実装装置が使用される。この実装装置はチップ供給部を有し、このチップ供給部のX・Yテーブル上には多数のチップにダイシングされた半導体ウエハが供給される。
【0003】
上記半導体ウエハは上記X・Yテーブルによって駆動され、ピックアップされる予定のチップがピックアップ位置に位置決めされる。ピックアップ位置に位置決めされたチップは上記供給部の上方に配置された撮像カメラによって撮像される。
【0004】
ダイシングされた半導体ウエハには、通常、周辺部に回路パターンが形成されずに光をほぼ全反射するミラーチップがあり、他の部分には良品チップ及び検査時に不良品と判定されてインクによって不良マークが付された不良チップが混在する。上記インクにはチップの表面よりも光の反射率が低い色、たとえば黒色のインクなどが用いられる。
【0005】
上記ピックアップ位置に位置決めされたチップが上記撮像カメラによって撮像され、その撮像に基いて良品チップであると判定されると、その良品チップは突き上げピンによって突き上げられてピックアップツールでピックアップされる。そして、ピックアップツールから実装ツールに受け渡されて上記基板に実装されることになる。
【0006】
ところで、撮像カメラによってチップを撮像する際、その撮像が確実に行えるようにするため、ピックアップ位置に位置決めされたチップはその周辺部のチップとともに照明手段からの照明光によって照明される。
【0007】
ピックアップ位置に位置決めされたチップが不良マークが付された不良チップであって、この不良チップの近くにミラーチップがある場合、照明手段の照明光が不良チップとミラーチップの両方を照明するということがある。
【0008】
その場合、ミラーチップから照明光が反射するから、不良チップを撮像したときにミラーチップからの反射光が撮像手段に入射するということがある。そのような場合、不良チップの輝度がこの不良チップに付された不良マークとともに高くなる。つまり、不良マークの輝度がチップの良否を判定する判定部に設定された閾値よりも高くなる。
【0009】
そのため、上記判定部では上記撮像カメラの画像によって上記チップに付された不良マークが判別できず、不良チップを良品チップと判定し、不良チップをピックアップしてしまうということがある。
【0010】
そこで、従来は、不良チップを確実に認識できるようにするため、撮像カメラからの画像を処理する際、2つの輝度の閾値を設定するようにしている。つまり、第1の閾値は不良チップに付された不良マークを適正に認識できる値で、第2の閾値は不良チップに付された不良マークは認識できないが、ミラーチップを認識できるレベル値に設定される。
【0011】
さらに、ミラーチップにも不良マークを付すようにし、これら不良マークのサイズの閾値を設定するようにしている。つまり、不良チップに付された不良マークよりも小さいサイズを第1のマークサイズ閾値とし、ミラーチップに付された不良マークのサイズよりも大きいサイズを第2のマークサイズ閾値として設定する。
【0012】
そして、撮像カメラによって撮像されたチップの画像を、上記4つの閾値と比較することで、撮像されたチップが良品チップであるか否かを判定し、良品チップだけをピックアップできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2647053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、撮像カメラによって撮像されたチップが良品であるか否かを、2つの輝度の閾値と、2つのマークサイズ閾値を用いて判定するようにすると、チップの良否の判定が得られるまでの工程数が多くなるから、タクトタイムが長く掛かって生産性の低下を招くということがある。
【0015】
しかも、2つのマークサイズ閾値を用いてチップの良否を判定するためにはミラーチップにも不良マークを付さなければならないから、そのことによって余計な手間が掛かるということもあった。
【0016】
この発明は、良品チップの判定を簡単かつ確実に行うことができるようにした半導体チップのピックアップ装置及びピックアップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、良品チップの他にミラーチップ及び不良マークつきの不良チップを有する半導体ウエハから、上記良品チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上記半導体ウエハを照明する照明手段と、
上記半導体ウエハの各チップを撮像する撮像手段と、
この撮像手段によって上記チップを撮像するとき、上記照明手段によって上記半導体ウエハを照明する照明光の光量を、上記ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させる光量設定手段と、
この光量設定手段によって光量が制御された照明光によって上記半導体ウエハを照射して上記撮像手段で撮像し、この撮像手段の撮像信号を閾値と比較して上記チップが良品チップ或いは不良チップであるかを判定する判定手段と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ装置にある。
【0018】
上記閾値は、上記半導体ウエハの上記ミラーチップからの反射光の影響を受けない部分のチップが上記照明光によって照射されたときの明るさとほぼ同等のレベルに設定されることが好ましい。
【0019】
上記照明手段はLEDライトであることが好ましい。
【0020】
上記半導体ウエハには径方向の周辺部に上記ミラーチップが設けられていて、
上記光量設定手段は上記照明手段による照明が上記半導体ウエハの径方向周辺部から中心部に行くにつれて光量が大きくなるよう設定することが好ましい。
【0021】
この発明は、良品チップの他にミラーチップ及び不良マークつきの不良チップを有する半導体ウエハから、上記良品チップをピックアップする半導体チップのピックアップ方法であって、
上記半導体ウエハを照明する工程と、
上記半導体ウエハの各チップを撮像する工程と、
上記チップを撮像するとき、上記半導体ウエハを照明する照明光の光量を、上記ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させる工程と、
光量が制御された照明光によって上記半導体ウエハを照射して撮像し、その撮像信号を閾値と比較して上記チップが良品チップ或いは不良チップであるかを判定する工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法にある。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、半導体ウエハを照明する照明光の光量を、ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させるようにした。
【0023】
そのため、ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分では、その反射光の影響がない状態で撮像することができるから、ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分に良品マークが付された不良チップが存在しても、不良チップを確実に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施の形態を示すピックアップ装置の正面図。
【図2】図1に示したピックアップ装置の平面図。
【図3】ピックアップ装置の制御系統図。
【図4】(a)は良品チップ示す平面図、(b)が不良チップを示す平面図。
【図5】半導体ウエハの一部を拡大して示した図。
【図6】半導体ウエハの径方向に沿う輝度レベルと、この半導体ウエハを照明する照明光の輝度レベルを説明した図。
【図7】良品チップの輝度、不良チップの不良マークの輝度及び閾値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実装装置としてのフリップチップボンダの側面図、図2は平面図であって、このフリップチップボンダは横断面形状が前後方向に沿って細長い矩形状をなした箱型状の装置本体1を備えている。この装置本体1の前後方向中途部の所定の高さ位置には、所定間隔で平行に離間した搬送手段としての一対のガイドレール2が幅方向に沿って配置されている。
【0026】
一対のガイドレール2にはリードフレームや樹脂製テープなどの基板Wが移動可能に支持される。ガイドレール2に支持された基板Wは、図示しない搬送機構によって上記ガイドレール2に沿ってピッチ送りされるようになっている。
【0027】
図1に示すように上記装置本体1には、カセット3と供給部としての供給テーブル4とが上記ガイドレール2の配置方向に対して直交する、装置本体1の前後方向に沿って配置されている。つまり、カセット3は装置本体1の前端側に設置され、供給テーブル4はガイドレール2よりも装置本体1の前端側で、上記カセット3と上記ガイドレール2との間に設置されている。
【0028】
上記カセット3は第1の上下駆動機構6によって上下駆動されるカセットテーブル7上に載置されていて、内部には図2に示すように複数(1つのみ図示)のウエハリング8が上下方向に所定間隔で収納保持されている。上記カセット3に収納されたウエハリング8は、このカセット3の一側面から出し入れ可能となっている。
【0029】
上記ウエハリング8には図示しない樹脂シートが張設されている。この樹脂シートには半導体ウエハ11が貼着されている。この半導体ウエハ11は賽の目状にダイシングされて多数のチップ12となっている。
【0030】
なお、チップ12には後述するように良品チップ12a,不良チップ12b及びミラーチップ12cがあるが、全てのチップを総称してチップ12とする。
【0031】
上記供給テーブル4は図1に示すように第2の上下駆動機構13と、水平駆動機構14とによってZ方向及びX、Y方向に駆動されるようになっている。なお、供給テーブル4をθ方向に駆動できるようにしてもよい。
【0032】
上記供給テーブル4は側面形状がL字状であって、その垂直な一辺の一側面の幅方向の両端部(一端部のみ図示)には上下方向に所定間隔で離間したそれぞれ一対の受け部15が設けられ、他側面の幅方向の中央部にはめねじ体16が設けられている。このめねじ体16にはねじ軸17が軸線を垂直にして螺合されている。このねじ軸17の下端には従動プーリ18が嵌着されている。
【0033】
上記水平駆動機構14はX、Y方向に駆動される設置テーブル21を有し、この設置テーブル21には上記第2の上下駆動機構13を構成するガイド体22が立設されている。このガイド体22の垂直部の一側面には、上記供給テーブル4に設けられた上記受け部15がスライド可能に係合する一対のガイドレール24(一方のみ図示)が上下方向に沿って設けられている。それによって、上記供給テーブル4は上下方向に移動可能になっている。
【0034】
上記ガイドレール24の他側面には駆動源25が設けられている。この駆動源25の出力軸25aには駆動プーリ25bが設けられている。この駆動プーリ25bと上記ねじ軸17に設けられた上記従動プーリ18とにはベルト26が張設されている。それによって、上記駆動源25が作動して上記ねじ軸17が回転されれば、その回転方向に応じて上記供給テーブル4が上昇方向或いは下降方向に駆動されるようになっている。
【0035】
図2に示すように、上記装置本体1内の幅方向一側には上記カセット3に対してウエハリング8を出し入れするための出し入れ装置31が設けられている。この出し入れ装置31は上記装置本体1内の幅方向一側に前後方向に沿って設けられたレール32を有する。このレール32には可動体33が移動可能に設けられている。
【0036】
上記可動体33は、上記レール32に設けられたコイルと、上記可動体33に設けられた磁石(ともに図示せず)とで構成されたリニアモータによって上記レール32に沿って駆動されるようになっている。
【0037】
上記可動体33には図示しない支柱が立設され、この支柱の上端であって、上記ガイドレール2よりの下方の位置にはアーム35が基端を固定して水平に設けられている。このアーム35の先端は上記装置本体1の幅方向中央に延出されていて、その先端にはチャック36が設けられている。それによって、上記チャック36は装置本体1の幅方向中央部を前後方向に沿って駆動されるようになっている。
【0038】
上記チャック36は上記ガイドレール2の下面を通過する高さに設けられ、前進方向である、装置本体1の前方に駆動されると、上記カセット3内に入り込んで、チャック36と同じ高さに位置決めされたウエハリング8の径方向の一端を挟持できるようになっている。ウエハリング8を挟持したチャック36は後退方向に駆動され、そのウエハリング8を上記供給テーブル4の上面に供給する。
【0039】
このとき、供給テーブル4の上面の高さは、上記ガイドレール2の下面を通過する上記チャック36の下端よりもわずかに低い位置に設定される。つまり、チャック36を前後方向に駆動できる高さに位置決めされる。
【0040】
上記供給テーブル4には図1に鎖線で示す開口部37が形成されていて、この開口部37と対向する上記供給テーブル4の下面側には突き上げピン38を有する突き上げ装置39が配置されている。
【0041】
上記突き上げピン38は上下方向に駆動される。それによって、供給テーブル4に上記ウエハリング8を供給載置した状態で、上記突き上げピン38を上昇方向に駆動すれば、上記ウエハリング8に樹脂シートによって保持された多数のチップ12のうちの1つが上記突き上げピン38によって樹脂シートを弾性変形させながら突き上げられる。
【0042】
上記突き上げ装置39は固定的に設けられ、この突き上げ装置39に対して上記供給テーブル4がX、Y方向に位置決めされる。つまり、半導体ウエハ11の多数のチップ12のうち、ピックアップされるチップ12は上記突き上げピン38によって付き上げられるピックアップ位置に順次位置決めされる。
【0043】
上記半導体ウエハ11の多数のチップ12の上記ピックアップ位置に対する位置決めは図3に示す制御装置41に接続された設定部42によって設定された位置データに基いて順次行なわれる。
【0044】
ピックアップ位置に位置決めされたチップ12は上記供給テーブル4の上方に配置された撮像手段としての撮像カメラ43によって撮像される。上記半導体ウエハ11の上記撮像カメラ43によって撮像される部分、つまりピックアップされるチップ12とその周辺部に位置する複数のチップ12は照明手段としての光源44からの照明光L(図1に矢印で示す)によって照明される。図5に上記照明光Lによって照射される領域Rを鎖線で示す。なお、光源44としては照明光量が瞬時に変更可能なLEDライトが用いられている。
【0045】
そして、上記光源44の照明光量の制御は、上記設定部42によって設定された位置データに基いて上記ピックアップ位置に位置決めされるチップ12が半導体ウエハ11のどの位置にあるかによって、上記制御装置41の駆動部45から上記光源44に出力される駆動信号によって後述するように設定されるようになっている。
【0046】
この実施の形態では上記設定部42と上記制御装置41の駆動部45によって上記光源44からの照明光Lの光量を設定制御する光量設定手段を構成している。
【0047】
上記撮像カメラ43の撮像信号は画像処理部46でたとえば二値化処理されてデジタル信号に変換された後、上記制御装置41に設けられた演算処理部47で処理されてから判定手段としての判定部48で後述するように上記チップ12が良品チップであるか、それとも不良チップであるかが判定される。
【0048】
通常、上記半導体ウエハ11は図5に拡大して示すように、賽の目状の多数のチップ12にダイシングされていて、周辺に位置するチップ、この実施の形態では最外周のチップ12は回路パターンが形成されていなミラーチップ12cとなっていて、他のチップ12は上記良品チップ12a及び不良チップ12bとなっている。
【0049】
そして、不良チップ12bにはそのことが上記撮像カメラ43の撮像信号によって判別できるよう、図4(b)に示すようにチップ12の地色よりも暗い色のインクによって丸印などの不良マークm1が予め付されている。
【0050】
つまり、半導体ウエハ11の各チップ12を検査したときに、不良チップ12bであると判定されたならば、そのチップ12に不良マークm1が付される。さらに、図4(a)に示す良品チップ12aと図4(b)に示す不良チップ12bのたとえば2つの角部には位置合わせマークm2が設けられている。
【0051】
上記演算処理部47は、撮像カメラ43が撮像したチップ12の位置合わせマークm2によってX、Y座標を算出し、その算出に基いて上記チップ12はピックアップ位置に位置決めされるようになっている。そして、上記判定部48はピックアップ位置に位置決めされた上記チップ12に不良マークmがあるか否かを後述するように判定する。つまり、そのチップ12の良否を判定する。
【0052】
上記判定部48によって判定されたチップ12が不良品チップ12bの場合は突き上げピン38によって突き上げられず、良品チップ12aの場合には突き上げピン38によって突き上げられるようになっている。この突き上げピン38が設けられた突き上げ装置39は図3に示す上記駆動部45からの駆動信号によって駆動されるようになっている。
【0053】
上記突き上げピン38によって突き上げられた良品チップ12aはピックアップツール53によって吸着保持(ピックアップ)される。このピックアップツール53は支軸54を支点とする回転方向及びX、Y、Z方向に駆動可能となっている。
【0054】
そして、上記突き上げピン38によって突き上げられた良品チップ12aが上記ピックアップツール53によってピックアップされると、このピックアップツール53は支軸54を支点として図1に矢印θで示す方向に180度回転する。
【0055】
それによって、ピックアップツール53に保持された良品チップ12aは上下方向の向きが逆になるよう反転させられることになる。つまり、良品チップ12aはピックアップツール53によって吸着された面である、回路パターン及びバンプ(ともに図示せず)が形成された面が下向きになる。
【0056】
ピックアップツール53によって反転させられた良品チップ12aは実装ツール55に受け渡される。この実装ツール55は、ガイド体56に沿ってX、Y方向に駆動可能であるとともに、Zテーブル57によってZ方向に駆動可能となっている。そして、上記ピックアップツール43から良品チップ12aを受けると、この良品チップ12aを上記ガイドレール2に保持された上記基板Wの上方の実装位置に位置決めする。
【0057】
ついで、ピックアップツール53は下降方向に駆動されて良品チップ12aを上記基板Wに実装する。このとき、基板Wの半導体チップ12が実装される部位の下面はZ方向に駆動されるバックアップステージ58によって支持される。
【0058】
ピックアップ位置に位置決めされる良品チップ12aや不良チップ12bを照明する上記光源44による照明光Lの光量の設定は、上記設定部42によって設定された位置データに基いて行なわれる。
【0059】
つまり、上記半導体ウエハ11には図5に示すように周辺部に輝度(照明の反射光の量)の高いミラーチップ12cがあるから、上記半導体ウエハ11の径方向に沿う輝度曲線は、図6にAで示すようになっている。つまり、半導体ウエハ11の周辺部では、輝度曲線Aのa1で示すように輝度が半導体ウエハ11の径方向内方に向かって徐々に低下し、周辺部よりも所定距離径方内方ではa2で示すようにミラーチップ12cの影響を受けずに一定の輝度となる。
【0060】
一方、上記光源44による半導体ウエハ11の照明は、半導体ウエハ11の周辺部のミラーチップ12cの近くのチップ12がミラーチップ12cから受ける反射光の影響が除去されるよう照明光Lの光量が上記設定部42から入力されたデータに基いて制御装置41の演算処理部で処理され、その処理に基いて上記駆動部45によって制御される。
【0061】
上記照明光Lの光量は図6に照明曲線Bで示す。つまり、照明曲線Bは、半導体ウエハ11の周辺部の良品チップ12aや不良チップ12bがミラーチップ12cの反射光の影響を受ける部分では、上記照明曲線Bのb1で示すようにその影響が除去されるよう照明光Lの光量が半導体ウエハ11の径方向内方に向かうにつれて徐々に低減され、影響がなくなる部分ではb2で示すように一定に維持される。
【0062】
その結果、撮像カメラ43によって撮像される半導体ウエハ11の輝度は、ミラーチップ12cの部分、ミラーチップ12cからの反射光の影響を受ける部分及び影響を受けない部分のどの部分であっても、図6に直線Cで示すように半導体ウエハ11の径方向に沿う輝度曲線Aと照明曲線Bとの輝度の値の平均値となる。上記直線Cを輝度平均曲線とする。
【0063】
上記制御装置41の判定部48には、図7にSで示すように撮像カメラ43によって撮像されたチップ12が良品チップ12aであるのか、不良チップ12cであるのかを判定するための閾値Sが設定される。この閾値Sは上記輝度曲線Aと照明曲線Bとの輝度の値の平均値で輝度平均曲線Cと同じレベルに設定される。
【0064】
なお、図6において、輝度曲線Aのミラーチップ12cの反射光の影響を受けない部分a2の輝度に対し、このa2に対応する照明曲線Bの部分b2の輝度をわずかに低くしているが、照明曲線Bのb2の部分の輝度を輝度曲線Aのa2の部分の輝度と同じにしても差し支えない。
【0065】
つまり、照明光Lの輝度は、半導体ウエハ11の径方向に沿うミラーチップ12cの反射光の影響を打ち消し、その半導体ウエハ11の径方向に沿う輝度がほぼ一定になるよう設定されていればよい。
【0066】
なお、上記制御装置41の駆動部45は上記光源44の他に、図3に示す第1の上下駆動機構6、第2の上下駆動機構13、水平駆動機構14、及び突き上げ装置39の駆動を制御するようになっている。
【0067】
つぎに、上記構成のピックアップ装置によって半導体ウエハ11から良品チップ12aをピックアップする手順を説明する。
【0068】
制御装置41は供給テーブル4を駆動し、設定部42によって予め設定されたピックアップ順序に基いて半導体ウエハ11の周辺部のチップ12から順次ピックアップ位置に位置決めする。
【0069】
ピックアップ位置に位置決めされたチップ12及びその近くのチップは光源44からの照明光Lによって照明され、ピックアップ位置に位置決めされたチップ12は撮像カメラ43によって撮像される。
【0070】
上記撮像カメラ43の撮像信号は画像処理部46で二値化処理されてから、判定部48に出力され、ここで閾値Sと比較され、上記チップ12に不良マークm1があるか否かが判定される。
【0071】
不良マークm1のない良品チップ12aの表面の、上記画像処理部46で二値化処理されて判定部48に出力される輝度は図7にS1で示すように閾値Sよりも高い値である。
【0072】
一方、不良チップ12bに付された上記不良マークm1はチップ12の地色よりも輝度の低いインクなどによって形成されている。したがって、判定部48に出力される撮像信号の輝度は図7にS2で示すように閾値Sよりも小さい。
【0073】
したがって、上記撮像カメラ43によって撮像された所定のチップ12の画像から中心部の輝度を見たとき、その輝度が閾値Sよりも低ければ、そのチップ12は不良マークm1が付されていることになる。
つまり、チップ12は不良チップ12bであると判定され、その不良チップ12bはピックアップされず、つぎのチップ12がピックアップ位置に位置決めされるよう、半導体ウエハ11が位置決めされる。
【0074】
上述したように、上記判定部48に出力された撮像信号の輝度が閾値Sよりも大きければ、そのチップ12には不良マークm1がないことになるから、そのチップ12は良品チップ12aであると判定されてピックアップツール53によってピックアップされることになる。
【0075】
ピックアップ位置に位置決めされたチップ12の近くにミラーチップ12cがある場合、照明光Lがミラーチップ12cで反射し、その反射光によって上記撮像カメラ43からの撮像信号の輝度が高くなるということがある。
【0076】
その場合、判定部48に出力された撮像信号の輝度が閾値Sよりも大きくなるから、不良マークm1が付された不良チップ12cであっても、良品チップ12aとして判定されてピックアップされる虞がある。
【0077】
しかしながら、ピックアップ位置に位置決めされたチップ12を照明する光源44の照明光Lは、ピックアップ位置に位置決めされたチップ12の近くにミラーチップ12cがあっても、そのミラーチップ12cからの反射光の影響をなくすようにその輝度が設定されている。
【0078】
つまり、半導体ウエハ11には通常、その周辺部にミラーチップ12cがあるから、半導体ウエハ12を照明する照明光Lの輝度は、ミラーチップ12cの影響を受ける範囲では半導体ウエハ11の周辺部から中心部にゆくにつれて低くなるよう設定されている。
【0079】
そのため、ピックアップ位置に位置決めされたチップ12は、ミラーチップ12cからの反射光の影響を除去した状態で撮像することができるから、判定部48での閾値Sとの比較に基いてそのチップ12に不良マークm1があるか否かを確実に判定することができる。
【0080】
その結果、不良チップ12bに不良マークm1が付されているか否かを判別できずに、不良チップ12bを良品チップ12aと誤認識してピックアップするのを確実に防止することができる。
【0081】
上記チップ12が良品チップ12a或いは不良チップ12bのいずれであるかの判定を、撮像カメラ43からの撮像信号を判定部48に設定された1つの閾値Sと比較することで行うことができるようにしている。そのため、上記チップ12の良否の判定を迅速に、しかも簡単なシステムで確実に行うことが可能となる。
【0082】
ピックアップ位置に位置決めされたチップ12が良品チップ12a或いは不良チップ12bのいずれであるかを判定する際、ピックアップ位置に位置決めされたチップ12を照明する光源44からの照明光Lの光量を制御して照明するようにしたことで、その判定がミラーチップ12cからの反射光の影響を受けないようにした。
【0083】
つまり、半導体ウエハ11を照明する照明光Lの光量を、ミラーチップ11cからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させるようにしたから、ミラーチップ11cからの反射光の影響を簡単かつ確実に除去することができる。
【0084】
上記光源44にLEDライトを用いるようにしている。LEDライトは照明光Lの光量の設定を瞬時に、しかも確実に行うことができるから、このことによっても半導体ウエハWの径方向に沿う照明光Lの光量の制御を簡単かつ確実に行うことが可能となる。
【0085】
上記一実施の形態では半導体ウエハの周辺にミラーチップがある場合を例に挙げて説明したが、周辺以外にもミラーチップを設けることがあり、そのような場合であっても、そのミラーチップの近くであって、そのミラーチップからの反射光の影響を受けるチップをピックアップ位置に位置決めしてピックアップするとき、そのチップを照明する照明光の光量をミラーチップからの反射光の影響を受けないチップの輝度と同じになるよう制御すればよい。
【0086】
また、上記一実施の形態では半導体ウエハ周辺部を照明する照明光の光量を、中心部を照明する光量に比べて低くなるよう制御するとともに、判定部に1つの閾値を設定し、その閾値と撮像信号の輝度を制御してミラーチップからの反射光の影響を受けるチップが良品チップと不良チップのいずれであるかを判定するようにした。
【0087】
しかしながら、それに代わって半導体ウエハを径方向全長にわたって同じ光量の照明光で照明するとともに、判定部に設定される閾値を、ピックアップ位置に位置決めされたチップがミラーチップからの反射光の影響を受けているか否かに応じて上記閾値の値を制御することでチップの良否を判定することもきる。
【0088】
また、上記実施の形態では、実装装置はフリップチップボンダを例に挙げて説明したが、フリップチップボンダの他にウエハリングに貼られたシート上の半導体ウエハをピックアップしてチップを基板に供給する装置、すなわちダイボンダやインナーリードボンダにもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
11…半導体ウエハ、12…チップ、12a…良品チップ、12b…不良チップ、12c…ミラーチップ、38…突き上げピン、39…突き上げ装置、41…制御装置、42…設定部、43…撮像カメラ(撮像手段)、44…光源、46…画像処理部、47…演算処理部、48…判定部、53…ピックアップツール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
良品チップの他にミラーチップ及び不良マークつきの不良チップを有する半導体ウエハから、上記良品チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上記半導体ウエハを照明する照明手段と、
上記半導体ウエハの各チップを撮像する撮像手段と、
この撮像手段によって上記チップを撮像するとき、上記照明手段によって上記半導体ウエハを照明する照明光の光量を、上記ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させる光量設定手段と、
この光量設定手段によって光量が制御された照明光によって上記半導体ウエハを照射して上記撮像手段で撮像し、この撮像手段の撮像信号を閾値と比較して上記チップが良品チップ或いは不良チップであるかを判定する判定手段と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ装置。
【請求項2】
上記閾値は、上記半導体ウエハの上記ミラーチップからの反射光の影響を受けない部分のチップが上記照明光によって照射されたときの明るさとほぼ同等のレベルに設定されることを特徴とする請求項1記載のピックアップ装置。
【請求項3】
上記照明手段はLEDライトであることを特徴とする請求項1記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項4】
上記半導体ウエハには径方向の周辺部に上記ミラーチップが設けられていて、
上記光量設定手段は上記照明手段による照明が上記半導体ウエハの径方向周辺部から中心部に行くにつれて光量が大きくなるよう設定することを特徴とする請求項1記載の半導体チップのピックアップ装置。
【請求項5】
良品チップの他にミラーチップ及び不良マークつきの不良チップを有する半導体ウエハから、上記良品チップをピックアップする半導体チップのピックアップ装置であって、
上記半導体ウエハを照明する工程と、
上記半導体ウエハの各チップを撮像する工程と、
上記チップを撮像するとき、上記半導体ウエハを照明する照明光の光量を、上記ミラーチップからの反射光の影響を受ける部分ではその影響の度合に応じて影響を受けない部分よりも減少させる工程と、
光量が制御された照明光によって上記半導体ウエハを照射して撮像し、その撮像信号を閾値と比較して上記チップが良品チップ或いは不良チップであるかを判定する工程と
を具備したことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−174846(P2012−174846A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34533(P2011−34533)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】